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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年10月8日
【発行日】2017年4月13日
(54)【発明の名称】超音波映像システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20170324BHJP
【FI】
   A61B8/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】特願2016-511588(P2016-511588)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-76527(P2014-76527)
(32)【優先日】2014年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
【住所又は居所】群馬県前橋市荒牧町四丁目2番地
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山越 芳樹
【住所又は居所】群馬県前橋市荒牧町四丁目2番地 国立大学法人群馬大学内
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD19
4C601DD23
4C601DE04
4C601EE09
4C601EE12
4C601EE16
4C601JC11
(57)【要約】
硬さを測定したい対象物に対し、既存の超音波診断装置を用いてカラーフロー画像を得る。その際、加振器で、超音波パルスのバースト周波数に対しn/4(nは1以上の奇数)倍の周波数の微小な振動を対象物に与えて、ずり弾性波を生じさせる。すると、超音波診断装置の表示部には、ずり弾性波によって対象物の硬さに応じた縞模様がずり弾性波検出画像として現れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の内部構造を非侵襲にて測定するための超音波パルスを出力して、前記超音波パルスを受信するための超音波プローブから前記超音波パルスを発して受信することで、前記測定対象の内部に存在する流体を描画するカラーフロー画像を出力可能な超音波画像形成装置と、
所定の周波数の振動を前記測定対象に与えるずり弾性波発生部と
を具備する、超音波映像システム。
【請求項2】
前記ずり弾性波発生部は、前記超音波パルスの繰り返し周期に相当するバースト周波数に対し、n/4(但し、nは1以上の奇数)の周波数を中心周波数とする振動を前記測定対象に与える、
請求項1に記載の超音波映像システム。
【請求項3】
前記ずり弾性波発生部は、前記中心周波数に対し最大10Hz増減の周波数範囲の振動を前記測定対象に与える、
請求項2に記載の超音波映像システム。
【請求項4】
更に、
前記超音波画像形成装置が出力する前記カラーフロー画像のデータを入力されて、前記測定対象の内部の硬さを表す情報を含む画像データを出力するCFI画像処理装置と
を具備する、請求項3記載の超音波映像システム。
【請求項5】
前記CFI画像処理装置は、前記ずり弾性波発生部の振動周波数に基づいて、前記測定対象に生じるずり弾性波の波長を前記カラーフロー画像のデータから推定することで、前記測定対象の硬さを推定する、請求項4記載の超音波映像システム。
【請求項6】
前記CFI画像処理装置は、前記ずり弾性波発生部の振動周波数に基づいて、前記測定対象に生じるずり弾性波の波長を前記カラーフロー画像のデータから推定することで、前記測定対象における前記ずり弾性波の伝搬方向を示す情報を前記画像データに含める、請求項5記載の超音波映像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療用途の、超音波を用いて非侵襲にて被験体の断面画像を形成する、超音波映像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された超音波トランスデューサから発生した超音波を被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる反射信号を超音波トランスデューサによって受信する。そして、この信号をフーリエ変換等の演算処理を施して映像を形成し、表示部に表示する。この超音波診断装置は、超音波プローブを被検体の体表に接触させるだけの、非侵襲且つ簡単な操作で、リアルタイムにて被検体組織の二次元映像が容易に観察できる。このため、心臓等の機能検査や各種臓器の形態診断に広く用いられている。特に、被検体に与える照射障害が殆ど無いことから、胎児の発育診断には不可欠な映像診断法である。
