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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-41996(P2017-41996A)
(43)【公開日】2017年2月23日
(54)【発明の名称】電気機械エネルギー変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 17/02 20060101AFI20170203BHJP
   H02K 17/42 20060101ALI20170203BHJP
【FI】
   H02K17/02 Z
   H02K17/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-163392(P2015-163392)
(22)【出願日】2015年8月21日
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
【住所又は居所】神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100101915
【弁理士】
【氏名又は名称】塩野入 章夫
(72)【発明者】
【氏名】藤本 康孝
【住所又は居所】神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79番1号 国立大学法人横浜国立大学内
(57)【要約】
【課題】磁界共振結合を電気機械エネルギー変換技術に適用し、新規な電気機械エネルギー変換装置を提供する。
【解決手段】電気機械エネルギー変換装置は、コイルを空間的に互いに90°位相をずらして配置した1次側の多相巻線と、コイルを空間的に互いに90°位相をずらして配置した2次側の多相巻線と、1次側のコイルに互いに位相が90°異なる交流電圧を供給して、多相巻線に進行波を発生させる交流電圧源とを備える。1次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンスは、それぞれ共振周波数を同じくする1次側共振回路を形成し、2次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンスは、それぞれ共振周波数を同じくする2次側共振回路を形成する。また、1次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンス、2次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンス、及び1次側と2次側との間の相互インダクタンスは結合共振回路を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを空間的に互いに90°位相をずらして配置した1次側の多相巻線と、
コイルを空間的に互いに90°位相をずらして配置した2次側の多相巻線と、
前記1次側のコイルに互いに位相が90°異なる交流電圧を供給して、多相巻線に進行波を発生させる交流電圧源とを備え、
前記1次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンスは、それぞれ共振周波数を同じくする1次側共振回路を形成し、
前記2次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンスは、それぞれ共振周波数を同じくする2次側共振回路を形成し、
前記1次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンス、前記2次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンス、及び1次側と2次側との間の相互インダクタンスは、結合共振回路を形成し、
前記交流電圧源は前記1次側共振回路を1次側共振回路の共振周波数で駆動し、
前記結合共振回路は、各コイルのインダクタンスと相互インダクタンスとの間において、共振周波数の駆動で生じる磁界共振結合によって、前記1次側共振回路と前記2次側共振回路との間で力学的エネルギーと電気エネルギーとをエネルギー変換することを特徴とする電気機械エネルギー変換装置。
【請求項2】
前記1次側の多相巻線を固定子とし、前記2次側の2次側を可動子とし、
前記交流電圧源の電気エネルギーを前記可動子の多相巻線のコイル間の力学的エネルギーに変換し、前記可動子を機械的に駆動させることを特徴する、請求項1に記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項3】
前記固定子の多相巻線と前記可動子の多相巻線において、
各多相巻線が持つ各相のコイルは、回転軸に対して周方向に環状に配置され、
前記固定子の多相巻線と前記可動子の多相巻線は、回転軸と同軸状に配置され、
前記可動子は前記固定子に対して回転駆動することを特徴とする、請求項2に記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項4】
前記固定子の多相巻線と前記可動子の多相巻線において、
各多相巻線が持つ各相のコイルは、直線状に配置され、
前記固定子の多相巻線と前記可動子の多相巻線は、前記直線配置に対して並列して配置され、
前記可動子は前記固定子に対して直線駆動することを特徴とする、請求項2に記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項5】
前記固定子と前記可動子とをペアで備える第1駆動機構と第2駆動機構を備え、
前記第1駆動機構及び第2駆動機構を異なる共振周波数で駆動し、第1駆動機構と第2駆動機構とを独立して駆動することを特徴とする、請求項2に記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項6】
前記第1駆動機構及び前記第2駆動機構は、
前記固定子の多相巻線と前記可動子の多相巻線において、
それぞれ、各多相巻線が持つ各相のコイルは直線状に配置され、前記固定子の多相巻線と前記可動子の多相巻線は前記直線配置に対して並列して配置され、前記可動子は前記固定子に対して直線駆動し、
第1駆動機構の駆動方向と第2駆動機構の駆動方向とは互いに所定角度を有することを特徴とする、請求項5に記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項7】
前記第1駆動機構及び前記第2駆動機構は、
前記固定子の多相巻線と前記可動子の多相巻線において、
