特開2017-148724(P2017-148724A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-148724正浸透膜分離で使用するドロー溶質およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-148724(P2017-148724A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】正浸透膜分離で使用するドロー溶質およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20170804BHJP
   C07C 237/10 20060101ALI20170804BHJP
   C07C 231/02 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
   B01D61/00 500
   C07C237/10
   C07C231/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-32845(P2016-32845)
(22)【出願日】2016年2月24日
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
【住所又は居所】兵庫県神戸市灘区六甲台町1−1
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
【住所又は居所】大阪府大阪市北区大深町3番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】松山 秀人
【住所又は居所】兵庫県神戸市灘区六甲台町1−1
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智輝
【住所又は居所】兵庫県神戸市灘区六甲台町1−1
(72)【発明者】
【氏名】西森 塩穂美
【住所又は居所】兵庫県神戸市灘区六甲台町1−1
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 一郎
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区新在家1239 株式会社ダイセル内
(72)【発明者】
【氏名】浜田 豊三
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区新在家1239 株式会社ダイセル内
【テーマコード(参考)】
4D006
4H006
【Fターム(参考)】
4D006GA14
4D006KA33
4D006KD30
4D006PA01
4H006AA02
4H006AC53
4H006BU32
4H006BV22
(57)【要約】
【課題】正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質の製造方法の提供。
【解決手段】多官能アミン化合物、多官能アルコール化合物などの化合物に対して、一般式(II):X−(C(R1)(R2))n−C(=O)−O−R3(II)[式中、Xはマイケル付加型不飽和炭化水素基、エポキシ基、ハロゲン原子などの反応基、R1、R2は水素または炭素数1〜6の炭化水素基、R3は水素または炭素数1〜3のアルキル基、nは0〜6の整数を示す]で表されるエステル化剤を反応させてエステル化合物を得る第1工程と、前記エステル化合物に対して、一般式(III):Y−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5)(III)[式中、Yは−NH2、−NHW、−OH、−SHから選択される反応基、R1、R2は水素または炭素数1〜6の炭化水素基または水酸基またはメトキシ基、R4、R5は炭素数1〜10のアルキル基、Wはヘテロ原子を含んでも良い炭素数1〜10の置換基、nは1〜10の整数を示す]で表される3級アミン化合物を反応させる第2工程により製造する、ドロー溶質の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される1世代末端アミン型デンドリマー化合物を含む正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質。
【化1】
[式中、Zは、次のZ1〜Z4から選ばれるものである
Z1:−NH−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
Z2:−NW−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
Z3:−O−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
Z4:−S−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
(Z1〜Z4中、
1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基または水酸基またはメトキシ基を示し、
4、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を示し、
Wは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1〜10の置換基を示し、
nは、1〜10の整数を示す。)]
【請求項2】
正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質の製造方法であり、
前記ドロー溶質が1世代末端アミン型デンドリマー化合物を含むものであり、
