特許第6195166号(P6195166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195166
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】自動車の車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20170904BHJP
   B62D 29/04 20060101ALI20170904BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20170904BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B62D25/20 G
   B62D25/20 D
   B62D29/04 A
   B62D25/08 F
   B62D25/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-60379(P2014-60379)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-182586(P2015-182586A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】鮎澤 正太郎
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−100548(JP,A)
【文献】 特開2006−200702(JP,A)
【文献】 特開2013−126811(JP,A)
【文献】 特開2010−155539(JP,A)
【文献】 特開2003−191862(JP,A)
【文献】 特開2012−179953(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/128619(WO,A1)
【文献】 特開平04−334681(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/080340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04,25/08,25/20,29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向中央に前後方向に配置された逆U字状断面のフロアトンネル部(11a)と、前記フロアトンネル部(11a)の車幅方向両側に連続する左右一対のフロア部(11b)とを備える車体フロア(11)を、CFRP製のアンダーフロアパネル(25)とCFRP製のアッパーフロアパネル(26)とにより構成する自動車の車体構造であって、
前記車体フロア(11)の前端から起立する前壁(11f)を備え、前記前壁(11f)の前面に左右一対のフロントサイドフレーム(21)の取付台座(20)を固定し、前記取付台座(20)の車幅方向内端を前記トンネル部側壁(25b)の前端に臨ませ、前記車体フロア(11)の車幅方向外端に左右一対のサイドシル(12)を接合するとともに、CFRPシートを積層して構成した1枚板のダッシュパネルロア(17)を前記車体フロア(11)の前記前壁(11f)に接合し、前記サイドシル(12)の前端から起立するフロントピラーロア(13)を前記ダッシュパネルロア(17)の車幅方向外端に接合し、前記ダッシュパネルロア(17)にステアリングシャフトが通過する開口(17a)を形成し、前記車体フロア(11)は前記サイドシル(12)よりも車幅方向外側に突出する突出部(11c)を備え、少なくとも前記突出部(11c)内にエネルギー吸収部材(30)を配置し、前記アンダーフロアパネル(25)は、トンネル部上壁(25a)と、前記トンネル部上壁(25a)の車幅方向外端から下方に延びる左右一対のトンネル部側壁(25b)と、前記左右一対のトンネル部側壁(25b)の下端から車幅方向外側に延びるフロア部下壁(25c)とを備え、前記アッパーフロアパネル(26)は、前記左右一対のトンネル部側壁(25b)の上下方向中間部から車幅方向外側に延びる左右一対のフロア部上壁(26a)を備え、前記トンネル部上壁(25a)および前記トンネル部側壁(25b)の接合部(27)は相互にオーバーラップして肉厚が増加するとともに、前記トンネル部側壁(25b)および前記フロア部下壁(25c)の接合部(28)は相互にオーバーラップして肉厚が増加することを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
前記トンネル部上壁(25a)および前記トンネル部側壁(25b)の接合部(27)は稜線を跨いで相互にオーバーラップして下面側および車幅方向内面側に肉厚が増加するとともに、前記トンネル部側壁(25b)および前記フロア部下壁(25c)の接合部(28)は稜線を跨いで相互にオーバーラップして車幅方向外面側および上面側に肉厚が増加することを特徴とする、請求項1に記載の自動車の車体構造。
【請求項3】
