特許第5945324号(P5945324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945324
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】ペプチド又はタンパク質へのフッ素導入法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   C12P21/02 BZNA
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-524834(P2014-524834)
(86)(22)【出願日】2013年7月10日
(86)【国際出願番号】JP2013068829
(87)【国際公開番号】WO2014010619
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2014年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-157012(P2012-157012)
(32)【優先日】2012年7月12日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラムに係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【住所又は居所】岡山県岡山市北区津島中一丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100100561
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 正広
(72)【発明者】
【氏名】▲斉▼木 秀和
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所内
(72)【発明者】
【氏名】小関 英一
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所内
(72)【発明者】
【氏名】瀧 真清
【住所又は居所】岡山県岡山市北区津島中一丁目1番1号 国立大学法人岡山大学内
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 昌彦
【住所又は居所】岡山県岡山市北区津島中一丁目1番1号 国立大学法人岡山大学内
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−106267(JP,A)
【文献】 Nucleic Acids Symp. Ser.,2009年,vol.53,pp.37-38
【文献】 Biopolymers,2007年,vol.88, no.2,pp.263-271
【文献】 ChemBioChem,2008年,vol.9, no.5,pp.719-722
【文献】 ChemBioChem,2006年,vol.7, no.11,pp.1676-1679
【文献】 生化学,2008年,p.3P-1343
【文献】 生化学,2010年,p.3P-1187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 21/00−21/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端アミノ酸残基として塩基性アミノ酸残基と、前記N末端アミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基として、側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基、側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基、若しくは側鎖が−H、−CH3 −C(CH3 )C2 5 又は−CH2 CONH2 あるアミノ酸残基とを少なくとも有する活性化配列を、フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質に付加し、活性化ペプチド又はタンパク質を得る工程と、
前記活性化ペプチド又はタンパク質に、フッ素含有アミノ酸、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素及びアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素を含む試薬溶液を用いて、前記フッ素含有アミノ酸を導入する工程とを含み、
前記フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質のN末端残基が塩基性アミノ酸残基ではなく
前記フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質のN末端から2番目のアミノ酸残基が、側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基、側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基、及び側鎖が−H、−CH3 、−C(CH3 )C2 5 又は−CH2 CONH2 であるアミノ酸残基のいずれでもない、ペプチド又はタンパク質にフッ素を導入する方法。
【請求項2】
前記活性化配列における前記N末端アミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基としての前記側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基が、セリン又はトレオニンである、請求項の方法。
【請求項3】
前記活性化配列における前記N末端アミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基としての前記側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基が、リジン又はアルギニンである、請求項の方法。
