特開2017-77476(P2017-77476A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-77476クレアチニン吸着ファイバー及びクレアチニン吸着ファイバーの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-77476(P2017-77476A)
(43)【公開日】2017年4月27日
(54)【発明の名称】クレアチニン吸着ファイバー及びクレアチニン吸着ファイバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20170407BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20170407BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20170407BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20170407BHJP
【FI】
   A61M1/16 101
   B01J20/18 B
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-218324(P2016-218324)
(22)【出願日】2016年11月8日
(62)【分割の表示】特願2015-534195(P2015-534195)の分割
【原出願日】2014年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-174636(P2013-174636)
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】荏原 充宏
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(72)【発明者】
【氏名】滑川 亘希
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(72)【発明者】
【氏名】青柳 隆夫
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
【テーマコード(参考)】
4C077
4G066
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB02
4C077BB03
4C077CC06
4C077EE01
4C077KK11
4C077LL05
4C077MM07
4C077NN20
4C077PP09
4C077PP10
4C077PP24
4G066AA61B
4G066AC12C
4G066AC13B
4G066AC17B
4G066BA03
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA36
4G066CA27
4G066DA07
4G066DA12
4G066FA03
4G066FA37
4G066FA38
4G066FA40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーを容易に、短時間で製造する。
【解決手段】水に不溶なポリマーからなり、SiO及びAlを含む粒子102が取り込まれているナノファイバー101であり、粒子にクレアチニンの少なくとも一部を保持可能な大きさの細孔が設けられているクレアチニン吸着ファイバーとする。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に不溶なポリマーからなり、SiO及びAlを含む粒子が取り込まれているナノファイバーであり、
前記粒子にクレアチニンの少なくとも一部を保持可能な大きさの細孔が設けられているクレアチニン吸着ファイバー。
【請求項2】
前記粒子のSi0/Alモル比が18以上240以下である、請求項1に記載のクレアチニン吸着ファイバー。
【請求項3】
前記粒子がゼオライト又はゼオライト複合体である、請求項1または2に記載のクレアチニン吸着ファイバー。
【請求項4】
前記粒子が最大径5μm以下の粒子である、請求項1〜3の何れか1項に記載のクレアチニン吸着ファイバー。
【請求項5】
前記ポリマーがエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVAL)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択されるいずれかである、請求項1〜4の何れか1項に記載のクレアチニン吸着ファイバー。
【請求項6】
前記ナノファイパーの径が100nm以上1000nm以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載のクレアチニン吸着ファイバー。
【請求項7】
親水性ポリマーと、Si0及びA1を含み、クレアチニンの少なくとも一部を保持可能な細孔が設けられた粒子とを溶媒に分散させて、粒子と親水性ポリマーとの分散液を調製する工程と、
エレクトロスピニング法により前記分散液から紡糸して請求項1〜6の何れか1項に記載のクレアチニン吸着ファイバーを得る工程とを設けた、クレアチニン吸着ファイバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレアチニン吸着ファイバー及びクレアチニン吸着ファイバーの製造方法に関する。本願は、2013年8月26日に、日本に出願された特願2013−174636号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
