特開2017-51900(P2017-51900A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-51900(P2017-51900A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】触媒とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/85 20060101AFI20170224BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20170224BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20170224BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20170224BHJP
   C01B 39/54 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   B01J29/85 M
   B01J35/08 B
   B01J37/04 101
   B01J37/10
   C01B39/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-176976(P2015-176976)
(22)【出願日】2015年9月8日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究事業「デュアルファンクション構造体の構築と高性能触媒材料への展開」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
【住所又は居所】神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】窪田 好浩
【住所又は居所】神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79番1号 国立大学法人横浜国立大学内
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 怜史
【住所又は居所】神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79番1号 国立大学法人横浜国立大学内
(72)【発明者】
【氏名】福岡 拓也
【住所又は居所】神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79番1号 国立大学法人横浜国立大学内
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4G073CZ17
4G073CZ41
4G073CZ59
4G073DZ01
4G073FD01
4G169AA02
4G169AA08
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169CC21
4G169EA04X
4G169EB15X
4G169EC28
4G169ED05
4G169ED08
4G169FA01
4G169FB07
4G169FB30
4G169FC02
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZA32A
4G169ZA32B
4G169ZA41A
4G169ZA41B
4G169ZB03
4G169ZC02
4G169ZC04
4G169ZC06
4G169ZD03
4G169ZF07A
4G169ZF07B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炭素析出耐性および水熱安定性が高いモレキュラーシーブ/ゼオライト複合触媒を提供。
【解決手段】コア−シェル構造を有する触媒であって、SSZ−13ゼオライトの結晶粒子からなるコア部101と、コア部101の表面を覆うCHA(チャバサイト)型を有するMAPO(メタロアルミノホスフェート)モレキュラーシーブの結晶粒子からなるシェル部102と、を備えている触媒100。コア部101のSSZ−13の結晶粒子の粒径が1μm以上でありシェル部102が、厚さ200nm以下であるが、コア部101の表面全体を覆う連続膜である触媒100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア−シェル構造を有する触媒であって、
SSZ−13の結晶粒子からなるコア部と、
前記コア部の表面を覆うMAPOの結晶粒子からなるシェル部と、を備えていることを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記SSZ−13の結晶粒子の粒径が、1μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記シェル部が、前記コア部の表面全体を覆う連続膜であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の触媒。
【請求項4】
前記シェル部が、前記コア部の表面の一部を覆う膜であり、前記コア部の表面の他の一部が露出していることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
前記シェル部の厚さが200nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
コアーシェル構造を有する触媒の製造方法であって、
SSZ−13からなる結晶粒子をMAPOの合成ゲルに浸漬し、水熱処理を行うことを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項7】
コアーシェル構造を有する触媒の製造方法であって、
SSZ−13からなる結晶粒子とMAPOからなる結晶粒子とを、粒子複合化装置を用いて機械的に複合化することを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項8】
前記SSZ−13からなる結晶粒子と前記MAPOからなる結晶粒子との複合化粒子を、MAPOの溶液に浸漬し、水熱処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の触媒の製造方法。
【請求項9】
