特表-14087825IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2014-87825非侵襲型生体脂質濃度計測器、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器、非侵襲による生体脂質濃度計測方法および非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2014年6月12日
【発行日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】非侵襲型生体脂質濃度計測器、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器、非侵襲による生体脂質濃度計測方法および非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/359 20140101AFI20161209BHJP
【FI】
   G01N21/359
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】46
【出願番号】特願2014-551019(P2014-551019)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年11月14日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 平成25年5月17日 ウェブサイトのアドレス https://embs.papercept.net/conferences/scripts/rtf/EMBC13_ContentListWeb_1.html#thb24 ウェブサイトの掲載日 平成25年5月21日 ウェブサイトのアドレス http://www.cleopr−oecc−ps2013.org/ 発行者名 IEEE 刊行物名 CLEO−PR & OECC/PS 2013 Conference Program & Abstracts,第197頁 頒布日 平成25年6月30日 発行者名 The Printing House,Inc. 刊行物名 2013 35th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society(EMBC)proceedings,第1214〜1217頁 頒布日 平成25年7月3日 集会名 CLEO−PR & OECC/PS 2013 開催日 平成25年7月3日 集会名 IEEE EMBC 2013 35th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society in conjunction with 52nd Annual Conference of Japanese Society for Medical and Biological Engineering(JSMBE) 開催日 平成25年7月4日
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目
(71)【出願人】
【識別番号】512315773
【氏名又は名称】飯永 一也
【住所又は居所】北海道札幌市中央区大通西23丁目
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝一
【住所又は居所】北海道札幌市北区北8条西5丁目 国立大学法人北海道大学内
(72)【発明者】
【氏名】飯永 一也
【住所又は居所】北海道札幌市中央区大通西23丁目
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB12
2G059CC16
2G059DD13
2G059EE02
2G059FF04
2G059GG01
2G059GG03
2G059GG08
2G059HH01
2G059KK03
2G059MM01
2G059NN01
(57)【要約】
【課題】 採血を無くすことにより医療機関のみならず家庭でも血中脂質を計測できるようになり、しかも即時的なデータ取得を可能とすることで時間的に連続した血中脂質を計測をすることにより食後高脂血症などの代謝異常の検査に応用することが可能な非侵襲型生体脂質濃度計測器等を提供する。
【解決手段】 生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射手段2と、この照射手段2による光の照射位置21から所定間隔をあけて配置されて前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出手段3と、この光強度検出手段3により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出手段4と、この散乱係数算出手段4により算出された光の散乱係数に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出手段5とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲型生体脂質濃度計測器であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射手段と、
この照射手段による光の照射位置から所定間隔をあけて配置されて前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出手段と、
この光強度検出手段により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出手段と、
この散乱係数算出手段により算出された光の散乱係数に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出手段と
を有する非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項2】
前記照射位置と前記光強度を検出する検出位置とが所定の照射検出間距離を隔てて設けられており、前記光強度検出手段が生体内の血中脂質により散乱された後方散乱光による光強度を検出する請求項1に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項3】
前記散乱係数算出手段は、検出された光強度と、照射位置から光強度を検出する検出位置までの照射検出間距離との比に基づき生体内における光の散乱係数を算出する請求項1または請求項2に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項4】
前記照射手段により連続光を照射するとともに、
前記散乱係数算出手段は、前記光強度検出手段により検出された光強度R(ρ)と前記照射検出間距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することで散乱係数μを算出する請求項1から請求項3のいずれかに記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【数1】
【数2】
ここで、μは吸収係数、μeffは有効減衰係数(effective attenuation coefficient)、Sは照射手段により照射された光の光強度である。
【請求項5】
前記照射手段により連続光を照射するとともに、その照射位置を中心として各々異なる距離に設置された複数の前記光強度検出手段により各々の検出位置における光強度を検出し、
前記散乱係数算出手段は、各々の前記光強度検出手段により検出された前記光強度同士の比および/または前記光強度同士の差に基づいて生体内における光の散乱係数を算出する請求項1または請求項2に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項6】
前記照射手段により連続光を照射するとともに、その照射位置を中心として各々異なる距離に設置された第一光強度検出手段および第二光強度検出手段が順に並べられており、
前記散乱係数算出手段は、前記照射位置から前記第一光強度検出手段による第一検出位置までの第一照射検出間距離ρと、前記照射位置から前記第二光強度検出手段による第二検出位置までの第二照射検出間距離ρと、前記第一光強度検出手段により検出された第一光強度R(ρ)と、前記第二光強度検出手段により検出された第二光強度R(ρ)とを下記式(3)に代入することで散乱係数μを算出する請求項1、請求項2または請求項5のいずれかに記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【数3】
【請求項7】
前記照射手段によりパルス状の光を照射するとともに、前記光強度検出手段により所定の時間毎の前記光強度を検出し、
前記散乱係数算出手段は、前記照射手段によりパルス状の光を照射した時から、前記光強度検出手段により検出された前記光強度が所定の強度に減衰するまでの時間の長さに基づき生体内における光の散乱係数を算出する請求項1または請求項2に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項8】
前記照射手段によりパルス状の光を照射するとともに、前記光強度検出手段により所定の時間毎の前記光強度を検出し、
前記散乱係数算出手段は、前記照射手段によりパルス状の光を照射した時から、前記光強度検出手段により検出された前記光強度が最も強くなる時までの時間の長さに基づき生体内における光の散乱係数を算出する請求項1または請求項2に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項9】
前記照射手段により照射する光の強度または光の位相を変調させた光を照射するとともに、前記光強度検出手段により所定の時間毎の前記光強度を検出し、
前記散乱係数算出手段は、前記光強度検出手段により検出された前記光強度の時間変化に基づき光密度波形を算出し、この光密度波形に基づき前記血液の散乱係数および吸収係数を算出する請求項1または請求項2に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項10】
請求項1〜請求項9に記載のいずれかの非侵襲型生体脂質濃度計測器により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化から生体脂質代謝機能を計測する非侵襲型生体脂質代謝機能計測器。
【請求項11】
請求項1〜請求項9に記載のいずれかの非侵襲型生体脂質濃度計測器により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化を取得し生体脂質代謝機能を検査する非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法。
【請求項12】
非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲による生体脂質濃度計測方法であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射工程と、
この照射工程による光の照射位置から所定の間隔をあけて前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出工程と、
この光強度検出工程により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出工程と、
この散乱係数算出工程により算出された光の散乱係数に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出工程と
を有する非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項13】
前記照射位置と前記光強度を検出する検出位置とが所定の照射検出間距離を隔てて設けられており、前記光強度検出工程では生体内の血中脂質により散乱された後方散乱光による光強度を検出する請求項12に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項14】
前記散乱係数算出工程において、検出された光強度と、照射位置から光強度を検出する検出位置までの照射検出間距離との比に基づき生体内における光の散乱係数を算出する請求項12または請求項13に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項15】
前記照射工程において生体外から生体内に向けて連続光を照射するとともに、
前記散乱係数算出工程では、前記光強度検出工程において検出された光強度R(ρ)と前記照射検出間距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することにより散乱係数μを算出する請求項12から請求項14のいずれかに記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【数1】
【数2】
ここで、μは吸収係数、μeffは有効減衰係数(effective attenuation coefficient)、Sは照射工程において照射された光の光強度である。
【請求項16】
前記照射工程において生体外から生体内に向けて連続光を照射するとともに、前記光強度検出工程において照射された光の照射位置を中心として各々異なる距離に配置された複数の前記検出位置における前記光強度を検出し、
前記散乱係数算出工程では、各々の前記光強度検出工程において検出された前記光強度同士の比および/または前記光強度同士の差に基づいて生体内における光の散乱係数を算出する請求項12または請求項13に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項17】
前記照射工程において生体外から生体内に向けて連続光を照射するとともに、前記光強度検出工程において照射された光の照射位置を中心として各々異なる距離に配置された第一検出位置および第二検出位置における前記光強度を検出し、