左右一対の前記トンネル部側壁(25b)は前方に向かって車幅方向外側に拡開することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の自動車の車体構造。
【請求項4】
前記車体フロア(11)は、水平部(11d)の前端において車幅方向に延びる第1屈曲部(B1)から斜め前上方に傾斜する前側傾斜部(11e)と、前記前側傾斜部(11e)の前端において車幅方向に延びる第2屈曲部(B2)から上方に起立する前記前壁(11f)と、前記水平部(11d)の後端において車幅方向に延びる第3屈曲部(B3)から斜め後上方に傾斜する後側傾斜部(11g)とを備えることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の自動車の車体構造。
【請求項5】
前記車体フロア(11)の前記前壁(11f)の上端は前記サイドシル(12)の上端と同じ高さにあることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の自動車の車体構造。
【請求項6】
前記アンダーフロアパネル(25)はUDプリプレグを12層に積層したCFRPパネルで構成され、前記接合部(27,28)のオーバーラップ量は30mmであることを特徴とする、請求項1〜請求項の何れか1項に記載の自動車の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向中央に前後方向に配置された逆U字状断面のフロアトンネル部と、前記フロアトンネル部の車幅方向両側に連続する左右一対のフロア部とを備える車体フロアを、CFRP製のアンダーフロアパネルとCFRP製のアッパーフロアパネルとにより構成する自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
CFRPでバスタブ状に構成した車体フロアのダッシュパネルロアの後壁に凹部を形成するとともに、車体フロアのフロアパネルにフロアトンネル部を形成し、凹部の稜線とフロアトンネル部の稜線とを連続させることで、前面衝突の衝突荷重をダッシュパネルロアからフロアトンネル部に効率的に伝達して吸収するものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また自動車のFRP製のフロアトンネル部を、所定形状に切断した複数のプリプレグ片を成形型内で組み合わせて加圧成形することで、プリプレグの歩留りを向上させながら製品の板厚を精度良く管理するものが、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2013/128619
【特許文献2】特開2008−290421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載されたものは、ダッシュパネルロアからフロアトンネル部への衝突荷重の伝達経路について開示しているが、フロアトンネル部を構成するCFRPパネルの強度を向上するための構成については何ら開示していない。
【0006】
また上記特許文献2に記載されたものは、CFRP製のフロアトンネル部のプリプレグの歩留りの向上および板厚の管理を目的とするもので、衝突荷重に対する強度を向上するための構成については何ら開示していない。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、フロアトンネル部を一体に備えるCFRP製の車体フロアの軽量化、強度向上および成形性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車幅方向中央に前後方向に配置された逆U字状断面のフロアトンネル部と、前記フロアトンネル部の車幅方向両側に連続する左右一対のフロア部とを備える車体フロアを、CFRP製のアンダーフロアパネルとCFRP製のアッパーフロアパネルとにより構成する自動車の車体構造であって、前記車体フロアの前端から起立する前壁を備え、前記前壁の前面に左右一対のフロントサイドフレームの取付台座を固定し、前記取付台座の車幅方向内端を前記トンネル部側壁の前端に臨ませ、前記車体フロアの車幅方向外端に左右一対のサイドシルを接合するとともに、CFRPシートを積層して構成した1枚板のダッシュパネルロアを前記車体フロアの前記前壁に接合し、前記サイドシルの前端から起立するフロントピラーロアを前記ダッシュパネルロアの車幅方向外端に接合し、前記ダッシュパネルロアにステアリングシャフトが通過する開口を形成し、前記車体フロアは前記サイドシルよりも車幅方向外側に突出する突出部を備え、少なくとも前記突出部内にエネルギー吸収部材を配置し、前記アンダーフロアパネルは、トンネル部上壁と、前記トンネル部上壁の車幅方向外端から下方に延びる左右一対のトンネル部側壁と、前記左右一対のトンネル部側壁の下端から車幅方向外側に延びるフロア部下壁とを備え、前記アッパーフロアパネルは、前記左右一対のトンネル部側壁の上下方向中間部から車幅方向外側に延びる左右一対のフロア部上壁を備え、前記トンネル部上壁および前記トンネル部側壁