特開2017-33669(P2017-33669A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-033669電池正極用活物質、電池、電池正極用活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-33669(P2017-33669A)
(43)【公開日】2017年2月9日
(54)【発明の名称】電池正極用活物質、電池、電池正極用活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20170120BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20170120BHJP
   C01G 53/04 20060101ALI20170120BHJP
【FI】
   H01M4/48
   H01M4/62 C
   C01G53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-149907(P2015-149907)
(22)【出願日】2015年7月29日
(71)【出願人】
【識別番号】390032230
【氏名又は名称】ニッポン高度紙工業株式会社
【住所又は居所】高知県高知市春野町弘岡上648番地
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤 春夫
【住所又は居所】高知県高知市春野町弘岡上648番地 ニッポン高度紙工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】中西 治通
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA08
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD02
4G048AE06
4G048AE07
4G048AE08
5H050AA02
5H050BA11
5H050CA02
5H050CB11
5H050CB13
5H050CB16
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA03
5H050EA12
5H050EA23
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】正極活物質として使用した電池において、メモリー効果の抑制や充放電電位カーブの平坦性を実現できる、電池正極用活物質を提供する。
【解決手段】電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含み、あるいはまた電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体、あるいはそれと水酸基を有する有機ポリマーが化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を含む電池正極用活物質であって、かつ、水酸化ニッケルを含む状態となったときの、CuΚα線を利用した粉末X線回折法で得られた回折強度―回折角図において、水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が2(2θ°)以上、好ましくは4(2θ°)以上であるか、回折ピークが無い電池正極用活物質を構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含む電池正極用活物質であって、
水酸化ニッケルを含む状態となったときの、CuΚα線を利用した粉末X線回折法で得られた回折強度―回折角図において、水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が2(2θ°)以上であるか、回折ピークが無い
ことを特徴とする電池正極用活物質。
【請求項2】
前記水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が4(2θ°)以上であるか、回折ピークが無いことを特徴とする請求項1に記載の電池正極用活物質。
【請求項3】
電池正極用活物質が、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含むとともに、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の電池正極用活物質。
【請求項4】
前記電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体が、ジルコン酸化合物を含むことを特徴とする請求項3に記載の電池正極用活物質。
【請求項5】
電池正極用活物質が、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含むとともに、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーが化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を含み、
かつ、前記無機/有機ハイブリッド化合物がアルカリ電解液を吸収する性質を持つことを特徴とする請求項1に記載の電池正極用活物質。
【請求項6】
前記電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体が、ジルコン酸化合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の電池正極用活物質。
【請求項7】
前記水酸基を有する有機ポリマーが、ポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項5に記載の電池正極用活物質。
【請求項8】
正極と、負極と、電解液とを少なくとも備えた電池であって、
前記正極が請求項1に記載の電池正極用活物質を含む
ことを特徴とする電池。
【請求項9】
ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、ニッケル鉄電池のいずれかであることを特徴とする請求項8に記載の電池。
【請求項10】
ニッケル水素電池であることを特徴とする請求項8に記載の電池。
【請求項11】
車載用電池であることを特徴とする請求項8に記載の電池。
【請求項12】
請求項1に記載の電池正極用活物質を製造する方法であって、
ニッケル塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和し、水酸化ニッケルまたはその誘導体が、前記水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経る
ことを特徴とする電池正極用活物質の製造方法。
【請求項13】
前記水酸化ニッケルまたはその誘導体が、前記水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程が、前記ニッケル塩と前記水酸基を有する有機ポリマーの共存する溶液から、溶媒を除去することによって固形物を形成し、前記固形物をアルカリに接触させて、前記固形物中の前記ニッケル塩を中和することによって行なわれることを特徴とする請求項12に記載の電池正極用活物質の製造方法。
【請求項14】
前記無機/有機ハイブリッド化合物を形成した後、前記無機/有機ハイブリッド化合物中の有機成分を酸化によって除去することを特徴とする請求項12に記載の電池正極用活物質の製造方法。
【請求項15】
請求項3または請求項5に記載の電池正極用活物質を製造する方法であって、
ニッケル塩と、前記酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和し、水酸化ニッケルまたはその誘導体と前記酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体とが、前記水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経る
ことを特徴とする電池正極用活物質の製造方法。
【請求項16】
前記水酸化ニッケルまたはその誘導体と前記酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体とが、前記水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程が、前記ニッケル塩と、前記酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩とともに、前記水酸基を有する有機ポリマーの共存する溶液から、溶媒を除去することによって固形物を形成し、前記固形物をアルカリに接触させて、前記固形物中の前記ニッケル塩と前記酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩とを中和することによって行なわれることを特徴とする請求項15に記載の電池正極用活物質の製造方法。
【請求項17】
前記無機/有機ハイブリッド化合物を形成した後、前記無機/有機ハイブリッド化合物中の有機成分を酸化によって除去して、請求項3に記載の電池正極用活物質を製造することを特徴とする請求項15に記載の電池正極用活物質の製造方法。
【請求項18】
前記酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体が、ジルコン酸化合物を含むことを特徴とする請求項15に記載の電池正極用活物質の製造方法。
【請求項19】
前記水酸基を有する有機ポリマーが、ポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項12または請求項15に記載の電池正極用活物質の製造方法。
【請求項20】
前記無機/有機ハイブリッド化合物中の有機成分の酸化による除去を空気中での加熱によって行なうことを特徴とする請求項14または請求項17に記載の電池正極用活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池正極用活物質、電池正極用活物質を含む正極を備えた電池、並びに、電池正極用活物質の製造方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
