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平成28(行ケ)10252審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成29年6月28日
事件種別 民事
当事者 被告
原告
法令 商標権
キーワード 審決17回
無効13回
刊行物2回
無効審判1回
商標権1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,次の登録商標(以下「本件商標」といい,その商標登録を「本件 商標登録」という。)の商標権者である(甲1)。 ア 登録番号 第5525468号 イ 登録日 平成24年9月28日 ウ 登録商標(標準文字) AKA エ 指定役務 第44類「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,あん摩・ マッサージ及び指圧,整体,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復, はり」(以下「本件指定役務」という。) オ 出願日 平成23年12月1日

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判決文

平成29年6月28日判決言渡
平成28年(行ケ)第10252号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成29年4月17日
判 決

原 告 X
訴訟代理人弁理士 戸 島 省 四 郎

被 告 Y
訴訟代理人弁理士 古 関 宏
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2015-890026号事件について平成28年10月25
日にした審決のうち,登録第5525468号の指定役務「健康診断,歯科医
業,調剤,あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロプラクティック,きゅ
う,柔道整復,はり」に係る部分を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被告は,次の登録商標(以下「本件商標」といい,その商標登録を「本件
商標登録」という。)の商標権者である(甲1)。
ア 登録番号
第5525468号
イ 登録日
平成24年9月28日
ウ 登録商標(標準文字)
AKA
エ 指定役務
第44類「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,あん摩・
マッサージ及び指圧,整体,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,
はり」(以下「本件指定役務」という。)
オ 出願日
平成23年12月1日
(2) 原告は,平成27年4月3日,本件商標を無効とすることについて,審判
請求をした(甲38,39)。
(3) 特許庁は,これを無効2015-890026号事件として審理した上,
平成28年10月25日,「登録第5525468号の指定役務中,第44
類「医業,医療情報の提供」についての登録を無効とする。その余の指定役
務についての審判請求は成り立たない。」との審決(以下「本件審決」とい
う。)をし,その謄本は同年11月4日原告に送達された。
(4) 原告は,平成28年11月28日,本件審決のうち,請求不成立とされた
部分を不服として,その取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 審決の理由
本件審決の理由の要旨は,次のとおりである。
(1) 本件商標の登録査定時において,「AKA」の文字は,「関節運動学的ア
プローチ(arthrokinematic approach)」の略であって,関節の機能の治療
を行う場合がある整形外科等の役務との関係においては,「関節運動学を基
礎にして開発された治療法,治療技術」を表すものとして理解,認識されて
いたといえる。
(2) 本件商標は,「AKA」の文字を標準文字で表して成るところ,該文字は,
上記のとおり,本件商標の登録査定時において,
「関節運動学的アプローチ」
を表す「arthrokinematic approach」の略であって,その指定役務中,第4
4類「医業,医療情報の提供」との関係においては,「関節運動学を基礎に
して開発された治療法,治療技術」を表すものと認識されていたにすぎない