前記1世代末端アミン型デンドリマー化合物を、
多官能アミン化合物、多官能アルコール化合物、多官能チオールおよびアミノアルコール化合物から選択されるコアとなる化合物に対して、
下記一般式(II):
X−(C(R1)(R2))n−C(=O)−O−R3 (I)
[式中、
Xは、マイケル付加型不飽和炭化水素基、エポキシ基、ハロゲン原子、イソシアネート基から選択される反応基、
1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基、R3は、水素または炭素数1〜3のアルキル基、
nは、0〜6の整数を示す]
で表されるエステル化剤を反応させてエステル(カルボン酸を含む)化合物を得る第1工程と、
前記の第1工程で得られたエステル(カルボン酸を含む)化合物に対して、
下記一般式(III):
Y−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5) (III))
[式中、
Yは、アミノ基(−NH2)、置換アミノ基(−NHW)、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)から選択される反応基、
1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基または水酸基またはメトキシ基、R4、R5は、炭素数1〜10のアルキル基、Wは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1〜10の置換基
nは、1〜10の整数を示す]
で表されるシェルとなる3級アミン化合物を反応させる第2工程により製造する、ドロー溶質の製造方法。
【請求項3】
正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質の製造方法であり、
前記ドロー溶質が2世代末端アミン型デンドリマー化合物を含むものであり、
前記2世代末端アミン型デンドリマー化合物を、
請求項2記載の第1工程を実施してエステル(カルボン酸を含む)化合物を得る第1a工程、
前工程で得られたエステル(カルボン酸を含む)化合物に対して、多官能アミン化合物、多官能アルコール化合物、多官能チオールおよびアミノアルコール化合物から選択される化合物を反応させる第2a工程、
その後、請求項2の一般式(II)で示されるエステル化剤を反応させる第3a工程、
その後、請求項2の一般式(III)で示される3級アミン化合物を反応させる第4a工程、
により製造する、ドロー溶質の製造方法。
【請求項4】
正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質の製造方法であり、
前記ドロー溶質が3世代以上の末端アミン型デンドリマー化合物を含むものであり、
前記3世代以上の末端アミン型デンドリマー化合物を、
請求項3記載の第1a工程、第2a工程および第3a工程をこの順序で必要回数だけ繰り返して実施する工程、
その後、請求項3記載の第4a工程を実施することにより製造する、ドロー溶質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正浸透膜分離で使用するドロー溶質およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正浸透膜分離法は、低浸透圧側の水が高浸透圧の溶液に向かって移動する現象を利用した膜分離方法であり、逆浸透膜分離法と比べると膜分離工程での消費エネルギーが少なくなる点で有利である。
正浸透膜分離法では、ドロー溶質を含むドロー溶液の使用が必須であり、前記ドロー溶質の選択が重要となる。
【0003】
特許文献1には、正浸透膜分離法において使用するドロー溶質としてデンドリマーが挙げられている(段落番号0002、0003)。
特許文献2には、正浸透膜分離法において使用するドロー溶質としてデンドリマーが挙げられている(段落番号0003)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−170954号公報
【特許文献2】特開2013−194240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なドロー溶質の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(第1実施形態)は、下記一般式(I)で示される1世代末端アミン型デンドリマー化合物を含む正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質を提供する。
【0007】
【化1】
【0008】
[式中、Zは、次のZ1〜Z4から選ばれるものである
Z1:−NH−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
Z2:−NW−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
Z3:−O−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
Z4:−S−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
(Z1〜Z4中、
1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基または水酸基またはメトキシ基を示し、
4、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を示し、
Wは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1〜10の置換基を示し、
