特開2016-215157(P2016-215157A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人

▶ 国立大学法人北海道大学の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-215157(P2016-215157A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】酸化チタン系光触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20161125BHJP
   B01J 23/18 20060101ALI20161125BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20161125BHJP
   B01J 37/32 20060101ALI20161125BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   B01J23/18 M
   B01J37/34
   B01J37/32
   B01J37/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-104732(P2015-104732)
(22)【出願日】2015年5月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成27年1月13日にウェブサイトで公開された化学系学協会北海道支部2015年冬季研究発表会の要旨集に掲載 (2)平成27年1月28日に化学系学協会北海道支部2015年冬季研究発表会でポスター発表
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝大門1丁目13番9号
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100113561
【弁理士】
【氏名又は名称】石村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】大谷 文章
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目 国立大学法人北海道大学内
(72)【発明者】
【氏名】コワルスカ エバ
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目 国立大学法人北海道大学内
(72)【発明者】
【氏名】池田 玲雄
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目 国立大学法人北海道大学内
(72)【発明者】
【氏名】黒田 靖
【住所又は居所】富山県富山市西宮町3番1号 昭和電工セラミックス株式会社 富山工場内
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA48A
4G169BC25A
4G169BC25B
4G169CA05
4G169CA07
4G169CA11
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169FA02
4G169FB27
4G169FB45
4G169FB57
4G169FB58
(57)【要約】
【課題】高い光触媒活性を示し、特に、空気存在下での水溶液中の有機物分解能及び水分解能に優れた酸化チタン系光触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】ビスマス化合物を含むアルコール含有水系溶液に酸化チタン原料粉末を加えて懸濁液を調製する懸濁工程と、前記懸濁液に紫外光を照射して酸化チタン表面にビスマスを析出させ、得られたビスマス担持酸化チタンを残液から分離する担持・分離工程と、前記担持・分離工程で得られたビスマス担持酸化チタンを洗浄及び乾燥して、ビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末を回収する回収工程とを含む、酸化チタン系光触媒の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス化合物を含むアルコール含有水系溶液に酸化チタン原料粉末を加えて懸濁液を調製する懸濁工程と、前記懸濁液に紫外光を照射して酸化チタン表面にビスマスを析出させ、得られたビスマス担持酸化チタンを残液から分離する担持・分離工程と、前記担持・分離工程で得られたビスマス担持酸化チタンを洗浄及び乾燥して、ビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末を回収する回収工程とを含む、酸化チタン系光触媒の製造方法。
【請求項2】
前記回収工程において、前記洗浄は水及び/又は脱酸素メタノールによる洗浄であり、前記乾燥は凍結乾燥、70〜250℃での真空乾燥又は70〜250℃での大気乾燥である、請求項1に記載の酸化チタン系光触媒の製造方法。
【請求項3】
前記担持・分離工程において、紫外光の照射は不活性ガス雰囲気下で行い、該雰囲気を維持したまま前記ビスマス担持酸化チタンを残液から分離する、請求項1又は2に記載の酸化チタン系光触媒の製造方法。
