特開2017-11518(P2017-11518A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-11518解析装置、解析方法および解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-11518(P2017-11518A)
(43)【公開日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法および解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/391 20150101AFI20161216BHJP
   G06F 19/00 20110101ALI20161216BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20161216BHJP
   G01R 29/10 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
   H04B17/391
   G06F19/00 110
   G01R29/08 B
   G01R29/10 A
   G01R29/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-125437(P2015-125437)
(22)【出願日】2015年6月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目5番1号
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目5番1号 日本電信電話株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆利
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目5番1号 日本電信電話株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】野島 俊雄
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目 国立大学法人北海道大学内
(72)【発明者】
【氏名】日景 隆
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目 国立大学法人北海道大学内
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049DD02
(57)【要約】
【課題】 FDTD法を用いたシミュレーションにおいて、開口部間で回り込む電磁波の成分を算出する場合でも、データ量の増大を抑制できる解析装置、解析方法および解析プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】 電磁波の伝搬特性をシミュレーションする対象物の3次元データを用いて、対象物に設置された開口部を抽出する抽出部と、対象物の一側面において複数の開口部が抽出された場合、対象物を含むシミュレーション空間のうち一側面に対向するシミュレーション空間の境界と一側面との間の距離を、複数の開口部が有する大きさと電磁波の波長とを用いて算出する算出部と、FDTD法を用いてシミュレーション空間を複数のセルに分割し、対象物の内部を含むシミュレーション空間における電磁波の伝搬特性をシミュレーションする解析部とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の伝搬特性をシミュレーションする対象物の3次元データを用いて、前記対象物に設置された開口部を抽出する抽出部と、
前記対象物の一側面において複数の前記開口部が抽出された場合、前記対象物を含むシミュレーション空間のうち前記一側面に対向する前記シミュレーション空間の境界と前記一側面との間の距離を、前記複数の開口部が有する大きさと前記電磁波の波長とを用いて算出する算出部と、
FDTD(Finite-Difference Time-Domain)法を用いてシミュレーション空間を複数のセルに分割し、前記対象物の内部を含むシミュレーション空間における前記電磁波の伝搬特性をシミュレーションする解析部と
を備えることを特徴とする解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の解析装置において、
前記算出部は、前記複数の開口部が有する大きさの最大寸法Lと前記電磁波の波長λとを用い、前記一側面に対向する前記シミュレーション空間の境界と前記一側面との間の距離dを
【数1】
の範囲で設定することを特徴とする解析装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の解析装置において、
前記算出部は、前記対象物の一側面において抽出された前記開口部が1以下の場合、前記シミュレーション空間の境界までの距離を前記電磁波の1波長程度に設定することを特徴とする解析装置。
【請求項4】
電磁波の伝搬特性をシミュレーションする対象物の3次元データを用いて、前記対象物に設置された開口部を抽出し、
前記対象物の一側面において複数の前記開口部が抽出された場合、前記対象物を含むシミュレーション空間のうち前記一側面に対向する前記シミュレーション空間の境界と前記一側面との間の距離を、前記複数の開口部が有する大きさと前記電磁波の波長とを用いて算出し、
FDTD法を用いてシミュレーション空間を複数のセルに分割し、前記対象物の内部を含むシミュレーション空間における前記電磁波の伝搬特性をシミュレーションする
ことを特徴とする解析方法。
【請求項5】
請求項4に記載の解析方法において、
前記シミュレーション空間の境界までの距離を算出する処理は、前記複数の開口部が有する大きさの最大寸法Lと前記電磁波の波長λとを用い、前記一側面に対向する前記シミュレーション空間の境界と前記一側面との間の距離dを
【数2】
の範囲で設定することを特徴とする解析方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の解析方法において、
前記シミュレーション空間の境界までの距離を算出する処理は、前記対象物の一側面において抽出された前記開口部が1以下の場合、前記シミュレーション空間の境界までの距離を前記電磁波の1波長程度に設定することを特徴とする解析方法。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の解析方法をコンピュータに実行させる解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法および解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、Wi−Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)等の通信規格に基づいて、スマートホン等の携帯通信端末をインターネット等と接続するアンテナを鉄道の車両や建築物等内に配置するにあたり、アンテナの位置に応じた電磁波の伝搬特性が解析される。解析の結果に基づいてアンテナを配置することで、車両等での携帯通信端末の位置に拘わらず、最小数のアンテナで携帯通信端末をインターネット等に接続することができ、コストを抑制することができる。
【0003】
そして、電磁波の伝搬特性を解析する手法には、時間領域の有限差分法であるFDTD(Finite-Difference Time-Domain Method)法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。また、鉄道の車両内に配置されたアンテナの位置に応じた電磁波の伝搬特性を、FDTD法を用いてシミュレーションする技術が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A. Taflove and S.C. Hagness, "Computational Electrodynamics: The Finite-Difference Time-Domain Method", Boston, MA: Artech House, 1995.