前記散乱係数算出工程では、前記照射位置から前記第一検出位置までの第一照射検出間距離ρと、前記照射位置から前記第二検出位置までの第二照射検出間距離ρと、前記第一検出位置において検出された第一光強度R(ρ)と、前記第二検出位置において検出された第二光強度R(ρ)とを下記式(3)に代入することで散乱係数μを算出する請求項12、請求項13または請求項16のいずれかに記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【数3】
【請求項18】
前記照射工程において生体外から生体内に向けてパルス状の光を照射するとともに、前記光強度検出工程において前記検出位置における所定の時間毎の前記光強度を検出し、
前記散乱係数算出工程では、パルス状の光を照射した時から、検出された前記光強度が所定の強度に減衰するまでの時間の長さに基づき生体内における光の散乱係数を算出する請求項12または請求項13に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項19】
前記照射工程において生体外から生体内に向けてパルス状の光を照射するとともに、前記光強度検出工程において前記検出位置における所定の時間毎の前記光強度を検出し、
前記散乱係数算出工程では、パルス状の光を照射した時から、検出された前記光強度が最も強くなる時までの時間の長さに基づき生体内における光の散乱係数を算出する請求項12または請求項13に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項20】
前記照射工程において照射する光の強度または光の位相を変調させた光を照射するとともに、前記光強度検出工程において前記検出位置における所定の時間毎の前記光強度を検出し、
前記散乱係数算出工程では、検出された前記光強度の時間変化に基づき光密度波形を算出し、この光密度波形に基づき前記血液の散乱係数および吸収係数を算出する請求項12または請求項13に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項21】
請求項12〜請求項20に記載のいずれかの非侵襲による生体脂質濃度計測方法により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化を取得し生体脂質代謝機能を検査する非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血すること無く、いわゆる非侵襲により生体内における血中の脂質濃度および脂質代謝を医療機関のみならず家庭においても計測することのできる非侵襲型生体脂質濃度計測器、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器、非侵襲による生体脂質濃度計測方法および非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国民の医療費は高騰し、医療費の抑制は国あるいは国民に取って大きな課題である。その医療費の3分の1は生活習慣病に起因する疾患の治療費で占められる。これらの背景を基に、国民医療費の抑制、健康寿命の向上、QOL(Quality of Life)の向上が求められ、これらの実現のために特定健診が施行されるとともに、未病に対する考え方が普及してきた。
【0003】
特に、特定健診のスクリーニング対象であるメタボリックシンドローム(代謝症候群)は、内臓脂肪肥満の蓄積を原因とするインスリン抵抗性から生ずる糖尿病、脂質異常症、高血圧を発症する事が知られており、この代謝症候群の早期発見が重症化予防やQOLの向上、さらに国民医療費の抑制に繋がると期待されている。
【0004】
このように、インスリン抵抗性が生活習慣病の早期発見に重要であるにも係らず、特定健診では腹囲径計測からインスリン抵抗性のリスクを予測するしか方法が無かった。
【0005】
また近年、インスリン抵抗性と食後高脂血症に密接な関係があることが解り、食後高脂血症がインスリン抵抗性を引き起こしている可能性も指摘されており、代謝症候群の源流となる代謝異常と考えられる。従って、この食後高脂血症は、代謝症候群の初期段階(未病)を発見できるばかりでなく、動脈硬化のリスクファクターとして注目されており、例えば非空腹時の中性脂肪濃度が高くなると冠動脈疾患のイベント発症リスクが高くなるといえるのである。
【0006】
しかしながら、食後高脂血症の診断は、食後6時間〜10時間の血中の脂質濃度変化を観測する必要がある。つまり、食後の高脂血状態を計測するためには、被験者を6〜10時間程度拘束し、複数回の採血が必要であるため、臨床研究の域を出ず、臨床現場で実施することは現実的ではなかった。
【0007】
また、国民の健康意識の高まりから、脂肪吸収抑制を特徴とする特定保健用食品などが普及し、食事による脂肪摂取に対する意識が高まっている。しかし、国民が血中の脂質を気にかけているにも関わらず、家庭で気軽に血中脂質を計測する健康管理機器は存在しない。なぜなら、採血そのものが医師法により規制されていること、また、仮に規制が無くても検査機器が高額で一般家庭で購入できる価格帯では無いこと、さらには、廃液処理、長時間にわたる分析時間等の問題点が挙げられる。
【0008】
以上のような状況下において、これまでに提案されている血中成分の計測方法に関する発明は以下の通りである。
【0009】
例えば、特開2004−251673号公報では、近赤外領域や赤外領域の波長の光を音響光学可変振動フィルターにより出力して生体に照射し、被測定対象物を透過または反射した光を受光して得られた吸光スペクトルを解析・演算することにより被測定対象物の濃度を算出する装置に関する発明が提案されている(特許文献1)。つまり、この発明は、血中成分によって光が吸収される現象を利用し、照射される光量と、受光される光量との差等から光が吸収された量等を算出し、その算出結果から血中成分の濃度を算出するというものである。
【0010】
また、特開2010−66280号公報では、近赤外光源と、近赤外光を検出する検出手段と、前記近赤外光源から発する近赤外光を生体組織あるいは体液に導入し、前記生体組織あるいは体液を透過あるいは拡散反射した近赤外光を前記検出手段に誘導する誘導手段と、前記検出手段で得られる信号を基にグルコース濃度の回帰分析を行う演算手段とからなり、上記演算手段は、分子の第1倍音が観察できる波長領域で且つ水の吸収の影響が比較的小さい1480nmから1880nmの波長領域内におけるグルコース分子のOH基由来の吸収を測定するための1550nmから1650nmの第1の波長域と、生体成分のNH基由来の吸収を測定するための1480nmから1550nmの第2の波長域と、生体成分のCH基由来の吸収を測定するための1650nmから1880nmの第3の波長域の少なくとも3つの隣接域内の各波長を連続的に測定して得られる連続スペクトル信号を説明変量、グルコース濃度を目的変量として回帰分析することでグルコースの定量を行うものであることを特徴とするグルコース濃度の定量装置に関する発明が提案されている(特許文献2)。つまり、この発明も特許文献1に記載の発明と同様、グルコースのOH基、NH基およびCH基によって光が吸収される現象を利用し、照射される光量と、受光される光量との差等から光が吸収された量等を算出し、その算出結果から血中成分の濃度を算出するというものである。
【0011】
さらに、特開2002−168775号公報では、 哺乳動物の血漿成分を測定するにあたり、哺乳動物の血液から血漿を分離し、分離した血漿について、近赤外分光光度計を用いて、波長400−2500nmの可視および近赤外領域の吸光度を測定し、該吸光度の一次差分および二次差分を計算し、これら可視および近赤外領域の吸光度、吸光度の一次差分および二次差分を独立変数とし、当該独立変数の中から説明力の高い独立変数をそれぞれ2−10個選抜し、当該説明力の高い独立変数の情報から、血漿中の中性脂肪濃度、無機リン濃度、カリウム濃度、乳酸脱水素酵素活性およびアルブミングロブリン比をそれぞれ予測し、該予測値に基づき測定を実現することを特徴とする、可視および近赤外領域のスペクトル情報による哺乳動物の血漿成分の迅速測定法に関する発明が記載されている(特許文献3)。つまり、この発明も特許文献1および特許文献2に記載の発明と同様、血漿が波長400−2500nmの可視および近赤外領域の光を吸光する現象を利用し、照射される光量と、受光される光量との差等から血漿中の中性脂肪濃度等を算出するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−251673号公報
【特許文献2】特開2010−66280号公報
【特許文献3】特開2002−168775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された発明においては、所定の血中成分により光が吸収される現象に基づいているため光の散乱を排除しなければならないが、これまでの研究で吸収による影響は、散乱の影響に比べて約1/10とされており、つまり散乱の影響は吸収の影響の約10倍であるため、散乱の影響を排除することは非常に困難であるという問題がある。また、散乱が一定であればその影響を除去する必要はなくなるが、実際に計測された光強度が吸収によるものなのか散乱によるものなのかの区別は難しく、光路長にも依存するため、さらに計測が困難となる。特に、非侵襲による計測の場合、細胞等の他の物質による吸収の影響もあり、上記各文献による非侵襲計測は現実的に不可能である。また、これらの発明に基づく装置は、大型となり、しかも高額であるため家庭で気軽に使用するには現実的ではない。さらに、照射位置と検出位置との距離を大きくすると、光路長を長くなり、吸収計測では光エネルギーは吸収されつくされ、体外に出てこないという問題もある。
【0014】
また、特許文献1に記載された発明においては、脂質や糖等が光を吸収し易い光の波長範囲と、血液に含まれる水や電解質が光を吸収し易い光の波長範囲とが重なっており、重なった波長範囲の光を用いると、脂質や糖等による光の吸収の影響が水や電解質による光の吸収の影響によりかき消され、脂質や糖等に吸収される光量等を正確に計測できないという問題がある。
【0015】
さらに、特許文献2に記載された発明においては、照射した光がグルコースのCH基、OH基、NH基などの親水基に光が吸収される現象に基づき、前記グルコースの血中濃度を定量化するものであり、計測対象は限定されているという問題がある。つまり、血中脂質の濃度は計測できないということである。具体的には、血中の脂質は、疎水性が高いためリン脂質等に覆われた球状構造をしている。これは、血中のエステル型コレステロールやトリグリセライドが疎水性であるため、水に対する親和性が低く水に難溶性を示し、両親媒性のリン脂質覆われたミセルを形成して散乱体として存在しているためである。また、一般的な健康診断や病気の診断で測定される中性脂肪はトリグリセライドを指し、また総コレステロールはコレステロールとエステル型コレステロール、遊離型コレステロール等の総和をさすが、動脈硬化のリスクとしてはエステル型コレステロールが重要であると言われている。このように、計測対象として重要な脂質成分は、疎水性が高いためミセルの中心に存在し、またミセル表面で光を反射する性質を有しているため、吸収によりその物質の濃度を測定することは不可能である。また、特許文献2に記載された発明においては、濃度は得られた吸光度を回帰分析して算出するものであり、リアルタイムに計測できないとう問題もある。
【0016】
さらにまた、特許文献3に記載された発明においては、採血をして、さらにはその血液から血漿を分離したものを計測する対象としており、非侵襲により計測するものではない。つまり、生体や他の血中成分等の外乱を除去された状態であれば、散乱の影響が除去された状態であるから中性脂肪濃度などを検出することができるのであり、本発明のような非侵襲により血中の中性脂肪濃度を検出する困難性については何ら解決されていない。
【0017】
また、光の散乱を用いて血中成分を計測するものとして、動的光散乱法や静的光散乱法があるが、これらは血中成分の大きさを計測するものであり、濃度を算出するものではい。また、動的光散乱法は、ブラウン運動を計測し、粒子径分布を算出する手法であるため計測対象物は静置されていることが必要であり、血流などの動きがある状態では計測が困難である。計測時間は1サンプルあたり30分〜1時間程度の計測時間が必要である。また、静的光散乱法は、単一成分で濃度が既知の場合に分子量を算出する方法であり、かつ動的光散乱より計測できる粒子より大きな粒子の計測を想定したものであって、分子の動きが無いという仮定で分析を行うものである。そのため、静的光散乱法においても、計測対象物は静置されている必要があり、血流がある状態での計測は困難である。
【0018】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、採血を無くすことにより医療機関のみならず家庭でも血中脂質を計測できるようになり、しかも即時的なデータ取得を可能とすることで時間的に連続した血中脂質を計測をすることにより食後高脂血症などの代謝異常の検査に応用することが可能な非侵襲型生体脂質濃度計測器、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器、非侵襲による生体脂質濃度計測方法および非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る非侵襲型生体脂質濃度計測器は、非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲型生体脂質濃度計測器であって、生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射手段と、この照射手段による光の照射位置から所定間隔をあけて配置されて前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出手段と、この光強度検出手段により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出手段と、この散乱係数算出手段により算出された光の散乱係数に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出手段とを有する。
【0020】