の接合部は相互にオーバーラップして肉厚が増加するとともに、前記トンネル部側壁および前記フロア部下壁の接合部は相互にオーバーラップして肉厚が増加することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記トンネル部上壁および前記トンネル部側壁の接合部は稜線を跨いで相互にオーバーラップして下面側および車幅方向内面側に肉厚が増加するとともに、前記トンネル部側壁および前記フロア部下壁の接合部は稜線を跨いで相互にオーバーラップして車幅方向外面側および上面側に肉厚が増加することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、左右一対の前記トンネル部側壁は前方に向かって車幅方向外側に拡開することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0011】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記車体フロアは、水平部の前端において車幅方向に延びる第1屈曲部から斜め前上方に傾斜する前側傾斜部と、前記前側傾斜部の前端において車幅方向に延びる第2屈曲部から上方に起立する前記前壁と、前記水平部の後端において車幅方向に延びる第3屈曲部から斜め後上方に傾斜する後側傾斜部とを備えることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0012】
た請求項に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記車体フロアの前記前壁の上端は前記サイドシルの上端と同じ高さにあることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0013】
た請求項に記載された発明によれば、請求項1〜請求項の何れか1項の構成に加えて、前記アンダーフロアパネルはUDプリプレグを12層に積層したCFRPパネルで構成され、前記接合部のオーバーラップ量は30mmであることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、車幅方向中央に前後方向に配置された逆U字状断面のフロアトンネル部と、フロアトンネル部の車幅方向両側に連続する左右一対のフロア部とを備える車体フロアが、CFRP製のアンダーフロアパネルとCFRP製のアッパーフロアパネルとにより構成される。
【0015】
アンダーフロアパネルは、トンネル部上壁と、トンネル部上壁の車幅方向外端から下方に延びる左右一対のトンネル部側壁と、左右一対のトンネル部側壁の下端から車幅方向外側に延びるフロア部下壁とを備え、トンネル部上壁およびトンネル部側壁の接合部は相互にオーバーラップして肉厚が増加するとともに、トンネル部側壁およびフロア部下壁の接合部は相互にオーバーラップして肉厚が増加するので、フロアトンネル部をアンダーフロアパネルだけで構成して軽量化を図りながら必要な強度を確保することができる。しかもアッパーフロアパネルは、左右一対のトンネル部側壁の上下方向中間部から車幅方向外側に延びる左右一対のフロア部上壁を備えるので、アッパーフロアパネルを平坦なCFRPパネルで構成して成形時の賦形を容易にするとともに、応力が集中し易い屈曲部をなくして強度を高めることができる。
【0016】
また車体フロアの前端から起立する前壁を備え、前壁の前面に左右一対のフロントサイドフレームの取付台座を固定し、取付台座の車幅方向内端をトンネル部側壁の前端に臨ませたので、フロントサイドフレームに入力した前面衝突の衝突荷重を取付台座からフロアトンネル部に効率良く伝達して吸収することができる。
【0017】
また車体フロアの車幅方向外端に左右一対のサイドシルを接合するとともに、CFRPシートを積層して構成した1枚板のダッシュパネルロアを車体フロアの前壁に接合し、サイドシルの前端から起立するフロントピラーロアをダッシュパネルロアの車幅方向外端に接合したので、1枚板であるために軽量であるが比較的に強度が低いダッシュパネルロアに入力した前面衝突の衝突荷重を、車体フロアの前壁に伝達するだけでなくフロントピラーロアを介してサイドシルの前端に分散することで、ダッシュパネルロアの破壊を抑制することができる。しかもダッシュパネルロアにステアリングシャフトが通過する開口を形成したので、ダッシュパネルロアの後方から前方へのステアリングシャフトの取りまわしが容易になる。
【0018】
また車体フロアはサイドシルよりも車幅方向外側に突出する突出部を備え、少なくとも突出部内にエネルギー吸収部材を配置したので、側面衝突の衝突荷重をサイドシルよりも先に車体フロアの突出部に入力させ、車体フロアの突出部内に配置したエネルギー吸収部材の圧壊により衝突エネルギーの一部を吸収することで、サイドシルの車幅方向内側への倒れを防止することができる。
【0019】
