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平成28(行ケ)10076審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成29年3月14日
事件種別 民事
当事者 被告住友林業株式会社 株式会社タナカ松川直樹 ら訴訟代理人弁護士浅村昌弘
原告株式会社栗山百造弓削田博
対象物 接合金具
法令 特許権
特許法29条2項2回
キーワード 審決26回
無効17回
実施8回
無効審判2回
分割1回
特許権1回
進歩性1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は,特許に対する無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点 は,進歩性判断の当否である。

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判決文

平成29年3月14日判決言渡
平成28年(行ケ)第10076号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成29年2月28日
判 決

原 告 株 式 会 社 栗 山 百 造

訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫
弓 削 田 博
河 部 康 弘
藤 沼 光 太
神 田 秀 斗
弁理士 牛 木 護
高 橋 知 之
守 屋 嘉 高
加 藤 裕 介
清 水 榮 松

被 告 住 友 林 業 株 式 会 社


被 告 株 式 会 社 タ ナ カ

被告ら訴訟代理人弁護士 浅 村 昌 弘
松 川 直 樹
弁理士 金 井 建

井 上 洋 一
岩 本 昭 久
前 田 秀 一
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求の趣旨
特許庁が無効2015-800134号事件について平成28年2月22日にし
た審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,特許に対する無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点
は,進歩性判断の当否である。
1 特許庁における手続の経緯
被告らは,名称を「接合金具」とする発明についての本件特許(特許第4027
278号)の特許権者である(甲16)。
本件特許は,平成10年4月30日(本件出願日)に特許出願をした特願平10
-121042号を,平成15年7月14日に分割出願した特願2003-196
408号に係るものであり,平成19年10月19日に設定登録された(甲16)。
原告が,平成27年6月10日に本件特許の特許請求の範囲の請求項1,2及び
5に記載された発明についての特許につき無効審判請求(無効2015-8001
34号)をしたところ,特許庁は,平成28年2月22日,
「本件審判の請求は,成
り立たない。」との審決をし,同審決謄本は,同年3月2日,原告に送達された。
2 本件発明の要旨
本件特許の特許請求の範囲の請求項1,2及び5記載の発明(それぞれ,本件発
明1,本件発明2及び本件発明5といい,まとめて「本件発明」という。 の要旨は,


以下のとおりである。
[請求項1]
第1構造材と第2構造材とを互いに垂直に接合する接合金具であって,
第1構造材が垂直材であり,第2構造材が横架材であり,
固定用孔を有し該固定用孔を介して固定材で上記垂直材の側面に当接固定される
縦長の平板体と,該平板体に突出固定され,該平板体の平板部に対して垂直な方向
に縦長の係合孔部を有する係合体とを具備し,
上記係合孔部は,矩形状のプレートを折曲し,折曲により互いに接近した該プレ
ートの両端部を該平板体の平板部に固定して形成されており,該係合孔部は,上記
垂直材に上記横架材を引き寄せ接合させるのに用いられる引き寄せボルトを,上記
平板部に対して垂直な方向の所望の位置にずらして挿通可能であり,
上記引き寄せボルトを上記係合孔部に挿通し,その引き寄せボルトの両側に位置
する,該係合孔部の相対向する一対の縁部間にまたがるように配したナットを該引
き寄せボルトに螺合させることにより,上記垂直材と上記横架材とを緊結するよう
になされており,
上記係合孔部は,相対向する上記一対の縁部間の距離にほぼ等しい直径を有する
引き寄せボルトを,上記平板部に対して垂直な方向に2本並べて挿通可能な内寸を
有していることを特徴とする接合金具。
[請求項2]
上記矩形状のプレートは,断面U字型に折曲されていることを特徴とする,請求
項1に記載の接合金具。
[請求項5]
上記平板体は,上記係合体の突出固定部に,該平板体補強用のリブ又はプレート
を備えており,該リブ又は該プレートの下端は,上記平板体の下端よりも上方に位
置していることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の接合金具。
3 審決の理由の要旨

(1) 原告の主張した無効理由の要旨
ア 無効理由1
本件発明1及び2は,当業者が,甲1~3に記載の発明に基づいて容易に発明を
することができたものであるから,その特許は,特許法29条2項の規定に違反し
てされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効にすべきものである。
イ 無効理由2
本件発明5は,当業者が,甲1~6に記載の発明及び周知技術に基づいて容易に
発明をすることができたものであるから,その特許は,特許法29条2項の規定に
違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効にすべきもので
ある。
甲1:実願昭54-18967号(実開昭55-119412号)のマイクロフ
イルム(引用文献)
甲2:実願昭49-11403号(実開昭50-103768号)のマイクロフ
イルム(甲2文献)
甲3:実願昭51-68627号(実開昭52-159020号)のマイクロフ
イルム(甲3文献)
甲4:実願昭63-69963号(実開平1-173209号)のマイクロフイ
ルム
甲5:意匠登録第706476号の類似1公報
甲6:意匠登録第706476号公報
(2) 引用文献に記載された発明(引用発明)の認定
「横架材相互の仕口を取付ける,羽子板ボルトであって,
ボルト穴1を有する羽子板2と,
前記羽子板2に固着した筒状軸受3に挿入し回転自在とした軸ボルト4と,
U形折曲板13にて形成し,U字形の凹所14を係合条孔92 とし,前記軸ボル
ト4に固着した,補強係合具10bと,

一端に頭部5を有し他端に雄ねじ6と,これに螺合するナット7 1を有するボル
ト81と,
を備え,
前記ボルト81を,前記補強係合具10bの前記係合条孔92に摺動自在に係合し
た,
羽子板ボルト。」
(3) 本件発明1と引用発明との対比
(一致点)
「2本の構造材を互いに垂直に接合する接合金具であって,
固定用孔を有し該固定用孔を介して固定材で上記構造材の側面に当接固定される縦
長の平板体と,
該平板体に突出固定され,該平板体の平板部に対して垂直な方向に縦長の係合孔部
を有する係合体とを具備し,
上記係合孔部は,矩形状のプレートを折曲し,折曲により互いに接近した該プレ
ートの両端部を,上記平板体側に固定して形成されており,
該係合孔部は,上記構造材を引き寄せ接合させるのに用いられる引き寄せボルトを,
上記平板部に対して垂直な方向の所望の位置にずらして挿通可能であり,
上記引き寄せボルトを上記係合孔部に挿通し,その引き寄せボルトの両側に位置
する,該係合孔部の相対向する一対の縁部間にまたがるように配したナットを該引
き寄せボルトに螺合させることにより,上記構造材を緊結するようになされており,
上記係合孔部は,相対向する上記一対の縁部間の距離にほぼ等しい直径を有する
引き寄せボルトを,上記平板部に対して垂直な方向に2本並べて挿通可能な内寸を
有している,接合金具。」
(相違点1)
「接合金具」が接合する対象である「2本の構造材」に関して,本件発明1は,
「構造材」の一方が「垂直材」であり,「構造材」の他方が「横架材」であるのに