電池は、一般的には、正極及び負極の両電極と、それらを隔てるセパレータ、および電池全体に行き渡った電解液、から成り立っている。負極活物質は、正極活物質に対して電子を渡したがる性質を持ち、放電時には、外部回路を通じて負極活物質から正極活物質に電子が移動することにより電流が流れる。すなわち、放電時には、負極活物質は酸化され、正極活物質は還元される。しかし、正負電極間で外部回路を通じて電子の移動が起こるだけでは、正負両電極に同種の電荷が溜まり続けることになり、電流はすぐに流れなくなってしまう。そのため、電解液が正負両電極の間でイオンを導通することで、溜まった電荷を逃がし、定常的な電流が得られるようになっている。セパレータは、正負両活物質が接触して直接電子の授受を行い、外部に電流が取り出せなくなる、いわゆるショートを防ぐためのものである。二次電池を充電する場合には、外部から電圧をかけて、これと反対の電子移動を起こさせる。すなわち、充電時には、負極活物質は還元され、正極活物質は酸化される。
【0003】
昨今の携帯機器の普及や、環境・エネルギー問題を背景としたハイブリッド車の普及、あるいは電気自動車や余剰電力貯蔵用の定置式大型電池の開発などに見られるように、電池、特に二次電池の果たす役割とそれに対する期待は、ますます大きくなっている。特にハイブリッド車による大幅な燃費向上は、ユーザーの経費節減のみならず、CO排出削減や石油資源の節約など、環境・エネルギー問題に対して大きな効果を発揮している。今後、電池の改良が進み、電気自動車も普及するようになれば、COの根本的な排出削減や化石燃料に依存しないエネルギーシフトも可能になり、環境・エネルギー問題に対してさらに大きな影響を与えることが期待できる。これら自動車関連分野は、元々エネルギー消費規模が大きく、環境・エネルギーに与える影響も大きいが、自動車搭載用の電池には、エネルギー密度、大電流充放電性能、耐久性などの基本的性質に加え、制御の容易さなど厳しい性能条件が要求され、さらなる改良が望まれる。
【0004】
代表的な二次電池の一つであるニッケル水素電池は、不燃性の水系の電解液を使用し、また負極活物質の水素自体は金属ではないため、ショートが起こりにくく、さらに定電流で比較的急速な充電をしても満充電になると自動的に電解液中の水の電気分解が取って代わって電圧の上昇を抑えるなど、比較的安全で充電制御も楽な電池である。現在、ニッケル水素電池は、ハイブリッド車用の電池として多く使用されている。ニッケル水素電池は、負極に水素吸蔵合金、正極に水酸化ニッケル、電解液としてアルカリ電解液を用いており、負極では、下記の(1)式と(2)式に示すように、充電時には水分子の水素の電気化学的還元と水素吸蔵合金への水素の吸蔵が起こり、放電時には逆に吸蔵された水素の電気化学的酸化が起こる。
〔充電〕HO +e →H(吸蔵)+ OH …………(1)
〔放電〕H(吸蔵)+ OH→ HO +e …………(2)
水素吸蔵合金としては、希土類とニッケルの合金を主体としたものが、主に使用されている。
【0005】
正極では、下記の(3)式と(4)式に示すように、水酸化ニッケルあるいはオキシ水酸化ニッケルの電気化学的酸化還元反応が起きる。
〔充電〕Ni(OH)+OH→ NiOOH+HO+e ……(3)
〔放電〕NiOOH+HO+e→Ni(OH)+OH ……(4)
【0006】
このような水酸化ニッケルまたはオキシ水酸化ニッケルを利用した正極(ニッケル極)を用いた電池としては、ニッケル水素電池の他に、ニッケル鉄電池、ニッケル亜鉛電池などもある。前者はニッケル水素電池の負極が鉄電極に置き換わったものであり(下記の(5)式と(6)式を参照)、
〔充電〕Fe(OH)+2e→ Fe+2OH……(5)
〔放電〕Fe+2OH→Fe(OH)+2e ……(6)
後者は亜鉛電極に置き換わったものである(下記の(7)式と(8)式を参照)。
〔充電〕ZnO + HO +2e→ Zn+ 2OH ………(7)
〔放電〕Zn+2OH→ ZnO + HO+2e …………(8)
鉄電極を用いた場合には、ニッケル水素電池の負極である水素吸蔵合金電極に近い電位を示すとともに、より大きな理論容量を持つが、実際には不働態化によって充放電反応に対して活性ではないため、現状ではほとんど実用化されていない。亜鉛電極を用いた場合には、より高いエネルギー密度を持つ電池を形成することができるが、酸化亜鉛がアルカリ電解液に溶解しやすく、溶出した亜鉛イオンが充電時に還元される際に針状金属亜鉛(デンドライト)が生成し、これがセパレータを貫通して短絡を引き起こすなどの問題があり、やはり実用化が難しい。従って、ニッケル極が使用され、水系電解液が使用されている電池は、現状ではニッケル水素電池が最もよく使用されている。
【0007】
従来、正極のニッケル極用活物質として一般的に使用されているのは、球状高密度水酸化ニッケルである。この球状高密度水酸化ニッケルは、一次粒子が高密度に凝集して球状に二次粒子を形成しているものであって、電極への活物質の高密度充填が可能となり、電池容量を高めることができる。球状高密度粒子は、水酸化ニッケルを合成する際に、例えばアンモニアなどの錯体形成剤が含まれ、水酸化ニッケルに対して少しく溶解性を持つ溶液中で水酸化ニッケルを熟成することで作製される。すなわち、はじめは不定形の水酸化ニッケルも、熟成中に溶解度が高い角の部分から優先的に溶解し、角がとれていくとともに、溶けたものが粒子の空孔内に析出していく。これを繰り返すうちに、粒子は球状高密度へと変化していく。この熟成の過程においては、粒子内の結晶(一次粒子)も成長していくことになる。
【0008】
水酸化ニッケルおよびオキシ水酸化ニッケルは層状化合物であり、熟成工程を経て作製された従来の球状高密度水酸化ニッケルは、特に明確な層状結晶を形成している。合成時の水酸化ニッケルは、安定なβ型水酸化ニッケルの構造をとっており、組成もほぼNi(OH)である。一方、充電されて(酸化されて)オキシ水酸化ニッケルとなったものは、(3)式に示したようにNiの価数が高くなり、プロトン(水素イオン)が抜けてNiOOHとなるだけでなく、Niの高価数化による電場の高密度化を緩和すべく、層間が開いて電解液の水分子や水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどが層間にインターカーレーションされる。特に高チャージ状態のNi極においては、Niの価数が非常に高くなり、そのために層間が大きく開き、層間に多くの水分子その他がインターカーレーションしたγ型構造をとる場合もある。γ型オキシ水酸化ニッケルは、充放電電位が低く、電池電圧を低下させる作用を持ち、充放電反応に対する活性も低い。また、γ型オキシ水酸化ニッケルが多量に生成すると、電解液の水が多量にニッケル極に吸収、固定されることになるとともに、ニッケル極自体の体積も大幅に増加するため、密閉型電池ではセパレータのドライアップを引き起こし、電池寿命にも影響を与える。このようにオキシ水酸化ニッケルのγ型化は、電池に対して好ましくない作用を持つため、これを抑制する目的で、従来の水酸化ニッケルではニッケルの一部に亜鉛を置換(固溶)することがよく行なわれていた。
【0009】
また、水酸化ニッケル自体には電子伝導性がなく、特に放電末期においては充放電反応の進行が非常に遅くなるため、その電子伝導性を補うために、従来の水酸化ニッケルは、ニッケルの一部にコバルトを置換(固溶)したり、水酸化ニッケル粒子表面にコバルト酸化物をコートしたりすることが一般的に行なわれていた。また、ニッケル極内に酸化コバルトなどの2価のコバルト化合物を添加しておくことも有効であり、電池に電解液を注入した際、コバルトが溶解し、その後充電するとコバルトが酸化されて溶けなくなるために、自動的に水酸化ニッケル表面にコバルトがコートされた状態となる。
【0010】
このように、ニッケル極が本来持っているさまざまな問題は、現在に至る過程でかなり改良が進んでいる。しかし、現在に至っても解決されていない一つの大きな問題は、メモリー効果と呼ばれるものである。現在ハイブリッド車などで使用されているニッケル水素電池は、小幅な充放電、すなわち少し放電して少し充電するというチャージ状態が大きく変化しない使い方をした場合に、完全に放電しきって完全に充電する使い方をした場合の充放電電圧とは異なる、異常な電圧挙動を示す。この現象は、電池の使い方によって電圧挙動が変化するため、一般的にはメモリー効果と呼ばれており、電池制御を難しくし、そのために電池本来の能力を使い切れない問題がある。携帯機器などではユーザーが深い充放電を行なうように心がけることである程度防止できるが、ハイブリッド車での使用はもともと常時中間的なチャージ状態で小幅な充放電を行なう使い方がされるため、メモリー効果の発現は避けられない。
【0011】
このメモリー効果はニッケル極によるものであり、水酸化ニッケルあるいはオキシ水酸化ニッケルの層構造と深く関わっている。例えば、特許文献1では、放電しきった状態で放置した場合の水酸化ニッケルのc軸長(層間隔)の変化がほとんど起こらないことが重要としており、タングステン、ニオブ、ジルコニウムなどの3価以上のカチオンを水酸化ニッケルに固溶させ、ニッケル以外の2価のカチオン固溶量は少なくする方法が、メモリー効果の抑制に有効であるとしている。
【0012】
ところで、メモリー効果の問題とは関係ないが、本発明者らは、ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物をベースとしたものが、ニッケル水素電池などアルカリ電池に使用することができ、水酸化物イオン伝導性を持つために固体でありながら電解液としての役割を担ったり、その他さまざまな機能を付与したりできるということを開示している(特許文献2、3、4)。例えば、これらの無機/有機ハイブリッド化合物を適用すれば、ニッケル水素電池の電解液量減量に寄与したり、短絡防止機能によってセパレータを薄型化したりすることができる。また、ニッケル亜鉛電池における亜鉛極のデンドライト生成抑制効果などについても開示されている。特許文献2、3によれば、これら無機/有機ハイブリッド化合物は、アルカリ水溶液に浸漬する処理、すなわちアルカリ水溶液を吸収させる処理を施すことで、高い水酸化物イオン伝導性が得られることも開示されている。
【0013】
なお、特許文献2、3によれば、このジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物は、ポリビニルアルコールが共存する溶液中でジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩を中和し、溶媒を除去することで得ることができる。また、特許文献4、5には、あらかじめジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩とポリビニルアルコールが共存する固形物を形成しておき、その固形物をアルカリに接触させてジルコニウム塩またはオキシジルコニウム塩を中和する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2014−49210号公報
