特許第6195167号(P6195167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195167
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   H02K9/19 B
   H02K9/19 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-71409(P2014-71409)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-195648(P2015-195648A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】伊東 悠太
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−007023(JP,A)
【文献】 特開2013−115848(JP,A)
【文献】 特開2014−042402(JP,A)
【文献】 特表平10−501399(JP,A)
【文献】 特開2013−066348(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146358(WO,A1)
【文献】 特開平09−154257(JP,A)
【文献】 実公平03−014943(JP,Y2)
【文献】 実開昭54−171709(JP,U)
【文献】 実開昭50−071654(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する回転体と、前記回転体を外周側から覆う静止体とを備えるモータであって、
前記軸線方向で前記回転体に対向し、且つ、前記軸線よりも下方に設けられ、液体冷媒を噴射する噴射口と、
前記噴射口に対して前記回転体の回転数に応じた流量の前記液体冷媒を供給する冷媒供給装置と、
前記回転体と前記静止体とを内部に収容し、前記軸線に直交する方向に延びる縦壁を有するケースと、
前記縦壁に設けられ、前記液体冷媒を前記縦壁の下端部から中心部まで流すための冷媒通路と、
を備え
前記噴射口は、前記縦壁に設けられており、前記回転軸の前記軸線方向に向かって延びているとともに、前記縦壁の内部において前記冷媒通路と連通しているモータ。
【請求項2】
前記冷媒供給装置は、
前記回転体が定トルク制御領域内の回転数である場合に、前記噴射口から噴射される前記液体冷媒が前記回転体よりも下方の静止体に直接到達する第一流量とする一方で、前記回転体が定トルク制御領域よりも高回転数の場合に、前記噴射口から噴射される前記液体冷媒が前記回転体に直接到達するように前記第一流量よりも多い第二流量とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記回転体が前記定トルク制御領域よりも高回転数の場合に、前記回転体の径方向における前記液体冷媒の到達位置は、前記回転体に設けられる磁石の内側端部と前記回転体の外周面との間の範囲である請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記静止体は、平角線の束から構成されるコイルセグメントを有する請求項1から3の何れか一項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両駆動用のモータ等にあっては、コイルや永久磁石の発熱が大きくなる場合がある。コイルの発熱は、絶縁破壊を生じさせ、永久磁石の発熱は、不可逆減磁による性能劣化を生じさせてしまう可能性がある。
特許文献1には、コイルが発熱し易い状態の場合にコイル側へ冷媒を供給する一方で、永久磁石が発熱し易い状態の場合に永久磁石に冷媒を供給する流通切換手段を備えたモータが提案されている。
【0003】
さらに特許文献2には、冷却機構によるモータの大型化を抑制するために、ロータのエンドプレートに二種類の冷却油通路と、これらを切り替える通路切替機構とを形成する技術が記載されている。この特許文献2は、低回転領域では第一冷却油通路に冷媒を流し、高回転領域では第二冷却油通路に冷媒を流すようになっている。第二冷却油通路には、永久磁石に対応する位置に大開口冷却油通路が形成され、ロータを効果的に冷却できるようになっている。
【0004】
また一方で、複数の平角線の束で構成されたコイルセグメントを有するモータが知られている(例えば、特許文献3参照)。このコイルセグメントは、例えば、一対の脚部と、これら脚部を一方の端部で接続する頭部とからなる複数のU字状のコイルセグメントを、各脚部がステータのスロットを通って突き出るように配置し、スロットから突出した脚部の突出部分を対応するもの同士で接合して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−118686号公報
【特許文献2】特開2011−010489号公報
