特許第6090732号(P6090732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090732
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】光インプリント方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20170227BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   B29C59/02
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-110843(P2012-110843)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-239535(P2013-239535A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222691
【氏名又は名称】東洋合成工業株式会社
【住所又は居所】千葉県市川市上妙典1603番地
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平二丁目1番1号
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
【住所又は居所】大阪府大阪市北区大深町3番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中川 勝
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平2丁目1番1号 国立大学法人東北大学内
(72)【発明者】
【氏名】伊東 駿也
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平2丁目1番1号 国立大学法人東北大学内
(72)【発明者】
【氏名】尹 哲民
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平2丁目1番1号 国立大学法人東北大学内
(72)【発明者】
【氏名】大幸 武司
【住所又は居所】千葉県印西市若萩四丁目2番地1 東洋合成工業株式会社 感光材研究所内
(72)【発明者】
【氏名】三宅 弘人
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区新在家1239 株式会社ダイセル 総合研究所内
(72)【発明者】
【氏名】湯川 隆生
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区新在家1239 株式会社ダイセル 総合研究所内
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/125800(WO,A1)
【文献】 特表2008−536716(JP,A)
【文献】 特開2010−079163(JP,A)
【文献】 特開2010−183064(JP,A)
【文献】 特開2011−165831(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/096594(WO,A1)
【文献】 特開2007−001250(JP,A)
【文献】 特開2002−201219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAを2種類以上と、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBを1種類以上と、光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物で形成された光硬化性樹脂組成物層を、基板と表面に凹凸パターンが形成されたモールドとで挟み込むことにより、前記モールド表面の前記凹凸パターンに前記光硬化性樹脂組成物層を充填する成形工程と、
活性エネルギー線を照射して前記光硬化性樹脂組成物層を硬化することにより光硬化物とする光硬化工程と、
前記モールドを離型することにより、前記基板上に、前記光硬化物からなり前記凹凸パターンが表面に転写された硬化樹脂パターンを形成する離型工程を有し、
前記光重合性モノマーAが、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa1と、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にジフルオロメチル基又はトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa2と、を含み、
前記光重合性モノマーBが、(メタ)アクリル基を二つ以上有する化合物であり、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAグリシジルエーテル重縮合物のアクリル酸付加物、グリセロール 1,3−ジグリセロレイトジアクリレート、1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、およびメタクリル酸 3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルからなる群から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする光インプリント方法。
【請求項2】
前記光重合性モノマーa1が、1H,1H−ヘプタフルオロブチルアクリレート、1H,1H−ノニルフルオロペンチルアクリレート、1H,1H−ウンデシルフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H−トリデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H−ペンタデカフルオロオクチルアクリレート、1H,1H−ヘプタデカフルオロノニルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ウンデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ペンタデカフルオロノニルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、および1H,1H,2H,2H−ノナデカフルオロウンデシルアクリレート、からなる群からから選択される少なくとも1種であり、
