特開2017-147983(P2017-147983A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-147983栽培器及びそれを用いた植物成長に影響する物質の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-147983(P2017-147983A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】栽培器及びそれを用いた植物成長に影響する物質の評価方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20060101AFI20170804BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
   A01G31/00 601A
   A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-33707(P2016-33707)
(22)【出願日】2016年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
【住所又は居所】兵庫県神戸市灘区六甲台町1−1
(71)【出願人】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝浦1丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】金丸 研吾
【住所又は居所】兵庫県神戸市灘区六甲台町1番1号 国立大学法人神戸大学内
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 優
【住所又は居所】埼玉県幸手市権現堂1134−2 コスモ石油株式会社 中央研究所内
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA70
2B314NA01
2B314NA21
2B314NA22
2B314NA23
2B314NA40
2B314PA20
2B314PC02
2B314PC08
2B314PC12
2B314PC22
2B314PC24
2B314PC29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】植物の生育が良好で成長のばらつきが小さく、かつ植物の培養液やその組成を栽培期間中であっても厳密かつ容易に調整、交換できる新たな植物の栽培器、栽培装置、それを用いた植物の栽培方法及び植物成長に影響する物質や生物の評価方法を提供する。
【解決手段】植物12の培養液11を収容する容器本体Pと、容器本体内の平底面に配置される複数の揺動体Sと、複数の揺動体の直上に配置される植物支持体Bとを備える栽培器Uであって、複数の揺動体は、球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、栽培器。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の培養液を収容する容器本体と、
前記容器本体内の平底面に配置される複数の揺動体と、
前記複数の揺動体の直上に配置される植物支持体と
を備える栽培器であって、
前記複数の揺動体は、球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、栽培器。
【請求項2】
前記植物支持体はシート状である請求項1記載の栽培器。
【請求項3】
前記複数の揺動体は互いに直径又は短軸の長さが同一である請求項1又は2記載の栽培器。
【請求項4】
前記容器本体の平底面に配置される揺動体の数が3個以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の栽培器。
【請求項5】
揺動装置と組み合わせて使用される請求項1〜4のいずれか1項記載の栽培器。
【請求項6】
栽培器及び揺動装置を備える植物の栽培装置であって、
前記栽培器は、植物の培養液を収容する容器本体と、前記容器本体内の平底面に配置される球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種の複数の揺動体と、前記複数の揺動体の直上に配置される植物支持体とを備え、
前記容器本体は、植物の培養液を、その液面が前記複数の揺動体と前記植物支持体とが接する複数の接点又は接線より低位になるように収容し、
前記複数の揺動体は、前記容器本体内の平底面に、その中心又は中心軸が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置され、前記容器本体内の植物の培養液を、前記揺動装置による該複数の揺動体の揺動に伴って該複数の揺動体の表面を伝わらせて、該複数の揺動体と前記植物支持体とが接する前記複数の接点又は接線を通じて前記植物支持体に供給する、植物の栽培装置。
【請求項7】
栽培器及び揺動装置を用いる植物の栽培方法であって、
前記栽培器は、容器本体と、球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種の複数の揺動体と、植物支持体とを備えてなり、
前記容器本体内の平底面に、前記複数の揺動体を、その中心又は中心軸が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置するステップと、
前記複数の揺動体の直上に前記植物支持体を配置するステップと、
前記容器本体に、植物の培養液を、その液面が前記複数の揺動体と前記植物支持体とが接する複数の接点又は接線より低位になるように収容するステップと、
