特開2017-75128(P2017-75128A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-75128異なる置換基を対面に4つずつ有するかご型シルセスキオキサン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-75128(P2017-75128A)
(43)【公開日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】異なる置換基を対面に4つずつ有するかご型シルセスキオキサン
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/21 20060101AFI20170331BHJP
【FI】
   C07F7/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-204578(P2015-204578)
(22)【出願日】2015年10月16日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
【住所又は居所】群馬県前橋市荒牧町四丁目2番地
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
【住所又は居所】東京都千代田区霞が関1−3−1
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183601
【弁理士】
【氏名又は名称】石丸 竜平
(72)【発明者】
【氏名】海野 雅史
【住所又は居所】群馬県前橋市荒牧町四丁目2番地 国立大学法人群馬大学内
(72)【発明者】
【氏名】江川 泰暢
【住所又は居所】群馬県前橋市荒牧町四丁目2番地 国立大学法人群馬大学内
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂
【住所又は居所】茨城県つくば市東1−1−1 国立研究開発法人産業技術総合研究所つくばセンター内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【住所又は居所】茨城県つくば市東1−1−1 国立研究開発法人産業技術総合研究所つくばセンター内
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP04
4H049VP08
4H049VQ88
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS87
4H049VU36
4H049VV03
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】異なる置換基を対面に4つずつ有するかご型シルセスキオキサンを製造することができるシルセスキオキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】下記式(B)で表される環状シロキサンと下記式(C)で表される環状シロキサンを縮合させることにより、異なる置換基を対面に4つずつ有するかご型シルセスキオキサンを効率良く製造することができる。

(式(B)、(C)、及び(D)中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜20の炭化水素基を、Aはアルカリ金属を表し、R同士及びR同士はそれぞれ同一の炭化水素基であることを、RとR間はそれぞれ異なる炭化水素基であることを表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(B)で表される環状シロキサンと下記式(C)で表される環状シロキサンを反応させて下記式(D)で表されるシルセスキオキサンを生成する縮合工程を含む、シルセスキオキサンの製造方法。
【化1】
(式(B)、(C)、及び(D)中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜20の炭化水素基を、Aはアルカリ金属を表し、R同士及びR同士はそれぞれ同一の炭化水素基であることを、RとR間はそれぞれ異なる炭化水素基であることを表す。)
【請求項2】
下記式(A)で表される環状シロキサンと三フッ化ホウ素を反応させて下記式(B)で表される環状シロキサンを生成するフッ素化工程を含む、請求項1に記載のシルセスキオキサンの製造方法。
【化2】
(式(A)及び(B)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士は同一の炭化水素基であることを表す。)
【請求項3】
下記式(D’)で表されるシルセスキオキサン。
【化3】
(式(D’)中、R及びRはそれぞれ酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は炭素数0〜6のシリル基を表し、R同士及びR同士はそれぞれ同一の置換基であることを、RとR間はそれぞれ異なる置換基であることを表す。)
【請求項4】
下記式(A)で表される環状シロキサンと三フッ化ホウ素を反応させて下記式(B)で
表される環状シロキサンを生成するフッ素化工程を含む、環状シロキサン(B)の製造方法。
【化4】
(式(A)及び(B)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士は同一の炭化水素基であることを表す。)
【請求項5】
下記式(B)で表される環状シロキサン。
【化5】
(式(B)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士は同一の炭化水素基であることを表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご型シルセスキオキサンとその製造方法に関し、より詳しくは異なる置換基を対面に4つずつ有するかご型シルセスキオキサンとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造が規制されたケイ素化合物は、高い物性が要求される材料用途への応用が期待されており、近年、その合成が盛んに研究されている。特にかご型のシルセスキオキサンは、その特異的な構造から高い耐熱性、耐酸化性、耐候性が見込まれており、様々な機能性材料、特に有機−無機ハイブリット材料の基幹化合物として注目を浴びている。
かご型のシルセスキオキサンの合成については、数多くの報告があり、環状シラノールからの合成も可能で(例えば、非特許文献1〜4参照)、これまでに様々な有機基が導入されたかご型シルセスキオキサンが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M. Unno et al., Chem. Lett. 1998, 489.
【非特許文献2】M. Unno et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 2000, 73, 215.
【非特許文献3】S. Tateyama et al., J. Organomet. Chem. 2010, 695, 898.
