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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2014年6月19日
【発行日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】排気浄化装置の故障診断装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20161216BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20161216BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20161216BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20161216BHJP
   F01N 3/029 20060101ALI20161216BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20161216BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
   F01N3/20 C
   F01N3/08 B
   F01N3/02 321K
   F01N3/02 321B
   B01D53/94 222
   B01D53/94 241
   B01D53/94 400
   B01D46/42 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2014-552086(P2014-552086)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年12月12日
(11)【特許番号】特許第5907286号(P5907286)
(45)【特許公報発行日】2016年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-272648(P2012-272648)
(32)【優先日】2012年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100143797
【弁理士】
【氏名又は名称】宮下 文徳
(74)【代理人】
【識別番号】100176201
【弁理士】
【氏名又は名称】小久保 篤史
(72)【発明者】
【氏名】木所 徹
【住所又は居所】日本国愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】松本 有史
【住所又は居所】日本国愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】高岡 一哉
【住所又は居所】日本国愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 大和
【住所又は居所】日本国愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】萩本 大河
【住所又は居所】日本国愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】照井 雄貴
【住所又は居所】日本国愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】魚住 昭文
【住所又は居所】日本国愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D048
4D058
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AA10
3G091AA11
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3G091AA18
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(57)【要約】
本発明は、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置の故障診断をより正確に実施することを課題とする。この課題を解決するために、本発明は、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置の故障診断装置において、排気浄化装置に捕集又は堆積している粒子状物質(PM)の量の推定値と、排気浄化装置へ流入する排気のNO2比率の推定値とに基づいて排気浄化装置が正常である場合のNOX浄化率を演算し、その算出結果と実際のNOX浄化率との差が閾値より大きければ、排気浄化装置が故障していると判定するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置の故障診断装置であって、
前記排気浄化装置に堆積している粒子状物質の量であるPM堆積量を推定する第一推定値手段と、
前記排気浄化装置へ流入するNOXのうち二酸化窒素が占める割合であるNO2比率を推定する第二推定手段と、
前記第一推定手段により推定されたPM堆積量である推定PM堆積量と前記第二推定手段により推定されたNO2比率である推定NO2比率とをパラメータとして、前記排気浄化装置が正常である場合のNOX浄化率である基準NOX浄化率を演算する第一演算手段と、
前記排気浄化装置より下流に配置され、排気中に含まれるNOXの量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたNOX量をパラメータとして、前記排気浄化装置の実際のNOX浄化率である実NOX浄化率を演算する第二演算手段と、
前記基準NOX浄化率と前記実NOX浄化率との差が閾値より大きいことを条件として、前記排気浄化装置が故障していると判定する診断手段と、
を備える排気浄化装置の故障診断装置。
【請求項2】
請求項1において、前記実NOX浄化率がピークを示すときの推定NO2比率である第一推定NO2比率と、前記排気浄化装置のPM堆積量が前記第一推定NO2比率を求めたときのPM堆積量に等しく且つ前記排気浄化装置が正常である場合のNOX浄化率がピークを示すときのNO2比率である第一基準NO2比率とを求め、前記第一推定NO2比率と前記第一基準NO2比率との差が許容値より大きければ、前記排気浄化装置に堆積している粒子状物質を酸化及び除去するためのPM再生処理を実施する制御手段と、
