特許第6196202号(P6196202)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196202
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B60B 27/00 20060101AFI20170904BHJP
   B60B 27/06 20060101ALI20170904BHJP
   B60B 3/04 20060101ALI20170904BHJP
   B60B 3/14 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B60B27/00 C
   B60B27/06
   B60B27/00 N
   B60B3/04 B
   B60B3/14
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-197485(P2014-197485)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-68643(P2016-68643A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】永井 龍一
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−368202(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第231038(GB,A)
【文献】 実開昭59−155202(JP,U)
【文献】 実開平01−102001(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 27/00
B60B 3/04
B60B 3/14
B60B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽合金で形成されたホイール(80)を備える自動二輪車(10)において、
前記ホイール(80)の中心部に形成されるハブ部(81)と、このハブ部(81)に圧入されるボス部材(90)と、このボス部材(90)に挿入される車軸(62)とを備え、
前記ボス部材(90)は、前記車軸(62)に回転が規制されるように結合されるとともに、前記ハブ部(81)よりも高強度な同種の軽合金で形成されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記ボス部材(90)の車幅方向外側の端面(93)には、ワッシャー(64)が設けられ、
このワッシャー(64)の外径は、前記ボス部材(90)の外径よりも大きく設定され、
このワッシャー(64)は、前記車軸(62)が通され、締結部材(56)によって前記車軸(62)と同軸上に締結されていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記ボス部材(90)と前記ハブ部(81)の境界部(84)には、前記ボス部材(90)と前記ハブ部(81)に跨るようにして前記車軸(62)の軸方向に延びる凹部(85)が形成され、
この凹部(85)に、前記ボス部材(90)に対する前記ハブ部(81)の回転を規制する、回り止め部材(95)が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記凹部(85)は、前記境界部(84)に複数形成されていることを特徴とする請求項3記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記車軸(62)には、前記ボス部材(90)の車幅方向の位置決めをするカラー(55b)が設けられ、
このカラー(55b)は、前記車軸(62)の軸方向で、前記回り止め部材(95)に少なくとも一部が重なっていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の自動二輪車。
【請求項6】
軽合金で形成されたホイール(80)を備える自動二輪車(10)において、
前記ホイール(80)の中心部に形成されるハブ部(81)と、このハブ部(81)に圧入されるボス部材(90a、90b)と、前記ボス部材(90a、90b)に挿入される車軸(62)とを備え、
前記ボス部材(90a、90b)は、前記ハブ部(81)よりも高強度な同種の軽合金によって左右一対に形成され、前記ハブ部(81)の車幅方向左右の外側両端からそれぞれ圧入されるとともに、前記車軸(62)に回転が規制されるように結合されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項7】
前記ハブ部(81)は、車両幅方向中心に車軸中心方向へ延びる凸部(88)が設けられ、