【請求項4】
前記活性化配列における前記N末端アミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基が、グリシン、アラニン、イソロイシン、チロシン又はアスパラギンである、請求項の方法。
【請求項5】
前記活性化配列が、スペーサ基を含む、請求項1〜のいずれかの方法。
【請求項6】
前記スペーサ基がペプチドである、請求項の方法。
【請求項7】
前記スペーサ基が炭素数2〜6のアルキレンオキシド含有基である、請求項の方法。
【請求項8】
前記活性化配列における前記N末端アミノ酸残基としての前記塩基性アミノ酸残基がリジン残基又はアルギニン残基である、請求項1〜のいずれかの方法。
【請求項9】
前記フッ素含有アミノ酸が、2−アミノ−3−(4−[18F]フルオロメトキシフェニル)プロピオン酸及び/又は2−アミノ−3−[4−(2−[18F]フルオロエトキシ)フェニル]プロピオン酸である、請求項1〜のいずれかの方法。
【請求項10】
N末端アミノ酸残基として塩基性アミノ酸残基と、前記N末端アミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基として、側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基、側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基、若しくは側鎖が−H、−CH3 、−C(CH3 )C2 5 又は−CH2 CONH2 であるアミノ酸残基とを少なくとも有する活性化配列を有する活性化剤、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素及びアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素を少なくとも含む、請求項1〜のいずれかの方法に用いるペプチド又はタンパク質のフッ素導入キット。
【請求項11】
請求項1〜の方法又は請求項10のキットを用いる、フッ素が導入されたペプチド又はタンパク質を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET診断試薬、抗体型診断薬、及びペプチド型診断薬、並びにタンパク質型医薬品の体内分布測定に適用される技術に関する。より具体的には、本発明は、ペプチド又はタンパク質へのフッ素導入法、とりわけペプチド又はタンパク質の18F標識法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素の放射性同位体18F(半減期:110分)は、臨床分野ではPETプローブへの用途において最も有用な核種として知られている。
現在、18F標識診断薬としてグルコース誘導体である[18F]FDGががん診断に用いられている。この診断薬は、がん組織での高い糖代謝活性により、[18F]FDGががん組織に集積することを利用したもので、がんの超早期診断や治療効果判定に用いられている。
特開2009−106268号公報(特許文献1)には、フッ素含有アミノ酸であるFMT(フルオロメチル−L−チロシン)やFET(フルオロエチル−L−チロシン)を、酵素化学的手法によりone-potでペプチドやタンパク質のN末端に導入する方法(Nexta法)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糖代謝活性を利用する18F標識診断薬は臨床的に使用されているが、がん診断によっては適用できないものもある。一方で、がん以外の疾病診断におけるPETの利用も大いに期待されている。このため、がんの超早期診断、脳神経疾患及び循環器系疾患診断に用いる、[18F]FDG以外の放射性診断薬のためのプローブが多数提案されてきた。しかし、それらの多種の新規プローブの合成のために、従来の自動合成装置をプローブごとに設計及び製作しなければならず、著しく非効率であった。この非効率さは、新規プローブの開発を妨げる原因となっていた。
【0005】
なお、従来から18FSFB(N−スクシンイミジル−4−[18F]フルオロベンゾエート)が、ペプチド、タンパク質その他の高分子を18F標識する試薬として広く用いられてきた。しかしながら、[18F]SFBを用いてバッチ合成する場合、合成時間に1〜1.5時間もの長い時間を必要とする。また、操作も煩雑である。このため、[18F]SFBを用いた合成が可能な施設は一部に限られていた。さらに18F標識部位を選択的に指定できず、ペプチドやタンパク質の活性を損なう可能性があるため、18F標識可能なペプチド、タンパク質が限られていた。
【0006】
一方、18F標識アミノ酸をペプチドやタンパク質に導入する方法は、標識されるペプチドやタンパク質の機能を損なわない点で好ましい。18F標識アミノ酸の導入手法としては、ペプチド合成法、遺伝子工学的方法及び酵素化学的方法が挙げられる。しかしながら、ペプチド合成法ではアミノ酸1分子の導入に1日以上の時間がかかり、遺伝子工学的方法では手間が煩雑であり、酵素化学的方法では導入効率があまり良くないという問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、酵素化学的方法を用いて含フッ素アミノ酸をペプチドやタンパク質に導入する方法であって、従来の方法より導入効率に優れる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、18F標識アミノ酸を導入すべきペプチド又はタンパク質に、あらかじめ特定の配列を付加させることで、18F標識アミノ酸の導入効率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
【0009】
(1)