【請求項4】
前記酸化チタン原料粉末の平均一次粒子径が5〜500nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化チタン系光触媒の製造方法。
【請求項5】
前記ビスマス化合物を含むアルコール含有水系溶液は、金属ビスマス換算で前記酸化チタン原料粉末100質量部に対して0.1〜20質量部相当分のビスマスを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化チタン系光触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い光触媒活性を示す酸化チタン系光触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、光照射に対しても、薬品に対しても安定性が高く、人体にほぼ無害・無毒である。また、顔料として大量に生産されるため、比較的安価であり、光触媒として広く用いられている。
従来から、その光触媒活性を高めるために、種々の添加物の使用が検討されてきたが、毒性がなく、環境汚染を生じない添加物は少ない。このような添加物のうちの一つとして、ビスマス化合物が知られている。ビスマスは、チタンと同様に、希少元素(レアメタル)に分類されるが、1gあたり3円程度と比較的安価であり、工業的に有用な材料である。
【0003】
このようなビスマスを酸化チタンの光触媒活性の観点から導入する研究としては、従来は、主としてビスマスの導入による可視光応答化が目的とされており、酸化チタン本来の紫外光照射下での活性についての研究例はほとんどない。
【0004】
また、ビスマスが導入された酸化チタン系光触媒の製造方法としては、湿式法で酸化チタンにビスマスを導入する方法が知られている。例えば、特許文献1には、少なくとも一方が加水分解性であるチタン化合物とビスマス化合物を接触させた後、加水分解させて得られた前駆体を熱処理する湿式合成法が記載されている。
また、特許文献2には、スパッタやCVD等の乾式合成法や、ゾルゲル法、加水分解法等の湿式合成法により製造されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−117999号公報
【特許文献2】国際公開第2007/037321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、酸化チタン系光触媒は、その光触媒活性を有機汚染物質の分解に応用する研究も活発になされている。
しかしながら、上記のような従来の製造方法で得られた酸化チタン系光触媒は、必ずしも十分な有機物分解を行うことができる光触媒活性を有するものであるとは言えなかった。
したがって、より高い光触媒活性を有する酸化チタン系光触媒を得ることができる方法が求められている。
【0007】
本発明は、このような状況下でなされたものであり、高い光触媒活性を示し、特に、空気存在下での水溶液中の有機物分解能及び水分解能に優れた酸化チタン系光触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ビスマスが導入された酸化チタン系光触媒の新規の製造方法を見出し、この方法により製造された酸化チタン系光触媒が、高い光触媒活性を示し、特に、空気存在下での水溶液中の有機物分解能及び水分解能が向上していることを見出したことに基づくものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1]ビスマス化合物を含むアルコール含有水系溶液に酸化チタン原料粉末を加えて懸濁液を調製する懸濁工程と、前記懸濁液に紫外光を照射して酸化チタン表面にビスマスを析出させ、得られたビスマス担持酸化チタンを残液から分離する担持・分離工程と、前記担持・分離工程で得られたビスマス担持酸化チタンを洗浄及び乾燥して、ビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末を回収する回収工程とを含む、酸化チタン系光触媒の製造方法。
[2]前記回収工程において、前記洗浄は水及び/又は脱酸素メタノールによる洗浄であり、前記乾燥は凍結乾燥、70〜250℃での真空乾燥又は70〜250℃での大気乾燥である、上記[1]に記載の酸化チタン系光触媒の製造方法。
[3]前記担持・分離工程において、紫外光の照射は不活性ガス雰囲気下で行い、該雰囲気を維持したまま前記ビスマス担持酸化チタンを残液から分離する、上記[1]又は[2]に記載の酸化チタン系光触媒の製造方法。
[4]前記酸化チタン原料粉末の平均一次粒子径が5〜500nmである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の酸化チタン系光触媒の製造方法。