また請求項2の構成によれば、トンネル部上壁およびトンネル部側壁の接合部は稜線を跨いで相互にオーバーラップして下面側および車幅方向内面側に肉厚が増加するとともに、トンネル部側壁およびフロア部下壁の接合部は稜線を跨いで相互にオーバーラップして車幅方向外面側および上面側に肉厚が増加するので、フロアトンネル部をアンダーフロアパネルだけで構成して軽量化を図りながら必要な強度を確保することができる。
【0020】
また請求項3の構成によれば、左右一対のトンネル部側壁は前方に向かって車幅方向外側に拡開するので、フロントサイドフレームに入力した前面衝突の衝突荷重を、取付台座の位置に影響されずにフロアトンネル部に効率良く伝達することができる。
【0021】
また請求項4の構成によれば、車体フロアは、水平部の前端において車幅方向に延びる第1屈曲部から斜め前上方に傾斜する前側傾斜部と、前側傾斜部の前端において車幅方向に延びる第2屈曲部から上方に起立する前壁と、水平部の後端において車幅方向に延びる第3屈曲部から斜め後上方に傾斜する後側傾斜部とを備えるので、車体フロアをCFRPで一体成形する際にプリプレグに皺が寄り難くなって賦形が容易になる。
【0022】
た請求項の構成によれば、車体フロアの前壁の上端はサイドシルの上端と同じ高さにあるので、車体フロアの前壁に入力した前面衝突の衝突荷重をサイドシルに効率的に伝達して吸収することができる。
【0023】
た請求項の構成によれば、アンダーフロアパネルはUDプリプレグを12層に積層したCFRPパネルで構成され、接合部のオーバーラップ量は30mmであるので、接合部の強度を充分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】自動車の車体フレームの斜視図。
図2図1の2方向矢視図。
図3図1の3方向矢視図。
図4図3の4A方向および4B方向矢視図。
図5図4の5−5線断面図。
図6図3の6方向矢視図。
図7図4の7−7線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。尚、本明細書において前後方向、左右方向(車幅方向)および上下方向とは、運転席に着座した乗員を基準として定義される。
【0026】
図1図3に示すように、CFRP(カーボン繊維強化樹脂)を主たる材料とする自動車の車体フレームは、車体フロア11と、車体フロア11の左右両側部に沿って前後方向に延びる左右一対のサイドシル12,12と、左右のサイドシル12,12の前端から前上方に起立する左右一対のフロントピラーロア13,13と、左右のサイドシル12,12の後端から後上方に起立する左右一対のリヤピラー14,14と、左右のサイドシル12,12の前後方向中間部から上方に起立する左右一対のセンターピラー15,15と、左右のフロントピラーロア13,13の上端から左右のセンターピラー15,15の上端を経由して左右のリヤピラー14,14の上端に延びる左右一対の上部部材16,16とを備える。上部部材16,16は、前半部がフロントピラーアッパーを構成し、後半部がルーフサイドレールを構成する。
【0027】
車体フロア11の前端と左右のフロントピラーロア13,13の前面とに平板状のダッシュパネルロア17が接合され、車体フロア11の後端と左右のリヤピラー14,14の後面とに平板状の後部隔壁18が接合され、 後部隔壁18の後端からリヤパーシェル19が後方に水平に延出する。車体フロア11の前端に左右一対のアルミニウム合金製の取付台座20,20が固定され、取付台座20,20の前端に左右一対のアルミニウム合金製のフロントサイドフレーム21,21の後端が固定される。車体フロア11の後端から左右一対のリヤサイドフレーム22,22が後方に延びており、リヤピラー14,14およびリヤサイドフレーム22,22が左右一対のリヤホイールハウスインナー23,23で接合される。そして左右のセンターピラー15,15の上端間がルーフアーチ24で接合される。
【0028】
図7に示すように、車体フロア11は、車幅方向中央部を前後方向に延びる逆U字状のフロアトンネル部11aと、フロアトンネル部11aの車幅方向両側に連続すると左右一対のフロア部11b,11bとを備える。アンダーフロアパネル25は、トンネル部上壁25aと、トンネル部上壁25aの車幅方向外端から下方に延びる左右一対のトンネル部側壁25b,25bと、トンネル部側壁25b,25bの下端から車幅方向外側に延びるフロア部下壁25c,25cとを備え、左右一対のアッパーフロアパネル26,26のフロア部上壁26a,26aは、フロア部下壁25c,25cの上面に沿うように略平坦に形成される。
【0029】
アンダーフロアパネル25およびアッパーフロアパネル26,26は、カーボン繊維のUDプリプレグを12層に積層して所定形状に賦形した状態で硬化させたもので、12層のCFRPシートのカーボン連続繊維の配向方向は、前後方向を0°としたときに、+60゜、−60゜、0゜、0゜、−60゜、+60゜の2回の繰り返しである。
【0030】