前記植物支持体上に植物を載せるステップと、
前記植物の培養液を、前記揺動装置による前記複数の揺動体の揺動に伴って該揺動体の表面を伝わらせて、前記複数の接点又は接線を通じて前記植物支持体に供給して前記植物を栽培するステップと
を含む、植物の栽培方法。
【請求項8】
栽培器及び揺動装置を用いる植物成長に影響する物質及び/又は生物の評価方法であって、
前記栽培器は、容器本体と、球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種の複数の揺動体と、植物支持体とを備えてなり、
前記容器本体内の平底面に、前記複数の揺動体を、その中心又は中心軸が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置するステップと、
前記複数の揺動体の直上に前記植物支持体を配置するステップと、
前記容器本体に、植物成長に影響する物質及び/又は生物を含む植物の培養液を、その液面が前記複数の揺動体と前記植物支持体とが接する複数の接点又は接線より低位になるように収容するステップと、
前記植物支持体上に植物を載せるステップと、
前記植物成長に影響する物質及び/又は生物を含む植物の培養液を、前記揺動装置による前記複数の揺動体の揺動に伴って該揺動体の表面を伝わらせて、前記複数の接点又は接線を通じて前記植物支持体に供給して前記植物を栽培するステップと、
栽培植物の成長状態を評価するステップと
を含む、植物成長に影響する物質及び/又は生物の評価方法。
【請求項9】
栽培器及び揺動装置を用いる植物成長に影響する物質及び/又は生物の評価方法であって、
前記栽培器は、容器本体と、球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種の複数の揺動体と、植物支持体とを備えてなり、
前記容器本体内の平底面に、前記複数の揺動体を、その中心又は中心軸が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置するステップと、
前記複数の揺動体の直上に前記植物支持体を配置するステップと、
植物成長に影響する生物で前処理した植物を前記植物支持体の上に載せるステップと、
前記容器本体に、植物成長に影響する物質を含む植物の培養液を、その液面が前記複数の揺動体と前記植物支持体とが接する複数の接点又は接線より低位になるように収容するステップと、
前記植物成長に影響する物質を含む植物の培養液を、前記揺動装置による前記複数の揺動体の揺動に伴って該揺動体の表面を伝わらせて、前記複数の接点又は接線を通じて前記植物支持体に供給して植物を栽培するステップと、
栽培植物の成長状態を評価するステップと
を含む、植物成長に影響する物質及び/又は生物の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培する栽培器、栽培装置、それを用いた植物の栽培方法及び植物成長に影響する物質や生物、すなわち成長促進物質、成長抑制物質、感染防御物質、感染治療物質、農薬、菌やウイルスの感染力や感染様式の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土を使用せずに植物を栽培する方法の一つとして水耕栽培が知られている。水耕栽培では、スポンジやマット、シート等の植物支持体を植物の培養液中に浸漬又は培養液上に浮上させた状態で植物を栽培する(例えば、特許文献1)。水耕栽培は、植物の根を直接培養液に浸漬させて成長させる湛液型水耕と、植物の根を湿気中で成長させる薄膜水耕或いは毛管水耕(浮き根式水耕)等に分けられる。
一方、培養液をゲル状とし、ゲル培地の表面で植物の種子や地上部を、内部で根を支持して栽培する方法も知られている。
【0003】
植物の根を湿気中で成長させる栽培法は、根を培養液に浸漬させる栽培法と比べて、根の成長に必要な酸素を十分根に供給でき、また、植物の過剰な培養液の吸収を抑えられる利点がある。また、種子や幼苗等が培養液中に沈み生育不良になるのを防げ、播種の段階から発芽を経て苗となるまでの育苗段階に対応しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−143984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、毛管水耕では、毛細管現象により吸い上げられた培養液が培養液上の植物支持体全体へ広がり、植物へ供給される。
しかしながら、培養液が吸い上げられた位置とそれ以外の位置の間で培養液の濃度や組成の不均一性が生じやすく、一つの栽培器内或いは栽培器毎で植物の成長にばらつきが出やすいという問題がある。植物の成長のばらつきは、植物の安定生産への影響が大きいだけでなく、多条件、複合条件、多検体の栽培試験を同時に行う際に、植物に最適な栽培条件や、植物の活性化、成長促進等に有用な候補化合物を適正に評価するのにも不都合が生じると考えられる。
ゲル培地を用いる栽培法においては、このような植物の成長のばらつきは小さいものの、培養液をゲル状とする際に昇温が必要なため、煩雑な上に、熱に弱い候補化合物の評価は困難である。さらに、栽培期間中における培養液成分の追加、培養液交換、培養液量調節、水分補充、菌やウイルスの接種ができず、無理にこれを行うと植物体、とくに根を損傷するか、条件の不均一化を招く。
【0006】
従って、本発明は、上記の如き従来の問題と実状に鑑みてなされたものであり、植物の生育が良好で成長のばらつきが小さく、かつ植物の培養液やその組成を栽培期間中であっても厳密かつ容易に調整、交換できる新たな植物の栽培器、栽培装置、それを用いた植物の栽培方法及び植物成長に影響する物質や生物の評価方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、請求項1に係る本発明は、