[5]前記ビスマス化合物を含むアルコール含有水系溶液は、金属ビスマス換算で前記酸化チタン原料粉末100質量部に対して0.1〜20質量部相当分のビスマスを含む、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の酸化チタン系光触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の酸化チタン系光触媒の製造方法によれば、高い光触媒活性を示す酸化チタン系光触媒が得られ、特に、空気存在下での水溶液中の有機物分解能及び水分解能に優れた酸化チタン系光触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の酸化チタン系光触媒の製造方法は、下記工程1〜3を含む。
工程1:ビスマス化合物を含むアルコール含有水系溶液に酸化チタン原料粉末を加えて懸濁液を調製する懸濁工程
工程2:前記懸濁液に紫外光を照射して酸化チタン表面にビスマスを析出させ、得られたビスマス担持酸化チタンを残液から分離する担持・分離工程
工程3:前記担持・分離工程で得られたビスマス担持酸化チタンを洗浄及び乾燥して、ビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末を回収する回収工程
【0012】
本発明の製造方法は、ビスマス及び酸化チタンを含む懸濁液に、紫外光を照射することにより、酸化チタン表面にビスマスを析出させることによって得られたビスマス担持酸化チタンが、光触媒として高活性であることを見出したことに基づくものである。すなわち、本発明は、ビスマスを担持させた酸化チタンを光析出法により合成する方法を提供するものである。
このような光析出法により得られたビスマス担持酸化チタンは、従来のビスマスを含有する酸化チタンに比べて高い光触媒活性を示すものである。特に、空気存在下の水溶液中の有機物分解能に優れている。また、メタノール水溶液からの水素発生反応においても、白金等の助触媒を担持させなくても十分に高い光触媒活性を示す。
以下、上記工程1〜3を順に説明する。
【0013】
[工程1:懸濁工程]
まず、ビスマス化合物を含むアルコール含有水系溶液に酸化チタン原料粉末を加えて懸濁液を調製する。
【0014】
ビスマス化合物を含むアルコール含有水系溶液は、ビスマス化合物を、アルコールを含有する水等の水系溶媒に溶解させることにより得られる。
ビスマス化合物としては、塩化ビスマス、硝酸ビスマス、硫酸ビスマス、酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、燐酸ビスマス、フッ化ビスマス、炭酸ビスマス等の無機化合物、あるいは、ナフテン酸ビスマス、酢酸ビスマス、ビスマスアルコキシド等の有機化合物が挙げられる。ビスマス化合物においては、ビスマスは通常は3価であるが、その一部又は全部が2価以下であってもよい。
これらの中でも、水に対する溶解性があり、安価で高純度品を入手しやすいものが好ましく、塩化ビスマスが特に好ましい。
【0015】
前記ビスマス化合物の溶媒に用いるアルコール含有水系溶媒としては、アルコール及び水の混合物等が好適に用いられる。このようなアルコール含有水系溶媒は、前記ビスマス化合物を溶解させ、かつ、酸化チタン原料粉末を分散させた懸濁液を均一な状態で得る上で好ましい。アルコールとしては、電子供与体(還元剤)としての作用の点から、メタノール、エタノール等が好適に用いられ、特にメタノールが好ましい。
この場合、水とアルコールの混合比(体積比)は、酸化チタン原料粉末を均一に分散させる観点から、95:5〜5:95であることが好ましく、より好ましくは60:40〜40:60、さらに好ましくは55:45〜45:55である。
【0016】
酸化チタン原料粉末は、特に限定されるものではなく、ルチル型、アナターゼ型及びブルッカイト型のいずれでもよい。
前記酸化チタン原料粉末は、四塩化チタンを原料として、酸素との気相反応により酸化チタンを得る気相法で得られたものが好ましい。気相法で得られた酸化チタンは、粒径が均一であると同時に、高温プロセスで製造されるため、結晶性が高く、高い活性を発現する光触媒を得ることができる。このような酸化チタンの市販品としては、例えば、光触媒用超微粒子酸化チタンFP−6(昭和電工セラミックス株式会社製)を使用することができる。
【0017】
前記酸化チタン原料粉末の粒径は、ビスマスを担持させて高い光触媒活性を得る観点から、平均一次粒子径が5〜500nmであることが好ましく、より好ましくは7〜300nm、さらに好ましくは10〜100nmである。
前記平均一次粒子径が5nm以上であれば、該酸化チタン原料粉末に金属ビスマスを十分に担持させることができる。また、500nm以下であれば、均一な懸濁液を得ることが容易である。
なお、酸化チタン原料粉末の平均一次粒子径は、粉末粒子表面へのガス吸着による比表面積測定法(BET法)により求められる。
【0018】
前記ビスマス化合物を含むアルコール含有水系溶液は、光触媒活性が向上する量のビスマスを酸化チタンに担持させる観点から、金属ビスマス換算で酸化チタン原料粉末の100質量部に対して0.1〜20質量部相当分のビスマスを含むように調製することが好ましい。より好ましくは0.5〜5質量部相当分、さらに好ましくは1〜2質量部相当分である。
同様の観点から、前記溶液中のビスマス化合物の濃度は、0.1〜20質量%で調製されることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは1〜1.5質量%である。
【0019】
