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特開2017-7187モールド成形品の製造方法及び製造装置及び光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-7187(P2017-7187A)
(43)【公開日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】モールド成形品の製造方法及び製造装置及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/40 20060101AFI20161216BHJP
   B29C 39/02 20060101ALI20161216BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20161216BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20161216BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
   B29C39/40
   B29C39/02
   B29C39/26
   H01L21/30 502D
   G02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-124124(P2015-124124)
(22)【出願日】2015年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠介
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号・株式会社リコー内
(72)【発明者】
【氏名】渡部 順
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号・株式会社リコー内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康弘
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号・株式会社リコー内
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
5F146
【Fターム(参考)】
4F202AA44
4F202AF01
4F202AG05
4F202AH73
4F202AM32
4F202CA01
4F202CB01
4F202CD05
4F202CK12
4F204AA44
4F204AF01
4F204AG05
4F204AH73
4F204AM32
4F204EA03
4F204EB01
4F204EF23
4F204EK18
4F204EK24
4F204EK25
5F146AA32
5F146AA34
(57)【要約】
【課題】転写後に成形品を上下のモールドからスムーズかつ所望の方向に安定して離型することが可能な成形品の製造方法、製造装置、光学素子を提供する。
【解決手段】所望のパターンが形成された一対のモールド4,5を用い、モールド4のパターンの外周にはモールド5のパターンよりも深い溝部4aが形成され、各モールド4,5間にエネルギ硬化性樹脂12を挟み込み、各モールド4,5間に挟み込んだ液状のエネルギ硬化性樹脂12にエネルギを付与してエネルギ硬化性樹脂12を硬化させるとき、エネルギ硬化性樹脂12と溝部4aとの界面でエネルギ硬化性樹脂12とモールド4との剥離を発生させ、この剥離に流体を侵入させてモールド4のパターン内側まで剥離を進行させ、成形品6をモールド4から離型させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のパターンが形成された一対のモールドを用い、一方の前記モールドの前記パターンの外周には他方の前記モールドの前記パターンよりも深い溝部が形成され、前記各モールド間にエネルギ硬化性樹脂を挟み込み、前記所望のパターンの反転形状を前記エネルギ硬化性樹脂に転写させるモールド成形品の製造方法であって、
前記各モールド間に挟み込んだ液状の前記エネルギ硬化性樹脂にエネルギを付与して該エネルギ硬化性樹脂を硬化させるとき、前記エネルギ硬化性樹脂と前記溝部との界面で前記エネルギ硬化性樹脂と一方の前記モールドとの剥離を発生させ、前記剥離に流体を侵入させて一方の前記モールドの前記パターン内側まで前記剥離を進行させ、成形品を一方の前記モールドから離型させるモールド成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のモールド成形品の製造方法において、
前記溝部により前記成形品の剛性を向上させるリブ形状が形成されることを特徴とするモールド成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のモールド成形品の製造方法において、
前記成形品が平板型のレンズであることを特徴とするモールド成形品の製造方法。
【請求項4】
第1のパターンを有する第1のモールドと、
