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Myリストに登録 第Ⅵ部 特許権の存続期間の延長

最終更新 2011.12

(平成12年1月1日以降の特許権の存続期間の延長登録の出願について適用。ただし、平成24年3月31日以前の特許権の存続期間の延長登録の出願については、「通常実施権」とあるのは「登録した通常実施権」と読み替えて適用。)

Myリストに登録1. 制度の趣旨

特許制度の目的の一つは、発明者にその発明に係る技術を公開することの代償として一定期間その権利の専有を認めることによって発明を保護・奨励し、もって産業の発達に寄与することにある。

しかしながら、医薬品等一部の分野では、安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可等を得るにあたり所要の試験・審査等に相当の長期間を要するため、その間はたとえ特許権が存続していても権利の専有による利益を享受できないという問題が生じている。

このような法規制そのものは、その趣旨からして必要欠くべからざるものであるが、その結果として医薬品等の分野では、その分野全体として、本来享受できるはずの特許期間がその規制に係る分だけ享受しえないこととなっている。しかも、薬事審査等の期間の短縮にも、安全性の確保等の観点から自ずから限界がある。

こうした事態は、特許制度の基本に係わる問題であり、これを解決するためには、特許期間の延長措置が必要である。

そこで、安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であってその目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定める処分を受けることが必要であるために、特許発明の実施をすることができない期間があったときは、5年を限度として、延長登録の出願により当該特許権の存続期間を延長することができることとした(第67条第2項参照ウィンドウに表示)。

このように、特許権の存続期間の延長制度は、第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分(以下、単に「政令で定める処分」あるいは「処分」ということがある。)を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を回復することを目的とするものである(最一小判平23.4.28(平成21(行ヒ)324~326※裁判所ウェブサイトへのリンク))。

政令で定める処分としては、農薬取締法の規定に基づく農薬に係る登録、薬事法の規定に基づく医薬品に係る承認・認証が、規定されている(特許法施行令第3条)。

Myリストに登録2. 出願

Myリストに登録2.1 出願人

特許権の存続期間の延長登録の出願(以下、単に「延長登録の出願」ということがある。)の出願人は特許権者に限る(第67条の3第1項第4号参照ウィンドウに表示)。

特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができない(第67条の2第4項参照ウィンドウに表示)。特許権者又はその特許権についての専用実施権若しくは通常実施権を有する者が第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分を受けていなければならない(第67条の3第1項第2号参照ウィンドウに表示)。

Myリストに登録2.2 出願できる時期

延長登録の出願は、第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分を受けた日(注)から3月以内にしなければならない。ただし、本来の特許権の存続期間の満了後は、することができない(第67条の2第3項参照ウィンドウに表示特許法施行令第4条)。また、延長登録の出願をする者がその責めに帰することができない理由により政令で定める処分を受けた日から3月以内にその出願をすることができないときは、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては、2月)を経過する日までの期間(当該期間が9月を超えるときは、9月)内にしなければならない(特許法施行令第4条)。

なお、特許権の存続期間の満了前6月の前日までに政令で定める処分を受けることができないと見込まれるときは、次に掲げる事項を記載した書面をその日までに提出しなければならない。(第67条の2の2第1項参照ウィンドウに表示特許法施行規則第38条の15の2)

出願をしようとする者の氏名又は名称及び住所又は居所

特許番号

第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分

上記書面を提出しないときは、特許権の存続期間の満了前6月以後に特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができない(第67条の2の2第2項参照ウィンドウに表示)。

(注)

「政令で定める処分を受けた日」とは、承認又は登録が申請者に到達した日、すなわち申請者がこれを了知し又は了知し得べき状態におかれた日である。これは、必ずしも「承認書」又は「登録票」の到達した日を意味するものではなく、「承認書」又は「登録票」の到達前に、承認又は登録について知った場合には、現実に知った日となる。

Myリストに登録2.3 出願の対象となる特許権

第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分を受けることが必要であるために特許発明の実施をすることができなかった特許権が、延長登録の出願の対象となる。

Myリストに登録2.4 願書の記載事項

特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない(第67条の2第1項参照ウィンドウに表示特許法施行規則第38条の15)。