ものであるから,上記指定役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章
のみから成る商標と認められる。したがって,本件商標は,商標法(以下「法」
という。)3条1項3号に該当し,上記以外の治療法による「医業,医療情
報の提供」について使用をするときは,役務の質について誤認を生じさせる
おそれがあるから,法4条1項16号に該当する。
(3) しかしながら,請求人(原告)が提出した証拠等からは,「AKA」の文
字は,その指定役務中,第44類「健康診断,歯科医業,調剤,あん摩・マ
ッサージ及び指圧,整体,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり」
(以下,これらの指定役務を「その余の指定役務」という。)との関係にお
いて,その役務の普通名称,質等を表すものと認識されるとすべき事情は見
当たらず,該文字をその余の指定役務について使用をしても役務の普通名称
及び質等を表すものということができないから,本件商標は,その余の指定
役務について,法3条1項1号,3号,6号,4条1項16号に該当しない。
第3 原告が主張する取消事由
本件審決は,「AKA」の文字(本件商標)は,その余の指定役務との関係
において,その役務の普通名称,質等を表すものと認識されるとすべき事情は
見当たらないと認定したが,次のとおり,その認定には誤りがある。
したがって,本件審決のうち,当該誤った認定に基づく部分(その余の指定
役務に関する部分)は取り消されるべきである。
1 理由a
本件指定役務中,「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤」は,
特許庁の「類似商品・役務審査基準」(国際分類第11-2017版対応)に
よれば,「42V02」の同一類似群コードに属するところ,類似群は,役務
の類否を判定する一般的基準である役務の提供の手段,目的又は場所の同一性,
需要者の範囲の同一性,業種又は事業者の同一性,規制する法律の関連性,役
務の提供の用に供する物品の関連性等を総合的に考慮し,各役務と類似する役
務の類似群として作成されたものであるから,同一類似群に属する役務の関連
性は相互に高いといえる。
そして,「AKA」は,本件審決が認定するとおり,「関節運動学的アプロ
ーチ(arthrokinematic approach)」の略であり,治療法を意味する「医業」
の指定役務における普通名称であるから,同一類似群コードの他の役務におい
ても,近接した関連性の高い類似の役務において普通名称と認識される。
そうすると,同一類似群コードの他の役務の関連事業者及び需要者において
は,「AKA」治療法がよく知られていると認定できるので,これらの同一類
似群コードの他の指定役務にとって,本件商標は,「医業」での「AKA」治
療法の関連のもの(同治療法を利用,使用又は併用したもの)としての質表示
と理解される。逆に,同一類似群の他の指定役務で全く「AKA」治療法と関
連性がない指定役務では,医業の「AKA」治療法に関係したものとの品質誤
認を生じる。
したがって,同一類似群コード中の一つの役務で普通名称となっている「A
KA」(本件商標)は,同一類似群コードの他の類似の役務にとって質表示と
なるもので,法3条1項3号に該当し,しかも,医業での治療法を示す英文字
「AKA」のみであり,自他役務識別力のある何らの文字の付加,記号・図形
等の要素もないので,商標としての識別力がなく,同項6号にも該当する。ま
た,「AKA」治療法と全く関連性のない同一類似群の他の指定役務では品質
誤認が生じ,法4条1項16号に該当する。
よって,本件指定役務中,「医業,医療情報の提供」と同一類似群に属する
指定役務である「健康診断,歯科医業,調剤」との関係では,本件商標登録は
無効というべきである。
2 理由b
次に,本件指定役務中,「あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロプラ
クティック,きゅう,柔道整復,はり」の類似群コードは「42V01」であ
り,「医業」とは別の類似群コードに属する。
しかしながら,「42V01」の指定役務は,人体の関節,骨,その周辺の
筋肉,神経への手技又はきゅう,はりを用いて作用させて,関節部位の痛みの
治療,腰痛治療,歯痛・歯のかみ合わせの改善,骨折治癒後の痛みの改善,ス
ポーツによる痛みの改善等の人体の痛みの治療や関節機能の異常を改善するこ
とを目的とするリハビリテーション及び痛みの原因を診断することであり, A