前記SSZ−13からなる結晶粒子として、粒径が1μm以上のものを用いることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のゼオライトより耐酸性が高い触媒として、CHA型ゼオライトが注目されている。CHA型ゼオライトは、酸素8員環構造および3次元の細孔構造を有しており、methanol−to−olefin(MTO)反応およびdimethyl ether−to−olefin(DTO)反応に際し、高い低級オレフィン選択性を示す点において優れている。
【0003】
ところが、このCHA型ゼオライトは、MTO反応、DTO反応過程において時間経過とともに失活し、その機能が低下することが問題とされている(非特許文献1)。この失活は、反応によって、ゼオライト触媒上に炭素(コーク)が析出することに起因している。
【0004】
CHA型ゼオライトの具体例としては、金属とアルミノフォスフェートとの化合物であるMAPO、シリケート系の化合物であるSSZ−13が挙げられる。MAPOは、炭素析出による触媒失活が緩やかな触媒、すなわち、炭素析出耐性が高い触媒であるため、上記触媒失活の問題を解決する上では、好適な材料といえる。ただし、MAPOは、高温高圧の水蒸気に対する触媒機能の安定性、すなわち水熱安定性が比較的低いという欠点を有している。一方、SSZ−13は、水熱安定性が高い触媒ではあるが、急激に炭素析出して触媒失活するという欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4544538号明細書
【特許文献2】米国特許第4440871号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F.Bleken et al., Top in Catal.,52,218(2009)
【非特許文献2】Y.Hirota、K.Murata、S.Tanaka、N.Nishiyama、K.Ueyama、Materials Chemistry and Physics 123(2010)pp.507−509
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、炭素析出耐性および水熱安定性が高い触媒とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決すべく、本発明者は、鋭意検討を重ね、触媒およびその製造方法を開発した。
本発明は、以下の手段を提供する。
[1]コア−シェル構造を有する触媒であって、SSZ−13の結晶粒子からなるコア部と、前記コア部の表面を覆うMAPOの結晶粒子からなるシェル部と、を備えていることを特徴とする触媒。
[2]前記SSZ−13の結晶粒子の粒径が、1μm以上であることを特徴とする[1]に記載の触媒。
[3]前記シェル部が、前記コア部の表面全体を覆う連続膜であることを特徴とする請求項[1]または[2]のいずれかに記載の触媒。
[4]前記シェル部が、前記コア部の表面の一部を覆う膜であり、前記コア部の表面の他の一部が露出していることを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載の触媒。
[5]前記シェル部の厚さが200nm以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一つに記載の触媒。
[6]コアーシェル構造を有する触媒の製造方法であって、SSZ−13からなる結晶粒子をMAPOの合成ゲルに浸漬し、水熱処理を行うことを特徴とする触媒の製造方法。
[7]コアーシェル構造を有する触媒の製造方法であって、SSZ−13からなる結晶粒子とMAPOからなる結晶粒子とを、粒子複合化装置を用いて機械的に複合化することを特徴とする触媒の製造方法。
[8]前記SSZ−13からなる結晶粒子と前記MAPOからなる結晶粒子との複合化粒子を、MAPOの溶液に浸漬し、水熱処理を行うことを特徴とする[7]に記載の触媒の製造方法。
[9]前記SSZ−13からなる結晶粒子として、粒径が1μm以上のものを用いることを特徴とする[6]〜[8]のいずれか一つに記載の触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、炭素析出耐性の低いSSZ−13の結晶粒子からなるコア部は、その表面が、炭素析出耐性の高いMAPOの結晶粒子からなるシェル部で覆われている。そのため、コア部の表面から炭素が析出するのを抑えることができる。
また、本発明によれば、触媒としての機能は、中心にある水熱安定性の高いコア部が主に担うことになるため、シェル部での水熱安定性の低下を補うことができる。
したがって、本発明の触媒は、全体として炭素析出耐性が高く、かつ水熱安定性が高いものとなる。
このように本発明によれば、SSZ−13の結晶粒子、MAPOの結晶粒子を、それぞれ単独で用いた場合には難しいとされている、高い炭素析出耐性と高い水熱安定性の両立を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係る、触媒の製造過程を示す模式図である。
図2】(a)、(b)本発明の第二実施形態に係る、触媒の製造過程を示す模式図である。
図3】調製したSSZ−13粒子のX線回折による分析結果を示すグラフである。
図4】調製したSSZ−13粒子のSEM像である。
図5】調製したSSZ−13粒子のX線回折による分析結果を示すグラフである。
図6】調製したSSZ−13粒子のSEM像である。
図7】調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のX線回折による分析結果を示すグラフである。
図8】調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のSEM像である。
図9】(a)〜(d)調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のSEM像およびEDX分析結果を示すグラフである。
図10】調製したSSZ−13粒子、SAPO−34粒子、SAPO−34/SSZ−13粒子のNMRによる分析結果を示すグラフである。
図11】調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のX線回折による分析結果を示すグラフである。