前記PM再生処理の実行後において、前記実NOX浄化率がピークを示すときの推定NO2比率である第二推定NO2比率と、前記排気浄化装置のPM堆積量が零であり且つ前記排気浄化装置が正常である場合のNOX浄化率がピークを示すときのNO2比率である第二基準NO2比率とを求め、前記第二推定NO2比率と前記第二基準NO2比率との差が許容値より大きければ、前記第二推定NO2比率と前記第二基準NO2比率との差を利用して前記第二推定手段により推定される推定NO2比率を補正する補正手段と、
を更に備える排気浄化装置の故障診断装置。
【請求項3】
請求項2において、前記補正手段は、前記第二推定NO2比率と前記第二基準NO2比率との差が許容値以下である場合は、前記第一推定NO2比率と前記第一基準NO2比率との差を利用して前記第一推定手段により推定される推定PM堆積量を補正する排気浄化装置の故障診断装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項において、前記第一演算手段は、前記排気浄化装置のPM堆積量が多くなるほど、NOX浄化率のピーク値が小さくなるとともに、NOX浄化率がピーク値を示すときのNO2比率が大きくなる特性を利用して、前記基準NOX浄化率を演算する排気浄化装置の故障診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置の故障を診断する技術に関し、特に選択還元機能とフィルタ機能を備えた排気浄化装置の劣化を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、選択還元型触媒の劣化を検出する技術として、選択還元型触媒へ流入するNOXに含まれる二酸化窒素(NO2)の割合(以下、「NO2比率」と称する)が所定の範囲に属するとともに、選択還元型触媒へ還元剤が供給されているときのNOX浄化率の平均値及びばらつきに基づいて、選択還元型触媒の故障と還元剤供給装置の故障を判別する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献2には、パティキュレートフィルタの排気流を画成する壁面に、選択還元型触媒を含む膜を形成し、該膜の表面にNOXの通過を許容し且つ粒子状物質(PM:Particulate Matter)の通過を阻止する大きさの細孔が形成された膜を設ける構成が開示されている。この構成は、パティキュレートフィルタに捕集されたPMが酸化されるときに、SCR触媒の熱劣化を抑制することを目的としている。
【0004】
特許文献3には、ウォールフロー型のパティキュレートフィルタにおいて、基材の表層に排気中の硫黄成分を補足する補足剤が設けられ、該基材の裏層に選択還元型触媒が設けられる構成が開示されている。
【0005】
特許文献4には、パティキュレートフィルタに捕集されたPMは、排気中のNO2と反応することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−270614号公報
【特許文献2】特開2010−065554号公報
【特許文献3】特開2006−346605号公報
【特許文献4】特開2006−063970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、選択還元型触媒がパティキュレートフィルタに担持される場合のように、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置において、選択還元機能の故障を診断しようとすると、排気浄化装置に捕集又は堆積した粒子状物質(PM:Particulate Matter)の影響により、正確な診断を行うことができない可能性がある。
【0008】
例えば、PMが排気浄化装置に捕集又は堆積しているときは、排気中のNO2の一部がPMの酸化反応に消費される可能性がある。その場合、排気中のNO2比率が小さくなるため、選択還元型触媒によって浄化されるNOXの量が減少する可能性がある。また、PMが排気浄化装置に捕集又は堆積しているときは、選択還元型触媒の少なくとも一部がPMによって覆われる可能性がある。その場合、選択還元型触媒によって浄化されるNOXの量が減少する可能性がある。
【0009】
つまり、PMが排気浄化装置に捕集又は堆積しているときは、選択還元型触媒が正常であるにもかかわらず、選択還元型触媒のNOX浄化率(選択還元型触媒へ流入するNOXの量に対して、選択還元型触媒において還元(浄化)されるNOXの量の比率)が小さくなる可能性がある。その結果、選択還元型触媒が正常であるにもかかわらず、該選択還元型触媒が故障していると誤診断される可能性がある。
【0010】
本発明は、上記したような種々の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置の故障診断をより正確に実施することができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記した課題を解決するために、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置の故障診断装置において、排気浄化装置に捕集又は堆積している粒子状物質(PM)の推定値に基づいて排気浄化装置のNOX浄化率を演算し、その算出結果と実際のNOX浄化率との差が閾値より大きければ、排気浄化装置が故障していると判定するようにした。
【0012】
詳細には、本発明は、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置の故障診断装置であって、
前記排気浄化装置に堆積している粒子状物質の量であるPM堆積量を推定する第一推定手段と、
前記排気浄化装置へ流入するNOXのうち二酸化窒素が占める割合を示すNO2比率を推定する第二推定手段と、
前記第一推定手段により推定されたPM堆積量である推定PM堆積量と前記第二推定手段により推定されたNO2比率である推定NO2比率とをパラメータとして、前記排気浄化装置が正常である場合のNOX浄化率である基準NOX浄化率を演算する第一演算手段と、
前記排気浄化装置より下流に配置され、排気中に含まれるNOXの量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたNOX量をパラメータとして、前記排気浄化装置の実際のNOX浄化率である実NOX浄化率を演算する第二演算手段と、
前記基準NOX浄化率と前記実NOX浄化率との差が閾値より大きいことを条件として、前記排気浄化装置が故障していると判定する診断手段と、
を備えるようにした。
【0013】
なお、ここでいう「選択還元機能」は、還元剤の存在下において排気中のNOXを還元する機能である。このような選択還元機能は、選択還元型触媒や貴金属触媒(白金(Pt)やパラジウム(Pd)等)を備えることによって実現される。また、ここでいう「フィルタ機能」は、排気中に含まれるPMを捕集する機能である。