【0003】
なお、本発明の技術分野に近い先行技術文献を特許文献1及び非特許文献1に示す。
特許文献1には、被検体ボリューム中の超音波散乱媒体の三次元イメージング方法およびシステムの技術内容が開示されている。
非特許文献1には、外部より加えられた低周波振動の位相変化から伝搬速度を推定する、加振映像法の技術内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−154012号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Tissue Harmonics Wave を用いた適応的加振映像法」増田信之、辻田剛啓、江渕智昭、山越芳樹、第23回 超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム、(2013年4月23日検索)インターネット<http://ci.nii.ac.jp/naid/110007464507>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生体組織の硬さの評価は、特に肝臓、乳腺、前立腺等の、硬さが疾病と深く関係する診断領域において、注目されている。また整形外科においても、骨格筋の機能が硬さから評価できれば、筋ジストロフィー等の骨格筋由来の疾病診断や、腱の修復治療における術中評価等に役立つと考えられる。
従来の超音波診断装置は、生体組織の硬さを測定する機能を備えるものが殆どなかった。これは、超音波の周波数が、体積弾性波が支配的であることに起因する。体積弾性波とは、媒質中を伝達する振動の伝達方向に対し、振動の方向が平行である波である。これは媒質の体積変動を伴う波であり、地震に例えると縦揺れのP波に相当する。体積弾性波の伝達速度は、媒質の硬さに殆ど依存しない。したがって、超音波をそのまま使用する超音波診断装置では、媒質の硬さを検出することが極めて困難であった。
【0007】
生体組織の硬さを計測する既知の技術には、二種類の技術が知られている。
一つ目の技術は「エラストグラフィ」と呼ばれる、被験者の、硬さを測りたい対象の部位を手等で圧迫し、圧迫によって組織に生じる歪を超音波画像から測定する方法である。
二つ目の技術は、被験者の、硬さを測りたい対象の部位に強力な超音波パルスを照射して、パルスのエッジから生じる音響放射圧でずり弾性波を生体組織内に励振させる。そして、生体組織内に生じたずり弾性波によって生じる、超音波の伝搬速度の変化を検出して、生体組織の硬さを測定する方法である。なお、本明細書中、当該技術を「音響放射圧法」と呼ぶ。ずり弾性波とは、せん断波、ズリ波とも呼ばれる波であり、媒質中を伝達する振動の伝達方向に対し、振動の方向が垂直である波である。これは媒質の体積変動を伴わない波であり、地震に例えると横揺れのS波に相当する。ずり弾性波の伝達速度は、媒質の硬さに大きく依存する。
エラストグラフィは、測定原理が簡単で、生体に対する高い安全性が利点であるが、一方で定量性が低く、測定精度が術者の手技に依存する、という欠点がある。
音響放射圧法は、定量的な計測が可能であるという利点があるが、強力な超音波が生体組織に発熱を生じさせる懸念があり、生体への安全性に疑問が示されている。
【0008】
本発明は係る状況に鑑みてなされたものであり、従来の超音波診断装置を利用して、極めて簡素な装置を付加するだけで、容易且つ安全に測定対象の硬さを映像化することができる、超音波映像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の超音波映像システムは、測定対象の内部構造を非侵襲にて測定するための超音波パルスを出力して、超音波パルスを受信するための超音波プローブから超音波パルスを発して受信することで、測定対象の内部に存在する流体を描画するカラーフロー画像を出力可能な超音波画像形成装置と、所定の周波数の振動を測定対象に与えるずり弾性波発生部とを具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、従来の超音波診断装置を利用して、極めて簡素な装置を付加するだけで、容易且つ安全に測定対象の硬さを映像化することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態である超音波映像システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】超音波診断装置の機能ブロック図である。
図3】演算処理部の機能ブロック図である。
図4】ずり弾性波の伝搬による組織の変位振動の周期と変位振幅の関係を示す図である。