図12】調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のSEM像である。
図13】調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のSEM像およびEDX分析結果を示すスペクトルである。
図14】(a)、(b)調製したSAPO−34粒子、SAPO−34/SSZ−13粒子のNMRによる分析結果を示すグラフである。
図15】調製したSSZ−13粒子のX線回折による分析結果を示すグラフである。
図16】調製したSSZ−13粒子のSEM像である。
図17】調製したSSZ−13粒子のX線回折による分析結果を示すグラフである。
図18】調製したSAPO−34粒子のSEM像である。
図19】調製したSAPO−34粒子のX線回折による分析結果を示すグラフである。
図20】調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のX線回折による分析結果を示すグラフである。
図21】調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のSEM像である。
図22】調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のSEM像である。
図23】調製したSAPO−34/SSZ−13粒子のX線回折による分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した実施形態である触媒とその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
[第一実施形態]
(触媒の構成)
本発明の第一実施形態に係る触媒は、コア部とその表面を覆うシェル部とを備えたコア−シェル構造を有している。
【0013】
コア部は、SSZ−13の結晶粒子からなる。SSZ−13の結晶粒子の粒径は、1μm以上30μm以下であることが好ましく、2μm以上20μm以下であればより好ましい。
【0014】
SSZ−13は、シリケート系の化合物であり、その一部のSiがAl、B、Sn、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Geなどで置換されていてもよい。
【0015】
シェル部は、MAPOの結晶粒子からなる連続膜であり、コア部の表面全体を覆っている。シェル部の厚さは、10nm以上100nm以下であることが好ましく、30nm以上80nm以下であればより好ましい。
(その理由:50nmを中心とし、ゼオライト最少ユニット数個分を下限とした値)
【0016】
MAPOは、アルミノフォスフェート(APO)のリン(P)原子またはアルミニウム(Al)原子が金属原子(M)で一部置換された化合物である。ここでのMとしては、Si、Fe、Co、Ni、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Znなどが挙げられる。このうち、Mが特にSiの化合物は、SAPO−34と呼ばれるものである。
【0017】
(触媒の製造方法)
図1は、上述した第一実施形態に係る触媒の製造方法について、模式的に説明する図である。第一実施形態に係る触媒の製造は、コア粒子をシェル層の原料混合物ゲルに投入して結晶化させる、ケミカル処理によるものであり、主に、以下に挙げる工程1−1、1−2を経て行う。
【0018】
<工程1−1>
まず、コア部101を構成する、SSZ−13からなる粒子(コア粒子)101aを調製する。この工程で得られるコア粒子の粒径は50〜2000nm程度であるが、次工程で表面に連続膜を形成する観点から、コア粒子の粒径はさらに大きい方が好ましい。
【0019】
コア粒子の粒径は、一旦合成したSSZ−13からなる粒子を種粒子として、同様の合成処理を繰り返すことにより、大きくすることができる。この場合のコア粒子は、種結晶として用いたSSZ−13からなる結晶粒子の周囲に、同じ組成の結晶粒子が形成された状態となる。
【0020】
<工程1−2>
次に、シェル部102を構成する、MAPOの粒子からなる膜(シェル層)を調製する。即ち、工程1−1で得られたコア粒子を、シェル層の原料混合物ゲル102aに加え、水熱処理を行う。これにより、コア部101の表面に、シェル部102が形成されるとともに、コア部101を構成するSSZ−13からなる粒子、シェル部102を構成するMAPOからなる粒子が、ともに結晶化する。
【0021】
工程1−1、1−2を経ることにより、SSZ−13の結晶粒子からなるコア部と、その表面を覆うMAPOの結晶粒子からなるシェル部とを備えた、第一実施形態に係る触媒100を得ることができる。
【0022】
以上説明したように、本発明の第一実施形態に係る触媒において、炭素析出耐性の低いSSZ−13の結晶粒子からなるコア部は、その表面が、炭素析出耐性の高いMAPOの結晶粒子からなるシェル部で覆われている。そのため、コア部の表面から炭素が析出するのを抑えることができる。また、第一実施形態に係る触媒において、その触媒としての機能は、中心にある水熱安定性の高いコア部が主に担うことになるため、シェル部での水熱安定性の低下を補うことができる。したがって、第一実施形態に係る触媒は、全体として炭素析出耐性が高く、かつ水熱安定性が高いものとなる。このように、第一実施形態に係る触媒は、SSZ−13の結晶粒子、MAPOの結晶粒子を、それぞれ単独で用いた場合には難しいとされている、高い炭素析出耐性と高い水熱安定性の両立を実現するものである。
【0023】
[第二実施形態]
(触媒の構成)
本発明の第二実施形態に係る触媒は、第一実施形態に係る触媒と同様に、コア部とその表面を覆うシェル部とを備えたコア−シェル構造を有している。第二実施形態に係る触媒は、コア部の構成においては、第一実施形態に係る触媒と同様であるが、シェル部の構成および製造方法においては、第一実施形態に係る触媒と異なっている。
【0024】
シェル部は、MAPOの結晶粒子からなる膜である。コア部の表面の一部がこの膜に覆われており、コア部の表面の他の一部が露出している。コア部の表面のうち露出部分が占める割合は、小さいほど良く、具体的には、0%以上50%以下であることが好ましく、0%以上10%以下であればより好ましい。シェル部の厚さは、10nm以上200nm以下であることが好ましく、30nm以上120nm以下であればより好ましい。
【0025】
(触媒の製造方法)