【0014】
本発明の排気浄化装置の故障診断装置によれば、推定PM堆積量と推定NO2比率とをパラメータにすることにより、排気浄化装置に堆積しているPMとの反応により消費されるNO2の量、すなわち、NO2比率の低下量を特定することができる。そのため、NO2比率の低下に起因したNOX浄化率の低下量を特定することができる。また、推定PM堆積量からPMによって覆われる選択還元型触媒や貴金属触媒の量も特定することができる。そのため、選択還元型触媒や貴金属触媒の一部がPMによって覆われることに起因したNOX浄化率の低下量も特定することができる。
【0015】
なお、排気浄化装置においてPMと反応するNO2の量が多いときは少ないときに比べ、NOX浄化率がピーク値(最大値)を示すときのNO2比率が大きくなる傾向がある。また、排気浄化装置においてPMによって覆われる選択還元型触媒や貴金属触媒の面積(量)が大きいときは小さいときに比べ、NOX浄化率のピーク値が小さくなる傾向がある。これらの傾向を踏まえ、NOX浄化率とNO2比率とPM堆積量との関係を予め求めておくことにより、排気浄化装置が正常(排気浄化装置の選択還元機能が正常)である場合のNOX浄化率(基準NOX浄化率)を推定(演算)することができる。よって、基準NOX浄化率と実NOX浄化率を比較することにより、排気浄化装置が正常であるか否かを判別することが可能になる。
【0016】
ところで、基準NOX浄化率と実NOX浄化率の差は、排気浄化装置が劣化や故障した場合に加え、推定PM堆積量の推定誤差、およびまたは推定NO2比率の推定誤差が大きくなる場合にも拡大する。よって、排気浄化装置の故障診断を正確に実施するためには、推定PM堆積量の推定誤差や推定NO2比率の推定誤差を校正しておく必要がある。
【0017】
これに対し、本発明の排気浄化装置の故障診断装置は、実NOX浄化率がピークを示すときの推定NO2比率である第一推定NO2比率と、前記排気浄化装置のPM堆積量が前記第一推定NO2比率を求めたときのPM堆積量に等しく且つ前記排気浄化装置が正常である場合のNOX浄化率がピークを示すときのNO2比率である第一基準NO2比率とを求め、前記第一推定NO2比率と前記第一基準NO2比率との差が許容値より大きければ、前記排気浄化装置に堆積している粒子状物質を酸化及び除去するためのPM再生処理を実施する制御手段と、
前記PM再生処理の実行後において、前記実NOX浄化率がピークを示すときの推定NO2比率である第二推定NO2比率と、前記排気浄化装置のPM堆積量が零であり且つ前記排気浄化装置が正常である場合のNOX浄化率がピークを示すときのNO2比率である第二基準NO2比率とを求め、前記第二推定NO2比率と前記第二基準NO2比率との差が許容値より大きければ、前記第二推定NO2比率と前記第二基準NO2比率との差を利用して前記第二推定手段により推定される推定NO2比率を補正する補正手段と、
を更に備えるようにしてもよい。
【0018】
排気浄化装置にPMが堆積しているときは、第一推定NO2比率と前記第一基準NO2比率との差が許容値より大きくなる要因として、NO2比率の推定誤差(演算誤差)とPM堆積量の推定誤差(演算誤差又測定誤差)との二つの要因が考えられる。例えば、推定PM堆積量が誤差を含む場合は、第一推定NO2比率を求めたときの推定PM堆積量は、実際のPM堆積量と異なる値になる。そのため、このような推定PM堆積量をパラメータとして求められる第一基準NO2比率は、真値と異なる値になる。一方、推定NO2比率が誤差を含む場合は、第一推定NO2比率は、実際のNO2比率と異なる値になる。したがって、推定PM堆積量又は推定NO2比率の少なくとも一方に誤差が含まれている場合は、たとえ排気浄化装置が正常であっても、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差が許容値より大きくなる。
【0019】
これに対し、PM再生処理の実行後は、実際のPM堆積量が略零になる。そのため、推定PM堆積量が零であるとみなして第二基準NO2比率が求められると、該第二基準NO2比率が真値と略同等になる。よって、第二推定NO2比率と第二基準NO2比率との差が許容値より大きければ、第二推定NO2比率が真値と異なっているとみなすことができる。すなわち、推定NO2比率が誤差を含んでいるとみなすことができる。そこで、前記第二推定NO2比率と前記第二基準NO2比率との差に基づいて、第二推定手段により推定される推定NO2比率が補正されれば、推定NO2比率の推定誤差を校正することができる。
【0020】
一方、前記第二推定NO2比率と前記第二基準NO2比率との差が許容値以下である場合は、第二推定NO2比率が真値と略同等であるとみなすことができる。そのため、前記第一推定NO2比率と前記第一基準NO2比率との差は、推定PM堆積量の推定誤差に因るとみなすことができる。よって、前記第一推定NO2比率と前記第一基準NO2比率との差に基づいて、第一推定手段により推定される推定PM堆積量が補正されれば、推定PM堆積量の推定誤差を校正することができる。
【0021】
ここで、排気浄化装置が正常であり且つ排気浄化装置にPMが堆積していない場合は、NO2比率が特定の値(たとえば、50%)になるときに、NOX浄化率がピークになる。よって、PM再生処理の実行後は、第二基準NO2比率の代わりに前記したような特定値が用いられてもよい。
【0022】
なお、排気浄化装置の選択還元機能が正常である場合においては、PM再生処理実行前の基準NOX浄化率のピーク値と実NOX浄化率のピーク値の差が許容値以下であれば、推定PM堆積量が実際のPM堆積量と略同等であると考えることができる。そこで、補正手段は、前記第一推定NO2比率と前記第一基準NO2比率との差が許容値より大きい場合に、基準NOX浄化率のピーク値と実NOX浄化率のピーク値との差が許容値以下であれば、前記第一推定NO2比率と前記第一基準NO2比率との差を利用して、第二推定手段により推定される推定NO2比率を補正するようにしてもよい。このような方法によれば、PM再生処理を実行することなく、推定NO2比率の推定誤差を校正することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置の故障診断をより正確に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
図2】第二触媒ケーシングへ流入する排気のNO2比率と排気浄化装置のPM堆積量と排気浄化装置のNOX浄化率との相関を示す図である。
図3】選択還元機能の故障診断が行われる際にECU9によって実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。