2011年現在、日本国内で、慢性の腎不全患者は30万人を超えている(非特許文献1)。そのうち腎移植を受けことができる患者は全体の数%未満にすぎず、ほとんどの腎不全患者は血液透析を始めとする血液浄化法により延命している。
【0003】
血液透析は、患者一人あたり120L以上の大量の水や、装置を稼働可能とする電気を必要とする。このため、血液透析は、水道・電気のインフラの完備が必要とされる。
さらに、透析患者にとって、血液透析に係る通院回数(週3回)や処置時間(1回4時間)等の負担は非常に重く、交通インフラが万全でないと、上記の通院回数・処置時間で通院できず、透析治療を行うことができないという問題が発生する。また、ライフラインが寸断された緊急時にも、同様の問題が発生する。
【0004】
腎不全患者に対する上記透析治療が十分でないと、急性尿毒症を発症させる。急性尿毒症は体内からの尿毒素や過剰水分を速やかに除去することにより、応急処置できる。しかし、急性尿毒症に対するこれまでの治療法は、拡散・濾過を主な原理とするため、インフラ等が万全でない環境下においては、応急処置が困難であった。
【0005】
また、直接血液灌流法や血漿吸着で用いられる吸着カラムは、選択的に病因物質を除去でき、置換液や透析液が不要である。しかし、吸着カラムは、血液への刺激が大きく抗凝固剤が避けられないという問題があった。
これらの問題は、透析患者の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:quality of life:QOL)を大きく低下させている。
【0006】
このような状況を踏まえ、インフラ等が万全でない環境下においても使用可能な、血液適合性に優れた新規医用材料の開発が望まれている。
【0007】
なお、EVALファイバーが血液適合性(血液細胞非活性化(非特許文献2)、凝固系非活性化(非特許文献3))に優れていることは報告がある。
また、尿毒素は100種類程度存在するが、これらの尿毒素のうちクレアチニンは、通常の人間の血液中には100μM未満の濃度である。しかし、透析患者の場合、クレアチニンの血液中濃度は1200μM程度となる場合があり、特に、クレアチニンを速やかに除去することが必要とされている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】中井 滋 他:日本透析医学会雑誌 2013、46、1
【非特許文献2】Bonomini M.et al,Nephron、1997 75,402
【非特許文献3】Pertosa G.et al,J.Am.Soc.Nephrol.2005,16,2477−2486
【非特許文献4】ANHOLDER R.et al,Kidney International,Vol.63(2003),pp.1934−1943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れた血液浄化用膜、血液浄化用膜の製造方法及び透析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、クレアチニン吸着ファイバーは、水に不溶なポリマーからなり、SiO及びAlを含む粒子が取り込まれているナノファイバーであり、前記粒子にクレアチニンの少なくとも一部を保持可能な大きさの細孔が設けられている。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、前記第1の態様に係るクレアチニン吸着ファイバーにおいて、前記粒子のSiO/Alモル比が18以上240以下であってもよい。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、前記第1又は第2の態様に係るクレアチニン吸着ファイバーにおいて、前記粒子がゼオライト又はゼオライト複合体であってもよい。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、前記第1から第3のいずれかの態様に係るクレアチニン吸着ファイバーにおいて、前記粒子が最大径5μm以下の粒子であってもよい。
【0014】
本発明の第5の態様によれば、前記第1から第4のいずれかの態様に係るクレアチニン吸着ファイバーにおいて、前記ポリマーがエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVAL)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)の群から選択されるいずれかであってもよい。
【0015】
本発明の第6の態様によれば、前記第1から第5のいずれかの態様に係るクレアチニン吸着ファイバーにおいて、前記ナノファイバーの径が100nm以上1000nm以下であってもよい。
【0016】
本発明の第7の態様によれば、クレアチニン吸着ファイバーの製造方法は、親水性ポリマーと、SiO及びAlを含み、クレアチニンの少なくとも一部を保持可能な細孔が設けられた粒子とを溶媒に分散させて、粒子と親水性ポリマーとの分散液を調製する工程と、エレクトロスピニング法により前記分散液から紡糸して前記第1から第6のいずれかの態様のクレアチニン吸着ファイバーを得る工程とを設けた。
【発明の効果】
【0017】
上記血液浄化用膜によれば、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーとすることができる。
【0018】
上記血液浄化用膜の製造方法によれば、尿毒素を速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーを容易に、短時間で製造することができる。