【非特許文献4】H. Seki et al., J. Organomet. Chem. 2010, 695, 1363.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かご型シルセスキオキサンの中でも異なる置換基を対面に4つずつ有するものは、ヤヌスキューブと呼ばれ、シランカップリング剤に耐熱性を付与できるなど、その応用が非常に期待されている。しかしながら、かご型シルセスキオキサンに複数種類の置換基を導入すること、特にその位置関係を制御することは極めて困難であると言える。
本発明は、異なる置換基を対面に4つずつ有するかご型シルセスキオキサンを製造することができるシルセスキオキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、「all−cis」型のフッ素化された環状シロキサンと、「all−cis」型の環状シロキサン塩を縮合させることにより、異なる置換基を対面に4つずつ有するかご型シルセスキオキサンを効率良く製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記式(B)で表される環状シロキサンと下記式(C)で表される環状シロキサ
ンを反応させて下記式(D)で表されるシルセスキオキサンを生成する縮合工程を含む、シルセスキオキサンの製造方法。
【化1】
(式(B)、(C)、及び(D)中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜20の炭化水素基を、Aはアルカリ金属を表し、R同士及びR同士はそれぞれ同一の炭化水素基であることを、RとR間はそれぞれ異なる炭化水素基であることを表す。)
<2> 下記式(A)で表される環状シロキサンと三フッ化ホウ素を反応させて下記式(
B)で表される環状シロキサンを生成するフッ素化工程を含む、<1>に記載のシルセスキオキサンの製造方法。
【化2】
(式(A)及び(B)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士は同一の炭化水素基であることを表す。)
<3> 下記式(D’)で表されるシルセスキオキサン。
【化3】
(式(D’)中、R及びRはそれぞれ酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は炭素数0〜6のシリル基を表し、R同士及びR同士はそれぞれ同一の置換基であることを、RとR間はそれぞれ異なる置換基であることを表す。)
<4> 下記式(A)で表される環状シロキサンと三フッ化ホウ素を反応させて下記式(
B)で表される環状シロキサンを生成するフッ素化工程を含む、環状シロキサン(B)の製造方法。
【化4】
(式(A)及び(B)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士は同一の炭化水素基であることを表す。)
<5> 下記式(B)で表される環状シロキサン。
【化5】
(式(B)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士は同一の炭化水素基であることを表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異なる置換基を対面に4つずつ有するかご型シルセスキオキサンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0009】
<シルセスキオキサンの製造方法>
本発明の一態様であるシルセスキオキサンの製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、下記式(B)で表される環状シロキサンと下記式(C)で表される環状シロキサンを反応させて下記式(D)で表されるシルセスキオキサンを生成する縮合工程(以下、「縮合工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
【化6】
(式(B)、(C)、及び(D)中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜20の炭化水素基を、Aはアルカリ金属を表し、R同士及びR同士はそれぞれ同一の炭化水素基であることを、RとR間はそれぞれ異なる炭化水素基であることを表す。)
前述のように、かご型シルセスキオキサンに複数種類の置換基を導入すること、特にその位置関係を制御することは極めて困難であった。本発明者らは、式(B)で表される「all−cis」型のフッ素化された環状シロキサンと、式(C)で表される「all−cis」型の環状シロキサン塩を縮合させることにより、異なる置換基を対面に4つずつ
有するかご型シルセスキオキサンを効率良く製造することができることを見出したのである。
以下、「式(B)で表される環状シロキサン」、「式(C)で表される環状シロキサン」、縮合工程の条件等について、詳細に説明する。
【0010】
式(B)で表される環状シロキサンのRは、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士は同一の炭化水素基であることを表しているが、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよいものとする(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
の炭化水素基の炭素数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、好ましくは8以下である。
としては、メチル基(−CH)、エチル基(−C)、ビニル基(−CH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、n−プロピル基(−)、i−プロピル基(−)、n−ブチル基(−)、t−ブチル基(−)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13)、c−ヘキシル基(−11)、フェニル基(−C)、ナフチル基(−C10)等が挙げられる。
【0011】
式(C)で表される環状シロキサンのRは、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士はそれぞれ同一の炭化水素基であることを、RとR間はそれぞれ異なる炭化水素基であることを表しているが、「炭化水素基」はRの場合と同義である。また、Aのアルカリ金属として、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