前記凸部は、前記ボス部材(90a、90b)に当接することを特徴とする請求項6記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記ボス部材(90a、90b)は、車幅方向外端にフランジ部(99)が設けられ、
前記フランジ部(99)は、ハブ部(81)の端面に当接していることを特徴とする請求項6記載の自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽合金で形成されたホイールを備える自動二輪車の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車には、軽量化のためホイールが軽合金で形成されたものが実用に供されている。エンジンの駆動力は、車軸を介してホイールに伝達される。ホイールの中心部に形成されるハブ部に車軸から大きな力が加わるため、ホイールが軟質な軽合金で形成されている場合、ホイールを車軸で直接支持することが難しい。このため、軽合金のホイールの中心部に形成されるハブ部に、高強度なボス部材を圧入し、このボス部材を車軸で支持する技術が知られている(例えば、特許文献1(図2図6)参照。)。
【0003】
特許文献1の図2に示されるように、自動二輪車(1)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)において、軽合金のホイール(14)のハブ部(14b)に、高強度な鋼製のボス部材(18)が鋳込まれている。一般的に、軽合金のホイール(14)に鋼製のボス部材(18)を鋳込む場合、鋼製のボス部材(18)を500℃付近まで余熱し、この状態で一体鋳造する方法が採用されているが、鋼製のボス部材(18)と軽合金のハブ部(14b)との間に不可避的に微細な隙間が生じる。このため、車軸(13)から大きな回転力がボス部材(18)に伝達されると、ボス部材(18)がハブ部(14b)に対して相対移動することから異音が発生する。
【0004】
この対策として従来技術では、特許文献1の図6に示されるように、鋼製のボス部材(18)と軽合金のハブ部(14b)との間に酸化亜鉛層(19)が形成されている。一方、従来から車両の軽量化が望まれている。しかし、鋼製のボス部材(18)では重量が重いため、軽量化を図ることができる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−112387公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高強度なボス部材であって、ハブ部との相対移動を防止するとともに軽量化を図ることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明では、軽合金で形成されたホイールを備える自動二輪車において、前記ホイールの中心部に形成されるハブ部と、このハブ部に圧入されるボス部材と、このボス部材に挿入される車軸とを備え、前記ボス部材は、前記車軸に回転が規制されるように結合されるとともに、前記ハブ部よりも高強度な同種の軽合金で形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、ボス部材の車幅方向外側の端面には、ワッシャーが設けられ、このワッシャーの外径は、ボス部材の外径よりも大きく設定され、このワッシャーは、車軸が通され、締結部材によって車軸と同軸上に締結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、ボス部材とハブ部の境界部には、ボス部材とハブ部に跨るようにして車軸の軸方向に延びる凹部が形成され、この凹部に、ボス部材に対するハブ部の回転を規制する、回り止め部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明では、凹部は、境界部に複数形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明では、車軸には、ボス部材の車幅方向の位置決めをするカラーが設けられ、このカラーは、車軸の軸方向で、回り止め部材に少なくとも一部が重なっていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明では、軽合金で形成されたホイールを備える自動二輪車において、ホイールの中心部に形成されるハブ部と、このハブ部に圧入されるボス部材と、ボス部材に挿入される車軸とを備え、ボス部材は、ハブ部よりも高強度な同種の軽合金によって左右一対に形成され、ハブ部の車幅方向左右の外側両端からそれぞれ圧入されるとともに、車軸に回転が規制されるように結合されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明では、ハブ部は、車両幅方向中心に車軸中心方向へ延びる凸部が設けられ、凸部は、ボス部材に当接することを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明では、ボス部材は、車幅方向外端にフランジ部が設けられ、フランジ部は、ハブ部の端面に当接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、軽合金で形成されたホイールを備える自動二輪車において、ホイールの中心部に形成されるハブ部と、このハブ部に圧入されるボス部材と、このボス部材に挿入される車軸とを備える。