【0019】
上記透析装置によれば、前記複数の細筒内に血液を流通させることにより、尿毒素を速やかに吸着させ、大量の水を必要とせず、体内から尿毒素を除去することができる。そのため、インフラが整備されていない過疎地や、ライフラインが寸断された非常時においても、急性尿毒症の応急処置に利用できる。
上記透析装置によれば、更に、水を筒の内表面と細筒の外表面との隙間に流通させ、複数の細筒内に血液を流通させることにより、尿毒素を速やかに吸着させて、体内から尿毒素を除去することができる。そのため、上記透析装置は急性尿毒症の処置に利用できる。
【0020】
上記透析装置は、尿毒素を速やかに吸着し、大量の水を必要とせず、体内から尿毒素を除去することができる。そのため、上記透析装置は、インフラが整備されていない過疎地や、ライフラインが寸断された非常時においても、急性尿毒症の応急処置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係る透析装置の一例を示す概略図である。
図2A図1のA−A’線における断面図である。
図2B図2AにおけるB部の拡大図である。
図2C図2BにおけるC部の拡大図である。
図3】ゼオライト(Beta−type)であるHSZ−940HOAの部分構造拡大図である。
図4】クレアチニンの一部を孔内に安定保持する状態の一例を示す図である。
図5】エレクトロスピニング法により、本発明の実施形態に係る血液浄化用膜を製造する方法の一例を示す概略図である。
図6】本願の第1の実施形態に係る透析装置の使用形態の一例を示す模式図である。
図7A図6に示す使用形態における透析装置11の中心部分の斜視透過図である。
図7B図7AのD部の軸線方向に沿う断面の拡大図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る透析装置を示す概略図である。
図9A図8のH−H’線における断面図である。
図9B図8AにおけるI部の拡大図である。
図10A】本発明の第3の実施形態に係る透析装置の概略を示す正面図である。
図10B図10AのJ−J’線における断面の拡大図である。
図11】8種のゼオライト粒子(試験例1−1〜1−8)のクレアチニン吸着性評価結果を示すグラフである。
図12】分散液の条件と生成ファイバー径との関係を示すグラフである。
図13】実施例1−1のファイバー(膜)のSEM像である。
図14】比較例1−3のファイバー(膜)のSEM像である。
図15】実施例1のファイバー(膜)と比較例1−3のファイバー(膜)のクレアチニン吸着性評価結果を示すグラフである。
図16】クレアチニンの吸着性評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者は、上記事情を鑑みて、孔径がクレアチニンの大きさに適合し、かつ、SiO/Alモル比が18以上240以下であるゼオライトが、細孔内にクレアチニンを選択的に吸着可能であること、平均径800nm程度の、血液適合性に優れるEVALファイバーがモルフォロジと機械的強度の点で最適であることを見出した。そして、EVALファイバーに上記ゼオライトを固定した複合膜が、大量の水を必要とせず、体内から尿毒素を除去することができることを見出した。さらに、インフラが整備されていない過疎地や、ライフラインが寸断された非常時においても、クレアチニンを吸着除去して、急性尿毒症の応急処置に利用できる新規医用材料になりえる可能性があることを見出して、本発明を完成した。本発明は、以下の構成を有する。
【0023】
(第1の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態である血液浄化用膜、その製造方法及び透析装置について説明する。
【0024】
<透析装置>
まず、第1の実施形態に係る透析装置(ダイアライザー)について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る透析装置の一例を示す概略図である。図2Aは、図1のA面(A−A’線)における断面図である。図2Bは、図2AにおけるB部の拡大図である。図2Cは、図2BにおけるC部の拡大図である。
【0025】
図1に示すように、透析装置11は、筒31と、複数の細筒32と、第1蓋部18と、第2蓋部19とを有して概略構成されている。複数の細筒32は、筒31内に軸方向を揃えて充填されている。第1蓋部18は、筒31の第一端側を閉じる。第2蓋部19は、筒31の第二端(他端)側を閉じる。
【0026】
第1蓋部18には第1の管接合部24Bが設けられている。第2蓋部19には第2の管接合部25Bが設けられている。
また、筒31の第二端側には第3の管接合部33Bが設けられ、筒31の第一端側に第4の管接合部34Bが設けられている。
【0027】
第1の管接合部24Bの開口24Bcが、複数の細筒(透析膜)32内のみを通じて、第2の管接合部25Bの開口25Bcに連通されている(図示略)。
また、第3の管接合部33Bの第3開口33Bcが、筒31の内表面31bと複数の細筒32の外表面32aとの隙間30のみを通じて、第4の管接合部34Bの開口34Bcに連通されている(図示略)。
【0028】
本実施形態では、図2Aに示すように、細筒32は、1本の筒31中に38本入れられている。しかし、細筒32の本数はこれに限られるものではなく、1本の筒31中に10〜100000本入れられる。通常、細筒32の径によるが、1本の筒31中に入れられる細筒32の数は10000本程度とされる。
【0029】
本実施形態では、図2Bに示すように、細筒32は、外表面32aと、筒内表面32bとを有する筒であって、軸方向に垂直な方向で、断面視略円形状の外形を有する。しかし、細筒32の外形はこれに限られるものでなく、多角形状としてもよい。
