特開2016-224134(P2016-224134A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-224134(P2016-224134A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   G02B6/02 461
   G02B6/02 411
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-107929(P2015-107929)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
【住所又は居所】東京都江東区木場1丁目5番1号
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄佑
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440番地 株式会社フジクラ 佐倉事業所内
(72)【発明者】
【氏名】竹永 勝宏
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440番地 株式会社フジクラ 佐倉事業所内
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晋聖
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目 国立大学法人北海道大学内
【テーマコード(参考)】
2H150
【Fターム(参考)】
2H150AB04
2H150AB05
2H150AB10
2H150AC32
2H150AC33
2H150AC57
2H150AD04
2H150AD12
2H150AD16
2H150AD20
2H150AD32
2H150AD34
2H150AH11
2H150AH23
2H150AH27
2H150AH50
(57)【要約】
【課題】 設計の自由度を向上させることができるマルチコアファイバを提供する。
【解決手段】 通信帯域においてx次LPモードまでの光(xは1以上の整数)により通信を行うマルチコアファイバ1は、(x+1)次LPモードまでの光を伝搬する複数の信号光伝搬コア11と、伝搬する光を信号光伝搬コア11よりも損失する少なくとも1つの高損失コア15とを備える。信号光伝搬コア11の少なくとも1つを伝搬する(x+1)次LPモードの光と、高損失コア15の少なくとも1つを伝搬する1次LPモードの光とがクロストークする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信帯域においてx次LPモードまでの光(xは1以上の整数)により通信を行うマルチコアファイバであって、
(x+1)次LPモードまでの光を伝搬する複数の信号光伝搬コアと、
伝搬する光を前記信号光伝搬コアよりも損失する少なくとも1つの高損失コアと、
を備え、
前記信号光伝搬コアの少なくとも1つを伝搬する(x+1)次LPモードの光と、前記高損失コアの少なくとも1つを伝搬する1次LPモードの光とがクロストークする
ことを特徴とするマルチコアファイバ。
【請求項2】
前記信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光の伝搬定数と、前記高損失コアを伝搬する1次LPモードの光の伝搬定数とが一致する
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
前記高損失コアを伝搬する光の伝搬損失は、3dB/km以上とされる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
互いに隣り合う前記信号光伝搬コア間の距離は、x次LPモードまでの光のクロストークが−40dB/km以下となり、(x+1)次LPモードの光のクロストークが−30dB/km以上となる距離とされる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
前記高損失コアは、3個以上の前記信号光伝搬コアで囲まれる位置に配置される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項6】
前記複数の信号光伝搬コアの長手方向の一部において、前記複数の信号光伝搬コアの径が細くなるように延伸された延伸部を更に備え、
前記延伸部では、前記複数の信号光伝搬コアはx次LPモードまでの光を伝搬し、(x+1)次LPモードの光の伝搬が抑制される
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項7】
前記延伸部では、前記複数の信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光の損失が20dB以上とされる
ことを特徴とする請求項6に記載のマルチコアファイバ。
【請求項8】
x=1とされる