【特許文献2】特許第3848882号明細書
【特許文献3】特許第4081343号明細書
【特許文献4】特許第5095249号明細書
【特許文献5】特許第4871225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
メモリー効果のように、使用した条件によって電池電圧のカーブが変化すると、電池制御上の問題を生じる。電池の使用電圧範囲を設定した場合、例えば十分放電しきっていない状態でも放電限界と判断されたり、十分充電しきっていない状態でも充電終了と判断されたりして、本来の容量が十分使用できないという問題が起こる。ハイブリッド車などでは特に、常時中間的なチャージ状態で小幅な充放電を繰り返す使い方がされるためメモリー効果が出やすく、メモリー効果で電圧が変化してしまうと電圧からチャージ状態を把握することが難しくなり、あるいは電圧をある基準電圧に制御することでチャージ状態を基準状態に戻す作業も困難になる。従って、電池の使用に余裕を持たせるために、使用電圧範囲を無難な範囲に狭めるなど、本来の電池能力を十分に活かさない使用条件となってしまっている。
【0016】
前述した通り、ニッケル水素電池のメモリー効果は、正極であるニッケル極の水酸化ニッケルあるいはオキシ水酸化ニッケルの層状構造に起因する。ニッケル極において、放電されてニッケルが二価あるいはそれに近い状態にある場合には、層間の閉じたβ−Ni(OH)相が熱力学的に安定であるが、充電されてニッケルがより高い価数になると、ニッケル原子の高電場を緩和するために層間が開き、そこに誘電率の高い水分子などが挿入されている状態がむしろ熱力学的に安定である。従って、本来は充放電に伴って層間の拡張・収縮および層間物質の挿入・離脱が進行するはずであるが、この過程は大きな水分子の層内移動が伴うなど非常に遅い。
従って、例えば深い充放電を行ない比較的短時間にチャージ状態が大きく変化する使い方をした場合には、層間の拡張・収縮および層間物質の挿入・離脱が完全には追従できず、中間的な準安定状態でニッケルの価数だけが大きく変化することになる。そしてこのような深い充放電を行なった場合のニッケル極充放電電位と、層間の拡張・収縮および層間物質の挿入・離脱が十分に起こっている時の電位にはかなり違いがある。一方、小幅な充放電しか行なわれなかった場合、チャージ状態の変化は少なく、さらに電極中の充放電反応が起こりやすい場所と起こりにくい場所があると、充放電反応の起こりやすい場所に反応が集中し、反応が起こりにくい場所はさらにチャージ状態が変化しないことになる。このようにして、ニッケル極活物質の反応が起こりにくい部分では、層間の拡張・収縮および層間物質の挿入・離脱によって安定な状態に移行する時間的余裕が与えられる。その場合、ニッケル極電位は深い充放電を行なった時と異なっていく。このように、充放電の内容によってニッケル極電位が異なることから、メモリー効果を生じる。
【0017】
メモリー効果がこのようなメカニズムで生じているとすると、特許文献1のように、水酸化ニッケルに3価以上の価数の高いカチオンを導入して2価のカチオンを少なくし層間を閉じない状況にできれば、メモリー効果を抑制できる可能性があると考えられる。
しかしながら、層間を閉じないようにするために3価以上のカチオンを相当な量固溶する必要があるが、従来の電池用水酸化ニッケルは、球状高密度化のために熟成工程を経ていることから、高度に結晶化され、むしろ水酸化ニッケルの純度が高くなる方に進んでいるので、異種カチオンの固容量には限界がある。
一方、熟成工程を経ずに、3価以上のカチオンを多量に固溶できても、それらは充放電には寄与しない成分であり、ニッケル極の容量を大きく減少させる。
また、価数の高いカチオンを導入する方法は、低チャージ側で層間が閉じることを抑制できるが、高チャージ側で層間が大きく開くことを防止するのは難しい。
従って、特許文献1のような方法でメモリー効果を十分抑制することはできない。
【0018】
ところで、層間の拡張・収縮および層間物質の挿入・離脱などの遅い過程が存在することは、結局電極の活物質にいろいろな物質状態(物質種)が存在してしまうことを意味し、充放電電圧カーブの平坦性を悪くすることになる。すなわち、放電しやすい物質はより高い電圧で放電され、放電しにくい状態の物質はより低い電圧で放電されるため、結果として放電中に大きく電圧が変化する。また、充電しやすい物質はより低い電圧で充電され、充電しにくい状態の物質はより高い電圧で充電されるため、結果として充電中に大きく電圧が変化する。充放電電圧カーブの平坦性が悪いことは、放電末期での放電特性の低下、充電末期での充電効率の低下、貯蔵エネルギー利用効率の低下などを招く。
従来のニッケル極活物質は、層状結晶が成長しており、層間の拡張度合いの異なる物質状態(物質種)が存在するため、充放電電圧カーブの平坦性はよくない。
【0019】
ハイブリッド車などでは、電池は小幅な充放電を繰り返す使われ方をするが、充放電量の収支を細かく積算していけば、本来その時点でのチャージ状態を把握できるはずである。しかし、充電効率が100%では無かったり、使用中に自己放電が起こったりすれば、実際のチャージ状態は充放電積算容量から予測したものとずれていく。従って、使用していくうちにチャージ状態が徐々にずれていくことで電圧は変化していく。このこともまた、電池の制御を難しくする。
その際、もし充放電電圧カーブが平坦であれば、チャージ状態のずれによる電圧変化も少なくてすむことになる。また、チャージ状態のずれによる電圧の変化は、時々電圧を基準値に制御し、チャージ状態を基準状態に戻すことにより、ずれを戻すことができる。
しかし、従来のニッケル極活物質は、充放電電圧カーブが平坦ではないため、電圧が大きく変化する。また、従来のニッケル極を使用した電池はメモリー効果が大きいため、電圧を基準値に制御しても、チャージ状態が意図した基準状態に戻っている保証はない。
【0020】
もし、水酸化ニッケルあるいはオキシ水酸化ニッケルが、結晶性の非常に低い、よりランダムな構造、あるいはアモルファスであれば、層構造が完全に安定な状態には移行できず、メモリー効果を現れにくくすることができる。さらに、例えばナノ粒子のように微細な粒子であれば、安定な層構造を形成し得ないため、より根本的にメモリー効果を抑止することができる。
また、ナノ粒子のような微粒子では、層構造そのものが形成されず、層間の拡張度合いによる物質の状態の違いが無いため、非常に均一な充放電が行なわれ、充放電電位カーブが平坦になる。
すなわち、メモリー効果の抑制、充放電電位カーブの平坦性などの点から、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体からなる電池用活物質は、低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子であることが理想的である。しかし、そのような電池用活物質は、例えば、ニッケル塩を原料として水酸化ニッケルを液相中で沈殿させる一般的な方法を用いて製造しても十分なものはできない。ましてや、前述の通り、従来の一般的な電池用水酸化ニッケルは、熟成工程を経て、層状結晶がより成長したものであり、理想的な状態とは逆の方向にある。メモリー効果の抑制、充放電電位カーブの平坦性に対して効果を得るためには、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体が、十分に低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子である必要があり、特別な製法の工夫がなければそれらを実現することは難しい。
また、仮にある程度の低結晶性、アモルファスあるいは微粒子ができたとしても、これらの物質は元々不安定であり、より安定な結晶へと変化していき、ナノ粒子のような微粒子は凝集するとともに、さらには成長していきやすい。例えば、ナノ粒子のような微粒子は、凝集を防止するために液体の中に保存されるケースが多いが、電極化する際にはいずれ凝集が起こってしまう。低結晶性あるいはアモルファスの電極活物質も充放電、すなわち酸化反応と還元反応のような激しい物質変化を繰り返すうちに、結晶化が進む場合もある。
【0021】
低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子を安定的に維持する方法の一つは、生成した微粒子を別の安定な物質と共存させ、微粒子の凝集や成長を防止することである。別の安定な物質と共存させることで、微粒子同士が隔てられ、凝集や成長を防ぐことができる。それにより結晶の成長も阻害することができ、低結晶性、アモルファスが維持される。ただし、共存させる物質には、多くの条件が要求される。
まず、電極活物質であることから、共存させる物質は、液体ではなく固体でなくてはならない。また、電池内の特に正極では酸化力の強い環境となるため、それに対する十分な化学的安定性を持つ必要がある。さらに、共存させる物質が微粒子の凝集、成長の抑制機能を安定的に維持するためには、電極作動電位範囲において酸化還元反応を起こさないことが望ましい。ニッケル水素電池などのアルカリ電解液を使用する電池では、共存させる物質が強アルカリに耐えることが必要である。さらに、電極活物質が十分機能するためには、共存させる物質自身がイオン電導性を持てばなお好ましい。これらの条件を満たし、かつナノ粒子のような微粒子と共存し、凝集や成長を防止する性質のある固体物質が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記従来の課題を解決するために為されたものである。
本発明の電池正極用活物質は、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含む電池正極用活物質であって、水酸化ニッケルを含む状態となったときの、CuΚα線を利用した粉末X線回折法で得られた回折強度―回折角図において、水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が2(2θ°)以上であるか、回折ピークが無いことを特徴とする。
上述の本発明の電池正極用活物質において、より好ましくは、水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が4(2θ°)以上であるか、回折ピークが無い構成とする。
【0023】