図2Bに示すように、細筒32は、本実施形態に係る血液浄化用膜100により形成されている。
【0030】
血液浄化用膜100を所定の大きさに切り取り、ロール状に巻いて、重ね合わせた部分を接着して、細筒を形成することにより、血液浄化用膜100からなる細筒32を形成できる。
血液浄化用膜100を略円柱状に形成してから、中心部の円柱部分を軸方向にくり抜くことによっても、血液浄化用膜100からなる細筒32を形成できる。
この他、紡糸工程において、円柱型部材にファイバーを巻き付けるように集積してから、前記円柱型部材を取り除いても、血液浄化用膜100からなる細筒32を形成できる。
【0031】
<血液浄化用膜>
本実施形態に係る血液浄化用膜100は、本実施形態における血液浄化用ファイバーが凝集・集積されて構成される。本実施形態に係る血液浄化用膜100は、血液中の尿毒素であるクレアチニンを吸着させて、血液を浄化可能な血液浄化用膜である。
【0032】
クレアチニンは、次式(1)に示す構造の尿毒素であり、X=0.71nm、Y=0.80nm、Z=0.30nmの大きさの直方体であって、クレアチニンを囲む最小の直方体で囲むことのできる大きさを有する。通常の人間の血液中のクレアチニン濃度は100μM未満の濃度であるが、透析患者の場合、血液中のクレアチニン濃度は1200μM程度となる場合がある。
【0033】
【化1】
【0034】
図2Cに示すように、本実施形態に係る血液浄化用膜100は、ファイバー101と、ファイバー101に付着した粒子102とからなる。
【0035】
ファイバー101は、水に不溶なポリマーからなる。
ファイバー101は、例えば、水に不溶な親水性ポリマーからなる。親水性ポリマーの材料としては、次式(2)に示すエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVAL)のほか、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)等を挙げることができ、架橋等の不溶化処理をすることで用いられる。特に、EVALは不溶化処理が不要なため、親水性ポリマーの材料として好適に用いられる。
【0036】
【化2】
【0037】
ファイバー101の径dは、100nm以上1000nm以下であることが好ましい。これにより、膜を形成したときに、微細な孔が多数存在するメッシュ状の膜を形成することができ、血液中の尿毒素を速やかに膜中に移動させ、膜中の任意の場所に存在する粒子102の細孔102aに尿毒素を捕獲させることができる。
【0038】
粒子102は、SiO及びAlを含んでおり、尿毒素であるクレアチニンの少なくとも一部を取り込み可能な細孔102aが設けられている。
粒子102の細孔102aの大きさは、尿毒素であるクレアチニンを囲む最小の直方体の最小面の面積の1.39倍以上2.14倍以下であることが好ましい。これにより、クレアチニンの少なくとも一部を細孔102a内に安定して取り込むことができる。
【0039】
粒子102の親疎水性(SiO/Alモル比)が18以上240以下であることが好ましい。これにより、細孔102a内に一部を取り込んだクレアチニンを安定して保持することができる。
【0040】
粒子102の径nは最大径5μm以下であることが好ましい。これにより、ファイバー101に粒子102を均一に分散させた血液浄化用膜100を製造できる。
【0041】
粒子102の材料としては、ゼオライト又はゼオライト複合体を挙げることができる。ゼオライト複合体としては、ゼオライトと金属有機構造体の複合体を挙げることができる。金属有機構造体としては、金属種はいずれの金属でも用いることができる。有機リンカーをクレアチニンの径とほぼ同等のものを用いて構造体を合成することで、クレアチニンの少なくとも一部を孔内に取り込むことができる金属有機構造体を合成できる。具体的には、2,6−Naphthalene dicarboxylic acidなどが好適である。
図3は、ベータタイプゼオライトHSZ−940HOAの部分構造拡大図である。
図3に示すように、ベータタイプゼオライトは、0.66nm×0.67nmの開口面積の細孔102aを有する。細孔102aの大きさ(nm)/クレアチニンを囲む直方体の最小面積(nm)=2.07(nm)なので、粒子102の細孔102aの大きさは、尿毒素であるクレアチニンを囲む最小の直方体の最小面の面積の1.39倍以上2.14倍以下である。これにより、ベータタイプゼオライトは、細孔102a内にクレアチニンの少なくとも一部を取り込むことができる。
【0042】
また、SiO/Alモル比が18以上240以下を満たす組成のベータタイプゼオライトが、適度な親疎水性を示し、その細孔102a内にクレアチニンの少なくとも一部を強固に吸着することができるので好ましい。
【0043】
図4は、クレアチニンの一部を細孔102a内に安定保持する状態の一例を示す図である。粒子102は、親水性ポリマーに固定することが好ましい。これにより、血液浄化用膜100を、血液適合性に優れ、粒子102を安定して保持した膜とすることができる。
以上の構成により、粒子102は、クレアチニンの少なくとも一部を細孔102a内に取り込み可能に構成され、取り込んだ部分を安定して保持することができる。
【0044】
<血液浄化用膜の製造方法>
本実施形態に係る血液浄化用ファイバーの製造方法は、分散液調製工程S1と、製膜工程S2とを有する。
分散液調製工程S1は、親水性ポリマーと、尿毒素を取り込む細孔102aを有する粒子102と、を溶媒に分散させて、粒子102とポリマーの分散液を調製する工程である。