植物の培養液を収容する容器本体と、
前記容器本体内の平底面に配置される複数の揺動体と、
前記複数の揺動体の直上に配置される植物支持体と
を備える栽培器であって、
前記複数の揺動体は、球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴としている。
また、請求項2に係る本発明は、前記植物支持体はシート状であることを特徴としている。
また、請求項3に係る本発明は、前記複数の揺動体は互いに直径又は短軸の長さが同一であることを特徴としている。
また、請求項4に係る本発明は、前記容器本体の平底面に配置される揺動体の数が3個以上であることを特徴としている。
また、請求項5に係る本発明は、前記栽培器が揺動装置と組み合わせて使用されることを特徴としている。
また、請求項6に係る本発明は、
栽培器及び揺動装置を備える植物の栽培装置であって、
前記栽培器は、植物の培養液を収容する容器本体と、前記容器本体内の平底面に配置される球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種の複数の揺動体と、前記複数の揺動体の直上に配置される植物支持体とを備え、
前記容器本体は、植物の培養液を、その液面が前記複数の揺動体と前記植物支持体とが接する複数の接点又は接線より低位になるように収容し、
前記複数の揺動体は、前記容器本体内の平底面に、その中心又は中心軸が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置され、前記容器本体内の植物の培養液を、前記揺動装置による該複数の揺動体の揺動に伴って該複数の揺動体の表面を伝わらせて、該複数の揺動体と前記植物支持体とが接する前記複数の接点又は接線を通じて前記植物支持体に供給することを特徴としている。
また、請求項7に係る本発明は、
栽培器及び揺動装置を用いる植物の栽培方法であって、
前記栽培器は、容器本体と、球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種の複数の揺動体と、植物支持体とを備えてなり、
前記容器本体内の平底面に、前記複数の揺動体を、その中心又は中心軸が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置するステップと、
前記複数の揺動体の直上に前記植物支持体を配置するステップと、
前記容器本体に、植物の培養液を、その液面が前記複数の揺動体と前記植物支持体とが接する複数の接点又は接線より低位になるように収容するステップと、
前記植物支持体上に植物を載せるステップと、
前記植物の培養液を、前記揺動装置による前記複数の揺動体の揺動に伴って該揺動体の表面を伝わらせて、前記複数の接点又は接線を通じて前記植物支持体に供給して前記植物を栽培するステップと
を含むことを特徴としている。
また、請求項8に係る本発明は、
栽培器及び揺動装置を用いる植物成長に影響する物質及び/又は生物の評価方法であって、
前記栽培器は、容器本体と、球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種の複数の揺動体と、植物支持体とを備えてなり、
前記容器本体内の平底面に、前記複数の揺動体を、その中心又は中心軸が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置するステップと、
前記複数の揺動体の直上に前記植物支持体を配置するステップと、
前記容器本体に、植物成長に影響する物質及び/又は生物を含む植物の培養液を、その液面が前記複数の揺動体と前記植物支持体とが接する複数の接点又は接線より低位になるように収容するステップと、
前記植物支持体上に植物を載せるステップと、
前記植物成長に影響する物質及び/又は生物を含む植物の培養液を、前記揺動装置による前記複数の揺動体の揺動に伴って該揺動体の表面を伝わらせて、前記複数の接点又は接線を通じて前記植物支持体に供給して前記植物を栽培するステップと、
栽培植物の成長状態を評価するステップと
を含むことを特徴としている。
また、請求項9に係る本発明は、
栽培器及び揺動装置を用いる植物成長に影響する物質及び/又は生物の評価方法であって、
前記栽培器は、容器本体と、球体、円柱体及び楕円球体からなる群より選ばれる少なくとも1種の複数の揺動体と、植物支持体とを備えてなり、
前記容器本体内の平底面に、前記複数の揺動体を、その中心又は中心軸が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置するステップと、
前記複数の揺動体の直上に前記植物支持体を配置するステップと、
植物成長に影響する生物で前処理した植物を前記植物支持体の上に載せるステップと、
前記容器本体に、植物成長に影響する物質を含む植物の培養液を、その液面が前記複数の揺動体と前記植物支持体とが接する複数の接点又は接線より低位になるように収容するステップと、
前記植物成長に影響する物質を含む植物の培養液を、前記揺動装置による前記複数の揺動体の揺動に伴って該揺動体の表面を伝わらせて、前記複数の接点又は接線を通じて前記植物支持体に供給して植物を栽培するステップと、
栽培植物の成長状態を評価するステップと
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物が良好に生育し、植物成長に影響する物質や生物の効果のばらつき、成長のばらつきが小さく、かつ植物の成長状況に合わせて植物の培養液やその組成を調整、交換できる植物の栽培器が提供される。また、本発明の栽培器を用いれば、短期間で、省力、省スペース、低ランニングコストで多条件、複合条件、多検体の栽培試験を一度に行うことができ、植物成長に影響する物質や生物の効果、最適濃度等について簡便に、適正に評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る栽培器の基本的な構成を説明する図である。