【非特許文献2】白船 雅巳、日景 隆、野島 俊雄、佐々木 元晴、山田 渉、杉山 隆利,“FDTD解析による高速鉄道車両内5GHz帯無線接続サービスの伝搬特性推定”, 電子情報通信学会論文誌 B, Vol.J97-B, No.9, pp.762-769, Sep. 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、シミュレーション空間が、車両等を含み車両等の大きさより電磁波の波長程度大きい場合、FDTD法を用いたシミュレーションでは、車両等が有する窓等の開口部を介して回り込む電磁波の成分を演算することが困難な場合がある。一方、シミュレーション空間が車両等の大きさと比べて十分大きく設定された場合、FDTD法を用いたシミュレーションは、回り込む電磁波の成分を演算することが可能となる。しかしながら、シミュレーション空間を大きくすることでセルの数が増大し、演算量とともにメモリ等に記憶されるデータ量が増大する虞がある。
【0006】
本発明は、FDTD法を用いたシミュレーションにおいて、開口部間で回り込む電磁波の成分を算出する場合でも、データ量の増大を抑制できる解析装置、解析方法および解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、電磁波の伝搬特性をシミュレーションする対象物の3次元データを用いて、対象物に設置された開口部を抽出する抽出部と、対象物の一側面において複数の開口部が抽出された場合、対象物を含むシミュレーション空間のうち一側面に対向するシミュレーション空間の境界と一側面との間の距離を、複数の開口部が有する大きさと電磁波の波長とを用いて算出する算出部と、FDTD法を用いてシミュレーション空間を複数のセルに分割し、対象物の内部を含むシミュレーション空間における電磁波の伝搬特性をシミュレーションする解析部とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、算出部は、複数の開口部が有する大きさの最大寸法Lと電磁波の波長λとを用い、一側面に対向するシミュレーション空間の境界と一側面との間の距離dを
【0009】
【数1】
【0010】
の範囲で設定することを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、算出部は、対象物の一側面において抽出された開口部が1以下の場合、シミュレーション空間の境界までの距離を電磁波の1波長程度に設定することを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、電磁波の伝搬特性をシミュレーションする対象物の3次元データを用いて、対象物に設置された開口部を抽出し、対象物の一側面において複数の開口部が抽出された場合、対象物を含むシミュレーション空間のうち一側面に対向するシミュレーション空間の境界と一側面との間の距離を、複数の開口部が有する大きさと電磁波の波長とを用いて算出し、FDTD法を用いてシミュレーション空間を複数のセルに分割し、対象物の内部を含むシミュレーション空間における電磁波の伝搬特性をシミュレーションすることを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、シミュレーション空間の境界までの距離を算出する処理は、複数の開口部が有する大きさの最大寸法Lと電磁波の波長λとを用い、一側面に対向するシミュレーション空間の境界と一側面との間の距離dを
【0014】
【数2】
【0015】
の範囲で設定することを特徴とする。
【0016】
第6の発明は、シミュレーション空間の境界までの距離を算出する処理は、対象物の一側面において抽出された開口部が1以下の場合、シミュレーション空間の境界までの距離を電磁波の1波長程度に設定することを特徴とする。
【0017】