図2(a)は、上述した第二実施形態に係る触媒の製造方法について、模式的に説明する図である。第二実施形態に係る触媒の製造は、別々に調製したコア粒子とシェア粒子とを、図2(b)に示すような粒子複合化装置に投入して機械的に複合化させる、メカノケミカル処理によるものであり、主に、以下に挙げる工程2−1、2−2、2−3を経て行う。
【0026】
<工程2−1>
まず、コア部201を構成する、SSZ−13からなる粒子(コア粒子)201aを調製する。この工程で得られるコア粒子の粒径を大きくするため、原料にホウ素(B)源を加えておくことが好ましい。
【0027】
<工程2−2>
また、シェル部202を構成する、MAPOからなる粒子(シェル粒子)202aを調製する。
【0028】
<工程2−3>
図2(a)に示すように、工程2−1で調製したSSZ−13粒子([Al、B]−SSZ−13)201aと、工程2−2で調製したMAPO粒子202aとを、粒子複合化装置に投入し、複合粒子200を調製する。具体的には、粒子複合化装置内の粒子収容部(容器)に、[Al、B]SSZ−13粒子とMAPO粒子を投入し、粒子収容部内で羽根状部材を回転させることにより、投入した粒子表面にせん断応力を作用させる。こうすることにより、[Al、B]SSZ−13粒子201の表面にMAPO粒子202が複合化された、複合粒子200の粉体が得られる。
【0029】
工程2−1〜2−3を経ることにより、SSZ−13の結晶粒子からなるコア部と、その表面を覆うMAPOの結晶粒子からなるシェル部とを備えた、第二実施形態に係る触媒100を得ることができる。
【0030】
以上説明したように、本発明の第二実施形態に係る触媒において、炭素析出耐性の低いSSZ−13の結晶粒子からなるコア部は、その表面が、炭素析出耐性の高いMAPOの結晶粒子からなるシェル部で覆われている。そのため、コア部の表面から炭素が析出するのを抑えることができる。また、第二実施形態に係る触媒において、その触媒としての機能は、中心にある水熱安定性の高いコア部が主に担うことになるため、シェル部での水熱安定性の低下を補うことができる。したがって、第二実施形態に係る触媒は、全体として炭素析出耐性が高く、かつ水熱安定性が高いものとなる。このように、第二実施形態に係る触媒は、SSZ−13の結晶粒子、MAPOの結晶粒子を、それぞれ単独で用いた場合には難しいとされている、高い炭素析出耐性と高い水熱安定性の両立を実現するものである。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0032】
<実施例1:ケミカル処理1>
SSZ−13粒子、MAPO粒子を、上述したケミカル処理によって調製した一例を提示する。
【0033】
(実施例1−1)
90mlのフッ素樹脂(PFA)製容器に、NaOH(約8mol/L、6.345mmol/g)を3.170g(20.0mmol)、鋳型である1−トリメチルアンモニオアダマンタン水酸化物(Sachem社製、1.206mmol/g、以下、「TMAdaOH」という。)を16.560g(20.0mmol)入れ、純水64.80gを加えて10分間攪拌し、これらを無色透明溶液とした。
【0034】
次に、この溶液に、Al(OH)(Aldrich社製、Alとして50〜57wt%)を0.476g(5.0mmol)加えて60分間攪拌し、完全に溶かした。最後に、煙状シリカ(Cabot社製、Cab−O−Sil(登録商標)M5、純SiO)を6.059g(100mmol)加え、室温で3時間攪拌した。合成ゲルの原料モル組成が、1.0SiO−0.05Al(OH)−0.20NaOH−0.20TMAdaOH−44HOになるように調製した(即ち、原料に含まれるSiとAlの比Si/Alを20とした)。
【0035】
調製したゲルを内容積125mLのテフロン(登録商標)内筒つきオートクレーブに移し、170℃のオーブン中で7日間静置した。得られた生成物を、ブフナーロートと濾紙(Advantec社製 #5)で吸引ろ過した。次いで、この濾過したものを、100℃オーブン中で16時間乾燥した後に粉砕し、SSZ−13の白色粉末6.076gを得た。
【0036】
得られたSSZ−13粒子について、X線回折の分析を行った。分析結果を示す回折スペクトルを、図3に示す。横軸は回折角(°)を示し、縦軸は回折強度[cps]を示している。回折スペクトル(有機物を含むパターン)のピークは、公知のCHA相(有機物を含まないパターン)に由来するピークと異なっている(例えば、特許文献1参照)。しかし、焼成して有機物を除去すると、公知のCHA相(有機物を含まないパターン)と一致する。なお、得られたSSZ−13粒子における比Si/Alは、10であった。
【0037】
得られたSSZ−13粒子のSEM像を図4に示す。このSEM像から、平均粒径が約50〜100nmのSSZ−13粒子が得られていることが分かる。
【0038】
(実施例1−2)
90mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、NaOH(約8mol/L、6.345mmol/g)を3.180g(20.0mmol)、鋳型であるTMAdaOH(1.206mmol/g)を16.606g(20.0mmol)入れ、純水65.05gを加えて10分間攪拌し、これらを無色透明溶液とした。
【0039】
次に、この溶液に、Al(OH)(Aldrich社製、Alとして50〜57wt%)を0.476g(5.0mmol)加えて60分間攪拌し、完全に溶かした。最後に、煙状シリカ(Cabot社製、Cab−O−Sil(登録商標)M5、純SiO)を6.048g(100mmol)加え、室温で4時間攪拌した。
【0040】
途中、1時間経過した時点で、実施例1−1の生成物(未焼成SSZ−13、Si/Al=10)120.4mgを種結晶として添加した。種結晶の添加量は、原料中のシリカ源の重量(6.048g)に対して、2.0重量%に相当する。種結晶を除く合成ゲルの原料モル組成が、1.0SiO−0.050Al(OH)−0.20NaOH−0.20TMAdaOH−44HOになるように調製した(即ち、原料におけるSi/Alを20とした)。
【0041】
調製したゲルを内容積125mLのテフロン(登録商標)内筒つきオートクレーブに移し、170℃のオーブン中で5日間静置した。得られた生成物を、ブフナーロートと濾紙(Advantec社製 #5)で吸引ろ過した。次いで、100℃オーブン中で19時間乾燥した後粉砕し、SSZ−13粒子からなる白色粉末(6.160g)を得た。得られた白色粉末(3.252g)を焼成皿に入れ、マッフル炉を用いて焼成を行った。