【特許文献3】特開2012−165624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載されたモータは、それぞれステータ冷却用の冷却油通路、および、ロータ冷却用の冷却油通路を設けていることで、構造が複雑化するとともに部品点数が増加して、全体重量が増加してしまうという課題がある。
また、特に、コイルセグメントを有するモータの場合、コイルセグメント同士が接合されるコイルエンドの発熱が大きくなる傾向にある。しかし、周方向で隣り合うコイルセグメント間を液体冷媒が伝わり難い形状であるため、とりわけ下方に配置されたコイルセグメントのコイルエンドに十分な冷却媒体を供給できない可能性がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大型化や全体重量の増加を抑制しつつ、回転体および静止体を十分に冷却することができるモータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、軸線(例えば、実施形態における軸線O)回りに回転する回転体(例えば、実施形態におけるロータ3)と、前記回転体を外周側から覆う静止体(例えば、実施形態におけるステータ4)とを備えるモータ(例えば、実施形態におけるモータ1)であって、前記軸線方向で前記回転体に対向し、且つ、前記軸線よりも下方に設けられ、液体冷媒(例えば、実施形態におけるATF)を噴射する噴射口(例えば、実施形態における噴射口31)と、前記噴射口に対して前記回転体の回転数に応じた流量の前記液体冷媒を供給する冷媒供給装置(例えば、実施形態における機械式オイルポンプ15)と、前記回転体と前記静止体とを内部に収容し、前記軸線に直交する方向に延びる縦壁(例えば、実施形態における縦壁25)を有するケース(例えば、実施形態におけるケース2)と、前記縦壁に設けられ、前記液体冷媒を前記縦壁の下端部から中心部まで流すための冷媒通路(例えば、実施形態における冷媒通路29)と、を備え、前記噴射口は、前記縦壁に設けられており、前記回転軸の前記軸線方向に向かって延びているとともに、前記縦壁の内部において前記冷媒通路と連通している
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記冷媒供給装置が、前記回転体が定トルク制御領域内の回転数である場合に、前記噴射口から噴射される前記液体冷媒が前記回転体よりも下方の静止体に直接到達する第一流量とする一方で、前記回転体が定トルク制御領域よりも高回転数の場合に、前記噴射口から噴射される前記液体冷媒が前記回転体に直接到達するように前記第一流量よりも多い第二流量とする。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載の発明において、前記回転体が前記定トルク制御領域よりも高回転数の場合に、前記回転体の径方向における前記液体冷媒の到達位置が、前記回転体に設けられる磁石の内側端部(例えば、実施形態における内側端部32)と前記回転体の外周面(例えば、実施形態における外周面12)との間の範囲である
【0011】
請求項4に記載した発明は、請求項1から3の何れか一項に記載の発明において、前記静止体が、平角線の束から構成されるコイルセグメント(例えば、実施形態におけるコイル18)を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、噴射口から噴射する液体冷媒は、その流量に応じて到達点が上下に変化するため、例えば、流量が多い場合には、上方に配置される回転体に液体冷媒を直接到達させることができる一方で、流量が少ない場合には、回転体よりも下方に配置される静止体に液体冷媒を直接到達させることができる。また、回転数に応じて流量を変化させるため、モータの運転状態に応じて噴射口から噴射される液体冷媒による冷却箇所を切り替えることができる。したがって、複雑な構造を用いずに2つの冷却対象である回転体と静止体とを選択的に冷却することができるため、大型化や全体重量の増加を抑制しつつ、回転体および静止体を十分に冷却することができる。
【0013】
請求項2に記載した発明によれば、定トルク制御領域内の回転数である場合は、銅損等により静止体のコイルの発熱が大きくなるため、第一流量によって噴射口から噴射される液体冷媒を静止体に直接到達させて静止体の下部を冷却することができる。また、定トルク制御領域よりも高回転数となる場合には、静止体の発熱は低減して渦電流損等により回転体の永久磁石の発熱が大きくなるので、第二流量によって噴射口から噴射される液体冷媒を回転体に直接到達させて回転体の下部を冷却することができる。
【0014】
請求項3に記載した発明によれば、磁石を積極的に冷却することができるため、可逆減磁を抑制して性能低下を低減することができる。
【0015】