第7の発明は、第4の発明ないし第6の発明のいずれかの解析方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、FDTD法を用いたシミュレーションにおいて、開口部間で回り込む電磁波の成分を算出する場合でも、データ量の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】解析装置および解析方法の一実施形態を示す図である。
図2】対象物とシミュレーション空間との一例を示す図である。
図3図2に示した車両内のX軸方向における電界成分の頻度分布とガードセル数との関係の一例を示す図である。
図4図1に示した解析装置における解析処理の一例を示す図である。
図5図4に示したステップS170における処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。
【0021】
図1は、解析装置および解析方法の一実施形態を示す。
【0022】
図1に示した解析装置100は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置10と、メモリあるいはハードディスク装置等の記憶装置20とを有するコンピュータ装置である。なお、記憶装置20は、解析装置100の外部に配置されてもよい。解析装置100は、入力装置30および出力装置40に接続される。入力装置30は、ユーザ等からの指示を受けるキーボードあるいはマウス等である。入力装置30は、ユーザ等から受けた指示を解析装置100に出力する。出力装置40は、液晶ディスプレイ等のモニタであり、解析装置100による解析の結果等を表示する。解析装置100は、演算処理装置10が記憶装置20に格納される解析プログラムを実行することにより実現される。なお、解析装置100は、専用のハードウェアにより実現されてもよい。
【0023】
また、解析プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)あるいはDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクに記録して頒布することができる。さらに、解析装置100は、解析装置100に含まれるネットワークインタフェースを介して、ネットワークを通じて解析プログラムをダウンロードし、記憶装置20に格納してもよい。
【0024】
記憶装置20は、解析プログラムを記憶するメモリ等とともに、シミュレーション空間情報メモリ21、ボクセルモデル保存メモリ22および媒質保有メモリ23を有する。また、記憶装置20は、電磁波の伝搬特性をシミュレーションする鉄道の車両や建築物等の3次元データを記憶するメモリを有してもよい。
【0025】
シミュレーション空間情報メモリ21は、フラッシュメモリ等であり、シミュレーション空間の形状を示す座標情報を記憶する。また、シミュレーション空間情報メモリ21には、シミュレーション空間上の各点における誘電率を示す誘電情報が記憶される。なお、誘電情報における各点の誘電率は、媒質が有する誘電率の実数値が設定される代わりに、媒質の誘電率を示すインデックス(例えば、整数(1、2、…)または文字(a、b、…)あるいは整数と文字との組合せ等)で設定される。すなわち、誘電情報における各点の誘電率が媒質の誘電率を示すインデックスで設定されることで、実数値で設定される場合と比べて、シミュレーション空間情報メモリ21におけるデータ量を抑制できる。
【0026】
ボクセルモデル保存メモリ22は、フラッシュメモリ等であり、シミュレーション空間情報メモリ21に記憶された座標情報を用い、演算処理装置10により生成された車両や建築物等を示すボクセルモデルのデータを記憶する。
【0027】
媒質保有メモリ23は、フラッシュメモリ等であり、シミュレーション空間情報メモリ21の誘電情報におけるインデックスに対応した各媒質の誘電率の実数値を記憶する。例えば、インデックス“1”に空気の誘電率の実数値が対応付けられ、インデックス“2”にガラスの誘電率の実数値が対応付けられた誘電率テーブルが、媒質保有メモリ23に記憶される。
【0028】