上述の本発明の電池正極用活物質において、好ましくは、電池正極用活物質が、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含むとともに、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体を含む構成とする。
この構成において、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体は、好ましくはジルコン酸化合物を含む。
【0024】
上述の本発明の電池正極用活物質において、好ましくは、電池正極用活物質が、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含むとともに、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーが化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を含み、かつ、この無機/有機ハイブリッド化合物がアルカリ電解液を吸収する性質を持つ構成とする。
この構成においても、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体は、好ましくはジルコン酸化合物を含む。また、水酸基を有する有機ポリマーは、好ましくはポリビニルアルコールを含む。
【0025】
本発明の電池は、正極と負極と電解液を少なくとも備え、正極が本発明の電池正極用活物質を含む。本発明の電池は、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、ニッケル鉄電池に適用することができる。本発明の電池はまた、車載用電池に適用することができる。
【0026】
本発明の電池正極用活物質の製造方法は、上述した本発明の電池正極用活物質を製造する方法であって、ニッケル塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和し、水酸化ニッケルまたはその誘導体が、水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって、電極正極用活物質を製造する。
そして、水酸化ニッケルまたはその誘導体が、水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を、ニッケル塩と水酸基を有する有機ポリマーの共存する溶液から、溶媒を除去することによって固形物を形成し、この固形物をアルカリに接触させて、固形物中のニッケル塩を中和することによって行なうことができる。
また、この製造方法において、無機/有機ハイブリッド化合物を形成した後、無機/有機ハイブリッド化合物中の有機成分を酸化によって除去することもできる。そして、無機/有機ハイブリッド化合物の有機成分の酸化による除去は、空気中での加熱によって行うことができる。
また、この製造方法において、有機ポリマーは、好ましくはポリビニルアルコールを含む。
【0027】
他の本発明の電池正極用活物質の製造方法は、ニッケル塩と、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和し、水酸化ニッケルまたはその誘導体と酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体とが、水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって電池正極用活物質を製造する。
そして、水酸化ニッケルまたはその誘導体と酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体とが、水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を、ニッケル塩と、酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩とともに、水酸基を有する有機ポリマーの共存する溶液から、溶媒を除去することによって固形物を形成し、その固形物をアルカリに接触させて、固形物中のニッケル塩と酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩とを中和することによって行なうことができる。
この製造方法において、無機/有機ハイブリッド化合物を形成した後、無機/有機ハイブリッド化合物中の有機成分を酸化によって除去することもできる。そして、無機/有機ハイブリッド化合物の有機成分の酸化による除去は、空気中での加熱によって行うことができる。
また、この製造方法において、酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体は、好ましくはジルコン酸化物を含み、有機ポリマーは、好ましくはポリビニルアルコールを含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明の電池正極用活物質の構成によれば、酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体が、十分に低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子であるため、メモリー効果が抑制され、充放電電位カーブが平坦である。すなわち、活物質が水酸化ニッケルを含む状態となったときの、CuΚα線を利用した粉末X線回折法で得られた回折強度―回折角図において、水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が2(2θ°)以上であるか、回折ピークが無く、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体が、実際に、極めて低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子の状態となっているため、メモリー効果の抑制、充放電電位カーブの平坦性改善が実現される。
【0029】
本発明の電池正極用活物質において、さらに、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体が、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体に共存する構成とした場合には、低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子を形成しやすくなり、かつ、微粒子の状態を安定して維持できる。
【0030】
本発明の電池正極用活物質において、さらに、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーが結合した、無機/有機ハイブリッド化合物が、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体に共存する構成とした場合にも、同様に、低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子を形成しやすくなり、かつ、微粒子の状態を安定して維持できる。
【0031】
本発明の電池の構成によれば、正極が本発明の電池正極用活物質を含むので、メモリー効果が抑制され、充放電電位カーブの平坦性が良好である。従って、電池の制御が容易であり、本来の電池性能を活かし切ることができる。
【0032】
本発明の電池正極用活物質の製造方法によれば、ニッケル塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和して、水酸化ニッケルまたはその誘導体と、水酸基を有する有機ポリマーとが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって、極めて低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子の水酸化ニッケルまたはその誘導体を容易に製造することができる。
【0033】
他の本発明の電池正極用活物質の製造方法によれば、ニッケル塩と、酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和して、水酸化ニッケルまたはその誘導体と酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体とが、水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって、低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子の水酸化ニッケルまたはその誘導体を容易に製造できるとともに、電池作動時に酸化還元反応を起こさない無機酸化物または無機/有機ハイブリッド化合物が共存するために、低結晶性や微粒子性を安定的に維持できるような電池正極用活物質を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る電池正極用活物質の製造工程の代表的な実施形態を概略的に示すシステム図である。
図2】A 従来の電池用球状高密度水酸化ニッケルの粉末X線回折法で得られた回折強度―回折角図である。 B 本発明の水酸化ニッケルを含む電池正極用活物質の粉末X線回折法で得られた回折強度―回折角図である。
図3】従来の電池用球状高密度水酸化ニッケル(a)と本発明の電池正極用活物質(b)を使用した電極の充放電電位カーブである。
図4】A 従来の電池用球状高密度水酸化ニッケルを使用した電極のチャージ状態(SOC)30〜70%で小幅な充放電を20回行なった前後での充放電電位カーブである。 B 本発明の電池正極用活物質を使用した電極のチャージ状態(SOC)30〜70%で小幅な充放電を20回行なった前後での充放電電位カーブである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の電池正極用活物質は、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含む電池正極用活物質であって、水酸化ニッケルを含む状態となったときの、CuΚα線を利用した粉末X線回折法で得られた回折強度―回折角図において、水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が2(2θ°)以上であるか、回折ピークが無いことを基本とする。
より好ましくは、水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が4(2θ°)以上であるか、回折ピークが無い構成とする。
