特開2017-121265(P2017-121265A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-121265ソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法および医療用滅菌装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-121265(P2017-121265A)
(43)【公開日】2017年7月13日
(54)【発明の名称】ソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法および医療用滅菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/06 20060101AFI20170616BHJP
【FI】
   A61L2/06 A
   A61L2/06 B
   A61L2/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-100656(P2014-100656)
(22)【出願日】2014年5月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000148380
【氏名又は名称】株式会社前田製作所
【住所又は居所】長野県長野市篠ノ井御幣川1095
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【住所又は居所】長野県松本市旭三丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】竹元 哲也
【住所又は居所】長野県長野市篠ノ井御幣川1095 株式会社前田製作所内
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸洋
【住所又は居所】長野県長野市篠ノ井御幣川1095 株式会社前田製作所内
(72)【発明者】
【氏名】林 志成
【住所又は居所】長野県長野市篠ノ井御幣川1095 株式会社前田製作所内
(72)【発明者】
【氏名】宮本 徹
【住所又は居所】長野県長野市篠ノ井御幣川1095 株式会社前田製作所内
(72)【発明者】
【氏名】古畑 貞彦
【住所又は居所】長野県松本市旭三丁目1番1号 国立大学法人信州大学医学部内
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB05
4C058CC02
4C058CC07
4C058DD04
4C058DD05
4C058DD06
4C058EE30
(57)【要約】
【課題】滅菌性能が高く、乾燥工程を別途必要とすることなく短時間で滅菌処理を行うことのできるソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法を提案すること。
【解決手段】ソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法では、蒸気発生部であるボイラー11で発生させた水蒸気を、蒸気飽和度が100%を下回らない高飽和水蒸気の状態で、滅菌対象の被処理物を入れた処理室である圧力容器13を経由して流通させ、被処理物の滅菌および乾燥を同時に行う滅菌乾燥工程(ステップST13)を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生部で発生させた水蒸気を、蒸気飽和度が100%を下回らない高飽和水蒸気の状態で、滅菌対象の被処理物を入れた処理室を経由して流通させ、前記被処理物の滅菌および乾燥を同時に行う滅菌乾燥工程を有していることを特徴とするソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法。
【請求項2】
前記滅菌乾燥工程における前記処理室の温度を、120℃〜150℃の範囲内に保持する請求項1に記載のソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法。
【請求項3】
前記滅菌乾燥工程における前記処理室の圧力を、100kPa〜376kPaの範囲内に保持する請求項1または2に記載のソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法。
【請求項4】
前記滅菌乾燥工程を少なくとも3分間継続させる請求項1、2または3に記載のソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法。