第2のパターンと、前記第2のパターンの外周に前記第1のパターンよりも深く形成された溝部とを有し、前記第1のモールドに対して上下動する第2のモールドと、
エネルギを発生させるエネルギ発生手段とを備え、
前記第1のモールドと前記第2のモールドとの間にエネルギ硬化性樹脂を配置した後、前記第1のモールドと前記第2のモールドとの距離を相対的に縮めて前記第1のモールドと前記第2のモールドとで前記エネルギ硬化性樹脂を挟持し、この状態で前記エネルギ発生手段を作動させてエネルギを発生させることにより前記エネルギ硬化性樹脂を硬化させ、前記エネルギ硬化性樹脂と前記溝部との界面で前記エネルギ硬化性樹脂と前記第2のモールドとの剥離を発生させ、前記剥離に流体を侵入させて前記第2のモールドの前記第2のパターン内側まで前記剥離を進行させ、成形品を前記第2のモールドから離型させるモールド成形品の製造装置。
【請求項5】
請求項4記載のモールド成形品の製造装置によって製造される光学素子であって、
前記溝部により剛性を向上させるリブ形状が形成されることを特徴とする光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の微小なレンズを並べることにより構成されるマイクロレンズアレイが、例えば液晶パネルに適用されている。このようなマイクロレンズアレイを用いることにより、各レンズによって各画素に入射する光を集光することで光利用効率が向上し、表示画面を明るくすることができる。
【0003】
また近年では、携帯電話等の電子端末に小型で薄型の撮像ユニットが搭載されており、このような撮像ユニットのコストを低減させるため製造工程の簡略化が求められている。そこで、例えば面上に複数のレンズ(レンズアレイ)を同時形成し、切断して複数のレンズをそれぞれ分離させることでレンズモジュールを量産する方法が知られている。この方法により数百から数千個のレンズを一度に製作することができるため、量産効果が大きくコスト低減が図られる。
【0004】
このようなモールド成形品の製造方法としては、予め所望のレンズ反転形状等の転写パターンが形成された平板状の上モールド及び下モールドを用意し、各モールド間で液状の光硬化性または熱硬化性等のエネルギ硬化性の樹脂を挟み込み、転写パターンを樹脂に転写させる方法が知られている。また、ナノインプリントリソグラフィの分野における被転写基板からモールドを引き離す工程において、離型をスムーズに行い離型時間を短縮させる技術が知られている。これは、モールドのパターン形成領域の外側領域に、光硬化性樹脂との離脱を開始させる箇所を作るための離型形状を設けた技術である(例えば「特許文献1」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、今までのモールド成形品の製造方法では、モールド内の転写面が大きくなるに伴いモールドの転写面と樹脂接触面積とが大きくなるため、転写後にモールドから成形品を離型する際の離型抵抗が大きくなり、成形品にクラックや変形が生じてしまう。また、この離型抵抗は上下のモールドの転写パターンに応じて異なるため、成形品を所望の離型方向に安定して取り出すことができず、装置の連続稼働にも支障を来してしまうという問題点があった。
【0006】
「特許文献1」に開示された技術では、モールド上に離型を開始させる箇所を作成し離型をスムーズに行っている。しかし、基板上に保持された光硬化性樹脂に接触させたモールドを離型することを前提として、一つのモールド面内で離型を開始させる箇所を作成することで離型力を弱めようとしているに過ぎない。これにより、上下一組の平板状モールドによって得られる成形品の離型方向を安定制御して成形品を取り出すことはできず、装置の連続稼働にも支障を来してしまうという問題点は解消されない。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決し、転写後に成形品を上下のモールドからスムーズかつ所望の方向に安定して離型することが可能な成形品の製造方法、製造装置、光学素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所望のパターンが形成された一対のモールドを用い、一方の前記モールドの前記パターンの外周には他方の前記モールドの前記パターンよりも深い溝部が形成され、前記各モールド間にエネルギ硬化性樹脂を挟み込み、前記所望のパターンの反転形状を前記エネルギ硬化性樹脂に転写させるモールド成形品の製造方法であって、前記各モールド間に挟み込んだ液状の前記エネルギ硬化性樹脂にエネルギを付与して該エネルギ硬化性樹脂を硬化させるとき、前記エネルギ硬化性樹脂と前記溝部との界面で前記エネルギ硬化性樹脂と一方の前記モールドとの剥離を発生させ、前記剥離に流体を侵入させて一方の前記モールドの前記パターン内側まで前記剥離を進行させ、成形品を一方の前記モールドから離型させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エネルギ硬化性樹脂を硬化させるとき、硬化に伴うエネルギ硬化性樹脂の体積収縮量が溝部と接している部分において最大となることを利用し、両者の界面でエネルギ硬化性樹脂と一方のモールドとの剥離を発生させる。そして、この剥離部に外気を侵入させて一方のモールドのパターン内側まで剥離を進行させるので、一方のモールドから成形品を容易に離型させることができ、離型方向を制御することが可能となる。これにより、一組のモールドによって得られる成形品の離型方向を安定制御して取り出すことができ、支障を来すことなく装置の連続稼働を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来の技術を説明する概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態に用いられる各モールドを説明する概略図である。