各二相巻線が持つ一方の相のコイルは、回転軸に対して周方向に環状に配置され、
固定子の多相巻線の内で環状に配置された相の巻線と、可動子の多相巻線の内で環状に配置された相の巻線とは、回転軸と直交する方向に同軸状に配置され、
各多相巻線が持つ他方の相のコイルは、回転軸の方向に直線状に配置され、
固定子の多相巻線の内で直線に配置された相の巻線と、可動子の多相巻線の内で直線状に配置された相の巻線とは、回転軸と直交する方向に同軸状に配置され、
前記可動子は前記固定子に対して回転駆動及び直線駆動することを特徴とする、請求項5に記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項8】
前記第1駆動機構及び前記第2駆動機構は、
各多相巻線が持つ各相のコイルは、回転軸に対して周方向に環状に配置され、
前記第1駆動機構と前記第2駆動機構の可動子は接合されて1つの可動子とし、
前記第1駆動機構と前記第2駆動機構の固定子は、前記可動子を挟んで内周及び外周に同軸状に配置され、
前記2つの固定子は前記可動子に同一方向又は逆方向の回転駆動力を加えることを特徴とする、請求項5に記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項9】
前記第1駆動機構及び前記第2駆動機構は、
各多相巻線が持つ各相のコイルは、回転軸に対して周方向に環状に配置され、
前記第1駆動機構と前記第2駆動機構の可動子及び固定子は同軸状に配置され、
前記2つの可動子は独立に回転駆動することを特徴とする、請求項5に記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項10】
前記1次側の多相巻線を固定子とし、前記2次側の2次側を可動子とし、
前記可動子の多相巻線と前記固定子の2次巻線の両コイル間で作用する力学的エネルギーを、前記固定子の電気エネルギーに変換し、前記固定子の交流電圧源に電気エネルギーを供給することを特徴する、請求項1に記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項11】
前記1次側の多相巻線及び前記2次側の多相巻線のコイルは、オープンエンド又はクローズドエンドであり、
前記オープンエンドのコイルは当該コイルに直列接続された電気容量と共に1次側共振回路及び2次側共振回路を形成し、
前記クローズドエンドのコイルは当該コイルに並列接続された電気容量と共に1次側共振回路及び2次側共振回路を形成することを特徴とする、請求項1から10の何れか1つに記載の電気機械エネルギー変換装置。
【請求項12】
前記多相巻線は二相巻線であることを特徴とする、請求項1から11の何れか1つに記載の電気機械エネルギー変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気エネルギーと力学的エネルギーとの間の変換を行う電気機械エネルギー変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁界共振結合の適用分野としてワイヤレス電力伝送技術が提案されている。(非特許文献1)この技術は従来の電磁誘導を利用したワイヤレス電力伝送技術と比較して伝送距離が比較的長いという特徴がある。
【0003】
電力伝送システムでは、供給側の1次側と受給側の2次側はそれぞれ磁気的に結合の小さいコイルを備え、1次側から見たインピーダンスが極小となる共振周波数が存在し、Q値が十分高ければ、コイル間の磁気結合が小さくても共振周波数において電力伝送を可能とするものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A. Kurs, A. Karals, R. Moffatt, J.D.Joannopoulos, P. Fischer, and M.Soljacic, "Wirelss Power Transfer via Strongly Coupled Magnetic Resonances"Science vol. 317, pp.83-86 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気機械エネルギー変換装置として誘導機が知られている。誘導機は固定子側コイルと回転子側コイルの間の磁気結合を用いて電気エネルギーを力学的エネルギー(機械エネルギー)に変換する装置であり、供給電力を有効に利用して回転子を回転駆動させるには固定子側コイルと回転子側コイルのコイル間の磁気結合が大きいことが望ましい。
【0006】
磁界共振結合について提案される利用分野は電力伝送技術であって、磁界共振結合と電磁誘導とはエネルギーの変換原理が異なること、磁気結合の作用が相違すること、及び磁界共振結合を利用した電力伝送技術は機械的要素を含まないことなどの理由から、磁界共振結合を電気機械エネルギー変換装置に適用することは想定されておらず、出願人が知る限りに於いて提案されていない。
【0007】
そこで、本願発明は、磁界共振結合を電気機械エネルギー変換技術に適用し、新規な電気機械エネルギー変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、1次側コイルと2次側コイルとの間において、磁界共振結合を用いてエネルギー交換を行う電気機械エネルギー変換装置であり、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電動機、及び機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての利用に適するものである。
【0009】
磁界共振結合では、1次側のコイルを含む共振回路と、2次側のコイルを含む共振回路とが、1次側と2次側の相互インダクタンスを含めた結合共振回路を構成し、結合共振回路を共振周波数で駆動することによって1次側と2次側の間の磁界が共振状態にあると、両コイル間でエネルギー交換が行われる。本願発明の電気機械エネルギー変換装置は、この磁界共振結合によるエネルギー変換を利用するものであり、電磁誘導で行われるコイル間の磁気結合とは異なる動作原理に基づくものであり、コイル間の磁気結合が小さい場合であっても行うことができる。
【0010】
磁界共振結合では、一方の共振回路に共振周波数付近の電流が流れると、他方の共振回路にも共振周波数付近の電流が流れる。磁界共振結合は、共振周波数を中心とする所定周波数幅の周波数の範囲で起こり、共振周波数に近いほど大きな電流が流れる。
【0011】