図4】NO2比率又はPM堆積量の計算値に誤差が含まれている場合のNOX浄化率とNO2比率との関係を示す図である。
図5】NO2比率とPM堆積量を校正する際にECU9が実行する処理ルーチンを示すフローチャートである。
図6】選択還元機能が正常である場合において、PM堆積量の計算値に誤差が含まれているときのNOX浄化率とNO2比率との関係を示す図である。
図7】選択還元機能が正常である場合において、NO2比率の計算値とPM堆積量の計算値に誤差が含まれているときのNOX浄化率とNO2比率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
<実施例1>
先ず、本発明の第1の実施例について図1乃至図4に基づいて説明する。図1は、本発明を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、圧縮着火式の内燃機関(ディーゼルエンジン)又は希薄燃焼(リーンバーン運転)可能な火花点火式の内燃機関(ガソリンエンジン)である。
【0027】
内燃機関1には、排気通路2が接続されている。排気通路2は、内燃機関1の気筒内から排出される既燃ガス(排気)を流通させるための通路である。排気通路2の途中には、第一触媒ケーシング3と第二触媒ケーシング4が上流側から直列に配置されている。
【0028】
第一触媒ケーシング3は、筒状のケーシング内に酸化触媒を内装している。第二触媒ケーシング4は、筒状のケーシング内に、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置を収容している。排気浄化装置は、例えば、ウォールフロー型のパティキュレートフィルタの通路壁面に、選択還元型触媒や貴金属触媒(白金(Pt)やパラジウム(Pd)等)が担持された触媒担体(例えば、アルミナ系又はゼオライト系の活性成分)をコーティングしたものである。
【0029】
第一触媒ケーシング3と第二触媒ケーシング4との間の排気通路2には、アンモニア又はアンモニアの前駆体である還元剤を排気中へ添加(噴射)するための還元剤添加弁5が取り付けられている。還元剤添加弁5は、ニードルの移動により開閉される噴孔を有する弁装置である。還元剤添加弁5は、ポンプ50を介して還元剤タンク51に接続されている。ポンプ50は、還元剤タンク51に貯留されている還元剤を吸引するとともに、吸引された還元剤を還元剤添加弁5へ圧送する。還元剤添加弁5は、ポンプ50から圧送されてくる還元剤を排気通路2内へ噴射する。なお、還元剤添加弁5の開閉タイミングやポンプ50の吐出圧力は、電子制御ユニット(ECU)9によって電気的に制御されるようになっている。
【0030】
ここで、還元剤タンク51に貯留される還元剤は、アンモニアの前駆体である還元剤である。アンモニアの前駆体である還元剤としては、尿素やカルバミン酸アンモニウム等の水溶液を用いることができる。本実施例では、当該還元剤として尿素水溶液を用いるものとする。
【0031】
還元剤添加弁5から尿素水溶液が噴射されると、該尿素水溶液が排気とともに第二触媒ケーシング4へ流入する。その際、尿素水溶液が排気や排気浄化装置の熱を受けて熱分解又は加水分解される。尿素水溶液が熱分解又は加水分解されると、アンモニア(NH3)が生成される。このようにして生成されたアンモニア(NH3)は、選択還元型触媒に吸着又は吸蔵される。選択還元型触媒に吸着又は吸蔵されたアンモニア(NH3)は、排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)と反応して窒素(N2)や水(H2O)を生成する。つまり、アンモニア(NH3)は、窒素酸化物(NOX)の還元剤として機能する。その際、選択還元型触媒の広い範囲においてアンモニア(NH3)が吸着されていると、選択還元型触媒における窒素酸化物(NOX)の浄化率を高めることができる。
【0032】
このように構成された内燃機関1には、ECU9が併設されている。ECU9は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等を備えた電子制御ユニットである。ECU9には、第一NOXセンサ6、第二NOXセンサ7、排気温度センサ8、クランクポジションセンサ10、及びアクセルポジションセンサ11等の各種センサが電気的に接続されている。
【0033】
第一NOXセンサ6は、第一触媒ケーシング3より下流、且つ、第二触媒ケーシング4より上流の排気通路2に配置され、第二触媒ケーシング4へ流入する排気に含まれる窒素酸化物(NOX)の量(以下、「NOX流入量」と称する)に相関する電気信号を出力する。第二NOXセンサ7は、第二触媒ケーシング4より下流の排気通路2に配置され、第二触媒ケーシング4から流出するNOXの量(以下、「NOX流出量」と称する)に相関する電気信号を出力する。排気温度センサ8は、第二触媒ケーシング4より下流の排気通路2に配置され、第二触媒ケーシング4から流出する排気の温度と相関する電気信号を出力する。クランクポジションセンサ10は、内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)の回転位置に相関する電気信号を出力する。アクセルポジションセンサ11は、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)に相関する電気信号を出力する。
【0034】
ECU9には、内燃機関1に取り付けられた各種機器(たとえば、燃料噴射弁等)、還元剤添加弁5、及びポンプ50等が電気的に接続されている。ECU9は、前記した各種センサの出力信号に基づいて、内燃機関1の各種機器、還元剤添加弁5、及びポンプ50等を電気的に制御する。例えば、ECU9は、内燃機関1の燃料噴射制御や、還元剤添加弁5から間欠的に還元剤を噴射させる添加制御等の既知の制御に加え、第二触媒ケーシング4に収容された排気浄化装置の故障診断処理を行う。
【0035】
以下、排気浄化装置の故障診断処理について説明する。ここでいう故障診断処理は、選択還元機能の故障(劣化)を診断する処理である。選択還元機能が故障した場合は故障していない場合に比べ、排気浄化装置のNOX浄化率が低下する。よって、排気浄化装置のNOX浄化率が閾値を下回ったことを条件として、選択還元機能が故障していると判定する方法が考えられる。
【0036】
ところで、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備える排気浄化装置においては、選択還元機能が正常であるにもかかわらず、NOX浄化率が閾値を下回る事態が発生し得る。例えば、PMが排気浄化装置に捕集又は堆積しているときは、排気中のNO2の一部がPMの酸化反応に消費される可能性がある。
【0037】