nは、1〜10の整数を示す。)]
【0009】
本発明(第2実施形態)は、正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質の製造方法であり、
前記ドロー溶質が1世代末端アミン型デンドリマー化合物を含むものであり、
前記1世代末端アミン型デンドリマー化合物を、
多官能アミン化合物、多官能アルコール化合物、多官能チオールおよびアミノアルコール化合物から選択されるコアとなる化合物に対して、
下記一般式(II):
X−(C(R1)(R2))n−C(=O)−O−R3 (II)
[式中、
Xは、マイケル付加型不飽和炭化水素基、エポキシ基、ハロゲン原子、イソシアネート基から選択される反応基、
1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基、R3は、水素または炭素数1〜3のアルキル基、
nは、0〜6の整数を示す]
で表されるエステル化剤を反応させてエステル(カルボン酸を含む)化合物を得る第1工程と、
前記の第1工程で得られたエステル(カルボン酸を含む)化合物に対して、
下記一般式(III):
Y−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5) (III))
[式中、
Yは、アミノ基(−NH2)、置換アミノ基(−NHW)、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)から選択される反応基、
1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基または水酸基またはメトキシ基、R4、R5は、炭素数1〜10のアルキル基、Wは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1〜10の置換基
nは、1〜10の整数を示す]
で表されるシェルとなる3級アミン化合物を反応させる第2工程により製造する、ドロー溶質の製造方法を提供する。
【0010】
本発明(第3実施形態)は、正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質の製造方法であり、
前記ドロー溶質が2世代末端アミン型デンドリマー化合物を含むものであり、
前記2世代末端アミン型デンドリマー化合物を、
上記の第1工程を実施してエステル(カルボン酸を含む)化合物を得る第1a工程、
前工程で得られたエステル(カルボン酸を含む)化合物に対して、多官能アミン化合物、多官能アルコール化合物、多官能チオールおよびアミノアルコール化合物から選択される化合物を反応させる第2a工程、
その後、上記の一般式(II)で示されるエステル化剤を反応させる第3a工程、
その後、上記の一般式(III)で示される3級アミン化合物を反応させる第4a工程、
により製造する、ドロー溶質の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質の製造方法であり、
前記ドロー溶質が3世代以上の末端アミン型デンドリマー化合物を含むものであり、
前記3世代以上の末端アミン型デンドリマー化合物を、
上記の第1a工程、第2a工程および第3a工程をこの順序で必要回数だけ繰り返して実施する工程、
その後、上記の第4a工程を実施することにより製造する、ドロー溶質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のドロー溶質の製造方法により得られたドロー溶質は、ドロー溶液にしたときの二酸化炭素の吸収性および放散性が良く、ドロー溶液の浸透圧を高くでき、膜からの漏れ速度が非常に小さく、LCST型相転移を発現し、かつ粘度を低くできるため、正浸透膜分離方法に適している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で得られた6−DE3−TAEAのMSのチャートと1H−NMRのチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態の1世代末端アミン型デンドリマー化合物を含む正浸透膜分離で使用するドロー溶液のドロー溶質>
本発明のドロー溶質は、一般式(I)で示される1世代末端アミン型デンドリマー化合物を含んでいるものである。
【0015】
【化1】
【0016】
[式中、Zは、次のZ1〜Z4から選ばれるものである
Z1:−NH−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
Z2:−NW−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
Z3:−O−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
Z4:−S−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5
(Z1〜Z4中、
1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基を示し、
4、R5は、炭素数1〜10のアルキル基を示し、
Wは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1〜10の置換基を示し、
nは、1〜10の整数を示す。)]
【0017】
<ドロー溶質となるデンドリマー化合物の製造方法>
本発明の製造方法で得られるドロー溶質は、1世代末端アミン型デンドリマー化合物、2世代末端アミン型デンドリマー化合物および3世代以上の末端アミン型デンドリマー化合物から選ばれるものをドロー溶質として含むものである。
【0018】
(1)第1実施形態の製造方法
まず、ドロー溶質が1世代末端アミン型デンドリマー化合物を含むものの製造方法を説明する。