また、本発明に係る非侵襲による生体脂質濃度計測方法は、非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲による生体脂質濃度計測方法であって、生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射工程と、この照射工程による光の照射位置から所定の間隔をあけて前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出工程と、
この光強度検出工程により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出工程と、この散乱係数算出工程により算出された光の散乱係数に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出工程とを有する。
【0021】
また、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器または非侵襲による生体脂質濃度計測方法の一態様として、前記照射位置と前記光強度を検出する検出位置とが所定の照射検出間距離を隔てて設けられており、前記光強度検出手段または前記光強度検出工程では生体内の血中脂質により散乱された後方散乱光による光強度を検出するようにしてもよい。
【0022】
さらに、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器または非侵襲による生体脂質濃度計測方法の一態様として、前記散乱係数算出手段または前記散乱係数算出工程は、検出された光強度と、照射位置から光強度を検出する検出位置までの照射検出間距離との比に基づき生体内における光の散乱係数を算出するようにしてもよい。
【0023】
また、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器または非侵襲による生体脂質濃度計測方法の一態様として、前記散乱係数算出手段または前記散乱係数算出工程は、検出された光強度と、照射位置から光強度を検出する検出位置までの照射検出間距離との比に基づき生体内における光の散乱係数を算出するようにしてもよい
【0024】
さらに、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器または非侵襲による生体脂質濃度計測方法の一態様として、前記照射手段または前記照射工程により連続光を照射するとともに、前記散乱係数算出手段または前記散乱係数算出工程は、前記光強度検出手段または前記光強度検出工程により検出された光強度R(ρ)と前記照射検出間距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することで散乱係数μを算出するようにしてもよい。
【数1】
【数2】
ここで、μは吸収係数、μeffは有効減衰係数(effective attenuation coefficient)、Sは照射手段により照射された光の光強度である。
【0025】
また、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器または非侵襲による生体脂質濃度計測方法の一態様として、前記光強度検出手段または前記光強度検出工程において照射された光の照射位置を中心として各々異なる距離に配置された複数の前記検出位置における前記光強度を検出し、前記散乱係数算出手段または前記散乱係数算出工程は、各々の前記光強度検出手段または前記光強度検出工程により検出された前記光強度同士の比および/または前記光強度同士の差に基づいて生体内における光の散乱係数を算出するようにしてもよい。
【0026】
さらに、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器または非侵襲による生体脂質濃度計測方法の一態様として、前記照射手段または前記照射工程において生体外から生体内に向けて連続光を照射するとともに、前記光強度検出手段または前記光強度検出工程において照射された光の照射位置を中心として各々異なる距離に配置された第一検出位置および第二検出位置における前記光強度を検出し、前記散乱係数算出手段または前記散乱係数算出工程では、前記照射位置から前記第一検出位置までの第一照射検出間距離ρと、前記照射位置から前記第二検出位置までの第二照射検出間距離ρと、前記第一検出位置において検出された第一光強度R(ρ)と、前記第二検出位置において検出された第二光強度R(ρ)とを下記式(3)に代入することで散乱係数μを算出するようにしてもよい。
【数3】
【0027】
また、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器または非侵襲による生体脂質濃度計測方法の一態様として、前記照射手段または前記照射工程において生体外から生体内に向けてパルス状の光を照射するとともに、前記光強度検出手段または前記光強度検出工程において前記検出位置における所定の時間毎の前記光強度を検出し、前記散乱係数算出手段または前記散乱係数算出工程では、パルス状の光を照射した時から、検出された前記光強度が所定の強度に減衰するまでの時間の長さに基づき生体内における光の散乱係数を算出するようにしてもよい。
【0028】
さらに、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器または非侵襲による生体脂質濃度計測方法の一態様として、前記照射手段または前記照射工程において生体外から生体内に向けてパルス状の光を照射するとともに、前記光強度検出手段または前記光強度検出工程において前記検出位置における所定の時間毎の前記光強度を検出し、前記散乱係数算出手段または前記散乱係数算出工程では、パルス状の光を照射した時から、検出された前記光強度が最も強くなる時までの時間の長さに基づき生体内における光の散乱係数を算出するようにしてもよい。
【0029】
また、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器または非侵襲による生体脂質濃度計測方法の一態様として、前記照射手段または前記照射工程において照射する光の強度または光の位相を変調させた光を照射するとともに、前記光強度検出手段または前記光強度検出工程において前記検出位置における所定の時間毎の前記光強度を検出し、前記散乱係数算出手段または前記散乱係数算出工程では、検出された前記光強度の時間変化に基づき光密度波形を算出し、この光密度波形に基づき前記血液の散乱係数および吸収係数を算出するようにしてもよい。
【0030】
また、本発明に係る非侵襲型生体脂質代謝機能計測器は、前記非侵襲型生体脂質濃度計測器により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化から生体脂質代謝機能を計測する。
【0031】
さらに、本発明に係る非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法は、前記非侵襲型生体脂質濃度計測器または前記非侵襲による生体脂質濃度計測方法により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化から生体脂質代謝機能を検査する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、採血を無くすことにより医療機関のみならず家庭でも血中脂質を計測できるようになり、しかも即時的なデータ取得を可能とすることで時間的に連続した血中脂質を計測をすることにより食後高脂血症などの代謝異常の検査に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る非侵襲型生体脂質濃度計測器および非侵襲型生体脂質代謝機能計測器の一実施形態を示す図である。
図2】血液の光吸収スペクトルを示す図である。
図3】本実施形態において検出される光が血中脂質による光の散乱情報を含むことを示す模式図である。
図4】リポタンパクの構造を示す模式図である。
図5】血液に光を照射した場合における粒子の濃度に応じた光の散乱による効果について示す上から見たイメージ図および横から見たイメージ図である。
図6】本実施例1において従来法にてA氏の血中脂質濃度の時間変動を示すグラフである。
図7】本実施例1において従来法にてB氏の血中脂質濃度の時間変動を示すグラフである。
図8】本実施例1においてHPLCにてA氏のCM/VLDL、LDLおよびHDL中のTGの濃度を計測した結果を示すグラフである。
図9】本実施例1においてHPLCにてB氏のCM/VLDL、LDLおよびHDL中のTGの濃度を計測した結果を示すグラフである。
図10】本実施例1においてHPLCにてA氏のCM/VLDL、LDLおよびHDL中のTCの濃度を計測した結果を示すグラフである。
図11】本実施例1においてHPLCにてB氏のCM/VLDL、LDLおよびHDL中のTCの濃度を計測した結果を示すグラフである。
図12】本実施例2において分光光度計を用いた血液による光の吸収スペクトルを計測した結果を示すグラフである。
図13】本実施例3において分光光度計を用いてサンプルa、b、cおよびdの血液による光の吸収スペクトル計測した結果を示すグラフである。
図14】本実施例3において分光光度計を用いてサンプルa、b、cおよびdの血球による光の吸収スペクトル計測した結果を示すグラフである。
図15】本実施例3において分光光度計を用いてサンプルa、b、cおよびdの血清による光の吸収スペクトル計測した結果を示すグラフである。
図16】本実施例3において血液、血球および血清の吸収スペクトルを重ねて表したグラフである。
図17】本実施例4において検出位置で検出した光強度を時系列で表したグラフである。
図18】本実施例4において検出位置で検出した光強度を時系列で表した対数グラフである。
図19】本実施例4において検出した光強度が最も強くなる時間(peak top time)を示すグラフである。
図20】本実施例5においてA氏の各検出位置における検出した光強度の比を示すグラフである。
図21】本実施例5においてB氏の各検出位置における検出した光強度の比を示すグラフである。
図22】本実施例5において各検出位置における検出した光強度の比の値と、従来法であるHPLCにより測定したCM/VLDLにおけるTG濃度との相関を示すグラフである。
図23】本実施例5においてA氏の各検出位置における検出した光強度の差を示すグラフである。
図24】本実施例5においてB氏の各検出位置における検出した光強度の差を示すグラフである。
図25】本実施例6においてモンテカルロシミュレーションにより、照射検出間距離ρと検出される光子数についてシミュレーションした結果を示すグラフである。
図26】本実施例6においてモンテカルロシミュレーションによる結果を式(1)に代入した結果を示すグラフである。
図27図26に示すグラフの切片から吸収係数μを求めた結果を示すグラフである。
図28図26に示すグラフの傾きから有効減衰係数μeffを算出し式(8)に代入して散乱係数μを算出した結果とその理論値とを示すグラフである。
図29】本実施例6において模擬ファントムの散乱係数μと実験からその模擬ファントムの散乱係数μを式(1)および式(3)を用いて計算された結果を示すグラフである。
図30】本実施例7において散乱係数μに対する光強度比R(ρ)/R(ρ)の変化を計測した結果を示すグラフである。
図31】本実施例7において散乱係数μの理論値とられた値を式(3)により算出された散乱係数μの計算値とを示すグラフである。
図32】本実施例7において光強度検出結果に5パーセントのノイズを含めた際の散乱係数μの理論値とられた値を式(3)により算出された散乱係数μの計算値とを示すグラフである。
図33】本実施例7において模擬ファントムの散乱係数μと実験からその模擬ファントムの散乱係数μを式(3)を用いて計算された結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る非侵襲型生体脂質濃度計測器、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器、非侵襲による生体脂質濃度計測方法および非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0035】
本実施形態の非侵襲型生体脂質濃度計測器1は、図1に示すように、生体外から生体に向けて光を照射する照射手段2と、生体外の所定の検出位置31における光強度を検出する光強度検出手段3と、この光強度検出手段により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数μを算出する散乱係数算出手段4と、この散乱係数算出手段4により算出された光の散乱係数μに基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出手段5とを有している。つまり、本実施形態の非侵襲型生体脂質濃度計測器1は、採血不要の検査を実現するために、生体を透過しやすい光を用いて血中脂質の定量分析を行うものである。
【0036】
以下、各構成について詳細に説明する。
【0037】
照射手段2は、図1に示すように、生体外から生体に向けて、所定の照射位置21に光を照射するものであり、光を照射するための光源22を有している。前記光源22は、照射する光の波長を自在に調整することができるようになっており、その波長範囲を血漿の無機物によって光が吸収される波長範囲以外に調整することができる。また、本実施形態における光源22は、血液の細胞成分によって光が吸収される波長範囲以外に調整することもできる。ここで、血液の細胞成分とは、血中の赤血球、白血球および血小板のことであり、血漿の無機物とは、血中の水および電解質のことである。
【0038】
また、血漿の無機物により光を吸収する波長範囲とは、主に、血漿の無機物による光の吸収が強い範囲を示すものであり、図2に示すような範囲である。同様に、血液の細胞成分により光を吸収する波長範囲とは、主に、血液の細胞成分による光の吸収が強い範囲を示すものであり、図2に示すような範囲である。つまり、それら以外の波長範囲では、血漿の無機物による光の吸収や血液の細胞成分による光の吸収が起きているものと考えられるが、実験や生体計測レベルにおいて無視できる程度である。
【0039】