出願人の氏名又は名称及び住所又は居所

特許番号

延長を求める期間(5年以下の期間に限る。)

第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分の内容

第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分を受けた日

上記④第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分の内容には、延長登録の理由となる処分(例えば「薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認」)、処分を特定する番号(例えば承認番号)、処分の対象となった物(※1)、その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあってはその用途(※2)を記載する。

また、⑤第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分を受けた日については、2.2(注)参照。

※1

原則として、医薬品の場合は承認書に記載された名称(販売名等)及び有効成分、農薬の場合は登録票に記載された農薬の名称及び有効成分。

※2

原則として、医薬品の場合は承認書に記載された効能・効果、農薬の場合は登録票に記載された作物名及び、適用病害虫名、適用雑草名又は使用目的。

Myリストに登録2.5 延長の理由を記載した資料の記載事項

願書には、延長の理由を記載した資料を添付しなければならない(第67条の2第2項参照ウィンドウに表示)。

願書に添付しなければならない延長の理由を記載した資料は、次のとおりとする(特許法施行規則第38条の16)。

(1)

その延長登録の出願に係る特許発明の実施に第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分を受けることが必要であったことを証明するため必要な資料(第1号)

(2)

前号の処分を受けることが必要であったためにその延長登録の出願に係る特許発明の実施をすることができなかった期間を示す資料(第2号)

(3)

第1号の処分を受けた者がその延長登録の出願に係る特許権についての専用実施権者若しくは通常実施権者又は当該特許権者であることを証明するため必要な資料(第3号)

上記(1)~(3)の資料は、それぞれ以下の(1)~(3)の内容を記載した資料であり、それらの記載内容を裏付けるための資料(以下の(4)参照)を含むものである。

(1)

特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったことを証明するため必要な資料

特許発明であること

延長登録の出願の対象となる特許権が存続していることを説明するため、特許権の設定登録の日、特許権の存続期間の満了日、特許料の納付状況等について記載する。

政令で定める処分を受けていること

政令で定める処分を特定するのに必要な事項(延長登録の理由となる処分(以下、「本件処分」ということがある。)、処分を特定する番号、処分を受けた日)、処分の対象となった物、その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあってはその用途を記載する(2.4参照)。

本件処分の対象となった医薬品の製造販売の行為又は農薬の製造・輸入の行為が、延長登録の出願に係る特許発明の実施行為に該当すること

出願人は、本件処分の対象となった医薬品又は農薬が含まれると考える請求項を特定し、当該請求項の発明特定事項と医薬品の承認書(以下の(4)②参照)又は農薬の登録票等(注)に記載された事項とを対比して、本件処分の対象となった医薬品又は農薬が当該請求項に係る発明の発明特定事項のすべてを備えていることを説明する(3.1.1(2)①参照)。本件処分の対象となった医薬品又は農薬が含まれる請求項が複数ある場合には、通常、発明特定事項が最も少ない請求項について説明する必要がある(3.1.1(2)②参照)。

(注)

農薬の登録票には、製造方法について記載されていないことから、本件処分の対象となった農薬が製造方法に関する発明特定事項を備えていることについては、登録申請の際に提出した資料を用いて説明する。

本件処分の対象となった医薬品又は農薬の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」によって特定される範囲において、本件処分が最初の処分であること

「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」とは、承認書(以下の(4)②参照)又は登録票等に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当するすべての事項(用途を特定する事項を発明特定事項として含まない特許発明の場合には、承認書又は登録票等に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当するすべての事項及び用途に該当する事項)をいう(3.1.1(1)参照)。

出願人は、自己が知っている先行処分と本件処分とを対比して、本件処分が、本件処分の対象となった医薬品又は農薬の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」によって特定される範囲における、最初の処分であることを説明する(3.1.1(2)②参照)。

(2)

政令で定める処分を受けることが必要であったために特許発明の実施をすることができなかった期間を示す資料

本件処分を受けるに至った経緯

主要な事実及びその日付について説明する。

特許発明の実施をすることができなかった期間

本件処分を受けることが必要であったために特許発明の実施をすることができなかった期間の根拠を説明する(3.1.3参照)。

(3)