第1実施形態の製造方法は、一般式(I)で示される1世代末端アミン型デンドリマー化合物の製造方法として適している。
【0019】
【化2】
【0020】
上記第1工程の反応式は、代表的な反応式を示しており、これに限定されるものではない。
第1工程にて、多官能アミン化合物、多官能アルコール化合物、多官能チオールおよびアミノアルコール化合物から選択される化合物に対して、
下記一般式(II):
X−(C(R1)(R2))n−C(=O)−O−R3 (II)
[式中、
Xは、マイケル付加型不飽和炭化水素基、エポキシ基、ハロゲン原子、イソシアネート基から選択される反応基、
1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基、R3は、水素または炭素数1〜3のアルキル基、
nは、0〜6の整数を示す]
で表されるエステル化剤を反応させてエステル(カルボン酸を含む)化合物を得る。
【0021】
第1工程における反応は、多官能アミン化合物等の原料化合物と一般式(II)で表されるエステル化剤との反応性に応じて、適宜、反応条件を設定する必要がある。
例えば、次に示す方法を実施することができる。
多官能アミン化合物とエステル化剤としてアクリル酸メチルを使用する場合は、メタノールなどの溶媒を使用して、窒素雰囲気下でエステル化反応を実施する。
その場合、過剰モル量のアクリル酸メチルをメタノールに溶解し、反応温度が0〜5℃に制御できるように多官能アミン化合物のメタノール溶液を徐々に添加し、30分間攪拌を続け、その後、室温(20〜25℃)で4日間攪拌させることで反応を完結させる。
その後、エバポレーターで溶媒のメタノールと未反応のアクリル酸メチルを揮発除去し、目的とするエステル(カルボン酸を含む)化合物(上記反応式の6−ester−TAEA)を得る。
【0022】
第1工程で使用する多官能アミン化合物はコア(Core)となる化合物であり、分子内に複数のアミノ基(−NH2)を有する脂肪族、脂環族、芳香族アミン化合物であり、分子内に不飽和結合を有しているものでもよく、分子内にアミノ基以外の反応性置換基、非反応性置換基を有しているものでもよい。
多官能アミン化合物としては、エチレンジアミン(EDA)、トリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)、トリス(3-アミノプロピル)アミン(TAPA)、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノベンゼン、1,3,5-トリアミノベンゼンなどを挙げることができる。
【0023】
第1工程で使用する多官能アルコール化合物は、分子内に複数のヒドロキシル基(−OH)を有する脂肪族、脂環族、芳香族アルコール化合物であり、分子内に不飽和結合を有しているものでもよく、分子内にヒドロキシル基以外の反応性置換基、非反応性置換基を有しているものでもよい。
多官能アルコール化合物としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリヒドロキシトリフェニルメタン、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。
【0024】
第1工程で使用する多官能チオール化合物としては、1,2-エタンジチオール、1,3-プロピレンジチオール、1,2-エタンジチオールなどを挙げることができる。
第1工程で使用するアミノアルコール化合物としては、アミノエチルエタノールアミンを挙げることができる。
【0025】
一般式(II)のXのマイケル付加型不飽和炭化水素基は、ビニル基、置換基を有するビニル基、無水コハク酸の不飽和炭化水素残基、共役ジエン基を挙げることができる。
一般式(II)のXのエポキシ基は、グリシジル基、置換基を有するグリシジル基、脂環式エポキシ基を挙げることができる。
一般式(II)のXのハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
一般式(II)のXのイソシアネート基は、イソシアネート基(NCO)、ビュレット型またはアロハネート型またはカルボジイミド型イソシアネート基、二量体のウレチジンジオン型イソシアネート基を挙げることができる。
一般式(II)のR1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基であり、水素または炭素数1〜4の炭化水素基が好ましい。
一般式(II)のR3は、水素または炭素数1〜3のアルキル基であり、水素または炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
nは、0〜6の整数であり、1〜4が好ましい。但し、Xがマイケル付加型不飽和炭化水素基の場合には、nは0が好ましい。
【0026】
【化3】
【0027】
上記第2工程の反応式は、代表的な反応式を示しており、これに限定されるものではない。
第2工程にて、第1工程で得られたエステル(カルボン酸を含む)化合物に対して、
下記一般式(III):
Y−(C(R1)(R2))n−N(R4)(R5) (III)
[式中、
Yはアミノ基(−NH2)、置換アミノ基(−NHW)(ここで、Wは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1〜10の置換基を示す)、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)から選択される反応基、
1、R2は水素または炭素数1〜6の炭化水素基または水酸基またはメトキシ基、R4、R5は炭素数1〜10のアルキル基、
nは1〜10の整数を示す]