図2】栽培器を用いた植物の栽培方法について説明する図である。
図3】(a)容器本体内に円柱体を配置した状態を示す図である。(b)容器本体内に球体を配置した状態を示す図である。
図4】各栽培法で得た植物個体重量を示す図である。
図5】ALA投与によるシロイヌナズナのクロロフィル量の変化を示す図である。
図6】栽培19日目のシロイヌナズナの生育状態を示す図である。
図7】栽培19日目のシロイヌナズナの生育状態を示す図である。
図8】栽培12日目のクレソンの生育状態を示す図である。
図9】栽培12日目のレタスの生育状態を示す図である。
図10】栽培16日目のバジルの生育状態を示す図である。
図11】栽培28日目のパセリの生育状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る栽培器の基本的な構成を説明する図である。図1において、Uは栽培器、Pは植物の培養液を収容する容器本体、Sは揺動体、Bは植物支持体である。
栽培器Uは、図1に示すように、容器本体Pの内部の平底面に複数の揺動体Sが配置されており、かつ当該複数の揺動体Sの直上に植物支持体Bが配置されている。
【0012】
植物の培養液を収容する容器本体Pとしては、特に制限されず、例えば、上端に開口を有する、セルトレイ、育苗用ポット、水槽、シャーレ、プレート等が挙げられる。容器本体Pの内底面は平面状である。
容器本体Pは、多条件、複合条件、多検体の植物栽培試験を一度に行う場合は、コンパクト化することができる観点から、丸シャーレ、プレート型シャーレ、プレートが好ましい。なかでも、本発明においては、植物の培養液を収容する穴(ウェル、有底穴)を複数、例えば、6穴や12穴、有する多穴プレート(平底)を用いるのがより好ましい。ウェル径、ウェル深さは特に限定されない。
容器本体Pの素材としては、例えば、ガラス、ステンレス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のプレスチックが好ましい。
【0013】
複数の揺動体Sの形状は、球体、円柱体又は楕円球体である。揺動体Sの形状は、ゴルフボールの様に表面に凹凸や起伏があっても、全体として略球体の外観を呈するものであればよい。また、楕円球体は、楕円の長軸を回転軸とした長球状、短軸を回転軸とした扁球状のいずれでもよいが、好ましくは長球状である。
揺動体Sの形状は、培養液の均一性を高め、かつ植物成長に影響する物質や生物の効果のばらつき、植物の成長のばらつきを小さくする観点から、好ましくは球体又は円柱体であり、より好ましくは球体である。
【0014】
揺動体Sは、容器本体P内に複数収容できるものであれば、適宜好適な大きさのものを用いることができる。例えば、球体又は円柱体の直径、或いは楕円球体の短軸の長さは、5〜10mm、好ましくは7〜9mmであり、円柱体の長さ、或いは楕円球体の長軸の長さは、8〜15cm、好ましくは10〜12cmである。
【0015】
揺動体Sの材質としては、植物の培養液を表面張力により付着できるものであれば特に制限されず、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン等のプラスチック球、ガラス球、ステンレス球、鋼球、ゴム球等が挙げられる。取扱性の観点から、好ましくはプラスチック球である。
【0016】
揺動体Sの数は、複数、すなわち2個以上である。揺動体Sの数は、培養液の均一性を高め、かつ植物成長に影響する物質や生物の効果のばらつき、植物の成長のばらつきを小さくする観点から、好ましくは3個以上である。また、上限は、特に制限されず、容器本体P内の平底面積や揺動体Sの大きさによって異なるが、好ましくは100個以下、より好ましくは80個以下、さらに好ましくは50個以下である。
【0017】
複数の揺動体Sは、培養液の均一性を高め、かつ植物成長に影響する物質や生物の効果のばらつき、植物の成長のばらつきを小さくする観点から、互いに直径又は短軸の長さが同一であることが好ましい。
また、揺動体Sの組み合わせは、同じ形状同士でも、異なった形状でもよいが、同様の観点からは、同じ形状同士を組み合わせるのが好ましい。
【0018】
植物支持体Bは、植物を支持可能な支持体である。後述するようにこの植物支持体Bを介して植物は培養液を吸収し成長する。そのため、植物支持体Bは、植物の培養液を吸水する性質又は透水する性質を有する。
植物支持体Bは、植物の培養液の成分を吸着しないものが好ましい。さらに、植物支持体Bは、植物成長に影響する物質や生物をハイスループットスクリーニングする観点から、ポアサイズが小さく、植物の根の進入を遮断する防根性を有するものが好ましい。植物の根が植物支持体に入り込まず、十分に培養液を含んだ植物支持体上で成長すると、生育が良好なだけでなく、成長後に支持体と植物を分離し易く、根を傷つけずに、植物の移植、植物重量や長さの測定等を正確に、容易に、安全に行うことができる。また、植物の成長状況に合わせた植物の培養液やその組成の調整、交換、すなわち培養液の添加、培養液の交換、菌やウイルスの接種、培養液量の調整も支持体上に植物を生育させたまま、あるいは支持体ごと容易に安全に行うことができる。
かかる観点から、植物支持体Bとしては平面性を保てるシート状が好ましく、布、紙、不織布等がより好ましく、紙、不織布がさらに好ましい。
【0019】
植物支持体Bの材料としては、例えば、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の親水性繊維が挙げられる。