図3】本発明の第1の実施形態に用いられる各モールド及び製造されるレンズアレイを説明する概略図である。
図4】本発明の一実施形態に用いられるレンズ成形装置の概略図である。
図5】本発明の一実施形態におけるレンズ成形方法を説明する概略図である。
図6】本発明の第1の実施形態における熱硬化性樹脂の挙動を説明する概略図である。
図7】本発明の第2の実施形態に用いられる各モールドを説明する概略図である。
図8】本発明の第2の実施形態に用いられる各モールド及び製造されるレンズアレイを説明する概略図である。
図9】本発明の第2の実施形態における熱硬化性樹脂の挙動を説明する概略図である。
図10】本発明の第3の実施形態に用いられるノズル及びエア供給元を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず始めに、「背景技術」の欄に記載した「特許文献1」の問題点について、図1を用いて説明する。この技術は、ナノインプリントリソグラフィであり、被転写と凹凸パターンとからなるモールドとの間に液体状の紫外線硬化性樹脂であるレジストを充填し、このレジストに向けてモールドを通して紫外線を照射することによりレジストを硬化させるものである。レジスト硬化後にモールドを被転写基板から離脱させると、被転写基板上にはパターンが転写されたレジストが残る。この技術では、モールド上に離型開始点を設けることでモールドを被転写基板から容易に離脱させることを目的としている。
【0012】
図1(A)には、従来の技術を構成する要素として、モールド1、基板2、レジスト3を模式的に示している。モールド1のレジスト3と接触する部分のうち、レジスト3に転写される凹凸形状のパターンが形成された領域をパターン領域1aとする。また、パターン領域1aの外周の少なくとも一部に形成された非パターン領域1bには、パターン領域1a内の凹部よりも深い離型形状である凹部1cが形成されている。
【0013】
図1(B)に示すように、モールド1を基板2上に配置されたレジスト3に接触させると、パターン領域1aの凹部及び非パターン領域1bの凹部1cにレジスト3が入り込む。凹部1c内では、ある程度上部の隙間を残してレジスト3が入り込む場合もある。この状態で、モールド1を介して紫外線が照射されるとレジスト3が硬化し、この硬化に伴いレジスト3では体積収縮が発生する。これにより、凹部1cとレジスト3との間では隙間が生じることとなる。一方、パターン領域1a内の凹部に充填されているレジスト3も同様に収縮するが、パターン領域1a内の凹部は凹部1cに比して大幅に体積が小さいため、レジスト3の収縮量が小さくレジスト3はほぼ忠実な形状を再現する。
【0014】
このように、非パターン領域1bに凹部1cを設けたことにより、硬化後のレジスト3とモールド1との間に隙間を形成することができ、この隙間を離型開始点としてモールド1とレジスト3とを容易に離型することができる。離型開始点の形成により、これがない場合に比して離型力が小さくてすみ、また短時間で離型を行うことができる。
【0015】
従来の技術では、エネルギ硬化性樹脂であるレジスト3が基板2上に塗布されており、硬化後のレジスト3は基板2上に固着していることを前提としている。すなわち、離型の方向は一方向に限られており、離型方向を制御するという概念はない。一方、常温において液状であるエネルギ硬化性樹脂を用いてモールド成形品を作製する方法が知られている。これは、予め所望のパターン反転形状が形成された上下一対のモールドを用意し、下側モールドに樹脂を塗布した後に上側モールドと樹脂とを密着させ(上下一対のモールドで樹脂を挟持し)、熱や光等のエネルギを付与する。これにより樹脂を硬化させると共に、樹脂にモールド形状を転写させる方法が一般的である。この方法では、モールドと硬化後の樹脂との密着力のバランスにより離型方向が不安定となるという問題点があり、上述した従来の技術ではこの問題点を解決することはできない。
【0016】
本発明は、上述した問題点に対し、転写後の成形品を一対のモールドからスムーズかつ所望の方向に安定して離型することを目的としている。以下、図面を用いて本発明の特徴部を説明する。なお、本発明はエネルギ硬化性樹脂全般に適用可能であるが、以下の実施形態ではエネルギ硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を用いた例を説明する。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態に用いられる、互いに円板状の上モールド4と下モールド5とを示している。各モールド4,5を用い、モールド成形品である光学素子として図3に示す片側鏡面のレンズアレイ6を成形する。一方のモールドであって第2のモールドである上モールド4は、所望のパターンである第2のパターン4bとしてレンズアレイ6の鏡面部6bを形成する。上モールド4の第2のパターン4bよりも外周側である成形品外周縁部に相当する部位には、第2のパターン4bよりも深く形成された溝部4aが設けられている。他方のモールドであって第1のモールドである下モールド5は、所望のパターンである第1のパターン5aとしてレンズアレイ6のレンズ面6cを形成する。