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバに関し、設計の自由度を向上させる場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアの外周がクラッドにより囲まれた構造をしており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。そして、近年、光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝送される情報量が飛躍的に増大している。このような伝送される情報量の増大に伴い、光ファイバ通信システムにおいては、数十本から数百本といった多数の光ファイバが用いられることで、大容量の長距離光通信が行われている。
【0003】
こうした光ファイバ通信システムにおいて、複数のコアの外周が1個のクラッドにより囲まれたマルチコアファイバを用いて、それぞれのコアを伝搬する光により、複数の信号を伝送させることが知られている。
【0004】
下記特許文献1にはマルチコアファイバの一例が記載されている。このマルチコアファイバでは、クラッドの中心に1個のコアが配置され、この中心に配置されたコアの周りに6個のコアが配置されている。このような配置は、コアを最密充填できる構造であるため、特定のクラッドの外径に対して、多くのコアを配置することができる。また、この特許文献1に記載のマルチコアファイバでは、それぞれのコアを伝播する光のクロストークを抑制するために互いに隣り合うコアを伝搬する光の伝搬定数が互いに異なるものとされている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のマルチコアファイバのように互いに隣り合うコアの実効屈折率を変化させる場合よりもクロストークを更に抑制したいという要請がある。そこで、それぞれのコアの外周面を囲むようにクラッドよりも屈折率の低い低屈折率層が配置され、クロストークがより防止されたマルチコアファイバが知られている。下記特許文献2にはこのようなマルチコアファイバが記載されている。このマルチコアファイバを屈折率の観点から見ると上記低屈折率層がトレンチ状となるため、当該マルチコアファイバはトレンチ型と称され、コアから低屈折率層までの構成をコア要素と称する。このようなトレンチ型のマルチコアファイバであっても、それぞれのコアを伝播する光のクロストークを抑制するために互いに隣り合うコアを伝搬する光の伝搬定数が互いに異なることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−170336号
【特許文献2】特開2012−118495号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のように互いに隣り合うコアを伝搬する光の伝搬定数を互いに変える為には、互いに隣り合うコアの屈折率や径を互いに変える必要がある。しかし、所望の波長帯域において、所望のモードの光により通信を行うためには、コアの屈折率や径の取り得る値の範囲が狭く、互いに隣り合うコアの屈折率や径を互いに変える為の設計の自由度に制限がある。
【0008】
また、トレンチ型のマルチコアファイバでは、コア要素が特定のコアやコア要素を囲むように配置されると、当該特定のコアやコア要素を伝搬する光における高次モードの光が逃げづらく、カットオフ波長が長波長化する傾向がある。従って、コア要素が単独で存在する場合に伝搬する光のモードより高次のモードの光の伝搬を抑制するためには、コア間距離をあまり小さくできず、やはり設計の自由度に制限がある。
【0009】
そこで、本発明は、設計の自由度を向上させることができるマルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、通信帯域においてx次LPモードまでの光(xは1以上の整数)により通信を行うマルチコアファイバであって、(x+1)次LPモードまでの光を伝搬する複数の信号光伝搬コアと、伝搬する光を前記信号光伝搬コアよりも損失する少なくとも1つの高損失コアと、を備え、前記信号光伝搬コアの少なくとも1つを伝搬する(x+1)次LPモードの光と、前記高損失コアの少なくとも1つを伝搬する1次LPモードの光とがクロストークすることを特徴とするものである。
【0011】
このようなマルチコアファイバによれば、それぞれのコアは、x次LPモードまでの光を伝搬するコアよりも1LPモード高次の光を伝搬するコアであるため、x次モードまでの光のコアへの閉じ込めを強くすることができる。従って、x次LPモードまでの光のみを伝搬するコアで構成されたマルチコアファイバと比べて、x次モードまでの光のクロストークの抑制が可能となる。このため、x次LPモードまでの光を伝搬するコアを用いるマルチコアファイバよりもコア間距離の設計自由度およびそれぞれのコアの屈折率や径の設計自由度が向上する。
【0012】