ボス部材は、車軸に回転が規制されるように結合されるとともに、ハブ部よりも高強度な同種の軽合金で形成されているので、高強度なボス部材であって、ハブ部との相対移動を防止するとともに軽量化を図ることができる。さらに、走行することで車軸から伝達される熱や、ブレーキから伝達される摩擦熱により、ホイールが高温になるが、ボス部材がホイールと同種の軽合金であるので、熱膨張率がほぼ同じであり、車両走行時においてもボス部材とホイールとの間に隙間を生じ難くすることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、ボス部材の車幅方向外側の端面には、ワッシャーが設けられる。ワッシャーの外径は、ボス部材の外径よりも大きく設定され、このワッシャーには、車軸が通され、締結部材によって車軸と同軸上に締結されているので、ボス部材をワッシャーの面で挟み込むことができる。このため、締結部材によって、ボス部材の車幅方向外側の端面に加わえられる単位面積当たりの圧力を分散できる。結果、車軸にホイールを傷をつけることなく強固に締結することができる。さらに、ボス部材とハブ部とを共締めするので、車両がカーブを傾いて走行する際、車軸からボス部材に係る車軸方向の力を、ボス部材とハブ部の両方で受けることができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、ボス部材とハブ部の境界部には、ボス部材とハブ部に跨るようにして車軸の軸方向に延びる凹部が形成される。凹部に、ボス部材に対するハブ部の回転を規制する、回り止め部材が設けられているので、ボス部材に対してハブ部を回転方向に固定でき、車軸に対するホイールの空転を防止することができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、凹部は、境界部に複数形成されているので、回り止め部材を複数備えることができ、効果的にボス部材に対するハブ部の相対移動を抑えることができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、車軸には、ボス部材の車幅方向の位置決めをするカラーが設けられる。カラーは、車軸の軸方向で、回り止め部材に少なくとも一部が重なっているので、カラーに回り止め部材の抜け止め機能を持たせることができる。
【0020】
請求項6に係る発明では、ボス部材は、ハブ部よりも高強度な同種の軽合金によって左右一対に形成され、ハブ部の車幅方向左右の外側両端からそれぞれ圧入される。ハブ部の左右からボス部材を圧入する長さを短くすることができるので、ボス部材をハブ部に容易に圧入することができる。
【0021】
請求項7に係る発明では、ハブ部は、車両幅方向中心に車軸中心方向へ延びる凸部が設けられ、凸部は、ボス部材に当接する。ボス部材の圧入長さが決められるため、凸部をボス部材圧入時の位置決めにできる。結果、ボス部材の位置決めにおいて、Cクリップを必要とせず、部品点数の削減を図ることができる。
【0022】
請求項8に係る発明では、ボス部材は、車幅方向外端にフランジ部が設けられ、フランジ部は、ハブ部の端面に当接している。ボス部材をハブ部に圧入する際に、フランジ部とハブ部の端面が当接することで、ボスの圧入する長さを容易に判断できる。結果、ボス部材の位置決めにおいて、Cクリップを必要とせず、部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1に係る自動二輪車の左側面図である。
図2図1の2−2線断面図である。
図3図2の3−3線断面図である。
図4図2に示した自動二輪車の要部分解図である。
図5図3に示した回り止め部材の別態様を説明する図である。
図6】実施例2に係る要部断面図である。
図7図6の7−7線断面図である。
図8】実施例3に係る要部断面図である。
図9】実施例4に係る要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」、「上(Up)」、「下(Down)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、自動二輪車10は、車体フレーム11と、この車体フレーム11を覆う車体カバー31と、この車体フレーム11の後部に揺動自在に懸架されるパワーユニット41とを備える。
【0026】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後下がりに延びるメインフレーム13と、このメインフレーム13の後端から後上がりに延びるシートレール14とからなる。