【0018】
図4は、本発明の第1の実施形態に用いられるモールド成形品の製造装置であるレンズ成形装置を示しており、レンズ成形装置17は上下2枚のダイプレート7,8を有している。各ダイプレート7,8の四隅にはタイバー9が配設されており、タイバー9を介して上ダイプレート7または下ダイプレート8の少なくとも一方が上下動可能(本形態では上ダイプレート7のみ可動)に構成されている。各ダイプレート7,8には、成形する樹脂を加熱するためのエネルギ発生手段であるヒータ10が設けられている。ヒータ10は、必ずしも各ダイプレート7,8に設けられている必要はなく、ヒータ10を有する加熱板等が各ダイプレート7,8に設けられていてもよい。エネルギ発生手段としてはヒータ10には限定されず、使用されるエネルギ硬化性樹脂に応じて熱媒体や赤外線、さらには紫外線等の発生手段を用いることも可能である。各ダイプレート7,8には、それぞれ上下の各モールド4,5が取り付けられる。また、レンズ成形装置17の外部には、下モールド5上の所望の位置にエネルギ硬化性樹脂である熱硬化性樹脂12を供給する樹脂供給装置11が配設されている。
【0019】
上述したレンズ成形装置17を用いたレンズアレイ6の製造方法を、図5を用いて以下に説明する。
先ず、樹脂供給装置11のノズルを各ダイプレート7,8間に移動させ、下モールド5上の所望の位置に液状の熱硬化性樹脂12を載置させる(図5(A)参照)。下モールド5上への熱硬化性樹脂12の載置完了後、樹脂供給装置11のノズルが各ダイプレート7,8間から外れる装置外部に退避する。次に上ダイプレート7を下降させ、上ダイプレート7に取り付けられた上モールド4を熱硬化性樹脂12に接触させる。各モールド4,5によって挟持された熱硬化性樹脂12は、各モールド4,5間の間隔が狭まるに連れて広がり、各モールド4,5間を充填していく(図5(B)参照)。
【0020】
次に、各ダイプレート7,8に配設された各ヒータ10に通電を行い、各モールド4,5間の温度を熱硬化性樹脂12のゲル化温度(樹脂の流動性がなくなり硬化が開始される温度)以上に昇温させ、熱硬化性樹脂12を硬化させる(図5(C)参照)。この状態から上ダイプレート7を上昇させると、上モールド4が硬化してレンズアレイ6となった熱硬化性樹脂12から離間し、レンズアレイ6が下モールド5上に載置された状態で成形される(図5(D)参照)。ここでレンズアレイ6には、図3に示すように、その鏡面部6bの外形縁部にリブ形状6aが転写形成され、端部が肉厚となって剛性が向上される。
【0021】
次に、図5(C)に示した熱硬化性樹脂12の硬化時、及び図5(D)に示したレンズアレイ6からの上モールド4の離型時における熱硬化性樹脂12の挙動について、図6を用いて説明する。
図5(C)に示す状態からヒータ10に通電すると、熱硬化性樹脂12は硬化するに伴いその体積が収縮する。一般的に樹脂の体積収縮は肉厚部分で大きいため、図6(A)における溝部4a及び第1のパターン5aと接している領域の熱硬化性樹脂12が収縮する。さらに、溝部4aの深さは第1のパターン5aの深さよりも深い。このため、溝部4aと接触している部分の熱硬化性樹脂12の収縮量が大きく、図6(B)に示すように上モールド4から熱硬化性樹脂12が硬化して形成されたレンズアレイ6が剥がれ、両者間に空隙が生じる。この空隙は外気と通じているため、離型を開始すると上モールド4とレンズアレイ6との間に外気が入り込んで離型が促進され、図6(C)に示すように上モールド4からレンズアレイ6が離型される。
【0022】
上述の構成によれば、熱硬化性樹脂12を硬化させるとき、硬化に伴う熱硬化性樹脂12の体積収縮量が溝部4aと接している部分において最大となることを利用し、両者の界面で熱硬化性樹脂12と上モールド4との剥離を発生させる。そして、この剥離部に外気を侵入させて上モールド4の第2のパターン4bの内側まで剥離を進行させるので、上モールド4からレンズアレイ6を容易に離型させることができ、離型方向を制御することが可能となる。これにより、一組のモールド4,5によって得られるレンズアレイ6の離型方向を安定制御して取り出すことができ、支障を来すことなく装置の連続稼働を行うことができる。上記実施形態では、溝部4aの形状として階段状に形成されたものを示したが、溝部の形状はこれに限定されず、例えば図6(D)に示す斜線状や図6(E)に示す円弧状のものを用いてもよい。
【0023】