【請求項5】
前記被処理物は医療機器あるいは医療用具である請求項1、2、3または4に記載のソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法。
【請求項6】
前記蒸気発生部で発生させた水蒸気を前記処理室に供給すると共に前記処理室を加熱して常温常圧状態の前記処理室を第1の規定圧力および第1の規定温度まで上げた後に、前記処理室から水蒸気を排出して前記処理室を大気圧まで戻す予熱工程と、
前記処理室内に被処理物を投入する投入工程と、
前記蒸気発生部で発生させた水蒸気を前記処理室に供給すると共に前記処理室を加熱して、前記処理室を第2の規定圧力および第2の規定温度の状態にする昇温工程と、
前記滅菌乾燥工程と、
前記処理室の加熱を止めて水蒸気を排出して、前記処理室の圧力を大気圧に戻す蒸気排出工程と、
前記処理室から滅菌乾燥処理された前記被処理物を取り出す取出工程と、
を含む請求項1ないし5のうちのいずれか一つの項に記載のソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法。
【請求項7】
請求項1に記載の滅菌乾燥方法を用いて医療機器あるいは医療用具の滅菌乾燥を行う医療用滅菌装置であって、
滅菌対象の医療機器が投入される処理室と、
前記処理室を外部から加熱する加熱部と、
前記処理室に供給される水蒸気を発生させる蒸気発生部と、
前記処理室を経由して流通する水蒸気を回収する回収部と、
前記処理室に供給される水蒸気量および前記処理室を経由して流通する水蒸気量を制御可能な流量制御部と、
前記蒸気発生部および前記加熱部の駆動制御、および、前記処理室に供給される水蒸気量および前記処理室を経由して流通する水蒸気量を制御して、前記滅菌乾燥工程を実行する制御部と、
前記滅菌乾燥工程における前記処理室の温度、圧力、処理時間を前記制御部に設定入力可能な操作部、および、前記処理室の温度、圧力を含む装置動作状態を表示可能な表示部を備えた操作・表示部と、
を有している医療用滅菌装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記蒸気発生部で発生させた水蒸気を前記処理室に供給すると共に前記処理室を加熱し
て常温常圧状態の前記処理室を第1の規定圧力および第1の規定温度まで上げた後に、前記処理室から水蒸気を排出して前記処理室を大気圧まで戻す予熱工程と、
前記処理室内に被処理物が投入された後に、前記蒸気発生部で発生させた水蒸気を前記処理室に供給すると共に前記処理室を加熱して、前記処理室を第2の規定圧力および第2の規定温度の状態にする昇温工程と、
前記滅菌乾燥工程と、
前記処理室の加熱を止めて水蒸気を排出して、前記処理室の圧力を大気圧に戻す蒸気排出工程と、
を実行する請求項7に記載の医療用滅菌装置。
【請求項9】
前記制御部には、予め、複数の滅菌処理のための動作モードが設定されており、
前記操作・表示部を介して、前記動作モードの一つが選択可能となっている、
請求項8に記載の医療用滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフト水熱プロセスの化学特性を応用して医療機器等の滅菌乾燥処理に適したソフト水熱プロセスの化学特性を応用した滅菌乾燥方法、および、当該滅菌乾燥方法を用いた医療用滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の医療用機器の滅菌器としては、一般に、オートクレーブ(高圧水蒸気滅菌器)が知られている。オートクレーブは、圧力容器内の凝結を嫌うためにクオリティの高い蒸気と称して、スチームトラップで蒸気供給管内、圧力容器内の凝結水を除去し、乾き度の高い蒸気を圧力容器内に供給する。
【0003】
また、オートクレーブによる滅菌処理においては、残存空気を除去し、昇温時の凝結水および断熱膨張による凝結水を除去するために、空気排除工程、減圧工程、蒸気通過工程、蒸気充填工程、蒸気排出工程に加えて、滅菌対象物を乾燥させるための乾燥工程が必要である。
【0004】
なお、医療現場における滅菌処理は、非特許文献1に示すガイドラインに沿ったものであることが要求される。オートクレーブによる滅菌は、当該文献の第23頁以降の「3.蒸気滅菌における滅菌バリデーションおよび日常管理」に基づき行われている。
【0005】