【0027】
ヘッドパイプ12の下部にボトムブリッジ15を介してフロントフォーク16L(以下、Lは左を示す添え字、Rは右を示す添え字とする。)が支持され、このフロントフォーク16Lに回転可能に前輪17(車輪17)が支持される。ヘッドパイプ12の上部に、前輪17を操舵するハンドルバー18が設けられ、フロントフォーク16L及び前輪17に、前輪17を制動するフロントブレーキ装置19が設けられている。また、シートレール14の上部に乗員が着座するシート22が設けられる。
【0028】
車体カバー31は、ヘッドパイプ12の前方を覆うフロントカバー32と、メインフレーム13の上方を覆うメインフレームカバー33と、メインフレーム13の車幅方向側方を覆うサイドカバー34と、シートレール14を覆うリヤカバー35とからなる。
【0029】
パワーユニット41は、吸気系のエアクリーナ42と、排気系のマフラー43と、駆動輪としての後輪61(車輪61)とを備える。パワーユニット41とシートレール14との間に左のリヤクッション44Lが設けられ、左のリヤクッション44Lにより衝撃が吸収される。後輪61は、パワーユニット41に設けられたホイール支持機構60に支持されている。また、前輪17の上方は、フロントフェンダ36で覆われ、後輪61の上方は、リヤフェンダ37で覆われる。
【0030】
図1図2に示されるように、パワーユニット41には、車軸62を回転可能に支持するスイングアーム45が一体的に設けられている。パワーユニット41の後部には、後輪61に沿って延びるとともに後輪61の前上部を覆うインナーフェンダ46が設けられている。スイングアーム45には、車幅方向側方に開口する開口部45aが形成され、この開口部45aに、リヤブレーキ装置71のブレーキキャリパ72が設けられている。
【0031】
次にホイール支持機構60について説明する。
図2に示されるように、パワーユニット41は最終減速機構48を有し、この最終減速機構48は、基部となる第1のケース49a及び第2のケース49bと、第1回転軸51と、第2回転軸52と、車軸62とを有する。第1回転軸51には、第1歯車51aが一体的に設けられている。第2回転軸52には、第1歯車51aに噛み合う第2歯車52aと、車軸62へ駆動力を伝達する第3歯車52bとが一体的に設けられている。車軸62には、第3歯車52bに噛み合う第4歯車62aが一体的に設けられている。
【0032】
第1回転軸51は、第1のケース49aに設けられた第1軸受53a及び第2のケース49bに設けられた第2軸受53bに、回転可能に支持されている。第2回転軸52は、第1のケース49aに設けられた第3軸受53c及び第2のケース49bに設けられた第4軸受53dに、回転可能に支持されている。車軸62は、第1のケース49aに設けられた第5軸受53e、第2のケース49bに設けられた第6軸受53f及びスイングアーム45設けられた第7軸受53gに、回転可能に支持されている。第2回転軸52には、第2歯車52a及び第3歯車52bの軸方向外側に、それぞれワッシャー54a、54bが設けられている。
【0033】
第1回転軸51には、エンジンの駆動力がベルトコンバーターを介して伝達され、この第1回転軸51の回転力は、第1歯車51a及び第2歯車52aを介して第2回転軸52に伝達され、この第2回転軸52の回転力は、第3歯車52b及び第4歯車62aを介して車軸62に伝達される。
【0034】
次にホイール支持機構60について説明する。
ホイール支持機構60は、軽合金で形成されるホイール80と、ホイール80よりも高強度な同種の軽合金で形成されているボス部材90とを備える。軽合金で形成されるホイール80は、中心部に形成されるハブ部81と、このハブ部81の中心に車軸方向に貫通して形成される貫通穴82とを備える。ハブ部81の貫通穴82には、ハブ部81よりも高強度な同種の軽合金で形成されているボス部材90が圧入されている。ボス部材90は、筒状を呈し、内周にスプライン部91が形成されている。
【0035】
ホイール80(ハブ部81)の材質はアルミニウム合金(JIS−AC4CH)であり、ボス部材90の材質はアルミニウム合金(JIS−A2014)である。ホイール80及びボス部材90と、比較としての一般的な鋼製(JIS−S35C)のボス部材の機械的性質は以下の表1に示す通りである。
【0036】
【表1】
【0037】
強度として引張り強さを比較すると、軽合金のホイール80に対して、軽合金のボス部材90及び鋼製のボス部材は、強度が高い。
比重を比較すると、鋼製のボス部材に対して、軽合金のホイール80及び軽合金のボス部材90は、比重が小さい。
熱膨張膨張係数を比較すると、鋼製のボス部材に対して、軽合金のホイール80及び軽合金のボス部材90は、値が高く且つ同等である。
【0038】
すなわち、軽合金のボス部材90は、強度が高く、軽量である。このため、ホイール80の軽量化を図ることができる。
