特開2017-950(P2017-950A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-950水産加工残渣の溶解方法及びカドミウムの除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-950(P2017-950A)
(43)【公開日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】水産加工残渣の溶解方法及びカドミウムの除去方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20161209BHJP
   A23K 10/22 20160101ALI20161209BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20161209BHJP
   A23L 17/40 20160101ALI20161209BHJP
   A23L 17/50 20160101ALI20161209BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20161209BHJP
【FI】
   B09B3/00 304Z
   A23K1/10 101
   C02F1/42 HZAB
   C02F1/42 G
   A23L1/33 C
   A23L1/333 Z
   A23L1/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-116966(P2015-116966)
(22)【出願日】2015年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目
(71)【出願人】
【識別番号】300065604
【氏名又は名称】環境創研株式会社
【住所又は居所】北海道函館市桔梗町379番地32
(72)【発明者】
【氏名】関 秀司
【住所又は居所】北海道函館市港町3丁目1−1 国立大学法人北海道大学大学院水産科学研究院内
(72)【発明者】
【氏名】川辺 雅生
【住所又は居所】北海道函館市大町13番1号
【テーマコード(参考)】
2B150
4B035
4B042
4D004
4D025
【Fターム(参考)】
2B150CD23
2B150CD26
2B150CD27
4B035LC10
4B035LE03
4B035LG42
4B035LP21
4B035LP41
4B042AC08
4B042AD39
4B042AG59
4B042AG68
4B042AH06
4B042AP14
4B042AP15
4B042AP20
4B042AP27
4D004AA04
4D004AB03
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA15
4D004CA22
4D004DA03
4D004DA10
4D004DA11
4D025AA09
4D025AB25
4D025BA02
4D025BA07
4D025BA17
4D025BA25
4D025BA28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】重金属を含むイカ、ホタテの加工残渣からカドミウムを分離するには、これらからカドミウムを分離する際キレート樹脂等を使用し混合撹拌するためスラリー状にする必要があるが、プロテアーゼ等のタンパク質を分解酵素を用いず、コストが安くなるカドミウム除去方法の提供。
【解決手段】カドミウムを含むホタテ・イカ残渣を同時に混合し加温しながら自己消化にてスラリー状にした後、キレート樹脂やイオン交換樹脂と混合撹拌することにより、ホタテ・イカ加工残渣からカドミウムを除去するカドミウム除去方法。ホタテ加工残渣にイカ加工残渣を加え、粉砕しながら攪拌することにより、ホタテ加工残渣だけでは溶解しなかったホタテの外套膜や鰓等が溶解できる利点があるカドミウム除去方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホタテの加工残渣とイカ加工残渣からカドミウムを分離する工程に於いてホタテの加工残渣とイカ加工残渣の比を4:1〜1:1の条件にて混合・撹拌し、たんぱく質分解酵素を使用せずに自己消化だけで溶解させる方法。
【請求項2】
ホタテ加工残渣及びイカ加工残渣を溶解させた後、油脂を分離してからキレート樹脂またはイオン交換樹脂と撹拌・混合しカドミウムを吸着させカドミウムを分離する方法。
【請求項3】
請求項1及び請求項2の方法により得られる、カドミウムが90.0 %以上除去されたイカ、ホタテの加工残渣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属を含むイカ、ホタテの加工残渣から品質を保持したままカドミウムを除去する技術に関するものである。
【0002】