【0020】
植物支持体Bは、複数の揺動体Sの直上に二つ以上重ねて配置されてもよいが、重層した支持体間への空気混入による不均一性の発生やずれによる均一な成分拡散の妨げの観点から、複数の揺動体Sの直上に一つ配置されることが好ましい。
また、植物支持体Bは、複数の揺動体Sと複数の接点又は接線で接して配置されていればよいが、培養液の均一性を高め、かつ植物成長に影響する物質や生物の効果のばらつき、植物の成長のばらつきを小さくする観点からは、容器本体P内の全面に渡って配置されることが好ましい。
【0021】
さらに、栽培器Uは、取り外し可能に取り付けられる蓋体を備えてもよい。栽培器の上端開口に蓋体を取り付け、栽培器を密閉条件下とすることで、無菌環境或いは特定の菌のみの存在下の環境とすることができる。
栽培器Uの蓋体は、栽培器に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂製カバー、プレートシール、サランラップ(登録商標)、透明ビニルシート等が挙げられる。
【0022】
次に、このように構成された栽培器Uを使用した植物の栽培方法について図2に基づいて説明するが、植物の栽培には図示しない揺動装置が組み合わせて使用される。すなわち、栽培器Uと、該栽培器Uを揺動する揺動装置を備える植物の栽培装置が使用される。図2に示すように、揺動装置により栽培器Uを揺動することにより、栽培器U内の複数の揺動体Sが揺動し、植物の培養液11が該揺動体の表面を伝って該揺動体の直上に配置した植物支持体Bに供給されるため、該植物支持体B上で植物12を栽培することができる。尚、図2において、10は、複数の揺動体Sと植物支持体Bとが接する接点又は接線である。
揺動装置としては、公知の振とう機等が挙げられる。
【0023】
植物の栽培では、先ず、容器本体P内の平底面に、複数の揺動体Sを、その中心又は中心軸が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置する。すなわち、容器本体P内の平底面に揺動体同士が互いに重ならないように配置する。尚、楕円球体にあっては、長軸を中心軸として、該中心軸(長軸)が同一平面上に位置するように、且つ、揺動可能に配置することが好ましい。
複数の揺動体Sは、培養液の均一性を高め、かつ植物成長に影響する物質や生物の効果のばらつき、植物の成長のばらつきを小さくする観点から、容器本体P内の平底面に最大数配置することが好ましい。図3(a)は、7つの同一直径の円柱体が、中心軸が同一平面上に位置するようにかつ揺動可能に最大数配置された図であり、8つの円柱体を揺動可能に配置できない状態を示している。図3(b)は5つの同一直径の球体が、中心点が同一平面上に位置するようにかつ揺動可能に最大数配置された図であり、6つの球体を揺動可能に配置できない状態を示している。
【0024】
複数の揺動体Sの直上には植物支持体Bを配置する。このとき、複数の揺動体Sと植物支持体Bとは複数の接点又は接線10で接する。
【0025】
また、植物支持体B上に植物12を載せる。植物12の種類としては、特に限定されず、各種の草花、野菜、香草等が挙げられる。植物12は、植物成長に影響する物質や生物を接触させる等の前処理を行ったものでもよい。
尚、植物は、種子を播種してもよく、幼苗を移植してもよい。植物支持体上には、植物の種子を播種するのが好ましい。
【0026】
容器本体P内には、植物の培養液11を、その液面が前記複数の揺動体Sと前記植物支持体Bとが接する複数の接点又は接線10より低位になるように収容する。植物の培養液11の液面は、前記接点又は接線10よりも低位であればよいが、必要十分量の培養液が植物支持体に供給されるが、植物支持体上の種子や幼苗が培養液中に沈まないようにする観点から、容器本体P内の平底面から揺動体Sと植物支持体Bとが接する接点又は接線10までの距離を1とした時に、容器本体P内の平底面からの距離が0.9以下、更に0.8以下、更に0.5〜0.7となる位置であることが好ましい。
植物の培養液11は、水や、植物の栽培に一般的に用いられる培養液及びこれに様々な植物成長に影響する物質や生物を添加したものである。
【0027】
このように容器本体P内に収容した植物の培養液11を、前記揺動装置により栽培器Uを揺動することにより、複数の揺動体Sの揺動に伴って該揺動体の表面を伝わらせて、複数の接点又は接線10を通じて植物支持体Bに供給し、該植物支持体B上の植物12を栽培する。植物の培養液が供給される接点又は接線が複数存在することで、植物支持体全面、これに支持される植物に植物成長に影響する物質や生物を含め培養液が均一かつ安定的に供給されて、短期間で植物が良好に生育し、かつ栽培位置にかかわらず植物個体間で成長が揃い、ばらつきが小さくなる。また、多穴プレートの各ウェル内で植物を栽培する場合は、各ウェル間でも植物の成長が揃い、ばらつきが小さくなる。
【0028】
揺動装置による揺動体Sの揺動は、表面張力により付着した植物の培養液11が複数の揺動体Sと植物支持体Bとが接する複数の接点又は接線10から植物支持体Bに供給されるような揺れ動きであり、球体の場合は、球体の円弧に沿った旋回運動、自転運動である。また、円柱体又は楕円球体の場合は、円柱体又は楕円球体の中心軸の周りの円弧に沿った往復運動、自転運動である。尚、揺動体Sにおける回転は回転角度が360度未満であってよく、必ずしも一回転する必要はない。
揺動条件は、適宜設定できるが、球体の場合は、好ましくは6〜180r/minでの水平旋回振とうである。また、円柱体又は楕円球体の場合は、好ましくは揺れ幅1mm〜10cmである。
【0029】
植物の栽培では、植物の種類に応じて、温度、湿度、光条件、栽培日数等を適宜設定することができる。一定条件下に設定したインキュベーター内等で栽培してもよい。