溶媒としては、親水性ポリマーを安定に溶解できるものであれば良く、具体的には、ヘキサフルオロイソプロパノールや、イソプロパノールと水の混合溶媒などを用いることができる。溶媒と水との混合比は、例えば、10:90〜90:10(v/v)とする。溶媒は、中でも常温で使用できるヘキサフルオロイソプロパノールが好ましい。
粒子濃度は、分散液中に均一に分散できればよく、具体的には、粒子濃度は0.1wt%〜10wt%が好ましい。溶媒に分散させる粒子は、超音波照射を行うことにより、さらに均一に分散できる。
高分子濃度は、後述のエレクトロスピニング法で紡糸できる濃度であればよく、例えば1wt%〜15wt%の範囲で調整できる。中でも高分子濃度が、5wt%〜8wt%の分散液は、平均径がナノメートル・オーダーのファイバーを紡糸することができるために好適に用いられる。
【0045】
血液浄化用膜製造工程S2は、エレクトロスピニング法により、分散液から紡糸して、糸を凝集させることにより、血液浄化用膜を製造する工程である。
図5は、エレクトロスピニング法により、本実施形態に係る血液浄化用膜を製造する方法の一例を示す概略図である。
図5に示すように、分散液63を充填した注射器61の先端61Aから金属板62の間に電界を印加した状態で、注射器61の先端61Aから金属板62に向けて分散液63を放出し、血液浄化用膜100を製造する。
【0046】
<透析装置(ダイアライザー)の使用形態>
図6は、本実施形態に係る透析装置の使用形態の一例を示す模式図である。
図6に示すように、本実施形態に係る透析装置11は、第1の管接合部24Bに接続された管24が動脈に接続されており、第2の管接合部25Bに接続された管25が静脈に接続されており、第3の管接合部33Bに接続された管33から水が供給され、第4の管接合部34Bに接続された管34から透析液が排出されて、概略構成されている。
【0047】
管24には、動脈圧測定機器21、血液ポンプ22、抗凝血剤添加装置23が接続されて、血液41が供給される。
管25には、超音波空気検出器27、静脈圧測定機器26が接続されて、血液42が排出される。
管33には、ヒーター37、濃縮ポンプ36が接続され、水43が供給される。
管34には、透析液ポンプ38が接続され、透析液44が排出部39に排出される。
【0048】
<透析原理>
図7Aは、上記使用形態における透析装置11の中心部分の斜視透過図である。図7Bは、図7AのD部の軸線方向に沿う断面の拡大図である。
図7Aに示すように、透析装置11の中心部分を、一方の側から、血液41が供給され、血液42が排出される。血液が供給される方向と異なる他方の側から、水43が供給され、筒31の内表面31bと複数の細筒32との隙間30のみを通じて、水44が排出される。
【0049】
この際、図7Bに示すように、水の通過する部分と、血液が通過する部分の間は、細筒32の血液浄化用膜100で隔離されている。
図7BのE部に示すように、血液浄化用膜100は、尿毒素であるクレアチニン51を血液中から水に排出可能である。また、図7BのF部に示すように、血液浄化用膜100は、尿毒素であるクレアチニン51を、膜内の粒子で捕獲可能に構成されている。一方、図7BのG部に示すように、血液浄化用膜100は、赤血球52を通過させない。
これらにより、血液41から尿毒素であるクレアチニンを除去して、血液浄化して、血液42を排出することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
<透析装置>
次に、本発明の第2の実施形態に係る透析装置について説明する。
図8は、本実施形態に係る透析装置を示す概略図である。図9Aは、図8のH−H’線における断面図である。図9Bは、図9AにおけるI部の拡大図である。
図8に示すように、透析装置12は、筒131と、複数の細筒132と、第1蓋部と、第2蓋部119とを有して概略構成されている。複数の細筒132は、筒131内に軸方向を揃えて充填されている。第1蓋部118は、筒131の第一端側を閉じる第2蓋部119は、筒131の第二端(他端)側を閉じる。
【0051】
第1蓋部118には第1の管接合部124Bが設けられ、第2蓋部119には第2の管接合部125Bが設けられている。
【0052】
第1の管接合部124Bの第1開口124Bcが、複数の細筒132内のみを通じて、第2の管接合部125Bの第2開口125Bcに連通されている(図示略)。
また、筒131の内表面と複数の細筒132の外表面との隙間130が設けられている。
【0053】
本実施形態では、図9Aに示すように、細筒132は、1本の筒131中に38本入れられている。しかし、筒131に挿入される細筒132の本数はこれに限られるものではない。
【0054】
図9Bに示すように、細筒132は、外表面132aと、内表面132bとを有する筒である。しかし、細筒132の形状はこれに限られるものでなく、多角形状としてもよい。
図9Bに示すように、細筒132は、本実施形態に係る血液浄化用膜100により形成されており、第1の実施形態に比べて、その膜厚が厚く形成されている。これにより、尿毒素を膜中の粒子すべて捕獲でき、水を流さずに使用できる。
【0055】
(第3の実施形態)
<透析装置>
次に、本発明の第3の実施形態に係る透析装置について説明する。
図10Aは、本実施形態に係る透析装置13を示す正面概略図である。図10Bは、図10AのJ−J’線における断面拡大図である。
図10Aに示すように、透析装置13は、筒231と、複数の細筒状部232と、第1蓋部218と、第2蓋部219とを有して概略構成されている。複数の細筒状部232は、筒231内に軸方向を揃えて充填されている。第1蓋部218は、筒231の第一端側を閉じる。第2蓋部219は、筒231の第二端(他端)側を閉じる。