前記光重合性モノマーa2が、前記光重合性モノマーa1とは異なり、1H,1H−ヘプタフルオロブチルアクリレート、1H,1H−ノニルフルオロペンチルアクリレート、1H,1H−ウンデシルフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H−トリデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H−ペンタデカフルオロオクチルアクリレート、1H,1H−ヘプタデカフルオロノニルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ウンデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ペンタデカフルオロノニルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ノナデカフルオロウンデシルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,8H−テトラデカフルオロオクチルアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、1H,1H,10H−オクタデカフルオロデシルアクリレート、1H,1H,10H−エイコサフルオロウンデシルアクリレート、1H,1H,2H,2H,6H−オクタフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H,2H,2H,7H−デカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,2H,2H,8H−ドデカフルオロオクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H,9H−テトラデカフルオロノニルアクリレート、1H,1H,2H,2H,10H−ヘキサデカフルオロデシルアクリレート、および1H,1H,2H,2H,11H−オクタデカフルオロウンデシルアクリレートからなる群からから選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項1に記載する光インプリント方法。
【請求項3】
前記硬化樹脂パターンの前記基板とは反対側の表面層は、前記硬化樹脂パターンの前記基板側の下層よりも、前記溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAの硬化物を多く含むことを特徴とする請求項1又は2に記載する光インプリント方法。
【請求項4】
前記硬化樹脂パターンの表面自由エネルギーが42mJ/m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載する光インプリント方法。
【請求項5】
前記モールドは、離型処理をしていないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載する光インプリント方法。
【請求項6】
前記成形工程を、ペンタフルオロプロパンを含む不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載する光インプリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にモールドの凹凸パターンが転写された硬化樹脂パターンを形成する光インプリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光インプリントは、光硬化性樹脂組成物を基板等に塗布して形成した光硬化性樹脂組成物層を、凹凸パターンが形成されたモールドと基板とで挟み込むことによりモールドの凹凸パターンに光硬化性樹脂組成物層を充填し、活性エネルギー線を照射してこの光硬化性樹脂組成物層を硬化することにより光硬化物とした後、モールドを離型することにより、基板上に、光硬化物からなり凹凸パターンが表面に転写された硬化樹脂パターンを得る方法であり、凹凸パターンが転写された硬化樹脂パターンを簡便に作ることができるため、近年注目されている技術である(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、光インプリントでは、光硬化物からモールドを離型する際に、この光硬化物からモールドが離型されずに、光硬化物が基板から剥離してしまう場合があるという問題や、光硬化物は基板から剥離しないが一部がモールドに付着してしまいパターンの欠陥が生じ、所望の凹凸パターンを有する硬化樹脂パターンを得ることができないという問題がある。特に、モールドを繰り返し使用すると、この問題が顕著である。
【0004】
このため、通常はモールドに離型処理を行っているが、繰り返してインプリントすると、この離型処理の効果が低下してくるという問題がある。
【0005】
また、例えば、フッ素化合物を光硬化性組成物に含有させ、フッ素化合物を表層部に配置させるようなレジスト膜を形成する技術が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この特許文献2の方法では、光硬化性組成物によっては、フッ素化合物が光硬化性組成物に十分溶解しないためか、十分な効果が得られないという問題がある。
【0006】
さらに、光硬化性樹脂組成物に同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物を配合するナノインプリント技術が開示され、このような問題を解決できるとしている(特許文献3参照)。しかしながら、やはり、光硬化性樹脂組成物の組成によっては同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物の他のモノマー成分への溶解度が低いためか、十分効果を発揮できるほど配合できないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6334960号明細書
【特許文献2】特開2009−83495号公報