本発明の栽培器は、複数の揺動体の揺動条件が同一であれば、植物の培養液が植物支持体、これに支持される植物に均一に供給されるため、栽培器内の植物個体間のみならず、栽培器毎の植物個体間で成長が揃い、ばらつきが小さく、均一に生育する。そのため、本発明の栽培器を用いれば、品質の良い植物の栽培、正確な成長評価等が可能である。
また、短期間、省力、省スペース、低ランニングコストで多条件、複合条件、多検体の栽培試験を同時に行うことができる。例えば、後記実施例に示すように、植物成長に影響する物質や生物の有用性、最適濃度等について簡便に、適正に評価を行うことができる。
【0030】
次に、本発明の栽培器Uを用いた植物成長に影響する物質及び/又は生物の評価方法について説明する。当該評価方法においても前記と同様、揺動装置が組み合わせて使用される。
植物成長に影響する物質及び/又は生物の評価方法では、容器本体P内に植物成長に影響する物質及び/又は生物を含む植物の培養液11を収容する。この培養液11を、前記と同様にして、揺動装置による複数の揺動体Sの揺動に伴って該揺動体の表面を伝わらせ、複数の揺動体Sと植物支持体Bとが接する複数の接点又は接線10を通じて植物支持体Bに供給し、植物12を栽培する。このようにして植物を栽培すると、培養液中に含まれる植物成長に影響する物質や生物の効果のばらつきが小さくなり、短期間で植物成長に影響する物質や生物の効果、最適濃度等について簡便に、適正に評価を行うことができる。
また、植物成長に影響する物質及び/又は生物の評価方法では、予め植物12に対し植物成長に影響する生物と接触させる等の前処理を行い、他方、容器本体P内には植物成長に影響する物質を含む植物の培養液11を収容して、この培養液11を、前記と同様にして、揺動装置による複数の揺動体Sの揺動に伴って該揺動体の表面を伝わらせ、複数の接点又は接線10を通じて植物支持体Bに供給し、前処理した植物12を栽培してもよい。これにより、植物成長に影響する物質や生物の効果等について簡便に、適正に評価を行うことができる。
【0031】
本発明の栽培器を用いて評価できる植物成長に影響する物質や生物としては、植物の成長、例えば、植物重量、葉数・茎数の増加、植物体の伸長・拡大、花芽形成、結実等に影響する有機・無機化合物、生物が挙げられる。その種類としては、例えば、アミノ酸、糖、脂質、核酸、タンパク質、窒素、リン、カリウム、重金属、植物病原菌、土壌細菌、菌根菌、根粒菌、ウィルス又はこれらの組み合わせがある。尚、植物成長に影響する物質や生物には、その有用性、毒性が推定、予想されるものの他、任意の候補化合物や候補生物も含まれる。
【0032】
栽培植物の成長状態の評価では、例えば、植物成長に影響する物質や生物の存在下における栽培植物の成長状態と、植物成長に影響する物質や生物の非存在下における栽培植物の成長状態とを比較し、植物成長に影響する物質や生物の存在下における栽培植物の成長が向上している場合には、当該物質や生物を植物成長促進に有用な物質、生物として評価、選択することができる。逆に栽培植物の成長が抑制されている場合には、当該物質や生物を植物成長抑制に有用な物質や生物あるいは植物に有毒な物質や生物として評価、選択することができる。また、培養液中の植物成長に影響する物質や生物濃度を変化させて、各々の濃度における栽培植物の成長状態を比較すれば、植物成長に影響する物質や生物の最適濃度の評価をすることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0034】
次の材料及び植物を使用した。
[培養液]
MS培地(pH;5.7〜5.8、組成を表1に示す)
ハイポネックス培地(原液、ハイポネックス社製)
ハイポニカ培地(液体肥料、協和株式会社製)
[容器]
12穴プレート(平底、材質;ポリスチレン、プレート外寸;85.4mm x 127.6mm、ウェル径;φ22.1mm)
[球体]
ポリプロピレン球(直径;約8mm)
[植物支持体]
親水性紙(濾紙、材質;アドバンテック濾紙 No.514A、厚さ0.32mm、セルロース繊維)、直径20mmの円形に切り抜いて使用。
[植物]
シロイヌナズナ(野生株、T−DNA挿入変異株、遺伝子操作株、ゲノム編集株)
クレソン(ウォータークレス)
レタス(サリナス88)
バジル(スイートバジル)
パセリ(イタリアンパセリ)
【0035】
【表1】
【0036】
試験例1
(1)次の栽培プレートを作製した。
〔ゲルプレート〕
滅菌済12穴プレートのウェル内に、オートクレーブ滅菌したショ糖不含MS培地(0.6% ゲランガム含有)各2mLを約50℃で注入、冷却、固化させゲルプレートとした。図4中、gel(cont)と表記した。
【0037】
〔液体プレート〕
滅菌済12穴プレートのウェル内に滅菌したショ糖不含MS培地を2mLずつ注入して液体プレートとした。図4中、no supportと表記した。
【0038】
〔漏斗プレート〕
円形に濾紙を切り抜き、外周から中心に向かって切り込みを入れて漏斗状とした。滅菌済12穴プレートのウェル内に滅菌したショ糖不含MS培地を1mLずつ注入し、漏斗状とした濾紙を一枚ずつ設置して漏斗プレートとした。このプレートでは、培地は毛細管作用により濾紙の中心部を伝って濾紙全体に供給される。図4中、funnelと表記した。
【0039】
〔ブリッジプレート〕
濾紙を長方形に切り、端2箇所を折り込むことでブリッジ状とした。滅菌済12穴プレートのウェル内に滅菌したショ糖不含MS培地を1.5mLずつ注入し、ブリッジ状とした濾紙を一枚ずつ設置してブリッジプレートとした。このプレートでは、培地は毛細管作用により折り込んだ濾紙のブリッジ部分を伝って濾紙全体に供給される。図4中、bridgeと表記した。