請求項4に記載した発明によれば、平角線の束から構成されるコイルセグメントのうち、静止体の下部に配置されるコイルセグメントのコイルエンドを冷却することができる。したがって、周方向で隣り合うコイルセグメント間を液体冷媒が伝わり難い場合であっても、コイルセグメントのコイルエンドに生じる発熱を低減して、信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施形態におけるモータの縦断面図である。
図2】この発明の実施形態におけるステータの分解斜視図である。
図3】この発明の実施形態における機械式オイルポンプの回転数に対する吐出流量のグラフである。
図4】この発明の実施形態における図1の下部側のコイルの端部周辺の拡大図である。
図5】この発明の実施形態におけるモータ回転数に応じたATFの噴射距離の違いを示す図である。
図6】この発明の実施形態におけるモータの出力特性と冷却箇所とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、この発明の一実施形態におけるモータを図面に基づき説明する。ここで、この実施形態の説明においては、自動車等の車両の駆動源として用いられるモータを一例に説明する。
図1は、この発明の実施形態におけるモータの縦断面図である。
図1に示すように、この実施形態のモータ1は、ケース2内に、ロータ(回転体)3と、ステータ(静止体)4と、を備えている。
ロータ3は、水平方向を向く軸線O回りに回転する。ロータ3は、回転軸6と、ロータ本体7と、永久磁石8と、を備えている。
【0018】
回転軸6は、その両端部が軸受9を介して回転自在にケース2に支持されている。回転軸6は、ロータ本体7に形成された貫通孔10に挿通されてロータ本体7に固定されている。
ロータ本体7は、珪素鋼板等の円盤状の磁性材を軸線O方向に複数積層することで円筒状に形成されている。このロータ本体7は、軸線O方向に貫通する複数の磁石取付孔11を有している。
【0019】
磁石取付孔11は、ロータ本体7の外周面12に沿って周方向に間隔をあけて整列して配されている。
永久磁石8は、磁石取付孔11の内部に圧入等により挿入され固定されている。永久磁石8は、ロータ本体7の軸線O方向の長さと同等の範囲に配されている。ここで、この実施形態におけるロータ3には、軸線O方向のロータ本体7の端面13を塞ぐように端面板14が取り付けられている。
【0020】
図2は、この発明の実施形態におけるステータの分解斜視図である。
図1図2に示すように、ステータ4は、ロータ3の外周側を覆う円筒状に形成されている。ステータ4の内周面16は、上述したロータ3の外周面12と一定の間隙を有して配置されている。ステータ4は、ステータコア17と、コイル(コイルセグメント)18とを備えている。
【0021】
ステータコア17は、軸線O方向に貫通する複数のスロット19を備えている。これらスロット19は、ステータコア17の内周面16から径方向外側に向かって延びるように形成されている。また、これらスロット19は、周方向に間隔をあけて配され、軸線O方向から見て放射状に形成されている。スロット19は、内周面16に形成されたスリット20を介してステータコア17の内周側の空間と連通している。
【0022】
コイル18は、いわゆるセグメントコンダクタ式のコイルである。一つのコイル18は、複数の平角線の束により形成されている。一つのコイル18は、U字状に湾曲形成されており、一対の脚部21と、これら脚部21を連結する頭部(コイルエンド)22とを備えている。コイル18は、軸線O方向におけるステータコア17の第一端面17a側から、その脚部21がスロット19に挿入される。
【0023】
脚部21は、スロット19に第一端面17a側から挿入されると、軸線O方向におけるスロット19の第二端面側(図示せず)から端部(コイルエンド)23が突出する。これら端部23は、周方向に曲げられて、対応する他のコイル18の端部23に溶接等により接合される。頭部22は、それぞれ周方向に並んで重なるように配置される。また、端部23も、それぞれ周方向に並んで重なるように配置される。これら頭部22、および、端部23は、ステータコア17の第一端面17a、および、第二端面から軸線O方向外側に向かって突出している。これら頭部22、および、端部23は、ロータ3よりも軸線O方向外側まで延びている。
【0024】
図1に示すように、ケース2は、ロータ3、および、ステータ4の軸線O方向に間隔をあけて、軸線Oに直交する方向に延びる円盤状の縦壁25を備えている。縦壁25は、ロータ3、および、ステータ4の軸線O方向外側を覆い、その中心部24には、上述した軸受9を収容する収容部26が形成されている。
【0025】
縦壁25には、その下端部27に、供給配管28が接続されている。この供給配管28は、機械式オイルポンプ(冷媒供給装置)15に接続されて、液体冷媒であるATF(Automatic Transmission Fluid)を供給する。供給配管28は、ステータ4の下方を軸線O方向に向かって配索されている。
【0026】