ここで、本発明者等は、基礎的研究例が殆ど無いソフト水熱プロセス(200℃以下の高温高圧の水および水蒸気)の化学特性を応用して、既存のオートクレーブでは不可能とされた高温耐性の蛋白質あるいは酵素、および細菌内毒素の不活性化が可能であることを見出している(特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「医療現場における滅菌保証のガイドライン 2010」、2010年12月1日初版、「日本医療機器学会」発行
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−083206号公報
【特許文献2】特開2010−075619号公報
【特許文献3】特開2009−240206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存のオートクレーブでは、上記のように圧力容器内の凝結を嫌うために乾き度の高い蒸気を圧力容器内に供給して滅菌処理を行っている。これでは、蒸気飽和度が100%を下回り、効率的に処理対象物の加水分解が亢進されない。この結果、バイオバーデン(bioburden)が高くなり、滅菌性能が低下し、あるいは、滅菌性能にバラツキが生じるという問題点がある。
【0009】
また、オートクレーブによる滅菌処理においては、滅菌処理後に、処理後の処理対象物を乾燥させるための乾燥工程が必須である。このために、滅菌処理時間が長く、滅菌処理に要する時間のために患者に対する治療行為等に遅れが生じる等の問題点がある。
【0010】
本発明の課題は、ソフト水熱プロセスの化学特性に着目し、滅菌性能が高く、乾燥工程を別途必要とすることなく短時間で滅菌処理を行うことのできるソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法を提案することにある。
【0011】
また、本発明の課題は、ソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法を用いた新たな医療用滅菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明のソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法は、蒸気発生部で発生させた水蒸気を、蒸気飽和度が100%を下回らない高飽和水蒸気の状態で、滅菌対象の被処理物を入れた処理室を経由して流通させ、前記被処理物の滅菌および乾燥を同時に行う滅菌乾燥工程を有していることを特徴としている。
【0013】
ここで、飽和水蒸気量と温度との関係は、下記の気体の状態方程式に基づき導き出すことができる。
PV=nRT(PV=G/M・RT)
P:圧力(MPa)
V:体積(dm
n:モル数(mol)
G:HOの質量(kg)
M:HOの分子量(18.015)
R:ガス定数(8.31×10−3dm・MPa/K・mol)
T:温度(K[℃+273℃])
【0014】
また、高飽和水蒸気とは、高蒸気飽和度の飽和水蒸気および飽和水蒸気圧より高い圧力の水蒸気をいう。水熱プロセスとは、高飽和水蒸気を反応媒体とした化学反応をいう。高蒸気飽和度とは、蒸気飽和度が100%以上の状態をいい、蒸気飽和度は、次の式により表される。
{蒸気密度(kg/m)/飽和水蒸気密度(kg/m)}×100(%)
【0015】
本発明の方法では、高飽和水蒸気を、処理室を経由して流通させることにより、処理室内の被処理物の滅菌処理を行っている。本発明者等の実験によれば、本発明の方法によって、既存のオートクレーブによる場合に比べて、滅菌性能が高く、滅菌性能のバラツキが少ない信頼性の高い滅菌処理を実現できることが確認された。
【0016】
また、従来のオートクレーブでは、乾燥工程により被処理物の凝結水を乾燥しているが、本発明では、高飽和水蒸気を、処理室を経由して流通させることにより滅菌処理を行っている。本発明者等の実験によれば、高飽和水蒸気を流通させて滅菌処理を行うことにより、乾燥工程無しに被処理物を処理前と同等、あるいは、それ以上に乾燥できることが確認された。換言すると、滅菌処理と乾燥処理とが同時に並行して行われるので、滅菌工程の後に乾燥工程が不要であることが確認された。
【0017】
したがって、本発明の方法によれば、殺菌性能が高く、かつ、処理時間を短縮でき省エネルギー化が可能な滅菌方法を実現できる。
【0018】
本発明において、前記滅菌乾燥工程における前記処理室の温度を、120℃〜150℃の範囲内に保持することが望ましい。また、前記滅菌乾燥工程における前記処理室の圧力を、100kPa〜376kPaの範囲内に保持することが望ましい。さらに、前記滅菌乾燥工程を少なくとも3分間継続させることが望ましい。
【0019】
本発明の滅菌方法は、例えば、以下の工程を含む。