つまり、光源22として用いられる波長範囲は、図2に示すように、血漿の無機物により光を吸収する波長範囲を考慮して約1400nm以下および約1500nm〜約1860nmとするのが好ましく、さらに、血液の細胞成分によって光が吸収される波長範囲を考慮して約580nm〜約1400nmおよび約1500nm〜約1860nmとするのがより好ましい。
【0040】
このように、光源22として用いられる波長範囲を上記範囲とすことにより、後述する光強度検出手段3により検出される光において、血漿の無機物による光の吸収の影響および血液の細胞成分により光の吸収の影響を抑制している。これにより、物質を特定するほどの吸収は存在せず、吸収による光エネルギー損失は無視できるほど小さくなるため、血中の光は血中の脂質による散乱によって遠くまで伝搬し、体外へ放出されようになる。
【0041】
また、本実施形態の照射手段2は、後述する散乱係数算出手段4による散乱係数μの算出方法に応じて、光の連続的な照射や光のパルス状の照射等の光を照射する時間長さを任意に調整することができ、かつ照射する光の強度または光の位相を任意に変調することができる。
【0042】
なお、照射手段2は、波長が固定された光源22を用いてもよく、複数の波長の光を混合したものであってもよい。
【0043】
光強度検出手段3は、光を受光してその光強度を検出するものであり、生体から生体外に放出される光を受光し、その光強度を検出できるようになっている。また、複数の光強度検出手段3を用いる場合は、照射位置21を中心として各々異なる距離に設置される。本実施形態では、図1に示すように、照射位置21から所定の間隔で同一面上でかつ直線状に第一光強度検出手段31および第二光強度検出手段32が順に並べられいる。
【0044】
また、照射位置21から検出位置33までの距離を照射検出間距離ρとしており、本実施形態では、図1に示すように、照射位置21から第一光強度検出手段31による第一検出位置331までの距離を第一照射検出間距離ρとし、照射位置21から第二光強度検出手段32による第二検出位置332までの距離を第二照射検出間距離ρとしている。
【0045】
このように、光を生体に照射する照射位置21と、生体から放出される光強度を検出する検出位置33との間に所定の距離を設けることにより、図3に示すように、照射した光が生体表面および表面近傍の散乱体により反射して直接的に生体から放出される光の影響を抑制し、血液や脂質が存在する深さに達したのち、血中脂質によって光が反射することによる散乱を経て生体から放出される後方散乱光による光強度を検出するようになっている。また、照射位置21と検出位置33との距離を長くすることで、光路長は長くなるため、脂質との衝突回数が増え、検出される光は散乱の影響を多く受けることにより、これまでは弱く、検出しにくかった散乱の影響を捉えやすくしている。
【0046】
また、計測対象である、「血中脂質」は、図4に示すように、アポタンパク等に覆われた球状構造をしており、リポタンパクと呼ばれている。また、脂質そのものも疎水性物質であり血液に溶けにくい物質である。そのため、血中脂質は血中において固体のような状態で存在しており、光を反射する性質を有し、特に、粒子径や比重の大きいカイロミクロン(CM)やVLDL等は脂質を多く含み、かつ光をより散乱させ易い特性を有している。よって、光強度検出手段3により検出される光強度には、血中脂質による光の散乱の影響が含まれていると考えられる。
【0047】
なお、複数の検出位置33を設ける場合の配列は、照射位置21を中心として各々異なる距離に配置されるのであれば直線状に限定されるものではなく、円状、波状、ジグザグ状など、適宜選択することができる。また、照射位置21から検出位置33までの第一照射検出間距離ρや第二照射検出間距離ρ、検出位置331,332同士の間隔は、一定の間隔に限定されるものではなく、適宜選択されるものである。
【0048】
散乱係数算出手段4は、光強度検出手段3により検出された光強度に基づき生体内における光の散乱係数μを算出するものである。上述のとおり、光強度検出手段3により検出された光強度は、血中脂質による光の散乱の影響が含まれており、そのことから散乱係数μを算出しようとするものである。なお、本実施形態における散乱係数μは、一般的な散乱過程の効率を数値化したものに限定されるものではなく、散乱現象を考慮して散乱の影響を一定の条件下で数値化したものも含むものである。以下、詳細に説明する。
【0049】
本実施形態における散乱係数算出手段4は、図1に示すように、光強度/距離算出部41、光強度比算出部42、光強度差算出部43、減衰時間算出部44、最強時間算出部45および光密度波形算出部46の6つの算出部を有している。以下、各算出部について詳細に説明する。
【0050】
光強度/距離算出部41は、検出位置33で検出された光強度と、照射位置21から検出位置33までの照射検出間距離ρとの比から散乱係数μを算出するものである。つまり、照射した光が検出位置までの距離を遠くするにつれて散乱により減衰していく散乱現象に基づき散乱係数μを算出するものである。つまり、図5に示すように、血中に散乱を生じさせる粒子が無ければ照射した光は透過し、散乱は生じない(左から1つめの図)。一方、散乱粒子があり、散乱を生じた場合は、照射した光は反射し生体から放出される。このとき、粒子の濃度によって、照射位置21から近い場所で弱い光が届く場合(左から2つめの図)、照射位置21から遠い場所まで光が届く場合(左から3つめの図)、照射位置21から近い場所で強い光が届く場合(左から4つめの図)と、濃度に応じた分布を示す。
【0051】
よって、ここで検出される光強度には、上述のとおり、光が血中において粒子状に存在する脂質の濃度に依存して散乱している情報、および照射位置21と検出位置33との距離が遠くなるほど光強度が減衰する情報が含まれている。よって、光強度/距離算出部41は、この光強度と、設定に応じて既知の値となる照射位置21と検出位置33との距離との比、いわゆる距離に対する減衰率を算出し、これを散乱係数μとすることで、血中脂質の濃度に依存する散乱係数μを得るようにしたものである。
【0052】
本実施形態における光強度/距離算出部41は、前記照射手段2により連続光を照射するとともに、第一光強度検出手段31により検出された光強度R(ρ)と照射検出間距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することで散乱係数μを算出するようになっている。
【数1】
【数2】
ここで、μは吸収係数、μeffは有効減衰係数(Effective Attenuation Coefficient)、Sは照射手段2により照射された光の光強度である。
【0053】
なお、上記式(1)および式(2)は以下のように導き出される。
【0054】
まず、図1に示すように、生体外から生体内に向けて所定の光強度Sを有する光を連続光として照射するとともに、照射位置21から検出位置33までの距離を照射検出間距離ρとすると、その後方散乱光によって生体外に放射される光の分布は、以下の式(4)で表される。
【0055】
【数4】
ここで、zは光源の深さ、つまり散乱が開始する深さであって、下記式(5)で表される。
【数5】
ここで、μは散乱係数を表している。
【0056】
また、μeffは有効減衰係数であり、下記式(6)で表される。
【数6】
ここで、Dは拡散係数、μは吸収係数をそれぞれ表している。
【0057】
また、皮膚表面や表面近傍の血管での散乱を想定すると、照射検出間距離ρと光源の深さzとの関係は下記式(7)のように近似する事ができる。
【数7】
ただし、
【0058】
さらに、本発明における計測対象は、上述のとおり血中の脂質であり、血中脂質による散乱は吸収よりも大きいと考えられる。そのため、有効減衰係数μeffは下記式(8)のように近似する事ができる。
【数8】
ただし、
【0059】
以上の式(7)および式(8)を式(4)に代入すると、下記式(9)の近似式となる。
【数9】
【0060】
ここで、照射検出間距離ρと有効減衰係数μeffとに関して、下記式(10)のような関係を有する場合、式(9)は下記式(11)のように表される。ここでμeff=5.77mm(μ=1/mm、μ=0.01/mm)とする。
【数10】
【数11】
そして、上記式(11)を対数表示させると、上記式(1)が導き出される。
【0061】
また、照射検出間距離ρと有効減衰係数μeffとに関して、下記式(12)のような関係を有する場合、式(9)は下記式(13)のように表される。
【数12】
【数13】
そして、上記式(13)を対数表示させると、上記式(2)が導き出される。
【0062】
なお、強度/距離算出部41は、本実施形態のように上記式(1)および式(2)によるものに限定されるものではなく、適宜選択されるものであり、例えば、検出された光強度R(ρ)と散乱係数μとが単純に比例しているものとしてもよい。
【0063】
また、強度/距離算出部41は検出位置33が一点のものに限定されるものではない。実際の計測に置いては、多くの計測ノイズが発生することが想定される。そのような場合は、検出位置33を多数設置し、照射検出間距離ρに応じた連続的な光強度から散乱係数を導くこともできる。つまり、強度/距離算出部41において、計測点が少数である各計測データのノイズが相対的に大きくなる場合、検出位置33を増やすことで、実測で想定されるノイズの影響を軽減させることが可能である。
【0064】
次に、光強度比算出部42は、複数の光強度検出手段3により検出された光強度のそれぞれの比から散乱係数μを算出するものである。基本的には光強度/距離算出部41と同様であり、照射した光が、検出位置33までの距離を遠くするにつれて散乱により減衰していく散乱現象に基づき散乱係数μを算出するものである。
【0065】
本実施形態では、照射手段2により所定の光強度の連続光を照射し、照射位置21から第一光強度検出手段31による第一検出位置331までの第一照射検出間距離ρと、照射位置21から第二光強度検出手段32による第二検出位置332までの第二照射検出間距離ρと、第一光強度検出手段31により検出された第一光強度R(ρ)と、第二光強度検出手段32により検出された第二光強度R(ρ)とを下記式(3)に代入することで散乱係数μを算出する。
【数3】
【0066】
なお、上記式(3)は、以下のように導き出される。
【0067】
まず、上記式(13)において、照射位置21から異なる距離ρ、ρ離れた点における光強度R(ρ)および光強度R(ρ)を測定すれば、体内の光伝搬領域の散乱係数μは、下記式(14)の表される。
【数14】
ここで、上記式(14)を対数表示させると、下記式(15)になる。
【数15】
【0068】
そして、上記式(15)に上記式(8)を代入することにより、上記式(3)が導き出される。
【0069】
このように、上記式(3)では、検出位置33を少なくすることができるため、装置の大きさが小さく、そして安価に製造することがで、家庭用に適している。
【0070】
なお、光強度比算出部42は、本実施形態のように上記式(3)によるものに限定されるものではなく、適宜選択されるものであり、第一検出位置331,および第二検出位置332同士の間の距離に対する減衰率を算出し、その減衰率から散乱係数μを算出するようにしてもよい。
【0071】
また、上記式(3)を使用した装置は、家庭用に限定されるものではなく、医療用・臨床用であってもよい。
【0072】
光強度差算出部43は、複数の光強度検出手段3により検出された光強度の差から散乱係数μを算出するものである。この散乱係数μは、検出位置33同士の間の距離に対応した2点間の差を算出し、その算出した値を散乱係数μとしたものである。よって、光強度/距離算出部41や光強度比算出部42と同様、照射した光が、検出位置33までの距離を遠くするにつれて散乱により減衰していく散乱現象に基づき散乱係数μを算出するものである。
【0073】
本実施形態における光強度差算出部43は、第一検出位置331および第二検出位置332における光強度R(ρ)および光強度R(ρ)を取得し、その差を算出し、散乱係数μとしている。
【0074】
次に、減衰時間算出部44は、照射手段2によりパルス状の光を照射した時から、光強度検出手段3により検出された光強度が所定の強度に減衰するまでの時間の長さから散乱係数μを算出するものである。つまり、パルス状に照射した光が、散乱により時間が進むにつれて減衰していく散乱現象に基づき散乱係数μを算出するものである。
【0075】
よって、ここで検出される光強度には、光が血中脂質の濃度に依存して散乱している情報、および照射した時から検出されるまでの時間が長くなるほど光強度が減衰する情報が含まれている。よって、減衰時間算出部44は、その光強度の減衰から血中脂質の濃度に依存する散乱係数μを得るようにしたものである。
【0076】
本実施形態における減衰時間算出部44は、照射位置21とそれに隣接する検出位置33における光強度を取得し、所定の光強度に減衰するまでの時間を算出し、その値を散乱係数μとしている。
【0077】
最強時間算出部45は、照射手段2によりパルス状の光を照射した時から、光強度検出手段3により検出された光強度が最も強くなる時までの時間の長さから散乱係数μを算出するものである。つまり、減衰時間算出部414と同様、パルス状に照射した光が、散乱により時間が進むにつれて減衰していく散乱現象に基づき散乱係数μを算出するものである。
【0078】
本実施形態では、上述のとおり、照射位置21から検出位置33までに所定の距離を有しており、その距離の間で散乱が起きている。そのため、光強度検出手段3により検出される光強度が最も強くなるまでのタイムラグがある。よって、最強時間算出部45は、そのタイムラグを利用して血中脂質の濃度に依存する散乱係数μを得るようにしたものである。
【0079】
よって、本実施形態における最強時間算出部45は、照射位置21とそれに隣接する検出位置33における光強度を取得し、光強度が最も強くなる時までの時間を算出し、その値を散乱係数μとしている。
【0080】
光密度波形算出部46は、光密度波形より血液の散乱係数μおよび吸収係数を算出するものである。光密度波形は、照射手段2により照射する光の強度または光の位相を変調させることで、その波形が変化する。この光密度波形の変化は、血液の濃度に依存しており、血液の散乱係数μおよび吸収係数を算出することができる。