また、本発明の電池正極用活物質において、好ましくは、電池正極用活物質が、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含むとともに、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体を含む構成とする。
また、本発明の電池正極用活物質において、好ましくは、電池正極用活物質が、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含むとともに、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーが化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を含み、かつ、この無機/有機ハイブリッド化合物がアルカリ電解液を吸収する性質を持つ構成とする。
【0036】
本発明の電池正極用活物質の製造方法は、ニッケル塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和し、水酸化ニッケルまたはその誘導体が、水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって、電池正極用活物質を製造する。
【0037】
他の本発明の電池正極用活物質の製造方法は、ニッケル塩と、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和し、水酸化ニッケルまたはその誘導体と、電池動作時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体とが、水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって、電池正極用活物質を製造する。
【0038】
本発明において、電池正極用活物質は、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種類を含んでいる。これら水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体、すなわちニッケル化合物は、化合物中に含まれるニッケル原子が2価以上のあらゆる価数であっていいが、電池作動時に酸化還元反応を起こすものであるため、電極作動電位範囲内においてニッケル原子の平均価数が変化する。これらの活物質が適用される電極は正極であるから、充放電において前述した(3)式、(4)式のような反応が起こるが、これらの反応式はあくまでも現れる物質種が簡略化された形で示されたものであり、実際にはニッケルの価数、水和数などが様々な形をとり得る。特に、これらニッケル化合物は、層状化合物であって、層間に電解液から水分子や水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどがインターカーレーションするため、複雑な組成となる。さらには、前述した通り、電池用水酸化ニッケルは、コバルト、亜鉛などの異種金属を固溶するのが一般的であり、本発明のニッケル化合物においても、ニッケルが主な金属成分でさえあれば、他のあらゆる金属成分を置換、固溶することができる。
【0039】
本発明では、活物質に含まれるニッケル化合物が十分に低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子であることが望まれる。ニッケル化合物は、正極で使用する場合、(4)式に示した通り、放電された状態では水酸化ニッケルの存在する状態とすることができる。また、水酸化ニッケルが大気中で熱力学的に最も安定な状態であるため、活物質を作製する際には、主に水酸化ニッケルの形で作製される。すなわち、本発明の活物質は、いずれかの過程で水酸化ニッケルを含む状態をとり得る。ここでの水酸化ニッケルとは、広義の意味であり、ニッケルの価数がほぼ2であるニッケルの水酸化物全体を意味し、例えばニッケル、酸素、水素以外の原子が固溶していてもよいし、水分子や水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどが層間にインターカーレーションしていてもよいし、ニッケルの価数が2から少しずれていてもよい。活物質中のニッケル化合物が低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子である場合、当然水酸化ニッケルの状態をとった場合にも低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子である。従って、本発明では、水酸化ニッケルの状態でも十分に低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子である必要があるが、そのような微粒子である場合、CuΚα線を利用した粉末X線回折法で得られた回折強度―回折角図において水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が2(2θ°)以上である。ただし、低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子である効果をより明確に発現させるためには半値幅が4(2θ°)以上、あるいは回折ピークがないことが望ましい。
【0040】
回折強度―回折角図とは、粉末X線回折の結果として一般的に得られるものであり、回折角2θとX線のカウント数との関係を示すものである。物質が結晶性である場合、結晶面の規則的な積層によってX線の回折現象が起こり、結晶面の面間隔に対応するある特定の回折角においてX線のカウント数が著しく高くなり、回折強度―回折角図においてその回折角位置にシャープなピークが得られる。結晶面の積層の規則性が崩れている場合、あるいは粒子が小さく、結晶面の積層数が多くない場合、ピークは高さが低く幅の広いブロードなものとなるため、半値幅(回折ピークの頂点の高さの半分の位置でのピーク幅を2θの角度単位2θ°で表したもの)が大きくなる。また、完全なアモルファスあるいは物質が結晶を形成できないほど小さいナノ粒子などの微粒子の場合、本来その物質が結晶である場合にピークが生じるはずの回折角においても全く回折ピークが現れない。すなわち、半値幅は無限大となる。従って、半値幅はその物質の低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子の程度を表す尺度とみなすことができ、その値が大きいほど結晶性が低く、よりアモルファスあるいはより微粒子であることを示している。活物質の回折強度―回折角図において、その中に含まれる水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が2(2θ°)以上であることは、層状結晶がそれほど成長していないことを意味し、4(2θ°)以上であることは、層状結晶がほとんど形成されていないことを意味し、回折ピークが無い状態では層状結晶はまったく形成されていないことを意味する。本発明では、水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が2(2θ°)以上、好ましくは4(2θ°)以上であるか、回折ピークが無い状態となる。
【0041】
本発明において、酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体は、好ましくは、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と共存している。酸化還元反応を起こすニッケル化合物は、ナノ粒子のような微粒子の状態で他の金属酸化物またはその誘導体と共存することで、微粒子の凝集・成長あるいは結晶化を阻害され、低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子の状態を形成しやすくなり、かつ、微粒子を安定して維持できる。本発明の活物質は、主にアルカリ電解液を使用した電池に使用されるため、ニッケル化合物と共存する金属酸化物またはその誘導体にも高い耐アルカリ性が要求される。また、電極作動電位内で酸化還元反応を起こさず、高い耐アルカリ性を持つことも必要であるから、金属酸化物またはその誘導体としてはジルコン酸化合物が好適である。
【0042】
ジルコン酸とは、ZrOを基本単位とし、それがHOを含んでいる化合物であり、一般式ZrO・xHOで表せるものであるが、本発明におけるジルコン酸化合物とは、ジルコン酸及びその誘導体、或いはジルコン酸を主体とした化合物全般のことを示す。よって、ジルコン酸の特性が損なわれない範囲で一部別の元素が置換されていてもよく、化学量論組成からのずれ、或いは添加物を加えることも許容される。例えばジルコン酸の塩や水酸化物もZrOを基本単位としたものであり、塩や水酸化物を基本とした誘導体、或いはそれを主体とした化合物も、本発明におけるジルコン酸化合物に含まれる。
【0043】
本発明において、酸化還元反応を起こすニッケル化合物と共存させる物質は、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と有機ポリマーが化合した無機/有機ハイブリッド化合物とすることもできる。
ニッケル化合物の微粒子の凝集・成長あるいは結晶化を阻害するという点からは、共存する物質は、無定型の連続体をとることができ、ニッケル化合物の微粒子全体に接触できる性質を持つ方が有利であり、本来金属酸化物のような無機物よりも有機ポリマーの方が有利である。しかし、有機ポリマーの多くは、無機物質との親和性が低く、分離する傾向が強いため、結局ニッケル化合物に対する作用が少なくなってしまう。無機物質と親和性の高い有機ポリマーもあるが、多くは極性基を持ち、親水性が強いために電解液に溶けてしまう。仮に、無機物質と親和性の高い有機ポリマーがニッケル化合物と化学結合したとすると、電解液への溶出は抑えられるが、酸化還元反応を起こすニッケル化合物は電池作動時に大きな物質変化を起すため、一度化学結合を形成したとしても解消されてしまう可能性がある。また、電池電極ではラジカルのような活性種もできやすく、また正極は非常に強い酸化力のある環境でもあるが、有機ポリマーのうち、炭化水素系ポリマーは特に酸化やラジカルに弱く、電極中の環境に耐えられず、分解するなどの問題を起こす場合が多い。フッ素系ポリマーは、より化学的安定性が高いが、材料そのものが高価であるとともに、燃焼時にフッ化水素など有毒ガスを発生するため、廃棄処理あるいはリサイクル処理にコストがかかってしまう。また、有機ポリマーには疎水性のものが多く、その場合には電解液を吸収しないため、ニッケル化合物と電解液との間のイオン伝導を遮断してしまう。