ここで、排気浄化装置の選択還元機能が正常である場合は、該排気浄化装置のNOX浄化率は、第二触媒ケーシング4(排気浄化装置)へ流入する排気のNO2比率(NO2/(NO+NO2))が所定の範囲(例えば、50%前後)にあるときにピークを示す。そのため、内燃機関1の運転状態や酸化触媒の温度は、排気浄化装置へ流入する排気のNO2比率が50%前後となるように制御されることが好ましい。しかしながら、PMが排気浄化装置に堆積しているときは、排気中に含まれるNO2の一部がPMと反応するため、NO2比率が所定の範囲より低くなる。その結果、排気浄化装置のNOX浄化率が低下する。また、PMが排気浄化装置に堆積しているときは、選択還元型触媒の少なくとも一部がPMによって覆われるため、選択還元型触媒によって浄化されるNOXの量が減少する可能性がある。よって、PMが排気浄化装置に捕集又は堆積しているときは、選択還元機能が正常であるにもかかわらず、排気浄化装置のNOX浄化率が閾値より小さくなる可能性がある。
【0038】
これに対し、本実施例の故障診断処理では、第二触媒ケーシング4へ流入する排気のNO2比率と排気浄化装置のPM堆積量とをパラメータとして、排気浄化装置が正常である場合のNOX浄化率(基準NOX浄化率)を演算(推定)し、基準NOX浄化率と実際のNOX浄化率(実NOX浄化率)を比較することにより、選択還元機能の故障を診断するようにした。
【0039】
詳細には、ECU9は、内燃機関1から排出されるPMの量と内燃機関1から第二触媒ケーシング4に至る経路で酸化されるPMの量とをパラメータとして、第二触媒ケーシング4へ流入するPMの量(PM流入量)を演算する。ECU9は、PM流入量を積算してPM堆積量(推定PM堆積量)を演算する。なお、内燃機関1から排出されるPMの量は、内燃機関1の運転状態(燃料噴射量、吸入空気量、機関回転数等)をパラメータとして演算することができる。また、内燃機関1から第二触媒ケーシング4へ至る経路で酸化されるPMの量は、排気温度や第一触媒ケーシング3内の雰囲気温度(酸化触媒の床温)をパラメータとして演算することができる。
【0040】
ECU9は、内燃機関1から排出される一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)の量と、酸化触媒においてNO2に転化されるNOの量とをパラメータとして、第二触媒ケーシング4へ流入する排気のNO2比率(推定NO2比率)を演算する。内燃機関1から排出されるNO及びNO2の量は、内燃機関1の運転条件(燃料噴射量、吸入空気量、機関負荷(アクセル開度)、機関回転数)から演算することができる。酸化触媒においてNO2に転化されるNOの量は、酸化触媒の床温から演算することができる。
【0041】
上記した方法により排気浄化装置の推定PM堆積量と第二触媒ケーシング4へ流入する排気の推定NO2比率とが算出されると、ECU9は、推定PM堆積量と推定NO2比率とNOX浄化率との相関を用いて、基準NOX浄化率を演算する。
【0042】
ここで、排気浄化装置の選択還元機能が正常である場合におけるPM堆積量とNO2比率とNOX浄化率との相関を図2に示す。図2において、排気浄化装置のPM堆積量が零のとき(PMがパティキュレートフィルタに堆積していないとき)は、NO2比率が50%のときにNOX浄化率がピークとなる。これに対し、PMが排気浄化装置に堆積しているときは、PM堆積量が多くなるほど、NOX浄化率のピーク値が小さくなるとともに、NOX浄化率がピーク値を示すときのNO2比率が大きくなる(50%より高くなる)。これは、PM堆積量が多くなるほど、PMと反応するNO2の量が増えるとともに、PMによって覆われる選択還元型触媒の面積(量)が大きくなるからである。
【0043】
なお、図2に示す相関関係は、PM堆積量とNO2比率を引数とするマップ又は関数として、予めECU9のROMに記憶されていてもよい。その場合、ECU9は、前述の方法により算出された推定PM堆積量と推定NO2比率を引数として、排気浄化装置の選択還元機能が正常である場合のNOX浄化率(基準NOX浄化率)を演算(推定)することができる。ところで、PMとNO2との反応は、第二触媒ケーシング4内の雰囲気温度が高くなるほど活発になる傾向がある。つまり、NOX浄化率がピークを示すNO2比率は、第二触媒ケーシング4内の雰囲気温度が高くなるほど大きくなる傾向がある。そこで、PM堆積量とNO2比率と第二触媒ケーシング4の雰囲気温度とを引数として基準NOX浄化率を導出するマップを予め作成しておき、そのマップを用いて基準NOX浄化率が算出されるようにしてもよい。その際、第二触媒ケーシング4の雰囲気温度としては、排気温度センサ8の出力信号を用いてもよい。
【0044】
次に、ECU9は、以下の式(1)にしたがって、排気浄化装置の実NOX浄化率(Enox)を演算する。
Enox=1−(Anoxout/Anoxin)・・・(1)
式(1)中のAnoxinは第一NOXセンサ6の出力信号(NOX流入量)であり、Anoxoutは第二NOXセンサ7の出力信号(NOX流出量)である。なお、NOX流入量Anoxinは、内燃機関1の運転条件(燃料噴射量、吸入空気量、機関負荷、機関回転数)から演算されてもよい。
【0045】
ECU9は、前記式(1)に基づいて算出された実NOX浄化率Enoxと基準NOX浄化率Enoxeとの差△Enoxを演算する。ECU10は、前記差△Enoxが閾値以下であるか否かを判別する。前記差△Enoxが閾値以下であれば、ECU9は、排気浄化装置の選択還元機能が正常であると判定する。一方、前記差△Enoxが閾値より大きければ、ECU9は、排気浄化装置の選択還元機能が故障していると判定する。なお、ここでいう「閾値」は、選択還元機能が正常であるときに前記差ΔEnoxが取り得る値に最大値にマージンを加算した値であり、予め実験等を利用した適合処理によって求められている値である。
【0046】
このような方法により選択還元機能の故障診断処理が実行されると、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置において、選択還元機能が正常であるにもかかわらず、該選択還元機能が故障していると誤診断される事態を回避することができる。よって、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置において、選択還元機能の故障をより正確に診断することが可能となる。
【0047】
以下、本実施例における故障診断処理の実行手順について、図3に沿って説明する。図3は、選択還元機能の故障診断が行われる際にECU9によって実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。図3の処理ルーチンは、予めECU9のROMに記憶されており、ECU9(CPU)によって周期的に実行される。