【0081】
本実施形態における光密度波形算出部46は、照射位置21とそれに隣接する検出位置31aにおける光強度を取得し、その光密度波形の時間変化を算出し、その時間変化から血液の散乱係数μおよび吸収係数を算出している。
【0082】
なお、散乱係数算出手段4による散乱係数μの算出方法は、上記の各算出によるものに限定されるものではなく、光強度に含まれる血中脂質の濃度情報を算出する方法から適宜選択されるものである。
【0083】
脂質濃度算出手段5は、散乱係数算出手段4により算出された散乱係数μに基づいて血中脂質の濃度を算出するものである。なお、後述の実施例5において説明するが、散乱係数μと脂質濃度とは相関があり、散乱係数μの値に基づいて脂質濃度を算出するものである。本実施形態では、散乱係数μと血中脂質濃度との関係について統計データを取り、散乱係数μと、前記統計データとを比較することにより、実際の血中脂質濃度を算出するようになっている。
【0084】
例えば、特定の生体A氏の血中脂質濃度を計測対象とする場合は、A氏の血中脂質濃度を採血などの他の血中脂質濃度計測方法等により計測した計測結果と、算出された散乱係数μとを比較して、A氏個人の統計データを作成して、濃度を算出できるようにすることができる。
【0085】
若しくは、A氏の血中脂質の濃度を他の血中脂質の濃度の測定方法等により測定した測定結果と、検出された光強度より得られた濃度の測定結果とを比較して、その比較により得られた濃度と、一般的な生体の場合の前記統計データにおける濃度との誤差を算出し、その誤差を修正するキャリブレーションすることで、A氏個人の統計データを作成してもよい。
【0086】
なお、統計データの形式は特に限定されるものではなく、例えば、性別、身長、体重、BMI等で分類されていてもよく、表やグラフ、関数式等を用いて算出できるようにしてもよい。
【0087】
また、臨床現場において、濃度と濁度とは同義で使われることがあり、本発明における濃度には濁度の概念も含まれる。よって、脂質濃度算出手段は、その算出結果として、濃度のみならず単位量当たりの粒子数やホルマジン濁度とすることができる。
【0088】
次に、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器10の構成について説明する。非侵襲型生体脂質代謝機能計測器10は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1により算出された散乱係数μまたは脂質濃度、またはその両方を取得し、その時間変化から生体脂質代謝機能を計測するものである。本実施形態における非侵襲型生体脂質代謝機能計測器10は、図1に示すように、非侵襲型生体脂質濃度計測器1に通信回線等を介して接続されており、非侵襲型生体脂質濃度計測器1により算出された散乱係数μや脂質濃度を所定時間毎に取得する算出値取得手段101と、この算出値取得手段101により取得された散乱係数μや脂質濃度の時間変化に応じて生体脂質機能を判断する生体脂質機能代謝判断手段102とを有する。
【0089】
算出値取得手段101は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1に算出された散乱係数μや脂質濃度を通信回線等を介して所定時間毎に取得するようになっている。取得する時間間隔は特に限定されるものではないが、検査対象に応じて数秒間隔から数十分間隔、あるいはそれ以上の時間間隔で調整できるようになっている。
【0090】
なお、散乱係数μや脂質濃度の取得は、通信回線を介したものに限定されるものではなく、非侵襲型生体脂質濃度計測器1により算出された脂質濃度値等を手入力により入力して取得するようにしてもよい。また、本実施形態では、非侵襲型生体脂質濃度計測器1と、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器10とを別体として構成したが、これに限定されるものではなく、一体的に構成するようにしてもよく、いずれか一方の計測器が他の計測器の機能を有していてもよい。
【0091】
生体脂質機能代謝判断部102は、算出値取得部101により取得された散乱係数μや脂質濃度の時間変化から被験者の生体脂質代謝について判断する。例えば、散乱係数μや脂質濃度が最大値になるまでの時間は、胃や小腸による脂質の消化・吸収を表しており、その時間の長さに応じて健康か否かを判断する。また、散乱係数μや脂質濃度が空腹時と同じ値になるまでの時間から、肝臓による脂肪分解能力を判断する。さらに、脂質濃度であれば、これらの値に基づく危険度をより正確に判断する。最終的には、これらを総合的に判断し、健康状態の総合的な判断をする。
【0092】
次に、本実施形態の非侵襲型生体脂質濃度計測器1および非侵襲型生体脂質代謝機能計測器10を用いた非侵襲による生体脂質濃度計測方法および非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法の作用について説明する。
【0093】
まず、非侵襲型生体脂質濃度計測器1および非侵襲による生体脂質濃度計測方法の作用について散乱係数算出手段4の各算出部ごとに説明する。
【0094】
「光強度/距離算出部411を用いた濃度計測」
本実施形態における照射工程は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1の照射手段2を用いて実行される。光強度/距離算出部41を用いた濃度計測の場合、照射手段2は照射位置21に対して所定の光強度Sの連続光を体外から体内に向けて照射する。生体に照射する光を連続光とすることで、光強度検出手段3により検出される光強度が、時間による減衰の影響を含まれないようにしている。
【0095】
また、本実施形態では、血漿の無機物によって光が吸収される波長範囲以外および血液の細胞成分によって光が吸収される波長範囲以外の光源による光を照射している。そのため、血中を通過する際に、血漿の無機物や血液の細胞成分により光が吸収されるのを抑制し、光強度検出手段3により検出される光強度に血中脂質による散乱の影響が残るようにしている。
【0096】
本実施形態における光強度検出工程は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1の光強度検出手段3のを用いて実行される。本実施形態では、第一光強度検出手段31が、第一検出位置331における光強度を検出する。検出した光強度は、散乱係数算出工程へと送られる。
【0097】
本実施形態における散乱係数算出工程は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1における散乱係数算出手段4の光強度/距離算出部41を用いて実行される。光強度/距離算出部41では、上述のとおり、光強度検出工程により検出された光強度、光強度R(ρ)と前記照射検出間距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することで散乱係数μを算出を行う。算出した散乱係数μは、脂質濃度算出工程へと送られる。
【数1】
【数2】
【0098】
脂質濃度算出工程は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1における脂質濃度算出手段5を用いて実行される。脂質濃度算出手段5では、血中脂質濃度と散乱係数μとが相関関係を有することに基づき、前記散乱係数μに所定の係数をかけることで、血中脂質の濃度等を算出する。
【0099】
つまり、本実施形態における散乱係数算出手段4および散乱係数算出工程は、光強度を得て所定の式に代入することで、即時的に散乱係数μを取得することが可能である。また、脂質濃度算出手段5および脂質濃度算出工程では、その散乱係数μに所定の係数をかけることで容易に血中脂質濃度または濁度等を算出することができる。よって、演算処理スピードが速くなり、リアルタイム計測が可能になる。
【0100】
「光強度比算出部42を用いた濃度計測」
照射工程では、光強度/距離算出部41と同様に、照射手段2を用いて照射位置21に対して連続光を照射する。
【0101】
光強度検出工程では、第一光強度検出手段31を用いて第一検出位置331における光強度を検出するとともに、第二光強度検出手段32を用いて第二検出位置332の光強度を検出する。第一検出位置331および第二検出位置332で検出された光強度は、散乱係数算出工程へと送られる。
【0102】
散乱係数算出工程では、散乱係数算出手段4の光強度比算出部42、取得した第一検出位置331および第二検出位置332それぞれの光強度の比を算出し、その比から散乱係数μを算出する。本実施形態では、照射位置21から第一光強度検出手段31による第一検出位置331までの第一照射検出間距離ρと、照射位置21から第二光強度検出手段32による第二検出位置332までの第二照射検出間距離ρと、第一光強度検出手段31により検出された第一光強度R(ρ)と、第二光強度検出手段32により検出された第二光強度R(ρ)とを下記式(3)に代入することで散乱係数μを算出する。算出した散乱係数μは、脂質濃度算出工程へと送られる。
【数3】
【0103】
脂質濃度算出工程は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1における脂質濃度算出手段5を用いて実行される。脂質濃度算出手段5では、前記散乱係数μに所定の係数をかけることで、血中脂質の濃度等を算出する。
【0104】
「光強度差算出部43を用いた濃度計測」
照射工程では、光強度/距離算出部41や光強度比算出部42と同様に、照射手段2を用いて照射位置21に対して連続光を照射し、光強度検出工程では、第一光強度検出手段31を用いて第一検出位置331における光強度を検出するとともに、第二光強度検出手段32を用いて第二検出位置332の光強度を検出する。第一検出位置331および第二検出位置332で検出された光強度は、散乱係数算出工程へと送られる。
【0105】
散乱係数算出工程では、第一検出位置331における第一光強度と、第二検出位置332における第二光強度との差を算出し、それを散乱係数μとする。算出した散乱係数μは、脂質濃度算出工程へと送られる。
【0106】
脂質濃度算出工程は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1における脂質濃度算出手段5を用いて実行される。脂質濃度算出手段5では、前記散乱係数μに所定の係数をかけることで、血中脂質の濃度等を算出する。
【0107】
「減衰時間算出部44を用いた濃度計測」
照射工程では、照射手段2を用いて照射位置21に対してパルス状の光を照射する。生体に照射する光をパルス状の光とすることで、光強度検出手段3により検出される光強度が時間による減衰の影響を含むようにしている。
【0108】
光強度検出工程では、第一光強度検出手段3を用いて第一検出位置331の光強度を時間的に連続して検出する。そして、第一検出位置331で検出された光強度は所定時間毎に散乱係数算出工程へと送られる。
【0109】
散乱係数算出工程では、減衰時間算出部44が、第一検出位置331における所定時間毎の光強度を取得し、その光強度が所定の光強度以下に減衰したか否かを判別し、減衰したと判別した場合は、照射手段2によりパルス状の光を照射した時から、減衰したと判別するまでの時間の長さを算出し、これを散乱係数μとする。算出した散乱係数μは、脂質濃度算出工程へと送られる。
【0110】
脂質濃度算出工程は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1における脂質濃度算出手段5を用いて実行される。脂質濃度算出手段5では、前記散乱係数μを予め用意された統計データとを比較をして血中脂質の濃度等を算出する。
【0111】
「最強時間算出部45を用いた濃度計測」
照射工程では、減衰時間算出部44と同様に、照射手段2を用いて照射位置21に対してパルス状の光を照射する。光強度検出工程では、第一光強度検出手段31を用いて第一検出位置331の光強度を時間的に連続して検出する。そして、第一検出位置331で検出された光強度は所定時間毎に散乱係数μ算出工程へと送られる。
【0112】
散乱係数算出工程では、最強時間算出部45が、第一検出位置331における所定時間毎の光強度を取得し、その光強度が強い値か否かを判別し、最も強い値と判別した場合は、照射手段2によりパルス状の光を照射した時から、最も強い値が検出されたとする時間の長さを算出し、これを散乱係数μとする。算出した散乱係数μは、脂質濃度算出工程へと送られる。
【0113】
脂質濃度算出工程は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1における脂質濃度算出手段5を用いて実行される。脂質濃度算出手段5では、前記散乱係数μを予め用意された統計データとを比較をして血中脂質の濃度等を算出する。
【0114】
「光密度波形算出部46を用いた濃度計測」
照射工程では、照射手段2を用いて照射位置21に対して照射する光の強度または光の位相を変調させた光を照射する。光強度検出工程では、第一光強度検出手段31を用いて第一検出位置331の光強度を検出する。第一検出位置331で検出された光強度は所定時間毎に散乱係数算出工程へと送られる。
【0115】
散乱係数算出工程では、光密度波形算出部46が、第一検出位置331における所定時間毎の光強度を取得し、その光強度の時間変化に基づき光密度波形を算出するとともに、この光密度波形に基づき前記血液の散乱係数μおよび吸収係数を算出する。算出した散乱係数μは、脂質濃度算出工程へと送られる。
【0116】
脂質濃度算出工程は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1における脂質濃度算出手段5を用いて実行される。脂質濃度算出手段5では、光密度波形算出部416により算出された散乱係数μおよび吸収係数から、予め用意された統計データとを比較をして血中脂質の濃度等を算出する。
【0117】
次に、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器10および非侵襲型生体脂質代謝機能計測方法の作用について説明する。
【0118】