【0056】
第1蓋部218には第1の管接合部224Bが設けられ、第2蓋部219には第2の管接合部225Bが設けられている。
第1の管接合部224Bの開口224Bcが、複数の細筒状部232内のみを通じて、第2の管接合部225Bの開口225Bcに連通されている(図示略)。
図10Bに示すように、細筒状部232は孔だけで構成され、細筒状部232の内表面232bと筒231の内表面231bとの間は血液浄化用膜100で充填されている。
これにより、尿毒素を膜中の粒子においてすべて捕獲でき、水を流さずに使用できる。
【0057】
上記実施形態に係る血液浄化用膜は、血液中の尿毒素であるクレアチニンを吸着させて、血液を浄化可能な血液浄化用膜であって、ファイバーと、前記ファイバーに付着した粒子とからなり、前記ファイバーが水に不溶なポリマーからなり、前記粒子がSiO及びAlを含んでおり、前記粒子に前記尿毒素の少なくとも一部を取り込み可能な細孔を有する構成なので、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーとすることができる。
【0058】
上記実施形態に係る血液浄化用膜は、前記粒子のSiO/Al比が18以上240以下である構成なので、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーとすることができる。
【0059】
上記実施形態に係る血液浄化用膜は、前記粒子がゼオライト又はゼオライト複合体である構成なので、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーとすることができる。
【0060】
上記実施形態に係る血液浄化用膜は、前記粒子が最大径5μm以下の粒子である構成なので、ファイバーに均一に分散でき、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーとすることができる。
【0061】
上記実施形態に係る血液浄化用膜は、前記親水性ポリマーがエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVAL)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)の群から選択されるいずれかである構成なので、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーとすることができる。
【0062】
上記実施形態に係る血液浄化用膜は、前記ファイバーの径が100nm以上1000nm以下である構成なので、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーとすることができる。
【0063】
上記実施形態に係る血液浄化用膜は、厚みが10nm以上である構成なので、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーとすることができる。
【0064】
上記実施形態に係る血液浄化用膜は、前記粒子がポリマーに固定されている構成なので、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーとすることができる。
【0065】
上記実施形態に係る血液浄化用膜の製造方法は、親水性ポリマーと、前記粒子がSiO及びAlを含み、尿毒素であるクレアチニンの少なくとも一部を取り込み可能な細孔が設けられた粒子とを、溶媒に分散させて、粒子と親水性ポリマーの分散液を調製する工程と、エレクトロスピニング法により、前記分散液から紡糸して、糸を凝集させることにより、血液中の尿毒素であるクレアチニンを吸着させて、血液を浄化可能な血液浄化用膜であって、ファイバーと、前記ファイバーに付着した粒子とからなり、前記ファイバーが水に不溶なポリマーからなり、前記粒子がSiO及びAlを含んでおり、前記粒子に前記尿毒素の少なくとも一部を取り込み可能な細孔が設けられている血液浄化用膜を製造する工程と、を有する構成なので、尿毒素を速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたファイバーを容易に、短時間で製造することができる。
【0066】
上記実施形態に係る透析装置は、筒と、前記筒内に軸方向を揃えて充填された複数の細筒と、前記筒の一端側を閉じる蓋部と、前記筒の他端側を閉じる別の蓋部と、前記蓋部に設けられた第1の管接合部と、前記別の蓋部に設けられた第2の管接合部と、を有し、前記第1の管接合部の開口が、前記複数の細筒内のみを通じて、前記第2の管接合部の開口に連通されている透析装置であって、前記細筒が先に記載の血液浄化用膜により形成されている構成なので、複数の細筒内に血液を流通させることにより、尿毒素を速やかに吸着し、大量の水を必要とせず、体内から尿毒素を除去することができる。そのため、インフラが整備されていない過疎地や、ライフラインが寸断された非常時においても、急性尿毒症の応急処置に利用できる。
【0067】
上記実施形態である透析装置は、更に、前記筒に設けられた第3の管接合部と、前記筒に設けられた第4の管接合部と、を有し、前記第3の管接合部の開口が、前記筒の内表面と前記複数の細筒の外表面との隙間のみを通じて、前記第4の管接合部の開口に連通されている構成なので、水を筒の内表面と細筒の外表面との隙間に流通させ、複数の細筒内に血液を流通させることにより、尿毒素を速やかに吸着し、体内から尿毒素を除去することができ、急性尿毒症の処置に利用できる。
【0068】