N末端アミノ酸残基として塩基性アミノ酸残基と、前記N末端アミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基として、側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基、側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基、若しくは側鎖が−H、−CH、−C(CH)C又は−CHCONHであるアミノ酸残基とを少なくとも有する活性化配列を、フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質に付加し、活性化ペプチド又はタンパク質を得る工程と、
前記活性化ペプチド又はタンパク質に、フッ素含有アミノ酸、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素及びアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素を含む試薬溶液を用いて、前記フッ素含有アミノ酸を導入する工程とを含む、ペプチド又はタンパク質にフッ素を導入する方法。
【0010】
本発明において「ペプチド」とは、2個以上のアミノ酸を含有するアミノ酸配列を有するものをいう。また、本発明において「タンパク質」とは、分子量5,000以上のペプチドをいう。さらに、本発明におけるタンパク質は、例えば生体内で産生されたものである場合には、生体内で何らかの機能・活性を示し得るペプチドである。
本発明における「アミノ酸」には、α−、β−、γ−アミノ酸が含まれる。
本発明において「活性化」とは、ペプチド又はタンパク質において所望のフッ素含有アミノ酸導入効率を達成するための活性を取得することをいう。
本発明においては、「フッ素を導入する」ことはフッ素含有アミノ酸を導入することによって行うため、本明細書において、「フッ素導入」はフッ素含有アミノ酸の導入と同じ意味で用いる。
【0011】
(2)
前記フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質のN末端残基が塩基性アミノ酸残基でない、(1)の方法。
(3)
前記フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質のN末端から2番目のアミノ酸残基が、側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基、側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基、及び側鎖が−H、−CH、−C(CH)C及び−CHCONHであるアミノ酸残基のいずれでもない、(2)の方法。
【0012】
(4)
前記水酸基を有するアミノ酸が、セリン又はトレオニンである、(1)〜(3)のいずれかの方法。
(5)
前記正電荷を有する親水性アミノ酸残基が、リジン又はアルギニンである、(1)〜(4)のいずれかの方法。
(6)
前記活性化配列における前記2番目のアミノ酸残基が、グリシン、アラニン、イソロイシン、チロシン又はアスパラギンである、(1)〜(3)のいずれかの方法。
【0013】
(7)
前記活性化配列が、スペーサ基を含む、(1)〜(6)のいずれかの方法。
(8)
前記スペーサ基がペプチドである、(7)の方法。
(9)
前記スペーサ基が炭素数2〜6のアルキレンオキシド含有基である、(7)の方法。
(10)
前記塩基性アミノ酸残基がリジン残基又はアルギニン残基である、(1)〜(9)のいずれかの方法。
【0014】
(11)
前記フッ素含有アミノ酸が、2−アミノ−3−(4−[18F]フルオロメトキシフェニル)プロピオン酸及び/又は2−アミノ−3−[4−(2−[18F]フルオロエトキシ)フェニル]プロピオン酸である、(1)〜(10)のいずれかの方法。
【0015】
(12)
N末端アミノ酸残基として塩基性アミノ酸残基と、前記N末端アミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基として、側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基、側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基、若しくは側鎖が−H、−CH、−C(CH)C又は−CHCONHであるアミノ酸残基とを少なくとも有する活性化配列を有する活性化剤、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素及びアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素を少なくとも含む、(1)〜(11)のいずれかの方法に用いるペプチド又はタンパク質のフッ素導入キット。
【0016】
(13)
(1)〜(11)の方法又は(12)のキットを用いる、フッ素が導入されたペプチド又はタンパク質を製造する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、酵素化学的方法を用いて含フッ素アミノ酸をペプチドやタンパク質に導入する方法であって、N末端から2番目のアミノ酸を規定していない従来の方法より導入効率に優れる方法が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実験例1において、配列番号1のペプチド1(Lys-Ser-Cys(C2H5)-Aka)とその重水素置換体であるペプチド2(Lys-Ser-Cys(C2D5)-Aka)との質量分析におけるイオン化効率が同等であることを示すマススペクトルである。横軸はMass[m/z]である。図1においては、便宜的に、ペプチド1を[Lys-Xaa-Cys(C2H5)-Aka]、ペプチド2を[Lys-Xaa-Cys(C2D5)-Aka]と表記している。