1次側コイルと2次側コイルとは相互インダクタンスで結合された関係にあるため、1次側の多相巻線の各共振回路の共振周波数及び2次側の多相巻線の共振回路の共振周波数は、それぞれの多相巻線の共振回路では同一周波数であるが、2次側も共振周波数は2次側の移動に伴う影響によって多少のずれが生じる。
【0012】
1次側コイルと2次側コイルとの間を磁気結合でエネルギー変換する場合には、磁気結合を大きくするために1次側と2次側との間のギャップを狭める必要があるが、本願発明の電気機械エネルギー変換装置は磁界共振結合を利用したエネルギー変換であり1次側コイルと2次側コイルとの間の磁気結合が小さい場合であっても動作するため、1次側と2次側との間のギャップを大きくすることができるという効果を奏することができる。
【0013】
また、通常の磁気結合による誘導機では、固定子巻線の電源周波数を高くするとすべり周波数が大きくなるため、可動子巻線のリアクタンスが増大して2次電流が流れにくくなり、トルク低下を招くという問題がある。
【0014】
本願発明の電気機械エネルギー変換装置の電動機は、すべり周波数が共振周波数に近い付近で2次電流が大きいという特性がある。本願発明の電気機械エネルギー変換装置による電動機のすべり周波数は1次側の電源周波数と可動子の角速度との差で表され、電源周波数を共振周波数付近とすると、可動子の周波数は共振周波数と比較して十分に小さいため、すべり周波数は共振周波数に近くなる。
【0015】
そのため、本願発明の電気機械エネルギー変換装置の電動機は、すべり周波数が共振周波数に近くなることから大きな2次電流を得ることができ、2次電流低下によるトルクの低下を抑制することができるという効果を奏することができる。
【0016】
本願発明の電気機械エネルギー変換装置は、コイルを空間的に互いに90°位相をずらして配置した1次側の多相巻線と、コイルを空間的に互いに90°位相をずらして配置した2次側の多相巻線と、1次側のコイルに互いに位相が90°異なる交流電圧を供給して、多相巻線に進行波を発生させる交流電圧源とを備える。なお、1次側の多相巻線と2次側の多相巻線とは同じ相数であり、例えば、1次側が二相巻線であるときには2次側も二相巻線とし、1次側が三相巻線であるときは2次側も三相巻線とする。
【0017】
1次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンスは、それぞれ共振周波数を同じくする1次側共振回路を形成し、2次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンスは、それぞれ共振周波数を同じくする2次側共振回路を形成する。また、1次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンス、2次側の多相巻線の各相のコイルのインダクタンス、及び1次側と2次側との間の相互インダクタンスは結合共振回路を形成する。
【0018】
1次側共振回路及び2次側共振回路は、各相のインダクタンスとキャパシタンスによって構成する。ここで、キャパシタンスは各コイル及び配線の寄生容量を用いる他、別途コンデンサを接続してもよい。
【0019】
交流電圧源は1次側共振回路を1次側共振回路の共振周波数で駆動し、結合共振回路は、各コイルのインダクタンスと相互インダクタンスとの間において、共振周波数の駆動で生じる磁界共振結合によって、2次側共振回路に共振周波数付近の電流を発生させる。
【0020】
電気機械エネルギー変換装置において、1次側のコイルに共振周波数で電流を流すと、結合共振回路の磁界共振結合によって2次側のコイルに電流が発生する。このとき、1次側の多相巻線の電流の共振周波数と、2次側の多相巻線の電流の周波数とは同一であるが、1次側の電流の共振周波数との間には2次側の移動に伴う影響によって多少のずれが生じる。
【0021】
このとき、1次側のコイルの磁界変化によって2次側のコイルに力を発生させることができ、電気エネルギーを機械エネルギーに変換することができる。また、2次側のコイルに外力を加えることによって1次側のコイルに電流を発生させることができ、機械エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0022】
[電気エネルギーから機械エネルギーへの変換]
電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電気機械エネルギー変換装置は、1次側の多相巻線を固定子とし、2次側の多相巻線を可動子とし、交流電源から固定子に電気エネルギーを供給し、固定子の多相巻線と可動子の多相巻線の両コイル間で作用する機械エネルギー(力学的エネルギー)に変換して、可動子を機械的に駆動させる。
【0023】
電気機械エネルギー変換において、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換は駆動機構として利用することができ、可動子を回転させる回転駆動や、可動子を直線状に移動させる直動駆動に適用することができる。
【0024】
また、駆動機構を2つ用い、それぞれの駆動機構が備える駆動共振回路を異なる共振周波数で駆動することによって、可動子を2次元上で移動させる2次元駆動や、可動子について回転と直動と独立して行う駆動に適用することができる。また、駆動機構を2つ用いる構成として、1つの回転軸を2つの駆動部で駆動する構成や、2つの回転軸を独立して駆動する構成とすることもできる。
【0025】
(回転駆動の構成)
回転駆動を行う構成は、固定子の多相巻線と可動子の多相巻線において、各多相巻線が持つ各相のコイルを回転軸に対して周方向に環状に配置し、固定子の多相巻線と可動子の多相巻線を回転軸の同軸状に配置する。これらの環状及び同軸状の配置によって、可動子は固定子に対して回転駆動する。回転駆動の構成では、可動子を回転子(ロータ)と称し、固定子をステータと称する。
【0026】
(直線駆動の構成)
直動駆動を行う構成は、固定子の多相巻線と可動子の多相巻線において、各多相巻線が持つ各相のコイルを直線状に配置し、固定子の多相巻線と可動子の多相巻線を直線配置に対して並列して配置する。これらの直線配置によって、可動子は固定子に対して直線駆動する。
【0027】
(2つの駆動機構を備える構成)
第1駆動機構と第2駆動機構の2つの駆動機構を備える構成において、固定子と可動子とをペアで備え、第1駆動機構及び第2駆動機構をそれぞれ異なる共振周波数で駆動する。第1駆動機構と第2駆動機構とを異なる共振周波数で駆動することによって、各駆動機構を独立して駆動することができる。