演算処理装置10は、解析プログラムを実行することで、抽出部11、ガードセル数算出部12、電界成分算出部13、電界成分吸収境界算出部14、磁界成分算出部15および磁界成分吸収境界算出部16として動作する。
【0029】
抽出部11は、記憶装置20に記憶された対象物の3次元データを用いて、鉄道の車両や建築物等の対象物に設置された窓等の開口部を抽出する。
【0030】
ガードセル数計算部12は、対象物が有する側面のうち一側面において複数の開口部が抽出部11により抽出された場合、一側面に対向するシミュレーション空間の境界と対象物の一側面との間の距離を、複数の開口部の大きさと電磁波の波長とを用いて算出する。なお、ガードセル数計算部12の動作については、図2で説明する。また、以下において、ガードセル数計算部12が算出する距離は、“ガードセル数”とも称する。
【0031】
電界成分算出部13は、FDTD法を用いてシミュレーション空間上の各点における電界成分を算出する。
【0032】
電界成分吸収境界算出部14は、FDTD法を用いて、シミュレーション空間の境界において、電界成分算出部13により算出された電界成分が反射することなく吸収されるように、電界成分の吸収境界条件を算出する。例えば、電界成分吸収境界算出部14は、CPML(Convolutional Perfectly Matched Layer)等を用いて吸収境界条件を算出する。
【0033】
磁界成分算出部15は、FDTD法を用いてシミュレーション空間上の各点における磁界成分を算出する。
【0034】
磁界成分吸収境界算出部16は、FDTD法を用いて、シミュレーション空間の境界において、磁界成分算出部15により算出された磁界成分が反射することなく吸収されるように、磁界成分の吸収境界条件を算出する。例えば、磁界成分吸収境界算出部16は、CPML等を用いて吸収境界条件を算出する。
【0035】
なお、電界成分算出部13、電界成分吸収境界算出部14、磁界成分算出部15および磁界成分吸収境界算出部16は、解析部の一例を示す。
【0036】
図2は、対象物OBJとシミュレーション空間SSとの一例を示す。図2では、例えば、対象物OBJおよびシミュレーション空間SSの中心を原点とし、XYZ軸が設定される。図2(a)は、Z軸の正の方向から対象物OBJおよびシミュレーション空間SSを見下ろした場合を示す。図2(b)は、X軸の負の方向から対象物OBJおよびシミュレーション空間SSを見た場合を示す。
【0037】
図2において、対象物OBJは、例えば、鉄道の車両である。以下、対象物OBJは、車両OBJとも称される。車両OBJは、X軸方向に2Txの長さを、Y軸方向に2Tyの長さを、Z軸方向に2Tzの長さを有する。また、車両OBJは、複数の座席50、複数の窓WDおよび他の車両に移るための2つの通路部PWを有する。各窓WDは、X軸方向と直交する車両OBJの各側面(X=±Tx)において、Y軸方向に並べて設置される。各通路部PWは、Y軸方向と直交する車両OBJの各側面(Y=±Ty)に設置される。
【0038】
シミュレーション空間SSは、車両OBJを含み、X軸の正および負の方向において車両OBJとの間にそれぞれガードセル数Dxの間隔を設け、Y軸の正および負の方向において車両OBJとの間にそれぞれガードセル数Dyの間隔を設けた大きさに設定される。また、シミュレーション空間SSは、Z軸の正および負の方向において車両OBJとの間にそれぞれガードセル数Dzの間隔が設けられた大きさに設定される。
【0039】
図2(a)に示すように、Y軸方向と直交する各側面(Y=±Ty)に設置される車両OBJの開口部は通路部PWが1つのため、電磁波の伝搬特性のシミュレーションは、Y軸方向における開口部間の電磁成分の回り込みを考慮しない。すなわち、ガードセル数計算部12は、例えば、従来と同様に、Y軸方向のガードセル数Dyを電磁波の1波長程度に設定する。また、車両OBJがZ軸方向と直交する側面(すなわち天井および床面)に窓WD等の開口部を有しないため、ガードセル数計算部12は、Z軸方向のガードセル数Dzについても電磁波の1波長程度に設定する。