図2】実験例2〜20において、ペプチド1、及びペプチド1におけるN末端から2番目のアミノ酸Serをセリン及びシステイン以外の18種の天然アミノ酸残基にそれぞれ変更した各ペプチド3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37[Lys-Xaa-Cys(C2H5)-Aka]へのフッ素含有アミノ酸導入効率を調べた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1.フッ素を導入すべきタンパク質又はペプチド]
フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質は、天然のアミノ酸配列を有するもの及び非天然のアミノ酸配列を有するものを問わない。天然のアミノ酸配列を有するペプチド又はタンパク質は、例えば種々の生物の生体内からの単離により得られるものでありうる。あるいは、遺伝子工学的手法や有機合成などの公知の手法を用いて人工的に産生されたものでありうる。非天然のアミノ酸配列を有するペプチド又はタンパク質も、遺伝子工学的手法や有機合成などの公知の手法を用いて人工的に産生されたものでありうる。
【0020】
フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質の配列に特に制限はないが、本発明においては、当該ペプチド又はタンパク質のN末端アミノ酸残基、又はN末端アミノ酸残基及びN末端に隣接するアミノ酸残基(すなわちN末端から2番目のアミノ酸残基)が以下の特定のアミノ酸残基でないことが好ましい。具体的には、N末端アミノ残基は塩基性アミノ酸(例えばリジン残基やアルギニン残基)でないことが好ましい。さらに、2番目のアミノ酸残基は、側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基(例えばセリン、トレオニン、チロシン)、側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基(例えばアルギニン、リジン)、及び側鎖が−H、−CH、−C(CH)C及び−CHCONHであるアミノ酸残基(例えばグリシン、アラニン、イソロイシン、アスパラギン)のいずれでもないことが好ましい。
【0021】
しかしながら、本発明は、フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質のN末端アミノ酸残基、又はN末端アミノ酸残基及び2番目のアミノ酸残基が上記特定のアミノ酸残基である態様を特別除外するものではない。このような態様のより具体的な例としては、フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質のN末端から2番目のアミノ酸残基が、後に詳述する活性化配列のN末端から2番目のアミノ酸残基よりも、フッ素導入反応の活性化効率が低いものである場合が挙げられる。このような場合、活性化配列の付加によりフッ素導入効率を向上させることができる。
【0022】
[2.活性化配列]
フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質は、フッ素導入前に、活性化配列が付加されることによって、活性化ペプチド又はタンパク質に変換される。
活性化配列は、特定の2アミノ酸残基からなるペプチド配列を少なくとも含む。特定の2アミノ酸残基は、それぞれ、天然アミノ酸に由来する残基であってもよいし、非天然アミノ酸に由来する残基であってもよい。
活性化配列のN末端アミノ酸残基は、塩基性アミノ酸である。具体的には、リジン残基やアルギニン残基が挙げられる。
【0023】
また、活性化配列のN末端アミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基(すなわちN末端から2番目のアミノ酸残基)としては、以下が挙げられる。
・側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基(水酸基は、通常の水酸基及びフェノール性水酸基を含む)
・側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基
・側鎖が−H、−CH、−C(CH)C又は−CHCONHであるアミノ酸残基
これらのアミノ酸残基のうち、フッ素導入反応の活性化効率の高さに鑑みると、側鎖に(フェノール性水酸基でない)通常の水酸基を有するアミノ酸残基、及び側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸残基がより好ましい。
【0024】
側鎖に水酸基を有するアミノ酸の例としては、セリン、トレオニン及びチロシン等が挙げられる。側鎖に正電荷を有する親水性アミノ酸の例としては、リジン及びアルギニン等が挙げられる。側鎖が−Hであるアミノ酸の例としてはグリシン、側鎖が−CHであるアミノ酸の例としてはアラニン、側鎖が−C(CH)Cであるアミノ酸の例としてはイソロイシン、側鎖が−CHCONHであるアミノ酸の例としてはアスパラギンが挙げられる。
【0025】
2番目のアミノ残基が天然のα−アミノ酸のものである場合、活性化効率の高さは、おおよそ、セリン、アルギニン、トレオニン、リジン、グリシン、アラニン、イソロイシン、チロシン及びアスパラギンの順であることが本発明者らによって確認されている。
【0026】
活性化配列は、2番目のアミノ酸残基に結合したスペーサ基を含むことができる。スペーサ基は、後述のフッ素含有アミノ酸導入工程で用いられる酵素の基質結合ポケットに好ましく適合する構造を活性化配列に与えることができる。
【0027】
スペーサ基は、ペプチド鎖であってもよいし、それ以外の構造であってもよい。ペプチド以外の構造の一例としては2価の有機基が挙げられる。2価の有機基としては、アルキレンオキシド含有基が挙げられる。アルキレンオキシド含有基におけるアルキレンオキシドとしては、炭素数2〜6のアルキレンオキシドであってよく、好ましくは、エチレンオキシドやプロピレンオキシドである。2価の有機基は、これらを繰り返し単位とするポリアルキレンオキシド含有基であってよい。また、スペーサ基には、本発明と組み合わされる種々の測定法や検出法等に応じて、当業者によって適宜、同位体標識や蛍光標識等がなされていてもよい。