前記懸濁液は、均質な触媒を製造する観点から、酸化チタン原料粉末が均一に分散した状態で得られることが好ましく、例えば、撹拌翼や撹拌子等での回転や超音波照射によって、前記水系溶液と前記酸化チタン原料粉末とを混合することにより調製される。
【0020】
[工程2:担持・分離工程]
上記工程1(懸濁工程)で得られた懸濁液に、紫外光を照射して、酸化チタン表面にビスマスを析出させる。通常、ビスマスを担持した酸化チタンは灰色を帯びている。この灰色を帯びた状態が、金属ビスマスが良好に担持された状態を示しているものと推測される。なお、酸化チタンに担持されているビスマスは、金属ビスマス以外に、3価のビスマスが還元された2価のビスマスを含む場合もある。
このようなビスマス担持酸化チタンが生成するメカニズムは明らかではないが、酸化チタンが、紫外光を吸収して励起電子と正孔を生成し、この励起電子によって酸化チタン表面にてビスマスイオンが還元されて金属ビスマスが析出し、一方で、正孔がアルコールを酸化してアルデヒドを生成しているものと考えられる。
【0021】
前記懸濁液は、上記工程1での調製時には酸素含有雰囲気下、すなわち、大気中で行ってもよいが、紫外光を照射する際には、析出時間の短縮化や酸化チタンに担持されたビスマスの酸化溶解防止の観点から、不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。前記懸濁液を不活性ガス雰囲気とするためには、例えば、窒素ガス、アルゴン等の希ガスをバブリングし、大気と遮断することが好ましい。
また、前記懸濁液は、紫外光が均等に照射され、ビスマス担持酸化チタンが均質な状態で得られるようにするため、撹拌しながら紫外光を照射することが好ましい。
【0022】
前記懸濁液に照射する紫外光は、十分に高い活性を示す光触媒を得る観点から、波長190〜420nmであることが好ましく、より好ましくは290〜410nm、さらに好ましくは350〜380nmである。このような紫外光は、例えば、高圧水銀灯により好適に得ることができる。
【0023】
前記紫外光の照射は、十分に高い活性を示す光触媒を得る観点から、例えば、400W高圧水銀灯で5〜10cmの距離で照射(紫外光強度5〜40mW/cm)する場合は、1〜1200分間行うことが好ましく、より好ましくは30〜180分間、さらに好ましくは90〜120分間である。
前記照射時間は30分間以上であれば、十分な量のビスマスが析出する。また、1200分間を超える照射してもビスマスの析出量はそれに見合った増加は見込めないため、1200分間以下で十分である。
【0024】
前記ビスマス担持酸化チタンは、前記懸濁液の反応液(残液)から分離される。分離方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ろ過や遠心分離等によって行うことができる。
ただし、析出したビスマスは微粒子で反応性が高いため、酸素が存在すると酸化されやすい。アルコールは水に比べて酸素の溶解度が高く、酸化チタンに担持されたビスマスは、前記反応液中で酸化されると、酸化ビスマス(Bi)となり、溶解脱離してしまう。このため、酸素の溶解度が高いアルコール等を用いる場合は、析出したビスマスの酸化溶解を抑制するために、反応系を開放せずに、不活性雰囲気中で前記ビスマス担持酸化チタンを残液から分離することが好ましい。
【0025】
[工程3:回収工程]
上記工程2(担持・分離工程)で得られたビスマス担持酸化チタンを洗浄及び乾燥して、ビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末を回収する。
このような方法によれば、少ない工程でビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末を得ることができる。しかも、このようにして回収されたビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末は、担持・分離工程で得られたビスマス担持酸化チタンと同様の灰色を帯びた状態を維持する傾向にあり、空気存在下の水溶液中の有機物分解能に特に優れた光触媒を得ることができる。
【0026】
前記洗浄の方法は、特に限定されるものではないが、水及び/又は脱酸素メタノールによる洗浄が好ましい。特に、メタノールを用いる場合は、上述したように酸素の溶解度が高いことから、析出したビスマスの酸化溶解を抑制するため、予め脱酸素したものを用いることが好ましい。水も脱酸素しておくことが望ましい。
【0027】
また、前記乾燥の方法は、凍結乾燥、70〜250℃での真空乾燥又は70〜250℃での大気乾燥であることが好ましい。
凍結乾燥は、水やアルコールを含むビスマス担持酸化チタンを、液体窒素やドライアイス等の寒剤を用いて凍結させた後、凍結乾燥機に接続して排気することにより行うことができる。凍結乾燥は、圧力20Pa以下で行うことが好ましく、より好ましくは15Pa以下、さらに好ましくは10Pa以下で行われる。
また、真空乾燥又は大気乾燥の際の温度は、効率的な乾燥及びより高い光触媒活性を得る観点から、100℃以上であることが好ましく、より好ましくは100〜210℃、さらに好ましくは150〜200℃である。
【0028】