政令で定める処分を受けた者が特許権についての専用実施権者若しくは通常実施権者又は当該特許権者であることを証明するため必要な資料

特許権者が本件処分を受けた者であること、又は

特許権についての専用実施権若しくは通常実施権を有する者が本件処分を受けた者であること

(4)

記載内容を裏付けるための資料

特許公報

医薬品の場合には、承認書(承認申請書部分を含む。以下、同じ)の写し。上記(2)の期間を示す資料として、例えば、治験計画届書の写し等、本件処分を受けるために必要な試験を開始した日(3.1.3(2)参照)を示すことができる資料。承認日に承認を知り得なかった場合には、承認を知った又は知り得る状態におかれた日の最先の日を客観的に示すことができる資料。

農薬の場合には、登録票の写し。上記(2)の期間を示す資料として、例えば、委託圃場試験の依頼書の写し等、本件処分を受けるために必要な試験を開始した日(3.1.3(2)参照)を示すことができる資料。登録日に登録を知り得なかった場合には、登録を知った又は知り得る状態におかれた日の最先の日を客観的に示すことができる資料。

なお、②、③の資料において、記載内容を裏付けるのに必要な部分は開示する。

Myリストに登録2.6 出願の効果

特許権の存続期間の延長登録の出願があったときは、拒絶査定が確定するか、延長登録があるまでは、存続期間は延長されたものとみなされる(第67条の2第5項参照ウィンドウに表示)。

Myリストに登録2.7 特許公報への掲載

特許権の存続期間の延長登録の出願があったときは、第67条の2第1項参照ウィンドウに表示各号に掲げる事項並びにその出願の番号及び年月日が特許公報に掲載される(第67条の2第6項参照ウィンドウに表示)。

また、第67条の2の2第1項参照ウィンドウに表示に規定される書面が提出されたときは、同項各号に掲げる事項が特許公報に掲載される(第67条の2の2第3項参照ウィンドウに表示)。

Myリストに登録3. 審査

Myリストに登録3.1 拒絶査定

審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願が第67条の3第1項参照ウィンドウに表示各号のいずれかに該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない(第67条の3第1項参照ウィンドウに表示)。

また、審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、延長登録の出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない(第67条の4参照ウィンドウに表示において準用する第50条参照ウィンドウに表示)。

以下、拒絶理由について説明する。

Myリストに登録3.1.1 特許発明の実施に第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとき(第67条の3第1項第1号参照ウィンドウに表示)

(1)

「特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であった」の考え方

第67条の3第1項第1号参照ウィンドウに表示の「特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であった」か否かの判断においては、「特許発明の実施」を以下のようにとらえて、「政令で定める処分を受けることが必要であった」か否かを判断する。

承認や登録の対象となる医薬品や農薬は、承認書や登録票等に記載された多数の事項で特定されたものであるのに対し、特許発明は技術的思想の創作を「発明特定事項」(出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項)によって表現したものである。

したがって、第67条の3第1項第1号参照ウィンドウに表示の判断において、「特許発明の実施」は、処分の対象となった医薬品その物の製造販売等の行為又は処分の対象となった農薬その物の製造・輸入等の行為、ととらえるのではなく、処分の対象となった医薬品の承認書又は農薬の登録票等に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当するすべての事項(「発明特定事項に該当する事項」)によって特定される医薬品の製造販売等の行為又は農薬の製造・輸入等の行為、ととらえるのが適切である。

ただし、第68条の2参照ウィンドウに表示は、存続期間が延長された場合の特許権の効力について、「処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての特許発明の実施」以外の行為に特許権の効力が及ばないことを規定しているところ、医薬品の承認及び農薬の登録においては用途に該当する事項が定められていることから、用途を特定する事項を発明特定事項として含まない特許発明の場合には、「特許発明の実施」は、処分の対象となった医薬品の承認書又は農薬の登録票等に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当するすべての事項及び用途に該当する事項(「発明特定事項及び用途に該当する事項」)によって特定される医薬品の製造販売等の行為又は農薬の製造・輸入等の行為、ととらえるのが適切である。

(2)