加えて、車両走行時にブレーキディスクから摩擦熱が伝わり、ホイール80及びボス部材90が熱膨張した場合であっても、軽合金のボス部材90は、ホイール80と熱膨張係数が同等であるので、径方向へ同等に膨張し、境界部84に隙間を生じ難くすることができる。
【0039】
車軸62には、第6軸受53fに隣接して第1のカラー55aが嵌められ、この第1のカラー55aに隣接して第1のワッシャー63が嵌められ、この第1のワッシャー63に隣接してボス部材90が嵌められ、このボス部材90に隣接して第2のワッシャー64が嵌められ、この第2のワッシャー64に隣接して第2のカラー55bが嵌められている。
【0040】
さらに、この第2のカラー55bに隣接して第7軸受53gが嵌められ、この第7軸受53gに隣接して第3のカラー55cが嵌められ、車軸62の端部に形成される雄ねじ部62bに第3のワッシャー65を介して締結部材(ナット)56が締結されている。
【0041】
また、ホイール支持機構60では、車軸62の外周のスプライン部62cに、ボス部材90のスプライン部91が嵌められている。ホイール91には、ブレーキディスク73が支持され、ハブ部81の車幅方向にてブレーキディスク73の反対側には、パルサリング101がリング締結部材102によって締結される。パルサリング101は、車輪速検出用の部材である。第2ケース49bには、パルサリング101の検出部に対向する位置に、車速センサ103が設けられている。
【0042】
ホイール80には、ブレーキディスク73を取り付けるためのディスク支持部83が形成され、このディスク支持部83にブレーキディスク73が配置され、ディスク支持部83にディスク締結部材74が締結されることによって、ブレーキディスク73がホイール80に支持される。
【0043】
図2図3に示されるように、ボス部材90の車幅方向の一方の端面92には、第1のワッシャー63が設けられ、他方の端面93には第2のワッシャー64が設けられている。第1のワッシャー63の外径及び第2のワッシャー64の外径は、ボス部材90の外径よりも大きく設定されている。第1のワッシャー63及び第2のワッシャー64は、車軸62が通され、それぞれがカラー55a,55bとボス部材90に挟持されるように、締結部材56によって車軸62と同軸上に締結されている。
【0044】
上記の構成により、ボス部材90をワッシャー63,64の面で挟み込むことができる。このため、締結部材56によって、ボス部材90の車幅方向外側の端面92,93に加わえられる圧力を分散できる。結果、車軸62にホイール80を傷をつけることなく強固に締結することができる。さらに、ボス部材90とハブ部81とを共締めするので、車両がカーブを傾いて走行する際(バンク時)、車軸62からボス部材90に係る車軸方向の力を、ボス部材90とハブ部81の両方で受けることができる。
【0045】
また、ボス部材90とハブ部81の境界部84には、ボス部材90とハブ部81に跨るようにして車軸62の軸方向に延びる1つの凹部85が形成されている。凹部85は、ハブ部81に形成されるハブ側凹部86と、ボス部材90に形成されるボス側凹部87が対向して合わせられることで形成される。この凹部85には、ボス部材90に対するハブ部81の回転を規制する、回り止め部材95が設けられている。ス部材90とハブ部81の境界部84に凹部85を設けるだけの簡単な構成で、ボス部材90に対してハブ部81を回転方向に固定でき、車軸62に対するホイール80の空転を防止することができる。
【0046】
ボス部材90の位置決めをするカラー55bは、車軸62の軸方向で、回り止め部材95に少なくとも一部が重なっている。カラー55bは第2のワッシャー64を介して回り止め部材95を押さえるので、カラー55bに回り止め部材95の抜け止め機能を持たせることができる。
【0047】
図4に示されるように、ハブ部81の貫通穴82の内周に沿って環状の溝87が形成され、ボス部材90の外周に沿って環状の溝96が形成されている。ボス部材90をハブ部81に圧入する際、弾性を有するCクリップ97を溝96に嵌め縮径する。Cクリップ97を縮径した状態で、ボス部材90をハブ部81に挿入する。Cクリップ97は、ハブ部81の溝87の部分で拡径され、Cクリップ97は両方の溝87,96に跨るように配置される。結果、ハブ部81はボス部材90に対して、軸方向で固定される。
【0048】
その後、回り止め部材95を、凹部85に挿入することで、ハブ部81はボス部材90に対して、軸回転方向で固定される。ハブ部81とボス部材90との相対移動を防止することができる。
【0049】