【0040】
〔球体プレート〕
滅菌済12穴プレートのウェルにそれぞれ滅菌したポリプロピレン球を5個ずつ重ならないように配置し、ショ糖不含MS培地を1200μLずつ注入した。このとき、培養液の液面はポリプロピレン球の直径の1/2以上2/3以下の高さにあった。次いで、5個のポリプロピレン球の直上に円形に切り抜いた濾紙一枚ずつを載置して球体プレートとした。図4中、sphereと表記した。
【0041】
(2)前記(1)で作製した各栽培プレートの培地、培養液又は濾紙上にシロイヌナズナの種子を2粒/穴ずつ無菌的に播種し、蓋を閉めビニルテープとサージカルテープを周囲にまいて培地の蒸発と湿度上昇をコントロールした状態にし、暗下、4℃で一日春化処理後、23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件で2週間栽培した(N=6又は7)。
栽培期間中、球体プレートは、振とう機(タイテック社シェーカー、以下同じ)を用い60r/minで水平旋回振とうした。
【0042】
(3)栽培後、それぞれの植物体の重量を測定した。評価は、個体重量とC.V.(Coefficient of variation、変動係数)の比較によって行った。C.V.の算出には以下の式を用いた。
C.V.(%)=(標準偏差)/(平均)×100
結果を表2及び図4に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2及び図4に示すように、ゲルプレートで栽培した結果、中央値が3.50gであり、C.V.値は28.8%であった。
液体プレートでは、中央値が0.45gと低く、種子と幼苗は水没してしまい、空気に触れることができないため、光合成ができず、ショ糖不含MS培地では成長できないことが確認された。また、漏斗プレートでは、中央値が1.15gと多少大きく成長するが、成長度はゲルプレートの1/3程度であった。ブリッジプレートでは、中央値が3.60gと、ゲルプレートと同等程度の重量になるまで成長したが、C.V.値は59.1%と、各ウェル間で個体のばらつきが大きかった。
これに対して、球体プレートでは、中央値が3.70gとゲルプレートと同等以上の生育量が得られ、かつC.V.値は37.9%であり、ブリッジプレートのC.V.値と比べて各ウェル間の個体のばらつきを抑えられることが確認された。
【0045】
試験例2
(1)シロイヌナズナを100粒ずつ5枚の円形シャーレの内部に6枚重ねにしMS培地10mLを吸わせた濾紙上に無菌的に播種し、24時間4℃で春化処理を行った後、円形シャーレを栽培室へ移して、23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件で無菌栽培を開始した(栽培0日目)。
【0046】
(2)12穴プレートのウェルにそれぞれポリプロピレン球を5個ずつ重ならないように配置し、MS培地1200μLと図5に示す終濃度になるように5−アミノレブリン酸(ALA)塩酸塩溶液(水酸化カリウムでpH5.5から5.9に調整)を注入した。このとき、培養液の液面はポリプロピレン球の直径の1/2以上2/3以下の高さにあった。次いで、5個のポリプロピレン球の直上に円形に切り抜いた濾紙一枚ずつを載置して球体プレートとした。
栽培開始から6日目に、円形シャーレから球体プレートの各ウェルに幼苗を2つずつ移植して蓋を閉め、ビニルテープとサージカルテープでシールし、さらに23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件で、16日間振とう機を用い60r/minで水平旋回振とうしながら無菌栽培した(N=4)。
【0047】
栽培開始から22日目に植物をウェルから取り出し、クロロフィル量を測定した。クロロフィル量の測定は、ジメチルホルムアミド抽出による分光法にて行った。結果を図5に示す。尚、5−アミノレブリン酸塩酸塩は、植物中のクロロフィルを増やし成長を促進させる物質のひとつとして報告されている。
【0048】
図5に示すように、5−アミノレブリン酸塩酸塩の添加濃度が増えるにしたがって植物中のクロロフィル量は増加し、与えすぎると減少したことから球体プレート栽培によって、適正に植物成長に影響する物質の評価ができることが確認された。
【0049】
試験例3
(1)試験例2と同様に、シロイヌナズナを100粒ずつ5枚の円形シャーレ内のMS培地を吸わせた濾紙上に無菌的に播種し、24時間4℃で春化処理を行った後、円形シャーレを栽培室へ移して、23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件で無菌栽培を開始した(栽培0日目)。
【0050】
(2)12穴プレートのウェルにそれぞれポリプロピレン球を5個ずつ重ならないように配置し、MS培地、ハイポネックス培地及びハイポニカ培地のうち2種類を適宜希釈して表3に示す様々な濃度で混合した培地を計1200μLずつ注入した。このとき、培養液の液面はポリプロピレン球の直径の1/2以上2/3以下の高さにあった。次いで、5個のポリプロピレン球の直上に円形に切り抜いた濾紙一枚ずつを載置して球体プレートとした。
栽培開始から6日目に、円形シャーレから球体プレートの各ウェルに幼苗を2つずつ移植し、蓋を閉め、ビニルテープとサージカルテープでシールし、23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件でさらに13日間振とう機を用い60r/minで水平旋回振とうしながら、同条件で無菌栽培した(N=2)。
栽培開始から19日目に写真撮影を行い、また、植物をウェルから取り出して植物重量を測定した。表3に各ウェル内の植物の平均重量を示し、図6に栽培19日目のシロイヌナズナの生育状態を示す。