【0028】
第1駆動機構を駆動する共振周波数と第2駆動機構を駆動する共振周波数は、各駆動機構が備えるコイルのインダクタンス及びキャパシタンスで定まる。したがって、インダクタンスやキャパシタンスの設定によって共振周波数を異ならせることができる。
【0029】
また、1次側共振回路、2次側共振回路、及び1次側と2次側との間の相互インダクタンスからなる結合共振回路は、可動子の速度の周波数だけ異なる2つの共振周波数を備えるため、第1駆動機構及び第2駆動機構を同じ構成とし、この構成が備える2つの共振周波数の内、一方の共振周波数で第1駆動機構を駆動し、他方の共振周波数で第2駆動機構を駆動する構成とすることもできる。
【0030】
第1駆動機構と第2駆動機構とは異なる共振周波数で駆動されるため、第1駆動機構と第2駆動機構とをそれぞれ独立して駆動することができる。
【0031】
2つの駆動機構を備える構成では、2つの可動子を平面上で2次元駆動する構成、可動子を回転子とし、回転子を回転軸の周囲で回転させる回転駆動と、回転子を回転軸の軸方向に直線移動させる直動駆動とを行わせる構成とすることができる。
【0032】
また、1つの回転子に2つの駆動機構からそれぞれ独立して駆動力を加える構成、2つの回転子を同軸に配置し、各回転子を2つの駆動機構でそれぞれ独立して駆動する構成とすることができる。
【0033】
・2次元駆動:
2次元駆動の電気機械エネルギー変換装置において、第1駆動機構及び第2駆動機構は、固定子の多相巻線と可動子の多相巻線において、それぞれ、各多相巻線が持つ各相のコイルを直線状に配置し、固定子の多相巻線と可動子の多相巻線を直線配置に対して並列して配置する。可動子は固定子に対して直線駆動し、第1駆動機構の駆動方向と第2駆動機構の駆動方向とは互いに所定角度を有する。
【0034】
第1駆動機構の駆動方向と第2駆動機構の駆動方向をそれぞれx軸方向及びy軸方向とした場合には、可動子をx軸方向とy軸方向とでそれぞれ独立して干渉すること無く駆動することができる。
【0035】
・回転及び直動機:
回転及び直動で駆動する電気機械エネルギー変換装置において、第1駆動機構及び第2駆動機構は、固定子の多相巻線と回転子(可動子)の多相巻線において、各多相巻線が持つ一方の相のコイルを、回転軸に対して周方向に環状に配置し、固定子の多相巻線の内で環状に配置された相の巻線と、回転子(可動子)の多相巻線の内で環状に配置された相の巻線とを、回転軸と直交する方向に同軸状に配置し、各多相巻線が持つ他方の相のコイルを、回転軸の方向に直線状に配置し、固定子の多相巻線の内で直線に配置された相の巻線と、回転子(可動子)の多相巻線の内で直線状に配置された相の巻線とを、回転軸と直交する方向に同軸状に配置する。
【0036】
回転子(可動子)は固定子に対して、それぞれ独立して互いに干渉することなく駆動する第1駆動機構と第2駆動機構によって、回転駆動と直線駆動とを行う。
【0037】
・1つの回転子を2つの駆動機構で駆動する構成:
1つの回転子を2つの駆動機構で駆動する電気機械エネルギー変換装置において、第1駆動機構及び第2駆動機構は、各多相巻線が持つ各相のコイルを、回転軸に対して周方向に環状に配置し、第1駆動機構と第2駆動機構の各回転子を接合して1つの回転子とし、第1駆動機構と第2駆動機構の固定子を、回転子を挟んで内周及び外周に同軸状に配置し、2つの固定子は回転子に対して同一方向又は逆方向に回転駆動力を加える。
【0038】
回転子に対して2つの固定子から同一方向の回転駆動力を加える場合には、回転子の回転駆動力を増加させることができる。一方、回転子に対して2つの固定子から逆方向の回転駆動力を加える場合には、外力によって回転子に何れかの方向に回転力が加えられたときに、回転子の回転を止める力として作用し、回転子の回転を抑制することができる。
【0039】
・2つの回転子を同軸で駆動する構成:
2つの回転子を同軸で駆動する電気機械エネルギー変換装置において、第1駆動機構及び第2駆動機構は、各多相巻線が持つ各相のコイルを、回転軸に対して周方向に環状に配置し、第1駆動機構と第2駆動機構の回転子及び固定子を同軸状に配置し、2つの回転子は独立に回転駆動する。第1駆動機構と第2駆動機構とは独立して駆動することができ、互いに干渉しないため、2つの回転軸をそれぞれ独立して駆動することができる。
【0040】
[機械エネルギーから電気エネルギーへの変換]
機械エネルギーを電気エネルギーに変換する電気機械エネルギー変換装置は、1次側の多相巻線を固定子とし、2次側の多相巻線を可動子とし、可動子の多相巻線と固定子の多相巻線の両コイル間に作用する力学的エネルギーを、固定子側の電気エネルギーに変換し、固定子の交流電圧源に電気エネルギーを供給する。
【0041】
本願発明の電気機械エネルギー変換装置において、1次側の多相巻線及び2次側の多相巻線のコイルは、オープンエンド又はクローズドエンドで構成することができる。オープンエンドのコイルは、コイルに直列接続された電気容量と共に1次側共振回路及び2次側共振回路を形成する。クローズドエンドのコイルは、コイルに並列接続された電気容量と共に1次側共振回路及び2次側共振回路を形成する。
【発明の効果】
【0042】
本願発明の電気機械エネルギー変換装置は、磁界共振結合を電気機械エネルギー変換技術に適用し、新規な電気機械エネルギー変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本願発明の電気機械エネルギー変換装置の概要を説明するための図である。
図2】本願発明の電気機械エネルギー変換装置の概要を説明するための図である。
図3】本願発明の電気機械エネルギー変換装置の概要を説明するための図である。
図4】本願発明の電気機械エネルギー変換装置の概要を説明するための図である。
図5】本願発明の電気機械エネルギー変換装置の特性を説明するための図である。
図6】本願発明の電気機械エネルギー変換装置の特性を説明するための図である。
図7】本願発明の電気機械エネルギー変換装置の特性を説明するための図である。
図8】本願発明の回転駆動を行う第1の構成例を説明するための図である。
図9】本願発明の直線駆動を行う第2の構成例を説明するための図である。
図10】本願発明の回転駆動と直線駆動とを組み合わせた第3の構成例を説明するための図である。