図3は、この発明の実施形態における機械式オイルポンプの回転数に対する吐出流量のグラフである。
この実施形態における機械式オイルポンプ15は、回転軸6の回転が伝達されることで作動するようになっている。そのため、図3に示すように、回転軸6が高回転のときには、機械式オイルポンプ15から吐出されるATFの流量が多くなり、回転軸6が低回転のときには、機械式オイルポンプ15から吐出されるATFの流量が少なくなる。また、回転数の上昇に伴う突出量の増加率は、回転数が高くなるほど緩やかになっている。
【0027】
図1に示すように、縦壁25は、冷媒通路29を有している。冷媒通路29は、供給配管28から供給されるATFを縦壁25の下端部27から中心部24まで流すための流路を形成している。冷媒通路29により中心部24まで流れたATFは、回転軸6の内部に形成された通路30を通じて、例えば、ケース2の上部等に送られる。
【0028】
ここで、図1において、図示都合上、記載を省略しているが、ステータ4の上方には、ATFを吐出する上部吐出口が配置されている。この上部吐出口から吐出したATF(図1中、矢印で示す)は、ステータ4の上部に配されるコイル18の頭部22および端部23に接触した後、周方向両側に重力により流下して、周方向に並んだ頭部22および端部23を順次冷却する。
【0029】
図4は、この発明の実施形態における図1の下部コイルエンド周辺の拡大図である。
図1図4に示すように、縦壁25には、噴射口31が形成されている。この噴射口31は、冷媒通路29に流れるATFの一部を、ケース2内側に噴射するための孔である。この噴射口31は、鉛直方向で回転軸6よりも下方に形成されている。噴射口31は、水平方向(言い換えれば、回転軸6の軸線O方向)に向かって延びる断面円形や断面矩形などに形成されており、ATFをロータ3、および、ステータ4側に噴射する。
【0030】
噴射口31は、軸線O方向でロータ3に対向する位置、より具体的には、ロータ3の端面板14に対向する位置に形成されている。この実施形態における噴射口31は、上下方向で、最も下側に位置する永久磁石8と、永久磁石8の下方に位置するロータ本体7の外周面12との間に配されている。
【0031】
図5は、この発明の実施形態におけるモータ回転数に応じたATFの噴射距離の違いを示す図である。
図5に示すように、噴射口31から噴射されるATFは、重力により放物線を描いて落下する。この噴射口31から噴射されるATFは、噴射口31の孔径が一定である場合、機械式オイルポンプ15からの吐出されるATFの流量に応じて放物線の角度、すなわち噴射距離が変化する。モータ回転数が低回転(例えば、500rpm程度)である場合には、噴射口31から噴射されるATFの水平方向の距離が短くなる。また、モータ回転数が高回転になるほど、噴射口31から噴射されるATFの水平方向の距離が長くなる。ここで、機械式オイルポンプ15から吐出されるATFの流量の増減に応じて、冷媒通路29の内部圧力が昇降するため、ATFの噴射距離は、冷媒通路29の内部圧力に応じて変化すると言うこともできる。
【0032】
図6は、この発明の実施形態におけるモータの出力特性と冷却箇所とを示す図である。
一般に、車両駆動用のモータは、図6に示すような出力特性を示す。図6は、縦軸をトルク[Nm]、横軸を回転数[rpm]としたグラフである。モータの出力特性は、例えばモータの形状や体格などに応じて最高回転数、最大トルク等が変化する。この図6に示すグラフにおいて、所定の回転数までは、最大トルクが一定となる定トルク制御領域となる。また、このグラフにおいて、所定回転数aを超えると、最大トルクが減少するトルク減少領域となる。このトルク減少領域においては、回転数が上昇するに従って最大トルクの減少率が徐々に低下している。
【0033】
定トルク制御領域では、コイル18の銅損等による発熱が大きくなる一方で、トルク減少領域では、永久磁石8の渦電流損などによる発熱が大きくなる傾向がある。そのため、定トルク制御領域では、噴射口31から噴射されるATFによる冷却箇所をコイル18とし、トルク減少領域では、噴射口31から噴射されるATFによる冷却箇所をロータ3とする。噴射口31から噴射されるATFによる冷却箇所は、ロータ3およびコイル18のうち、回転軸6の鉛直下方に位置する箇所である。ロータ3については、回転するため実質的にロータ3の全周が冷却される。
【0034】
図5図6に示すように、機械式オイルポンプ15は、モータ回転数が所定回転数aより高回転となった場合に、噴射されたATFが端面板14に直接到達する流量(以下、単に第一流量と称する)となる。一方で、モータ回転数が所定回転数a以下となった場合に、噴射されたATFがコイルの18の端部23に直接到達する流量(以下、単に第二流量と称する)となる。ATFの流量は、モータ回転数に応じて変化するため、第二流量は、第一流量よりも多い。
【0035】