【0028】
[3.活性化配列の付加]
活性化配列は、フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質に付加される。好ましくは、活性化配列は、フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質のN末端に付加される。これにより、活性化されたペプチド又はタンパク質を得る。
【0029】
活性化配列がN末端アミノ酸残基及びそれに隣接するアミノ酸残基(N末端から2番目のアミノ酸残基)のみからなる場合は、当該2番目のアミノ酸残基が、フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質に結合する。活性化配列がスペーサ基を有する場合は、スペーサ基が、フッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質に結合する。
【0030】
活性化配列を付加する手法は、活性化配列とフッ素を導入すべきペプチド又はタンパク質との結合様式に応じ、当業者が適宜選択することができる。
例えば、当該結合様式がペプチド結合である場合は、通常のペプチド合成法を用いることができる。より具体的には、ペプチド固相合成法などがある。表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズなどを固相として用い、ここから脱水反応によって1つずつアミノ酸鎖を伸長していく。目的とするペプチドの配列が出来上がったら固相表面から切り出し、目的の物質を得る。また、タンパク質のN末を任意の配列にするためには、大腸菌を用いたタンパク合成の段階で、操作した遺伝子を使用し任意の配列に組み替えることが可能である。
結合様式がペプチド結合でない場合(PEG鎖の場合等)は、対象となるリンカーの末端に活性エステル基(コハク酸イミド)等を用い、ペプチド・タンパク質のN末端のアミノ酸と反応させる方法で導入する。
【0031】
[4.フッ素を有するアミノ酸]
フッ素を有するアミノ酸は、アミノ酸の基本骨格(同一分子内にアミノ基とカルボキシル基とを有する構造)にフッ素が導入された分子である。例えば、基本骨格としての天然又は非天然アミノ酸に、フッ素置換によって、あるいはフッ素含有基による標識によってフッ素が導入された分子が挙げられる。フッ素の核種は問わないが、特に放射性同位体18Fは、PETプローブへの用途において有用である点で好ましい。
【0032】
フッ素を有するアミノ酸は、適宜、フッ素以外の標識や修飾をさらに有していることを許容する。標識の例としては、安定同位体標識や蛍光標識等が挙げられる。この場合、安定同位体による質量値や蛍光標識によるシグナルに基づいて測定や検出を行うことができる。修飾の例としては、酵素基質、抗原性物質による修飾等が挙げられる。この場合、酵素化学的手法又は酵素免疫科学的手法に基づいて検出や精製を行うことができる。
【0033】
フッ素を有するアミノ酸の具体例としては、以下が挙げられる。
・2−アミノ−3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)プロピオン酸
(すなわちペンタフルオロフェニルアラニン)
・2−アミノ−3−(4−フルオロメトキシフェニル)プロピオン酸
(すなわちフルオロメチルチロシン)
・2−アミノ−3−[4−(2−フルオロエトキシ)フェニル]プロピオン酸
(すなわちフルオロエチルチロシン)
【0034】
この中でも、本発明においては、2−アミノ−3−(4−フルオロメトキシフェニル)プロピオン酸、及び2−アミノ−3−[4−(2−フルオロエトキシ)フェニル]プロピオン酸が好ましく、それらの放射性同位体標識体である2−アミノ−3−(4−[18F]フルオロメトキシフェニル)プロピオン酸、2−アミノ−3−[4−(2−[18F]フルオロエトキシ)フェニル]プロピオン酸がより好ましい。フッ素を有するアミノ酸は、後述のアミノアシルtRNA合成酵素及びアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素に応じて適宜選択される。
【0035】
[5.フッ素を有するアミノ酸の導入]
活性化されたペプチド又はタンパク質に、フッ素を有するアミノ酸が導入される。この際、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)及びアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素を含む試薬溶液が用いられる。
【0036】
tRNAは、アミノアシルtRNA合成酵素によるアミノアシル化でアミノアシルtRNAへ変換されることができ、且つアミノアシルtRNAのアミノアシル基がアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素によりペプチド又はタンパク質に転移されることができるものであればよく、天然物及び非天然物を問わない。従って、tRNAの構造としてクローバーリーフ二次構造を有しているか否かは限定されず、その大きさも限定されない。tRNAは、公知の方法に従って当業者が適宜合成することにより、あるいは、市販のものを購入することにより用意することができる。
具体的なtRNAの例としては、tRNAPheやtRNALeu等が挙げられる。
【0037】
アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)は、一般的にはリボソームでの遺伝暗号の翻訳における基質となるアミノアシルtRNAの合成を担う酵素である。aaRSとしては、野生型及び変異型を問わない。aaRSは、公知の方法(例えば遺伝子工学的手法)に従って当業者が適宜合成することにより、あるいは、市販のものを購入することにより用意することができる。