【0048】
図3の処理ルーチンでは、ECU9は、先ずS101の処理において排気浄化装置の推定PM堆積量を演算する。その際、ECU9は、前述したように、内燃機関1から排出されるPMの量と内燃機関1から第二触媒ケーシング4に至る経路で酸化されるPMの量とから第二触媒ケーシング4へ流入するPMの量(PM流入量)を演算し、そのPM流入量を積算して推定PM堆積量を演算する。なお、第二触媒ケーシング4より上流の排気圧力と第二触媒ケーシング4より下流の排気圧力との差(前後差圧)を検出する差圧センサが排気通路2に取り付けられている場合は、ECU9は、差圧センサの測定値から推定PM堆積量を演算してもよい。このようにECU9がS101の処理を実行することにより、本発明に係わる第一推定手段が実現される。
【0049】
S102の処理では、ECU9は、第二触媒ケーシング4へ流入する排気の推定NO2比率を演算する。その際、ECU9は、前述したように、内燃機関1から排出されるNO及びNO2の量と、酸化触媒においてNO2に転化されるNOの量とをパラメータとして、第二触媒ケーシング4へ流入する排気の推定NO2比率を演算する。このようにECU9がS102の処理を実行することにより、本発明に係わる第二推定手段が実現される。
【0050】
S103の処理では、ECU9は、S101の処理で算出された推定PM堆積量とS102の処理で算出された推定NO2比率とに基づいて基準NOX浄化率Enoxeを演算する。その際、ECU9は、前述した図2に示すようなマップを利用して基準NOX浄化率Enoxeを算出する。このようにECU9がS103の処理を実行することにより、本発明に係わる第一演算手段が実現される。
【0051】
S104の処理では、ECU9は、実NOX浄化率Enoxを演算する。その際、ECU9は、前述したように、第一NOXセンサ6の出力信号(NOX流入量)Anoxinと第二NOXセンサ7の出力信号(NOX流出量)Anoxoutを前記式(1)に代入することにより、実NOX浄化率Enoxを演算する。このようにECU9がS104の処理を実行することにより、本発明に係わる第二演算手段が実現される。
【0052】
S105の処理では、ECU9は、S103の処理で算出された基準NOX浄化率EnoxeとS104の処理で算出された実NOX浄化率Enoxとの差ΔEnoxを演算する。
【0053】
S106の処理では、ECU9は、S105の処理で算出された差ΔEnoxの絶対値が閾値Tenox以下であるか否かを判別する。閾値Tenoxは、選択還元機能が正常である場合に前記差ΔEnoxの絶対値が取り得る最大値にマージンを加算した値であり、予め実験等を利用した適合処理によって求められた値である。
【0054】
S106の処理において肯定判定された場合(|△Enox|≦Tenox)は、ECU9は、S107の処理へ進み、選択還元機能が正常であると判定する。一方、S106の処理において否定判定された場合(|△Enox|>Tenox)は、ECU9は、S108の処理へ進み、選択還元機能が故障していると判定する。このようにECU9がS106乃至S108の処理を実行することにより、本発明に係わる診断手段が実現される。
【0055】
以上述べた実施例によれば、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置において、選択還元機能が正常であるにもかかわらず、該選択還元機能が故障していると誤診断される事態を回避することができる。その結果、選択還元機能とフィルタ機能を兼ね備えた排気浄化装置において、選択還元機能の故障診断をより正確に行うことができる。
【0056】
<実施例2>
次に、本発明の第2の実施例について図5乃至図7に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の校正については説明を省略する。
【0057】
本実施例では、推定NO2比率又は推定PM堆積量の推定誤差を校正する方法について述べる。推定NO2比率と実際のNO2比率との間に誤差が生じた場合や、推定PM堆積量と実際のPM堆積量との間に誤差が生じた場合は、選択還元機能が正常であっても、前記差ΔEnoxの絶対値が閾値Tenoxより大きくなる可能性がある。
【0058】
そこで、選択還元機能の故障診断処理を実行する前に、推定NO2比率およびまたは推定PM堆積量の推定誤差(演算誤差)を校正することが望ましい。以下では、推定NO2比率と及び推定PM堆積量の演算誤差を校正する方法について述べる。
【0059】
先ず、ECU9は、実NOX浄化率Enoxがピークを示すときの推定NO2比率(第一推定NO2比率)を求める。ところで、実NOX浄化率Enoxは、PM堆積量に応じて変化する。そのため、第一推定NO2比率を求める場合は、PM堆積量が一定量であるときの推定NO2比率と実NOX浄化率Enoxとの相関を求める必要がある。
【0060】
これに対し、推定PM堆積量が予め定められた所定量と等しくなったときの推定NO2比率と実NOX浄化率Enoxとを求める処理を繰り返し実行する方法が考えられる。このような方法によれば、推定PM堆積量が所定量と等しい場合における推定NO2比率と実NOX浄化率Enoxとの相関を求めることができる。その結果、第一推定NO2比率を求めることもできる。ただし、推定PM堆積量が所定量と等しくなる機会は、排気浄化装置に捕集されているPMを酸化及び除去する処理(PM再生処理)が実行されてから次回のPM再生処理が実行されるまでの期間に1回のみであるため、第一推定NO2比率が求まるまでにかかる時間が長くなる。
【0061】
そこで、ECU9は、内燃機関1から単位時間あたりに排出されるPMの量が少ないときに、内燃機関1から排出される排気のNO2比率を変更することにより、推定NO2比率と実NOX浄化率Enoxとの相関を求め、その相関から第一推定NO2比率を求めてもよい。
【0062】
なお、内燃機関1から単位時間あたりに排出されるPMの量が少なくなる運転状態としては、たとえば、燃料噴射量が少ない低負荷・低回転運転領域、好ましくはアイドル運転領域を例示することができる。
【0063】
内燃機関1がアイドル運転状態にあるときは、内燃機関1から単位時間あたりに排出されるPMの絶対量が少なくなる。そのため、数サイクル毎に内燃機関1から排出される排気のNO2比率を変更すれば、PM堆積量が略一定となる条件下で第一推定NO2比率を求めることができる。
【0064】
また、内燃機関1から排出される排気のNO2比率を変更する方法としては、混合気の空燃比を変更する方法、EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスの量を変更する方法、又は過給器による吸気の過給圧を変更する方法等を用いることができる。