次に図3の別態様について説明する。なお、図3に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図5に示されるように、ハブ部81とボス部材90との境界部84には、車軸62の中心からの角度が120°間隔に、3つの凹部85が形成されている。これら3つの凹部85に、それぞれ回り止め部材95が設けられている。複数の回り止め部材93がバランスよく配置されているので、ボス部材90に対してハブ部81の回転方向の相対移動を防止することができるとともに、ボス部材90に対するホイール80の位置の偏りを抑えることができる。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。なお、図2図3に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図6図7に示されるように、ボス部材90の端面93は、ハブ部81の端面よりも締結部材56側に位置する。第2のワッシャー64の外径は、ボス部材90の外径と略同等である。
【0051】
ボス部材90の締結部材56側の外周には環状の溝が設けられており、この溝にCクリップ98が嵌められている。このCクリップ98によって、回り止め部材95が車軸方向に抜けることを防止できるとともに、ボス部材90に対してハブ部81の位置決めをすることができる。
【実施例3】
【0052】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。なお、図2に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図8に示されるように、ボス部材90は、ハブ部81よりも高強度な同種の軽合金によって左右一対の、左のボス部材90aと右のボス部材90bに形成されている。左のボス部材90aは、ハブ部81の車幅方向左の外側端から圧入されている。右のボス部材90bは、ハブ部81の車幅方向右の外側端から圧入されている。右のボス部材90bとハブ部81の境界部84には、右のボス部材90bとハブ部81に跨るようにして車軸62の軸方向に延びる凹部85が形成されている。この凹部85には、右のボス部材90bに対するハブ部81の回転を規制する、回り止め部材95が設けられている。
【0053】
ハブ部81は、車幅方向中心に、貫通穴82の内面から車軸中心方向へ延びる凸部88が設けられている。この凸部88は、左のボス部材90a及び右のボス部材90bに当接している。左のボス部材90a及び右のボス部材90bの圧入長さが決められており、凸部88に当接させることで、凸部88を左のボス部材90a及び右のボス部材90bの圧入時の位置決めにできる。このため、左のボス部材90a及び右のボス部材90bの位置決めにおいて、Cクリップを必要とせず、部品点数の削減を図ることができる。さらに、位置決め手段を、ハブ部81に凸部88を設けるだけの簡易な構成とすることで、部品コストを低減することができる。
【実施例4】
【0054】
次に、本発明の実施例4を図面に基づいて説明する。なお、図2に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図9に示されるように、ボス部材90は、ハブ部81よりも高強度な同種の軽合金によって左右一対の、左のボス部材90aと右のボス部材90bに形成されている。左のボス部材90aは、車幅方向外端にフランジ部99が設けられている。このフランジ部99はハブ部81の端面に当接している。左のボス部材90aをハブ部81に圧入する際に、フランジ部99がハブ部81の端面が当接する。このため、左のボス部材90aの圧入する長さを容易に判断できる。
【0055】
尚、本発明は、実施の形態では、回り止め部材95を1本又は3本設けたが、これに限定されず、5本、6本等、複数本設けても差し支えない。
また、実施の形態では、軽合金で形成されたホイール80の材質を、アルミニウム合金(AC4CH)としたが、これに限定されず、材質はADC6等でもよく、さらには軽合金であれば、他の種類の材質であっても差し支えない。また、実施の形態では、高強度な同種の軽合金の材質をアルミニウム合金(A2014)としたが、これに限定されず、材質はA2024等でもよく、さらにはホイール80と同種且つ高強度な軽合金であれば、他の種類の材質であっても差し支えない。
【0056】
また、ホイール支持機構60を後輪61に設けたが、前輪17に設けても差し支えない。さらに、本発明のホイール支持機構60は、実施の形態では、スクータ型車両に採用したが、これに限定されず、鞍乗り型車両に採用しても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、軽合金で形成されるホイールを備えた自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0058】
10…自動二輪車(車両)、55b…第2のカラー、56…締結部材(ナット)、60…ホイール支持機構、61…後輪(車輪)、62…車軸、63…第1のワッシャー、64…第2のワッシャー、80…ホイール、81…ハブ部、84…境界部、85…凹部、90…ボス部材、95…回り止め部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9