図5】直交検波器の出力信号における振幅の関係を、i番目のサンプル値毎に表したベクトル図である。
図6】第一の基本演算子と第二の基本演算子を示すモデル図である。
図7】超音波パルスの送受信数N=11の場合における、超音波診断装置による流速導出アルゴリズムのモデル図である。
図8】CFI画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図9】CFI画像処理装置の機能ブロック図である。
図10】本実施形態の超音波映像システムにおける、超音波診断装置に表示されるずり弾性波検出画像と、表示装置に表示されるずり弾性波表示画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
振動は、その周波数の高低によって、体積弾性波とずり弾性波の比率が変わる。周波数が低くなればなるほど、振動はずり弾性波が支配的になる。
ずり弾性波の伝搬速度は、一般に媒質の硬さの平方根に比例する。したがって、ずり弾性波を測定対象に与えて、ずり弾性波の伝搬速度を検出できれば、測定対象の硬さを測定することが可能になる。
本実施形態にて説明する超音波映像システムは、超音波診断装置が備える、組織内の流体の存在とその速度を検出するためのカラーフロー画像表示機能を利用して、ずり弾性波の伝搬状態を画像に表す。
【0013】
[超音波映像システム101の全体構成]
図1は、本発明の実施形態である超音波映像システム101の全体構成を示すブロック図である。
超音波映像システム101は、被験者102に超音波パルスを照射する超音波プローブ103を備える超音波診断装置104(超音波画像形成装置)に、ずり弾性波駆動回路105と、これによって加振される加振器106と、CFI画像処理装置107と、表示装置108を付加してなる。なお、CFI画像処理装置107と表示装置108がなくても、ずり弾性波駆動回路105と加振器106を付加するだけで、超音波診断装置104の表示部109には、ノイズ混じりではあるものの、ずり弾性波によって生じる特徴的な縞模様を有する画像が現れる。そして、この縞模様の間隔から、被験者102の生体組織の硬さを類推することができる。これ以降、超音波診断装置104の表示部109に表示される、ずり弾性波によって生じる縞模様の画面を、ずり弾性波検出画像と呼ぶ。そして、ずり弾性波検出画像のデータを、CFI画像処理装置107が加工して表示装置108に表示される画像を、ずり弾性波表示画像と呼ぶ。
【0014】
超音波診断装置104は、超音波プローブ103から超音波パルスを出力し、生体組織内部の存在を白黒のイメージで表示する「Bモードイメージ」を出力する機能を有する。そして、超音波診断装置104はBモードイメージを出力する機能の他に、血管に流れる血液の流れによって生じるドップラー効果を検出して、血液の流れを色分けして、Bモードイメージに重ねて表示する「カラーフローイメージ(Color Flow ImageまたはColor Flow Mappingと呼ばれる。)」を出力する機能を有する。超音波パルスは、およそ1MHz以上の高い周波数の超音波を、例えば365Hz等の周期で出力される、バースト波である。これ以降、この超音波パルスの周期に相当する周波数を、バースト周波数と呼ぶ。
【0015】
加振器106は、ずり弾性波駆動回路105が出力する駆動電圧によって低周波の微小振動を発生する。図2で詳述するが、加振器106の中身は圧電素子である。勿論、周知のスピーカに類似する、電磁駆動の加振器でもよい。
ずり弾性波駆動回路105は、超音波診断装置104から超音波プローブ103に供給される超音波パルスのバースト周波数に対し、以下の式(1)に示す周波数と、式(2)に示す振幅のずり弾性波を発生する。
【0016】
【数1】
【0017】
例えば、バースト周波数が365Hzの場合、ずり弾性波の周波数は、
m=0の場合:91.25Hz
m=1の場合:273.75Hz
m=2の場合:456.25Hz
m=3の場合:638.75Hz
となる。すなわち、ずり弾性波の周波数は、バースト周波数に1/4、3/4、5/4、7/4…と、分母が4、分子が1から始まる奇数よりなる分数を乗じることで得られる。
そして、例えば超音波パルスの中心周波数が5MHzの場合、ずり弾性波の振幅については、ずり弾性波が伝搬する媒質の伝搬速度に依存するが、たとえば100ミクロンというような振幅で加振器106を振動させると、良好なずり弾性波検出画像及びずり弾性波表示画像が得られる。
【0018】