まず、非侵襲型生体脂質代謝機能計測方法の算出値取得工程は、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器10の算出値取得手段101を用いて実行される。算出値取得手段101は、非侵襲型生体脂質濃度計測器1にアクセスし、算出された散乱係数μや脂質濃度を通信回線を介して所定時間毎に取得する。本実施形態では、散乱係数μと脂質濃度とを両方取得し、生体脂質機能代謝判断工程に送る。
【0119】
生体脂質機能代謝判断工程は、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器10の生体脂質機能代謝判断手段102を用いて実行される。生体脂質機能代謝判断手段102は、取得した散乱係数μおよび脂質濃度の時系列の変化を監視し、生体脂質代謝機能を示す所定の値を得る。本実施形態では、散乱係数μおよび脂質濃度の最大値、最大値になるまでの時間、および最大値を経て空腹時の値に戻るまでの時間を得ている。
【0120】
そして、各値が、予め用意された統計データとを比較をして正常値であれば正常値と判断し、正常値から外れるのであれば、生体脂質代謝機能に異常があると判断する。
【0121】
例えば、散乱係数μや脂質濃度の最大値が正常値内にある場合は、脂質の基礎代謝が正常であると判断し、正常値外にある場合は、異常であると判断する。同様に、散乱係数μや脂質濃度が最大値になるまでの時間が正常値内にある場合は、胃や小腸による脂質の消化・吸収機能は正常であると判断し、正常値外にある場合は、胃や小腸による何等かの消化・吸収機能の異常があると判断する。また、散乱係数μや脂質濃度が空腹時と同じ値になるまでの時間が正常値内にある場合は、肝臓による脂肪分解能力が正常であると判断し、正常値外である場合は、異常であると判断する。
【0122】
臨床現場においては、これらの正常・異常を総合的に判断し、健康状態の総合的な判断が行われる。
【0123】
以上のような本実施形態の非侵襲型生体脂質濃度計測器1、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器10、非侵襲による生体脂質濃度計測方法および非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法によれば、以下の効果を得ることができる。
1.光強度から生体内における散乱係数μを求めることにより、非侵襲により血中脂質の濃度を得ることができる。
2.採血等の人を傷つける処置が必要なくなり、被験者への苦痛や負担を軽減することができる。
3.採血等の医療行為を必要としないため家庭でも血中脂質を計測することができる。
4.光強度から散乱係数μや脂質濃度の算出過程が単純であるため、即時的なデータ取得が可能である。
5.時間的に連続した血中脂質やこの血中脂質に相関性の良い散乱係数μを算出することが可能であるため、食後高脂血症などの代謝異常の検査に応用することができる。
6.生体に照射する光の波長範囲を血漿の無機物により吸収される光の波長範囲以外として、ノイズとなる吸収の影響を抑え、血中脂質濃度の計測精度を高めることができる。
7.血液の細胞成分により吸収される光の波長範囲も除外することで、赤血球等の細胞成分による吸収の影響も抑制され、より正確な血中脂質濃度を測定することができる。
8.血中脂質による光の散乱と血中脂質の濃度との関係を考慮することにより、様々な計算手法により散乱係数μおよび脂質濃度を算出することができる。
9.脂質濃度算出手段5または脂質濃度算出工程では、臨床現場のニーズに応じて濃度(mg/dL)等の単位のみではなく、粒子数への換算やホルマジン濁度などへの換算も可能である。
【実施例】
【0124】
<実施例1>脂質摂取による血中脂質の変動
(1)全血の変化
まず、被験者に脂質を摂取し後の血中脂質等の濃度が時間変化することを確かめた。被験者はA氏およびB氏であり、それぞれに脂質(オフトクリーム;上毛食品社)を摂取させた。
【0125】
血中脂質の濃度計測は、脂質摂取前(0分)ならびに摂取後60、150、180、210、240、270、300、330および360分経過毎に採血して血液サンプルを採取し、その血液サンプルを自動分析装置H−7170(日立ハイテクノロジーズ社)に供して、総コレステロール(TC)、中性脂肪(TG)、HDLおよびLDLの濃度を計測した。その結果を図6および図7に示す。これらの図において、横軸は被験者が脂質を摂取してからの時間、縦軸は総コレステロール(TC)、中性脂肪(TG)、HDLおよびLDLの濃度である。
【0126】
図6および図7に示すように、A氏では60分、B氏では150分経過後において中性脂肪(TG)の濃度が上昇した。一方、総コレステロール(TC)、HDLおよびLDLの濃度は変化が少なかった。これらの結果より、脂質の摂取によって、血液中の中性脂肪(TG)濃度が支配的に上昇することが明らかになった。
【0127】
(2)各リポタンパク中の変化
次に、中性脂肪(TG)の上昇に寄与している物質を特定するため、本実施例1(1)の血液サンプルを高速液体クロマトグラフィー (High Performance Liquid Chromatography:HPLC)に供して、カイロミクロン(CM)/VLDL、LDLおよびHDLに分画し、CM/VLDL、LDLおよびHDL中の総コレステロール(TC)および中性脂肪(TG)の濃度を計測した。その結果を図8図11に示す。これらの図において、横軸は被験者が脂質を摂取してからの時間、縦軸はCM/VLDL、LDLおよびHDL中の中性脂肪(TG)濃度または総コレステロール(TC)である。また、「カイロミクロン(CM)/VLDLの濃度」とは、カイロミクロン(CM)とVLDLとを合算した濃度である。
【0128】
図8および図9に示すように、CM/VLDL中の中性脂肪(TG)濃度は脂肪摂取後、A氏の場合は約270分まで、B氏の場合は約210分後までそれぞれ増加したのに対して、LDLおよびHDL中のTG濃度は時間経過においては殆ど変化しなかった。また、図10および図11に示すように、CM/VLDL、LDLおよびHDL中の総コレステロール(TC)濃度は、いずれも時間経過においては殆ど変化しなかった。
【0129】
これらの結果より、脂肪摂取による血中の中性脂肪(TG)濃度の上昇は、総コレステロール(TC)やLDLおよびHDLの中性脂肪(TG)に殆ど変化がないことを考慮すると、CM/VLDLなどの大型リポタンパク質中のTGが増加したためであることが明らかになった。
【0130】
<実施例2>波長の検討
次に、本実施例2では、非侵襲に光を体外から体内に向けて照射して、体外へと放射される光の光強度より散乱係数μを求めるに当たり、ノイズとなる光の吸収する光の波長を検討した。検討には、被験者から血液を採取し、その全血を分光光度計に供して、波長300〜3300nmの光に対する血液の吸光度を計測し、吸収スペクトルを得た。その結果を図12に示す。この図において、横軸は光の波長、縦軸は吸光度である。
【0131】
図12に示すように、波長が約1400〜1500nmおよび約1860nm以上においては、吸光度が上下に変動する。これは、その波長範囲における光は、血漿の無機物による吸収の影響が大きいためであると考えられる。つまり、この波長範囲の光を用いると、吸光度の変動の大きさから、照射した光に対する検出した光強度の減少が吸収によるものか、散乱によるものかが不明確になる。そのため、血中脂質の濃度を測定するために用いる光の波長は、血漿の無機物による光の吸収の影響が小さい波長である約1400nm以下の範囲や約1500〜1860nmの範囲が好ましいことが明かになった。また、約580nm以下の範囲では、血液の細胞成分による光の吸収の影響が現れている。よって、血中脂質の濃度を測定するために用いる光の波長は、約580nm〜約1400nm以下の範囲や約1500〜1860nmの範囲がより好ましいことが明かになった。
【0132】
<実施例3>透過光の検討
次に、本実施例3では、非侵襲に光を体外から体内に向けて照射して、体外へと放射される光の光強度より散乱係数μを求めることで血中脂質の濃度を計測すること、および透過光による計測の有効性について検討した。
(1)脂質濃度の変化に伴う血液、血球および血清の吸光度の変化
まず、A氏について、実施例1(1)に記載の方法により、血液サンプルを得て血中脂質の濃度を計測した。その結果を以下の表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
ここで、表1に示した、中性脂肪(TG)濃度が390.1、408.4、518.2および499.6mg/dLである血液サンプルを、それぞれサンプルa、b、cおよびdとした。
【0135】
続いて、サンプルa、b、cおよびdを分光光度計に供して、波長300〜1000nmの光に対する血液の吸光度を計測し、吸収スペクトルを得た。また、サンプルa、b、cおよびdの血清および血球を得て、これらについても、同様の方法により吸収スペクトルを得た。その結果を図13図15に示す。これらの図において、横軸は光の波長、縦軸は吸光度である。
【0136】
図13および図14に示すように、血液および血球の吸光度は、サンプルa、b、cおよびdにおいて、ほとんど同じであった。これに対して、図15に示すように、血清の吸光度はサンプルc>d>b>aの結果が得られた。すなわち、脂質濃度が変化しても血液および血球の吸光度は変化しないのに対して、血清の吸光度は脂質濃度の上昇に伴って上昇することが明らかになった。この結果から、脂質濃度が上昇すると、血清が濁ることが明らかになった。よって、血中脂質の濃度の変化は、この濁りを示す散乱係数μを求めることで計測が可能になることがわかった。
【0137】
(2)吸収スペクトルの検討
また、同様にA氏から血液を採取して、血液、血球および血清を得た。これらを分光光度計に供して、波長300〜1000nmの光に対する血液の吸光度を計測し、吸収スペクトルを得た。なお、分光光度計の基本原理は、計測対象物に光を照射しその透過光を解析することで行うものである。血液、血球および血清の吸収スペクトルを重ねて表した結果を図16に示す。
【0138】
図16に示すように、血清の吸光度は、血液および血球の吸光度と比較すると極めて小さかった。すなわち、血液の吸光度は血球の吸光度を反映しており、血清の吸光度を反映していないことが明らかになった。この結果から、脂質濃度の上昇に伴って生じる血清の濁りは、血液の透過光を検出することによっては確認しずらい、またはできないことが明らかになった。
【0139】
<実施例4>時間分解計測法に基づく脂質濃度の測定
本実施例4では、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器1を用い、照射した光が散乱により時間的に減衰していく散乱現象に基づき脂質濃度を計測可能か否かを確かめた。
(1)光が出尽くすまでの時間(波形の拡がり)の検討
被験者の手の甲の中央部の血管の上の皮膚に、照射位置21を設定した。また、照射位置を設定したのと同じ血管の上の皮膚に、照射位置21からの間隔を10mmとして検出位置31を設定した。照射位置21の光源22には、Ti:Spphireレーザ Chameleon Ultra II(波長可変式、パルス幅:140fs FWHM、平均出力:400mW、繰り返し周波数:80MHz;コヒレント社)を、検出位置31の光強度検出手段3にはストリークカメラをそれぞれ用いた。
【0140】
被験者に脂質を摂取させ、脂質摂取前および脂質摂取後に、照射位置21に波長853nmのパルス状の光を照射し、検出位置31において検出した光強度を経時的に計測した。その結果を図17および図18に示す。これらの図において、横軸は被験者が脂質を摂取してからの時間、縦軸は光強度である。
【0141】
図17および図18に示すように、脂肪摂取後は、脂肪摂取前と比較して、波形が拡がっている。すなわち、血中脂質濃度の増加に伴って、血液における光の散乱強度が増大している。この結果から、採血せずとも、体外から光を照射し、検出した光から散乱に影響する光強度を検出していることが示された。
【0142】
(2)peak top timeの検討
次に、散乱係数μを求めるため、検出した光強度が最大となるまでの時間(peak top time)について検討した。その結果を、図19に示す。この図において、横軸は被験者が脂質を摂取してからの時間、縦軸は光強度である。
【0143】
図19に示すように、脂肪摂取後は、脂肪摂取前と比較して、検出した光強度が最大となるまでの時間(peak top time)が増大していたことから、血液における光強度が増大したことが明らかになった。すなわち、血中脂質濃度の増加に伴って、血液における光の散乱が増大したものと考えられる。この結果から、採血せずとも、生体外から光を照射し、検出した光強度より血中脂質による散乱の影響を算出することにより、血中脂質濃度を測定できることが示された。
【0144】
<実施例5>空間分解計測法に基づく脂質濃度の測定
次に、本実施例5では、本発明の非侵襲型生体脂質濃度計測器1を用い、照射した光が散乱により距離に応じて減衰していく散乱現象に基づき脂質濃度を計測可能か否かを確かめた。
(1)複数の検出位置33における光強度の計測
被験者A氏およびB氏の手の甲の中央部の血管の上の皮膚に、照射位置21を設定した。また、照射位置21を設定したのと同じ血管の上の皮膚に、照射位置21からの間隔を10mm、15mmおよび20mmとして、計3箇所の検出位置33を設定した。照射位置21の光源22は、Ti:Spphire(Ti:S)レーザ Chameleon Ultra(自動波長掃引 フェムト秒レーザ;コヒレント社)を用い、検出位置31の光強度検出手段3にはフェムトワットフォトレシーバー FWPR−20−SI(フェムト社)を用いた。
【0145】
被験者A氏およびB氏に脂質(オフトクリーム;上毛食品社)を摂取させ、脂質摂取前(0分)ならびに摂取後60、150、180、210、240、270、300、330および360分経過毎に、照射位置21に波長800nm、809nm、850nmおよび1000nmのレーザー光を照射し、各検出位置31において検出した光強度を計測した。その結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