【0042】
焼成は、空気雰囲気下において、次の4つのステップからなる昇温プログラムを用いて行った。1つ目のステップとして、30分間で室温から150℃まで昇温した。2つ目のステップとして、150℃で2時間保持した。3つ目のステップとして、4時間で150℃から600℃まで昇温した。4つ目のステップとして、600℃で10時間保持した。最後に放冷し、鋳型を除去して、結晶化したSSZ−13粒子からなる白色粉末(2.757g)を得た。
【0043】
焼成前のSSZ−13粒子と焼成後のSSZ−13粒子に対して、それぞれX線回折の分析を行った。分析結果を示す回折スペクトルを、図5に示す。横軸は回折角(°)を示し、縦軸は回折強度[cps]を示している。図5では、焼成前のSSZ−13粒子の回折スペクトルを下段に、焼成後のSSZ−13粒子の回折スペクトルを上段に示している。
【0044】
焼成前のSSZ−13粒子の回折スペクトルは、公知のCHA相に由来するピークと異なっている(例えば、特許文献1参照)。一方、焼成後のSSZ−13粒子の回折スペクトルは、公知のCHA相に由来するピークとよく一致しており、他のピークは全く見られない。したがって、焼成後のSSZ−13粒子は、CHA型ゼオライトとなっていることが分かる。なお、焼成後のSSZ−13粒子における比Si/Alは、19.6であった。これらの結果から、SSZ−13粒子をCHA型ゼオライトとするためには、上述したように焼成を行う必要があることが分かる。
【0045】
焼成後のSSZ−13粒子のSEM像を図6に示す。このSEM像から、平均サイズが約2〜5μmのSSZ−13粒子が得られていることが分かる。
【0046】
(実施例1−3)
90mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、HPO水溶液(Wako、85wt%)を2.307g(20.0mmol)、純水を5.158g加えて室温で10分間攪拌し、これらを無色透明溶液とした。これに、Al(OH)(Aldrich社製、Alとして50〜57wt%)1.906g(20.0mmol)を加えて室温で30分間攪拌し、ゲルを調製した。
【0047】
100mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、コロイダルシリカ(Aldrich社製、Ludox(登録商標)AS−40、球状シリカ粒子のコロイド溶液、SiOとして40wt%)を0.451g(3.0mmol)、鋳型であるテトラエチルアンモニウム水酸化物(Aldrich社製、35wt%、以下「TEAOH」という)を4.226g(10.0mmol)入れて、室温で1時間攪拌して溶液を調製した。
【0048】
この調製した溶液を撹拌したゲルに滴下し、室温で1時間撹拌した。これにジプロピルアミン(TCI、以下「DPA」という)1.622g(16.0mmol)を加えて、室温で4時間撹拌した。
【0049】
途中、3時間経過した時点で、実施例1−2の生成物(未焼成SSZ−13、Si/Al=19.6)93.0mgをコア粒子として添加した。即ち、コア粒子の添加量は、原料のシリカ源、アルミ源、リン源の総重量(4.664g)に対して、2.0重量%に相当する。コア粒子を除く合成ゲルの原料モル組成が、0.15SiO−1.00Al(OH)−1.00HPO−0.50TEAOH−0.8DPA−26HOになるように調製した。
【0050】
調製したゲルを内容積23mLのテフロン(登録商標)内筒つきオートクレーブに移し、150℃のオーブン中で120時間静置した(水熱合成)。得られた生成物を遠心分離により単離した。遠心分離は、4000rpm×20分間を1セットとし、純水(100mL)による洗浄を含めて合計3セット行った。
【0051】
次に、単離した生成物を、100℃オーブン中で24時間乾燥させた後粉砕することにより、SSZ−13とSAPO−34とで構成される白色粉末1.8208gを得た。得られた粉末1.205gを焼成皿に入れ、マッフル炉を用いて焼成を行った。
【0052】
焼成は、空気雰囲気下において、次の2つのステップを経て行った。1つ目のステップとして、6時間で室温から600℃まで昇温した。2つ目のステップとして、600℃で3時間保持した。最後に放冷し、鋳型を除去することにより、SSZ−13とSAPO−34とで構成される、結晶化した白色粉末1.279gを得た。
【0053】
焼成の前後で、SSZ−13とSAPO−34とで構成される粒子(SAPO−34/SSZ−13粒子)に対して、X線回折の分析を行った。分析結果を示す回折スペクトルを、図7に示す。横軸は回折角(°)を示し、縦軸は回折強度[cps]を示している。図7では、焼成前のSAPO−34/SSZ−13粒子の回折スペクトルを下段に、焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子の回折スペクトルを上段に示している。
【0054】
焼成前のSAPO−34/SSZ−13粒子の回折スペクトルは、公知のCHA相に由来するピークと異なっている(例えば、特許文献1参照)。一方、焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子の回折スペクトルは、公知のCHA相に由来するピークとよく一致しており、他のピークは全く見られない。したがって、焼成後のSSZ−13粒子は、CHA型ゼオライトとなっていることが分かる。これらの結果から、SAPO−34/SSZ−13粒子をCHA型ゼオライトとするためには、上述したように焼成を行う必要があることが分かる。
【0055】
焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子のSEM像を図8に示す。このSEM像から、平均サイズが約1〜3μmのSAPO−34/SSZ−13粒子が得られていることが分かる。
【0056】
焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子を、イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製E−3500)で割断した。割断による断面のSEM像を、図9(a)に示す。図9(b)〜(d)は、この断面に対してEDX分析を行った結果を示すものである。
【0057】