特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められない場合

本件処分の対象となった医薬品の製造販売の行為又は農薬の製造・輸入の行為が、延長登録の出願に係る特許発明の実施行為に該当しない場合

特許発明における発明特定事項と医薬品の承認書又は農薬の登録票等に記載された事項とを対比した結果、本件処分の対象となった医薬品又は農薬が、いずれの請求項に係る特許発明についてもその発明特定事項のすべてを備えているといえない場合、拒絶理由が生じる。

例:

特許発明が「有効成分A及び界面活性剤Bを含有する殺虫剤」である場合、農薬の登録票等に記載された事項に基づいて、登録を受けた農薬が、A又はその下位概念に相当する有効成分及びB又はその下位概念に相当する界面活性剤を含有する殺虫剤であるといえなければ、拒絶理由が生じる。

延長登録の出願に係る特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品又は農薬の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」(2.5(4)3.1.1(1)参照)によって特定される範囲が、先行処分によって実施できるようになっていた場合

本件処分の対象となった医薬品又は農薬の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」を備えた先行医薬品又は先行農薬についての処分(先行処分)が存在する場合には、特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品又は農薬の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」によって特定される範囲は、先行処分によって実施できるようになっていたといえ、拒絶理由が生じる。

例1:

特許発明が「物質A」であって、本件処分が「有効成分として物質a1、作物名及び適用病害虫名としてキャベツ及びアブラムシ類」を備えた農薬についてのものである場合

「有効成分として物質a1、作物名及び適用病害虫名としてキャベツ及びアブラムシ類」を備えた農薬についての先行処分1が存在すると、仮に、先行処分1が本件処分と剤型等が異なる処分であったとしても、特許発明のうち、本件処分の対象となった農薬の「発明特定事項及び用途に該当する事項」である「有効成分として物質a1、作物名及び適用病害虫名としてキャベツ及びアブラムシ類」によって特定される範囲は、先行処分1によって実施できるようになっていたといえる。

他方、例えば、「有効成分として物質a1、作物名及び適用病害虫名としてバラ及びアブラムシ類」を備えた農薬についての先行処分2が存在しても、上記範囲は、先行処分2によって実施できるようになっていたとはいえない。

(物質a1は、物質Aの下位概念の成分を意味する。)

例2:

特許発明が「有効成分Aを含有する殺虫剤」であって、本件処分が「有効成分として物質a1、作物名及び適用病害虫名としてハクサイ及びアオムシ」を備えた農薬についてのものである場合

「有効成分として物質a1、作物名及び適用病害虫名としてハクサイ及びアオムシ」を備えた農薬についての先行処分1が存在すると、仮に、先行処分1が本件処分と剤型等が異なる処分であったとしても、特許発明のうち、本件処分の対象となった農薬の「発明特定事項に該当する事項」である「有効成分として物質a1、作物名及び適用病害虫名としてハクサイ及びアオムシ」によって特定される範囲は、先行処分1によって実施できるようになっていたといえる。

他方、例えば、「有効成分として物質a2、作物名及び適用病害虫名としてハクサイ及びアオムシ」を備えた農薬についての先行処分2が存在しても、上記範囲は、先行処分2によって実施できるようになっていたとはいえない。

(物質a1、物質a2は、いずれも有効成分Aの下位概念の成分を意味する。)

例3:

特許発明が「有効成分Aを含有する鎮痛用注射剤」であって、本件処分が「有効成分として物質a1、効能・効果として鎮痛、剤型として注射剤」を備えた医薬品についてのものである場合

「有効成分として物質a1、効能・効果として鎮痛、剤型として注射剤」を備えた医薬品についての先行処分1が存在すると、仮に、先行処分1が本件処分と含量等が異なる処分であったとしても、特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項に該当する事項」である「有効成分として物質a1、効能・効果として鎮痛、剤型として注射剤」によって特定される範囲は、先行処分1によって実施できるようになっていたといえる。

他方、例えば、「有効成分として物質a1、効能・効果として鎮痛、剤型として錠剤」を備えた医薬品についての先行処分2が存在しても、上記範囲は、先行処分2によって実施できるようになっていたとはいえない。

(物質a1は、有効成分Aの下位概念の成分を意味する。)

例4:

特許発明が、請求項1「物質Aを有効成分とし、安定化剤としてポリマーBを含有する鎮痛剤」、請求項2「物質Aを有効成分とし、安定化剤としてポリマーCを含有する鎮痛剤」であって、本件処分が「有効成分として物質a1、安定化剤としてポリマーc1、効能・効果として鎮痛」を備えた医薬品についてのものである場合

「有効成分として物質a1、安定化剤としてポリマーc1、効能・効果として鎮痛」を備えた医薬品についての先行処分1が存在すると、仮に、先行処分1が本件処分と剤型等が異なる処分であったとしても、特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項に該当する事項」である「有効成分として物質a1、安定化剤としてポリマーc1、効能・効果として鎮痛」によって特定される範囲は、先行処分1によって実施できるようになっていたといえる。

他方、例えば、「有効成分として物質a1、安定化剤としてポリマーb1のみ、効能・効果として鎮痛」を備えた医薬品についての先行処分2が存在しても、上記範囲は先行処分2によって実施できるようになっていたとはいえない。

(物質a1、ポリマーb1、ポリマーc1は、それぞれ物質A、ポリマーB、ポリマーCの下位概念の成分を意味する。また、請求項1及び請求項2に係る発明は単一性の要件を満たすものとする。)

出願人は、自己が知っている先行処分と本件処分とを対比して、本件処分が、本件処分の対象となった医薬品又は農薬の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」によって特定される範囲における、最初の処分であることについて説明することが求められる(2.5(1)④参照)。

[本件処分の対象となった医薬品又は農薬が延長登録の出願に係る特許権(以下、「本件特許権」ということがある。)の複数の請求項に係る特許発明の発明特定事項のすべてを同時に備えている場合について]

本件処分の対象となった医薬品又は農薬が本件特許権の複数の請求項に係る特許発明の発明特定事項のすべてを同時に備えている場合には、「特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品又は農薬の『発明特定事項(及び用途)に該当する事項』によって特定される範囲」は、複数存在する。

存続期間の延長は、請求項ごとに行われるのではなく特許権について行われるものであるから、このような場合の考え方は、以下のとおりである。

一の請求項に係る特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品又は農薬の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」によって特定される範囲が、先行処分によって実施できるようになっていたのであれば、当該範囲に包含される他の範囲(当該請求項の発明特定事項をすべて含む他の請求項に係る特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品又は農薬の「発明特定事項(及び用途)に該当する事項」によって特定される範囲)も、先行処分によって実施できるようになっていたと解釈するべきである。

そして、上記複数の範囲のすべてが、上記の解釈に従って先行処分によって実施できるようになっていたといえる場合には、本件特許権の特許発明の実施には、本件処分を受けることが必要であったとは認められない(以下の例5参照)。

他方、上記複数の範囲のいずれかが、上記の解釈に従って先行処分によって実施できるようになっていたといえない場合には、本件特許権の特許発明の実施には、本件処分を受けることが必要であったと認められる。

以上のような考え方に従うので、先行処分によって実施できるようになっていたか否かの判断にあたっては、通常、上記複数の請求項のうちの発明特定事項が最も少ない請求項から検討する。

例5:

特許発明が、請求項1「物質Aを有効成分とする鎮痛剤」、請求項2「注射剤である請求項1の鎮痛剤」であって、本件処分が「有効成分として物質a1、効能・効果として鎮痛、剤型として注射剤」を備えた医薬品についてのものである場合

本件処分の対象となった医薬品は、請求項1及び請求項2の発明特定事項のすべてを同時に備えている。

請求項2は請求項1の発明特定事項のすべてを含んでおり、請求項2に係る特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項に該当する事項」である「有効成分として物質a1、効能・効果として鎮痛、剤型として注射剤」によって特定される範囲(範囲2)は、請求項1に係る特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項に該当する事項」である「有効成分として物質a1、効能・効果として鎮痛」によって特定される範囲(範囲1)に包含される。

ここで、「有効成分として物質a1、効能・効果として鎮痛、剤型として錠剤」を備えた医薬品についての先行処分が存在すると、範囲1は先行処分によって実施できるようになっていたといえるから、範囲1に包含される範囲2も先行処分によって実施できるようになっていたといえる。

よって、本件特許権の特許発明の実施には、本件処分を受けることが必要であったとは認められない。

(物質a1は物質Aの下位概念の成分を意味する。)