【0040】
図3は、図2に示した車両OBJ内のX軸方向における電界成分の頻度分布とガードセル数Dxとの関係の一例を示す。図3の横軸は、電界成分の強度を示し、縦軸は、頻度を示す。点線で示した電界成分の頻度分布は、X軸方向のガードセル数Dxを電磁波の1波長程度に設定した場合のシミュレーションの結果を示す。実線で示した電界成分の頻度分布は、X軸方向のガードセル数DxをL/4λに設定した場合のシミュレーションの結果を示す。なお、変数λは、電磁波の波長を示し、変数Lは、複数の窓WDのうち最も大きな窓WDの大きさ(以下、“最大寸法”とも称される)を示す。例えば、図2に示した窓WDが四角形の場合、最大寸法Lは、窓WDのうち最も大きな窓WDの対角線の長さである。また、窓WDが円形の場合、最大寸法Lは、窓WDのうち最も大きな窓WDの直径である。
【0041】
図3では、X軸方向のガードセル数Dxを波長λ程度に設定した電界成分の頻度分布は、ガードセル数DxをL/4λに設定した電界成分の頻度分布より全体的に小さい値を示す。これは、X軸方向のガードセル数Dxが波長λ程度に設定された場合、窓WD間で回り込む電界成分を算出することが困難なため、解析装置100によりシミュレーションされた電界成分の強度が全体的に小さくなる。一方、X軸方向のガードセル数Dxが4L/λ以上に設定された場合、解析装置100によるシミュレーションの結果は、図3に示したガードセル数DxがL/4λの場合の頻度分布と同様の分布を示す。このことから、X軸方向のガードセル数DxがL/4λ以上に設定された場合には、窓WD間で回り込む電界成分が正しく算出されることを示す。しかしながら、X軸方向のガードセル数DxをL/4λ以上の任意の値に設定した場合、シミュレーション空間におけるセルの数が増大し、メモリ等に記憶されるデータ量および演算量が増大する。そこで、ガードセル数計算部12は、式(1)に示す範囲で、X軸方向のガードセル数Dxを設定する。
【0042】
【数3】
【0043】
上限値2L/λは、窓WD等の開口部からX軸方向に離れた位置におけるポインティングベクトルの値を評価することで、隣接する窓WD方向への電界成分および磁界成分が0となる距離である。ガードセル数計算部12は、データ量の抑制およびシミュレーションの計算精度のいずれかを優先させるかに応じて、式(1)に示した範囲でX軸方向のガードセル数Dxを設定する。例えば、ガードセル数計算部12は、十分な計算精度を確保しつつ、データ量の抑制を優先する場合、ガードセル数Dxを下限値L/4λに設定することが好ましい。一方、ガードセル数計算部12は、データ量の抑制を図りつつ、シミュレーションの計算精度を優先する場合、ガードセル数Dxを上限値2L/λに設定することが好ましい。
【0044】
このように、式(1)に示した距離の範囲内でX軸方向のガードセル数Dxを設定することで、解析装置100は、窓WD等の開口部間で回り込む電磁波の成分を算出する場合でも、メモリ等に記憶されるデータ量の増大を抑制できる。
【0045】
図4は、図1に示した解析装置100における解析処理の一例を示す。図4に示した処理は、演算処理装置10が解析プログラムを実行することにより実現される。なお、図4に示した処理は、演算処理装置10に設けられるハードウェアにより実行されてもよい。この場合、図1に示した抽出部11、ガードセル数算出部12、電界成分算出部13、電界成分吸収境界算出部14、磁界成分算出部15および磁界成分吸収境界算出部16は、解析装置100内に配置される回路により実現される。
【0046】
ステップS100では、演算処理装置10は、シミュレーションする電磁波の周波数を設定する。例えば、演算処理装置10は、入力装置30を介して周波数の設定をユーザ等から受け付ける。
【0047】
ステップS110では、演算処理装置10は、ステップS100で設定された電磁波の周波数を用い、最適なセルサイズを算出する。例えば、演算処理装置10は、最適なセルサイズを電磁波の波長λ(すなわち周波数の逆数)の10分の1に設定する。最適なセルサイズを電磁波の波長λと比べて小さくすることで、解析装置100は、シミュレーションの計算精度を担保できる。