図11】本願発明の回転駆動の他の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本願発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。以下、図1図4を用いて本願発明の電気機械エネルギー変換装置の概要を説明し、図5図7を用いて本願発明の電気機械エネルギー変換装置の特性を説明し、図8を用いて本願発明の回転駆動を行う第1の構成例を説明し、図9を用いて本願発明の直線駆動を行う第2の構成例を説明し、図10を用いて本願発明の回転駆動と直線駆動とを組み合わせた第3の構成例を説明し、図11を用い本願発明の回転駆動の他の構成例を説明する。
【0045】
(電気機械エネルギー変換装置の概略構成)
本願発明の電気機械エネルギー変換装置の概略構成について図1図4を用いて説明する。
以下では、本願発明の電気機械エネルギー変換装置が備える多相巻線として二相巻線を例として説明する。図1、2は電気機械エネルギー変換装置が備える2組の二相巻線を示し、図3,4は二相巻線の等価回路を示している。
【0046】
本願発明の電気機械エネルギー変換装置10は、コイルを空間的に互いに90°位相をずらして配置した1次側の二相巻線と、コイルを空間的に互いに90°位相をずらして配置した2次側の二相巻線と、1次側のコイルに互いに位相が90°異なる交流電圧を供給して、二相巻線に進行波を発生させる交流電圧源とを備える。
【0047】
図1,2において、1次側の二相巻線1は2つのコイル1a,1bを備え、コイル1aとコイル1bとを空間的に互いに90°位相をずらして配置し、2次側の二相巻線2は2つのコイル2a,2bを備え、コイル2aとコイル2bとを空間的に互いに90°位相をずらして配置する。
【0048】
ここで、1次側二相巻線と2次側二相巻線をそれぞれ固定子巻線及び可動子巻線とし、固定子巻線に供給した電力によって可動子巻線を移動する場合には、電気機械エネルギー変換装置は駆動機として構成され、他方、可動子巻線の移動によって固定子巻線に電流を流して交流電圧源に電圧を発生させる場合には、電気機械エネルギー変換装置は発電機として構成される。
【0049】
図1において、Lは1次側二相巻線1の電気角2π分に相当する距離であり、Lは1次側二相巻線1と2次側二相巻線2の中心間距離である。図1では、2次側二相巻線2の可動子はx方向に運動する。
【0050】
図2は、1次側二相巻線1において、2つのコイル1a(図中の実線で表示する)とコイル1b(図中の破線で表示する)とを空間的に互いに90°位相をずらして配置した状態を模式的に示している。また、2次側二相巻線2についても、2つのコイル2a(図中の実線で表示する)とコイル2b(図中の破線で表示する)とを空間的に互いに90°位相をずらして配置した状態を模式的に示している。
【0051】
(二相巻線の等価回路)
図3、4は二相巻線の等価回路を示している。図3は1次側及び2次側に用いる巻線がオープンエンドのコイルである場合の等価回路を示し、図4は1次側及び2次側に用いる巻線がクローズドエンドのコイルである場合の等価回路を示している。なお、以下では空心コイルを仮定した等価回路を示しているが、鉄心コイルの場合についても、インダクタンスに相違があるものの同様に等価回路で扱うことができる。
【0052】
図3において、オープンエンドのコイルでは、コイルの寄生容量はインダクタンスに直列接続されたモデルで表すことができる。
【0053】
1次側二相巻線1のコイル1aの等価回路は、インダクタンスLとキャパシタンスCと抵抗分Rと交流電圧源V1aの直列回路で表すことができる。同様に、1次側二相巻線1のコイル1bの等価回路は、インダクタンスLとキャパシタンスCと抵抗分Rと交流電圧源V1bの直列回路で表すことができる。キャパシタンスCはコイル1aの寄生容量とする他、別途容量素子を接続する構成としてもよい。
【0054】
また、2次側二相巻線2の等価回路についても1次側二相巻線1の等価回路で表すことができ、2次側二相巻線2のコイル2aの等価回路は、インダクタンスLとキャパシタンスCと抵抗分Rと交流電圧源V2aの直列回路で表すことができ、2次側二相巻線2のコイル2bの等価回路は、インダクタンスLとキャパシタンスCと抵抗分Rと交流電圧源V2bの直列回路で表すことができる。また、キャパシタンスCはコイル2aの寄生容量とする他、別途容量素子を接続する構成としてもよい。
【0055】
図4において、クローズドエンドのコイルでは、コイルの寄生容量はインダクタンスに並列接続されたモデルで表すことができる。
【0056】
1次側二相巻線1のコイル1aの等価回路は、キャパシタンスCが並列接続されたインダクタンスLと抵抗分Rと交流電圧源V1aの直列回路で表すことができる。同様に、1次側二相巻線1のコイル1bの等価回路は、キャパシタンスCが並列接続されたインダクタンスLと抵抗分Rと交流電圧源V1bの直列回路で表すことができる。キャパシタンスCはコイル1aの寄生容量とする他、別途容量素子を接続する構成としてもよい。
【0057】
また、2次側二相巻線2の等価回路についても1次側二相巻線1の等価回路で表すことができ、2次側二相巻線2のコイル2aの等価回路は、キャパシタンスCが並列接続されたインダクタンスLと抵抗分Rと交流電圧源V2aの直列回路で表すことができ、2次側二相巻線2のコイル2bの等価回路は、キャパシタンスCが並列接続されたインダクタンスLと抵抗分Rと交流電圧源V2bの直列回路で表すことができる。また、キャパシタンスCはコイル2aの寄生容量とする他、別途容量素子を接続する構成としてもよい。
【0058】
以下、図2に示すオープンエンドの等価回路を用いて説明する。
等価回路において、各巻線間の相互インダクタンスMを考慮したインダクタンス行列は式(1)で近似することができる。
【0059】
以下では、1次側二相巻線のコイル1a,1bを固定子巻線で記述し、2次側二相巻線のコイル2a,2bを可動子巻線で記述する。
【数1】
【0060】
ただし、Lは1次側二相巻線のコイル1a(固定子巻線)の自己インダクタンスであり、Lは2次側二相巻線のコイル2a(可動子巻線)の自己インダクタンスであり、Mは相互インダクタンスの最大値、θ=2πx/Lは可動子位置の電気角である。相互インダクタンスは可動子の運動に伴って変化するため、巻線間の結合係数κも変化し、その最大値はκ=M/√(L)となる。
【0061】
インダクタンス行列が式(1)で与えられるとき、この等価回路のモデルの回路方程式は以下の式(2)、(3)で与えられる。
【数2】
【0062】
ただし、V,I,R,C,Vは以下の式(4)〜(8)で表される。
【数3】
【0063】
また、可動子のx方向の発生力は以下の式(9)で与えられる。
【0064】
ここで、固定子巻線及び可動子巻線には、それぞれ角周波数ω1,ω2の回転磁界を発生させる以下の式(10)〜(13)で表される電流が流れると仮定する。