対して,引用発明は,「2本の構造材」がともに「横架材」である点。
(相違点2)
「(プレートの両端部を,上記平板体側に固定して形成される)係合孔部」に関
して,本件発明1は,「プレートの両端部を該平板体の平板部に固定」して形成さ
れているのに対して,引用発明は,「プレートの両端部を,ボルト穴を有する羽子
板に固着した筒状軸受に挿入し回転自在とした軸ボルトに固定」して形成されてい
る点。
(4) 相違点についての判断
ア 相違点1について
甲3文献に記載の「羽子板ボルト」(甲3発明)は,「垂直材」と「横架材」と
を接合するものである。
そして,引用発明の「羽子板ボルト」と,甲3発明の「羽子板ボルト」とは,同
じ名称の物品であること,「横架材」同士の接合金具(引用発明)と,「垂直材」
と「横架材」との接合金具(甲3発明)とは,ともに,建築構造物の構造材同士を
接合する金具であること,建築構造物においては,筋交い等の補強部材が用いられ
ること(「垂直材」と「横架材」との接合金具のみで水平方向の力に対抗するもの
ではないこと)などを考慮すれば,引用発明と,甲3発明とで,強度上,格段の差
異があるとは考えられない。
そうすると,「羽子板ボルト」が接合する対象を,「横架材」同士とするか,そ
れとも,「垂直材」と「横架材」とするかは,当業者が適宜選択できる設計的事項
にすぎないというべきである。
したがって,「羽子板ボルト」等の「接合金具」を,「垂直材」と「横架材」と
の接合に用いること,すなわち,引用発明において相違点1に係る構成を採用する
ことは,当業者が適宜なし得たことである。
イ 相違点2について
(ア) 原告は,甲2文献に記載された発明(甲2発明)の「羽子板部」「ボ

ルト挿入部」は本件発明の「平板体」「係合体」に相当し,プレートの固定に係わ
る相違点2について,甲2文献には,「羽子板部3の一端部には,ボルト挿入部4
をそのフランジ部5において点溶接して固定している」構成が記載されているから,
引用文献の補強係合具を平板体の平板部に固定すること(以下,「回動不能構成」
ということがある。)は当業者であれば容易になし得るものである旨主張する。
まず,引用文献には,「更に,第2図,に示すように,補強係合具10a,及び
10b,が軸ボルト4,を中心に回動し得る横架材16,面上の扇形面積部分(斜
線部分)19,内のいずれの部分に,横架材16,のボルト穴17 1,を明けられ
ても,補強係合具10a,又は10b,を回動することによって,ボルト81,を
挿入することができる。」との記載があるとおり,係合体(補強係合具)が回動自
在であることによって,(ボルト穴171の位置がずれていても)「ボルト81を挿
入することができる」との利点(技術的意義)を有するものである。
してみると,引用発明において,回動自在に代えて,回動不能の構成を採用する
ことは,引用発明の技術的意義を損なうこととなる。
また,そのような技術的特徴部分に代えて,甲2発明に係る「矩形状のプレート
を折曲し,折曲により互いに接近した該プレートの両端部を該平板体の平板部に固
定して係合孔部を形成する」構成を採用することには,動機付けがあるとはいえな
い。
したがって,引用発明において,相違点2に係る構成を採用することは困難であ
り,かつ,阻害要因があるというべきである。
(イ) 適用の容易性に関して,原告は,引用発明と甲2発明は,構造材の接
合金具であって,引用発明は本件発明1と技術分野,技術課題,解決手段及び効果
が同一であり,甲2発明は本件発明1と技術分野,解決手段及び効果が同一であり,
同一技術分野において技術手段の適用を試みることは,当業者の通常の創作能力の
発揮であって,当業者がその適用を容易に着想し得るものであり,引用発明と甲2
発明とを組み合わせる動機付けがある,と主張する。

しかし,前記(ア)で検討したとおり,引用発明は,係合体(補強係合具)が回動自
在であることによって,(ボルト穴171の位置がずれていても)「ボルト81を挿
入することができる」との技術的意義を有するものである。一方,甲2文献には,
「ボルト挿入穴6の高さD 1と巾D 2 は前記ボルト1の直径Dよりも若干大きくし
てある」との記載はあるものの,「柱に設けたボルトの通し穴とボルト挿入穴6と
の間に多少のずれがあつてもボルト挿入穴に設けた遊びによつてそのずれを調節で
きる」,すなわち,多少のずれを調節する程度のものにすぎないから,課題や効果
が同一とはいえない。
また,仮に課題や効果が同じであったとしても,穴のずれに対する課題解決手段
が,引用発明は「係合体(補強係合具)が回動自在であること」であり,甲2発明
は「ボルト挿入穴6を若干大きくすること」であるから,課題解決手段も同一では
ない。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
ウ 本件発明1が奏する効果について
「係合体(補強係合具)が回動自在である」との構成を有していない「垂直材と
横架材とを互いに垂直に接合する接合金具」に関して,本件発明1が奏する「アン
カーボルト5の配設位置が,柱2の側面2aから遠くなる方向にずれた場合・・・
であっても,柱2を土台3に容易且つ確実に接合することができる。」「引き寄せ
ボルトの配設位置の精度に拘わらず,容易且つ確実に構造材同士を接合することの
できる」との効果は,引用発明,甲2発明及び甲3発明から予測できるものではな
い。
エ まとめ
以上のとおり,本件発明1は,当業者が引用発明,甲2発明及び甲3発明に基づ
いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5) 本件発明2に関する無効理由1及び本件発明5に関する無効理由2につ
いて

本件発明2及び5は,本件発明1の構成を全て含むものであるから,引用発明,
甲2発明及び甲3発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また,甲4~13は,本件発明5に係る「補強用のリブ」に関して提示された文
献であって,上記相違点2に係る構成についての記載はないから,本件発明2及び
5は,引用発明,甲2発明,甲3発明及び甲4~13に記載された事項に基づいて
容易に発明をすることができたものでもない。
第3 原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(相違点2についての判断の誤り)
(1) 審決は,引用発明において,回動自在に代えて,回動不能構成を採用する
ことは,引用発明の技術的意義を損なうとする。
しかし,引用発明は,引用文献の第3図において上下方向の矢印で明確に示され
ているように,係合体(補強係合具10a,10b)を図の上下方向に長く形成す
る構成とすること(上下方向構成)により,ボルト穴の位置が図の「上下方向」に
ずれていてもボルト(ボルト81)を挿入することができるとの技術的意義を有し,
さらに,この構成に加えて,係合体(補強係合具10a,10b)を回動自在の構
成とすることにより,ボルト穴の位置が図の「斜め左右方向」にずれていてもボル
ト(ボルト81)を挿入することができるとの技術的意義をも有しているものであ
る。
このため,引用発明において,回動自在に代えて,回動不能構成を採用した場合,
ボルト穴の位置が図の「斜め左右方向」にずれた場合にはボルト(ボルト81)を
挿入することができなくなるものの,ボルト穴の位置が図の「上下方向」にずれて
いてもボルト(ボルト81)を挿入することができるとの技術的意義が損なわれる
ことにはならない。
したがって,引用発明において,回動自在に代えて,回動不能構成を採用するこ
とは,引用発明の技術的意義を損なう,とする上記審決の判断は誤りである。
(2) また,審決は,係合体が回動自在であることによってボルト穴171の