【特許文献3】特開2009−191172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、光硬化性樹脂組成物の光硬化物である硬化樹脂パターンの基板からの剥離や、パターンの欠陥が無く、繰り返し安定的に硬化樹脂パターンを形成することができる光インプリント方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、溶解度パラメータsp値が特定範囲である光重合性モノマーを2種類以上と、溶解度パラメータsp値が特定範囲である光重合性モノマーを1種以上と、光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の光インプリント方法は、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAを2種類以上と、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBを1種類以上と、光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物で形成された光硬化性樹脂組成物層を、基板と表面に凹凸パターンが形成されたモールドとで挟み込むことにより、前記モールド表面の前記凹凸パターンに前記光硬化性樹脂組成物層を充填する成形工程と、活性エネルギー線を照射して前記光硬化性樹脂組成物層を硬化することにより光硬化物とする光硬化工程と、前記モールドを離型することにより、前記基板上に、前記光硬化物からなり前記凹凸パターンが表面に転写された硬化樹脂パターンを形成する離型工程を有することを特徴とする。
【0011】
前記光硬化性樹脂組成物は、前記溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAとして、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa1と、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にジフルオロメチル基又はトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa2とを含むことが好ましい。
【0012】
そして、前記硬化樹脂パターンの前記基板とは反対側の表面層は、前記硬化樹脂パターンの前記基板側の下層よりも、前記溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAの硬化物を多く含むことが好ましい。
【0013】
また、前記硬化樹脂パターンの表面自由エネルギーが42mJ/m以下であることが好ましい。
【0014】
前記モールドは、離型処理をしていなくてもよい。
【0015】
また、前記成形工程を、ペンタフルオロプロパンを含む不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶解度パラメータsp値が特定範囲である光重合性モノマーAを2種類以上と、溶解度パラメータsp値が特定範囲である光重合性モノマーBを一種以上と、光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物を用いることで、光硬化性樹脂組成物の光硬化物である硬化樹脂パターンの基板からの剥離や、パターンの欠陥が無く、繰り返し安定的に、光インプリント法で硬化樹脂パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】光硬化物の製造方法の一例を示す断面図である。
図2】実施例1の硬化樹脂パターンの表面を走査型電子顕微鏡により観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1を参照して、本発明について詳細に説明する。図1は本発明の光インプリント方法の一例を示す断面図である。
【0019】
本発明の光インプリント方法は、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAを2種類以上と、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBを1種類以上と、光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物で形成された光硬化性樹脂組成物層を、基板と表面に凹凸パターンが形成されたモールドとで挟み込むことにより、モールド表面の凹凸パターンに光硬化性樹脂組成物層を充填する成形工程と、活性エネルギー線を照射して光硬化性樹脂組成物層を硬化することにより光硬化物とする光硬化工程と、モールドを離型することにより、基板上に、光硬化物からなり凹凸パターンが表面に転写された硬化樹脂パターンを形成する離型工程を有する方法である。
【0020】
具体的には、まず、図1(a)に示すように、光硬化性樹脂組成物を基板1上に塗布等することにより、基板1上に光硬化性樹脂組成物層2を形成する。
【0021】
基板1は、光硬化性樹脂組成物層2を設けることができるものであればよく、例えば、通常の光インプリントにおいて用いられている基板でよい。具体例としては、ガラス、シリカガラス、石英、サファイア等の透明無機基板、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート(PET)、トリアセチルセルロース等の透明合成樹脂基板や、シリコンウェハ等の半導体基板、GaAs、InAs、GaN等の化合物半導体、金属又は金属酸化物等が挙げられる。そして、基板1の表面は、光硬化性樹脂組成物層2との接着性の向上や光硬化性樹脂組成物層2の塗布状態改良等のために、前処理が施されていてもよい。前処理の具体例としては、湿式の表面洗浄やプラズマ、オゾン洗浄等による表面改質、シランカップリング剤のような接着性向上剤による処理等が挙げられる。
【0022】
モールド3は、所望の凹凸のパターンが表面に形成されていればよい。モールド3の材質の例としては、石英ガラス、合成石英ガラス、シリカガラスや、シリコン、シリコンカーバイド、酸化シリコン、ニッケル等を挙げることができる。モールド3の外観は、通常の光インプリントにおいて用いられているモールドの外観と同様のものでよく、例えば外観が直方体状又はロール状であってもよい。
【0023】
また、モールド3の表面に形成されている凹凸のパターンは、通常の光インプリントにおいて用いられているモールドの表面に形成されている凹凸のパターンと同様のものであってよいが、それに限定されるものでない。例えば、モールドの材料であるシリカ等の表面に窪みを形成することにより凹部を形成したモールドとしてもよく、この場合、相対的に表面側に突出した部分が凸部となる。また、モールドの材料の表面に突起を設けることにより凸部を形成したモールドとしてもよく、この場合、相対的に内側に窪んだ部分が凹部となる。さらに、原版の材料の表面に窪みまたは突起を設けることにより形成した凹凸パターンを有する原版を用い、この原版を鋳型として形成したモールドとしてもよい。凹凸のパターンの各凹部の断面の形状は、正方形、長方形、半月形、またはそれら形状に類似した形状等でもよい。