で表される3級アミン化合物を反応させて、一般式(I)の1世代末端アミン型デンドリマー化合物を含む1世代末端アミン型デンドリマー化合物を得ることができる。
Wは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1〜10の置換基である。
なお、コアとなる多官能アミン化合物がTAEA(トリス(2-アミノエチル)アミン)であり、エステル化剤がアクリル酸メチルや3-クロロプロピオン酸メチルであるときに一般式(I)の1世代末端アミン型デンドリマー化合物となる。
【0028】
第2工程における反応は、メタノールなどの溶媒を使用して、窒素雰囲気下で実施する。
一般式(III)で表される過剰モル量の3級アミンを含む溶液に、エステル(カルボン酸を含む)化合物を含む溶液を、反応温度が0〜5℃に制御できるように徐々に添加し、30分間攪拌を続け、その後室温(20〜25℃)から用いる溶媒の沸点までの温度で適正時間攪拌させることで反応を完結させる。
その後、エバポレーターで溶媒のメタノールを揮発除去し、過剰モル量分の3級アミン等の不純物をデカンテーションや抽出分離等により精製し、目的とする1世代末端アミン型デンドリマー化合物を得ることができる。
【0029】
一般式(III)のR1、R2は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基または水酸基またはメトキシ基であり、水素または炭素数1〜4の炭化水素基が好ましい。
一般式(III)のR4、R5は、炭素数1〜10のアルキル基であり、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、R4とR5の炭素数の合計は2〜10が好ましい。
nは1〜10であるが、2〜4が好ましい。
【0030】
第2実施形態で製造される1世代末端アミン型デンドリマー化合物は、分子量は500〜10,000が好ましく、より好ましくは600〜5,000、さらに好ましくは700〜1,500の範囲である。
前記分子量の範囲であれば、ドロー溶液の粘度を低く、且つ浸透圧を高くすることができるため好ましい。
また、末端アミン型デンドリマー化合物は、同じ分子量の線形オリゴマーと比較すると粘度が低く、また膜からの漏れ速度が非常に小さいため、ドロー溶質として好ましい。
【0031】
第2実施形態で製造される1世代末端アミン型デンドリマー化合物は、濃度50質量%の水溶液としたとき、20℃〜80℃の間で、LCST型相転移を発現するものが好ましい。
【0032】
第2実施形態で製造される1世代末端アミン型デンドリマー化合物は、0.2mol/kg-H2Oでの蒸気圧法浸透圧測定機(Vapro 5600,WESCOR)を用いて測定した二酸化炭素バブリング後の浸透圧が、二酸化炭素バブリング前の浸透圧の4倍以上になるものが好ましい。
【0033】
(2)第3実施形態の製造方法
次に、ドロー溶質が2世代末端アミン型デンドリマー化合物を含むものの製造方法を説明する。
第1a工程にて、第2実施形態の第1工程を実施してエステル(カルボン酸を含む)化合物を得る。
【0034】
第2a工程にて、前工程で得られたエステル(カルボン酸を含む)化合物に対して、多官能アミン化合物、多官能アルコール化合物、多官能チオールおよびアミノアルコール化合物から選択される化合物を反応させる。
第2a工程における反応は、第2実施形態の第2工程の反応と同様の反応条件で実施することができる。
【0035】
第3a工程にて、第2a工程の反応物に対して、上記の一般式(II)で示されるエステル化剤を反応させる。
第3a工程における反応は、第2実施形態の第1工程の一般式(II)で示されるエステル化剤を反応させる反応と同様の反応条件で実施することができる。
【0036】
第4a工程にて、第3a工程の反応物に対して、上記一般式(III)で示される3級アミン化合物を反応させる。
第4a工程における反応は、第2実施形態の第2工程の反応と同様の反応条件で実施することができる。
【0037】
第3実施形態で製造される2世代末端アミン型デンドリマー化合物は、分子量は1,000〜20,000が好ましく、より好ましくは1,200〜10,000、さらに好ましくは1,400〜3,000の範囲である。
また、末端アミン型デンドリマー化合物は、同じ分子量の線形オリゴマーと比較すると粘度が低く、また膜からの漏れ速度が非常に小さいため、ドロー溶質として好ましい。
【0038】
第3実施形態で製造される2世代末端アミン型デンドリマー化合物は、濃度50質量%の水溶液としたとき、20℃〜80℃の間で、LCST型相転移を発現するものが好ましい。
【0039】
第3実施形態で製造される2世代末端アミン型デンドリマー化合物は、0.2mol/kg-H2Oでの蒸気圧法浸透圧測定機(Vapro 5600,WESCOR)を用いて測定した二酸化炭素バブリング後の浸透圧が、二酸化炭素バブリング前の浸透圧の4倍以上になるものが好ましい。
【0040】
(3)第4実施形態の製造方法
次に、ドロー溶質が3世代以上の末端アミン型デンドリマー化合物を含むものの製造方法を説明する。
第3実施形態の製造方法における第1a工程、第2a工程および第3a工程をこの順序で必要回数だけ繰り返して実施する。
前記繰り返し回数は、例えば、3世代末端アミン型デンドリマー化合物を製造するときは3回、4世代末端アミン型デンドリマー化合物を製造するときは4回、5世代末端アミン型デンドリマー化合物を製造するときは5回である。
その後、第3実施形態の製造方法における第4a工程を実施する。
【0041】
第4実施形態で製造される3世代末端アミン型デンドリマー化合物は、分子量は2,000〜40,000が好ましく、より好ましくは2,400〜20,000、さらに好ましくは2,800〜6,000の範囲である。