また、信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光と、高損失コアを伝搬する1次LPモードの光とがクロストークするため、信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光は、高損失コアに移動することができる。このため、信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光は減衰する。また、高損失コアは伝搬する光を信号光伝搬コアよりも損失するため、信号光伝搬コアから高損失コアに移動した光も減衰する。こうして、通信に不要な(x+1)次LPモードの光を除去することができる。
【0013】
また、前記信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光の伝搬定数と、前記高損失コアを伝搬する1次LPモードの光の伝搬定数とが一致することが好ましい。
【0014】
伝搬定数が一致することで、信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光と、高損失コアを伝搬する1次LPモードの光とのクロストーク量を最大とすることができ、信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光を高損失コアにより効率良く移動させることができる。従って、通信に不要な(x+1)次LPモードの光をより効率的に除去することができる。
【0015】
また、前記高損失コアを伝搬する光の伝搬損失は、3dB/km以上とされることが好ましい。
【0016】
高損失コアを伝搬する光が3dB/km以上で損失することで、光の10kmの伝搬により、パワーを1/1000以下にすることができる。
【0017】
また、互いに隣り合う前記信号光伝搬コア間の距離は、x次LPモードまでの光のクロストークが−40dB/km以下となり、(x+1)次LPモードの光のクロストークが−30dB/km以上となる距離とされることが好ましい。
【0018】
(x+1)次LPモードの光の実効コア断面積はx次LPモードまでの光の実効コア断面積よりも大きい。このことを利用して、互いに隣り合う信号光伝搬コア間の距離は、x次LPモードまでの光のクロストークが−40dB/km以下となり、(x+1)次LPモードの光のクロストークが−30dB/km以上となる距離とすることができる。したがって、通信に用いるx次LPモードまでの光のクロストークは抑制され、通信に不要な光である(x+1)次LPモードの光はクロストークする。このため、高損失コアと直接クロストーク出来ない信号光伝搬コアがある場合であっても、当該信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次の光は、高損失コアとクロストーク可能な信号光伝搬コアまでクロストークにより移動することができ、さらに高損失コアにクロストークにより移動させることができる。従って、高損失コアと直接クロストーク出来ない信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光を除去することができる。
【0019】
また、前記高損失コアは、3個以上の前記信号光伝搬コアで囲まれる位置に配置されることが好ましい。
【0020】
高損失コアが3つ以上の信号光伝搬コアで囲まれることで、それぞれの信号光伝搬コアとクロストークすることができ、効率良く信号光伝搬コアから高損失コアに(x+1)次LPモードの光を移動させることができる。
【0021】
また、前記複数の信号光伝搬コアの長手方向の一部において、前記複数の信号光伝搬コアの径が細くなるように延伸された延伸部を更に備え、前記延伸部では、前記複数の信号光伝搬コアはx次LPモードまでの光を伝搬し、(x+1)次LPモードの光の伝搬が抑制されることが好ましい。またこの場合、前記延伸部では、前記複数の信号光伝搬コアを伝搬する(x+1)次LPモードの光の損失が20dB以上とされることが好ましい。
【0022】
このような延伸部が設けられることにより、(x+1)次LPモードの光をより損失させることができ、通信に不要なモードの光をより適切に排除することができる。
【0023】
また、x=1とされることとしても良い。このような構成のマルチコアファイバによれば、従来の基本モードの光のみを伝搬するコアのみを用いたマルチコアファイバよりもクロストークを改善したシングルモードマルチコアファイバを達成することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、設計の自由度を向上させることができるマルチコアファイバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態にかかるマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面図である。
図2図1のマルチコアファイバにおけるコア要素及び高損失コアの屈折率分布を示す図である。
図3】本実施形態のマルチコアファイバの曲げ半径とクロストークとの関係の計算結果を示す図である。
図4図1のマルチコアファイバを横から見た図である。