フロアトンネル部11aは、アンダーフロアパネル25のトンネル部上壁25aおよび左右一対のトンネル部側壁25b,25bで構成されており、トンネル部上壁25aおよびトンネル部側壁25b,25bの接合部27は12層のCFRPシートを長さ30mmに亙ってオーバーラップさせたもので、そのオーバーラップ部分で肉厚が2倍になっている。またトンネル部側壁25b,25bおよびフロア部下壁25c,25cの接合部28は12層のCFRPシートを長さ30mmに亙ってオーバーラップさせたもので、そのオーバーラップ部分で肉厚が2倍になっている。同様に、トンネル部側壁25b,25bおよびアッパーフロアパネル26のフロア部上壁26a,26aの接合部29は12層のCFRPシートをオーバーラップさせたもので、そのオーバーラップ部分で肉厚が2倍になっている。
【0031】
車体フロア11の車幅方向外端部では、アンダーフロアパネル25のフロア部下壁25cの車幅方向外端を上向きに折り曲げた接合フランジ25dと、アッパーフロアパネル26のフロア部上壁26aの車幅方向外端を上向きに折り曲げた接合フランジ26bとが重ね合わされて接合される。車体フロア11の車幅方向外端部は、車幅方向中央部に比べて上下方向に厚くなっており、その厚くなった部分に上下一対のエネルギー吸収部材30,30が配置される。エネルギー吸収部材30,30は衝撃吸収性能に優れたPA(ポリアミド)あるいはナイロン製の波板状の部材で構成される。
【0032】
エネルギー吸収部材30,30の車幅方向内側には支持壁31が接着により固定されており、支持壁31の車幅方向外面に形成した嵌合溝にエネルギー吸収部材30,30が嵌合して接着により接合される。そしてエネルギー吸収部材30,30の上面がアッパーフロアパネル26の下面に接着により接合され、エネルギー吸収部材30,30の下面がアンダーフロアパネル25の上面に接着により接合される。
【0033】
支持壁31の車幅方向内側であってフロア部11bの厚さが変化する部分に、前後方向に延びるCFRP製(あるいはアルミニウム製)の荷重分散フレーム32が配置される。荷重分散フレーム32の上面および下面はそれぞれアッパーフロアパネル26の下面およびアンダーフロアパネル25の上面に接着により接合され、かつ車幅方向外面は支持壁31の車幅方向内面に接着により接合される。荷重分散フレーム32の車幅方向内側のフロア部11bの内部に波板状のコア33,33が配置され、その上面および下面がそれぞれアッパーフロアパネル26の下面およびアンダーフロアパネル25の上面に接着により接合される。
【0034】
サイドシル12は、アウター部材34およびインナー部材35を接合して閉断面に構成されており、その内部に複数の隔壁板36…が前後方向に所定間隔で配置される。サイドシル12は、車体フロア11の車幅方向外端部、つまりエネルギー吸収部材30の上部において、アッパーフロアパネル26の上面に載置されて接着により接合されるが、車体フロア11の車幅方向外端に形成した突出部11cがサイドシル12の車幅方向外端よりも距離αだけ車幅方向外側に突出しており、従って突出部11c内に延びるエネルギー吸収部材30の車幅方向外端部はサイドシル12の車幅方向外端よりも距離αだけ車幅方向外側に突出する。そしてサイドシル12の車幅方向外端と、アッパーフロアパネル26およびアンダーフロアパネル25の接合フランジ26b,25dに、CFRP製の板材よりなる断面クランク状の連結部材37の上下端部がそれぞれ接着により接合される。
【0035】
サイドシル12を車体フロア11に接合した状態で、サイドシル12の上端と車体フロア11の前壁11fの上端とは同じ高さに整列する(図3参照)。
【0036】
図5に示すように、車体フロア11は、前後方向中央に位置する水平部11dと、水平部11dの前端から斜め前上方に傾斜する前側傾斜部11eと、前側傾斜部11eの前端から上方に起立する前壁11fと、水平部11dの後端から斜め後上方に傾斜する後側傾斜部11gと、後側傾斜部11gの後端から後方に延びる後側水平部11hとを備える。水平部11dおよび前側傾斜部11eの境界の第1屈曲部B1と、前側傾斜部11eおよび前壁11f間の第2屈曲部B2と、水平部11dおよび後側傾斜部11g間の第3屈曲部B3と、後側傾斜部11gおよび後側水平部11h間の第4屈曲部B4とは、車幅方向に沿って相互に平行に延びている。従って、車体フロア11のアンダーフロアパネル25およびアッパーフロアパネル26,26をCFRPで成形する際に、UDプリプレグに皺が寄り難くなって賦形が容易になる。
【0037】
図1図6に示すように、車体フロア11の前壁11fと左右のフロントピラーロア13,13とに接合されるダッシュパネルロア17は1枚のCFRP製の板材で構成されており、その下部には図示せぬステアリングシャフトが貫通する開口17aが形成される。車体フロア11の前壁11fの前面には左右一対の取付台座20,20が固定されており、左右の取付台座20,20の車幅方向内端の後方に、前方に向かって車幅方向外側に拡開するフロアトンネル部11aの左右一対のトンネル部側壁25b,25bの前端が対峙する。
【0038】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0039】