図9(b)は、断面の中央部においてEDX分析を行ったものである。中央部では、Siの含有量が、Al、Pの含有量に比べて多くなっている。一方、図9(c)、(d)は断面の周縁部においてEDX分析を行ったものである。周縁部では、Al、Pの含有量がSiの含有量に比べて多くなっている。これらの結果から、Siを主要成分とするSSZ−13が、中央に位置するコア部を構成し、Al、Pを主要成分とするSAPO−34が、コア部の周囲を覆うシェル部を構成していることが分かる。
【0058】
(実施例1−4)
焼成後のSSZ−13粒子、焼成後のSAPO−34粒子、焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子を準備し、それぞれに含有されるAlに対して、固体MASNMRによる分析を行った。分析結果を示すスペクトルを、図10に示す。図10では、SAPO−34粒子の27Al NMRのスペクトルを下段に、SSZ−13粒子の27Al NMRのスペクトルを中段に、SAPO−34/SSZ−13粒子の27Al NMRのスペクトルを上段に示している。
【0059】
SAPO−34/SSZ−13粒子からなるCHA型ゼオライトの27Al NMRのスペクトル(上段)は、SSZ−13粒子の27Al NMRのスペクトル(中段)と、SAPO−34粒子の27Al NMRのスペクトル(下段)とを重ねあわせたような形状をなしている。この結果から、シェル層を構成する粒子(ここではSAPO−34粒子)は、コア粒子を構成する粒子との複合粒子になった場合においても、アモルファスにならずに、SAPO−34の結晶として存在し、シェル層のAlは結晶の構成成分となっていると考えられる。
【0060】
<実施例2:ケミカル処理2>
SSZ−13粒子、MAPO粒子を、化学的な処理(ケミカル処理)によって合成した他の一例を提示する。
【0061】
実施例1−1および実施例1−2と同様の手順に従って、コア粒子(SSZ−13粒子)を調製した。続いて、水熱合成の条件を150℃、120時間から170℃、12時間に変更した以外は、実施例1−3と同様に水熱合成と焼成を行った。具体的な処理内容を次に示す。
【0062】
90mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、HPO水溶液(Wako、85wt%)を2.308g(20.0mmol)、純水を5.138g加えて、これらを室温で10分間攪拌し、無色透明溶液とした。
【0063】
次に、この溶液に、Al(OH)(Aldrich社製、Alとして50〜57wt%)1.907g(20.0mmol)を加えて室温で30分間攪拌し、ゲルを調製した。100mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、コロイダルシリカ(Aldrich社製、Ludox(登録商標)AS−40、球状シリカ粒子のコロイド溶液、SiOとして40wt%)を0.452g(3.0mmol)、鋳型であるテトラエチルアンモニウム水酸化物水溶液(Aldrich社製、35wt%、以下「TEAOH」という)を4.247g(10.0mmol)入れて、室温で1時間攪拌し、溶液を調製した。
【0064】
この調製した溶液を撹拌しているゲルに滴下し、室温で10分間撹拌した。これにジプロピルアミン(TCI、以下「DPA」という)1.624g(16.0mmol)を加えて、室温で1時間撹拌した。
【0065】
途中、30分間経過した時点で、実施例1−2の生成物(未焼成SSZ−13、Si/Al=19.6)93.3mgを、コア粒子として添加した。即ち、コア粒子の添加量は、原料のシリカ源、アルミ源、リン源の総重量(4.667g)に対して2.0重量%に相当する。コア粒子を除く合成ゲルの原料モル組成が、0.15SiO−1.00Al(OH)−1.00HPO−0.50TEAOH−0.8DPA−26HOになるように調製した。
【0066】
調製したゲルを23mLオートクレーブに移し、170℃のオーブン中で12時間静置した(水熱合成)。得られた生成物を遠心分離により単離した。遠心分離は4000rpm×20分間を1セットとし、純水(100mL)による洗浄を含めて合計3セット行った。
【0067】
次に、単離した生成物を、100℃オーブン中で15時間乾燥させた後粉砕することにより、SSZ−13とSAPO−34とで構成される白色粉末1.411gを得た。得られた粉末1.003gを焼成皿に入れ、マッフル炉を用いて焼成を行った。
【0068】
焼成は、空気雰囲気下において、次の2つのステップを経て行った。1つ目のステップとして、6時間で室温から600℃まで昇温した。2つ目のステップとして、600℃で3時間保持した。最後に放冷し、鋳型を除去することにより、SSZ−13とSAPO−34とで構成される、結晶化した白色粉末、0.940gを得た。
【0069】
焼成の前後で、SSZ−13とSAPO−34とで構成される粒子(SAPO−34/SSZ−13)に対して、X線回折の分析を行った。分析結果を示す回折スペクトルを、図11に示す。横軸は回折角(°)を示し、縦軸は回折強度[cps]を示している。焼成前のSAPO−34/SSZ−13粒子の回折スペクトルを下側に、焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子の回折スペクトルを上側に示している。
【0070】
焼成前のSAPO−34/SSZ−13粒子の回折スペクトルは、公知のCHA相に由来するピークと異なっている(例えば、特許文献1参照)。一方、焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子の回折スペクトルは、公知のCHA相に由来するピークとよく一致しており、他のピークは全く見られない。したがって、焼成後のSSZ−13粒子は、CHA型ゼオライトであることが分かる。これらの結果から、SAPO−34/SSZ−13粒子をCHA型ゼオライトとするためには、上述したように焼成を行う必要があることが分かる。
【0071】
焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子のSEM像を図12に示す。このSEM像から、平均サイズが約2〜5μmのSAPO−34/SSZ−13粒子が得られていることが分かる。
【0072】
焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子を、イオンミリング装置で割断した。割断による断面のSEM像およびEDX分析結果を、図13に示す。5本のスペクトルは、上側から順に、SAPO−34/SSZ−13粒子中のC、O、Al、Si、Pに対応している。
【0073】
断面の中央部にはSiが多く存在しているのに対し、Alはわずかに存在する程度であり、Pはほとんど存在していない。一方、断面の周縁部には、Al、Pが多く存在しているのに対し、Siはわずかに存在する程度である。これらの結果から、Siを主要成分とするSSZ−13が、中央に位置するコア部を構成し、Al、Pを主要成分とするSAPO−34が、コア部の周囲を覆うシェル部を構成していることが分かる。
【0074】
<実施例3:ケミカル処理>
実施例1−3の焼成後のSAPO−34粒子、焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子、実施例2の焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子を準備し、それぞれに含有されるAl、Pに対して、固体MASNMRによる分析を行った。分析結果を示す27AlNMR、31PNMRスペクトルを、図14(a)、(b)にそれぞれ示す。図14(a)がAlに対する分析結果を示し、図14(b)がPに対する分析結果を示している。また、図14(a)、(b)では、実施例1−3の焼成後のSAPO−34粒子のスペクトルを下段に、実施例1−3の焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子を中段に、実施例2の焼成後のSAPO−34/SSZ−13粒子を上段に示している。
【0075】
図14(a)、(b)のいずれにおいても、実施例1−3、2のSAPO−34/SSZ−13粒子のスペクトルは、実施例1−3のSAPO−34粒子のスペクトルと、ほぼ同じ形状をなしている。
【0076】
これらの結果から、シェル層を構成する粒子(ここではSAPO−34粒子)は、コア粒子を構成する粒子との複合粒子になった場合においても、アモルファスにならずに、SAPO−34の結晶として存在し、シェル層のAl、Pは結晶の構成成分となっていると考えられる。また、シェル層を構成する粒子中に多く分布するAl、Pは、焼成前に行う水熱処理の条件を変えた場合においても、アモルファスでなくSAPO−34の結晶の構成成分として存在していると考えられる。
【0077】
<実施例4:メカノケミカル処理>
別々に調製したコア粒子とシェア粒子とを機械的に複合化させる、メカノケミカル処理に関する実施例を提示する。
(実施例4−1)
([Al、B]SSZ−13粒子の調製)
【0078】
90mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、NaOH(約8mol/L、6.014mmol/g)を3.348g(20.0mmol)、鋳型であるTMAdaOH(Sachem社製、1.166mmol/g)を17.158g(20.0mmol)入れ、純水63.84gを加えて10分間攪拌し、無色透明溶液とした。
【0079】
次に、この溶液に、Al(OH)(Aldrich社製、Alとして50〜57wt%)を0.0476g(0.50mmol)、HBO(Wako、99.5%)を1.237g(20.0mmol)加えて60分間攪拌し、完全に溶かした。最後に、煙状シリカ(Cabot社製、Cab−O−Sil(登録商標)M5、純SiO)を6.011g(100mmol)加え、室温で3時間攪拌した。合成ゲルの原料モル組成が、1.0SiO−0.005Al(OH)−0.20HBO−0.20NaOH−0.20TMAdaOH−44HOになるように調製した(即ち、原料のSi/Al比を20とした)。
【0080】
調製したゲルを内容積125mLのテフロン(登録商標)内筒つきオートクレーブに移し、170℃のオーブン中で7日間静置した。得られた生成物をブフナーロートと濾紙(Advantec社製 #5)で吸引ろ過した。次いで、この濾過したものを、100℃オーブン中で16時間乾燥した後に粉砕し、SSZ−13結晶の白色粉末6.076gを得た。
【0081】
得られた結晶の粉末1.2046gを焼成皿に入れ、マッフル炉を用いて焼成を行った。焼成は、空気雰囲気下において、次の2つのステップを経て行った。1つ目のステップとして、6時間で室温から600℃まで昇温した。2つ目のステップとして、600℃で3時間保持した。最後に放冷し、鋳型を除去することにより、焼成体の結晶(白色粉末、1.2792g)を得た。
【0082】
得られた結晶のX線回折分析結果を、図15に示す。図15に示されているX線回折データは、公知例のCHA相に由来するピーク(例えば特許文献1)とよく一致しており、他のピークは全く見られない。この結果から、得られた結晶は純粋なCHA相であることがわかる。
【0083】
(実施例4−2)
([Al、B]SSZ−13粒子の調製)
容積250mLのポリプロピレン製容器に、NHNO(Wako、99.0%)を9.053g、純水225.10g入れ、撹拌して無色透明溶液とした。この溶液に、実施例4−1で得たSSZ−13焼成体4.510gを加え、軽く振り混ぜて懸濁させた後に、80℃のオーブン中で16時間静置した。放冷後、ブフナーロートと濾紙(Advantec社製 #5)で吸引ろ過して結晶を回収した。
【0084】
再び250mLポリプロピレン製容器にNHNO(Wako、99.0%)9.014g、純水225.24 gを入れて調製した無色透明溶液に、回収した結晶を加え、軽く振り混ぜて懸濁させた後に、80℃のオーブン中で20時間静置した。放冷後、ブフナーロートと濾紙(Advantec社製 #5)で吸引ろ過して結晶を回収した。
【0085】
再び250mLポリプロピレン製容器にNHNO(Wako、99.0%)9.041g、純水224.98gを入れて調製した無色透明溶液に、回収した結晶を加え、軽く振り混ぜて懸濁させた後に、80℃のオーブン中で16時間静置した。放冷後、ブフナーロートと濾紙(Advantec社製 #5)で吸引ろ過して結晶を回収し、100℃オーブン中で16時間乾燥した後、粉砕して白色粉末を得た。
【0086】
得られた粉末(アンモニウム型のSSZ−13の結晶)を焼成皿に入れ、マッフル炉を用いて焼成を行った。焼成は、空気雰囲気下において、次の4つのステップからなる昇温プログラムを用いて行った。1つ目のステップとして、30分間で室温から150℃まで昇温した。2つ目のステップとして、150℃で2時間保持した。3つ目のステップとして、4時間で150℃から600℃まで昇温した。4つ目のステップとして、600℃で10時間保持した。最後に放冷し、焼成でプロトン型にイオン交換されたSSZ−13の結晶(白色粉末、4.1634g)を得た。