位置がずれていてもボルト穴81を挿入することができるとの技術的意義を有する
し,甲2発明のボルト挿入穴に設けられた遊びは,多少のずれを調節する程度のも
のにすぎないから,課題や効果が同一とはいえない,とする。しかし,前記(1)のと
おり,引用発明は,係合体が回動自在であることのみならず,上下方向構成とする
ことによっても,ボルト穴171がずれていてもボルト81を挿入することができる
という技術的意義を有し,引用発明も,甲2発明も,ボルト穴の位置がずれていて
もそのずれを調節することができる点で,課題や効果は同一である。
さらに,審決は,仮に課題や効果が同じであったとしても,穴のずれに対する課
題解決手段が,引用発明は「係合体(補強係合具)が回動自在であること」であり,
甲2発明は「ボルト挿入穴6を若干大きくすること」であるから,課題解決手段も
同一ではない,とする。しかし,引用発明は,係合体を回動自在とするのみならず,
係合体を上下方向構成としている。このように,引用発明と甲2発明は,係合体の
ボルト挿入穴の大きさをボルトの直径よりも大きく形成している点で,課題解決手
段も同一である。したがって,上記審決の判断も誤りである。
(3) 引用発明が,補強係合具10bが回転自在であることによって曲げモーメ
ントに耐えることができないという欠点を有しているならば,その欠点を解決する
ために補強係合具を回動不可能に固定することは容易である。ボルト穴171の位
置が引用文献の第3図の上下方向にのみずれている場合は,上下方向構成をとるこ
とによって,ボルト82に曲げ応力は生じないことは明らかであり,補強係合具1
0bを回動不可能に固定しても,ボルト82 に曲げ応力は生じないようにするとい
う課題は達成される。
したがって,引用発明の補強係合具に相当するボルト挿入部4が回動不可能に固
定された甲2発明を参酌すれば,引用発明の羽子板ボルトにおける補強係合具を回
動不可能に固定して本件発明とすることは,当業者であれば容易に想到できるもの
である。
(4) 引き寄せボルトの位置を調整するため,引き寄せボルトを挿通する矩形状

の係合孔部を縦長の構成とし,さらに,当該係合孔部を平板体に固着させる構成は,
本件出願日前に周知の技術であった(甲17,18)。
(5) 審決は,回動自在といった技術的特徴部分に代えて,甲2発明の「矩形状
のプレートを折曲し,折曲により互いに接近した該プレートの両端部を該平板体の
平板部に固定して係合孔部を形成する」構成を採用することには,動機付けがある
とはいえない,引用発明において,相違点2に係る構成を採用することは困難であ
り,かつ,阻害要因があるというべきである,という。
しかし,上記審決の判断には,理由が付されていない。このような理由が付され
ない結論のみの判断は許されるべきではない。
2 取消事由2(本件発明1が奏する効果についての判断の誤り)
審決は,本件発明1が奏する「アンカーボルト5の配設位置が,柱2の側面2a
から遠くなる方向にずれた場合・・・であっても,柱2を土台3に容易且つ確実に
接合することができる。「引き寄せボルトの配設位置の精度に拘わらず,容易且つ

確実に構造材同士を接合することのできる」との効果は,引用文献,甲2文献及び
甲3文献に記載のものから予測できるものではない,とする。
しかし,引用発明は,係合体を回動自在とするのみならず,係合体を上下方向構
成としている。この構成により,引用発明において,ボルト穴の位置がずれていて
もボルトを挿入することができるという効果が奏される。
また,引用発明の係合体を回動不能としても,引用発明は,本件発明1と同様に,
ボルト穴の位置がずれていてもボルトを挿入することができるという効果を奏する
ものであり,さらに,引用発明は,係合体を回動自在とすることによって,より広
い範囲においてボルト穴の位置がずれていてもボルトを挿入することができるよう
にしたものであることから,引用発明は,本件発明1を改良したものと見ることが
できる。すなわち,本件発明1は,ボルト穴の位置がずれていてもボルトを挿入す
ることができるという効果の点で,引用発明をむしろ退化させたものと見ることが
できる。

したがって,本件発明1が奏する「アンカーボルト5の配設位置が,柱2の側面
2aから遠くなる方向にずれた場合・・・であっても,柱2を土台3に容易且つ確
実に接合することができる。「引き寄せボルトの配設位置の精度に拘わらず,容易

且つ確実に構造材同士を接合することのできる」との効果は,引用発明,甲2発明
及び甲3発明から極めて容易に予測できるものである。
3 取消事由3(本件発明2に関する無効理由1及び本件発明5に関する無効理
由2についての判断の誤り)
審決は,本件発明2及び5は,本件発明1の構成を全て含むものであるから,本
件発明1と同様の理由により,引用発明,甲2発明及び甲3発明に基づいて容易に
発明をすることができたものではなく,また,甲4~13文献は,本件発明5に係
る「補強用のリブ」に関して提示された文献であって,上記相違点2にかかる構成
についての記載はないから,本件発明2及び5は,引用発明,甲2発明,甲3発明
及び甲4~13に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたもので
もない,とする。
しかし,この審決の判断は,本件発明1についての誤った判断に基づいてされた
ものであり,誤りである。
第4 被告らの主張
1 取消事由1に対し
(1)ア 原告は,引用発明は,ボルト穴の位置が引用文献の第3図の「上下
方向」や「斜め左右方向」にずれていてもボルト(ボルト8 1 )を挿入すること
ができるとの技術的意義を有している,と主張する。
しかし,引用発明の羽子板ボルトにおける係合体(補強係合具10a,10
b)は,
「羽子板に固着した筒状軸受に挿入し回転自在とした軸ボルト」を固着
させたものであるため,引用発明の技術的意義を,補強係合具を羽子板に対し
て回動自在とする構成から切り離して論じることはできない。
イ また,原告が主張する,上下方向構成に加えて,係合体(補強係合