の炭化水素基の炭素数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、好ましくは8以下である。
としては、メチル基(−CH)、エチル基(−C)、ビニル基(−CH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、n−プロピル基(−)、i−プロピル基(−)、n−ブチル基(−)、t−ブチル基(−)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13)、c−ヘキシル基(−11)、フェニル基(−C)、ナフチル基(−C10)等が挙げられる。
【0012】
とRの組合せとしては、メチル基(−CH)とフェニル基(−C)、エチル基(−C)とフェニル基(−C)、ビニル基(−CH=CH)とフェニル基(−C)、エチニル基(−C≡CH)とフェニル基(−C)、n−プロピル基(−)とフェニル基(−C)、i−プロピル基(−)とフェニル基(−C)、t−ブチル基(−)とフェニル基(−C)等が挙げられる。後述するが、RとRの一方がフェニル基であると、フェニル基をクロロ基(−Cl)に置換できるため、様々な官能基を導入することが可能となる。
【0013】
式(C)で表される環状シロキサンは、例えば下記式(i)で表されるようなトリアルコキシ(アルキル)シラン等の縮合反応によって製造することができる。
【化7】
なお、式(i)で表される反応の詳細については、O. I. Shchegolikhinaet al.,Inorg. Chem., 2002, 41, 6892、R. Ito et al., Chem. Lett., 2009, 38, 364、Y. A. Pozdnyakova et al., Inorg. Chem., 2010, 49, 572等を参照することができる。
【0014】
縮合工程における式(C)で表される環状シロキサンの使用量は、式(B)で表される環状シロキサンに対して物質量換算で、通常1倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上であり、通常10倍以下、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下である。上記範囲内であれば、かご型シルセスキオキサンをより効率良く製造することができる。
【0015】
縮合工程は、溶媒を使用することが好ましい。また、溶媒の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的にはヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。この中でもハロゲン系溶媒が好ましい。なお、溶媒の沸点は、通常25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下である。上記範囲内であれば、還流によって好ましい反応温度を維持することができる。
【0016】
縮合工程の反応温度は、通常25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下である。
縮合工程の反応時間は、通常10時間以上、好ましくは1日以上、より好ましくは3日以上であり、通常10日以下、好ましくは7日以下、より好ましくは5日以下である。
縮合工程は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
なお、上記範囲内であれば、かご型シルセスキオキサンをより効率良く製造することができる。
【0017】
本発明の製造方法は、前述の縮合工程を含むものであれば、その他は特に限定されないが、下記式(A)で表される環状シロキサンと三フッ化ホウ素を反応させて下記式(B)で表される環状シロキサンを生成するフッ素化工程(以下、「フッ素化工程」と略す場合がある。)を含み、生成した式(B)で表される環状シロキサンを縮合工程に利用することが好ましい。
【化8】
(式(A)及び(B)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士は同一の炭化水素基であることを表す。)
以下、以下、「式(A)で表される環状シロキサン」、フッ素化工程の条件等について、詳細に説明する。
【0018】
式(A)で表される環状シロキサンは、例えば下記式(ii)又は(iii)で表されるようなトリクロロ(アルキル)シランやトリアルコキシ(アルキル)シラン等の縮合反応によって製造することができる。
【化9】
【化10】
なお、式(ii)で表される反応の詳細については、J. F. Brown et al., J. Am. Chem. Soc., 1965, 87, 4317、J. F. Brown, Jr. et al., J. Am. Chem. Soc., 1965, 87, 4313、F. J. Feher et al., Main Group Chem., 1997, 2, 123、M. Unno et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 2000, 73, 215等を参照することができ、式(iii)で表される反応
の詳細については、O. I. Shchegolikhina et al., Inorg. Chem., 2002, 41, 6892、R. Ito et al., Chem. Lett., 2009, 38, 364、Y. A. Pozdnyakovaet al.,Inorg. Chem., 2010, 49, 572等を参照することができる。
【0019】
フッ素化工程は、式(A)で表される環状シロキサンと三フッ化ホウ素を反応させる工程であるが、三フッ化ホウ素はジエチルエーテル等のルイス塩基と錯体を形成したものであってもよい。
フッ素化工程における三フッ化ホウ素の使用量は、式(A)で表される環状シロキサンに対して物質量換算で、通常1倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上であり、通常50倍以下、好ましくは25倍以下、より好ましくは15倍以下である。上記範囲内であれば、式(B)で表される環状シロキサンをより効率良く生成することができる。
【0020】
フッ素化工程は、溶媒を使用することが好ましい。また、溶媒の種類は特に限定されず