図5】延伸倍率とLP11モードの光の伝搬損失との関係の計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るマルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、ぞれぞれの図に記載のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0027】
図1は、本実施形態に係るマルチコアファイバの様子を示す図である。図1に示すように、マルチコアファイバ1は、複数のコア要素10と、複数の高損失コア15と、それぞれのコア要素10及び高損失コア15を隙間無く囲むクラッド20と、クラッド20を被覆する被覆層30とを備える。
【0028】
それぞれのコア要素10は、正方格子の各格子点上に配置される。具体的には、クラッド20の中心を囲むように4つのコア要素10が正方形の各頂点に位置するよう配置され、12個のコア要素10が、当該4つのコア要素10を囲むように上記正方形を基準とした正方格子の各格子点上に配置される。こうして本実施形態では16個のコア要素10が配置されている。
【0029】
それぞれのコア要素10は互いに同様の構造をしている。それぞれのコア要素10は、信号光を伝搬する信号光伝搬コアとしてのコア11と、コア11の外周面を隙間なく囲む内側クラッド12と、内側クラッド12の外周面を隙間なく囲み、クラッド20に外周面が隙間なく囲まれる低屈折率層13とを有している。
【0030】
また、複数の高損失コア15は、それぞれの正方格子の中心に配置されている。したがって、それぞれの高損失コア15は、4個のコア要素10で囲まれている。こうして本実施形態では、9個の高損失コア15が配置され、全てのコア要素10が少なくとも1つの高損失コア15と隣り合っている。
【0031】
図2は、図1に示すマルチコアファイバ1のそれぞれのコア要素10及び高損失コア15の屈折率分布を示す図である。
【0032】
図2に示すように、コア要素10のコア11の屈折率は、内側クラッド12の屈折率及びクラッド20の屈折率よりも高く、低屈折率層13の屈折率は、内側クラッド12の屈折率及びクラッド20の屈折率よりも低くされている。このようにそれぞれのコア要素10を屈折率の観点から見る場合に、低屈折率層13はそれぞれ溝状となり、それぞれのコア要素10はトレンチ構造を有している。このような、トレンチ構造により、マルチコアファイバ1のそれぞれのコア11を伝搬する光の閉じ込めを強くすることができる。なお、本実施形態では、内側クラッド12の屈折率はクラッド20の屈折率と同じ屈折率とされている。
【0033】
それぞれのコア要素10は、このような屈折率を有するため、例えば、クラッド20及びそれぞれの内側クラッド12はドーパントが何ら添加されていない石英から成り、それぞれの第1コア11は、ゲルマニウム等の屈折率を上げるドーパントが添加された石英から成り、低屈折率層13は、フッ素等の屈折率を下げるドーパントが添加された石英等から成る。
【0034】
また、それぞれのコア要素10は、LP01モードの光及びLP11モードの光を伝搬する。それぞれのコア要素10を伝搬するLP01モードの光は、標準的なシングルモードファイバとの接続性の観点から、波長1550nmにおける実効コア断面積Aeffが80μmと同程度とされることが好ましい。ここで、低屈折率層13のクラッド20に対する比屈折率差Δが−0.7%であり、コア11の半径rと内側クラッド12の半径rとの比r/rが1.7である場合において、波長が1550nmの光のLP01モードの光の実効コア断面積Aeffが80μmとなる場合のコア11のクラッド20に対する比屈折率差Δと、コア11の半径rとの組み合わせを表1に示す。
【表1】
【0035】
この場合、コア11を伝搬するLP11モードの光の波長1550nmにおける実効コア断面積Aeffは概ね92μmとされる。なお、コア11を伝搬する光は伝搬損失が例えば0.30dB/km以下とされる。
【0036】
また、それぞれの高損失コア15は、クラッドよりも高い屈折率とされ、コア11が伝搬する波長の光をLP01モードで伝搬する。例えば、波長1550nmの光を伝搬する場合、高損失コア15は、クラッド20に対する比屈折率差が0.29%とされ、半径が3.0μmとされる。
【0037】
それぞれの高損失コア15は、このような屈折率を有するため、例えば、クラッド20がドーパントが何ら添加されていない石英から成る場合に、ゲルマニウム等の屈折率を上げるドーパントが添加された石英から成る。
【0038】
また、図2における破線は、コア11を伝搬する各LPモードの光の実効屈折率及び高損失コア15を伝搬するLP01モードの光の実効屈折率を示す。図2から明らかなように、マルチコアファイバ1では、コア11を伝搬する光の波長において、コア11の2次LPモードであるLP11モードの光の実効屈折率と高損失コア15の1次LPモードであるLP01モードの光の実効屈折率とが互いに一致する。伝搬定数は実効屈折率と対応している。従って、本実施形態では、コア11のLP11モードの光の伝搬定数と高損失コア15のLP01モードの光の伝搬定数とが一致する。このため、コア11を伝搬するLP11モードの光と高損失コア15を伝搬するLP01モードの光とがクロストークすることができる。