【0024】
本発明においては、基板1もしくはモールド3の少なくとも一方は、詳しくは後述する光硬化工程で用いられる活性エネルギー線に対して透過性を示すものを使用する必要がある。
【0025】
なお、通常の光インプリントでは、モールドの離型性を良好にするために、モールドの表面に離型処理を施すが、本発明の光インプリント方法は離型性に非常に優れているため、離型処理を施さないモールドを用いることができる。勿論、本発明においても、モールド表面に離型処理を施してもよい。離型処理は気相法や液相法等によって、パーフルオロ系又は炭化水素系の高分子化合物、アルコキシシラン化合物又はトリクロロシラン化合物、ダイヤモンドライクカーボン等に例示される公知の離型処理剤を用いて行うことができる。
【0026】
光硬化性樹脂組成物層2を形成する光硬化性樹脂組成物は、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAを2種類以上と、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBを1種類以上と、光重合開始剤とを含む。
【0027】
本発明における光重合性モノマーとは、活性エネルギー線により重合する化合物である。光重合性モノマーは、ラジカル重合して硬化するラジカル硬化タイプ、活性エネルギー線によりカチオン重合して硬化する光カチオン硬化タイプ、これらの併用タイプのいずれでもよい。
【0028】
ラジカル硬化タイプの光重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基等のラジカル重合性を示す官能基を有する化合物が挙げられる。
【0029】
光カチオン硬化タイプの光重合性モノマーとしては、ビニル基、エポキシ基や、オキセタニル基等の光カチオン重合性を示す官能基を有する化合物が挙げられる。
【0030】
そして、本発明においては、このような光重合性モノマーのうち、特定の光重合性モノマー、すなわち、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAを2種類以上と、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBとを用いる。
【0031】
溶解度パラメータsp値(以下、単に「sp値」とも記載する)は下記式(1)で表され、凝集エネルギー密度の平方根で定義される。式(1)において、Eはモル凝集エネルギー、Vはモル容積である。溶解度パラメータsp値の単位は、本発明では(Jcm−31/2を用いる。
溶解度パラメータsp値=(E/V)1/2 ・・・・・(1)
【0032】
溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAは2種類以上用いることで本発明の効果を発揮するが、特に、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAとして、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa1と、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にジフルオロメチル基又はトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa2とを用いることが好ましい。光重合性モノマーa1や光重合性モノマーa2は、それぞれ1種以上用いることができる。そして、光硬化性樹脂組成物が含有する溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAの中で、質量基準で一番多い成分が、光重合性モノマーa1であることが好ましい。また、これら溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAは、5〜20個のフッ素原子及び(メタ)アクリレートを有する化合物であることが好ましい。
【0033】
溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa1の具体例としては、1H,1H−ヘプタフルオロブチルアクリレート(1H,1H-heptafluorobutyl acrylate)(sp値:15.47)、1H,1H−ノニルフルオロペンチルアクリレート(1H,1H-nonylfluoropentyl acrylate)(sp値:14.92)、1H,1H−ウンデシルフルオロヘキシルアクリレート(1H,1H-undecylfluorohexyl acrylate)(sp値:14.49)、1H,1H−トリデカフルオロヘプチルアクリレート(1H,1H-tridecafluoroheptyl acrylate)(sp値:14.14)、1H,1H−ペンタデカフルオロオクチルアクリレート(1H,1H-pentadecafluorooctyl acrylate)(sp値:13.85)、1H,1H−ヘプタデカフルオロノニルアクリレート(1H,1H-heptadecafluorononyl acrylate)(sp値:13.60)、1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルアクリレート(1H,1H,2H,2H-nonafluorohexyl acrylate)(sp値:15.03)、1H,1H,2H,2H−ウンデカフルオロヘプチルアクリレート(1H,1H,2H,2H-undecafluoroheptyl acrylate)(sp値:14.65)、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチルアクリレート(1H,1H,2H,2H-tridecafluorooctyl acrylate)(sp値:14.28)、1H,1H,2H,2H−ペンタデカフルオロノニルアクリレート(1H,1H,2H,2H-pentadecafluorononyl acrylate)(sp値:13.99)、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(1H,1H,2H,2H−heptadecafluorodecyl acrylate)(sp値:13.75)1H,1H,2H,2H−ノナデカフルオロウンデシルアクリレート(1H,1H,2H,2H-nonadecafluoroundecyl acrylate)(sp値:13.55)などが挙げられる。