前記洗浄及び乾燥は、洗浄、乾燥の順に2段階で行ってもよく、あるいはまた、乾燥、洗浄、乾燥の順で行ってもよい。工程数が増えても、洗浄の前に真空乾燥を行うことにより、ビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末の光触媒活性をより高めることができ、特に、水分解能の向上を図ることができる。洗浄前の真空乾燥は、酸化チタンに担持されたビスマスが洗浄時に酸化溶解するのを防止する観点から、150℃以上で行うことがより好ましい。
【0029】
[酸化チタン系光触媒の組成]
上記のようにして得られたビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末は、酸化チタンとビスマスからなるものである。酸化チタンとビスマスの組成比(質量比)は、十分に高い光触媒活性を得る観点から、1:50〜1:300であることが好ましく、より好ましくは1:50〜1:150、さらに好ましくは1:50〜1:100である。
【0030】
[光触媒の使用形態]
本発明に係る方法で製造された酸化チタン系光触媒は、その使用形態は特に限定されない。そのままの粉末の状態又は顆粒状として使用してもよい。また、基材表面に付着させて固定化した状態で使用することもできる。
固定化の形態は、基材の表面形状や用途等に応じて適宜選択することができ、例えば、薄膜状、粒子状、及び繊維状等が挙げられる。
【0031】
基材の材質としては、特に限定されるものではなく、金属材料、セラミック及びガラス等の無機材料、樹脂及び活性炭等の有機材料が挙げられ、これらの複合材料であってもよい。好ましくは、固定化する酸化チタン系光触媒によって、劣化又は分解するおそれのない材質である。
基材の形状も、板状、ブロック状、繊維状、布状、網状、及び筒状等、任意の形状でよく、また、基材表面は、多孔質でも、緻密質でもよい。
【0032】
前記基材表面への酸化チタン系光触媒の固定化は、公知の方法により行うことができ、例えば、該光触媒の粉末とバインダとを含有するコーティング液を調製し、これを所定の基材上に塗布することにより行うことができる。
【0033】
本発明の酸化チタン系光触媒は、紫外光照射下において、空気存在下での水溶液中の有機物分解能に優れていることから、有機汚染物質の分解に好適に利用することができる。照射する紫外光の波長は、十分な光触媒活性を得る観点から、190〜420nmであることが好ましく、より好ましくは290〜410nm、さらに好ましくは350〜380nmである。
前記酸化チタン系光触媒によって分解可能な有機汚染物質としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、及びトルエン等のVOCガス類;NO、SO、及びフロン等の大気汚染ガス;アンモニア、硫化水素、及びメルカプタン類等の臭気ガス;アルコール類、BTX、及びフェノール類等の有機化合物;トリハロメタン、トリクロロエチレン、及びフロン等の有機ハロゲン化物等が挙げられる。
【0034】
[光触媒活性評価]
上述した水溶液中での有機物分解能の評価は、有機汚染物質分解については、そのモデル反応として酢酸の酸化分解反応による簡易的な試験により行うことができる。また、水分解反応のモデル反応としてメタノールの脱水素反応による簡易的な試験による評価を行うことができる。具体的な評価方法は、例えば、下記実施例に示すような方法を用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
まず、懸濁工程において、50mL遠沈管に酸化チタン原料粉末(FP−6;平均一次粒子径15nm、昭和電工セラミックス株式会社製)を600mg秤取し、撹拌子、メタノール14.3mL及び塩化ビスマス(III)水溶液(ビスマス換算で酸化チタン原料粉末100質量部に対して2質量部相当分のビスマスを含む)14.3mLを加えた。超音波洗浄機で10分間分散させた後、アルゴンバブリングを5分間行い、ダブルキャップで栓をし、パラフィンフィルムでシールした。
次に、担持・分離工程において、700rpmで撹拌しながら、400W高圧水銀灯((英光社製;波長290nm以上)による紫外光を120分間照射したところ、灰色の粉末が析出した。この粉末を遠心分離した。
そして、得られた粉末を、回収工程において、水により洗浄した後、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製FDU−2110)を用いて、圧力8Paで凍結乾燥し、灰色のビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末試料を得た。
【0037】
[実施例2]
実施例1の回収工程において、凍結乾燥に代えて200℃で大気乾燥し、それ以外は実施例1と同様にして、淡灰色のビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末試料を得た。
【0038】
[実施例3]
実施例1の担持・分離工程において、アルゴン雰囲気を維持したまま析出した粉末を遠心分離し、また、回収工程において脱酸素メタノールによる洗浄を行った後、200℃での真空乾燥を行い、それ以外は実施例1と同様にして、淡黄色のビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末試料を得た。