【0048】
ステップS120では、演算処理装置10は、媒質インデックスを定義する。例えば、演算処理装置10は、入力装置30を介して受け付けたユーザからの指示に基づいて、実数値の空気の誘電率にインデックス“1”を対応付ける等、全ての種類の媒質の誘電率ごとに互いに異なるインデックスを割り当てた誘電率テーブルを生成する。演算処理装置10は、生成したテーブルを媒質保有メモリ23に記憶させる。
【0049】
ステップS130では、演算処理装置10は、電磁波の伝搬特性をシミュレーションする対象物OBJの3次元データを読み込む。例えば、演算処理装置10は、記憶装置20に予め記憶された図2に示した車両OBJの3次元CAD(Computer Aided Design)データを読み込む。なお、演算処理装置10は、インターネット等を介して、対象物OBJの3次元データを取得してもよい。
【0050】
ステップS140では、抽出部11は、ステップS130で読み込んだ3次元データを用い、対象物OBJの各側面に設置された窓WDや通路部PW等の開口部を抽出する。例えば、図2に示した車両OBJの場合、抽出部11は、X軸方向に直交する側面(X=±Tx)の各々において6つの窓WDを抽出する。また、抽出部11は、Y軸方向に直交する側面(Y=±Ty)の各々において1つの通路部PWを抽出する。
【0051】
ステップS150では、ガードセル数計算部12は、ステップS140で抽出された各側面における開口部のうち、最も大きな開口部の最大寸法Lを取得する。なお、ステップS140で抽出された開口部の数が0または1の側面に対するステップS150の処理は、省略されてもよい。
【0052】
ステップS160では、ガードセル数計算部12は、XYZ軸方向の各々におけるガードセル数を算出する。例えば、ガードセル数計算部12は、6つの窓WDが設置されたX軸方向に直交する側面(X=±Tx)に対向するシミュレーション空間SSの境界までのガードセル数Dxを、ステップS150で取得した最大寸法Lと式(1)とを用い設定する。一方、ガードセル数計算部12は、通路部PWが1つのY軸方向に直交する側面(Y=±Ty)に対向するシミュレーション空間SSの境界までのガードセル数Dyを電磁波の波長λ程度に設定する。また、ガードセル数計算部12は、開口部がないZ軸方向に直交する側面(Z=±Tz)に対向するシミュレーション空間SSの境界までのガードセル数Dzを電磁波の波長λ程度に設定する。
【0053】
ステップS170では、演算処理装置10は、ステップS130で読み込んだ車両OBJの3次元データおよびステップS160で算出されたXYZ軸方向のガードセル数を用いて、配列データを生成する。ステップS170の処理については、図5で説明する。
【0054】
ステップS180では、演算処理装置10は、ステップS170で生成された配列データの座標値を変換する。すなわち、演算処理装置10は、回転および移動等を含む変換処理を実行することで、FDTD法を用いたシミュレーションにおける吸収境界層の領域を確保したシミュレーション空間SS内の各位置に、配列データの各座標値を配置する。
【0055】
ステップS190では、演算処理装置10は、ステップS110で算出したセルサイズ、ステップS160で算出したXYZ軸方向のガードセル数、およびステップS180で変換処理した配列データを用い、FDTD計算用のボクセルモデルを生成する。演算処理装置10は、生成したボクセルモデルのデータを、ボクセルモデル保存メモリ22に記憶する。
【0056】
ステップS200では、電界成分算出部13は、マクスウェルの方程式を空間および時間の領域で展開した差分方程式とステップS190で生成したボクセルモデルとを用い、シミュレーション空間SSにおける電界成分を算出する。
【0057】