前記蒸気発生部で発生させた水蒸気を前記処理室に供給すると共に前記処理室を加熱して常温常圧状態の前記処理室を第1の規定圧力および第1の規定温度まで上げた後に、前記処理室から水蒸気を排出して前記処理室を大気圧まで戻す予熱工程
前記処理室内に被処理物を投入する投入工程
前記蒸気発生部で発生させた水蒸気を前記処理室に供給すると共に前記処理室を加熱して、前記処理室を第2の規定圧力および第2の規定温度の状態にする昇温工程
前記滅菌乾燥工程
前記処理室の加熱を止めて水蒸気を排出して、前記処理室の圧力を大気圧に戻す蒸気排出工程
前記処理室から滅菌乾燥処理された前記被処理物を取り出す取出工程
【0020】
次に、本発明の滅菌方法は、医療機器あるいは医療用具の滅菌に用いるのに適している。本発明の滅菌方法を適用した医療機器あるいは医療用具の滅菌乾燥を行う医療用滅菌装置は、
滅菌対象の医療機器が投入される処理室と、
前記処理室を外部から加熱する加熱部と、
前記処理室に供給される水蒸気を発生させる蒸気発生部と、
前記処理室を経由して流通する水蒸気を回収する回収部と、
前記処理室に供給される水蒸気量および前記処理室を経由して流通する水蒸気量を制御可能な流量制御部と、
前記蒸気発生部および前記加熱部の駆動制御、および、前記処理室に供給される水蒸気量および前記処理室を経由して流通する水蒸気量を制御して、前記滅菌乾燥工程を実行する制御部と、
前記滅菌乾燥工程における前記処理室の温度、圧力、処理時間を前記制御部に設定入力可能な操作部、および、前記処理室の温度、圧力を含む装置動作状態を表示可能な表示部を備えた操作・表示部と、
を有していることを特徴としている。
【0021】
この場合、前記制御部は、
前記蒸気発生部で発生させた水蒸気を前記処理室に供給すると共に前記処理室を加熱して常温常圧状態の前記処理室を第1の規定圧力および第1の規定温度まで上げた後に、前記処理室から水蒸気を排出して前記処理室を大気圧まで戻す予熱工程と、
前記処理室内に被処理物が投入された後に、前記蒸気発生部で発生させた水蒸気を前記処理室に供給すると共に前記処理室を加熱して、前記処理室を第2の規定圧力および第2の規定温度の状態にする昇温工程と、
前記滅菌乾燥工程と、
前記処理室の加熱を止めて水蒸気を排出して、前記処理室の圧力を大気圧に戻す蒸気排出工程と、
を実行する。
【0022】
また、前記制御部に、滅菌処理のための複数の動作モードを予め設定しておき、前記操作・表示部を介して動作モードの一つを選択して実行させることができるようにしておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明を適用した医療用滅菌装置である小型滅菌装置の外観斜視図である。
図2図1の小型滅菌装置の配管系統図である。
図3図1の小型滅菌装置の仕様を示す説明図である。
図4図1の小型滅菌装置の処理動作を示す概略フローチャートである。
図5】滅菌室内の温度、圧力の変化を示すグラフである。
図6】滅菌処理後のバイオインジケータの培養結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して、本発明のソフト水熱プロセスによる滅菌乾燥方法を用いた医療用滅菌装置の実施の形態を説明する。
【0025】
[全体構成]
図1は、本実施の形態に係る医療用滅菌装置である流通型の小型滅菌装置を示す外観斜視図である。小型滅菌装置1は、キャスター付きの支持台2を備え、この支持台2の天板3に、処理ユニット4およびコントローラ5(制御部)が並列配置された状態で搭載されている。
【0026】
コントローラ5の前面は複数の操作ボタン6および表示画面7が配列された操作面8(操作・表示部)となっている。操作ボタン6を操作して、後述の滅菌処理時の温度、圧力、処理時間を設定入力可能である。表示画面7には、滅菌処理時の温度、圧力を含む装置動作状態を表示可能である。
【0027】
支持台2の底板9には、蒸気発生部としての給水タンク10およびボイラー11と、ドレンタンク12(回収部)とが並列配置された状態で搭載されている。
【0028】
図2は小型滅菌装置1の配管系統図である。処理ユニット4は、滅菌処理用の圧力容器13と、この圧力容器13を外側から加熱するヒーター14(加熱部)とを備えている。ヒーター14による加熱温度は温度センサー15によって検出される。温度指示調節計16は加熱温度が設定温度になるようにヒーター14を制御する。設定温度はコントローラ5(図1参照)によって設定される。圧力容器13内の温度、例えば、その上段温度が温度センサー18によって検出される。複数の箇所で温度を検出してもよい。
【0029】