【0034】
溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にジフルオロメチル基又はトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa2の具体例としては先に挙げた光重合性モノマーa1のほか、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート(1H,1H,5H-octafluoropentyl acrylate)(sp値:15.20)、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルアクリレート(1H,1H,6H-decafluorohexyl acrylate)(sp値:14.75)、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート(1H,1H,7H-dodecafluoroheptyl acrylate)(sp値:14.35)、1H,1H,8H−テトラデカフルオロオクチルアクリレート(1H,1H,8H-tetradecafluorooctyl acrylate)(sp値:14.04)、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート(1H,1H,9H-hexadecafluorononyl acrylate)(sp値:13.78)、1H,1H,10H−オクタデカフルオロデシルアクリレート(1H,1H,10H-octadecafluorodecyl acrylate)(sp値:13.56)、1H,1H,10H−エイコサフルオロウンデシルアクリレート(1H,1H,10H-eicosafluoroundecyl acrylate)(sp値:13.37)、1H,1H,2H,2H,6H−オクタフルオロヘキシルアクリレート(1H,1H,2H,2H,6H-octafluorohexyl acrylate)(sp値:15.28)、1H,1H,2H,2H,7H−デカフルオロヘプチルアクリレート(1H,1H,2H,2H,7H-decafluoroheptyl acrylate)(sp値:14.84)、1H,1H,2H,2H,8H−ドデカフルオロオクチルアクリレート(1H,1H,2H,2H,8H-dodecafluorooctyl acrylate(sp値:14.48)、1H,1H,2H,2H,9H−テトラデカフルオロノニルアクリレート(1H,1H,2H,2H,9H-tetradecafluorononyl acrylate(sp値:14.18)、1H,1H,2H,2H,10H−ヘキサデカフルオロデシルアクリレート(1H,1H,2H,2H,10H-hexadecafluorodecyl acrylate)(sp値:13.92)、1H,1H,2H,2H,11H−オクタデカフルオロウンデシルアクリレート(1H,1H,2H,2H,11H-octadecafluoroundecyl acrylate)(sp値:13.70)などを挙げることができる。
【0035】
また、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBの具体例としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(sp値:20.1)、プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(sp値:22.6)、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAグリシジルエーテル重縮合物のアクリル酸付加物(sp値:21.5)、グリセロール 1,3−ジグリセロレイトジアクリレート(sp値:26.0)、1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール(sp値:22.0)、メタクリル酸 3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル(sp値:22.6)等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基や、ビニル基等のラジカル重合性を示す官能基を二つ以上有する化合物が好ましい。なお、溶解度パラメータspが20以上である光重合性モノマーBの溶解度パラメータsp値の上限値は特に限定されないが、溶解度パラメータsp値が20〜27の範囲であることが好ましい。
【0036】
上記の溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーは、1種類でも2種類以上用いてもよい。また、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBの一部として、sp値が17以上20未満の光重合性モノマーを用いることもできる。但し、このsp値が17以上20未満の光重合性モノマーは、sp値が20以上である光重合性モノマーと共に用いて、それぞれのsp値にモル分率を乗じた和として算出されたsp値が20以上になる範囲で用いる必要がある。
【0037】
なお、本発明ではハンセン(Hansen)の溶解度パラメータを用い、単位は(Jcm−31/2を用いる。ハンセンの溶解度パラメータの計算は、Hoy法を用い、ソフトウエア(Computer Chemistry Consultancy社製 Hoy Solubility Parameter Calculation Software)により算出した。
【0038】
光重合開始剤は、ベンゾイン・ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、キサントン類等の公知慣用の光ラジカル重合開始剤が挙げられ、公知慣用の増感剤と組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、光硬化性樹脂組成物は、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、溶剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤等が挙げられる。
【0040】