【数4】
【0065】
ただし、I,Iはそれぞれの電流の振幅値である。また、δは固定子巻線の電流と可動子巻線の電流の位相差を表している。
【0066】
ここで、式(1)、(2)〜(8)に式(10)〜(13)を代入することで以下の式(14)〜(17)で表される電圧V1a,V1b,V2a,V2bが得られる。
【数5】
ただし、可動子の速度はω=dθ/dtとしている。
【0067】
可動子の発生力Fは以下の式(18)で表される。
【数6】
【0068】
ここで、通常の誘導機と同様に2次側を短絡し、V2a=V2b=0とすると、δ,I,ω,ω,ωの関係は以下の式(19)〜(22)で表される。
【数7】
【0069】
式(22)の関係から、通常の誘導機と同様に可動子巻線にはすべり周波数ωの電流が生じる。
【0070】
また、式(18)〜(22)から、可動子の発生力Fは以下の式(23)で表される。
【数8】
【0071】
式(23)から、固定子巻線電流の振幅Iによって可動子の発生力Fの大きさを制御することができ、駆動周波数ω1の符号によって可動子の発生力Fの方向を制御することができることを表している。
【0072】
式(19)〜(22)を用いて、式(14),(15)で表される固定子巻線の電圧V1a,V1bは以下の式(24),(25)で表される。
【数9】
【0073】
ただし、A,β,X,Xは以下の式(26)〜(29)である。
【数10】
【0074】
また、式(23)の可動子の発生力Fは以下の式(30)で表される。
【数11】
【0075】
ただし、V=√(V1a+V1b)であり、Dは式(31)で表される。
【数12】
【0076】
通常の誘導機では、固定子巻線の電源周波数ω1を高くするとすべり周波数ω2も大きくなり、可動子のリアクタンスが増大して2次電流が流れにくくなる。これに対して、本願発明の電気機械エネルギー変換装置によれば、すべり周波数ωが共振周波数に近い場合には、大きな2次電流が流れるという特性がある。
【0077】
本願発明の電気機械エネルギー変換装置において、例えば共振周波数として数百kHz〜十数MHzとなるように回路を設計し、1次側の電源周波数ωを共振周波数付近に設定すると、可動子の周波数ω(=dθ/dt)は高々十数kHz程度であるので、すべり周波数ωは共振周波数付近となる。これによって、すべり周波数ωは共振周波数に近くなるため、大きな2次電流を流すことができる。
【0078】
(共振周波数)
1次側の二相巻線の各相のコイルのインダクタンス、2次側の二相巻線の各相のコイルのインダクタンス、及び1次側と2次側との間の相互インダクタンスは結合共振回路を形成し、共振周波数で共振する。
【0079】
可動子巻線が運動している場合の共振周波数について説明する。ここでは、R=R=0と仮定する。
【0080】
インダクタンスが0となる条件は、式(26)で表されるAにおいてA=0である。この条件は式(31)で表されるDにおいてD=0となる条件と同じであり、式(32)で表される。
【数13】
【0081】
式(32)から、条件式には可動子の電気角θが含まれていないため、共振周波数は可動子の位置に依存しないが、すべり周波数ω(=ω−ω)に依存するため、共振周波数は可動子の速度ωに応じて変化する。
【0082】
ここで、可動子巻線と固定子巻線の相似性から、L=L=L,C=C=Cとして式(32)を電源周波数ωについて解くと4つの解が得られる。解を1次の項までテーラー展開すると、共振周波数ω1resは以下の式(33)で得られる。
【数14】
【0083】
得られた共振周波数は、周波数のシフト分として可動子の速度ωの1/2の周波数(ω/2)を有している。
【0084】
(シミュレーション)
以下、本願発明の電気機械エネルギー変換装置のシミュレーションについて説明する。
シミュレーションは、以下の表の条件でJSOL社のJMAG-designer14.0を用いて周波数解析を行っている。
【表1】
【0085】
図5,6は可動子の運動方向の発生力及び可動子に働く垂直力を表している。(a)〜(e)は可動子と固定子との間のギャップ距離Lyがそれぞれ10mm,15mm,20mm,25mm,30mmの場合を示し、実線は可動子の発生力を示し、破線は固定子の発生力を示している。発生力は2つのピークを持つ。
【0086】
可動子の運動方向の発生力の2つのピークは共に反発力が発生し、固定子には反作用にによって吸引力が発生する。可動子に働く垂直力は、2つのピークの内、低周波数側で反発力が発生し、高周波数側で吸引力が発生する。
【0087】
図7は発生力とギャップ距離との関係を示している。図7(a)は可動子の運動方向の発生力とギャップ距離との関係を示し、図7(b)は可動子に働く垂直力とギャップ距離との関係を示している。
【0088】
可動子の運動方向の発生力は、ギャップ距離を広げると、一定距離まで最大発生力は略一定であるが、さらにギャップ距離を広げると発生力は低下する。可動子に働く垂直力はギャップ距離と共に低下する。
【0089】
以下、本願発明の電気機械エネルギー変換装置の構成例について図8図11を用いて説明する。
【0090】
(回転駆動の構成)
電気機械エネルギー変換装置10Aは、可動子を回転子とし、固定子に対して回転運動する構成例である。
【0091】
回転駆動を行う構成例について図8を用いて説明する。固定子1Aは、1次側二相巻線1を回転軸に対して周方向に環状に配置する。可動子2Aは、2次側二相巻線2を回転軸に対して周方向に環状に配置する。固定子1Aの1次側二相巻線1と可動子2Aの2次側二相巻線2を回転軸の同軸状に配置する。固定子1Aと可動子2Aの同軸配置において、固定子1Aの内周に可動子2Aを配置する構成、あるいは可動子2Aの内周に固定子1Aを配置する構成の何れの構成とすることもできる。
【0092】
(直線駆動の構成)
電気機械エネルギー変換装置10Bは、固定子に対して可動子を直線方向に直動運動する構成例である。
【0093】
直動駆動を行う構成例について図9(a)を用いて説明する。固定子1Bの二相巻線と可動子2Bの二相巻線において、各二相巻線が持つ各相のコイルを直線状に配置し、固定子1Bの二相巻線と可動子2Bの二相巻線を直線配置に対して並列して配置する。直線配置によって、可動子2Bは固定子1Bに対して直線駆動する。
【0094】
(2つの駆動機構を備える構成)
電気機械エネルギー変換装置は、第1駆動機構と第2駆動機構の2つの駆動機構を備える構成とすることができる。
【0095】