【0044】
ニッケル化合物と共存させる物質として無機/有機ハイブリッド化合物を使用することにより、上記のような有機ポリマーの問題を解決できる。ニッケル化合物と共存させる無機/有機ハイブリッド化合物は、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーが化学結合したものである。無機/有機ハイブリッド化合物とすることで、有機ポリマーのように無定形の連続体をとることができ、ニッケル化合物の微粒子全体に接触できる。また、無機/有機ハイブリッド化合物は、無機物質の性質も兼ね備えているため、ニッケル化合物に対する親和性が高く、結合が安定であるため、粒子成長、結晶成長などを阻害する効果が高い。また、無機物質の性質として、酸化あるいはラジカルに対する耐性が高い。さらに、有機ポリマーが親水性であっても、無機物質と化合しているため電解液に溶解することはない。また、無機/有機ハイブリッド化合物は、電解液を吸収することができ、ニッケルあるいはニッケル化合物を連続体として包み込んでいたとしても、イオンの移動を阻害しない。
【0045】
無機/有機ハイブリッド化合物の金属酸化物またはその誘導体が、もし電池作動時に酸化還元反応を起こすものであるとすると、電池が充放電されている間、無機/有機ハイブリッド化合物も大きく変化することになる。そのため、無機/有機ハイブリッド化合物そのものが分解されるなど、安定な状態に保つことが難しくなり、ニッケル化合物に対する微粒子成長、結晶化成長の抑制効果に問題を生じる。
従って、本発明では、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と有機ポリマーが化合した無機/有機ハイブリッド化合物が使用される。また、本発明の活物質は主にアルカリ電解液を使用した電池に使用されるため、強アルカリにも耐えられるだけの耐アルカリ性が要求されるが、その点から無機/有機ハイブリッド化合物の金属酸化物またはその誘導体にも高い耐アルカリ性が要求される。電極作動電位内で酸化還元反応を起こさず、高い耐アルカリ性を持つ観点から、金属酸化物またはその誘導体としてはジルコン酸化合物が好適である。
【0046】
ニッケル化合物と共存させる無機/有機ハイブリッド化合物の水酸基を有する有機ポリマー成分は、基本的にはどのようなものでもよい。本発明で使用される最も代表的な有機ポリマーはポリビニルアルコールであり、ポリビニルアルコールは、その水酸基を介して無機物質と結合する。無機/有機ハイブリッド化合物の有機ポリマー成分がポリビニルアルコールである場合、このポリビニルアルコールは完全なものである必要がなく、本質的にポリビニルアルコールとして機能するものであれば使用することができる。例えば、ヒドロキシル基の一部が他の基で置換されているもの、一部分に他のポリマーが共重合されているものも、ポリビニルアルコールとして機能することができる。また、本発明の反応過程でポリビニルアルコールを経由すれば同様な効果が得られるので、ポリビニルアルコールの原料となるポリ酢酸ビニルなどを出発原料とすることができる。
【0047】
無機/有機ハイブリッド化合物において、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と、水酸基を有する有機ポリマーは、化学結合している。すなわち、両者は分子レベル、ナノレベルでお互いに絡み合うとともに、有機ポリマーの水酸基を介して脱水縮合によって強固に結びついている。ハイブリッド化合物は、化合物であって、金属酸化物またはその誘導体と有機ポリマーとの物理的な混合による混合物とは区別される。すなわち、混合物と異なり、ハイブリッド化合物においては、各構成成分の化学的性質はハイブリッド化後では必ずしも保持されない。例えば、本発明の場合、ハイブリッド化合物の構成成分であるポリビニルアルコールは、単独では水溶性(熱水溶解性)であるが、ジルコン酸化合物とのハイブリッド化合物形成後は熱水には基本的に溶解しない。このようにハイブリッド化後に化学的性質が変化していることにより、これらは物理的な混合による混合物とは異なるハイブリッド化合物であると言うことができる。
【0048】
無機/有機ハイブリッド化合物においては、有機ポリマーに対する無機物質の量が少なすぎると、十分な耐水性、アルカリ耐性、耐酸化性が得られない。一方、無機物質が多すぎると、柔軟性が損なわれ、ニッケル化合物微粒子を包み込む作用が損なわれる。従って、ハイブリッド化合物における、酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の重量の有機ポリマー重量に対する重量比が0.01〜1になるように、制御するのが好ましい。
【0049】
次に、本発明の電池正極用活物質の製造方法を説明する。
一つの本発明の製造方法では、ニッケル塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和し、水酸化ニッケルまたはその誘導体が、水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって、電池正極用活物質を得る。
また、他の本発明の製造方法では、ニッケル塩と酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩を、水酸基を有する有機ポリマーの共存する状態でアルカリによって中和し、水酸化ニッケルまたはその誘導体と、該酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体とが、該水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって、電池正極用活物質を得る。
【0050】
上述の各製造方法において、水酸化ニッケルまたはその誘導体と無機/有機ハイブリッド化合物を形成する水酸基を有する有機ポリマー成分は、基本的にはどのようなものでもよい。ポリビニルアルコールや各種セルロース誘導体などが使用できるが、本発明で使用される最も代表的な有機ポリマーはポリビニルアルコールであり、ポリビニルアルコールは、その水酸基を介して水酸化ニッケルまたはその誘導体と結合する。無機/有機ハイブリッド化合物の有機ポリマー成分がポリビニルアルコールである場合、このポリビニルアルコールは完全なものである必要がなく、本質的にポリビニルアルコールとして機能するものであれば使用することができる。例えば、ヒドロキシル基の一部が他の基で置換されているもの、一部分に他のポリマーが共重合されているものも、ポリビニルアルコールとして機能することができる。また、本発明の反応過程でポリビニルアルコールを経由すれば同様な効果が得られるので、ポリビニルアルコールの原料となるポリ酢酸ビニルなどを出発原料とすることができる。
【0051】
ニッケル塩は、通常、安定な状態ではニッケルが2価の状態にあり、アルカリで中和すると、特に酸化性・還元性のある環境でなければ水酸化ニッケルを生じる。これに対して、本発明の製造方法においては、水酸基を有する有機ポリマーが共存するため、水酸化ニッケルは生成時に水酸基を介して有機ポリマーとも結びつく。すなわち、中和されて生成したばかりの小さな水酸化ニッケルは、不安定であり、何かと結びついて安定化しようとする。この時ニッケル塩だけしかないとすると、生まれたての水酸化ニッケル同士が結びつき、凝集し、成長していくが、近傍に水酸基を有するポリマーが存在すると、そのポリマーとも結びつく。水酸化ニッケルがポリマーと結びつくため、水酸化ニッケルの成長は抑制され、水酸化ニッケルはナノ粒子のような微粒子として留まる。本発明では、このようにして、水酸化ニッケルのナノ粒子のような微粒子を作製できる。このように分子レベル、ナノレベルで有機ポリマーと結合した水酸化ニッケルは、また結晶化も阻害される。
【0052】
上述の無機/有機ハイブリッド化合物において、水酸化ニッケルと、水酸基を有する有機ポリマーは、化学結合している。すなわち、両者は分子レベル、ナノレベルでお互いに絡み合うとともに、有機ポリマーの水酸基を介して脱水縮合によって強固に結びついている。ハイブリッド化合物は、化合物であって、水酸化ニッケルと有機ポリマーとの物理的な混合による混合物とは区別される。すなわち、混合物と異なり、ハイブリッド化合物においては、各構成成分の化学的性質はハイブリッド化後では必ずしも保持されない。例えば、本発明の製造方法で形成されるハイブリッド化合物の構成成分の代表的な例であるポリビニルアルコールは、単独では水溶性(熱水溶解性)であるが、水酸化ニッケルまたはその誘導体とのハイブリッド化合物形成後は熱水には基本的に溶解しない。このようにハイブリッド化後に化学的性質が変化していることにより、これらは物理的な混合による混合物とは異なるハイブリッド化合物であると言うことができる。
【0053】
このような水酸化ニッケルと水酸基を有する有機ポリマーとの無機/有機ハイブリッド化合物は、そのまま電池用活物質として使用すると、水酸化ニッケルは酸化あるいは還元されて別の物質として変化し、その際有機ポリマーとの結合がはずれやすくなる。この結合がはずれてしまった場合、水酸基を有するポリマーは、ただのポリマーに変わり、電解液中に溶け出してしまったり、耐酸化性が低下して分解してしまったりして、電池内で問題を起こす要因となり得る。特に密閉式二次電池においては、電池内でのこの有機ポリマーの酸化が進むと、負極の充電リザーブ及び放電リザーブの量が理想状態から大きくずれてしまう問題が生じる。また、密閉式電池では電解液量が少なく制限されているため、有機ポリマーの酸化生成物が電解液に悪影響を及ぼしやすい。これらの問題を避けるために、電池に導入する前に、水酸基を有するポリマーをあらかじめ故意に酸化によって除去しておくこともできる。例えば、空気中で加熱し、燃焼させて除去することも可能である。
【0054】
ニッケル塩の中和時に、ニッケル塩とともに電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩を共存させておき、その塩もアルカリによって中和されるようにすれば、水酸化ニッケルと同じように、その塩の中和生成物も水酸基を有する有機ポリマーと結びつき、無機/有機ハイブリッド化合物を形成する。この金属酸化物またはその誘導体は、水酸化ニッケルと異なり電池作動時に酸化還元反応を起こさないものであるため、電池作動時にも無機/有機ハイブリッド化合物は安定に維持され、先述の通り、それによってニッケル化合物の成長を抑制する作用を持つ。この場合には有機ポリマーの電池内での溶解、酸化分解等は起こりにくいが、それらの問題を完全に防止するためには、前述した場合と同様に、電池に導入する前に、有機ポリマーをあらかじめ酸化によって除去することもできる。例えば、空気中で加熱し、燃焼させて除去することも可能である。その場合、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体は酸化されずに残留するため、それによってニッケル化合物の成長を抑制する作用が維持される。