車両の前面衝突による衝突荷重がフロントサイドフレーム21,21に入力すると、その衝突荷重はフロントサイドフレーム21,21から取付台座20,20およびダッシュパネルロア17を介して車体フロア11の前壁11fに伝達される。このとき、軽量化を図るために1枚の板材で構成されたダッシュパネルロア17は衝突荷重を支持するだけの強度を有していないが、取付台座20,20の車幅方向内端部が車体フロア11のフロアトンネル部11aの左右のトンネル部側壁25b,25bの前端に臨んでいるため、衝突荷重を取付台座20,20からトンネル部側壁25b,25bに効率的に伝達し(図4(B)参照)、そこから車体フロア11の全体に分散して吸収することでダッシュパネルロア17の破壊を防止することができる。
【0040】
その際に、左右一対のトンネル部側壁25b,25bは前方に向かって車幅方向に拡開するので、フロントサイドフレーム21,21に入力した前面衝突の衝突荷重を、取付台座20,20の位置に影響されずにトンネル部側壁25b,25bに効率良く伝達することができる。
【0041】
また衝突荷重が伝達されるフロアトンネル部11aは、アンダーフロアパネル25のトンネル部上壁25aおよび左右のトンネル部側壁25b,25bからなり、トンネル部上壁25aおよびトンネル部側壁25b,25bの接合部27は相互にオーバーラップして肉厚が増加するとともに、トンネル部側壁25b,25bおよびフロア部下壁25c,25cの接合部28は相互にオーバーラップして肉厚が増加するので(図7参照)、フロアトンネル部11aをアンダーフロアパネル25だけで構成して軽量化を図りながら必要な強度を確保することができる。
【0042】
このとき、アンダーフロアパネル25はUDプリプレグを12層に積層したCFRPパネルで構成され、接合部27,28のオーバーラップ量は30mmであるので、接合部27,28の強度を充分に確保することができる。
【0043】
しかもアッパーフロアパネル26,26は、左右一対のトンネル部側壁25b,25bの上下方向中間部から車幅方向外側に延びる左右一対のフロア部上壁26a,26aを備えるので、アッパーフロアパネル26,26を平坦なCFRPパネルで構成して成形時の賦形を容易にするとともに、応力が集中し易い屈曲部をなくして強度を高めることができる。
【0044】
また車体フロア11の車幅方向外端に左右一対のサイドシル12,12を接合するとともに、ダッシュパネルロア17の下端を車体フロア11の前壁11fに接合し、サイドシル12,12の前端から起立するフロントピラーロア13,13をダッシュパネルロア17の車幅方向外端に接合したので、1枚板であるために軽量であるが比較的に強度が低いダッシュパネルロア17に入力した前面衝突の衝突荷重を、車体フロア11の前壁11fに伝達するだけでなくフロントピラーロア13,13を介してサイドシル12,12の前端に分散することで、ダッシュパネルロア17の破壊を抑制することができる。しかもダッシュパネルロア17にステアリングシャフトが通過する開口17aを形成したので、ダッシュパネルロア17の後方から前方へのステアリングシャフトの取りまわしが容易になる。
【0045】
その際に、車体フロア11の前壁11fの上端はサイドシル12,12の上端と同じ高さにあるので(図3参照)、車体フロア11の前壁11fに入力した前面衝突の衝突荷重をサイドシル12,12に効率的に伝達して吸収することができる。
【0046】
また車両の側面衝突による衝突荷重が車体フロア11の側部に入力するとき、車体フロア11はサイドシル12の車幅方向外端よりも車幅方向外側に突出する突出部11cを備え、その突出部11c内にエネルギー吸収部材30,30の少なくとも一部を配置したので(図7参照)、側面衝突の衝突荷重をサイドシル12よりも先に車体フロア11の突出部11cに入力させ、突出部11c内に配置したエネルギー吸収部材30,30の圧壊により衝突エネルギーの一部を吸収することで、サイドシル12は車幅方向内側に倒れることなく圧壊して衝突エネルギーの吸収効果が更に高められる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0048】
例えば、トンネル部上壁25a、トンネル部側壁25b,25bおよびフロア部下壁25c,25cのプリプレグの積層数およびオーバーラップ長さは実施の形態に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【符号の説明】
【0049】
11 車体フロア
11a フロアトンネル部
11b フロア部
11c 突出部
11d 水平部
11e 前側傾斜部
11f 前壁
11g 後側傾斜部
12 サイドシル
13 フロントピラーロア
17 ダッシュパネルロア
17a 開口
20 取付台座
21 フロントサイドフレーム
25 アンダーフロアパネル
25a トンネル部上壁
25b トンネル部側壁
25c フロア部下壁
26 アッパーフロアパネル
26a フロア部上壁
27 接合部
28 接合部
30 エネルギー吸収部材
B1 第1屈曲部
B2 第2屈曲部
B3 第3屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7