式(1)に従う周波数のずり弾性波を加振器106から発生させ、被験者102の、超音波プローブ103を接触させている近辺の測定部位に加振器106を当てると、超音波診断装置104の表示部109に表示される、血流を表示するカラーフロー画像に、生体組織の硬さに依存する縞模様が現れる。この縞模様の間隔は、ずり弾性波の生体組織内における波長に該当する。ずり弾性波の伝搬速度は、一般に媒質の硬さの平方根に比例するので、縞模様の間隔を測定することで、当該生体組織の硬さを類推することができる。
【0019】
良好なずり弾性波検出画像を表示させるために、ずり弾性波駆動回路105が出力するずり弾性波は、超音波パルスのエッジに対する位相差が所望の誤差範囲内を維持していればよい。図1及び図2では、ずり弾性波駆動回路105が超音波パルスのエッジに同期するように図示されているが、超音波パルスのバースト周波数とずり弾性波の周波数が十分な精度を確保していれば、必ずしも互いが同期していなくてもよい。
【0020】
図2は、超音波診断装置104の機能ブロック図である。
発振器201は、超音波プローブ103の内部に設けられる複数の超音波トランスデューサ202から発する、超音波の中心周波数の駆動信号を出力する。超音波の中心周波数は、例えば5MHzである。超音波トランスデューサ202の実体は圧電素子である。圧電素子は電圧を受けて歪みを生じ、また歪みを受けて電圧を生じる。発振器201が出力する信号は分周器203に供給される。分周器203は、駆動信号から所定のバースト周波数の超音波パルスを生成する。超音波パルスのバースト周波数は、例えば365Hzである。分周器203から出力される超音波パルスは、第一マルチプレクサ204と第二マルチプレクサ205を通じて複数の超音波トランスデューサ202へ選択的に供給される。
【0021】
第一マルチプレクサ204は、超音波プローブ103の、送信と受信を切り替える。第一マルチプレクサ204は、送信の際には超音波プローブ103を分周器203に接続させ、受信の際には超音波プローブ103を第一乗算器206および第二乗算器207に接続させる。
第二マルチプレクサ205は、超音波プローブ103の筐体内に格納されている、複数の超音波トランスデューサ202のうちの一つを選択する。
【0022】
一方、超音波パルスは第一マルチプレクサ204を通じて同期発振器208にも供給される。この同期発振器208が、ずり弾性波駆動回路105の実体である。同期発振器208は、超音波パルスのバースト周波数に対し、前述の式(1)に従う周波数の駆動電圧を出力する。この駆動電圧が加振器106に内蔵されている圧電素子を駆動する。
なお、超音波プローブ103及び加振器106に用いられる圧電素子を駆動するには高い電圧が必要になるが、紙面の都合上、図2では高電圧発生手段に関する記述を省略している。
【0023】
第一マルチプレクサ204の、受信側の端子は、直交検波器を構成する第一乗算器206および第二乗算器207に接続されている。
第一乗算器206は、超音波プローブ103から出力される受信信号と駆動信号を乗算する。第一乗算器206の出力信号は、第一A/D変換器209(図2中「第一A/D」と略記)に供給され、A/D変換される。この、第一A/D変換器209の出力データは、実数成分に相当する「In-phaseデータ」である。In-phaseデータは演算処理部212へ供給される。
第二乗算器207は、超音波プローブ103から出力される受信信号と、90°移相器210によって位相を90°遅らせられた駆動信号を乗算する。第二乗算器207の出力信号は、第二A/D変換器211(図2中「第二A/D」と略記)に供給され、A/D変換される。この、第二A/D変換器211の出力データは、虚数成分に相当する「Quadrature phaseデータ」である。Quadrature phaseデータは演算処理部212へ供給される。
【0024】
図3は、演算処理部212の機能ブロック図である。
In-phaseデータは、周知のRAMよりなる第一サンプルバッファ301に一旦格納される。
同様に、Quadrature phaseデータも、周知のRAMよりなる第二サンプルバッファ302に一旦格納される。
第一サンプルバッファ301に格納された所定の時間幅のIn-phaseデータと、第二サンプルバッファ302に格納された所定の時間幅のQuadrature phaseデータは、Bモード画像処理部303によって、Bモード画像を生成するための演算処理が行われる。この演算処理は、FFT(Fast Fourier Transformation)を主とする、白黒の画像を生成する処
理である。Bモード画像処理部303が生成したBモード画像データは、映像処理部304に供給される。
【0025】