【0065】
次に、ECU9は、第一推定NO2比率が求められたときの推定PM堆積量をパラメータとして、選択還元機能が正常である場合のNOX浄化率(基準NOX浄化率)がピークを示すときのNO2比率(第一基準NO2比率)を求める。具体的には、ECU9は、第一推定NO2比率が求められたときの推定PM堆積量と前述の図2に示したようなマップとに基づいて、第一基準NO2比率を求める。
【0066】
ここで、選択還元機能の故障やNOXセンサ6,7の故障等が発生している場合は、基準NOX浄化率Enoxeのピーク値と実NOX浄化率Enoxのピーク値が乖離するが、推定PM堆積量又は推定NO2比率の少なくとも一方に誤差が含まれている場合は、図4に示すように、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率とが乖離する。たとえば、推定NO2比率が推定誤差を含む場合は、第一推定NO2比率が真値と異なる値になる。また、推定PM堆積量が推定誤差を含む場合は、第一基準NO2比率が真値と異なる値になる。よって、推定PM堆積量又は推定NO2比の少なくとも一方に誤差が含まれている場合は、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率とが乖離する。
【0067】
そこで、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差△Rno2bfrが許容値を超えている場合は、推定NO2比率又は推定PM堆積量の値に誤差が含まれていると考えることができる。なお、前記許容値は、予め実験等を利用した適合処理によって求められている値である。
【0068】
第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差△Rno2bfrが許容値を超えている場合は、ECU9は、PM再生処理を実行する。PM再生処理は、第二触媒ケーシング4内の雰囲気温度をPMが酸化可能な温度域まで上昇させることにより、排気浄化装置に捕集されているPMを酸化及び除去する処理である。第二触媒ケーシング4内の雰囲気温度をPMが酸化可能な温度域まで上昇させる方法としては、第一触媒ケーシング3へ未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が酸化触媒によって酸化させられる際の反応熱を利用して排気温度を上昇させる方法、第二触媒ケーシング4をヒータ等により直接加熱する方法等を用いることができる。また、第一触媒ケーシング3へ未燃燃料を供給する方法としては、排気行程中の気筒内へ燃料を噴射させる方法や、第一触媒ケーシング3より上流の排気通路2に配置される燃料添加弁から排気中に燃料を添加する方法等を用いることができる。
【0069】
ECU9は、PM再生処理の実行後において、内燃機関1から排出される排気のNO2比率を変更させることにより、実NOX浄化率Enoxがピークを示すときの推定NO2比率(第二推定NO2比率)を再度演算する。また、ECU9は、PM堆積量が零である場合の基準NOX浄化率がピークを示すときのNO2比率(第二基準NO2比率)を演算する。具体的には、ECU9は、図2に示すようなマップにおいて、PM堆積量が零である場合のNOX浄化率がピークを示すときのNO2比率を求め、該NO2比率を第二基準NO2比率に設定する。
【0070】
ECU9は、第二推定NO2比率と第二基準NO2比率とを比較する。ここで、PM再生処理の実行後は、PM堆積量が略零となる。よって、第二基準NO2比率は真値と等しいとみなすことができる。そのため、第二推定NO2比率と第二基準NO2比率との差△Rno2aftが許容値より大きければ、推定NO2比率に誤差が含まれているとみなすことができる。そこで、ECU9は、第二推定NO2比率と第二基準NO2比率との差△Rno2aftが許容値より大きい場合は、その差△Rno2aftを推定NO2比率に加算することにより、推定NO2比率の誤差を校正する。
【0071】
また、前記差△Rno2aftが許容値以下であるときは、PM再生処理実行前の差△Rno2bfrが許容値より大きくなる要因は、PM堆積量の演算誤差にあると考えることができる。そこで、ECU9は、PM再生処理実行前の差△Rno2bfrをPM堆積量の計算値に加算することにより、推定PM堆積量の誤差を校正する。
【0072】
このような方法によって校正された推定NO2比率と推定PM堆積量を用いて選択還元機能の故障診断処理が実行されると、診断精度をより高めることが可能となる。
【0073】
以下、推定NO2比率と推定PM堆積量を校正する手順について図5に沿って説明する。図5は、推定NO2比率と推定PM堆積量を校正する際にECU9が実行する処理ルーチンを示すフローチャートである。この処理ルーチンは、内燃機関1がアイドル運転状態にあるときに、ECU9(CPU)によって実行される。
【0074】
図5の処理ルーチンでは、ECU9は、S201の処理において内燃機関1がアイドル運転状態にあるか否かを判別する。S201の処理において否定判定された場合は、ECU9は、本ルーチンの実行を一旦終了する。S201の処理において肯定判定された場合は、ECU9は、S202の処理へ進む。
【0075】
S202の処理では、ECU9は、推定PM堆積量を演算する。推定PM堆積量は、前述した第1の実施例と同様の方法により演算される。
【0076】
S203の処理では、ECU9は、実NOX浄化率Enoxがピークを示すときの推定NO2比率(第一推定NO2比率)を演算する。詳細には、ECU9は、内燃機関1から排出される排気のNO2比率を数サイクル毎に変更し、推定NO2比率と実NOX浄化率Enoxとの相関を求める。ここで、実NOX浄化率Enoxは、排気浄化装置のPM堆積量に応じて変化する。しかしながら、内燃機関1がアイドル運転状態にあるときは該内燃機関1から単位時間あたりに排出されるPMの量が少ないため、推定NO2比率と実NOX浄化率Enoxとの相関を求める期間のPM堆積量は略一定であるとみなすことができる。ECU9は、推定NO2比率と実NOX浄化率Enoxとの相関に基づいて、実NOX浄化率Enoxがピークを示すときの推定NO2比率(第一推定NO2比率)を特定する。
【0077】
S204の処理では、ECU9は、第一推定NO2比率が求められたときのPM堆積量と前述の図2に示したようなマップとに基づいて、基準NOX浄化率がピークを示すときのNO2比率(第一基準NO2比率)を特定する。ここで、第一推定NO2比率が求められたときのPM堆積量としては、前記S202の処理で求められた推定PM堆積量を用いるものとする。
【0078】