【0038】
野生型aaRSとしては、タンパク質を合成するのに使われる20種のアミノ酸それぞれに対する基質特異性を有する20種が存在し、例えば、リジンに対応するaaRSはリジルtRNA合成酵素と呼ばれる。本発明においては、導入すべきフッ素含有アミノ酸におけるアミノ酸基本骨格に対応する(すなわちアミノ酸基本骨格に対し基質特異性を有する)aaRSを用いることができる。
【0039】
変異型aaRSとしては、フッ素不含アミノ酸に対する基質特異性よりも、フッ素含有アミノ酸に対する基質特異性の方が高くなるような変異が生じているaaRS変異体が用いられる。例えば、フェニルアラニンに対する基質特異性よりも、フルオロメチルチロシンやフルオロエチルチロシンに対する基質特異性の方が高い、大腸菌由来フェニルアラニルtRNA合成酵素変異体(Ala294→Gly)(Chembiochem, 2002, 02-03, 235-237)を用いることができる。
【0040】
アミノアシルtRNAタンパク質合成転移酵素は、tRNAの3’末端に付加されたアミノ酸をタンパク質のアミノ末端(N末端)へ転移し、遺伝暗号を介することなくペプチド結合形成反応を触媒する酵素である。アミノアシルtRNAタンパク質転移酵素としては、野生型であってもよいし、野生型と同様の機能を有する変異型であってもよい。アミノアシルtRNAタンパク質転移酵素は、公知の方法(例えば遺伝子工学的手法)に従って当業者が適宜合成することにより、あるいは、市販のものを購入することにより用意することができる。
【0041】
アミノアシルtRNAタンパク質転移酵素の具体例として、ロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素(L/F転移酵素)を用いることができる。L/F転移酵素は大腸菌由来であり、tRNAに結合しているフェニルアラニンや、ロイシン、メチオニンなどの疎水性アミノ酸を、N末端にリジンやアルギニンを有するペプチド又はタンパク質に転移させる反応を触媒する酵素である。
【0042】
試薬溶液中には、フッ素含有アミノ酸の導入反応に好適な緩衝液、塩類、還元剤、ポリアミン、及びエネルギー源等を適宜含ませることができる。緩衝液としては、例えばHepes緩衝液、Tris−酢酸等が挙げられる。塩類としては、マグネシウム塩、カリウム塩等が挙げられる。還元剤としては、DTT(ジチオトレイトール)等が挙げられる。ポリアミンとしては、スペルミジン等が挙げられる。エネルギー源としては、アデノシン三リン酸等が挙げられる。より具体的な例を挙げると、終濃度での組成が、10mM MgCl、1mM Spermidine、50mM Hepes緩衝液(pH7.6)であるA液と、終濃度での組成が2.5mM ATP、20mM KCl、2mM DTTであるB液とを混合して用いることができる。
【0043】
試薬溶液と活性化ペプチド又はタンパク質との混合液中における各成分の濃度は、任意に設定することができる。
例えば、混合液中における活性化ペプチド又はタンパク質とtRNAとのモル比は、30:1〜1:1、さらに好ましくは10:1〜4:1である。本発明においては、tRNAは系中で再利用されるため、使用量は少量でよい。混合液中における活性化ペプチド又はタンパク質とアミノアシルtRNA合成酵素とのモル比は、100:1〜2:1、さらに好ましくは50:1〜20:1である。混合液中における活性化ペプチド又はタンパク質とフッ素含有アミノ酸とのモル比は、100:1〜1:1000、より好ましくは25:1〜1:400、さらに好ましくは1:1〜1:120である。フッ素含有アミノ酸は、活性化ペプチド又はタンパク質に比べて少量でも導入されることが可能である一方、活性化ペプチド又はタンパク質に比べて過剰量であっても反応系を阻害することはないと考えられる。従って、放射性同位体フッ素含有アミノ酸のように貴重なフッ素含有アミノ酸を使用する場合は、活性化ペプチド又はタンパク質に対してフッ素含有アミノ酸の使用量を少量に抑えることができ、反対に活性化ペプチド又はタンパク質の方がより貴重である場合は、フッ素含有アミノ酸に対して活性化ペプチド又はタンパク質の使用量を少量に抑えることができる。
【0044】
温度およびpHなどの反応条件は、使用する酵素などに応じて任意の条件を選択できる。反応温度は、好ましくは0℃〜50℃、さらに好ましくは4℃〜37℃である。反応pHは、好ましくは6〜9、さらに好ましくは7〜8である。反応時間は、好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは15分〜120分である。
【0045】
フッ素を有するアミノ酸の導入においては、活性化ペプチド又はタンパク質と、導入すべきフッ素含有アミノ酸、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素、及びアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素を含む試薬溶液とが混合された反応液を調製する。各成分は一度に混合されてもよいし、任意の順番で混合されてもよい。また、フッ素含有アミノ酸は1種又は複数種を用いることができる。
反応液がインキュベーション(例えば37℃、60分間)に供されることよりフッ素含有アミノ酸導入反応が進行する。
反応の停止は、例えばTFA(トリフルオロ酢酸)水溶液を混合することにより行うことができる。
反応停止後は、濃縮脱塩処理によりフッ素含有アミノ酸が導入されたペプチド又はタンパク質を目的物として回収する。例えばZipTip処理により濃縮脱塩処理することにより、精製された目的物を精製することができる。
【0046】
[6.ペプチド又はタンパク質のフッ素導入キット]