【0039】
一方、図2より明らかなように、マルチコアファイバ1では、コア11を伝搬する光の波長において、コア11のLP01モードの光の実効屈折率と高損失コア15のLP01モードの光の実効屈折率とが互いに異なる。従って、コア11を伝搬するLP01モードの光は高損失コア15にクロストークにより移動することが抑制される。
【0040】
このようにコア11のLP11モードの光の伝搬定数と高損失コア15のLP01モードの光の伝搬定数とが一致するには、例えば、波長が1550nmの光が伝搬する場合において、上記のように、低屈折率層13のクラッド20に対する比屈折率差Δが−0.7%であり、コア11の半径rと内側クラッド12の半径rとの比r/rが1.7であり、コア11のクラッド20に対する比屈折率差Δが0.45%であり、コア11の半径が5.17μmである場合に、高損失コア15は、クラッド20に対する比屈折率差は0.29%とされ、半径が3.0μmとされる。
【0041】
また、高損失コア15はコア11よりも伝搬する光を減衰するよう構成されている。例えば、高損失コア15を伝搬する光の伝搬損失は3dB/km以上とされる。光の伝搬損失が3dB/km以上であれば、高損失コア15を光が10km伝搬することで、パワーを1/1000以下にすることができる。このような構成とするには、例えば、マルチコアファイバ1の製造過程において、高損失コア15となるガラスロッドに水酸基が行きわたるようにして、かつ、脱水時に酸素を過剰に流す等すればよい。
【0042】
また、被覆層30の屈折率は、クラッド20よりも高い。被覆層30は光を吸収する性質を有し、クラッド20から被覆層30に達する光は被覆層30で吸収されて消滅する。このような被覆層30と構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
【0043】
次にコア11同士のコア間距離とクロストークとの関係について説明する。なお、ここでいうコア間距離とは、互いに隣り合うコア11の中心間距離である。
【0044】
図3は、本実施形態のマルチコアファイバ1の曲げ半径とクロストークとの関係の計算結果を示す図である。図3の計算では、コア間距離Λを32μmとして、LP01モードの光の波長、及び、LP11モードの光の波長を1550nmとした。図3において、実線は、コア11のクラッド20に対する比屈折率差Δを0.45%とし、コア11の半径を5.17μmとし、コア11の半径rと内側クラッド12の半径rとの比r/rを1.7とし、コア11の半径rと低屈折率層13の厚さWとの比W/rを0.9とし、コア間距離Λを32μmとした計算結果を示す。また、破線が示す計算結果は、コア11のクラッド20に対する比屈折率差Δを0.46%とし、コア11の半径を5.20μmとし、コア11の半径rと低屈折率層13の厚さWとの比W/rを0.8とした点において、実線が示す計算結果と異なる。また、点線が示す計算結果は、コア11のクラッド20に対する比屈折率差Δを0.47%とし、コア11の半径を5.22μmとし、コア11の半径rと低屈折率層13の厚さWとの比W/rを0.7とした点において、実線が示す計算結果と異なる。
【0045】
図3に示すように、LP01モードの光のクロストークは、いずれの場合も−40dB/kmより小さくできる結果となった。また、LP11モードの光のクロストークは、いずれの場合も−30dB/kmより大きい結果となった。つまり、上記条件の場合、コア間距離が32μmであれば、LP01モードの光のクロストークを−40dB/km以下にでき、LP11モードの光のクロストークを−30dB/km以上とすることができる。さらに、図3では、Cバンド帯及びLバンド帯において、LP01モードの光の波長は実効コア断面積Aeffが最も大きい波長とされ、LP11モードの光の波長は実効コア断面積Aeffが最も小さい波長とされて、計算されている。従って、同一波長帯でLP01モードの光及びLP11モードの光を伝搬する場合、LP01モードの光のクロストークを光通信に支障のない小さな値とし、LP11モードの光のクロストークを大きな値とすることができるコア間距離Λが存在することとなる。
【0046】
そこで、本実施形態のマルチコアファイバ1のそれぞれのコア間距離Λは、LP01モード(1次LPモード)の光のクロストークが−40dB/km以下となり、LP11モード(2次LPモード)の光のクロストークが−30dB/km以上となる距離とされる。
【0047】
このため、本実施形態のマルチコアファイバ1では、それぞれのコア要素10を伝搬するLP01モードの光のクロストークが抑えられるが、それぞれのコア要素10を伝搬するLP11モードの光はクロストークにより互いに隣り合うコア要素10の間を移動することができる。
【0048】