この実施形態において、所定回転数aよりもモータ回転数が高回転の場合には、モータ回転数の上昇と共にATFの到達高さが上方に移動する。同様に所定回転数aよりもモータ回転数が低回転の場合には、モータ回転数の低下と共にATFの到達位置が、軸方向で縦壁25側に移動する。また、この実施形態においては、第一流量の場合、ATFの到達位置は、ロータ3の径方向で永久磁石8の内側端部32(図4参照)とロータ3の外周面12との間の領域となる。
【0036】
つまり、モータ回転数が定トルク制御領域内の回転数である場合には、ATFによって回転軸6の鉛直下方に配されるコイル18の端部23が冷却される。コイル18の端部23のうち、回転軸6の鉛直下方に配されていないものについては、上方から流下されるATFによって冷却が行われる。一方で、モータ回転数が定トルク制御領域を超える回転数である場合には、ロータ3の永久磁石8の近傍が冷却される。
【0037】
したがって、上述の実施形態によれば、ATFの流量が多い場合には、ロータ3にATFを直接到達させることができる一方で、ATFの流量が少ない場合には、ロータ3よりも下方に配置されるステータ4にATFを直接到達させることができる。また、モータ回転数に応じてATFの流量が変化するため、モータ1の運転状態に応じて噴射口31から噴射されるATFによる冷却箇所を切り替えることができる。その結果、複雑な構造を用いずに2つの冷却対象であるロータ3とステータ4とを選択的に冷却することができる。そのため、モータ1の大型化や重量増加を抑制しつつ、ロータ3およびステータ4を十分に冷却することができる。
【0038】
さらに、モータ回転数が定トルク制御領域内の回転数である場合は、第一流量によって噴射口31から噴射されるATFをステータ4に直接到達させてステータ4の下部、とりわけコイル18の端部23を冷却することができる。また、モータ回転数が定トルク制御領域よりも高回転となる場合には、第二流量によって噴射口31から噴射されるATFをロータ3に直接到達させてロータ3の下部を冷却することができる。
【0039】
また、ロータ3の径方向におけるATFの到達位置は、ロータ3に設けられる永久磁石8の内側端部32とロータ3の外周面12との間の範囲であるため、永久磁石8を積極的に冷却することができる。その結果、永久磁石8の可逆減磁を抑制してモータ1の性能低下を低減することができる。
【0040】
さらに、平角線の束から構成されるセグメントコンダクタ式のコイル18のうち、ステータ4の下部に配置されるコイル18の端部23を冷却することができる。その結果、周方向で隣り合うコイル18間をATFが伝わり難い場合であっても、コイル18の端部23に生じる発熱を低減して、信頼性を向上することができる。
【0041】
また、モータ回転数に連動する機械式オイルポンプ15によって、ATFの吐出量を調整できるため、複雑な制御や機構を用いることなしに、冷却箇所を変更することができる。
【0042】
なお、この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した実施形態においては、液体冷媒としてATFを用いる場合について説明したが、ATF以外の液体冷媒であってもよい。
【0043】
さらに、上述した実施形態においては、コイル18の端部23をATFにより冷却する場合について説明したが、コイル18の頭部22であってもよい。
【0044】
また、上述した実施形態においては、ATFを供給配管28、および、冷媒通路29を介して、モータ1の下方から回り込むようにして噴射口31に供給する場合について説明した。しかし、この構成に限られず、例えば、上方から回り込むように配索されて噴射口31に連通する流路を形成し、この流路を介してATFを噴射口31に供給するようにしても良い。
【0045】
さらに、上述した実施形態においては、セグメントコンダクタ式のコイル18を備えるモータ1を一例に説明したが、ロータ3に永久磁石8を備え、ステータ4の周方向全周に渡って巻き線を備えるモータであればよい。
【0046】
また、上述した実施形態においては、モータ1の回転により作動する機械式オイルポンプを一例に説明したが、モータ1の運転状態に応じてATFの吐出流量を、ロータ3を冷却可能な流量と、ステータ4を冷却可能な流量との間で変化可能な装置であればよく、モータ1の回転により作動する機械式オイルポンプに限られない。
【0047】
さらに、上述した実施形態においては、車両駆動用のモータについて説明したが、車両駆動用のモータに限られない。
また、上述した実施形態においては、ロータ3が端面板14を備える場合について説明したが、端面板14を省略しても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 モータ
3 ロータ(回転体)
4 ステータ(静止体)
8 永久磁石(磁石)
12 外周面
15 機械式オイルポンプ(冷媒供給装置)
18 コイル(コイルセグメント)
31 噴射口
32 内側端部
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6