圧力容器13には、供給管21を介して、小型貫流ボイラー11が繋がっている。供給管21には、コントロールバルブ23およびフィルタ24が配置されている。ボイラー11は、給水タンク10から供給される蒸留水を加熱して水蒸気を発生させる。発生した水蒸気は、供給管21を介して圧力容器13に供給可能である。供給管21には水蒸気の供給圧力を検出する圧力センサー26が取り付けられている。供給される水蒸気圧力は圧力指示調節計27によって設定圧力に調節される。また、圧力容器13に供給される水蒸気量はコントロールバルブ23によって調節可能である。
【0030】
圧力容器13の下流端の側には、その上段位置、中段位置および下段位置に、それぞれ大気開放管31、排気管32、33が接続されている。中段の排気管32は、フィルタ34、コントロールバルブ35およびチェックバルブ36を介してドレンタンク12に繋がっている。下段の排気管33は、フィルタ37を介して二股に分岐し、一方の分岐管はスチームトラップ38およびチェックバルブ39を介してドレンタンク12に繋がっており、他方の分岐管はチェックバルブ40を介してドレンタンク12に繋がっている。
【0031】
また、圧力容器13には、その内圧を検出するための圧力センサー41が取り付けられている。圧力指示調節計42は検出された内圧に基づきコントロールバルブ35を制御し、水蒸気の排出量を調整する。これにより、圧力容器13の内圧が設定圧力となるように調節される。圧力センサー41、圧力指示調節計42は、滅菌処理時に圧力容器13を経由して流通する水蒸気量を制御する流量制御部として機能する。圧力容器13の設定圧力はコントローラ5(図1参照)によって設定される。
【0032】
[仕様および滅菌処理動作]
図3は小型滅菌装置1の仕様一覧を示す説明図であり、図4は小型滅菌装置1の滅菌処理動作を示す概略フローチャートである。
【0033】
本例では、図3に示すように、処理の動作モードとして、パターン1、2および3の三種類が予め用意され、これらの動作のパターンがコントローラ5に設定されている。操作者は、操作面8の操作ボタン6を操作して、これらのうちの一つを選択できる。
【0034】
また、各動作モードのパターンでは、図3図4に示すように、次の各工程が順次に実行される。これらのうち、「投入」および「取出」の各工程は、操作者によって行われる工程である。
【0035】
予熱:ボイラー11で発生させた水蒸気を圧力容器13に供給する(図4のステップST1、ST2、ST5)。圧力容器13を加熱して常温常圧状態の圧力容器13を所定の規定圧力および所定の規定温度まで上げる(図4のステップST3、ST4、ST5、ST6)。圧力容器13から水蒸気を排出して圧力容器13を大気圧まで戻す(図4のステップST7、ST8)。
【0036】
投入:圧力容器13内に被処理物を投入する(図4のステップST9、ST10)。
昇温:ボイラー11で発生させた水蒸気を圧力容器13に供給すると共に圧力容器13を加熱して、圧力容器13を所定の規定圧力および所定の規定温度の状態にする(図4のステップST11、ST12)。
【0037】
滅菌:ボイラー11で発生させた水蒸気を、蒸気飽和度が100%を下回らない高飽和水蒸気の状態で、滅菌対象の被処理物を入れた圧力容器13を経由して流通させ、被処理物の滅菌および乾燥を同時に行う(図4のステップST13)。
排蒸:圧力容器13の加熱を止めて水蒸気を排出して、圧力容器13の圧力を大気圧に戻す(図4のステップST14、ST15)。
【0038】
取出:圧力容器13から滅菌乾燥処理された後の被処理物を取り出す(図4のステップST16)。
【0039】
終了:ヒーター14を停止し、ボイラー11の運転を停止する(図4のステップST17、ST18)。
【0040】
なお、図3に示す仕様は一例であり、異なる仕様とすることも可能である。例えば、滅菌処理動作のパターンとして別のパターン、例えば、各工程の処理時間が異なるものを用意しておくことも可能である。例えば、滅菌工程の処理時間は3.5分間としてあるが、この処理時間は、処理対象の被処理物の容量、圧力容器13の容量、規定温度、規定圧力等の各パラメータに応じて適切な値に設定すればよい。
【実施例】
【0041】
[実験例1]
本発明者等は、上記構成の小型滅菌装置1を用いて、滅菌性および乾燥性を評価するための実験を行った。実験に用いた試料および実験手順は次の通りである。
【0042】
滅菌性分析試料(被処理物)として、BD(ボーウィディックテスト・パック)、CI(ケミカルインジケータ)およびBI(バイオロジカルインジケータ)の3種類のものを用いた。
【0043】