図4は、図1のマルチコアファイバ1を横から見た図である。ただし、図4では、理解の容易のため、被覆層30を省略している。図4に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア11の長手方向の一部において、複数のコア11の径が細くなるように延伸された延伸部BPを備える。延伸部BPは、マルチコアファイバ1の被覆層30を部分的に剥離して、マルチコアファイバ1をクラッド20の外部から加熱して引っ張ることで延伸する。
【0049】
図5は、延伸倍率とLP11モードの光の伝搬損失との関係の計算結果を示す図である。図5の計算を行うに際して、低屈折率層13のクラッド20に対する比屈折率差Δを−0.7%とし、コア11の半径rと内側クラッド12の半径rとの比r/rを1.7とし、コア11のクラッド20に対する比屈折率差Δを0.45%とし、コア11の半径が5.17μmとし、コア11の半径rと低屈折率層13の厚さWとの比W/rを0.9とした。図5から、延伸部BPの非延伸部に対する縮径比を0.6程度にする、すなわち延伸部BPにおけるマルチコアファイバ1の各部材の径が非縮径部におけるマルチコアファイバ1の各部材の径の0.6倍にすると、コア要素10を伝搬するLP11モードの光の損失が10dB/cmとなることが予想できる。従って、縮径比0.6程度の延伸部BPを2cm程度設けることで、LP11モードの光を光通信が阻害されない程度まで除去することができる。なお、この場合、基本モードであるLP01モードは延伸による光の損失はほとんどなく、光通信に影響を殆ど与えない。
【0050】
以上のように本実施形態のマルチコアファイバ1は、通信帯域において1次LPモードの光により通信を行うマルチコアファイバとされ、2次LPモードまでの光を伝搬する複数のコア11と、伝搬する光をコア11よりも高損失で損失する複数の高損失コア15とを備える。そして、コア11を伝搬する2次LPモードの光と、高損失コア15を伝搬する1次LPモードの光とがクロストークする。
【0051】
従って、本実施形態のマルチコアファイバ1によれば、1次モードの光のコア11への閉じ込めを強くすることができる。従って、1次LPモードの光のみを伝搬するコアで構成されたマルチコアファイバと比べて、1次モードの光のクロストークの抑制が可能となる。このため、1次LPモードの光のみを伝搬するマルチコアファイバよりもコア間距離の設計自由度およびそれぞれのコアの屈折率や径の設計自由度が向上する。
【0052】
また、コア11を伝搬する2次LPモードの光と、高損失コア15を伝搬する1次LPモードの光とがクロストークするため、コア11を伝搬する2次LPモードの光は、高損失コア15に移動することができる。このため、コア11を伝搬する2次LPモードの光は減衰する。また、高損失コア15は伝搬する光を損失するため、コア11から高損失コア15に移動した光は減衰する。こうして、通信に不要な2次LPモードの光を除去することができる。
【0053】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、コア11を伝搬する2次LPモードの光の伝搬定数と、高損失コア15を伝搬する1次LPモードの光の伝搬定数とが一致する。従って、コア11を伝搬する2次LPモードの光と、高損失コア15を伝搬する1次LPモードの光とのクロストーク量を最大とすることができ、コア11を伝搬する2次LPモードの光を高損失コア15により効率良く移動させることができる。従って、通信に不要な2次LPモードの光を効率的に除去することができる。
【0054】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、互いに隣り合うコア11間の距離は、1次LPモードまでの光のクロストークが−40dB/km以下となり、2次LPモードの光のクロストークが−30dB/km以上となる距離とされる。したがって、通信に用いる1次LPモードまでの光のクロストークは抑制され、通信に不要な光である2次LPモードの光はクロストークする。このため、2次の光は、高損失コア15とクロストーク可能なコア11までクロストークにより移動することができる。従って、仮に高損失コア15と隣接しておらず高損失コア15とクロストークしづらいコア11がある場合であっても、2次LPモードの光を当該コア11から他のコア11を介して高損失コア15にクロストークにより移動させることができる。従って、高損失コア15と直接クロストーク出来ないコア11がある場合であっても、2次LPモードの光を除去することができる。
【0055】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、高損失コア15は、3個以上のコア11で囲まれる位置に配置されている。従って、それぞれのコア11とクロストークすることができ、効率良くコア11から高損失コア15に2次LPモードの光を移動させることができる。