本発明のキットは、上述のペプチド又はタンパク質にフッ素を導入する方法に使用することができるものであり、アイテムとして、少なくとも、上記の活性化配列を有する活性化剤、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素、及びアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素を含む。各アイテムは、それぞれ別々の容器中に存在する状態で提供されてもよいし、例えば、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素、及びアミノアシルtRNAタンパク質転移酵素が1個の容器中に共存する状態で提供されてもよい。
好ましくは、フッ素含有アミノ酸が1種又は複数種含まれる。また、上述の緩衝液、塩類、還元剤、ポリアミン、及びエネルギー源等が含まれていてもよい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0048】
[実験例1]
ペプチド1:Lys-Ser-Cys(C2H5)-Aka (配列番号1;Lys-Ser-Cys-Ala)を用意した。
2番目のアミノ酸残基はセリン残基であり、3番目のアミノ酸残基はシステインにエチル基が導入されたものであり、4番目のアミノ酸残基は蛍光基アクリドン骨格を有するアラニン残基である。アミノ酸残基システインへのエチル基の導入は、エチルブロマイドを用いて行うことができる。また、上記ペプチド1:Lys-Ser-Cys(C2H5)-Akaにおける “Aka”は、蛍光基アクリドン骨格を有するアラニン残基を便宜的に表したものである。
【0049】
別途、ペプチド1の重水素置換体であるペプチド2:Lys-Ser-Cys(C2D5)-Aka(配列番号2;Lys-Ser-Cys-Ala)を用意した。
2番目のアミノ酸残基はセリン残基であり、3番目のアミノ酸残基はシステインにD5エチル基が導入されたものであり、4番目のアミノ酸残基は蛍光基アクリドン骨格を有するアラニン残基である。アミノ酸残基システインへのD5エチル基の導入は、D5エチルブロマイドを用いて行うことができる。また、上記ペプチド2:Lys-Ser-Cys(C2D5) -Akaにおける “Aka”は、蛍光基アクリドン骨格を有するアラニン残基を便宜的に表したものである。
【0050】
ペプチド1とペプチド2とを当量混合し、MALDI-TOF-MSを用いて質量分析を行った。得られたマススペクトルを図1に示す。図1に示されるように、ペプチド1とペプチド2とのピーク(m/z 628.58, 633.61)は、5.03Daの質量差をもって同じ強度で検出された。つまり、ペプチド1とペプチド2とのイオン化効率が同じであることを確認した。図1においては、便宜的に、ペプチド1を[Lys-Xaa-Cys(C2H5)-Aka]、ペプチド2を[Lys-Xaa-Cys(C2D5)-Aka]と表記している。ペプチド中のシステイン残基を安定同位体によって標識しておくと、NEXTA反応効率をMSにて定量する際に、内部標準物質として使用することができる(重原子標識法)。
【0051】
[実験例2]
ペプチド1に含フッ素アミノ酸を導入した。具体的には、ペプチド1について、下記の組成を有する反応溶液(濃度はいずれも終濃度を表す。)を調製し、37 ℃、60分間インキュベートした。
【0052】
<反応溶液組成>
A液(終濃度での組成が、10mM MgCl、1mM Spermidine、50mM Hepes緩衝液(pH 7.6))の10倍希釈液と、B液(終濃度での組成が、2.5mM ATP、20mM KCl、2mM DTT)の10倍希釈液との混合液中、以下の成分を含む。
【0053】
ペプチド1(Lys-Ser-Cys(C2H5)-Aka) 7.3μM
E.Coli由来フェニルアラニンtRNA(tRNAPhe) 8.0μM
フェニルアラニルtRNA合成酵素(PheRS)変異体(aA294G) 0.66μM
[18F]フルオロメチル−L−チロシン(feTyr) 1.0mM
0.20μMロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素 3.8nM
【0054】
反応溶液に終濃度が3%になるようにトリフルオロ酢酸水溶液を投入し、ZipTip処理を行った。回収物に、使用したペプチド1と同量のペプチド2(ペプチド1におけるXaaとペプチド2におけるXaaとは同じアミノ酸残基(セリン残基)である。)を混合し、得られた混合物をMALDI-TOF-MSを用いて質量分析した。ペプチド2のピーク強度に対する、ペプチド2の強度とペプチド1(すなわち上記反応の未反応物)の強度との差の比を反応効率として求めた。その結果を図2に示す。反応効率は49%であった。
【0055】
[実験例3〜20]
ペプチド1における2番目のアミノ酸残基(セリン残基)を、セリン残基及びシステイン残基以外の18種の天然アミノ酸残基にそれぞれ変更した各ペプチド[Lys-Xaa-Cys(C2H5)-Aka]を用意した。ここで、”Xaa” は、便宜的に、セリン残基及びシステイン残基以外の18種の天然アミノ酸残基を表している。
ペプチド3:Lys-Ala-Cys(C2H5)-Aka(配列番号3;Lys-Ala-Cys-Ala)
ペプチド5:Lys-Asp-Cys(C2H5)-Aka(配列番号5;Lys-Asp-Cys-Ala)
ペプチド7:Lys-Glu-Cys(C2H5)-Aka(配列番号7;Lys-Glu-Cys-Ala)
ペプチド9:Lys-Phe-Cys(C2H5)-Aka(配列番号9;Lys-Phe-Cys-Ala)
ペプチド11:Lys-Gly-Cys(C2H5)-Aka(配列番号11;Lys-Gly-Cys-Ala)
ペプチド13:Lys-His-Cys(C2H5)-Aka(配列番号13;Lys-His-Cys-Ala)
ペプチド15:Lys-Ile-Cys(C2H5)-Aka(配列番号15;Lys-Ile-Cys-Ala)
ペプチド17:Lys-Lys-Cys(C2H5)-Aka(配列番号17;Lys-Lys-Cys-Ala)