KA」治療法の目的・治療方法とかなりの部分で重なるもので,近接の手技に
よるリハビリテーション治療法である(甲54)。さらに,指圧,整体,カイ
ロプラクティック,きゅう,はり,電気刺激,漢方薬等のリハビリテーション・
治療分野では,「AKA」治療法が有効な手技治療法として知られている(甲
53)。「AKA」技術を解説した審判甲・乙号証の技術からも,これら指圧
等の手技への応用は容易に想到できる。
してみると,指定役務「あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロプラク
ティック,きゅう,柔道整復,はり」の事業者及び需要者において,「AKA」
治療法は近い手技で,目的も同様なもので効果があると知られており,これら
の指定役務において本件商標を使用すると,「AKA」を用いた又はこれと関
連した治療法であると認識するものであるから,法3条1項3号に該当する。
また,本件商標は,英文字「AKA」のみであり,自他役務識別力のある何
らの文字,記号・図形等の要素もないので,商標としての識別力がなく,同項
6号にも該当する。
そして,「AKA」治療法と関係のない指定役務及び同治療法を使用しない
指定役務では,本件商標は,「AKA」治療法に関連した治療法であるとの品
質誤認を生起し,法4条1項16号にも該当する。
3 理由c
本件商標を,「あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロプラクティック,
きゅう,柔道整復,はり」の指定役務に対して,造語として案出した新しいブ
ランドとすることは,甚だ不自然であるとともに,被告が三十数年研究開発を
行い,提案・提示する医業の「関節運動学的アプローチによる治療法」の事実
とは矛盾するものである。したがって,これらの指定役務との関係で,「関節
運動学的アプローチ」でない「AKA」を造語とすることはあり得ない。
4 理由d
商標法の法理に従えば,結論として,登録商標の一つの指定役務(指定商品
についても以下同様である。)において無効事由が存在する場合,当該指定役
務と類似する範囲(同一類似群に属するもの)の他の指定役務についても,無
効事由があるものとされるべきである。
すなわち,商標出願に係る登録要件の審査は,法3条の自他識別力(願書の
指定役務との関係において審査される。)のほかに,法4条1項11号(先登
録出願と同一又は類似の範囲でない)と同16号(品質誤認)が中心となって
いる。そして,商標出願がこれらの登録要件を満たして商標登録されると,法
37条により,類似の範囲(同一類似群の範囲)まで禁止権が自動的に発生す
る。したがって,登録時には,指定役務とその商標との関係で法3条及び4条
の登録要件を審査するが,登録後は,指定役務は類似の範囲まで拡大する。
そのため,商標登録後の登録無効審判では,同一類似群の一つの指定役務に
無効事由があれば,同一類似群の他の指定役務も,法3条1項,4条1項16
号の関係で排除されなければならない。
けだし,同一類似群に属する複数の類似指定役務がある場合,同一類似群の
一部のみの排除では,残った同一類似群の指定役務の類似役務に係る類似商標
も使用が禁止されることになるが,同一類似群の一つの指定役務に登録無効事
由があれば,当然登録要件を満たさない指定役務の専用権の範囲(専用権が否
定されるべき範囲)に対して禁止権が残ってはならない。すなわち,同一類似
群の他の指定役務まで同じ無効とされるべきものである。
本件審決は,無効事由がある指定役務のみを排除し,これと類似する指定役
務を残して無効事由は解消したとするものであるから,取り消されるべき違法
が存在する。
第4 被告の反論
原告の主張はいずれも失当である。本件審決の認定判断に誤りはない。
1 理由aについて
原告は,「健康診断,歯科医業,調剤」のうち,どれが「AKA」治療法と
関連し,どれが同治療法と関連しないのかを全く特定していない。
また,ある役務との関係上,当該役務の普通名称であるとしても,直ちに同
一類似群コードの他の役務について質表示になるとは限らないし,原告はその
根拠を何ら示していない。
そもそも,本件審決は,「AKA」の文字(本件商標)は,第44類「健康
診断,歯科医業,調剤」との関係において,その役務の普通名称,質等を表す
ものと認識されるとすべき事情は見当たらないと認定しているのであるから,
原告は,「AKA」が,「健康診断,歯科医業,調剤」との関係において,そ
の役務の普通名称,質等を表すものと認識されるとすべき事情を主張立証しな
ければならないのに,ただ単にこれらの役務が「医業,医療情報の提供」と同
一類似群に属することを主張するにすぎず,前記の事情を何ら主張立証してい
ない。
なお,類似群コードは,特許庁における商標登録出願審査事務の便宜と統一
のために定められた内規にすぎず,法規としての効力を有しないものであるか
ら,同一類似群コードを有することが直ちに「健康診断,歯科医業,調剤」の
役務の普通名称,質等を表すものと認識されるとすべき事情に当たるものでは
ないことは明らかである。
2 理由bについて
原告は,本件指定役務中,「あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロプ
ラクティック,きゅう,柔道整復,はり」について,本件商標が法3条1項3
号,6号,4条1項16号に該当すると主張するが,そもそも,本件商標がこ
れらの指定役務との関係において法3条1項3号に該当するというためには,
それが,各指定役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみから成
る商標でなければならない。しかしながら,原告が提出する甲54は,資格試
験の試験科目として「リハビリテーション医学」及び「整形外科学」があるこ
とを示しているにすぎないし,甲53は,AKA療法は,関節機能異常を起こ
した関節を,関節運動学の理論に基づいて正常に動くようにしてやれば痛みが
治るという運動療法であるのに対し,指圧,整体,カイロプラクティック,き
ゅう,はり,電気刺激,漢方薬等の民間療法の大部分は,「対症療法にすぎな
い」と言っているだけである。
また,原告は,「AKA」技術を解説した審判甲・乙号証の技術からも,こ
れらの指圧等の手技への応用は容易に想到できる「関節運動学的アプローチ」