S205の処理では、ECU9は、S203及びS204の処理で特定された第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差△Rno2bfrを演算する。
【0079】
S206の処理では、ECU9は、S205の処理で求められた差△Rno2bfrの絶対値が許容値より大きいか否かを判別する。S206の処理において否定判定された場合は、推定NO2比率及び推定PM堆積量に含まれる誤差が許容範囲内であるため、ECU9は、本ルーチンの実行を終了する。一方、S206の処理において肯定判定された場合は、推定NO2比率又は推定PM堆積量に含まれる誤差が許容範囲を超えているため、ECU9は、S207以降の処理で推定NO2比率又は推定PM堆積量を校正する。
【0080】
S207の処理では、ECU9は、PM再生処理を実行する。詳細には、ECU9は、前述したように、第二触媒ケーシング4内の雰囲気温度をPMが酸化可能な温度域まで高める処理を実行する。
【0081】
なお、ECU9がS202乃至S207の処理を実行することにより、本発明に係わる制御手段が実現される。
【0082】
S208の処理では、ECU9は、PM再生処理が終了したとき(PM堆積量が略零であるとき)に、実NOX浄化率Enoxと推定NO2比率との相関を再度求め、該相関に基づいて実NOX浄化率Enoxがピークを示すときの推定NO2比率(第二推定NO2比率)を特定する。
【0083】
S209の処理では、ECU9は、第二推定NO2比率が求められたときのPM堆積量と前述の図2に示したようなマップとに基づいて、基準NOX浄化率がピークを示すときのNO2比率(第二基準NO2比率)を特定する。ここで、第二推定NO2比率が求められたときのPM堆積量は、略零である。よって、ECU9は、PM堆積量が零である場合において基準NOX浄化率がピークを示すときのNO2比率を求めればよい。なお、PM堆積量が零である場合は、NO2比率が50%になるときにNOX浄化率がピークとなる。よって、ECU9は、第二基準NO2比率として50%を用いてもよい。
【0084】
S210の処理では、ECU9は、第二推定NO2比率と第二基準NO2比率との差△Rno2aftを演算する。続いて、ECU9は、S211の処理へ進み、前記差△Rno2aftの絶対値が許容値より大きいか否かを判別する。
【0085】
ここで、PM再生処理が終了したときは、PM堆積量が略零になる。そのため、PM堆積量が零であるとみなして求められた第二基準NO2比率は、真値と略等しい値になる。よって、S211の処理において肯定判定された場合は、前記差△Rno2aftは、推定NO2比率の推定誤差に起因するとみなすことができる。そこで、ECU9は、S212の処理へ進み、第二推定NO2比率と第二基準NO2比率との差ΔRno2aftを利用して、推定NO2比率を校正する。具体的には、ECU9は、第二推定NO2比率と第二基準NO2比率との差△Rno2aftを推定NO2比率に加算する。
【0086】
一方、S211の処理において否定判定された場合は、推定NO2比率の推定誤差が許容範囲内であるとみなすことができる。よって、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差△Rno2bfrは、推定PM堆積量の推定誤差に起因するとみなすことができる。そこで、ECU9は、S213の処理へ進み、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差△Rno2bfrを利用して、推定PM堆積量を校正する。具体的には、ECU9は、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差△Rno2bfrとの差△Rno2bfrを推定PM堆積量に加算する。
【0087】
なお、ECU9がS208乃至S213の処理を実行することにより、本発明に係わる補正手段が実現される。
【0088】
以上述べた手順によって校正された推定NO2比率又は推定PM堆積量を用いて基準NOX浄化率Enoxeが演算されると、基準NOX浄化率Enoxeが真値に近似する。その結果、選択還元機能の故障診断処理をより正確に実行することが可能になる。
【0089】
なお、選択還元機能やNOXセンサ6,7が正常である場合において、前述した図4に示すように、基準NOX浄化率Enoxeのピーク値と実NOX浄化率Enoxのピーク値が略同等であり、且つ、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差△Rno2bfrが許容値より大きい場合は、該差△Rno2bfrは、推定NO2比率の推定誤差に相関する。よって、前記差△Rno2bfrに基づいて推定NO2比率が校正されてもよい。
【0090】
また、選択還元機能やNOXセンサ6,7が正常である場合において、図6に示すように、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差△Rno2bfrが許容値以下であり、且つ、実NOX浄化率Enoxのピーク値と基準NOX浄化率Enoxeのピーク値とが乖離しているときは、実NOX浄化率Enoxのピーク値と基準NOX浄化率Enoxeのピーク値との差は、推定PM堆積量の推定誤差に相関する。よって、前記ピーク値の差に基づいて推定PM堆積量が校正されてもよい。
【0091】
選択還元機能やNOXセンサ6,7が正常である場合において、図7に示すように、第一推定NO2比率と第一基準NO2比率とが乖離しており、且つ、実NOX浄化率Enoxのピーク値と基準NOX浄化率Enoxeのピーク値とが乖離しているときは、推定NO2比率と推定PM堆積量の双方に推定誤差が含まれていると考えることができる。そのような場合は、ECU9は、先ず基準NOX浄化率Enoxeのピーク値と実NOX浄化率Enoxのピーク値との差に基づいて推定PM堆積量を校正する。続いて、ECU9は、補正後の推定PM堆積量を利用して第一推定NO2比率と第一基準NO2比率との差△Rno2を再度求め、その差△Rno2に基づいて推定NO2比率を校正してもよい。このような方法によれば、PM再生処理を実行することなく、推定NO2比率及び推定PM堆積量の推定誤差を校正することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 内燃機関
2 排気通路
3 第一触媒ケーシング
4 第二触媒ケーシング
5 還元剤添加弁
6 第一NOXセンサ
7 第二NOXセンサ
8 排気温度センサ
9 ECU
10 クランクポジションセンサ
11 アクセルポジションセンサ
50 ポンプ
51 還元剤タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】