具10a,10b)を回動自在の構成とするという考え方の順序も ,引用文献
に記載も示唆もされていない考え方であり,後知恵的な発想である。
ウ さらに,原告は,ボルト穴17 1 の位置がずれていてもボルト8 1 を
挿入することができるとの利点(技術的意義)は,係合体(補強係合具10a,
10b)が回動自在であることのみによってもたらされるのではなく,係合体
(補強係合具10a,10b)を上下方向構成とすることによってももたらさ
れているため,引用発明において,回動自在に代えて,回動不能の構成を採用
した場合,ボルト穴の位置が引用文献の第3図の「上下方向」にずれていても
ボルト(ボルト8 1 )を挿入することができるとの技術的意義が損なわれること
にはならない,と主張する。
しかし,引用発明の羽子板ボルトは,補強係合具は,
「回転自在」とした軸ボ
ルトに固着されており,その補強係合具を,羽子板の面に対して垂直な方向に
長く延びた状態に固定する手段を有していない。そのため,引用発明の羽子板
ボルトを,横架材相互の緊結に用いる場合,その補強係合具に,第3図の上下
方向に長い形状の係合孔部を設けたとしても,補強係合具10aを下方に垂れ
下がった状態から回動させなければ,安全側に設けたボルト穴17 1 に挿通した
ボルト8 1 を,補強係合具10a,10bの係合孔部に通すことは不可能である。
このように,引用発明の羽子板ボルトは,横架材相互の仕口を結合するもの
であって,補強係合具が回動自在であることが必須であり,それによって,使
用時に,重力により補強係合具が垂れ下がった状態となっていてもその状態か
ら回動させることで,安全側に設けたボルト穴に挿通したボルト8 1 を補助係合
具の係合孔部に挿通させることができるとともに,そのボルト穴の位置にずれ
が生じた場合であっても,横架材相互の仕口の強固な緊結が可能となるもので
ある。
エ 引用発明の羽子板ボルトにおける補強係合具は,羽子板に対して軸
ボルトを介して回動自在に結合されており,その結合は,軸ボルトと筒状軸受

との連結部分が曲げモーメントには耐えることができない(曲げモーメントは
0となる)ピン結合となっているのに対して,甲2文献の第1図に示された羽
子板ボルトにおけるボルト挿入部4の羽子板部3に対する結合は ,曲げモーメ
ントには耐えることが可能な剛結合となっている。引用発明における,曲げモ
ーメントには耐えることができない結合を,結合部に加わる応力等の考え方が
全く異なる,甲2発明における,曲げモーメントに耐えることが可能な剛結合
に変更すること自体,当業者が適宜なし得るようなことではない。
引用文献の第5図の(b)及び(c)に示されるように,ボルト8 1 を挿通す
る横架材16のボルト挿通孔の位置と,ボルト8 2 を挿通する横架材15のボル
ト挿通孔の位置とが鉛直方向にずれていることによって,横架材相互を羽子板
ボルトで緊結したときに,ボルト8 2 に曲げ応力が生じる。引用発明は,補強係
合具を羽子板に対して回動自在に取り付けることによって,ボルト8 2 に曲げ応
力が生じないようにするものである。引用発明における補強係合具を平板部に
固定して回動不可能とすることは,そのような課題の解決も不可能とするため,
固定することは,あり得ない。
(2) 原告は,引用発明は,係合体が回動自在であることのみならず,係
合体を上下方向構成とすることによっても,ボルト穴17 1 の位置がずれていて
もボルト8 1 を挿入できるという甲2発明と同じ技術的意義を有し,ボルト穴の
位置がずれていてもそのずれを調節できる点で甲2発明と課題や効果は同一で
あり,係合体のボルト挿入穴の大きさをボルトの直径よりも大きく形成してい
る点で甲2発明と課題解決手段が同一であるから,審決の,引用発明は甲2発
明と技術的意義,課題及び効果,並びに課題解決手段が異なるとした判断は誤
りである,と主張する。
しかし,上記(1)ウのとおり,引用発明は,係合体が回動自在であることによ
ってボルト穴17 1 の位置がずれていてもボルト8 1 を挿入できるとの利点を有
する。また,甲2発明は,ボルト挿入穴6の高さD1と巾D2とを共にボルト1の直

径Dよりも若干大きくすることによって,ボルトの通し穴とボルト挿入穴6との間
に多少のずれを調節する程度のものにすぎず,引用発明のように,補助係合具を回
動自在とし,ボルトの通し穴の位置に応じて補助係合具の位置を変えることにより
対応できるような大きなずれに対応可能とするものとは,対応できるボルト穴とボ
ルト挿入穴6とのずれの大きさが大きく異なる。さらに,穴のずれに対する課題解
決手段が,引用発明では係合体が回動自在のものであることであるのに対し,甲2
発明はボルト挿入穴6を若干大きくすることであるから,課題解決手段も同一では
ない。
(3) 原告は,審決が引用発明に相違点2に係る構成を適用する動機付けが
あるとはいえず,かつ,阻害要因があるとした判断について,理由が付されて
いない結論のみの判断は許されるべきではない,と主張する。
しかし,審決は,引用発明は,係合体(補強係合具)が回動自在であること
によって,ボルト穴17 1 の位置がずれていていも,ボルト8 1 を挿通すること
ができるとの利点(技術的意義)を有するものであるから,引用発明において,
回動自在に代えて,回動不能の構成を採用することは,引用発明の技術的意義
を損なうことを理由として上記動機付けがなく,阻害要因があると判断したも
のである。
2 取消事由2に対し
原告は,引用発明の係合体を回動不能としても,引用発明は,本件発明1と同様
に,ボルト穴の位置がずれていてもボルトを挿入することができるという効果を奏
するものであり,さらに,引用発明は,係合体を回動自在とすることによって,よ
り広い範囲においてボルト穴の位置がずれていてもボルトを挿入することができる
ようにしたものであることから,引用発明は,本件発明1を改良したものと見るこ
とができる,と主張する。
しかし,引用発明の羽子板ボルトは,補強係合具が「回転自在」とした軸ボルト
に固着されており,その軸ボルトを回動軸として補強係合具が回動することが必須

である。
また,引用発明の羽子板ボルトを横架材相互の緊結に用いる場合,その補強係
合具に,第3図の上下方向に長い形状の係合孔部を設けたとしても ,補強係合
具10aを下方に垂れ下がった状態から回動させなければ,安全側に設けたボ
ルト穴に挿通したボルト8 1 , を,補強係合具10aの係合孔部に通すことは不
可能であり,使用時に,重力により補強係合具が下方に垂れ下がった状態とな
っていてもその状態から回動させることで,安全側に設けたボルト穴に挿通し
たボルト8 1 を補助係合具の係合孔部に挿通させることができるとともに,その
ボルト穴の位置にずれが生じた場合であっても,横架材相互の仕口の強固な緊
結が可能となるものである。
したがって,
「係合体(補強係合具)が回動自在である」との構成を有してい
ない「垂直材と横架材とを互いに垂直に接合する接合金具」に関して,本件発
明1が奏する「アンカーボルト5の配設位置が,柱2の側面2aから遠くなる方向
にずれた場合…であっても,柱2を土台3に容易且つ確実に接合することができ
る。「引き寄せボルトの配設位置の精度に拘わらず,容易且つ確実に構造材同士を

接合することのできる」との効果は,引用発明,甲2発明及び甲3発明から容易に
予測できるものではない。
3 取消事由3に対し
原告は,審決の判断は,本件発明1についての誤った判断に基づいてされたもの
であり,誤りであることは明らかである,と主張する。
しかし,本件発明1は,引用発明,甲2発明及び甲3発明に基づいて当業者が容
易になし得たものではなく,また,本件発明2及び5は,いずれも本件発明1の構
成を全て含むものであるから,本件発明1と同様の理由により,当業者が引用発明,
甲2発明及び甲3発明に基づいて容易になし得たものではない。
第5 当裁判所の判断
1 本件発明について