実験手順としては、上記の滅菌性分析試料を圧力容器13の内部における上段位置と下段位置にそれぞれ配置し、規定温度134℃、規定圧力0.207MPa(ゲージ圧)で、滅菌処理時間を4分間とした。図5は、時間経過に伴う圧力容器13内の温度変化および圧力変化を示すグラフである。経過時間は、予熱工程の後に滅菌性分析試料を圧力容器13内に投入して圧力容器13を封鎖した後の昇温工程の開始時点から経過時間である。
【0044】
実験後に滅菌性分析試料を取り出して乾燥性および滅菌性の評価を、病院での基準と同様に行った。乾燥性については、試料は滅菌処理後の目視確認(BD、CI)、および、指先による触診および試料厚紙のシミの状況の目視確認(BD)では、良好な乾燥状態を保っていることが確認された。
【0045】
滅菌性については、BD(ボーウィディックテスト・パック)は、処理後の目視確認時には均一の所定温度の水蒸気の浸透性を提示していた。また、上段、下段に配置したものは共に良好であり、滅菌性が確認された。
【0046】
CI(ケミカルインジケータ)は、処理後の確認時に所定温度の水蒸気による色調変化を提示していた。また、上段、下段に配置したものは共に良好であり、滅菌性が確認された。
【0047】
BI(バイオロジカルインジケータ)は、処理後に所定条件にてコントロール試料と共に、芽胞細菌培養実験を行って判定した。図6には培養結果の一例を示してある。この結果から、良好な滅菌性が確認された。また、滅菌処理時間としては3分以上あれば良好な結果が得られることが確認された。
【0048】
[実験例2]
本発明者等は、小型流通式の滅菌実証機を製作し、その滅菌釜として、横円筒形(内径400mm、長さ865mm)の第一種圧力容器(最高圧力0.99MPa、最高温度188.0℃、内容積0.126m)を用いた。この滅菌釜内に被滅菌物として、CI(ケミカルインジケータ)およびBI(バイオロジカルインジケータ)を包んだ普通バスタオルを配置して、121℃、30分間の条件で滅菌処理し、バスタオルの含水率を測定した。CI、BIは病院での基準と同様に判定した。
【0049】
この結果、非処理物であるタオルの質量は、滅菌前の475gに対して滅菌後には468gとなり、9.8%減量した。CI、BIの判定も全て正常であった。
【0050】
[実験例3]
本発明者等は、大型流通式の滅菌実証機を製作し、その滅菌釜として、横円筒形(内径1200mm、長さ2900mm)のジャケット付き第一種圧力容器(最高圧力1MPa、最高温度184.1℃、内容積3m)を用いた。この滅菌釜内の上下に被滅菌物として、BD(ボーウィディックテスト・パック)、CIおよびBIを配置して、135℃、4分間の条件で滅菌処理し、病院での基準と同様に判定した。
【0051】
この結果、滅菌終了後の試験ディバイスであるBDでは、均一の正常な変色があり、厚紙は乾燥状態であった。また、CI、BIの判定も全て正常であった。
【0052】
[実験結果について考察]
上記の実験結果を含む本発明者等が行った実験結果によれば、ソフト水熱プロセスによる新しい滅菌理論を適用した本発明の滅菌装置は、滅菌性能を維持しながら乾燥工程無しに被処理物を処理前と同等に、あるいは、それ以上に乾燥できる。したがって、通常の高圧水蒸気滅菌装置(オートクレーブ)で必要とされる被処理物の凝結水の乾燥工程を省略
できる。よって、高圧水蒸気滅菌の作業時間の短縮および省力・省エネルギー化を図ることができる。
【0053】
また、本発明の滅菌装置は、先に非特許文献1として引用した「医療現場における滅菌保証のガイドライン 2010」に沿うものである。具体的には、当該文献の第23頁以降の「3.蒸気滅菌における滅菌バリデーションおよび日常管理」に規定されているガイドラインに沿ったものである。例えば、第23頁の表3−1(ISO高圧蒸気滅菌条件)、表3−2(局方の高圧蒸気滅菌条件)に掲載の数値条件を満足するものである。
【符号の説明】
【0054】
1 小型滅菌装置
2 支持台
3 天板
4 処理ユニット
5 コントローラ
6 操作ボタン
7 表示画面
8 操作面
9 底板
10 給水タンク
11 ボイラー
12 ドレンタンク
13 圧力容器
14 ヒーター
15 温度センサー
16 温度指示調節計
18 温度センサー
21 供給管
23 コントロールバルブ
24 フィルタ
26 圧力センサー
27 圧力指示調節計
31 大気開放管
32、33 排気管
34 フィルタ
35 コントロールバルブ
36 チェックバルブ
37 フィルタ
38 スチームトラップ
39 チェックバルブ
40 チェックバルブ
41 圧力センサー
42 圧力指示調節計
図1
図2
図3
図4
図5
図6