この表2において、例えば、左欄1000−10は波長1000mm、照射受光部間距離10mmを示しており、それぞれの条件においてA氏およびB氏の上記各受光部における光強度(フォトダイオードで検出された電圧mV)である。
【0148】
(2)光強度の比に基づく散乱係数μの算出
続いて、各検出位置33において検出した光強度の比を算出し、散乱係数μとした。この散乱係数μの値は照射した光の血中脂質による散乱を示す指標である。散乱係数μの値をグラフに表したものを図20および図21に示す。これらの図において、横軸は被験者が脂質を摂取してからの時間、縦軸は従来法であるHPLCにより計測されたCM/VLDLにおけるTG濃度または各検出位置33において検出した光強度の比から求めた散乱係数μである。
【0149】
図20および図21に示すように、散乱係数μの値のグラフは、従来法であるHPLCにより測定したCM/VLDLにおける中性脂肪(TG)濃度のグラフと同様の形状であった。
【0150】
また、散乱係数μの値を横軸、HPLCにより測定したCM/VLDLにおける中性脂肪(TG)濃度を縦軸として図22を作成した。ここで、ダイヤ型のプロットは照射位置21からの間隔が10mmにおける検出位置の光強度と、15mmにおける検出位置の光強度の比の値であり、四角型のプロットは、照射位置21からの間隔が10mmにおける検出位置の光強度と、20mmにおける検出位置の光強度の比の値である。
【0151】
この図22に示すように、散乱係数μの値とHPLCにより測定したCM/VLDLにおける中性脂肪(TG)濃度とは、相関することが明らかになった。すなわち、散乱係数μの値が大きいほど、中性脂肪(TG)濃度が大きかったことから、検出された光強度が大きいほど、中性脂肪(TG)濃度が大きいという関係が成立することが明らかになった。この結果から、採血せずとも、生体外から光を照射し、検出した光強度より血中脂質による散乱の影響を算出することにより、血中脂質濃度を測定できることが示された。
【0152】
また、このように、時間経過に従って連続的に中性脂肪の濃度変化を計測できれば、従来、困難とされてきた非侵襲による脂質代謝機能を計測する事が可能となり、動脈硬化のみならず肝機能評価の可能性も期待できる。
【0153】
(3)光強度の差に基づく散乱係数μの算出
また、各検出位置33において検出した光強度の差を算出し、散乱係数μとした。その散乱係数μの値をグラフに表したものを図23および図24に示す。これらの図において、横軸は被験者が脂質を摂取してからの時間、縦軸は各検出位置31において検出した光強度の差から求めた散乱係数μである。また、ダイヤ型のプロットは照射位置21からの間隔が10mmにおける検出位置の光強度と、15mmにおける検出位置の光強度の差の値であり、四角型のプロットは、照射位置21からの間隔が10mmにおける検出位置の光強度と、20mmにおける検出位置の光強度の差の値であり、三角型のプロットは照射位置21からの間隔が15mmにおける検出位置の光強度と、20mmにおける検出位置の光強度の差の値である。
【0154】
図23および図24図8および図9とを比較すると、差の値のグラフ(図23および図24)は、従来法であるHPLCにより測定したCM/VLDLにおける中性脂肪(TG)濃度のグラフ(図8および図9)と同様の形状であった。すなわち、差の値が大きいほど、中性脂肪(TG)濃度が大きかったことから、検出された光強度が大きいほど、中性脂肪(TG)濃度が大きいという関係が成立することが明らかになった。この結果から、採血せずとも、生体外から光を照射し、検出した光強度より血中脂質による散乱の影響を算出することにより、血中脂質濃度を測定できることが示された。
【0155】
<実施例6>シミュレーションおよび実験による式(1)および式(2)の検討
本実施例6では、生体組織模擬ファントムを用いた実験および理想的な散乱現象をモンテカルロシミュレーションを用いて計算し、その値を用いて下記式(1)および下記式(2)について検討を行った。
【数1】
【数2】
【0156】
(1)モンテカルロシミュレーションによる式(1)および式(2)の検討
まず、モンテカルロシミュレーションにより、照射検出間距離ρと検出される光子数についてシミュレーションを行った。シミュレーションの条件は、吸収係数が0.01、照射する光子数が10×10個である。そして、散乱係数μを0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5および5としてそれぞれ計算を行った。計算結果を図25に示す。この図において、横軸は照射検出間距離ρ、縦軸は検出される光子数である。
【0157】
図25に示すように、照射検出間距離ρが遠くなるほど散乱により検出できる光子数が少なくなることがわかる。
【0158】
次に、このモンテカルロシミュレーションによる結果を上記式(1)に代入した。その結果を図26に示す。この図において、横軸は照射検出間距離ρ、縦軸は入射光に対する光の減衰度合いであり、本実施例6では入射光減衰率としている。
【0159】
ここで、実際の計測においては、照射検出間距離は1cm以上必要になることが想定されるため、傾きおよび切片の計算範囲は、1cm〜3cmで設定した。このとき、上記式(1)より、これらの値の傾きは有効減衰係数μeffに相当し、切片は下記式(16)に相当する。
【数16】
【0160】
すなわち、図26に示す入射光減衰率のグラフの切片から吸収係数μが求まる。吸収係数μを求めた結果を図27に示す。この図において、横軸は散乱係数μ、縦軸は切片から求まった吸収係数μである。図27に示すように、吸収係数μは計算条件とした理論値0.01に対し0.008に漸近する結果であり、数値的に近似した結果であった。
【0161】
さらに、図26に示す入射光減衰率のグラフの傾きから有効減衰係数μeffを算出し、下記式(8)から散乱係数μを算出した。
【数8】
その結果を図28に示す。この図において横軸が計算条件とした理論値であり、縦軸が上記式(8)に基づき算出された計算値である。
【0162】
図28に示すように、理論値と計算値はよく一致しており、理論値と計算値との直線近似では、その相関関数0.99以上の一致を示した。
【0163】
(2)生体組織模擬ファントムに基づく実験による式(1)および式(2)の検討
次に、イントラリピッドを用いて、散乱係数μが既知の生体組織模擬ファントムを作成し、それに基づき実験を行った。具体的には、散乱係数μを0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5および5の生体組織模擬ファントムを作成し、それら生体組織模擬ファントムに照射手段2により連続光を照射するとともに、光強度検出手段4により光強度を検出し、その検出した光強度を、本実施例(1)と同様に、式(1)および式(2)に代入することで、散乱係数μを算出した。その結果を図29に示す。この図において、横軸は生体組織模擬ファントムの散乱係数μ、縦軸は、検出した光強度を式(1)および式(2)に代入したことによって算出された散乱係数μである。
【0164】
図29に示すように、実験においても、理論値と実験値とはよく一致しており、理論値と実験値との直線近似では、その相関関数0.92以上の一致を示した。よって、実験においても非常に高い精度で計測することができた。
【0165】
以上の結果から、吸収係数μが未知の場合でも、式(1)および式(2)を用いることで、散乱係数μを計測することが可能であることが示された。また、相関係数に見られるように、実際の生体測定においてノイズが多い場合であっても、複数点の計測により高精度で散乱係数を算出することが可能であることが確認できた。
【0166】
<実施例7>シミュレーションおよび実験による式(3)の検討
本実施例7では、生体組織模擬ファントムを用いた実験および理想的な散乱現象をモンテカルロシミュレーションを用いた計算により下記式(3)について検討を行った。
【数3】
【0167】
(1)照射検出間距離の検討
上記式(3)より、散乱係数μは、第一検出位置における光強度R(ρ)、R(ρ)の比が大きいほど、感度がよいことが予想される。そのためには、ρ、ρの距離差が大きいほどよい。しかし、照射検出間距離ρが大きくなるほど光強度R(ρ)は指数関数的に小さくなり、計測における信号量 (signal) と雑音量 (noise)との比であるSN比は急速に大きくなり計測精度は劣化する。またρ、ρの距離差が大きくなると、それぞれの地点における光強度の散乱体内部伝搬領域の共通部分が小さくなり、さらに計測精度が劣化する。そこで、良好な計測条件を求めるべく、実用範囲内でρ、ρを変化させて、計測条件について検討を行った。
【0168】
(2)生体組織模擬ファントムによる照射検出間距離ρの検討
まずは、イントラリピッドを用いて、散乱係数μが既知の生体組織模擬ファントムを作成した。実験では、このイントラリピッドを用いて、散乱係数μに対するR(ρ)/R(ρ)の変化を計測した。計測結果の代表例を図30に示す。この図において横軸は散乱係数であり、縦軸は光強度である。また、ダイヤ型のプロットは照射位置21からの間隔が10mmにおける検出位置の光強度と、15mmにおける検出位置の光強度の比の値であり、四角型のプロットは、照射位置21からの間隔が10mmにおける検出位置の光強度と、20mmにおける検出位置の光強度の比の値であり、三角型のプロットは照射位置21からの間隔が10mmにおける検出位置の光強度と、25mmにおける検出位置の光強度の比の値であり、バツ型のプロットは照射位置21からの間隔が10mmにおける検出位置の光強度と、30mmにおける検出位置の光強度の比の値である。
【0169】
ここで、(ρ)/R(ρ)の計測結果からμを推定する較正曲線としては、安定した単調変化が望ましい。このような観点から図30を見てみると、ρ=10 mm、ρ =20mmの場合が最良であった。このような解析を通し、以後の当該生体組織模擬ファントムを用いた実験およびモンテカルロシミュレーションによるシミュレーションでは、ρ=10 mm、ρ =20mmの位置を検出位置として実験を行った。
【0170】
(3)モンテカルロシミュレーションによる式(3)の検討
式(3)の妥当性を検証するため、モンテカルロシミュレーションにて検証を行った。シミュレーション条件は、吸収係数μを0.01、0.05および0.1とした。そして、散乱係数μを0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5および4としてそれぞれの組み合わせの計算を行った。また、照射検出間距離ρは、上述のとおり、ρ=10 mm、ρ =20mmとした。そして、得られた値を上記式(3)に代入し、計算を行った。その計算結果を図31に示す。この図において、横軸は、シミュレーション条件でもある理論的な散乱係数μ、縦軸は式(3)を用いて計算された散乱係数μである。
【0171】
図31に示すように、理論的な散乱係数μと、式(3)を用いて計算された散乱係数μとは、よく一致しており、理論値と計算値との直線近似では、傾きは1〜3パーセント程度の誤差範囲であり、相関係数はすべて0.99以上という結果であった。
【0172】
さらに検出される光強度に対してノイズ(±5パーセント)を加味した場合についても同様に理論的な散乱係数μおよび式(3)を用いて計算された散乱係数μについても検討を行った。計算結果を図32に示す。この図において、横軸は、シミュレーション条件でもある理論的な散乱係数μ、縦軸は式(3)を用いて計算された散乱係数μである。
【0173】
図32に示すように、ノイズを加味した場合においても、理論値と計算値とはよく一致した。
【0174】
(4)生体組織模擬ファントムに基づく実験による式(3)の検討
上記モンテカルロシミュレーションの結果を踏まえて、生体組織模擬ファントムを用いた実験により式(3)の検討をおこなった。計測結果を図32に示す。横軸は、生体組織模擬ファントムの散乱係数μ、縦軸は実験によって光強度を算出しその結果を式(3)を用いて計算された散乱係数μである。
【0175】
図33に示すように、吸収係数が大きくなるにつれて、精度が低下している。しかし、通常の生体の吸収係数μは、0.01/mm程度であり、この吸収係数μの場合においては、生体組織模擬ファントムの散乱係数μと式(3)によって計算された散乱係数μとはよく一致した。生体組織模擬ファントムの散乱係数μと計算値との直線近似では、相関係数は0.97という結果であった。
【0176】
よって、通常の生体条件下において、式(3)を用いることにより散乱係数μを算出できる事が証明された。
【0177】
なお、本発明に係る非侵襲型生体脂質濃度計測器、非侵襲型生体脂質代謝機能計測器、非侵襲による生体脂質濃度計測方法および非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0178】
例えば、照射される光や受光する光以外の光を遮断するために照射手段2や光強度検出手段3は遮光性の覆いを被せたり、暗い中で測定するようにしてもよい。
【0179】
また、本実施形態では、生体に対する非侵襲として記載したが、試験管等内の血液検査や血清検査を前記試験管に対して非侵襲的に計測するものにも応用可能である。これにより、血液検査前の血清情報(溶血、高ビリルビン、乳び等)における濁度計測等に用いることができる。
【符号の説明】
【0180】
1 非侵襲型生体脂質濃度計測器
2 照射手段
3 光強度検出手段
4 散乱係数算出手段
5 脂質濃度算出手段
10 非侵襲型生体脂質代謝機能計測器
21 照射位置
22 光源
31 第一光強度検出手段
32 第二光強度検出手段
33 検出位置
331 第一検出位置
332 第二検出位置
41 光強度/距離算出部
42 光強度比算出部
43 光強度差算出部
44 減衰時間算出部
45 最強時間算出部
46 光密度波形算出部
101 算出値取得手段
102 生体脂質機能代謝判断手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33

【手続補正書】
【提出日】2014年7月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲型生体脂質濃度計測器であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射手段と、