光硬化性樹脂組成物が含有する各成分の濃度は特に限定されないが、例えば、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAは、合計で6〜15質量%、さらには10〜15質量%とすることができる。そして、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAのうち、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa1は3〜10質量%、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲であり且つ末端にジフルオロメチル基又はトリフルオロメチル基を有する光重合性モノマーa2は1〜8質量%であることが好ましい。また、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBは70〜93質量%であることが好ましい。そして、光重合開始剤は0.5〜10質量%であることが好ましい。
【0041】
このように、本発明においては、特定の光重合性モノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いることにより、例えば、得られる硬化樹脂パターン(光硬化物4)の表面自由エネルギーを42mJm−2以下とすることができるためか、後述する実施例に示すように、離型工程でのモールドの離型が容易になり、繰り返しインプリントしても、光硬化性樹脂組成物の光硬化物である硬化樹脂パターン(光硬化物4)の基板1からの剥離や、硬化樹脂パターン(光硬化物4)は基板1から剥離しないが一部がモールド3に付着してしまう現象が防止でき、欠陥の無い硬化樹脂パターンが安定的に得られることを見出した。
【0042】
これは、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲の光重合性モノマーAが1種類のみでは、溶解度パラメータspが20以上の光重合性モノマーBとの相溶性が悪く、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲の光重合性モノマーAの硬化樹脂パターンの表面改質効果を発揮し難いが、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲の光重合性モノマーAを2種類以上用いると、溶解度パラメータspが20以上の光重合性モノマーBへの相溶性が向上し、そのため、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲の光重合性モノマーAの硬化樹脂パターン表面への偏析を顕著に促進し、表面改質効果が向上したと推測できる。その結果、得られる硬化樹脂パターンの表面自由エネルギーを42mJm−2以下とすることができ、モールド3の離型が容易になり、繰り返しインプリントしても、硬化樹脂パターンの基板1からの剥離や、硬化樹脂パターンは基板1から剥離しないが一部がモールド3に付着してしまう現象が防止でき、安定的に欠陥の無い硬化樹脂パターンが得られる。そして、モールド3に離型処理をしなくても、繰り返しインプリントしても欠陥の無い硬化樹脂パターンが得られる。
【0043】
ここで、硬化樹脂パターンの基板1からの剥離や、パターンの欠陥が無く、繰り返し安定的に硬化樹脂パターンを形成することができるという本発明の効果を発揮するためには、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAを2種類以上と、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBを1種類以上とを含む必要があり、例えば、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5である光重合性モノマーAの代わりに、溶解度パラメータsp値が13.5未満の光重合性モノマーを用いても、不溶なため本発明の効果を発揮することはできない。また、特許文献2や特許文献3記載されるように、単に、フッ素化合物や同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物を含有する光硬化性樹脂組成物を用いるだけでは、本発明の効果を発揮することはできない。また、特許文献2では、フッ素化合物を表層部に配置させるようにしているが、これに用いられているフッ素化合物は本発明のような重合性が無く、硬化樹脂の上に形成されその厚さは5nm以下であり、その効果は限定的且つ不安定あるという点で本発明とは異なるものであり、本発明の効果を発揮することはできない。
【0044】
なお、表面自由エネルギーは公知の接触角測定器を用いて測定することができる。即ち、例えば、D.K.Owens et al, J. App. Sci.、13巻、1741ページ(1969年)に記載されるように、2種類の異なる液体を用いて、測定対象の表面の接触角(接触角)を測定し、それらの接触角から求めことができる。
【0045】
具体的には、硬化樹脂膜の表面自由エネルギーは、下記式(2)を用いて求める。
γ(1+cosθ)=2(γγ)0.5+2(γγ)0.5・・・・(2)
【0046】
式(2)において、γは液体の表面自由エネルギー、γは液体の分散成分、γは液体の極性成分、γは硬化樹脂膜の分散成分、γは硬化樹脂膜の極性成分、θは液体の接触角を表す。また、液体の表面自由エネルギーγは、液体の分散成分γと液体の極性成分γの和(γ+γ)である。そして、本発明では、水とジヨードメタンの2種類の液体を用い、それぞれの液体を硬化樹脂膜(硬化樹脂パターン)上に同量滴下し、θ/2法により接触角を求める。θ/2法においては、硬化樹脂膜上に液滴により形成された微小液滴形状は円の一部と仮定でき、幾何の定理より液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、硬化樹脂膜表面に対する角度の2倍が接触角θとなる。なお、水とジヨードメタンの分散成分γと極性成分γは下記表1の値を用いた。
【0047】
水及びジヨードメタンそれぞれについて、θ/2法で求めた接触角θ、分散成分γ、極性成分γ、表面自由エネルギーγを、式(2)に代入し、その連立方程式から硬化樹脂膜の分散成分γと極性成分γを求める。そして、この分散成分γと極性成分γの和(γ+γ)が、硬化樹脂膜の表面自由エネルギーγである。
【0048】
【表1】
【0049】