また、末端アミン型デンドリマー化合物は、同じ分子量の線形オリゴマーと比較すると粘度が低く、また膜からの漏れ速度が非常に小さいため、ドロー溶質として好ましい。
【0042】
第4実施形態で製造される3世代末端アミン型デンドリマー化合物は、濃度50質量%の水溶液としたとき、20℃〜80℃の間で、LCST型相転移を発現するものが好ましい。
【0043】
第4実施形態で製造される3世代末端アミン型デンドリマー化合物は、0.2mol/kg-H2Oでの蒸気圧法浸透圧測定機(Vapro 5600,WESCOR)を用いて測定した二酸化炭素バブリング後の浸透圧が、二酸化炭素バブリング前の浸透圧の4倍以上になるものが好ましい。
【実施例】
【0044】
実施例1(1世代末端アミン型デンドリマー化合物の製造
下記の製造工程により6−DE3−TAEA(G=1.0)を製造した。
6−DE3−TAEA(G=1.0)は、末端3級アミン基の数が6、末端3級アミンDE3がN,N−ジエチルアミノ−プロピルアミン、多官能アミンTAEAがトリス(2-アミノエチル)アミン、Gは世代を示す。
使用した試薬は、次のとおりである。
・メタノール(和光純薬工業株式会社、和光一級、>99.5 %)
・アクリル酸メチル(東京化成工業株式会社、EC、>99.0 %)
・Tris(2-aminoethyl)amine(和光純薬工業株式会社、94+ %)
・N,N-Diethyl-1,3-diaminopropane(東京化成工業株式会社、GR、>99.0 %)
【0045】
【化4】
【0046】
100mLのメタノールにアクリル酸メチル44.15gを混合し、アクリル酸メチル/メタノール溶液とした。
50mLのメタノールに5.0020gのTris(2-aminoethyl)amineを混合し、Tris(2-aminoethyl)amine/メタノール溶液とした。
アクリル酸メチル/メタノール溶液に対して、Tris(2-aminoethyl)amine/メタノール溶液を60〜70分間かけて滴下ロートを用いて混合した。混合操作においては、常に窒素雰囲気、600 rpmの撹拌、寒剤(氷/食塩)を用いて-5〜5℃に冷却した状態で行った。
混合終了後、30分間上記条件を保持した後、窒素雰囲気、600 rpmの撹拌、室温条件下で4日間反応を進行させた。
反応終了後の溶液は、エバポレーターを用いて5 hPa、40 ℃、20時間濃縮を行った。
メタノールとアクリル酸メチルが除去された不揮発性成分を0.5世代(G=0.5)のデンドリマー(6-ester-TAEA)とした。
【0047】
【化5】
【0048】
100mLのメタノールに3-(Diethylamino)propylamine58.95gを混合し、3-(Diethylamino)propylamine /メタノール溶液とした。
50mLのメタノールに5.0065 gの6-ester-TAEAを混合し、6-ester-TAEA /メタノール溶液とした。
N,N-Diethyl-1,3-diaminopropane /メタノール溶液に対して、6-ester-TAEA /メタノール溶液を60〜70 分間かけて滴下ロートを用いて混合した。混合操作においては、常に窒素雰囲気、600 rpmの撹拌、寒剤(氷/食塩)を用いて-5〜5 oCに冷却した状態で行った。
混合終了後、30分間上記条件を保持した後、窒素雰囲気、600 rpmの撹拌、室温条件下で7日間反応を進行させた。
反応終了後の溶液は、エバポレーターを用いて5 hPa、40 ℃、20時間濃縮を行った。
メタノールとN,N-Diethyl-1,3-diaminopropane除去された不揮発性成分を1.0世代(G=1.0)のデンドリマー(6-DE3-TAEA)とした。
【0049】
試験例1(LCST試験)
6−DE3−TAEAを超純水に溶解させ、50質量%に調整した後、温度調節機能付きスターラ−(COOL STIRRER,SCINICS)を使用してLCST試験を実施した。その結果、加熱(68〜70℃)により濃厚相と希薄相の2相状態となり、それよりも低い温度まで冷却すると1相状態となり、LCST型相転移の発現が確認された。
【0050】
試験例2(浸透圧の測定)
表1に示す各濃度に調整した6−DE3−TAEA溶液の浸透圧を凝固点降下法浸透圧測定器(OSMOMAT3000 basic,gonotec)、および蒸気圧法浸透圧測定器(Vapro 5600,WESCOR)を用いて測定した。
比較として、塩化ナトリウム溶液を使用して、同様に浸透圧を測定した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から、6−DE3−TAEA溶液濃度の増加に伴い浸透圧も増加することが確認された。
【0053】
試験例3(CO2吸収試験)
0.2mol/kg-H2Oに調整した6−DE3−TAEA溶液に対して、攪拌しながら室温(20〜25℃)で4時間CO2バブリングを行った。CO2バブリング開始から1時間ごとに溶液をサンプリングして浸透圧測定を実施して、CO2吸収試験時間に伴う6−DE3−TAEA溶液の浸透圧変化挙動を観察した。
【0054】
【表2】
【0055】
表2から、6−DE3−TAEA溶液の浸透圧はCO2バブリング時間に伴い増加する傾向が確認された。
試験前と比較すると、凝固点降下法では約3倍、蒸気圧法では6倍近くも増加した。これは、6−DE3−TAEAの末端官能基である3級アミンが下記反応式のようにCO2と反応し、電解質となり高浸透圧を発現したためと考えられる。
【0056】
【化6】
この結果から、6−DE3−TAEAは、LCSTを発現し、かつCO2応答性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の製造方法で得られたドロー溶質は、正浸透膜分離方法で使用するドロー溶液として利用することができる。
図1