(1) 本件明細書(甲16)には,以下の記載がある。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,接合金具に関し,詳しくは,引
き寄せボルトの配設位置の精度に拘わらず,容易且つ確実に構造材同士を接合する
ことのできる接合金具に関する。
【0002】
【従来の技術】近年,都市部等において木造三階建等の土地効率を高
めた住宅が注目されている。このような建物においては,特に一階の柱に加わる引
き抜き力が大きくなるため,図6に示されるように,土台等の横架材20と該横架
材20上に立設される柱等の垂直材30の柱脚部とは,ホールダウン金物10と呼
ばれる金物を利用して強固に接合される。上記垂直材30は,その側面に固定され
た上記ホールダウン金物10と上記基礎4に埋設されたアンカーボルト5とを緊結
することにより横架材20上に接合固定されている。
【0003】また,最近では,平屋建や二階建の住宅においても,より耐震性を
向上させるために,このようなホールダウン金物が構造材同士の接合部に用いられ
ることが多くなっている。尚,上記横架材20は,基礎4に埋設されたアンカーボ
ルト50により該基礎4上に固定されている。また,胴差梁をはさんで上下に柱が
くる場合の接合部にも,このようなホールダウン金物が多用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし,上述したホールダウン金物
10を用いて横架材20上に垂直材30を接合するためには,該アンカーボルト5
の正確な位置出しが必要であり,アンカーボルト5の埋設位置にずれがある場合に
は,該接合部にホールダウン金物10の取付ができなかったり,取付は可能であっ
ても必要な強度を確保できないおそれがある。また,胴差梁の上下の柱の径に差が
ある場合等では,ボルト位置の調整が困難であった。従って,このような場合には,
十分な接合強度を確保するために,他の接合金物を利用して該接合部を補強する等
の対策を講ずる必要があった。
【0005】従って,本発明の目的は,引き寄せボルトの配設位置の精度に拘わ
らず,容易且つ確実に構造材同士を接合することのできる接合金具を提供すること

にある。
【0008】
【発明の実施の形態】以下,本発明の接合金具の好ましい実施形態に
ついて図面を参照しながら説明する。図1は,本実施形態の接合金具を示す斜視図
であり,図2は,図1の接合金具の使用状態を示す平面図で,図2(a)は,アン
カーボルトが柱側面に対し垂直方向にずれている場合,図2(b)は,アンカーボ
ルトが柱側面に沿う方向にずれている場合の接合を示す図である。図3は,図1の
接合金具の使用状態を示す正面図である(固定材の図示は省略してある。。

【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【0009】本実施形態の接合金具1は,図1~4に示されるように,第1構造
材2と第2構造材3とを互いに垂直に接合する接合金具であって,固定用孔11a
を有し,該固定用孔11aを介してボルト等の固定材12で上記第1構造材2の側
面2aに当接固定される縦長の平板体11と,該平板体11の平板部11bに突出
固定され,該平板部11bに対して垂直方向に縦長の係合孔部13aを有し,上記
第1構造材2に上記第2構造材3を引き寄せ接合させるのに用いられる引き寄せボ
ルト5の一端部が挿通係合する係合体13とを具備してなる。尚,図2及び図3に
おける第1構造材は柱2,第2構造材は土台3であり,該柱2は,その下端面を該
土台3の上面に当接させて該土台3上に接合されている。
【0010】以下,本実施形態の接合金具1について,より詳細に説明する。
本実施形態の接合金具1は,平板体11と係合体13とを主体として構成されてい
る。上記平板体11は,所定の厚みを有する縦長矩形状の金属製プレートからなり,
該平板体11には,第1構造材2に当接固定するための固定用孔11aが複数長手
方向に一列に並ぶように穿設されている。
各固定用孔11aは,それぞれ上記平板体11の幅方向に横長の長孔であり,より

詳しくは,各固定用孔11aの上縁部及び下縁部は,互いに平行な直線状となって
おり,各固定用孔11aの左右の縁部は,それぞれ円弧形状となっている。
【0011】上記平板体11は,突出固定部(該平板体11における上記係合体
13が突出するように固定される部分)に,該平板体11の長手方向に沿う補強用
のリブ14を有する。本接合金具における該補強用のリブ14は,該平板体11の
下部中央に打出し成形により形成されている。尚,上記リブ14の下端は,上記平
板体11の下端よりも上方に位置させてある。
上記係合体13は,上記平板体11と共に,上記平板体11の長手方向に延びる筒
状体を形成しており,上記平板体11の平面状部分である平板部11bに突出する
ように固定されている。より具体的には,係合体13は,断面U字型に折曲された
矩形状のプレートからなり,該プレートの両端部が該平板体11の前面平面状の平
板部11bに溶接等により固定されている。
【0012】以下に,本実施形態の接合金具1の使用方法の一例として,該接合
金具1を用いて上記第1構造材としての柱2と上記第2構造材としての土台3とを
接合する場合について説明する。
【0013】先ず,図3に示すように,基礎4にアンカーボルト5を埋設固定し,
該アンカーボルト5の配設位置に対応させて土台3にアンカーボルト5用の貫通孔
を穿設する。そして,土台3を該基礎4上に載置し,該土台3上に,柱2や梁を組
み上げていく。
そして,柱2の側面2aにボルト等の固定材12を用いて本接合金具1を固定する
と共に,該接合金具1における上記係合体13に上記アンカーボルト5を挿通させ,
該アンカーボルト5の上端雄ねじ部にナット6を螺合させて締め付ける。
このとき,柱2と該柱2の近傍に突出するアンカーボルト5との間には,予め設定
された所定幅の隙間が形成されるのが通常であるが,アンカーボルト5の打設位置
に多少のずれが生じ,上記隙間の幅が設定値の前後にずれることがある。
【0014】本接合金具1においては,このようにアンカーボルト5と柱2との