【0056】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、複数のコア11の長手方向の一部において、複数のコア11の径が細くなるように延伸された延伸部BPを更に備え、延伸部BPでは、複数のコア11は1次LPモードまでの光を伝搬し、2次LPモードの光の伝搬が抑制される。しかも、本実施形態の延伸部BPでは、複数のコア11を伝搬する2次LPモードの光の損失が20dB以上とされる。このような延伸部BPが設けられることにより、2次LPモードの光をより損失させることができ、通信に不要な2次LPモードの光をより適切に排除することができる。
【0057】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
例えば、上記実施形態のマルチコアファイバ1において、延伸部BPが設けられなくても良い。ただし、通信に不要なLP11モードの光をより適切に排除する観点から、延伸部BPが設けられることが好ましい。
【0059】
また、上記実施形態では、16個のコア要素10が正方格子状に配置されたが、本発明のマルチコアファイバでは、コア要素10の数は複数であれば良く、その配置や数は特に限定されない。例えば、複数のコア要素10が三角格子の各格子点上に配置されるものとされても良い。この場合、高損失コア15は、3個のコア要素で囲まれる位置に配置されることが好ましい。
【0060】
また、上記実施形態のマルチコアファイバ1では、高損失コア15が複数とされ、それぞれの高損失コア15が4つのコア11で囲まれる構成とされた。しかし、高損失コア15は単数であっても良い。単数であっても、少なくとも高損失コア15とクロストークするコア11のLP02モードの光と減衰することができる。また、上記実施形態のマルチコアファイバ1のように、互いに隣り合うコア11においてLP11モードの光がクロストークする場合、高損失コア15とクロストークしないコア11から高損失コア15とクロストークするコア11にLP11モードの光を移動させることができる。
【0061】
また、高損失コア15は、少なくとも1つのコア11とクロストークすればよいため、例えば、複数のコア11の外周側に高損失コア15が配置されても良い。また、コア11のLP11モードの光の伝搬定数と高損失コア15のLP01モードの光の伝搬定数とが多少ずれているとしても、コア11を伝搬するLP11モードの光と高損失コア15を伝搬するLP01モードの光とがクロストークし、コア11を伝搬するLP01モードの光と高損失コア15を伝搬するLP01モードの光とのクロストークが抑制されれば良い。
【0062】
また、上記実施形態では、マルチコアファイバ1は、通信帯域においてLP01モードの光によりシングルモード通信を行い、それぞれのコア11がLP01モードの光及びLP11モードの光を伝搬するものとされ、LP11モードの光が除去される構成とされた。しかし、本発明はこれに限らない。つまり、フューモード通信やマルチモード通信を行う場合にも用いることができ、それぞれのコアが通信に用いるモードよりも1LPモード高次のモードまでの光を伝搬する構成とされ、当該1LPモード高次の光を高損失コア15により除去するものとしても良い。これを一般化すると、通信帯域においてx次LPモードまでの光(xは1以上の整数)により通信を行うマルチコアファイバであって、(x+1)次LPモードまでの光を伝搬する複数の信号光伝搬コアと、伝搬する光を前記信号光伝搬コアよりも高損失で損失する少なくとも1つの高損失コアと、を備え、前記信号光伝搬コアの少なくとも1つを伝搬する(x+1)次LPモードの光と、前記高損失コアの少なくとも1つを伝搬する1次LPモードの光とがクロストークする構成とされる。
【0063】
このようにマルチコアファイバが通信帯域においてx次LPモードまでの光により通信を行う場合においても、延伸部BPが設けられることが好ましい。この場合、延伸部BPでは(x+1)次LPモードの光の損失が20dB以上とされることが好ましく、x次LPモードの光の過剰損失が0.001dB以下とされることがより好ましい。
【0064】
また、上記実施形態や変形例では、それぞれのコア11が内側クラッド12及び低屈折率層13で囲まれる構成とされたが、本発明はこれに限らない。例えば、それぞれのコア要素10において、内側クラッド12が省略されて、コア11が低屈折率層13に直接囲まれる構成とされても良い。さらに、それぞれのコア要素10において、内側クラッド12及び低屈折率層13が省略されて、コア11がクラッド20により直接囲まれても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明によれば、設計の自由度を向上させることができるマルチコアファイバが提供され、光通信の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1〜4・・・マルチコアファイバ
10・・・コア要素
11・・・コア(信号光伝搬コア)
12・・・内側クラッド
13・・・低屈折率層
15・・・高損失コア
20・・・クラッド
30・・・被覆層
BP・・・延伸部
Tc・・・クラッド厚
Λ・・・コア間距離
図1
図2
図3
図4
図5