一方、第一サンプルバッファ301に格納された所定の時間幅のIn-phaseデータと、第二サンプルバッファ302に格納された所定の時間幅のQuadrature phaseデータは、ノイズ除去演算処理部305によって、ノイズ除去の処理が行われ、血流によって現れるドップラー効果の信号成分が抽出される。そして、ドップラー効果の信号成分は流速データ演算部306によってカラーフロー画像データに変換され、映像処理部304に供給される。
映像処理部304は、Bモード画像データとカラーフロー画像データを重ね合わせて、表示部109に出力する。
【0026】
[ずり弾性波検出画像の原理]
図2及び図3にて説明した内容は、超音波パルスを用いる、カラーフロー画像を出力できる従来の超音波診断装置104の機能ブロックである。本実施形態の超音波映像システム101では、超音波診断装置104に式(1)に従う周波数と式(2)に従う振動振幅で振動する加振器106を付加するだけで、ずり弾性波検出画像が得られる。これ以降、ずり弾性波検出画像が超音波診断装置104の表示部109に表示される原理を説明する。
【0027】
<カラーフロー画像の流速推定アルゴリズム>
先ず、超音波診断装置104が出力する、流体の速度を示すカラーフロー画像の基となる、流速推定アルゴリズムについて説明する。
今、任意の流体に対し、超音波パルスを同一方向にNパルス送波すると、i番目の超音波パルスに対する受信超音波の位相φは、次式(3)にて表される。
【0028】
【数2】
【0029】
式(3)より、i番目の受信RF信号rは、次式(4)にて表される。
【0030】
【数3】
【0031】
【数4】
【0032】
式(5)は、次式(6)のように書くこともできる。
【数5】
【0033】
ここで、第i番目の超音波パルスの位相と、第i+1番目の超音波パルスの位相の差Δφを考える。これは、次式(7)のように推定できる。
【数6】
【0034】
超音波パルスの位相の差Δφは式(7)と推定できるので、式(6)を代入すると、次式(8)になる。
【0035】
【数7】
【0036】
よって流速vは、次式(9)で求められる。
【0037】
【数8】
【0038】
式(9)のカッコ内は、IQ信号を使うと、次式(10)のように表される。
【0039】
【数9】
【0040】
式(10)より、流速の推定式として次式(11)が導き出される。
【0041】
【数10】
【0042】
超音波診断装置104のカラーフロー画像では、S/Nを向上させるために、連続した超音波Nパルスから得た直交検波出力信号を用いて、次式(12)で流速を推定している。
【0043】
【数11】
【0044】
<カラーフロー画像の流速推定アルゴリズムによる、ずり弾性波の波面検出>
今、超音波診断装置104の流速推定アルゴリズムを、ずり弾性波により反射体が正弦的に振動している場合に適用する。
ずり弾性波が伝搬して組織が正弦的に変動すると、組織変位ξは次式(13)のように表すことができる。
【0045】
【数12】
【0046】
このとき、i番目の受信超音波パルスの位相φは、次式(14)になる。
【0047】
【数13】
【0048】
直交検波器の出力は、式(5)と同様に次式(15)になる。
【0049】
【数14】
【0050】
ここで、ずり弾性波の角周波数に対して次式(16)の条件(周波数条件)が成り立つ場合を考える。
【0051】
【数15】
【0052】
つまり、ずり弾性波の周波数であらわすと、次式(17)になる。
【0053】
【数16】
【0054】
さらに、振動の初期位相として、次式(18)が満たされるとする。
【0055】
【数17】
【0056】
上記条件(式(17)および式(18))は、ずり弾性波の伝搬による組織の変位振動の周期が超音波の4パルスに等しく、かつ初期位相が0の条件であり、これを変位振幅として図に表すと、図4のようになる。
図4は、ずり弾性波の伝搬による組織の変位振動の周期と変位振幅の関係を示す図である。
図4と同じ振動振幅は、正負の別はあるものの、ずり弾性波の振動周波数が高く、エイリアジングにより低い周波数に折り返す場合にも生じる。この時の振動周波数は、mを整数として、次式(19)で表される。これが式(1)である。
【0057】
【数18】
【0058】
このため、以下の議論は、式(19)が成り立つ場合にも成立するので、ずり弾性波の周波数として式(19)が成り立てばよい。この式(19)(式(1)と等しい)が、超音波診断装置104でずり弾性波を映像化するときの周波数条件である。
この時、変位ξは次式(20)で表される。
【0059】
【数19】
【0060】
この時、直交検波器の出力信号であるI,Q信号は、次式(21)となる。
【0061】
【数20】
【0062】
ここで、i=0,1,2,3について、直交検波器の出力を求めてみると、以下の式(22)、(23)、(24)、(25)、(26)及び(27)となる。