間の距離が設定値から外れている場合であっても,上記係合孔部13aが上記平板
体11の平板部11bに対して垂直方向に縦長の形態を有するため,アンカーボル
トの貫通する位置が前後にずれるのみで,該接合金具1の取付には支障がない。そ
して,接合金具1とアンカーボルト5との緊結を支障なく行うことができ,柱2と
土台3との接合部に十分な接合強度を確保することができる。図2(a)は,アン
カーボルト5の配設位置が,柱2の側面2aから遠くなる方向にずれた場合を示し
ているが,このような場合であっても柱2を土台3に容易且つ確実に接合すること
ができ,同様に,アンカーボルト5の配設位置が,柱2の側面2aに近い方向(例
えば,図2(a) 中のPの位置)にずれた場合であっても,柱2を土台3に容易且つ
確実に接合することができる。
【0015】本接合金具1は,直径16mmのアンカーボルト5に対応するよう
になっており,上記係合孔部13aの長手方向の内寸は,該直径16mmのアンカ
ーボルト5の配設位置のずれが,所定位置の前後にプラス・マイナス20mmまで
対処できるような寸法とされている。尚,図2(a)中,7で示されるのは,円錐
台形状の固定用楔材であり,該固定用楔材を係合孔部13a内部の隙間に打ち込む
ことにより,該係合孔部13aに挿通されたアンカーボルト5や該アンカーボルト
に螺合されるナット6のぐらつきや緩み等を防止することができる。
【0019】図4は,上記接合金具1の他の使用態様を示すものであり,第2構
造材としての胴差3’上に,一対の該接合金具1,1を用いて第1構造材としての
上階の柱2’を接合した例を示すものである。
即ち,上階の柱2’の側面に,一方の上記接合金具1が固定され,下階の柱2”に,
他方の接合金具1が固定され,上記胴差3’を貫通させて,一対の該接合金具1,
1の係合体13,13間に直線状の引き寄せボルト5’が掛け渡され,該引き寄せ
ボルト5’の両端部が上記係合体13,13に挿通係合されることによって,上記
胴差3’上に上階の柱2’が接合されている。
【0020】上記接合金具1は,このように管柱2’,2”同士の緊結に使用する

ことができ,この場合,上階の柱2’と下階の柱2”とが異なる材径であっても良
い。即ち,本接合金具1によれば,係合孔部13aが上記平板体11の平板部11
bに対して垂直方向に縦長の形態を有するため,図4に示すように上階の柱2’と
下階の柱2”とが異なる材径である場合にも両柱2’,2”間を確実に緊結すること
ができ,上階の柱2’の引き抜けを防止する。
また,本接合金具1は,材径が異なる場合の他,上階の柱2’と下階の柱2”とが
材径が同じで軸芯がずれて配設されている場合にも同様に使用することができる。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば,引き寄せボルトの配設位置の精度に
拘わらず,容易且つ確実に構造材同士を接合することのできる接合金具を提供する
ことができる。
(2) 以上から,本件発明の概要は,以下のとおりと認められる。
近年,都市部等で注目されている木造三階建等の土地効率を高めた住宅では,特
に一階の柱に加わる引き抜き力が大きくなるため,土台等の横架材20の上に立設
される柱等の垂直材30の柱脚部は,垂直材30の側面に固定されたホールダウン
金物10と基礎4に埋設されたアンカーボルト5とを緊結することにより,基礎4
に埋設されたアンカーボルト50により基礎4上に固定された横架材20上に接合
固定される(【0002】【0003】
, ,図6)。最近では,平屋建や二階建の住宅で
も,耐震性を向上させるために,ホールダウン金物を構造材同士の接合部に用いる
ことが多くなっている(【0003】。また,胴差梁をはさんで上下に柱がくる場合

の接合部にも,ホールダウン金物が多用されている(【0003】。

従来,ホールダウン金物10を用いて横架材20上に垂直材30を接合するには,
アンカーボルト5の正確な位置出しが必要であり,アンカーボルト5の埋設位置が
ずれると,接合部にホールダウン金物を取り付けることができなかったり,取り付
けは可能でも必要な強度と確保できなかったりするおそれがあり,また,胴差梁の
上下の柱の径に差があると,ボルト位置の調整が困難であり,したがって,十分な
接合強度を確保するために他の接合金具を利用して接合部を補強する等の対策を講

ずる必要があった(【0004】。

本件発明の目的は,引き寄せボルトの配設位置の精度にかかわらず,容易かつ確
実に構造材同士を接合することのできる接合金具を提供することにある(【000
5】。

本件発明に係る接合金具は,係合体の係合孔部が平板体の平板部に対して垂直方
向に縦長であるため,引き寄せボルトと垂直材との間の距離が設定値から外れてい
る場合でも,引き寄せボルトが係合孔部を貫通する位置が前後にずれるだけで,接
合金具の取り付けには支障がなく,また,横架材である胴差上に一対の本件発明に
係る接合金具を用いて垂直材として上階と下階の柱を接合するときに,上階の柱と
下階の柱とが異なる材径である場合や軸穴がずれて配設されている場合でも,引き
寄せボルトが係合孔部を貫通する位置が前後にずれるだけで,接合金具の取り付け
には支障がなく,接合金具と引き寄せボルトとの緊結を支障なく行うことができる
ので,垂直材と横架材との接合部に十分な接合強度を確保することができる 【00

14】【0019】【0020】。

本件発明は,引き寄せボルトの配設位置の精度にかかわらず,容易かつ確実に構
造材同士を接合することのできる接合金具を提供することができるという効果を奏
する(【0024】。

2 引用発明について
(1) 引用文献には,以下の記載がある(甲1)。
①「本考案は,施工簡便でかつ強力な抵抗力を付与した羽子板ボルトに関する。」
(2頁2~3行)
②「従来,在来工法や木質プレハブ建築などにおいては,横架材相互の仕口の取
付けは,現場において羽子板ボルトをもって相互に緊結しなければならないが,従
来用いられている手法は,第4図,のように,あらかじめ横架材15,16,にボ
ルト穴171,172,を明けておくのであるが,第5図,(a)図,のように,ボ
ルト81,が極端に折曲されて施工され,ために,本来引張力に抵抗すべきボルト

81,が,その本来の目的を果しえない結果となっている。
また,第5図,(b)(c)
, ,図のように,現場に放置した端材をもって,羽子板
2,と横架材15,との間に当て木20,を介在せしめて,ボルト82,を締めつ
けているが,本来,剪断力に対して抵抗すべきボルト82,であるにかかわらず,
曲げ応力を生ぜしめ,ために抵抗力を零に等しくし,横架材相互の仕口強度を低下
させている現状である。
これらは,すべて横架材に対するボルト穴明け施工の「ずさん」によるものでは
あるが,量産プレハブ建築はもちろんのこと,在来工法といえども,ボルトの穴明
けはその数量からみても,あらかじめ横架材に穴明けしておくことが得策であり,
そのためには,羽子板ボルト取付けについて安全側に穴明けせざるを得ない。その
ために,従来の羽子板ボルトが有効にその機能を果すよう正確な位置に穴明けする
ことを要求する側にムリがあることに起因するとはいえ,何らかの対策を必要とす
るものであった。(2頁4行~3頁12行)

③ 第5図


④「本考案は,従来の羽子板ボルトの以上の欠点を除去し,ボルト穴の位置が安

全側に多少ずれても,各ボルトが引張抵抗,剪断抵抗の本来の目的に合致するよう
にした羽子板ボルトを提供するものである。(3頁13~17行)

⑤「本考案の羽子板ボルトを,図によって詳細に説明すれば,第1図,において,
ボルト穴1,を有する羽子板2,に固着した筒状軸受3,に挿入し回転自在とした
軸ボルト4,を,一端に頭部5,を有し他端に雄ねじ6,と,これに螺合するナッ
ト71,を有するボルト81,を摺動自在に係合すべき係合条孔9,を形成した補強
係合具10,に固着させたことを特徴とする羽子板ボルトである。
・・・また,その
他の実施例としては,第3図に示すように,補強係合具10,をU形折曲板13,
に形成し,U字形の凹所14,を係合条孔92,とする補強係合具10b,となし
た羽子板ボルトである。(3頁18行~4頁15行)