ステップS210では、電界成分吸収境界算出部14は、ステップS200で算出された電界成分と後述するステップS230で算出された磁界成分とを用い、シミュレーション空間SSの境界で電磁波が反射しないように、電界成分の吸収境界条件を算出する。ない、電界成分吸収境界算出部14は、初めて電界成分の吸収境界条件を算出する場合、0または予め設定された初期値の磁界成分を用いる。
【0058】
ステップS220では、磁界成分算出部15は、マクスウェルの方程式を空間および時間の領域で展開した差分方程式とステップS190で生成したボクセルモデルとを用い、シミュレーション空間SSにおける磁界成分を算出する。
【0059】
ステップS230では、磁界成分吸収境界算出部16は、ステップS200で算出された電界成分とステップS220で算出された磁界成分とを用い、シミュレーション空間SSの境界で電磁波が反射しないように、磁界成分の吸収境界条件を算出する。
【0060】
ステップS240では、演算処理装置10は、シミュレーションの計算が終了したか否かを判定する。シミュレーションの計算が終了した場合、演算処理装置10の処理は終了する。演算処理装置10は、シミュレーションの結果を示すデータを記憶装置20に記憶する。また、演算処理装置10は、シミュレーションの結果を出力装置40に表示してもよい。一方、シミュレーションの計算が終了していない場合、演算処理装置10の処理はステップS200に移る。
【0061】
図5は、図4に示したステップS170における処理の一例を示す。
【0062】
ステップS300では、演算処理装置10は、媒質保有メモリ23よりステップS110で生成されたテーブルから媒質の種類ごとの誘電率に対応したインデックスを読み込む。
【0063】
ステップS310では、演算処理装置10は、シミュレーション空間SSにおける誘電率の配列データを定義する。例えば、演算処理装置10は、ステップS130で読み込んだ車両OBJの3次元データおよびステップS160で算出したXYZ軸方向のガードセル数からシミュレーション空間SSの大きさ(すなわち3次元の配列データの配列数)を設定する。
【0064】
ステップS320では、演算処理装置10は、ステップS310で定義された配列データの各々に、シミュレーション空間SSの各点における媒質の種類に応じた誘電率を示すインデックスを格納する。そして、解析装置100の処理は、図4に示したステップS180に移る。
【0065】
なお、図4に示した解析処理において、図5に示したステップS170と同様の配列データを定義する処理が、ステップS120とステップS130との間に設けられてもよい。この場合の配列データを定義する処理は、例えば、XYZ軸方向のガードセル数が1波長程度に設定された所定の大きさのシミュレーション空間SSで実行される。
【0066】
以上、図1から図5に示した実施形態では、ガードセル数計算部12は、対象物OBJの側面のうち複数の開口部が設置された側面と、複数の開口部が設置された側面に対向するシミュレーション空間SSの境界との間のガードセル数を、式(1)を用いて設定する。すなわち、ガードセル数計算部12は、複数の開口部が設置された側面に対するガードセル数を、従来の所定値(例えば、1波長程度)より大きいL/4λ以上2L/λ以下の範囲に設定する。これにより、解析装置100は、FDTD法を用いたシミュレーションにおいて、開口部間で回り込む電磁波の成分を従来と比べて精度良く算出でき、記憶装置20に記憶されるデータ量の増大を抑制できる。換言すれば、解析装置100は、データ量の抑制を図り、且つ開口部間で回り込む電磁波の成分を従来と比べて精度良く算出できる、ガードセル数を設定できる。
【0067】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…演算処理装置;11…抽出部;12…ガードセル数計算部;13…電界成分算出部;14…電界成分吸収境界算出部;15…磁界成分算出部;16…磁界成分吸収境界算出部;20…記憶装置;30…入力装置;40…出力装置;50…座席;100…解析装置;OBJ…対象物;WD…窓;PW…通路部
図1
図2
図3
図4
図5