上記実施形態に係る透析装置は、筒と、前記筒内に軸方向を揃えて形成された複数の細筒状部と、前記筒の一端側を閉じる蓋部と、前記筒の他端側を閉じる別の蓋部と、前記蓋部に設けられた第1の管接合部と、前記別の蓋部に設けられた第2の管接合部と、を有し、前記第1の管接合部の開口が、前記複数の細筒状部内のみを通じて、前記第2の管接合部の開口に連通されている透析装置であって、前記筒と前記複数の細筒状部との間に先に記載の血液浄化用膜が充填されている構成なので、尿毒素を速やかに吸着し、大量の水を必要とせず、体内から尿毒素を除去することができる。そのため、インフラが整備されていない過疎地や、ライフラインが寸断された非常時においても、急性尿毒症の応急処置に利用できる。
【0069】
上記実施形態に係る血液浄化用膜、血液浄化用膜の製造方法及び透析装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
(試験例1)
<8種のゼオライトの毒素吸着性評価>
まず、8種のゼオライト粒子を用意した(東ソー(株)製)。ゼオライトの物性値は、メーカーのホームページのほか、ゼオライト学会のホームページなどで公表されている。
次に、尿毒素として、タンパク質代謝産物のクレアチニン(Mw=113、x=0.71nm,y=0.81nm,z=0.30nm、和光純薬工業(株)製)を用意した。次に、クレアチニンを水に溶解して、191μMのクレアチニン水溶液を調製した。
【0071】
次に、8種のゼオライト粒子をクレアチニン水溶液5mlに5時間浸漬して8種の評価溶液を調製した。
次に、UV−VIS分光装置により、8種の評価溶液の233nmのピーク波長の光吸収強度の変化を測定した。これにより、8種のゼオライト粒子(試験例1−1〜1−8)のクレアチニン吸着性評価を行った。
図11は、8種のゼオライト粒子(試験例1−1〜1−8)のクレアチニン吸着性評価結果を示すグラフである。表1は、その条件、結果を示す表である。
【0072】
【表1】
【0073】
クレアチニン(0.71×0.80×0.30nm)とほぼ同等の細孔を有するZSM−5(HSZ−840HOA)およびベータ型ゼオライト(細孔0.66×0.67nm、HSZ−940HOA、東ソー(株)製)がクレアチニンを最も吸着した(220μmol/g)。
この結果から、ゼオライトのクレアチニン吸着特性は、ゼオライトの細孔径と親疎水性(SiO/Alモル比)に依存することが判明した。
より詳しくは、ゼオライトの細孔の大きさが、クレアチニンを囲む最小の直方体の最小面の面積の1.39倍以上2.14倍以下であり、かつ、ゼオライトのSiO/Alモル比が18以上240以下であるときに、クレアチニン吸着量が130(μmol/g)以上と高くなることが判明した。
【0074】
(試験例2)
<ファイバー調製>
まず、ファイバーのベースとなる高分子として、親水性でありながら水に不溶であり、製膜後の架橋が不要であり、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)(EVAL−E105B、エチレン比率44%、(株)クラレ製)を用意した。このエチレンビニルアルコール共重合体は、血液適合性(血液細胞非活化、凝固系非活性化)に優れ、かつ医療用途に実績がある。
【0075】
次に、EVALを所定の濃度で溶媒に溶かしてから、超音波混合することにより、紡糸用溶液を調製した。
溶媒としては、イソプロパノールと水の混合溶液又はヘキサフルオロイソプパノール(HFIP)を用いた。HFIPは常温で調整し、イソプロパノールと水の混合溶液は、体積比70:30、70℃で調製した。
高分子濃度は、5wt%、6wt%、7wt%、8.5wt%、10wt%のいずれかとした。
【0076】
次に、電界紡糸法を用いて、紡糸用溶液からファイバーを紡糸した。
電界紡糸時のパラメータである溶媒の種類、高分子濃度、電圧、噴出速度を調節した。電圧は25kVとし、噴出速度は1ml/hとした。
その結果、様々な直径(400〜1000nm)のEVALファイバー(試験例2−1〜2−7)を紡糸できた。図12は、分散液の条件(グラフ横軸)と生成ファイバー径(グラフ縦軸)との関係を示すグラフである。表2は、実験条件及び結果を示す表である。なお、ファイバーの平均径の値に、ビーズの大きさは含まれない。
【0077】
【表2】
【0078】
ファイバーのモルフォロジについてはSEM(走査型電子顕微鏡)画像により評価した。試験例2−1、2−2はファイバーの他、ビーズが観察された。試験例2−5は、ファイバー径のばらつきが大きく、再現よく製膜できなかった。試験例2−2、2−3、2−4、2−6、2−7は再現よくファイバーを製膜できた。また、試験例2−2、2−5は膜が破れやすく、取り扱いが困難であった。
モルフォロジと作製した膜の取り扱いやすさ、製膜条件の観点から評価すると、EVOH/HFIP 7wt%の条件で作成したファイバーが、平均径が小さく再現よく製膜できるため、最適なものであった。
【0079】
(実施例1−1)
<ゼオライト粒子含有ファイバー複合膜の調製>
まず、ゼオライト粒子HSZ−940HOA(東ソー(株)製)を用意した。
次に、ファイバーのベースとなる高分子として、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)(EVAL−E105B、エチレン比率44%、(株)クラレ製)を用意した。
次に、EVALとHSZ−940HOAをヘキサフルオロイソプパノールに高分子濃度7wt%、ゼオライト濃度0.7wt%の割合で超音波混合することにより、分散溶液を調製した。
【0080】
次に、電界紡糸法を用いて、分散溶液からゼオライト粒子含有ファイバーを紡糸した。