この照射手段による光の照射位置から所定の照射検出間距離を隔てて設けられ、その位置の前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出手段と、
この光強度検出手段により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出手段と、
この散乱係数算出手段により算出された光の散乱係数に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出手段と
を有し、
前記照射手段により連続光を照射するとともに、
前記散乱係数算出手段は、前記光強度検出手段により検出された光強度R(ρ)と前記照射検出間距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することで散乱係数μを算出する非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【数1】
【数2】
ここで、μaは吸収係数、μeffは有効減衰係数(effective attenuation coefficient)、Sは照射手段により照射された光の光強度である。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲型生体脂質濃度計測器であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射手段と、
の照射手段による光の照射位置から所定間隔をあけて配置されて前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出手段と、
この光強度検出手段により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出手段と、
この散乱係数算出手段により算出された光の散乱係数に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出手段と
を有し、
前記照射手段により連続光を照射するとともに、その照射位置を中心として各々異なる距離に設置された第一光強度検出手段および第二光強度検出手段が順に並べられており、
前記散乱係数算出手段は、前記照射位置から前記第一光強度検出手段による第一検出位置までの第一照射検出間距離ρと、前記照射位置から前記第二光強度検出手段による第二検出位置までの第二照射検出間距離ρと、前記第一光強度検出手段により検出された第一光強度R(ρ)と、前記第二光強度検出手段により検出された第二光強度R(ρ)とを下記式(3)に代入することで散乱係数μを算出する非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【数3】
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
請求項4または請求項6に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化から生体脂質代謝機能を計測する非侵襲型生体脂質代謝機能計測器。
【請求項11】
請求項4または請求項6に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化を取得し生体脂質代謝機能を検査する非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲による生体脂質濃度計測方法であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射工程と、
この照射工程による光の照射位置から所定の照射検出間距離を隔てた位置の前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出工程と、
この光強度検出工程により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出工程と、
この散乱係数算出工程により算出された光の散乱係数に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出工程と
を有し、
前記照射工程において生体外から生体内に向けて連続光を照射するとともに、
前記散乱係数算出工程では、前記光強度検出工程において検出された光強度R(ρ)と前記照射検出間距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することにより散乱係数μを算出する非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【数1】
【数2】
ここで、μaは吸収係数、μeffは有効減衰係数(effective attenuation coefficient)、Sは照射工程において照射された光の光強度である。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲による生体脂質濃度計測方法であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射工程と、
この照射工程による光の照射位置から所定の間隔をあけて前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出工程と、
この光強度検出工程により検出された前記光強度に基づき生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出工程と、
この散乱係数算出工程により算出された光の散乱係数に基づき生体内における脂質濃度を算出する脂質濃度算出工程と
を有し、
前記照射工程において生体外から生体内に向けて連続光を照射するとともに、前記光強度検出工程において照射された光の照射位置を中心として各々異なる距離に配置された第一検出位置および第二検出位置における前記光強度を検出し、
前記散乱係数算出工程では、前記照射位置から前記第一検出位置までの第一照射検出間距離ρと、前記照射位置から前記第二検出位置までの第二照射検出間距離ρと、前記第一検出位置において検出された第一光強度R(ρ)と、前記第二検出位置において検出された第二光強度R(ρ)とを下記式(3)に代入することで散乱係数μを算出する非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【数3】
【請求項18】
(削除)
【請求項19】
(削除)
【請求項20】
(削除)
【請求項21】
請求項15または請求項17に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化を取得し生体脂質代謝機能を検査する非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法。

【手続補正書】
【提出日】2015年6月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲型生体脂質濃度計測器であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射手段と、
前記照射手段による光の照射位置から所定間隔をあけて配置されて前記生体から放出される光強度を検出する光強度検出手段と、
前記光強度検出手段により検出された前記光強度に基づき前記生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出手段と、
前記散乱係数算出手段により算出された光の散乱係数に基づき血液中の脂質濃度を算出する脂質濃度算出手段と、
を有し、
前記散乱係数算出手段は、前記生体の吸収係数が既知および未知のいずれの場合であっても、前記光強度検出手段により検出された前記光強度に基づいて、前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離に対する前記光強度の減衰度を線形化し、得られた直線の傾きから前記光の散乱係数を算出する
非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項2】
前記散乱係数算出手段は、前記生体の吸収係数が未知の場合、前記光強度検出手段により検出された前記光強度に基づいて、前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離に対する前記光強度の減衰度を線形化し、得られた直線の傾きから前記光の散乱係数を算出し、前記直線の切片から前記生体の吸収係数を算出する、
請求項1に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項3】
前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離は、5.77mm以上である、請求項1または請求項2に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【請求項4】
前記照射手段は、連続光を照射
前記散乱係数算出手段は、前記光強度検出手段により検出された光強度R(ρ)と前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することで前記光の散乱係数μを算出する
請求項1に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【数1】
【数2】
ここで、μ前記生体の吸収係数、μeffは有効減衰係数(effective attenuation coefficient)、S前記照射手段により照射された光の光強度である。
【請求項5】
前記照射手段は、連続光を照射し
前記散乱係数算出手段は、前記光強度検出手段により検出された光強度R(ρ)と前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することで前記光の散乱係数μ’および前記生体の吸収係数μを算出する
求項2に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器。
【数3】
【数4】
ここで、μeffは有効減衰係数(effective attenuation coefficient)、Sは前記照射手段により照射された光の光強度である。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の非侵襲型生体脂質濃度計測器により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化から生体脂質代謝機能を計測する非侵襲型生体脂質代謝機能計測器。
【請求項7】
非侵襲により生体内における血中の脂質濃度を計測する非侵襲による生体脂質濃度計測方法であって、
生体外から生体内に向けて所定の光強度で光を照射する照射工程と、
前記照射工程における光の照射位置から所定の間隔をあけて前記生体から放出される光強度を光強度検出手段により検出する光強度検出工程と、
前記光強度検出工程により検出された前記光強度に基づき前記生体内における光の散乱係数を算出する散乱係数算出工程と、
前記散乱係数算出工程により算出された光の散乱係数に基づき血液中の脂質濃度を算出する脂質濃度算出工程と、
を有し、
前記散乱係数算出工程では、前記生体の吸収係数が既知および未知のいずれの場合であっても、前記光強度検出工程で検出された前記光強度に基づいて、前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離に対する前記光強度の減衰度を線形化し、得られた直線の傾きから前記光の散乱係数を算出する
非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項8】
前記散乱係数算出工程では、前記生体の吸収係数が未知の場合、前記光強度検出工程で検出された前記光強度に基づいて、前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離に対する前記光強度の減衰度を線形化し、得られた直線の傾きから前記光の散乱係数を算出し、前記直線の切片から前記生体の吸収係数を算出する、
請求項に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項9】
前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離は、5.77mm以上である、請求項または請求項に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【請求項10】
前記照射工程では、生体外から生体内に向けて連続光を照射
前記散乱係数算出工程では、前記光強度検出工程により検出された光強度R(ρ)と前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することにより前記光の散乱係数μを算出する
請求項に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【数5】
【数6】
ここで、μ前記生体の吸収係数、μeffは有効減衰係数(effective attenuation coefficient)、S前記照射工程において照射された光の光強度である。
【請求項11】
前記照射工程では、生体外から生体内に向けて連続光を照射し
前記散乱係数算出工程では、前記光強度検出工程において検出された光強度R(ρ)と前記光の照射位置と前記光強度検出手段との距離ρとを、下記式(1)および式(2)に代入することで前記光の散乱係数μ’および前記生体の吸収係数μを算出する
請求項に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法。
【数7】
【数8】
ここで、μeffは有効減衰係数(effective attenuation coefficient)、Sは前記照射手段により照射された光の光強度である。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の非侵襲による生体脂質濃度計測方法により算出された散乱係数および/または脂質濃度の時間変化を取得し生体脂質代謝機能を検査する非侵襲による生体脂質代謝機能検査方法。
【国際調査報告】