【0055】
ニッケル塩は、使用する溶媒中で溶解するものであればどのような種類のものでもよく、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、あるいはそれらの水和物などが使用でき、含水率などはどのようなものでもよい。電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体は、好ましくはジルコン酸化合物であるが、その塩としては、アルカリで中和されることによってジルコン酸化合物を生成し、ジルコン酸化合物と水酸基を有する有機ポリマーとの安定な無機/有機ハイブリッド化合物を生成するものであれば、どのようなものでもよい。ジルコニウム塩、オキシジルコニウム塩が使用でき、オキシ塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムあるいはそれらの水和物などが使用できる。
【0056】
本発明の電池正極用活物質の製造方法の一つの実施形態は、水酸化ニッケルまたはその誘導体が水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程が、ニッケル塩と、水酸基を有する有機ポリマーとが共存する溶液から、溶媒を除去することによって固形物を形成し、この固形物をアルカリに接触させて固形物中のニッケル塩を中和することによって、行なわれものである。
また、本発明の電池正極用活物質の製造方法の他の一つの実施形態は、水酸化ニッケルまたはその誘導体と酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体とが水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程が、ニッケル塩と、酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩と、水酸基を有する有機ポリマーとが共存する溶液から、溶媒を除去することによって固形物を形成し、この固形物をアルカリに接触させて固形物中のニッケル塩と酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩を中和することによって、行なわれものである。
【0057】
ここで、上述した製造方法の実施形態を概略的に示すシステム図を、図1に示す。
図1に示すように、先ず、原料として、ステップ1で溶媒を、ステップ2でニッケル塩を、ステップ3で(必要ならば)電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の塩を、ステップ4で水酸基を有する有機ポリマーを、それぞれ準備する。
次に、ステップ5で、これらの原料を混合して、ニッケル塩、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の塩、水酸基を有する有機ポリマーが共存する原料溶液を得る。この時、溶媒としては、ニッケル塩、酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩、水酸基を有する有機ポリマー、のそれぞれを溶解できるものであれば、どのようなものでもよい。金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩の代表例は前述した通り、ジルコニウム塩、オキシジルコニウム塩であり、有機ポリマーの代表例はポリビニルアルコールであるが、この場合最適な溶媒は水である。
【0058】
次に、ステップ6で、ニッケル塩、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の塩、水酸基を有する有機ポリマー、が共存する原料溶液から溶媒を除去し、ステップ7で固形物を得る。
その後、ステップ8で、固形物をアルカリに接触させて、ニッケル塩と、酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の金属成分の塩を、それぞれ中和し、ステップ9で、水酸化ニッケルまたはその誘導体と酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体とが水酸基を有する有機ポリマーと化学結合した、無機/有機ハイブリッド化合物を含んだ活物質を得る。この場合に、生成する水酸化ニッケル粒子は、有機ポリマーとの結合、あるいは隣接する酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と有機ポリマーのハイブリッド化合物の生成によって、成長を阻害され、結晶化も抑えられるため、粉末X線回折法で得られた回折強度―回折角図において結晶001面に対応する回折ピーク強度の半値幅が2(2θ°)以上、あるいは4(2θ°)以上であるか、回折ピークが無いものとなる。
【0059】
ステップ7における、ニッケル塩、電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体の塩、水酸基を有する有機ポリマー、をそれぞれ含む固形物は、どのような形態でもよく、膜状、糸状、粉末状などが可能である。取り扱いのしやすさの点では、これらのうち膜状が望ましい。
膜状物の場合は、原料溶液を平面上に流延し、その後加熱によって溶媒を除去することで成形できる。
糸状物の場合は、例えば、口の細いノズルから原料液を噴出させると同時に、加熱によって溶媒を除去することで成形できる。原料液に電場を印加し糸状に飛び出させる、エレクトロスピニング法を利用することも可能である。
粉末状の場合は、原料液を噴霧すると同時に加熱して溶媒を除去する、スプレードライ法により、成形することができる。粉末状あるいは粒状に成形する場合は、溶媒を除去せず、液滴の状態でアルカリの中に浸漬する方法も可能である。
【0060】
ステップ8でのアルカリによる中和工程において、短時間で効率的に中和を行なうためには、固形物の比表面積が大きい方が望ましく、膜状であれば1mm以下の厚さがよく、糸状であれば直径1mm以下がよく、粉末状でも直径1mm以下の大きさが望ましい。
【0061】
ステップ8において、溶媒除去後に接触させるアルカリは、これらの中和が行えるものであればどのようなものでもよく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等が使用可能である。これらは単独でも、複数混合した状態で使用してもよい。アルカリ溶液を使用する場合、アルカリの濃度は基本的にはどのようなものでもよいが、中和工程の時間を短縮すること、中和反応中の溶液濃度の変化を抑えること、あるいは固形物からの各成分が溶出する前に中和反応を行なうことなどの点から、アルカリ溶液は濃度が高い方が好ましい。アルカリと接触させる方法としては、アルカリの溶液に浸漬するか、アルカリ溶液を複合化合物に塗布或いは噴霧するか、アルカリの蒸気に曝すなどの方法がある。
【0062】
前述した通り、従来電池に使用される水酸化ニッケルには、コバルトや亜鉛が固溶されているが、本発明の活物質においても、図1のステップ5の原料混合溶液にコバルト塩や亜鉛塩を溶解しておくことによって、コバルトや亜鉛を固溶することができる。
【0063】
このようにして作製した活物質中の無機/有機ハイブリッド化合物中の有機ポリマーは、密閉式電池に組み込まれた場合の電解液への溶解や酸化分解の問題を避ける必要がある場合は、あらかじめ酸化して除去することができる。この場合、空気中で加熱する方法が最も簡単であり、例えば200〜300℃で加熱することで酸化させることができる。このとき、250℃以上の温度で長時間加熱すると、水酸化ニッケルから脱水が起こり、酸化ニッケルとなって充放電に対して不活性になる可能性もあるため、加熱は1時間以内で行なう方がよい。有機ポリマー酸化後の残留物は、水洗あるいはアルカリ洗浄によって取り除くのが理想的である。
【0064】
以下に本発明に係る電池正極用活物質の具体的な実施例を説明する。なお、本願発明はこれら実施例の記載内容に限定されるものではない。
【実施例1】
【0065】
本発明に係る電池正極用活物質を実際に製造して、その特性を調べた。
硝酸ニッケル6水和物及びオキシ塩化ジルコニウム8水和物をそれぞれ所定量水40mlに溶かしたものを、ポリビニルアルコール(重合度3,100〜3,900、ケン化度86〜90%)の10重量%水溶液14gに混合し、原料混合溶液を作製した。
次に、この原料混合溶液を、マイクロメータを用いて台座とのギャップを調節できるブレードが装着されたコーティング装置(R K Print Coat Instruments Ltd.製 Kコントロールコータ202)の平滑な台座の上に敷いたポリエステルフィルム上に流延した。この時、台座が55℃になるように制御しながら加熱した。所定量の原料溶液を台座の上に流延した後、すぐにギャップを0.5mmに調節したブレードを一定速度で原料溶液上を掃引して一定の厚みにならした。さらに、そのまま加熱しながら放置することによって、水分を飛ばした。この操作により、ニッケル塩、オキシジルコニウム塩およびポリビニルアルコールが混合された、膜状固形物が生成した。
【0066】
次に、生成した膜状固形物を、台座から剥がして、7重量%の水酸化ナトリウム溶液に浸漬し、一晩放置した。この操作により、固形物中のニッケル塩、オキシジルコニウム塩がアルカリによって中和され、ポリビニルアルコールと結合しハイブリッド化合物を生成する。
水酸化ナトリウム溶液から膜状物を引き上げ、水洗、乾燥した後、ミキサーで粗く粉砕した後、オーブン中130℃で30分加熱した。その後、ボールミルを使用してさらに細かく粉砕して、電池正極用活物質とした。
【0067】
得られた活物質について、粉末X線回折(パナリティカル社製X‘Part Pro、CuΚα線使用)を行った。得られた回折強度―回折角図を、図2Bに示す。また、従来の電池用高密度球状水酸化ニッケルの同条件での回折強度―回折角図を、図2Aに示す。いずれも、粉末X線回折の測定条件は、45kV、40mA、スキャン速度0.002°s−1とした。