⑥ 第3図


⑦「本考案に成る羽子板ボルトの横架材相互仕口ヘの取付けは,第2図,のよう
に,ボルト81,を係合していない羽子板2,を横架材15,にボルト8 2,をもっ
て取付け,横架材16,に明けられたボルト穴171,に横架材16,の外側から
ボルト81,を座金板181,と共に通しながら,補強係合具10a,又は10b,
を軸ボルト4,を中心に回動せしめながら,ボルト8 1,を係合条孔91,又は92,
に挿入し,座金板18 2,を通し,ナット71,をもってボルト81,を十分に締め

付け緊結するのである。(4頁16行~5頁6行)

⑧「更に,第2図,に示すように,補強係合具10a,及び10b,が軸ボルト
4,を中心に回転し得る横架材16,面上の扇形面積部分(斜線部分)19,内の
いずれの部分に,横架材16,のボルト穴171,を明けられても,補強係合具1
0a,又は10b,を回動することによって,ボルト81,を挿入することができ
る利点を有する。(5頁12~18行)

⑨ 第2図


⑩「更に加えて,本考案に成る羽子板ボルトが,最大の効果を発揮する点は,引
張抵抗を目的とするボルト81,には引張応力を,剪断抵抗を負担すべきボルト8 2,
には剪断応力を完全に無理なく伝達し得る点にあり,かくして,木造建物の横架材
相互の仕口を強固にし,建築物全体の構造耐力を強固に向上せしめる効果を有する
ものである。(5頁19行~6頁6行)

(2) 以上から,引用発明の概要は,以下のとおりと認められる。
引用発明は,施工が簡便で強力な抵抗力を付与した羽子板ボルトに関する(①)。
従来,在来工法や木質プレハブ建築などにおいて,横架材相互の仕口の取り付けは,
あらかじめ横架材にボルト穴を明けた上で,現場において羽子板ボルトをもって相
互に緊結しなければならないが,従来の羽子板ボルトが有効にその機能を果たすよ
う正確な位置に穴を明けることは無理であり,ボルトが極端に折曲されて施工され
てボルトが引張力に抵抗できない,羽子板と横架材との間に当て木を介在させて横

架材相互の仕口強度を低下させる,という問題点があった(②③)。
引用発明は,従来の羽子板ボルトの上記欠点を除去し,ボルト穴の位置が安全側
に多少ずれても,各ボルトが引張抵抗,剪断抵抗の本来の目的に合致するようにし
た羽子板ボルトを提供するものである(④)。具体的には,横架材相互の仕口を取付
ける,羽子板ボルトであって,ボルト穴1を有する羽子板2と,前記羽子板2に固
着した筒状軸受3に挿入し回転自在とした軸ボルト4と,U形折曲板13にて形成
し,U字形の凹所14を係合条孔92とし,前記軸ボルト4に固着した,補強係合
具10bと,一端に頭部5を有し他端に雄ねじ6と,これに螺合するナット71を
有するボルト81とを備え,前記ボルト81を,前記補強係合具10bの前記係合条
孔92に摺動自在に係合した,羽子板ボルトである(⑤~⑦)。
引用発明により,補強係合具10bが軸ボルト4を中心に回動し得る横架材16
面上の扇形面積部分19内のいずれの部分に,横架材16のボルト穴171を明け
られても,補強係合具10bを回動することによって,ボルト81 を挿入すること
ができ,引張抵抗を目的とするボルト81には引張応力を,剪断抵抗を負担すべき
ボルト82には剪断応力を完全に無理なく伝達することができ,木造建物の横架材
相互の仕口を強固にし,建築物全体の構造耐力を強固に向上させるという効果を有
する(⑧~⑩)。
(3) したがって,引用発明は,前記第2,3(2)のとおり認定される。
(4) 本件発明と引用発明とを対比すると,一致点及び相違点は,上記第2,3,
(3)のとおりと認められる。
3 甲2発明について
(1) 甲2文献には,以下の記載がある。
①「実用新案登録請求の範囲
羽子板片の一端部にボルトが嵌合しうる大きさのボルト挿入部を設け,平板部に
任意数の孔を設けて羽子板部とし,前記ボルト挿入部にボルトを挿入し,ボルトの
先端にナットを螺合してなる羽子板ボルト。(1頁4~9行)


②「羽子板部3の一端部には,ボルト挿入部4をそのフランジ部5において点溶
接して固定してある。このボルト挿入部4は断面がほぼかまぼこ型をしており,そ
の中空部はボルト挿入穴6となっている。そしてこのボルト挿入穴6の高さD1と
巾D2は前記ボルト1の直径Dよりも若干大きくしてある。 (2頁18行~3頁4

行)
③「羽子板部3に設けたボルト挿入穴6をボルトの直径Dより大きくしておけば,
柱に設けたボルト通し穴とボルト挿入穴6との間に多少のずれがあってもボルト挿
入穴6に設けた遊びによってそのずれを調節できる。(5頁2~6行)

④ 第1図


(2) 以上から,甲2文献には以下の甲2発明が記載されていると認められる。
「羽子板ボルト」に関して,
「矩形状のプレートを折曲し,折曲により互いに接近
した該プレートの両端部(フランジ部5)を,平板体の平板部(羽子板部3)に固
定して係合孔部(ボルト挿入穴6)を形成する」
4 取消事由1(相違点2についての判断の誤り)について
(1) 相違点2についての判断
引用発明及び甲2発明は,共に,建築の際に用いられる羽子板ボルトに関するも
のであるから,その技術分野を共通にし,横架材等を相互に緊結するという機能も
共通している。

しかし,引用発明に回動不能構成を採用することには,引用発明の技術的意義を
損なうという阻害事由がある。
引用発明は,前記2(2)のとおり,従来の羽子板ボルトが有する,ボルト穴の位置
がずれた場合に羽子板ボルトを適切に使用することができないという課題を解決す
るために,ボルト81が摺動自在に係合する係合条孔92を有する補強係合部10b
を,軸ボルト4を中心として回動可能にするという手段を採用して,補強係合具1
0bが軸ボルト4を中心に回動し得る横架材16面上の扇形面積部分19内のいず
れの部分にボルト穴171が明けられても,補強係合具10bの係合条孔92にボル
ト81を挿入することができるようにしたものである。引用発明に相違点2に係る
構成を採用し,引用発明の補強係合具10bを,軸ボルト4を中心として回動可能
なものから回動不能なものに変更すると,補強係合具10bの係合条孔92にボル
ト81を挿入することができるのは,ボルト穴17 1が係合条孔92に沿った位置に
明けられた場合に限定される。すなわち,引用発明は,横架材16面上の扇形面積
部分19内のいずれの部分にボルト穴171 が明けられても,補強係合具10bの
係合条孔92 にボルト8 1を挿入することができるところに技術的意義があるにも
かかわらず,回動不能構成を備えるようにすると,係合条孔92に沿った位置以外
の横架材16面上の扇形面積部分19内に明けられたボルト穴171にはボルト8
1 を挿入することができなくなり,上記技術的意義が大きく損なわれることとなる。
そして,引用発明の技術的意義を損なってまで,引用発明の補強係合具10bを
回動不能なものに変更し,係合条孔92に沿った位置にボルト穴171を明けない限
りボルト81を挿入することができないようにするべき理由は,本件の証拠上,認
めることができない。
そうすると,引用発明の補強係合具10bを回動不能なものに変更することには,
阻害要因があるというべきである。したがって,引用発明が相違点2に係る本件発
明1の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得ることであるとい
うことはできない。