ペプチド19:Lys-Leu-Cys(C2H5)-Aka(配列番号19;Lys-Leu-Cys-Ala)
ペプチド21:Lys-Met-Cys(C2H5)-Aka(配列番号21;Lys-Met-Cys-Ala)
ペプチド23:Lys-Asn-Cys(C2H5)-Aka(配列番号23;Lys-Asn-Cys-Ala)
ペプチド25:Lys-Pro-Cys(C2H5)-Aka(配列番号25;Lys-Pro-Cys-Ala)
ペプチド27:Lys-Gln-Cys(C2H5)-Aka(配列番号27;Lys-Gln-Cys-Ala)
ペプチド29:Lys-Arg-Cys(C2H5)-Aka(配列番号29;Lys-Arg-Cys-Ala)
ペプチド31:Lys-Thr-Cys(C2H5)-Aka(配列番号31;Lys-Thr-Cys-Ala)
ペプチド33:Lys-Val-Cys(C2H5)-Aka(配列番号33;Lys-Val-Cys-Ala)
ペプチド35:Lys-Trp-Cys(C2H5)-Aka(配列番号35;Lys-Trp-Cys-Ala)
ペプチド37:Lys-Tyr-Cys(C2H5)-Aka(配列番号37;Lys-Tyr-Cys-Ala)
3番目のアミノ酸残基はシステインにエチル基が導入されたものであり、4番目のアミノ酸残基は蛍光基アクリドン骨格を有するアラニン残基である。
【0056】
別途、ペプチド2における2番目のアミノ酸残基(セリン残基)を、セリン残基及びシステイン残基以外の18種の天然アミノ酸残基にそれぞれ変更した各ペプチド[Lys-Xaa-Cys(C2D5)-Aka]を用意した。ここで、”Xaa” は、便宜的に、セリン残基及びシステイン残基以外の18種の天然アミノ酸残基を表している。
ペプチド4:Lys-Ala-Cys(C2D5)-Aka(配列番号4;Lys-Ala-Cys-Ala)
ペプチド6:Lys-Asp-Cys(C2D5)-Aka(配列番号6;Lys-Asp-Cys-Ala)
ペプチド8:Lys-Glu-Cys(C2D5)-Aka(配列番号8;Lys-Glu-Cys-Ala)
ペプチド10:Lys-Phe-Cys(C2D5)-Aka(配列番号10;Lys-Phe-Cys-Ala)
ペプチド12:Lys-Gly-Cys(C2D5)-Aka(配列番号12;Lys-Gly-Cys-Ala)
ペプチド14:Lys-His-Cys(C2D5)-Aka(配列番号14;Lys-His-Cys-Ala)
ペプチド16:Lys-Ile-Cys(C2D5)-Aka(配列番号16;Lys-Ile-Cys-Ala)
ペプチド18:Lys-Lys-Cys(C2D5)-Aka(配列番号18;Lys-Lys-Cys-Ala)
ペプチド20:Lys-Leu-Cys(C2D5)-Aka(配列番号20;Lys-Leu-Cys-Ala)
ペプチド22:Lys-Met-Cys(C2D5)-Aka(配列番号22;Lys-Met-Cys-Ala)
ペプチド24:Lys-Asn-Cys(C2D5)-Aka(配列番号24;Lys-Asn-Cys-Ala)
ペプチド26:Lys-Pro-Cys(C2D5)-Aka(配列番号26;Lys-Pro-Cys-Ala)
ペプチド28:Lys-Gln-Cys(C2D5)-Aka(配列番号28;Lys-Gln-Cys-Ala)
ペプチド30:Lys-Arg-Cys(C2D5)-Aka(配列番号30;Lys-Arg-Cys-Ala)
ペプチド32:Lys-Thr-Cys(C2D5)-Aka(配列番号32;Lys-Thr-Cys-Ala)
ペプチド34:Lys-Val-Cys(C2D5)-Aka(配列番号34;Lys-Val-Cys-Ala)
ペプチド36:Lys-Trp-Cys(C2D5)-Aka(配列番号36;Lys-Trp-Cys-Ala)
ペプチド38:Lys-Tyr-Cys(C2D5)-Aka(配列番号38;Lys-Tyr-Cys-Ala)
3番目のアミノ酸残基はシステインにD5エチル基が導入されたものであり、4番目のアミノ酸残基は蛍光基アクリドン骨格を有するアラニン残基である。
【0057】
上記の実験例2と同様にして、ペプチド1,2の代わりに、2番目のアミノ酸残基”Xaa”が互いに同じアミノ酸残基であるペプチド3,4; ペプチド5,6; ペプチド7,8; ペプチド9,10; ペプチド11,12; ペプチド13,14; ペプチド15,16; ペプチド17,18; ペプチド19,20; ペプチド21,22; ペプチド23,24; ペプチド25,26; ペプチド27,28; ペプチド29,30; ペプチド31,32; ペプチド33,34; ペプチド35,36; ペプチド37,38をそれぞれ用いて、重水素置換されていない各ペプチド3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37への含フッ素アミノ酸の導入の反応効率を求めた。それらの結果を図2に示す。
【0058】
図2に示されるように、”Xaa”がセリンやスレオニンである場合に高い反応効率が示された。また、ヒスチジン、フェニルアラニン及びトリプトファンのように疎水性の高い側鎖を有するアミノ酸である場合は反応効率が13〜17%と低いが、疎水性の側鎖を有するアミノ酸の中でも水酸基を含むチロシンの場合は反応効率が25%と比較的高い。このことから、”Xaa”が側鎖に水酸基を含む場合(特に好ましくは通常の水酸基を含む場合)に高い反応効率が達成される傾向が確認された。
【0059】
さらに、”Xaa”が負電荷を持つアスパラギン酸やグルタミン酸の場合は反応効率が19〜21と低いが、正電荷を持つアルギニンやリジンの場合は反応効率が33〜40%と高い(ヒスチジンも正電荷を持つが、上述のように疎水性が高いため反応効率は低い)。このことから、”Xaa”が親水性であり且つ正電荷を有する場合に高い反応効率が達成される傾向が確認された。
【配列表フリーテキスト】
【0060】
配列番号1〜38は、人工配列である。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]