図2Aに示すように、従来の電池用高密度球状水酸化ニッケルでは、結晶構造によるシャープな回折ピークが明瞭に見られる。これに対して、図2Bに示すように、本実施例の電池正極用活物質ではシャープなピークは見られなかった。従来の球状高密度水酸化ニッケルの結晶001面に対応する回折ピークの半値幅は0.8(2θ°)であり、2(2θ°)以下であった。それに対し、本実施例の電池正極用活物質では結晶001面に対応する回折ピークは非常にブロードで高さが低いが、定義に基づき半値幅を求めてみると6.1(2θ°)であり、4(2θ°)以上であった。
【実施例2】
【0068】
次に、本発明の電池正極用活物質を用いて電極を作製し、その電極特性を評価した。
実施例1で作製した活物質粉末、ニッケル粉末、酸化コバルト粉末を、それぞれ75重量%、20重量%、5重量%になるよう混合し、この混合物0.35gにポリテトラフルオロエチレンのディスパージョン(60重量%、アルドリッチ社)0.03gを混ぜ、2cm角に裁断したスポンジ状ニッケル(セルメット、住友電工(株))に充填し、7MPaの圧力で1分間プレスし、電極とした。電極は、リードを取り付けた後に、30重量%の水酸化カリウム水溶液の満たされたビーカーの中に浸漬した。
電極は、満充電後一晩置いて1atmの吸着水素とほぼ平衡にあるとみなせる水素吸蔵合金電極(MH(1atm)と表記する)を参照極とし、ニッケル板を対極として、室温20℃の条件で、充放電を行なった。最初は、活物質中のニッケル化合物がすべて水酸化ニッケルとした場合、その水酸化ニッケル1g当たりに対して10mA(10mAg−1)の電流で充放電を1回行い、続いて電流を50mAg−1に上げて6回行なうことで、活物質の活性化を行なった。その後電流を、1C(1時間で放電が完了する電流)に設定して、チャージ状態(SOC)が30〜70%の間で小幅な充放電を20回行なった。
そして、電流が50mAg−1のときの充放電電位カーブと、チャージ状態(SOC)が30〜70%の間の小幅な充放電の1回目の充放電及び20回目の充放電での各充放電電位カーブを、それぞれ測定した。
【0069】
また、比較対照として、実施例1で作製した活物質粉末の代わりに、従来の電池用水酸化ニッケルを使用して、実施例2と同様の方法により電極を作製した。
従来の電池用水酸化ニッケルを使用して作製した電極についても、同様に、充放電電位カーブの測定を行った。
【0070】
本実施例で作製した電池正極用活物質を使用した電極の充放電電位カーブと、同様に作製した従来の電池用水酸化ニッケルを使用した電極の充放電電位カーブを比較して、図3に示す。図3において、(a)は従来の電池用水酸化ニッケルを使用した電極の充放電電位カーブを示し、(b)は本実施例で作製した電池正極用活物質を使用した電極の充放電電位カーブを示す。
図3より、従来の電池用水酸化ニッケルと比較して、本実施例の活物質は電位の平坦性がよく、特に従来の水酸化ニッケルが放電末期において電位の急激な低下が見られるのに対して、本実施例の活物質はその領域でも電位の直線性が維持されることがわかる。
【0071】
チャージ状態(SOC)が30〜70%の間で小幅な充放電を20回行なった結果を、図4A及び図4Bに示す。図4Aは従来の電池用水酸化ニッケルを使用した電極の充放電20回の前後の充放電電位カーブを示し、図4Bは本実施例で作製した電池正極用活物質を使用した電極の充放電20回の前後の充放電電位カーブを示す。従来の水酸化ニッケルは、メモリー効果が現れるために、図4Aに示すように、小幅な充放電を繰り返すと放電末期の部分で電位が大きく下がっていってしまうが、本発明の活物質では、図4Bに示すように、小幅な充放電を繰り返してもわずかしか電位が変化しなかった。これにより、本実施例で作製した電池正極用活物質のような、本発明の電池正極用活物質では、メモリー効果を大幅に抑制できると言える。これらの効果は、本発明の活物質において、ニッケル化合物がナノ粒子のような微粒子から成り立ち、図2からわかる通り結晶化していないことによって、得られるものである。充放電を繰り返した後も電位の変化が少ない結果であったことは、本発明の活物質において、ニッケル化合物のナノ粒子のような微粒子が、充放電を繰り返してもなお安定的に維持されていることを示している。
【実施例3】
【0072】
オキシ塩化ジルコニウム8水和物を加えないで原料混合溶液を作製した他は、実施例1と同様にして、水酸化ニッケルまたはその誘導体とポリビニルアルコールとの結合でできた無機/有機ハイブリッド化合物からなる電池正極用活物質を作製した。
本実施例で作製した電池正極用活物質について、実施例1と同様に粉末X線回折を行ったところ、水酸化ニッケル結晶001面に対応する回折ピークの半値幅は2.8(2θ°)であり、2(2θ°)以上であった。
また、実施例1で作製した活物質粉末の代わりに、本実施例で作製した活物質の粉末を使用して、実施例2と同様の方法により電極を作製した。
【実施例4】
【0073】
実施例1と同様にして作製した活物質を、200℃で1時間加熱し、ポリビニルアルコールを酸化除去して、電池正極用活物質を作製した。
本実施例で作製した電池正極用活物質について、実施例1と同様に粉末X線回折を行ったところ、実施例1とほぼ変わらない結果が得られた。
また、実施例1で作製した活物質粉末の代わりに、本実施例で作製した活物質の粉末を使用して、実施例2と同様の方法により電極を作製した。
【実施例5】
【0074】
実施例3と同様にして作製した活物質を、200℃で1時間加熱し、ポリビニルアルコールを酸化除去して、電極正極用活物質を作製した。
本実施例で作製した電池正極用活物質について、実施例1と同様に粉末X線回折を行ったところ、実施例3とほぼ変わらない結果が得られた。
また、実施例1で作製した活物質粉末の代わりに、本実施例で作製した活物質の粉末を使用して、実施例2と同様の方法により電極を作製した。
【0075】
実施例3〜実施例5でそれぞれ作製した電極について、充放電電位カーブの測定を行った。
実施例4で作製した電極は、若干平坦性が良くないことを除き、図3(b)とほぼ同余の充放電カーブを示した。
実施例3で作製した電極と、実施例5で作製した電極は、図3(b)とほぼ同様の充放電カーブを示し、従来の電池用水酸化ニッケルよりも平坦性のあるカーブを示したが、いずれもジルコン酸化合物を含むものよりは若干平坦性が良くなかった。
また、各電極について小幅な充放電を繰り返すと、図4Bと同様に、従来の電池用水酸化ニッケル(図4A)よりもメモリー効果が小さかったが、ジルコン酸化合物を含むものよりは含まないものが、ポリビニルアルコールを含むよりは含まないものが、それぞれ若干大きいメモリー効果を示した。ニッケル化合物と共存する物質の有無、あるいは共存する物質種によって、ニッケル化合物微粒子を安定的に維持する効果が少しずつ異なり、ジルコン酸化合物やポリビニルアルコールを含む方が、あるいはそれらが結合した無機/有機ハイブリッド化合物を含む方がニッケル化合物微粒子を安定的に維持する効果が高いためであると考えられる。
【0076】
なお、図3及び図4Bの充放電電位カーブは、本発明の活物質を使用した電極単独で評価した結果であるから、本発明の活物質のみから生じているものであり、電池にした場合、負極とは独立に発現される性質である。従って、ニッケル水素電池をはじめ、ニッケル鉄電池、ニッケル亜鉛電池など本発明の正極活物質を使用する電池全般についても、同様に効果が得られる。
また、本実施例ではポリビニルアルコールを使用した無機/有機ハイブリッド化合物の例であったが、ポリビニルアルコールは炭化水素鎖に水酸基がついただけのものであり、水酸基を有する有機ポリマーのうちの最も単純な構造のものである。従って、本実施例のようにポリビニルアルコールを使用することで本発明の効果が得られたことは、水酸基を有する有機ポリマー全体についても、同様の効果が得られることを意味している。
【0077】
(参考例)
本発明に対する参考例として、本発明に係る電池正極用活物質のうちニッケル化合物を含まないもの、すなわち電池作動時に酸化還元反応を起こさない金属酸化物またはその誘導体と、水酸基を有する有機ポリマーが化合した、無機/有機ハイブリッド化合物のみからなる物質を作製して、その物質の特性を調べた。
まず、オキシ塩化ジルコニウム8水和物0.7gを、ポリビニルアルコール(重合度3,100〜3,900、ケン化度86〜90%)の10重量%水溶液14gに溶解し、原料混合液を作製した。以下、実施例1と同じ方法で、アルカリ浸漬処理を経た膜状物を作製した。この膜状物を、ニッケル水素電池の電解液組成に近い30重量%の水酸化カリウム水溶液に浸漬したところ、膜状物が膨潤し、水酸化カリウム水溶液を多量に吸収することが確認された。
また、その膜状物で隔てられた二つの小室(内容積20cc)を作製し、各小室内を30重量%の水酸化カリウム水溶液で満たし、膜状物の両側に配したニッケルメッシュの電極に1.8V印加したところ、単位電極面積当たり15mAcm−2の大きな電流が流れ、水の電気分解が起こった。このことは、電池作動時に酸化還元反応を起こさないジルコン酸化合物と水酸基を有するポリビニルアルコールの無機/有機ハイブリッド化合物が、アルカリ電解液を吸収して高いイオン伝導性を持つことを意味している。
上記実施例2で、活物質がジルコン酸化合物とポリビニルアルコールとの無機/有機ハイブリッド化合物を含みながら充放電反応に対する阻害が見られなかったのは、無機/有機ハイブリッド化合物が、アルカリ電解液を吸収するために、イオン伝導性を阻害しなかったためと考えられる。ジルコン酸化合物は、ニッケル水素電池など水系電解液の電池における電極作動電位内で酸化還元を起こさないため、電池作動時にも無機/有機ハイブリッド化合物は基本的には変化せず、安定的にニッケル化合物の微粒子を維持する。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の電池正極用活物質は、電池作動時に酸化還元反応を起こす水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体が、低結晶性、アモルファスあるいはナノ粒子のような微粒子の状態であるため、充放電電位カーブが平坦であり、メモリー効果が起こりにくいなどの特徴を持つ。これにより、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの誘導体を正極活物質として使用する二次電池、特にニッケル水素電池において、本発明の電池正極用活物質を採用すれば、制御が容易であり、本来の電池性能を活かし切ることができる、などのメリットが得られる。従って、特にハイブリッド車など車載用に活用しやすい二次電池を提供することができる。
図1
図2
図3
図4