2つの駆動機構は、それぞれ固定子と可動子のペアを備え、各駆動機構はそれぞれの可動子を固定子に対して駆動する。第1駆動機構及び第2駆動機構をそれぞれ異なる共振周波数で駆動する。第1駆動機構と第2駆動機構とを異なる共振周波数で駆動することによって、各駆動機構を独立して駆動することができる。
【0096】
第1駆動機構を駆動する共振周波数と第2駆動機構を駆動する共振周波数は、各駆動機構が備えるコイルのインダクタンス及びキャパシタンスで定まるため、インダクタンスやキャパシタンスの設定を変更することによって各駆動機構の共振周波数を異ならせることができる。
【0097】
1次側共振回路、2次側共振回路、及び1次側と2次側との間の相互インダクタンスからなる結合共振回路は、可動子の速度の周波数だけ異なる2つの共振周波数を備える。ここで、第1駆動機構及び第2駆動機構を同じ構成とした場合には、それぞれ2つの共振周波数を備える。ここで、2つの共振周波数の内、一方の共振周波数で第1駆動機構を駆動し、他方の共振周波数で第2駆動機構を駆動する。第1駆動機構と第2駆動機構とは異なる共振周波数で駆動するため、第1駆動機構と第2駆動機構とはそれぞれ干渉することなく互いに独立して駆動することができる。
【0098】
2つの駆動機構を備える構成では、2つの可動子を平面上で2次元駆動する構成、可動子を回転子とし、回転子を回転軸の周囲で回転させる回転駆動と、回転子を回転軸の軸方向に直線移動させる直動駆動とを行わせる構成とすることができる。
【0099】
また、1つの回転子に2つの駆動機構からそれぞれ独立して駆動力を加える構成、2つの回転子を同軸に配置し、各回転子を2つの駆動機構でそれぞれ独立して駆動する構成とすることができる。以下、2次元駆動、回転と直動との組み合わせ駆動、1つの回転子の2つの駆動機構による駆動、2つの回転子の同軸駆動の各構成例について説明する。
【0100】
(2次元駆動)
電気機械エネルギー変換装置10Cは、固定子に対して可動子を2次元の平面上で運動する構成例である。2次元駆動を行う構成例について図9(b)を用いて説明する。
【0101】
2次元駆動の電気機械エネルギー変換装置10Cは、第1駆動機構と第2駆動機構を備える。
【0102】
固定子1Cは2つの固定子1Caと固定子1Cbを備え、固定子1Caは二相巻線の各相のコイルを直線状に配置し、固定子1Cbは二相巻線の各相のコイルを直線状に配置すると共に、固定子1Caの二相巻線のコイルの配置方向に対して所定角度で配置する。
【0103】
可動子2Cにおいても2つの可動子2Caと可動子2Cbを備え、可動子2Caは二相巻線の各相のコイルを直線状に配置すると共に、固定子1Caに対して平行に配置する。また、可動子2Cbは二相巻線の各相のコイルを直線状に配置すると共に、固定子1Caに対して並列して配置する。可動子2Cbは、可動子2Caの二相巻線のコイルの配置方向に対して所定角度で配置する。可動子2Cbと可動子2Caの二相巻線のコイルの成す角度が90°であるときには、可動子2Caと可動子2Cbとは互いに直交する方向に移動する。
【0104】
固定子1Caと可動子2Caは第1駆動機構を構成し、固定子1Cbと可動子2Cbは第2駆動機構を構成する。
【0105】
第1駆動機構において、可動子2Caを固定子1Caに対して駆動周波数ωaで直線駆動し、他方、第2駆動機構において、可動子2Cbを固定子1Cbに対して駆動周波数ωbで直線駆動する。駆動周波数ωaと駆動周波数ωbとを異ならせることによって、第1駆動機構と第2駆動機構とを独立して駆動することができる。
【0106】
可動子2Caと可動子2Cbとを接合して構成、あるいは一体構造とすることによって、1つの可動子を2次元の平面上で駆動することができる。
【0107】
(回転及び直動駆動)
電気機械エネルギー変換装置10Dは、固定子に対して可動子を回転運動と直線運動とを行う構成例である。回転及び直動で駆動を行う構成例について図10を用いて説明する。
【0108】
回転及び直動を行う電気機械エネルギー変換装置10Dは、第1駆動機構と第2駆動機構を備える。
【0109】
第1駆動機構は回転駆動を行う機構であり、固定子1Daと可動子2Daとから構成され、第2駆動機構は直線駆動を行う機構であり、固定子1Dbと可動子2Dbとから構成される。固定子1Daと固定子1Dbは固定子1Dを構成し、可動子2Daと可動子2Dbは可動子2Dを構成する。
【0110】
回転用の固定子1Daは二相巻線の各相のコイルを回転軸に対して環状に配置し、直動用の固定子1Dbは回転軸の軸方向に二相巻線の各相のコイルを直線状に配置する。
【0111】
回転用の固定子1Daは二相巻線の各相のコイルを回転軸に対して環状に配置し、直動用の固定子1Dbは回転軸の軸方向に二相巻線の各相のコイルを直線状に配置する。他方、直動用の可動子2Daは二相巻線の各相のコイルを回転軸に対して環状に配置し、直動用の可動子2Dbは回転軸の軸方向に二相巻線の各相のコイルを直線状に配置する。
【0112】
回転用の固定子1Da及び可動子2Daを回転軸に対して同軸状に配置し、直動用の固定子1Db及び可動子2Dbを回転軸に対して同軸状に配置する。したがって、固定子1Da、固定子1Db、可動子2Da、及び可動子2Dbは、回転軸に対して同軸状に配置される。
【0113】
第1駆動機構において、可動子2Daを固定子1Daに対して駆動周波数ωaで回転駆動し、他方、第2駆動機構において、可動子2Dbを固定子1Dbに対して駆動周波数ωbで直線駆動する。駆動周波数ωaと駆動周波数ωbとを異ならせることによって、第1駆動機構と第2駆動機構とを独立して駆動することができる。
【0114】
それぞれ独立して互いに干渉することなく駆動する第1駆動機構と第2駆動機構によって、可動子(回転子)は固定子に対して回転駆動と直線駆動とを行う。
【0115】
(1つの回転子を2つの駆動機構で駆動する構成)
電気機械エネルギー変換装置10Eは、可動子を回転子とし、固定子に対して1つの可動子を2つの駆動機構で駆動する構成例である。1つの回転子を2つの駆動機構で駆動する構成例について図11(a)を用いて説明する。
【0116】
1つの回転子を2つの駆動機構で回転駆動する電気機械エネルギー変換装置10Eは、第1駆動機構と第2駆動機構を備える。
【0117】
第1駆動機構は回転駆動を行う機構であり、固定子1Eaと可動子2Eaとから構成され、第2駆動機構は回転駆動を行う機構であり、固定子1Ebと可動子2Ebとから構成される。固定子1Eaと固定子1Ebは固定子1Eを構成し、可動子2Eaと可動子2Ebは可動子2Eを構成する。
【0118】