(3)

一の処分に対応する特許権が複数あるとき

一の処分に対応する特許権が複数ある場合は、いずれの特許権についても、その特許発明の実施に処分を受けることが必要であったと認められる限りにおいて、それらの存続期間の延長登録が個別に認められる。

例えば、承認を受けた医薬品の有効成分に関する物質特許、その有効成分を承認された医薬用途に使用する医薬特許及びその有効成分の製造方法に関する製法特許がある場合、いずれの特許権についても、その特許発明の実施に承認を受けることが必要であったと認められる限りにおいて、それらの存続期間の延長登録が個別に認められる。

(4)

一の特許権に対応する処分が複数あるとき

一の特許権に対応する処分が複数ある場合、それぞれの処分を受けることがその特許発明の実施に必要であったと認められれば、異なる複数の処分に基づく同一の特許権の存続期間の延長登録が処分ごとに認められる。

(5)

用途が一部重複した処分が複数あるとき

本件処分の対象となった医薬品又は農薬の用途の一部が、先行処分の対象となった医薬品又は農薬の用途と重複している場合(例えば、本件処分の対象となった医薬品の効能・効果が上位概念であって、先行処分の対象となった医薬品の効能・効果が下位概念である場合)は、その重複部分を除いた用途についての特許発明の実施に、本件処分を受けることが必要であったと認められる。

よって、例えば、特許発明が「物質A」であって、本件処分が「有効成分として物質A、効能・効果として抗アレルギー性鼻炎」を備えた医薬品についてのものである場合、「有効成分として物質A、効能・効果として抗慢性アレルギー性鼻炎」を備えた医薬品についての先行処分が存在しても、特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったと認められる。

(6)

医薬品等に関連する特許権のうち延長の対象とならないもの

医薬品又は農薬の製造に使用される、中間体、触媒及び製造装置に係る特許権は、延長の対象にならない。

中間体、触媒及び製造装置は、いずれも最終製品である医薬品又は農薬に含まれるものではない。そして、薬事法、農薬取締法は、それぞれ、最終製品である医薬品の製造販売、最終製品である農薬の製造・輸入を規制するものであって、中間体、触媒及び製造装置を使用する行為自体を規制するものではない。よって、上記のように取り扱う。

Myリストに登録3.1.2 特許権者又はその特許権についての専用実施権若しくは通常実施権を有する者が第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分を受けていないとき(第67条の3第1項第2号参照ウィンドウに表示)

処分を共同で受けた複数の者のうち一部の者のみが特許権についての専用実施権又は通常実施権を有している場合であっても、特許権者又はその特許権についての専用実施権者若しくは通常実施権者が処分を受けていることに変わりはないわけであるから、第67条の3第1項第2号参照ウィンドウに表示に該当することにはならない。

Myリストに登録3.1.3 延長を求める期間がその特許発明の実施をすることができなかった期間を超えているとき(第67条の3第1項第3号参照ウィンドウに表示)

(1)

「特許発明の実施をすることができなかった期間」の考え方

「特許発明の実施をすることができなかった期間」とは、政令で定める処分を受けることが必要であるために特許発明の実施をすることができなかった期間(第67条第2項参照ウィンドウに表示)である。

この期間は、政令で定める処分を受けるのに必要な試験を開始した日、又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認又は登録が申請者に到達した日、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得べき状態におかれた日(注)の前日までの期間である(最二小判平11.10.22(平成10(行ヒ)43,44)参照)。

(注)

「承認又は登録が申請者に到達した日、すなわち申請者がこれを了知し又は了知し得べき状態におかれた日」は、必ずしも「承認書」又は「登録票」の到達した日を意味するものではなく、「承認書」又は「登録票」の到達前に、承認又は登録について知った場合には、現実に知った日となる。

薬事法、農薬取締法は、それぞれ、医薬品の承認、農薬の登録を受けるためには、試験成績に関する資料を提出して申請する旨規定しており、この成績を得るためには試験を行うことが必要である。また、特許発明は特許を受けている発明(第2条第2項参照ウィンドウに表示)であるから、「特許発明の実施をすることができなかった期間」は、特許権の設定登録後の期間となる。このため、処分を受けるのに必要な試験に要した期間と処分の申請から処分を受けるまでの期間を合わせた期間のうち、特許権の設定登録の日以降の期間が、「特許発明の実施をすることができなかった期間」となる。