また、イカ、ホタテホタテの加工残渣だけではなく、魚の内臓、動物の内臓、さらには植物からカドミウムを分離し、飼料又は肥料もしくは食品として利用する技術に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の方法としては、ホタテ内臓を洗浄後粉砕し、pH4.5にした後、45℃〜48℃で14時間以上発酵(自己消化+プロテアーゼ)撹拌し溶解させる方法、(特許文献1)や、一定温度にて加温・撹拌を行いながらコンポザイムによるホタテ残渣をソリュブル化する方法(特許文献2)、数ミリ以下に細断後搾汁し、固液分離後、固形物をプロテアーゼで溶解させる方法(特許文献3)、ホタテ残渣をミンチチョッパーやミートグラインダーにより、細断しスラリー化する方法(特許文献4)が記載されている。
【0004】
ホタテ残渣は、破砕のみではスラリー化しない。ホタテ残渣の外套膜やボイルした残渣をスラリー化するためには、自己消化だけでなくプロテアーゼなどのタンパク質を分解する酵素が必要であり、コストが高くなる等の問題があった。
【0005】
特許文献1〜4におけるカドミウム分離工程は、油脂を分離したスラリーからの分離ではない。
【0006】
特許文献1のカドミウム分離工程は、溶解した後、固形物と液体と油脂に分離し、液体からキレート剤や限外濾過を用いてカドミウムを分離する方法であり、油脂を分離した後のスラリーからの分離ではない。また、特許文献2では溶解後のソリュブル液のpHを上げる事でカドミウムを沈殿させているが、沈殿物からカドミウムだけを分離するのは容易ではない事から、現実的ではない。特許文献3では溶解後固液分離し、液状物をキレート繊維を充填したカラムに通水しカドミウムを吸着させ、残った固形物は再度分解・キレート繊維吸着を繰り返す工程であることから、一連の工程が長時間を要し、飼料としての品質が低下する。特許文献4では、破砕物に液体のキレート剤と溶媒となるサラダ脂等を入れ、溶媒中にカドミウムを吸着させたキレート剤を抽出させる方法であり、4〜5回の溶媒抽出が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−153863号公報、特開平6−106155号公報
【特許文献2】特開2003−266050号公報
【特許文献3】特開2003−320340号公報
【特許文献4】特開2008−12372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カドミウムを有するイカ、ホタテの加工残渣を腐敗を防止しながら溶解させ、経済的にカドミウムを分離し飼料及び食品として利用することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカドミウム除去方法は、カドミウムを含むホタテ・イカ残渣を同時に混合し加温しながら自己消化にてスラリー状にした後、キレート樹脂やイオン交換樹脂と混合撹拌することにより、ホタテ・イカ加工残渣からカドミウムを除去することを特徴としており、ホタテ加工残渣にイカ加工残渣を加え、粉砕しながら攪拌することにより、ホタテ加工残渣だけでは溶解しなかったホタテの外套膜や鰓などが溶解できる利点がある。
【0010】
また、溶解の方法として、生のホタテ加工残渣及びイカ加工残渣は、水を加えず溶解を行うが、ボイルされたホタテ加工残渣の溶解は同重量の水を加え処理を行う。
【0011】
本発明のカドミウム除去方法は、自己消化酵素が失活しない温度条件以下で溶解させてからキレート樹脂やイオン交換樹脂によりカドミウム吸着を行う。
【0012】
さらに、本発明のカドミウム除去方法により得られる有機物は、カドミウムが90.0 %以上除去され、飼料や食品として利用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、カドミウムを含むイカ、ホタテの加工残渣から短時間で重金属を除去できることから、カドミウムを含むイカ、ホタテの加工残渣から品質を大きく損なわず経済的にカドミウムを分離することができ、飼料や食品としての高度利用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明におけるカドミウムとは、イオン状に存在するものを意味する。
【0015】
本発明においては、カドミウムを含むイカ、ホタテの加工残渣を対象とするが、家畜や魚の内臓及び植物にも利用可能である。
【0016】
本発明におけるキレート樹脂は、キレート樹脂を硫酸あるいは塩酸で樹脂を再生させる際、樹脂の官能基に水素イオンが吸着している状態のままで樹脂として利用する。
【0017】
本発明におけるイオン交換樹脂は、イオン交換樹脂を硫酸あるいは塩酸で樹脂を再生させる際、樹脂の官能基に水素イオンが吸着している状態のままで樹脂として利用する。
【0018】
また、本発明におけるキレート樹脂及びイオン交換樹脂は、イオン交換性能を持つ、無機あるいは有機の固形物(繊維状や板状のものを含む)も利用可能であるが、液体のキレート剤は利用できない。
【0019】
本発明におけるキレート樹脂及びイオン交換樹脂は、イカ、ホタテの加工残渣に対して5%〜40%程度の添加を行い撹拌を行うが、それは重量比であっても容積比であっても良い。
【0020】