回転用の固定子1Ea及び固定子1Ebは二相巻線の各相のコイルを回転軸に対して環状に配置し、同じく、回転用の可動子2Ea及び可動子2Ebは二相巻線の各相のコイルを回転軸に対して環状に配置する。
【0119】
可動子2Eaと可動子2Ebとを同軸状に隣接させて配置すると共に、接合した構成あるいは一体構造とする。可動子2Eaに対して固定子1Eaを回転軸と直交する方向に対向して同軸状に配置し、可動子2Ebに対して固定子1Ebを回転軸と直交する方向に対向して同軸状に配置する。これによって、第1駆動機構と第2駆動機構の固定子を、回転子を挟んで内周及び外周に同軸状に配置し、2つの固定子は回転子に対して同一方向又は逆方向に回転駆動力を加える。
【0120】
第1駆動機構において、可動子2Eaを固定子1Eaに対して駆動周波数ωaで回転駆動し、他方、第2駆動機構において、可動子2Ebを固定子1Ebに対して駆動周波数ωbで直線駆動する。駆動周波数ωaと駆動周波数ωbとを異ならせることによって、第1駆動機構と第2駆動機構とを独立して駆動することができる。
【0121】
可動子2Eaと可動子2Ebとは結合され、それぞれの固定子1Ea及び固定子1Ebから運動方向の発生力が加えられるため、回転子に対して2つの固定子から同一方向の回転駆動力を加える場合には、回転子の回転駆動力を増加させることができる。一方、回転子に対して2つの固定子から逆方向の回転駆動力を加える場合には、外力によって回転子に何れかの方向に回転力が加えられたときに、回転子の回転を止める力として作用し、回転子の回転を抑制することができる。
【0122】
本願発明の電気機械エネルギー変換装置は、2つの共振周波数において運動方向の発生力にピークが生じる。第1駆動構成を駆動する駆動周波数を一方の共振周波数とし、第2駆動構成を駆動する駆動周波数を一方の共振周波数とすることで、第1駆動機構と第2駆動機構とによって、それぞれ独立して互いに干渉することなく駆動することができる。
【0123】
(2つの回転子を同軸で駆動する構成)
電気機械エネルギー変換装置10Fは、可動子を回転子とし、固定子に対して2つの可動子を同軸で駆動する構成例である。2つの回転子を同軸で駆動する構成例について図11(b)を用いて説明する。
【0124】
2つの回転子を同軸で回転駆動する電気機械エネルギー変換装置10Fは、第1駆動機構と第2駆動機構を備える。
【0125】
第1駆動機構は回転駆動を行う機構であり、固定子1Faと可動子2Faとから構成され、第2駆動機構は回転駆動を行う機構であり、固定子1Fbと可動子2Fbとから構成される。固定子1Faと固定子1Fbは固定子1Fを構成し、可動子2Faと可動子2Fbは可動子2Fを構成する。
【0126】
回転用の固定子1Fa及び固定子1Fbは二相巻線の各相のコイルを回転軸に対して環状に配置し、同じく、回転用の可動子2Fa及び可動子2Fbは二相巻線の各相のコイルを回転軸に対して環状に配置する。
【0127】
固定子1Faと可動子2Fbとを同軸状に配置し、固定子1Fbと可動子2Fbとを同軸状に配置する。
【0128】
第1駆動機構において、可動子2Faを固定子1Faに対して駆動周波数ωaで回転駆動し、他方、第2駆動機構において、可動子2Fbを固定子1Fbに対して駆動周波数ωbで直線駆動する。駆動周波数ωaと駆動周波数ωbとを異ならせることによって、第1駆動機構と第2駆動機構とを独立して駆動することができる。
【0129】
可動子2Faと可動子2Fbはそれぞれ独立して駆動することができるため、同軸上にある2つの回転子をそれぞれ独立して駆動することができる。
【0130】
(機械エネルギーから電気エネルギーへの変換)
機械エネルギーを電気エネルギーに変換する電気機械エネルギー変換装置は、1次側の多相巻線を固定子とし、次側の2次側を可動子とし、可動子の多相巻線のコイル間の力学的エネルギーを、固定子の電気エネルギーに変換し、固定子の交流電圧源に電気エネルギーを供給する発電機として構成することができる。
【0131】
可動子の発生力Fと1次側の二相巻線の電圧電源の電圧Vとの間には式(30)で示す関係にあるため、可動子を外力によって移動させることによって1次側に電圧を発生させることができる。
【0132】
電気機械エネルギー変換装置を発電機として構成する際、前記した駆動機構で説明した回転駆動、直線駆動、2次元駆動等と同様に、回転運動、直線運動、2次元運動等の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電を行う構成とすることができる。
【0133】
なお、本願発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本願発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本願発明の範囲から排除するものではない。前記各実施例では二相巻線を例として説明しているが、本願発明の電気機械エネルギー変換装置は二相巻線に限らず、三相巻線などの多相巻線にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本願発明の電気機械エネルギー変換装置は、回転運動を行う回転機、直線運動を行う直動機等の電気エネルギーを機械エネルギーへの変換機器、発電機等の機械エネルギーを電気エネルギーへの変換機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1 1次側二相巻線
1A 固定子
1B 固定子
1C 固定子
1Ca 固定子
1Cb 固定子
1D 固定子
1Da 固定子
1Db 固定子
1E 固定子
1Ea 固定子
1Eb 固定子
1F 固定子
1Fa 固定子
1Fb 固定子
1a,1b コイル
2 2次側二相巻線
2A 可動子
2B 可動子
2C 可動子
2Ca 可動子
2Cb 可動子
2D 可動子
2Da 可動子
2Db 可動子
2E 可動子
2Ea 可動子
2Eb 可動子
2F 可動子
2Fa 可動子
2Fb 可動子
2a,2b コイル
10 電気機械エネルギー変換装置
10A 電気機械エネルギー変換装置
10B 電気機械エネルギー変換装置
10C 電気機械エネルギー変換装置
10D 電気機械エネルギー変換装置
10E 電気機械エネルギー変換装置
10F 電気機械エネルギー変換装置
キャパシタンス
キャパシタンス
F 発生力
インダクタンス
インダクタンス
Lx 距離
Ly ギャップ距離
相互インダクタンス
抵抗分
抵抗分
電圧
1a 交流電圧源
1b 交流電圧源
2a 交流電圧源
2b 交流電圧源
図2
図3
図4
図8
図1
図5
図6
図7
図9
図10
図11