電界紡糸時のパラメータは、電圧25kV、噴出速度1ml/hとした。
【0081】
(実施例1−2)
<ゼオライト粒子含有ファイバーの調製>
高分子濃度7wt%、ゼオライト濃度0.35wt%の割合で分散溶液を調整した他は実施例1と同様にして、実施例1−2のファイバーの作成を試みた。粒子含有ファイバーを作成することができた。
【0082】
以上のように、紡糸時の高分子溶液(EVOH/HFIP 7wt%)に0.3〜0.7wt%(ファイバーに対して10wt%)までのゼオライトを超音波混合した場合には、ゼオライトを内に取り込んだファイバーを再現よく紡糸できた。ファイバー内のゼオライト含有率を示差熱・熱量同時測定器を用いて測定した。
【0083】
(比較例1−1)
<ゼオライト粒子含有ファイバーの調製>
高分子濃度7wt%、ゼオライト濃度1.4wt%の割合で分散溶液を調整した他は実施例1と同様にして、比較例1−1のファイバーの作成を試みた。
粒子含有ファイバーを作成することができたが、ファイバー内のゼオライト含有量は実施例1−1とほぼ同等であった。
【0084】
(比較例1−2)
<ゼオライト粒子含有ファイバーの調製>
高分子濃度7wt%、ゼオライト濃度2.1wt%の割合で分散溶液を調整した他は実施例1と同様にして、比較例1−2のファイバーの作成を試みた。
しかし、粒子含有ファイバーを作成することはできなかった。
【0085】
以上のように、配合比が30wt%以上では、ファイバーを得ることができなかった。
これは平均粒径が2.4μmのゼオライト粒子を用いたために、一定濃度以上のゼオライトを配合すると紡糸時に凝集体が大きくなったためと考えられる。
【0086】
(比較例1−3)
<ゼオライト粒子含有ファイバーの調製>
ゼオライト粒子を混合しなかった他は実施例1と同様にして、比較例1−3のファイバーの作成を試みた。ファイバーを作成できた。
上記実施例及び比較例の実験条件及び結果を表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
図13は、実施例1−1のファイバーのSEM像である。図13に示すように、ゼオライト粒子を内に取り込んだファイバーが紡糸された。なお、EDX mappingの結果から凝集体(約5μm×10μm)がゼオライトであることを確認した。
【0089】
図14は、比較例1−3のファイバーのSEM像である。7wt%の高分子濃度の分散液を用い、エレクトロスピニング法により、EVALファイバーからなる膜を形成できた。
【0090】
<尿毒素吸着性評価>
まず、尿毒素として、タンパク質代謝産物のクレアチニン(Mw=113、x=0.71nm,y=0.81nm,z=0.30nm)を用意した。
次に、クレアチニンを水に溶解して、190μMのクレアチニン水溶液を調製した。このクレアチニン水溶液を用いて、ファイバーのクレアチニン吸着除去特性を水溶液系で評価した。
【0091】
次に、ファイバーをクレアチニン水溶液5mlに5時間浸漬してから、UV−VIS分光光度計により233nmのピーク波長の光吸収強度の変化を測定して、ファイバーのクレアチニン吸着性評価を行った。
【0092】
図15は、実施例1−1のファイバー(膜)と比較例1−3のファイバー(膜)のクレアチニン吸着性評価結果を示すグラフである。実施例1−1のファイバー(膜)では、クレアチニンを12μmol/g(fiber)除去できた。一方、比較例1−3のファイバー(膜)では、クレアチニンを除去できなかった。
【0093】
図16は、試料1〜3のクレアチニン吸着量(質量)を比較したグラフである。試料1はクレアチニンと水との混合液(クレアチニン含有量190マイクロモル)、試料2は、試料1にウマの血清を含有させた溶液(クレアチニン含有量120マイクロモル)、試料3は、試料1にウシ胎児の血清を含有させた溶液(クレアチニン含有量110マイクロモル)を用意した。ゼオライト粒子を20%含有するファイバーを用いた血液浄化用膜に試料1〜3をそれぞれ透過させ、図16に示すように、ウマの血清やウシ胎児の血清を含有する条件下ではクレアチニン吸着量は減るものの、ある程度クレアチニンを吸着できることが分かった。
【0094】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
上記血液浄化用膜、血液浄化用膜の製造方法及び透析装置は、尿毒素であるクレアチニンを速やかに吸着し、かつ血液適合性に優れたものであり、大量の水を必要とせずに体内から尿毒素を除去することができる。したがって、インフラが整備されていない過疎地や、ライフラインが寸断された非常時においても、クレアチニンを吸着除去して、急性尿毒症の応急処置に利用できる新規医用材料になりえ、新規医用材料製造産業、透析装置産業において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0096】
11、12、13 透析装置
18、118、218 第1蓋部
19、119,219 第2蓋部
24B、124B、224B 第1の管接合部
24Bc、124Bc、224Bc 第1の管接合部の開口
25B、125B 第2の管接合部
25Bc、125Bc、225Bc 第2の管接合部の開口
30、130 隙間
31、131、231 筒
31b、131b、231b 内表面
32、132 細筒
32a、132a 外表面
33B 第3の管接合部
34B 第4の管接合部
33Bc 第3の管接合部の開口
34Bc 第4の管接合部の開口
100 血液浄化用膜
101 ファイバー
102 粒子
102a 細孔
232 細筒状部(細筒)
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16