【0063】
【数21】
【0064】
式(23)乃至式(27)の関係をベクトル図であらわすと、図5Aおよび図5Bになる。
図5Aおよび図5Bは、直交検波器の出力信号における振幅の関係を、i番目のサンプル値毎に表したベクトル図である。
図5Aは、振動振幅ξが「0≦ξ≦λ/8」の場合における、ベクトル図である。
図5Aに示すように、全てのベクトルは第一象限と第四象限にある。
図5Bは、振動振幅ξが「λ/8≦ξ≦3λ/8」の場合における、ベクトル図である。
図5Bに示すように、i=1とi=3の時のベクトルは、第二象限と第三象限にある。
【0065】
以上の考察を表1にまとめる。
【0066】
【表1】
【0067】
次に、上記表1に示したIQ信号のパターンに対して、超音波診断装置104による速度推定値を求めてみる。
先ず、式(12)で示される流速導出アルゴリズムについて、二つの基本演算子でモデル化する。
図6Aは、第一の基本演算子を示すモデル図である。図6Bは、第二の基本演算子を示すモデル図である。
先ず、直交検波器の出力である、i番目のIn-PhaseデータとQuadrature Phaseデータと、i+1番目のIn-PhaseデータとQuadrature Phaseデータとを用意する。
第一の基本演算子は、式(12)中、Eを導出する式における、総和の前段階の演算である。
第二の基本演算子は、式(12)中、Eを導出する式における、総和の前段階の演算である。
【0068】
図7Aは、超音波パルスの送受信数N=11の場合における、超音波診断装置104による流速導出アルゴリズムのモデル図である。
図7Bは、式(16)及び(18)の2つの条件が共に満たされている状態における、超音波診断装置104における流速推定の結果を示す図である。
図7Bにおいて、Eは以下の表2に示す値となる。
【0069】
【表2】
【0070】
が如何なる値であろうとも、共にE=0であるので、実軸をE、虚軸をEとするベクトルは、Eが正の場合は実軸上の正の方向を向くベクトルとなり、流速推定値は0になる。一方、Eが負の場合は、実軸上の負の方向を向くベクトルとなり、流速推定値は正の最大値、または負の最大値(ナイキスト周波数で決まる最大の流速値)になる。
つまり、以下の結論が導き出せる。
<1>Eが正になる条件(ずり弾性波による振動振幅が0≦ξ≦λ/8の場合)
振動振幅の位相が0°および180°になる位置に、ずり弾性波検出画像には流速0の部分が現れる。
<2>Eが負になる条件(ずり弾性波による振動振幅がλ/8≦ξ≦3λ/8の場合)
振動振幅の位相が0°および180°になる位置に、ずり弾性波検出画像には流速最大の部分が現れる。
【0071】
上記の条件は、ずり弾性波の振幅により、ずり弾性波による振動位相が0°または180°の時に、特異な縞模様状のパターンがずり弾性波検出画像に現れることを示している。これ以降、上記2つの条件を振幅条件と呼ぶ。
ずり弾性波が組織中を伝搬しているとき、超音波診断装置104が出力するカラーフロー画像の中から、上記に示したような特徴ある部分を抽出することにより、ずり弾性波の位相(0°または180°)が推定できることになる。ずり弾性波が等位相になる部分はずり弾性波の波面を再現することに相当するので、この方法により、カラーフロー画像からずり弾性波の波面を再現できる。
この方法は、超音波診断装置104でずり弾性波を映像化するための周波数条件である式(1)=式(19)が成り立つときに、超音波診断装置104の推定アルゴリズムが、ずり弾性波の0°と180°の位相を検出するディジタルフィルタになっていることに着目した、ずり弾性波の映像化法である。
すなわち、超音波パルスの繰り返し周期に相当するバースト周波数に対し、n/4(但し、nは1以上の奇数)の周波数に相当する振動を測定対象に与えると、超音波診断装置104でずり弾性波が縞模様となって現れる。
【0072】
超音波診断装置104でずり弾性波を映像化するための周波数条件は、理論的には式(1)=式(19)で表されるが、実際には、先に述べたずり弾性波の周波数条件と必ずしも一致していなくてもよい。振動の周波数が周波数条件に近ければ、流速の最大値または流速0の部分が超音波診断装置104の表示部109に現れるので、そのような場合でもこの方法でずり弾性波の波面(縞模様)を超音波診断装置104で再現できる。この、ずり弾性波の波面が超音波診断装置104で再現できる許容周波数範囲は、最大でも±10Hzである。この許容周波数範囲は、バースト周波数が変わっても、超音波画像のフレームレートが一定である限り、変わらない。これ以上の周波数のずれは、超音波診断装置104で縞模様が再現できなくなってしまう。許容周波数範囲に合致する周波数の振動を与えている場合は、周波数の変化に伴い、超音波診断装置104に表示される縞模様の移動速度が変化する。