、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的にはヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。この中でも炭化水素系溶媒が好ましい。
【0021】
フッ素化工程の反応温度は、通常−20℃以上、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下である。
フッ素化工程の反応時間は、通常1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、通常2時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下である。
フッ素化工程は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
なお、上記範囲内であれば、式(B)で表される環状シロキサンをより効率良く生成することができる。
【0022】
<シルセスキオキサン>
本発明の製造方法によって、異なる置換基を対面に4つずつ有するかご型シルセスキオキサンを効率良く製造することができることを前述したが、本発明の製造方法を利用して製造することができる下記式(D’)で表されるシルセスキオキサンも本発明に一態様である。
【化11】
(式(D’)中、R及びRはそれぞれ酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は炭素数0〜6のシリル基を表し、R同士及びR同士はそれぞれ同一の置換基であることを、RとR間はそれぞれ異なる置換基であることを表す。)
以下、「式(D’)で表されるシルセスキオキサン」について、詳細に説明する。
【0023】
式(D’)で表されるシルセスキオキサンのRは、酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は炭素数0〜6のシリル基を表し、R同士は同一の置換基であることを表しているが、「炭化水素基」はRの場合と同義であり、「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、ヒドロキシル基(−OH)、エポキシ基、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)等の酸素原子又はハロゲン原子を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)等の酸素原子又はハロゲン原子を含む連結基を炭素骨格の内部又は末端に含んでいてもよいことを意味する。また、「炭素数0〜6のシリル基」とは、例えばトリヒドロシリル基(−SiH)等の炭素数が0のシリル基、トリメチルシリル基(−Si(CH)等の炭素数が3のシリル基、t−ブチルジメチル
シリル基(−Si()(CH)等の炭素数が6のシリル基等を意味するものとする。
本発明の製造方法では、例えばフェニル基を有するシルセスキオキサンを製造することができるが、下記式に示されるように、フェニル基は塩化水素等との反応によって容易にクロロ基に置換することができる。ケイ素原子に結合したクロロ基(Si−Cl)は非常に活性であるため、これを利用してシルセスキオキサンに様々な官能基を導入することができるのである。なお、新たな炭化水素基を導入する場合にはグリニャール試薬等の有機金属試薬と反応させる方法が、水素原子を導入する場合には水素化ホウ素ナトリウム等のヒドリド還元剤と反応させる方法が、ヒドロキシル基を導入する場合には加水分解する方法が、シリル基を導入する場合にはシリルリチウム等の試剤と反応させる方法等が挙げられる。
【化12】
が炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、好ましくは8以下である。
としては、メチル基(−CH)、エチル基(−C)、ビニル基(−CH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、n−プロピル基(−)、i−プロピル基(−)、n−ブチル基(−)、t−ブチル基(−)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13)、c−ヘキシル基(−11)、フェニル基(−C)、ナフチル基(−C10)、メトキシ基(−OCH)、エトキシ基(−OC)、n−プロポキシ基(−O)、i−プロポキシ基(−O)、n−ブトキシ基(−O)、t−ブトキシ基(−O)、フェノキシ基(−OC)、グリシジル基、水素原子(−H)、フルオロ原子(−F)、クロロ原子(−Cl)、ブロモ原子(−Br)、ヒドロキシル基(―OH)、トリメチルシリル基(−Si(CH)、t−ブチルジメチルシリル基(−Si()(CH)等が挙げられる。
【0024】
式(D’)で表されるシルセスキオキサンのRは、酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は炭素数0〜6のシリル基を表し、R同士はそれぞれ同一の置換基であることを、RとR間はそれぞれ異なる置換基であることを表しているが、「炭化水素基」等はRの場合と同義である。
が炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、好ましくは8以下である。
としては、メチル基(−CH)、エチル基(−C)、ビニル基(−CH=CH)、エチニル基(−C≡CH)、n−プロピル基(−)、i−プロピル基(−)、n−ブチル基(−)、t−ブチル基(−)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13)、c−ヘキシル基(−11)、フェニル基(−C)、ナフチル基(−C10)、メトキシ基(−OCH)、エトキシ基(−OC)、n−プロポキシ基(−O)、i−プロポキシ基(−O)、n−ブトキシ基(−O)、t−ブトキシ基(−O)、フェノキシ基(−OC)、グリシジル基、水素原
子(−H)、フルオロ原子(−F)、クロロ原子(−Cl)、ブロモ原子(−Br)、ヒドロキシル基(―OH)、トリメチルシリル基(−Si(CH)、t−ブチルジメチルシリル基(−Si()(CH)等が挙げられる。
【0025】
<環状シロキサン・環状シロキサンの製造方法>
前述のフッ素化工程によって、式(B)で表される環状シロキサンを生成することができることを前述したが、フッ素化工程、即ち下記式(A)で表される環状シロキサンと三フッ化ホウ素を反応させて下記式(B)で表される環状シロキサンを生成する工程を含む環状シロキサンの製造方法及びこの製造方法を利用して製造される式(B)で表される環状シロキサンも本発明に一態様である。