本発明における「吸着」とは、カドミウムがキレート樹脂及びイオン交換樹脂に吸い付くこと、若しくはカドミウムがキレート樹脂及びイオン交換樹脂に捕捉されることをいい、正吸着のみならず負吸着をも含む。また、「吸着除去」とは、カドミウムが吸着したキレート樹脂及びイオン交換樹脂を除去すること、及びカドミウムが吸着したキレート樹脂及びイオン交換樹脂からカドミウムのみを除去することをいう。
【0021】
従来までは、カドミウムを含むホタテの加工残渣からカドミウムを分離前の溶解時に、たんぱく質分解酵素を加え外套膜を分解していたが、本発明の方法によれば、酵素を必要とせずに、ホタテ加工残渣からカドミウムを分離することができる。
【0022】
また、キレート樹脂やイオン交換樹脂によりカドミウムを吸着する工程の前に油脂を分離することにより、カドミウムを吸着時間する時間が早くすることが可能となる。
【0023】
イカ、ホタテ加工残渣を溶解させる際、粉砕機で粉砕しながら残渣を細かくすることにより自己消化酵素が働きやすくなり溶解時間を早くすることができ、ろ過に要する時間も短縮することが可能となる。
【0024】
本発明のカドミウム除去方法に於いて、ホタテ加工残渣に対してイカ加工残渣の混合比を4:1〜1:1として行う理由は、1:1の混合比に於いて溶解が十分に行われ、未溶解物が1%程度であったことから上限配合率を50%とした。また、4:1の混合率に於いて未溶解物が5%程度であったことから下限の混合率を20%とした。
【0025】
本発明に於いて油脂を分離する方法は、三相遠心分離機、油水分離機、バスケット型遠心分離機等による油脂の分離方法によって行う。
【0026】
従来の方法では、ホタテ加工残渣1トンを溶解するためにたんぱく質分解酵素を添加していたため2000円/tのコストがかかっていたが、本発明によればイカ加工残渣は廃棄物のため、酵素添加にかかるコストは低く抑えられる。
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
この実施例では加熱していないホタテの加工残渣(以下、生ウロと言う)と、加熱したホタテの加工残渣(以下、ボイルウロと言う)に対して、加熱していないイカの加工残渣(頭部を含む内臓、以下イカゴロと言う)を使用した。
【0029】
生ウロ又はボイルウロとイカゴロの混合比を4:1と1:1の二種類について行った。混合したものをフードプロセッサーにより粉砕し、ビーカーに100gを投入後、撹拌装置により撹拌を行いながら、40℃で0.5〜20時間、さらに60℃で3時間の加熱し溶解させた。
【0030】
その後、0.27mmの目開きのナイロンメッシュフィルターにてろ過しフィルターに残った未溶解物を60℃の恒温乾燥機にて恒量となるまで乾燥した後に、重量を計測した。
【0031】
未溶解物の残存率(R%)は次式により算出した。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、mは未溶解物の乾燥重量、wiとwhはイカゴロとホタテウロの湿重量、aiとahはイカゴロとホタテウロの固形分率である。
【0034】
図1に,生ホタテウロ(○)80gまたはボイルウロ(●)80gに、イカゴロを20g添加した実験の結果を示す。混合物のイカゴロ含有率を20%とした場、生ウロとボイルウロのいずれにおいても、40℃で2時間以上加熱した後に、60℃で3時間加熱することにより、残存率が5%以下まで低下した
【0035】
図2は、生ホタテウロ(○)50gまたはボイルウロ(●)50gに、イカゴロを50g添加した実験の結果である。混合物のイカゴロ含有率を50%とした場合、ボイルウロについては図1の結果とほぼ同じであるが、生ウロについては約1%まで低下した。
【実施例2】
【0036】
この実施例では加熱していないイカの加工残渣(イカゴロ)を使用した。
【0037】
イカゴロをフードプロセッサーにより粉砕し、ビーカーに1000gを投入後、撹拌装置により撹拌を行いながら、40℃で4時間、さらに60℃で3時間の加熱を行い溶解させた。
【0038】
その後、0.27mmの目開きのナイロンメッシュフィルターにてろ過し、400gをビーカーに取り、残りをを遠心分離器にかけ油脂を分離し、油脂を分離したイカゴロ400gを別のビーカーに取った。
【0039】
油脂を分離していないイカゴロ400gに対して10%のキレート樹脂を加え、油脂を分離したイカゴロ400gに対しても10%のキレート樹脂を加えた後、60℃に加温しながら撹拌し、1時間ごとにカドミウムを計測した。分析は、原子吸光光度計により分析を行った。
【0040】
脱脂を行った方がカドミウムの分離が早い結果となった。その結果を図3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1はホタテウロ80gとイカゴロ20gの混合溶解における40℃での加熱時間の影響を示す。
図2図2はホタテウロ50gとイカゴロ50gの混合溶解における40℃での加熱時間の影響を示す。
図3図3は脱脂したイカゴロと脱脂していないイカゴロの1時間ごとのCdの減少を示す
図1
図2
図3