そして,甲3文献に記載された事項は,
「垂直材」
(柱)と「横架材」
(土台梁)と
を接合する「羽子板ボルト」であって,上記阻害事由があるという判断に影響する
ものではないから,引用発明に相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは,
当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
したがって,本件発明1は,引用発明,甲2発明及び甲3文献に記載された事項
に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできな
い。
(2) 原告の主張について
ア 原告は,引用発明に回動不能構成を採用しても,ボルト穴が引用文献の
第3図の上下方向にずれていてもボルトを挿入することができるという技術的意義
は損なわれないから,回動不能構成を採用することは,引用発明の技術的意義を損
なうことにはならない,と主張する。
しかし,前記2(2)のとおり,引用発明の技術的意義は,補強係合具10bが軸ボ
ルト4を中心に回動し得る横架材16面上の扇形面積部分19内のいずれの部分に
ボルト穴171が明けられても,補強係合具10bの係合条孔9 2にボルト81を挿
入することができることにあるから,ボルトを挿入することができる位置が大きく
減少し,係合条孔92に沿った位置のみとなることは,引用発明の技術的意義を大
きく損なうというべきである。
したがって,原告の主張には,理由がない。
イ また,原告は,引用発明と甲2発明とは,技術的意義,課題及び効果並
びに課題解決手段が共通するから,引用発明に甲2発明を組み合わせ,回動不能構
成を採用することは容易想到である,と主張する。
しかし,引用発明と甲2発明の,技術的意義,課題及び効果並びに課題解決手段
に共通するところがあっても,上記(1)のとおり,引用発明に甲2発明を組み合わせ,
回動不能構成を採用することによって,引用発明の技術的意義が大きく損なわれる
こととなるから,引用発明の補強係合具10bを回動不能なものに変更することに

は,阻害要因があるというべきであり,引用発明が相違点2に係る本件発明1の構
成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得ることであるということは
できない。
したがって,原告の主張には,理由がない。
ウ 原告は,引用発明が補強係合具10bが回転自在であることによって曲
げモーメントに耐えることができないという欠点を有しているならば,その欠点を
解決するために補強係合具を回動不能に固定することは容易である,と主張する。
しかし,引用発明が,補強係合具10bが回転自在であることによって曲げモー
メントに耐えることができない欠点を有していることは,引用文献に記載も示唆も
されていないし,当業者にとって技術常識であると認めるに足りる証拠もない。ま
た,引用発明が上記曲げモーメントに耐えることができないという欠点を有してい
たとしても,引用発明に甲2発明を組み合わせることに阻害事由があることに変わ
りはない。
したがって,原告の主張には,理由がない。
エ 原告は,引き寄せボルトの位置を調整するため,引き寄せボルトを挿通
する矩形状の係合孔部を縦長の構成とし,さらに,当該係合孔部を平板体に固着さ
せる構成は,本件出願日前に周知技術であった,と主張する。
しかし,原告主張の周知技術があったとしても,引用発明の補強係合具10bを
回動不能なものに変更すると引用発明の技術的意義が大きく損なわれることに変わ
りはなく,阻害事由があるという判断に影響するものではない。
したがって,原告の主張には,理由がない。
オ 原告は,審決が引用発明に相違点2に係る本件発明1の構成を採用する動
機付けがなく,阻害要因があるというべきであると判断した理由が付されていない,
と主張する。
しかし,前記第2,3(4)イ(ア)のとおり,審決は,引用発明に相違点2に係る構
成を採用すると引用発明の技術的意義を損なうこととなる,という理由で,引用発

明に相違点2に係る本件発明1の構成を採用する動機付けがなく,かつ,阻害要因
があるというべきであると判断したものであるから,審決に理由が付されていない
ということはできない。
したがって,原告の主張には,理由がない。
(3) 小括
以上のとおり,取消事由1には,理由がない。
5 取消事由2(本件発明1が奏する効果についての判断の誤り)
原告は,審決が,本件発明1が奏する,アンカーボルト5の配設位置が,柱2の
側面2aから遠くなる方向にずれた場合であっても,柱2を土台3に容易かつ確実
に接合することができ,引き寄せボルトの配設位置の精度にかかわらず,容易かつ
確実に構造材同士を接合できるという効果は,引用発明,甲2発明及び甲3発明か
ら予測できるものではない,と判断したのは誤りであるから,審決は取り消される
べきである,と主張する。
しかし,本件発明1の上記効果が,引用発明,甲2発明及び甲3発明から予測で
きるものであるとしても,引用発明に相違点2に係る構成を採用すると引用発明の
技術的意義が大きく損なわれることに変わりはなく,阻害事由があるから,引用発
明に相違点2に係る構成を採用して本件発明1とすることが容易想到ではないとい
う前記4の判断に影響するものではない。
したがって,取消事由2には,理由がない。
6 取消事由3(本件発明2に関する無効理由1及び本件発明5に関する無効理
由2についての判断の誤り)について
(1) 本件発明2に関する無効理由1について
本件発明2は,本件発明1の構成を全て含むから,少なくとも相違点1及び2に
おいて引用発明と相違する。そして,前記4のとおり,引用発明に相違点2に係る
本件発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ることであるとはい
えない。

したがって,本件発明2は,引用発明,甲2発明及び甲3文献に記載された事項
に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできな
い。
(2) 本件発明5に関する無効理由2について
本件発明5は,本件発明1の構成を全て含むから,少なくとも相違点1及び2に
おいて引用発明と相違する。そして,前記4のとおり,引用発明が相違点2に係る
本件発明1の構成を備えるようにすることは,阻害事由があり,甲3文献に記載さ
れた事項,甲4~13に記載された本件発明5に係る「補強用のリブ」に関する事
項(甲4~13) 上記阻害事由があるという判断に影響するものではないから,
は,
引用発明に相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想
到し得ることであるとはいえない。
したがって,本件発明5も,甲1発明,甲2発明及び甲3~14文献に記載され
た事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということは
できない。
(3) 小括
以上のとおり,取消事由3には,理由がない。
第6 結論
よって,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のと
おり判決する。

知的財産高等裁判所第2部


裁判長裁判官
森 義 之


裁判官
片 岡 早 苗


裁判官
古 庄 研

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