図7は、本発明の第2の実施形態に用いられる、互いに円板状の上モールド13と下モールド14とを示している。各モールド13,14を用い、モールド成形品である光学素子として図8に示す両凸面のレンズアレイ15を成形する。一方のモールドであって第2のモールドである上モールド13は、所望のパターンである第2のパターン13aとしてレンズアレイ15の凸面部15aを形成する。他方のモールドであって第1のモールドである下モールド14は、所望のパターンである第1のパターン14aとしてレンズアレイ15の凸面部15cを形成する。また下モールド14は、上モールド13の第2のパターン13aの両端と対応する位置に鏡面部14bがそれぞれ設けられている。
【0024】
上述した各モールド13,14をレンズ成形装置17に取り付けてレンズアレイ15を製造したときの、熱硬化性樹脂12の硬化時及びレンズアレイ15からの上モールド13の離型時における熱硬化性樹脂12の挙動について、図9を用いて説明する。なお、レンズ成形装置17を用いたレンズアレイ15の製造は、図5に示した第1の実施形態と同様に行われる。
【0025】
各モールド13,14によって熱硬化性樹脂12を挟持して加熱を行うと、熱硬化性樹脂12の硬化に伴う熱硬化性樹脂12の体積収縮が生じる。このときの収縮量は肉厚部ほど大きいため、レンズ頂点付近において収縮量が大きくなり、鏡面部14bと対応するレンズアレイ15の鏡面部15b(図8参照)は収縮量が少なく、また密着力が高いために鏡面部14bに密着している(図9(A)参照)。この状態で上モールド13を上昇させると、上モールド13とレンズアレイ15との隙間に外気が入り込む(図9(B)参照)。このとき、鏡面部14bと対向する上モールド13の第2のパターン13aが溝部として機能する。上モールド13を完全に上昇させると、レンズアレイ15が上モールド13から完全に離型され、下モールド14上に残る(図9(C)参照)。
【0026】
上述の構成においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。この第2の実施形態では、レンズアレイ15の外周縁部における、レンズアレイ15の各モールド13,14からの剥がれ具合の違いがポイントであり、各モールドのうちの一方が鏡面仕上げの場合には、他方は鏡面に比して多少の凹凸が設けられていればよい。また、上下方向におけるレンズ部での大きさの違いは関係しない。なお、図9(E)に示すように上モールド13の端部が熱硬化性樹脂12に覆い被さるような態様では、上モールド13と熱硬化性樹脂12との界面に剥離部が生じない虞がある。そのため、本発明の作用効果を確実に発現させる場合には、図9(D)に示すように、上モールド13の端部が熱硬化性樹脂12に覆い被さることがないように構成することが望ましい。
【0027】
図10は、本発明の第3の実施形態を示している。この第3の実施形態は、第1または第2の実施形態において、さらにモールドとエネルギ硬化性樹脂との界面に生じた剥離部への外気の侵入を促進させる機構である。
【0028】
上モールド4とレンズアレイ6との界面に生じた剥離部である隙間に対して、ノズル16aからエアを噴出することにより噴出させたエアを隙間に侵入させ、上モールド4とレンズアレイ6との剥離を進行させて上モールド4からレンズアレイ6を離型させる。エア供給元16bは、製造装置の外部に設けられている。この実施形態によれば、上モールド4からレンズアレイ6を確実に離型させることができるので、レンズアレイ6の離型方向をさらに安定制御して取り出すことができ、装置の連続稼働の信頼性をさらに向上することができる。なお、ノズル16aから噴出するエアは、熱硬化性樹脂12の急冷による熱分布を回避するため温風であることが望ましい。
【0029】
第3の実施形態では、上モールドとモールド成形品との界面に生じた剥離部にエアを侵入させる構成を示したが、侵入させる流体はエアに限られず、窒素等の他の流体であってもよい。なお、第3の実施形態中におけるエアとは、通常は空気である。また、上述した各実施形態では、上モールドとモールド成形品とを剥離させる構成を示したが、下モールドとモールド成形品とを剥離させ、モールド成形品を上モールドに密着させる構成としてもよい。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上述した各実施形態ではエネルギ硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を示したが、エネルギ硬化性樹脂はこれに限られず、光、紫外線、熱等のエネルギ硬化性樹脂全般に適用可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
4,13 一方のモールド、第2のモールド(上モールド)
4a 溝部
4b,13a 第2のパターン
5,14 他方のモールド、第1のモールド(下モールド)
5a,14a 第1のパターン
6,15 モールド成形品である光学素子(レンズアレイ)
6a リブ形状
10 エネルギ発生手段(ヒータ)
12 エネルギ硬化性樹脂(熱硬化性樹脂)
17 モールド成形品の製造装置(レンズ成形装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2006−245072号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10