【化13】
(式(A)及び(B)中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R同士は同一の炭化水素基であることを表す。)
【実施例】
【0026】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0027】
<実施例1:1,3,5,7−テトラフルオロ−1,3,5,7−テトライソブチルシクロテトラシロキサンの合成>
【化14】
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.8mL,63mmol)を、all−cis−1,3,5,7−テトラヒドロキシ−1,3,5,7−テトライソブチルシクロテトラシロキサン(3.0g,6.3mmol)のヘキサン(30mL)溶液の中に加えた結果、ヘキサン溶液の下部にすぐに黄色層が現れた。10分後、ヘキサンとベンゼンの混合液を加え、上部の層を5回抽出した。この溶液から溶媒を留去し、減圧下で乾燥させて、粗生成物として無色の油分(3.2g)を、さらにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC,CHCl)で精製して、無色の油分(1.7g,3.5mmol,53%)を得た。1H NMR (600.17 MHz, CDCl3): δ 0.73 (dd, JH-H = 6.8 Hz, JH-F= 3.9 Hz, 8H), 0.97 (JH-H= 6.8 Hz, 24H), 1.87 Hz (JH-H= 6.8 Hz, 4H) ppm. 13C NMR (75.57 MHz, CDCl3):
δ 20.73 (d, JC-F = 22 Hz, CH2), 23.48 (CH), 25.46 (CH3) ppm. 19F NMR (564.72 MHz, CDCl3): δ -128.95 ppm. 29Si NMR (59.71 MHz, CDCl3): δ -62.87 (d, JSi-F = 272 Hz) ppm. IR (KBr): 900, 1122, 1232, 1369, 2956 cm-1. DIMS (EI, 30eV): m/z (%) 423 ([M-Bui]+, 90). Anal. Calcd for C16H36F4O4Si4: C, 39.97; H, 7.55. Found: C
, 39.58; H, 7.69.
【0028】
<実施例2:1,3,5,7−テトラフルオロ−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの合成>
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(6.7mL,54mmol)を、all−cis−1,3,5,7−テトラヒドロキシ−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン(3.0g,5.4mmol)のヘキサン(30mL)溶液の中に加えた結果、ヘキサン溶液の下部にすぐに白色層が現れた。10分後、ヘキサンとベンゼンの混合液を加え、上部の層を5回抽出した。この溶液から溶媒を留去し、減圧下で乾燥させて、粗生成物として無色の油分(0.96g)を、さらにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC,CHCl)で精製して、無色の油分(0.61g,1.1mmol,20%)を得た。
1H NMR (399.78 MHz, CDCl3): δ 7.32 (t, JH-H = 7.6 Hz, 8H), 7.44-7.49 (m, 4H), 7.52-7.54 (m, 8H) ppm. 13C NMR (75.57 MHz, CDCl3): δ 77.37 (d, JC-F = 26 Hz, C),
128.25 (CH), 131.95 (CH), 134.11 (CH) ppm. 19F NMR (376.17 MHz, CDCl3): δ -133.45 (s, JF-Si= 255 Hz) ppm. 29Si NMR (59.71 MHz, CDCl3): δ -74.71 (d, JSi-F = 255 Hz) ppm. IR (KBr): 696, 741, 889, 1140, 1431, 1595, 3076 cm-1. DIMS (EI, 30eV): m/z (%) 560 ([M]+, 50). Anal. Calcd for C24H20F4O4Si4: C, 51.41; H, 3.59. Found: C, 51.44; H, 3.93.
【0029】
<実施例3:ヤヌスキューブの合成>
【化15】
1,3,5,7−テトラフェニルシクロシロキサンナトリウム塩(4.91g,7.66mmol)のクロロホルム懸濁液(50mL)に1,3,5,7−テトラフルオロ−1,3,5,7−テトライソブチルテトラシクロシロキサン(7.37g)を加え、4日間加熱還流した。溶媒をロータリーエバポレーターにて除いたのち、クロロホルムにて抽出をし、脱塩処理を行った。その後、中圧分取液体カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン展開溶媒)、分取型サイズ排除型液体カラムクロマトグラフィー(クロロホルム)、薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン=1/2)で精製することにより目的物を17mg得た。
1H-NMR (600.17 MHz, CDCl3): δ 0.71 (d, J = 7.2 Hz, 8H), 0.97 (d, J = 6.6 Hz, 24H), 1.91 (m, J = 7.2 Hz, 4H), 7.32 (t, J = 7.2 Hz, 8H), 7.40 (m, 4H), 7.67 (m, 8H) ppm. 29Si-NMR (119.24 MHz, CDCl3): δ -66.96, -79.14 ppm. DIMS (EI, 30eV): m/z (%) 895 ([M-i-Bu]+, 25).
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の製造方法によって得られるシルセスキオキサンは、シロキサン又はシルセスキオキサンを骨格とするシランカップリング剤、シリコーン製品として利用することができる。