【0087】
得られた結晶のSEM写真を図16に、X線回折分析結果を図17に示す。図17に示されているX線回折データは、公知例のCHA相に由来するピーク(例えば特許文献1)とよく一致しており、他のピークは全く見られない。この結果から、得られた結晶は、純粋なCHA相であることがわかる。
【0088】
(実施例4−3)
(SAPO−34の調製)
非特許文献2の開示内容に従い、以下の手順で、粒子径100nm以下の微粒子SAPO−34を合成した。
【0089】
90mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、HPO水溶液(Wako、85wt%)5.770g(50.0mmol)、純水14.000gを加えて、室温で10分間攪拌し、無色透明溶液とした。この溶液に、擬ベーマイト粉末AlO(OH)(Sasol社製、CATAPAL(登録商標)B、Alとして72wt%)3.542g(50.0mmol)を加えて、室温で30分間攪拌し、ゲルを調製した。
【0090】
100mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、コロイダルシリカ(日産化学工業社製、スノーテックス(登録商標)S、球状シリカ粒子のコロイド溶液、SiOとして30wt%、NaOを0.44wt%含有)を2.934g(15.0mmol)、鋳型であるTEAOH(Aldrich社製、35wt%)を18.936g(45.0mmol)入れて、室温で10分間攪拌し、溶液を調製した。
【0091】
撹拌しているゲルに対して調製した溶液を滴下し、室温で16時間撹拌した。その後、90℃で撹拌を続け、ゲルの粘度が上がってきたところで、フッ素樹脂製の棒で撹拌し、全体がドライゲルになるまで2時間乾燥と撹拌を続けた。これにより自然に白色粉末状のドライゲルが得られた。乾燥前の合成ゲルの原料モル組成が、0.30SiO−1.00AlO(OH)−1.00HPO−0.90TEAOH−33.5HOになるように調製した。
【0092】
調製したドライゲル14.913gをフッ素樹脂製カップ(内径36mm、高さ30mm)に移し、このフッ素樹脂製カップを、水(4.476g)の入った100mLオートクレーブ中に置いた。このオートクレーブを、180℃のオーブン中で24時間静置した。得られた生成物を遠心分離により単離した。遠心分離は、4000rpm×60分間を1セットとし、純水(100mL)による洗浄を含めて、合計2セット行った。次いで100℃オーブン中で15時間乾燥した後粉砕し、白色粉末3.7031gを得た。
【0093】
得られた結晶3.504gを焼成皿に入れ、マッフル炉を用いて焼成を行った。焼成は、空気雰囲気下において、次の2つのステップからなる昇温プログラムを用いて行った。1つ目のステップとして6時間で室温から600℃まで昇温した。2つ目のステップとして、600℃で3時間保持した。最後に放冷し、鋳型を除去することにより、焼成されたSAPO−34の結晶(白色粉末、3.115g)を得た。
【0094】
得られた結晶のSEM像を図18に、X線回折分析結果を図19に示す。図19に示されているX線回折データは、公知例のCHA相に由来するピーク(例えば特許文献2)とよく一致しており、他のピークは全く見られない。この結果から、得られた結晶は純粋なCHA相であることがわかる。
【0095】
(実施例4−4)
粒子複合化装置を用いた以下の手順で、SSZ−13の表面をSAPO−34で被覆したcore−shell型ゼオライト触媒を調製した。
【0096】
粒子複合化装置(ホソカワミクロン社製、NOB−MINI)に、実施例4−3の生成物(SAPO−34焼成体)1.200gを投入し、700rpmで1分間羽根を回転させた。続いて、実施例4−2と同様の手順で合成した生成物(プロトン型SSZ−13焼成体)12.007gを投入し、7000rpmで30分間羽根を回転させて粒子複合化処理を行なった。
【0097】
処理後、ゴムべらを用いて複合化処理した紛体12.279gを回収した。この紛体に対するX線回折分析結果およびSEM像を、図20および図21に示す。図20に示されているX線回折データは、公知例のCHA相に由来するピーク(例えば特許文献1)とよく一致しており、他のピークは全く見られない。この結果から、得られた結晶は純粋なCHA相であることがわかる。
【0098】
粒子複合化後のSAPO−34/SSZ−13粒子を、イオンミリング装置で割断した。割断による断面のSEM像およびEDX分析結果を、図22および図23に示す。5本のスペクトルは、上側から順に、SAPO−34/SSZ−13粒子中のC、O、Al、Si、Pに対応している。断面の中央部にはSiが多く存在しているのに対し、Alはわずかに存在する程度であり、Pはほとんど存在していない。一方、断面の周縁部には、Al、Pが多く存在しているのに対し、Siはわずかに存在する程度である。これらの結果から、Siを主要成分とするSSZ−13が、中央に位置するコア部を構成し、Al、Pを主要成分とするSAPO−34が、コア部の周囲を覆うシェル部を構成していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の触媒は、methanol−to−olefin(MTO)反応およびdimethyl ether−to−olefin(DTO)反応において、高い低級オレフィン選択性を示しつつ、耐久性にも優れる触媒として、利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
100、200 触媒
101、201 コア部
101a、201a SSZ−13からなる粒子(コア粒子)
102、202 シェル部
102a、202a シェル部の原料混合物ゲル
図2
図3
図5
図7
図10
図11
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図15
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図1
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