による治療法は,指圧等の手技へ容易に応用できるとの趣旨と解される。)と
主張するが,その具体的な論拠は何ら示されていないばかりか,そもそも整形
外科医という専門医による治療法が指圧等の手技へ容易に応用できるとの主張
こそ,何ら理由のないものであって,失当である。
さらに,原告は,指定役務「あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロプ
ラクティック,きゅう,柔道整復,はり」の事業者及び需要者において,「A
KA」治療法は近い手技で,目的も同様なもので効果があると知られており,
上記指定役務において本件商標を使用すると,「AKA」を用いた又はこれと
関連した治療法であると認識するから,法3条1項3号に該当すると主張する
が,問題は,本件商標が「あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロプラク
ティック,きゅう,柔道整復,はり」の質等を普通に用いられる方法で表示す
る標章のみから成る商標であるか否かであり,この点について,原告は何ら主
張立証していない。
3 理由cについて
原告の主張は,本件審決の認定,すなわち,「AKA」の文字(本件商標)
は,その余の指定役務との関係において,その役務の普通名称,質等を表すも
のと認識されるとすべき事情は見当たらないとの認定と何ら関連がない。
4 理由dについて
原告の主張は,法3条1項各号の登録要件の問題と,法4条1項11号の登
録要件の問題を混同するものであり,何ら理由がない。
第5 当裁判所の判断
当裁判所も,本件商標は,本件指定役務中,第44類「医業,医療情報の提
供」との関係では,法3条1項3号,4条1項16号に該当するが,その余の
指定役務との関係では,法3条1項1号,3号,6号,4条1項16号のいず
れにも該当しないものと判断する。理由は,次のとおりである。
1 証拠(甲3~6,11~15,17,19,20,26)及び弁論の全趣旨
によれば,本件商標の登録査定時において,「AKA」の文字は,「関節運動
学的アプローチ(arthrokinematic approach)」の略であって,関節の機能の
治療を行う場合がある整形外科等の役務との関係においては,「関節運動学を
基礎にして開発された治療法,治療技術」を表すものとして理解,認識されて
いたと認められる。
そうすると,かかる文字を標準文字で表して成る本件商標は,その指定役務
中,第44類「医業,医療情報の提供」との関係においては,単にその役務の
質(内容)を表示するにすぎず,自他役務の識別標識としての機能を果たさな
いものであり,また,上記以外の治療法によるものについて使用をするときは,
役務の質(内容)について誤認を生じさせるおそれがあると認められるから,
本件商標は,上記指定役務については,法3条1項3号及び4条1項16号に
該当する。
以上の点は,本件審決が認定するとおりであり,原告はもちろん,被告もこ
の点を争うものではない。
2 これに対し,本件指定役務中,その余の指定役務,すなわち,「健康診断,
歯科医業,調剤,あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロプラクティック,
きゅう,柔道整復,はり」との関係においては,上記の各証拠によっても,本
件商標が,各役務の普通名称(取引界における役務の一般的名称)であるとか,
各役務の質(内容)を表すものであるとは認められず,ほかにそのように認め
るに足りる的確な証拠はない。したがって,本件商標は,その余の指定役務と
の関係では,自他役務識別力がないとはいえず,また,役務の質について誤認
を生じさせるおそれがあるということもできない。
よって,本件商標は,その余の指定役務については,法3条1項1号,3号,
6号,4条1項16号のいずれにも該当しないというべきであり,この点にお
いて,本件審決の認定判断に誤りがあるとは認められない。
3 原告の主張について
(1) 理由aについて
原告は,本件指定役務中,「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,
調剤」が同一の類似群コードを付されていることを根拠に,同一類似群コー
ド中の一つの役務で普通名称となっている「AKA」(本件商標)は,同一
類似群コードの他の類似の役務との関係でも質表示となるものと扱われるべ
きであるから,本件商標は,本件指定役務中,「医業,医療情報の提供」の
みならず,「健康診断,歯科医業,調剤」についても,法3条1項3号に該
当し,同項6号,4条1項16号にも該当すると主張する。
しかしながら,そもそも類似群コードを定める「類似商品・役務審査基準」
は,特許庁における商標登録出願の審査事務等の便宜と統一のために作られ
た内規にすぎず,法規としての効力を有するものではない。したがって,同
一の類似群コードに属するとの形式的事実のみから,直ちに,本件商標が「医
業,医療情報の提供」と同様に「健康診断,歯科医業,調剤」の各役務との
関係においても,質表示に当たるとか,自他役務識別力がないとの結論を導
くことはできず,かかる結論を導くには,本件商標が上記の各役務との関係
で質表示に当たることその他自他役務識別力がないことを認めるに足りる具
体的事由の主張立証が必要となるというべきである。
しかるところ,原告は,上記のとおり,同一の類似群コードに属するとの
事実を主張するのみで,上記の具体的事由について何ら主張立証しないので
あるから,これでは,本件商標が上記の各役務との関係で質表示に当たるこ
とその他の事由により自他役務識別力がないと認めることはできないし,同