この期間内であっても、処分を受けるのに必要ではなかったと認められる期間については、延長されない。

規制法の目的、趣旨及び内容により、多種多様な試験が行われているが、以下の①-③のすべての要件を満たす試験を行う期間でなければ、「特許発明の実施をすることができなかった期間」に含めることはできない。

処分を受けるために必要不可欠であること

その試験の遂行に当たって方法、内容等について行政庁が定めた基準に沿って行う必要があるため企業の試験に対する自由度が奪われていること

処分を受けることに密接に関係していること

(注)

前臨床試験期間は、医薬品の有効成分である化学物質の有用性を研究開発する期間としての性格が濃く、一般の分野でいう製品開発期間に近いものと考えられ、承認を受けることに密接に関係した試験期間とは必ずしもいえないため、特許発明の実施をすることができなかった期間に含まれない。

(2)

「特許発明の実施をすることができなかった期間」の始期

処分を受けるために必要な試験を開始した日とは、例えば、医薬品の場合は、臨床試験を開始した日(治験計画の届出日等)、農薬の場合は、化合物名を明示して行った委託圃場試験を開始した日(委託圃場試験の依頼日等)である。

(3)

「特許発明の実施をすることができなかった期間」の終期

特許発明の実施をすることができなかった期間が、承認又は登録が申請者に到達した日、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得べき状態におかれた日の前日に終了するのは、規制法に基づく「禁止」状態が解除される日が承認又は登録が申請者に到達した日であるからである。

(4)

留意事項

第67条の3第1項第3号参照ウィンドウに表示の「特許発明の実施をすることができなかった期間」の判断においては、出願人が提出した資料の他に、政令で定める処分の通常の到達過程が考慮される。提出された資料及び政令で定める処分の通常の到達過程を考慮した結果、出願人が延長を求める期間が政令で定める処分を受けることが必要なために特許発明の実施をすることができなかった期間を超えていると判断された場合には、第67条の3第1項第3号参照ウィンドウに表示に該当し拒絶される。

延長を求める期間については、その期間が政令で定める処分を受けることが必要なために特許発明の実施をすることができなかった期間を超えていなければよく、両者が一致している必要はない。

また、承認又は登録が申請者に到達した日が特許権の設定登録の日以前である場合は、特許発明を実施することができなかった期間がないため、第67条の3第1項第3号参照ウィンドウに表示に該当し拒絶される。

Myリストに登録3.1.4 出願をした者が当該特許権者でないとき(第67条の3第1項第4号参照ウィンドウに表示)

Myリストに登録3.1.5 出願が第67条の2第4項参照ウィンドウに表示に規定する要件を満たしていないとき(第67条の3第1項第5号参照ウィンドウに表示)

共有に係る特許権の存続期間の延長登録の出願を共有者のうちの一部の者のみで行った場合、その出願は拒絶される。

Myリストに登録3.2 登録査定

審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、延長登録をすべき旨の査定をしなければならない(第67条の3第2項参照ウィンドウに表示)。

Myリストに登録3.3 特許公報への掲載

特許権の存続期間を延長した旨の登録があったときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない(第67条の3第4項参照ウィンドウに表示)。

特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所

特許番号

特許権の存続期間の延長登録の出願の番号及び年月日

延長登録の年月日

延長の期間

第67条第2項参照ウィンドウに表示の政令で定める処分の内容

Myリストに登録3.4 補正

Myリストに登録3.4.1 補正できる時期

手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる(第17条第1項参照ウィンドウに表示)ため、特許権の存続期間の延長登録の出願をした者は、出願が特許庁に係属している限り、随時その補正をすることができる。

Myリストに登録3.4.2 補正できる範囲

延長登録の出願の審査では、どの特許権をどの処分に基づいて延長するかが最も重要な点であるため、特許権及び処分を特定するための事項(例えば、特許番号及び処分の内容)が出願時に願書又は延長の理由を記載した資料に記載されていれば、その範囲内で願書又は延長の理由を記載した資料を訂正する補正が認められる。

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