光硬化性樹脂組成物を用いて、基板1に光硬化性樹脂組成物層2を形成する方法は特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂組成物の塗布や滴下、具体的には、スピンコート、ロールコート、ディップコート、グラビアコート、ダイコート、カーテンコート、インクジェット塗布及びディスペンサー塗布等が挙げられる。光硬化性樹脂組成物層2の厚さは特に限定されないが、例えば、5nm〜2μmが好ましく、10nm〜1μmがより好ましい。
【0050】
次に、図1(b)に示すように、基板1とモールド3とで光硬化性樹脂組成物層2を挟みこむことにより、モールド3表面の凹凸パターンに光硬化性樹脂組成物層2を充填する(成形工程)。この際、基板1をモールド3に押圧しても、モールド3を基板1に押圧してもよく、基板1及びモールド3の両方を押圧してもよい。基板1やモールド3を押圧する力は、例えば、0.01〜5MPa程度とすることができる。異物混入によるモールド3の破壊を防ぐために、押圧する力は前記押圧の範囲内においても小さいほど好ましい。また、力をかけず、モールド3や基板1の自重による押圧でもよい。このように、基板1に対してモールド3を押圧することにより、モールド3の凹凸パターンに光硬化性樹脂組成物層2が充填されて成形される。光硬化性樹脂組成物層2とモールド3とを共に水平に保って光硬化性樹脂組成物層2とモールド3とを接触させることが好ましいが、得られるパターンに支障が生じなければ、水平に保つことに限定する必要はない。成形工程では、従来の光インプリントにおける装置を用いることができる。
【0051】
次いで、図1(c)に示すように、モールド3の凹凸パターンに光硬化性樹脂組成物層2を充填した状態で光硬化性樹脂組成物層2に活性エネルギー線を照射し、硬化させて光硬化物4とする(光硬化工程)。露光に用いる光源は、光硬化性樹脂組成物層2が硬化する波長の光を照射できるものであればよい。光源の例としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、水銀キセノンランプ、XeCl、KrFやArF等のエキシマーレーザー、紫外あるいは可視光レーザー、及び紫外あるいは可視光LED等が挙げられる。光の照射量は、光硬化性樹脂組成物層2を硬化させることができる量であればよい。本発明を工業的に実施する際には、通常、10J/cm以下の範囲内で照射量を選定することが好ましく、3J/cm以下の範囲内で照射量を選定することがより好ましい。なお、基板1及びモールド3のうち、照射する光に対して実質的に透明である部材の側から光硬化性樹脂組成物層2に光を照射する。
【0052】
その後、図1(d)に示すように、光硬化物4からモールド3を離型することにより、モールド3の凹凸パターンが表面に転写された硬化樹脂パターン(光硬化物4)を得ることができる(離型工程)。本発明においては、上記特定の光重合性モノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いているので、この離型工程を良好に行なうことができ、モールド3と硬化樹脂パターンとが離型されずに硬化樹脂パターンが基板1から剥離してしまうということがなく、また、硬化樹脂パターンは基板1から剥離しないが硬化樹脂パターンの一部がモールドに付着してしまうことによりパターン欠陥が生じることもない。そして、同じモールド3を用いて光インプリントを複数回行っても、モールド3の凹凸パターンを精密に転写した凹凸のパターンを表面に有する硬化樹脂パターンを安定的に形成することができる。離型する際には、基板1とモールド3とを共に水平に保って離型することが好ましいが、水平に保つことに限定する必要はない。
【0053】
このようにして得られた硬化樹脂パターン(光硬化物4)は、硬化樹脂パターンの基板1とは反対側の表面層は、硬化樹脂パターンの基板1側の下層よりも、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAの硬化物を多く含むものとすることができる。つまり、後述する実施例に示すように、硬化樹脂パターンの表面層、すなわち、モールド3と接触する側に、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAの硬化物を偏析させることができる。
【0054】
このようにして光インプリントにより硬化樹脂パターンを形成する際に、成形工程を、ペンタフルオロプロパンを含む不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、成形工程に加えて、光硬化工程も、ペンタフルオロプロパンを含む不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。なお、雰囲気のペンタフルオロプロパン濃度は、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。ペンタフルオロプロパンを含む不活性ガス雰囲気下で行うことにより、本発明の効果、すなわち、光硬化性樹脂組成物の光硬化物である硬化樹脂パターンの基板1からの剥離や、パターンの欠陥が無く、繰り返し安定的に、光インプリント法で硬化樹脂パターンを形成することができるという効果が、よりいっそう発揮される。これは、本発明においては、上述した特定の光重合性モノマーと光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物を用いているため、光硬化性樹脂組成物層2、ひいては光硬化物4(硬化樹脂パターン)がペンタフルオロプロパンを吸収することにより、表面自由エネルギーが小さくなるためと考えられる。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、二酸化炭素等が挙げられる。
【0055】
また、成形工程を、酸素濃度が2体積%以下である混合ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、成形工程に加えて、光硬化工程も、酸素濃度が2体積%以下である雰囲気下で行ってもよい。酸素濃度が2体積%以下である雰囲気下で行うことにより、光ラジカル重合での酸素阻害による硬化不良を防ぐことができる。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
<光硬化性樹脂組成物の調製>
表2に示されるsp値13.5〜15.5の光重合性モノマーA、sp値20以上の光重合性モノマーB及び光重合開始剤を、表2に示される割合で混合して、実施例1〜9及び比較例1〜3の光硬化性樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0057】
溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAを2種類以上と、溶解度パラメータsp値が20以上である光重合性モノマーBを用いた実施例1〜9では、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAを6質量%以上と多量に混合しているが、均一な光硬化性樹脂組成物が得られた。また、溶解度パラメータsp値が13.5〜15.5の範囲である光重合性モノマーAとして、モノマー1のみを4.5質量%混合した比較例1も、均一な光硬化性樹脂組成物が得られた。なお、比較例2及び3は、相溶性が悪く白濁した液しか得られず、基板上に均一に塗布できなかったので、以下の工程は行わなかった。
【0058】
【表2】
【0059】
<表面自由エネルギーの算出と表面偏析の確認>
次に、溶融シリカ基板に(3−アクリロイルプロピル)トリメトキシシランを塗布して、溶融シリカ基板上に密着層を形成した。この溶融シリカ基板上に形成された密着層上に、先に調製した実施例1〜9及び比較例3光硬化性樹脂組成物をそれぞれスピンコートで塗布し、それぞれ光硬化性樹脂組成物層を形成した。このようにして形成した光硬化性樹脂組成物層に、窒素雰囲気下、波長が365nmで強度が100mW/cmの紫外線を15秒間照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させることにより、光硬化物を得た。
【0060】
得られた光硬化物について、式(2)を用いる上述した方法で表面自由エネルギーを求めた。具体的には、まず、水とジヨードメタンの2種類の液体を用い、それぞれの液体を光硬化物上に同量滴下し、θ/2法により接触角を求めた。次に、水及びジヨードメタンそれぞれについて、θ/2法で求めた接触角θ、表1に示す分散成分γ及び極性成分γ、表面自由エネルギーγを、式(2)に代入し、その連立方程式から硬化樹脂膜の分散成分γと極性成分γを求めた。そして、この分散成分γと極性成分γの和(γ+γ)として光硬化物の表面自由エネルギーγを求めた。結果を表3に示す。
【0061】
表3に示すように、実施例1〜9の光硬化性樹脂組成物の光硬化物は、いずれも表面自由エネルギーが比較例1に比べて小さく、42mJ/m以下であった。なお、表面自由エネルギーγを求めた光硬化物は、モールド表面の凹凸パターンが表面に転写されていない平らな形状であるが、凹凸パターンが表面に転写された光硬化物、すなわち、樹脂パターンとしても、表面自由エネルギーγは変わらない。すなわち、表面自由エネルギーを低下させる、溶解度パラメータsp値が13.75であり且つ末端にトリフルオロメチル基を有するモノマー1とsp値が13.78であり且つ末端にジフルオロメチル基を有するモノマー2が表面に偏析していた。
【0062】
【表3】
【0063】
<X線光電子分光法による表面偏析の確認>
X線光電子分光装置(アルバック・ファイ社製PHI5600)により、上記<表面自由エネルギーの算出と表面偏析の確認>で作成した実施例1の光硬化物の元素分析を行い、炭素原子(C)に対するフッ素原子(F)の割合であるF/C値を測定した。テイクオフ角度90°でのF/C値は0.077であり、テイクオフ角度15°でのF/C値は0.213であった。テイクオフ角度が小さいときにF/C値が大きくなることから、F原子が膜表面近傍に多く存在した。すなわち、溶解度パラメータsp値が13.75のモノマー1とsp値が13.78のモノマー2が表面に偏析していた。また、上記<表面自由エネルギーの算出と表面偏析の確認>で作成した実施例2〜9の光硬化物についても同様にして元素分析を行ったところ、実施例1と同様に、光重合性モノマーa1及び光重合性モノマーa2が表面に偏析していることが確認された。
【0064】
<パターン形成における繰り返し>
上記<表面自由エネルギーの算出と表面偏析の確認>と同様にして、溶融シリカ基板に(3−アクリロイルプロピル)トリメトキシシランを塗布して、溶融シリカ基板上に密着層を形成し、この溶融シリカ基板上に形成された密着層上に、先に調製した実施例1〜9及び比較例3の光硬化性樹脂組成物をそれぞれスピンコートで塗布し、それぞれ光硬化性樹脂組成物層を形成した。なお、光硬化性樹脂組成物層は、厚さが0.8μmになるようにした。この光硬化性樹脂組成物層に、表面に凹凸パターンを有するシリカモールド(NIM−PH350、NTT−AT製)を押し付け、シリカモールドの凹部に光硬化性樹脂組成物層を充填した(成形工程)。その後、波長が365nmで強度が100mW/cmの紫外線を15秒間照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させることにより、光硬化物とした(光硬化工程)。次に、シリカモールドを離型することにより、光硬化物からなり、シリカモールドの凹凸が表面に転写された硬化樹脂パターンを得た(離型工程)。この光硬化性樹脂組成物層を形成する工程、成形工程、光硬化工程及び離型工程を順に行う操作、すなわち、インプリント操作を繰り返した。なお、成形工程については、酸素が1体積%でペンタフルオロプロパンが98体積%の窒素との混合ガス雰囲気下で行い、その他の工程については、大気中で行った。また、実施例1については、全ての工程を大気中でも行った。得られた硬化樹脂パターンを観察し、パターン欠陥が出なかった繰り返し回数を、表4に示す。
【0065】
表4に示すように、本発明の光インプリント方法では、ペンフルオロプロパンの存在無しでインプリント操作を25回以上繰り返しても、硬化樹脂パターンに欠陥は観察されなかった。また、本発明の光インプリント方法では、ペンタフルオロプロパンの存在下では、100回以上繰り返しても、硬化樹脂パターンに欠陥は観察されなかった。実施例1の光硬化性樹脂組成物を用いてペンタフルオロプロパンの存在下で行った場合において、繰り返し回数が11回目と101回目でそれぞれ形成された硬化樹脂パターンの表面を、走査型電子顕微鏡で観察した写真を、図2(a)(11回目)及び図2(b)(101回目)に示す。図2に示すように、11回目と101回目でパターンの変形等が無いことが確認できた。一方、比較例1では、11回行うと、パターン欠陥が生じた。なお、実施例1〜9及び比較例1とも、離型工程において、硬化樹脂パターンの基板からの剥離は生じなかった。
【0066】
【表4】
【符号の説明】
【0067】
1 基板 2 光硬化性樹脂組成物層
3 モールド 4 光硬化物
図1
図2