【0051】
【表3】
【0052】
試験例4
(1)試験例2と同様に、シロイヌナズナを100粒ずつ5枚の円形シャーレ内のMS培地を吸わせた濾紙上に無菌的に播種し、24時間4℃で春化処理を行った後、円形シャーレを栽培室へ移して、23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件で無菌栽培を開始した(栽培0日目)。
【0053】
(2)12穴プレートのウェルにそれぞれポリプロピレン球を5個ずつ重ならないように配置し、表4に示すように、ハイポネックス培地及びハイポニカ培地を希釈して様々な濃度でふった培地、又はMS培地を希釈して濃度を2段階にふり、さらにハイポネックス培地及びハイポニカ培地を希釈して様々な濃度でふった培地を計1200μLずつ注入した。このとき、培養液の液面はポリプロピレン球の直径の1/2以上2/3以下の高さにあった。次いで、5個のポリプロピレン球の直上に円形に切り抜いた濾紙一枚ずつを載置して球体プレートとした。
栽培開始から5日目に、円形シャーレから球体プレートの各ウェルに幼苗を2つずつ移植し、蓋を閉め、ビニルテープとサージカルテープでシールし、23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件でさらに14日間振とう機を用い60r/minで水平旋回振とうしながら、同条件で栽培した(N=2)。
栽培開始から19日目に写真撮影を行い、また、植物をウェルから取り出して植物重量を測定した。表4に各ウェル内の植物の平均重量を示し、図7に栽培19日目のシロイヌナズナの生育状態を示す。
【0054】
【表4】
【0055】
表3及び表4に示すように、球体プレート栽培によって、シロイヌナズナは良好に生育した。また、図6及び図7に示すように、ウェル内の植物個体間で生育のばらつきが小さく、播種後3週間程度の短期間で評価ができた。
さらに、試験例3及び4より、シロイヌナズナに対する二剤又は三剤での複合効果の検討が極めて迅速に、簡便に行えることが確認された。
【0056】
試験例5〜7
(1)クレソン、レタス、バジルをそれぞれ50粒ずつ1枚の円形シャーレ内のMS培地10mLを吸わせた濾紙上に無菌的に播種し、栽培室へ移し、栽培を開始した(栽培0日目)。栽培は23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件でおこなった。
【0057】
(2)12穴プレートのウェルにそれぞれポリプロピレン球を5個ずつ重ならないように配置し、表5〜7に示すように、MS培地の濃度とハイポニカ培地の濃度をふった培地を計1200μLずつ注入した。このとき、培養液の液面はポリプロピレン球の直径の1/2以上2/3以下の高さにあった。次いで、5個のポリプロピレン球の直上に円形に切り抜いた濾紙一枚ずつを載置して球体プレートとした。
栽培開始から3日目に、円形シャーレから球体プレートの各ウェルに幼苗を2つずつ移植し、蓋を閉め、ビニルテープとサージカルテープでシールし、23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件でさらに振とう機を用い60r/minで水平旋回振とうしながら栽培した(N=2)。
栽培開始から12日目に、クレソンとレタスの写真撮影を行い、また、植物をウェルから取り出して植物重量を測定した。バジルは栽培開始から16日目に写真撮影を行い、また、植物をウェルから取り出して植物重量を測定した。表5〜7に各ウェル内の植物の平均重量を示し、図8図10に栽培12日目又は16日目のクレソン、レタス又はバジルの生育状態を示す。
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
試験例8
(1)パセリ50粒を1枚の円形シャーレ内のMS培地10mLを吸わせた濾紙上に無菌的に播種し、23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件で栽培を開始した(栽培0日目)。
【0062】
(2)12穴プレートのウェルにそれぞれポリプロピレン球を5個ずつ重ならないように配置し、表8に示すように、MS培地の濃度とハイポニカ培地の濃度をふった培地を計1200μLずつ注入した。このとき、培養液の液面はポリプロピレン球の直径の1/2以上2/3以下の高さにあった。次いで、5個のポリプロピレン球の直上に円形に切り抜いた濾紙一枚ずつを載置して球体プレートとした。
栽培開始から14日目に、円形シャーレから球体プレートの各ウェルに幼苗を2つずつ移植し、蓋を閉め、ビニルテープとサージカルテープでシールし、23℃、昼白色蛍光灯下70μEの連続照射条件でさらに14日間振とう機を用い60r/minで水平旋回振とうしながら栽培した(N=2)。
栽培開始から28日目に写真撮影を行い、また、植物をウェルから取り出して植物重量を測定した。表8に各ウェル内の植物の平均重量を示し、図11に栽培28日目のパセリの生育状態を示す。
【0063】
【表8】
【0064】
表5〜表8に示すように、球体プレート栽培によって、短期間で、シロイヌナズナと同様に香草も良好に生育することが確認された。また、図8図11に示すように、ウェル内の植物個体間で生育のばらつきは小さかった。
さらに、試験例5〜7及び8より、各植物に対する二剤での複合効果の検討が極めて迅速に、簡便に行え、各植物にとっての最適濃度が確認された。
【符号の説明】
【0065】
U・・・栽培器
P・・・植物の培養液を収容する容器本体
S・・・揺動体
B・・・植物支持体
10・・揺動体と植物支持体とが接する接点又は接線
11・・植物の培養液
12・・植物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11