【0039】
[実施例4]
実施例1の担持・分離工程において、アルゴン雰囲気に代えて大気雰囲気とし、また、回収工程において、凍結乾燥に代えて200℃での真空乾燥を行い、それ以外は実施例1と同様にして、灰色のビスマス担持酸化チタン系光触媒の粉末試料を得た。
【0040】
[実施例5]
実施例1の回収工程において、200℃で真空乾燥した後、水による洗浄を行い、さらに200℃で真空乾燥し、それ以外は実施例1と同様にして、淡茶灰色のビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末試料を得た。
【0041】
[実施例6]
実施例5の回収工程において、水による洗浄に代えてメタノールによる洗浄、水による洗浄を順に行い、それ以外は実施例5と同様にして、微茶白色のビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末試料を得た。
【0042】
[実施例7]
実施例6の回収工程における真空乾燥温度を100℃に変え、それ以外は実施例6と同様にして、白色のビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末試料を得た。
【0043】
[実施例8]
実施例1の回収工程において、メタノールによる洗浄、水による洗浄を順に行った後、200℃で真空乾燥し、それ以外は実施例1と同様にして、微茶白色のビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末試料を得た。
【0044】
[実施例9]
実施例8の回収工程における真空乾燥温度を100℃に変え、それ以外は実施例8と同様にして、白色のビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末試料を得た。
【0045】
[比較例1]
実施例1において、添加物の塩化ビスマス(III)水溶液に代えて、濃度1mol/Lの塩酸14.3mLを用い、それ以外は実施例1と同様にして、白色の酸化チタン系光触媒粉末試料を得た。
【0046】
[参照例1]
未処理の酸化チタン粉末(FP−6)を参照試料とした。
【0047】
(光触媒活性評価試験)
上記実施例及び比較例で得られた粉末試料並びに参照試料について、以下に示すような方法で光触媒活性評価を行った。これらの評価結果を表1にまとめて示す。なお、表1の斜線記入欄は、評価未実施である。
(1)酢酸の酸化分解反応
有機汚染物質分解のモデル反応として、試料50mgを5体積%酢酸水溶液5mLに懸濁させ、空気の存在下で1000rpmで撹拌しながら、400W高圧水銀灯((英光社製;波長290nm以上)による紫外光を60分間照射し、生成した二酸化炭素をガスクロマトグラフィにて定量分析した。
なお、表1の光触媒活性評価において、参照試料(参照例1)の測定値を100とした場合の各試料についての相対値をカッコ書きで示した。
(2)メタノールの脱水素反応
水分解反応のモデル反応として、試料50mgを50体積%メタノール水溶液5mLに懸濁させ、アルゴンバブリングした後、1000rpmで撹拌しながら、400W高圧水銀灯((英光社製;波長290nm以上)を60分間照射し、生成した水素をガスクロマトグラフィにて定量分析した。
なお、表1の光触媒活性評価において、参照試料(参照例1)の測定値を100とした場合の各試料についての相対値をカッコ書きで示した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示した結果から分かるように、光触媒活性評価において、酢酸の酸化分解反応では、ビスマス担持酸化チタン系光触媒粉末試料(実施例1〜9)は、未処理の参照試料(参照例1)と比べて高い活性を示した。特に、水洗浄を行った後、凍結乾燥した試料(実施例1)は、参照例1の5倍以上の高い活性を示した。
また、塩化ビスマス(III)を添加せずに調製した試料(比較例1)は、参照試料(参照例1)とほとんど同じ活性であったことから、凍結乾燥によって、活性が向上したのではないと言える。
なお、実施例8,9は、脱酸素していないメタノールにより洗浄した時点で、酸化チタンに担持されたビスマスが酸化溶解したため、あまり高い活性を示さなかったものと考えられる。実施例6,7では、一旦乾燥させた後は、真空乾燥によってビスマスが安定化し、脱酸素していないメタノールによる洗浄を行っても、酸化チタンに担持されたビスマスの酸化溶解が抑制され、実施例8,9よりも高い活性を示したものと考えられる。また、真空乾燥温度が高い方が、酸化チタンに担持されたビスマスが安定化しやすいと考えられる。
【0050】
また、メタノールの脱水素反応では、ビスマスを担持させた酸化チタン系光触媒の粉末試料(実施例1〜9)は、いずれも、未処理の参照試料(参照例1)と比べて2倍以上の高い活性を示した。参照試料(参照例1)では、光照射時間が長くなると水素生成反応は停止する傾向を示したが、ビスマスを担持酸化チタン系光触媒粉末試料(実施例1〜9)では、いずれも光照射時間にほぼ比例して水素生成量が増加した。
特に、実施例6の活性が高く、参照試料(参照例1)の活性の10倍以上であった。