様に役務の質の誤認を生ずるおそれがあるということもできない。
よって,理由aは採用できない。
(2) 理由bについて
原告は,本件指定役務中,「あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロ
プラクティック,きゅう,柔道整復,はり」の類似群コードは「42V01」
であり,「医業」とは別の類似群コードに属するとしながら,上記各指定役
務の事業者及び需要者において,「AKA」治療法は近い手技で,目的も同
様なもので効果があると知られており,上記各指定役務において本件商標を
使用すると,「AKA」を用いた又はこれと関連した治療法であると認識さ
れるものであるから,法3条1項3号に該当するし,本件商標は,英文字「A
KA」のみであり,自他役務識別力のある何らの文字,記号・図形等の要素
もないので,商標としての識別力がなく,同項6号にも該当し,さらに,「A
KA」治療法と関係のない指定役務及び同治療法を使用しない指定役務では,
本件商標は,「AKA」治療法に関連した治療法であるとの品質誤認を生起
し,法4条1項16号にも該当する,などと主張する。
しかしながら,「医業」と「あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロ
プラクティック,きゅう,柔道整復,はり」とは,明らかに別の役務として
扱われるべきものであるところ,前記のとおり,本件商標の登録査定時にお
いて,「AKA」の文字がその役務の質(内容)を表すものとして理解,認
識されていたと認められるのは,飽くまで「医業」に属する整形外科等の役
務との関係においてのみであって,それ以外の,「あん摩・マッサージ及び
指圧,整体,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり」の各指定役
務との関係においてではない。そして,これらの指定役務との関係において,
「AKA」がその役務の質(内容)を表すものとして理解,認識されていた
との事情を認めるに足りる的確な証拠はない。
ちなみに,原告自身,本件商標が上記の各指定役務の質(内容)そのもの
を表すとは主張しておらず,原告が提出する甲53の刊行物は,AKA療法
が関節機能異常を起こした関節を関節運動学の理論に基づいて正常に動くよ
うにしてやれば痛みが治るという運動療法であるのに対し,従来の整形外科
の治療法や民間療法の大部分は対症療法にすぎないということを指摘するに
すぎず,甲54の刊行物も,「はり師/きゅう師」,「あん摩マッサージ指
圧師」及び「柔道整復師」の各資格試験の試験科目として「リハビリテーシ
ョン医学」や「整形外科学」があることを示しているにすぎない。したがっ
て,これらの証拠をもって上記の事情があるということもできない(原告が
提出するその他の証拠についても同様である。)。
そして,ほかに,本件商標が上記の各指定役務との関係において,自他役
務識別力がないとか,役務の質の誤認を生ずるおそれがあるとすべき事情は
見当たらない(本件商標が上記の各役務との関係で質表示には当たらない以
上,英文字「AKA」のみから成るとの点も,それだけで自他役務識別力が
認められないことの根拠となるものではない。)。
したがって,理由bも採用できない。
(3) 理由cについて
原告の主張は,要するに,「あん摩・マッサージ及び指圧,整体,カイロ
プラクティック,きゅう,柔道整復,はり」の各指定役務との関係で,本件
商標を(「関節運動学的アプローチ」を意味するものとしてではなく)自他
役務識別力がある造語として扱うのは不自然である(あり得ない)というこ
とを指摘する趣旨と解される。
しかしながら,「AKA」の文字から成る本件商標が,「関節運動学を基
礎にして開発された治療法,治療技術」を表すものとして理解,認識される
としても,同治療法,同治療技術は,飽くまで医業(整形外科等)の役務に
関するものであって,あん摩等の役務に関するものではないのであるから,
本件商標を,あん摩等の役務との関係で自他役務識別力があるものとして扱
ったとしても,それ自体何ら不自然であるとはいえない。
したがって,理由cも採用できない。
(4) 理由dについて
原告の主張は,要するに,同一類似群に属する役務は全て類似性が認めら
れることを前提とするものであるが,前記のとおり,類似群コードを定める
「類似商品・役務審査基準」は,飽くまで特許庁における商標登録出願の審
査事務等の便宜と統一のために作られた内規にすぎず,法規としての効力を
有するものではないから,同一類似群に属する役務は全て類似性が認められ
るとの前提自体が採用し得ない。
また,自他役務識別力の有無や役務の質の誤認を生ずるおそれの有無は,
飽くまで個々の役務ごとに判断すべきであるところ,本件商標に関していえ
ば,本件指定役務のうち,「医業,医療情報の提供」との関係では,(役務
の質表示に当たり)自他役務識別力がないか,役務の質の誤認を生ずるおそ
れがあると認められるとしても,その余の指定役務との関係では,自他役務
識別力がないとはいえず,また,役務の質の誤認を生ずるおそれがあるとも
認められないことは,前示のとおりである。
したがって,理由dも採用できない。
4 結論
以上の次第であるから,本件審決に取り消されるべき違法はなく,本件請求
は理由がない。よって,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部


裁判長裁判官
鶴 岡 稔 彦


裁判官
大 西 勝 滋


裁判官
寺 田 利 彦

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