【0073】
更に、ずり弾性波の周波数の範囲内に、超音波診断装置104のフレームレートの整数倍の周波数が存在すると、そのフレームレートの整数倍の周波数において、超音波診断装置104で表示される縞模様は止まって見える。縞模様が止まって見える場合、その周波数から振動の周波数を変化させると、周波数の増減方向に応じて、縞模様の移動方向が変わる。
一例として、超音波診断装置104のフレームレートの周波数が10Hzで、バースト周波数が365Hzの場合、ずり弾性波の周波数はn=1の場合、91.25Hzとなり、n=2の場合、273.75Hzとなる。ずり弾性波の周波数が273.75Hzの場合、±5Hzの範囲、すなわち268.75Hzから278.75Hzの範囲内で、超音波診断装置104で縞模様が再現できる。特に、フレームレートの周波数の整数倍である270Hzがこの周波数の範囲内に存在するので、ずり弾性波の周波数が270Hzのときに、超音波診断装置104で表示される縞模様は止まって見える。
【0074】
<ずり弾性波波面から、ずり弾性波の伝搬速度推定>
周波数条件が成立する時、ずり弾性波の位相0°および180°付近の二箇所で、流速推定値が最大値または0の値を示す。つまり、この部分を画像処理で抽出することで、ずり弾性波の波長を求めることができ、これからずり弾性波の伝搬速度を推定できる。具体的には、以下の二つ方法を使うことができる。
【0075】
方法1:(空間的な流速分布から推定する方法)
ずり弾性波の波面が記録された画像の二次元自己相関を計算する。相関のピークまたは相関値の重心位置から位相が180°回転する距離dが求められる。これより、ずり弾性波の伝搬速度vsは、以下の式(28)として計算することができる。なお、距離dとは、厳密には表示装置108の画面上に現れる縞模様の間隔に対し、超音波診断装置104に固有の、超音波パルスを超音波プローブ103から送信する際に発生する送信時間の遅れを考慮した補正を行う必要があるが、ここでは詳細な説明を省略する。
【0076】
【数22】
【0077】
方法2:(時間が経過した二つのフレームの波面の移動から推定する方法)
時刻Tだけ離れた二つの画像の二次元相互相関関数を計算する。相関のピークまたは相関値の重心位置から位相が180°回転する距離dが求められる。これより、ずり弾性波の伝搬速度vsは、前述の式(28)で計算することができる。
【0078】
[CFI画像処理装置107の構成]
図8は、CFI画像処理装置107のハードウェア構成を示すブロック図である。
周知のパソコンよりなるCFI画像処理装置107は、CPU801、ROM802、RAM803、ハードディスク装置等の不揮発性ストレージ804、表示装置108、操作部805、USBインターフェース806(図8中「USB I/F」と略記)がバス807に接続されて構成される。
【0079】
図9は、CFI画像処理装置107の機能ブロック図である。
超音波プローブ103は、被験者102の生体組織901に超音波パルスを発し、これを受信する。
同様に、ずり弾性波駆動回路105にて駆動される加振器106は、生体組織901にずり弾性波を与える。
超音波診断装置104は、カラーフロー画像を出力する。
CFI画像処理装置107は、図8にて説明した周知のパソコンに、CFI画像処理装置107として稼働するプログラムを実行させることでなる。
【0080】
超音波診断装置104から出力されるデジタル画像データ(カラーフロー画像のデータであると共に、ずり弾性波検出画像のデータでもある。)は、流速画像抽出部902とBモード画像抽出部903に入力される。
流速画像抽出部902は、デジタル画像データからカラーフロー画像データを抜き出す。Bモード画像抽出部903は、デジタル画像データからBモード画像データを抜き出す。多くの場合、超音波診断装置104が出力するデジタル画像データは、白黒のBモード画像の中心部分に、カラーフロー画像の表示領域が現れる。したがって、カラーの部分を、座標情報を頼りに抜き出すことで、流速画像抽出部902とBモード画像抽出部903は、一体的に構成できる。すなわち、流速画像抽出部902とBモード画像抽出部903は、排他的な関係である。
【0081】
流速画像抽出部902から出力されるカラーフロー画像データは、振幅条件合致画像抽出部904に入力される。振幅条件合致画像抽出部904は、カラーフロー画像データから、振幅条件、すなわち式(2)に合致する画像データの成分を抽出する。振幅条件は、操作部805から、超音波プローブ103及びずり弾性波駆動回路105(同期発振器208)の周波数情報を入力することで、振幅条件合致画像抽出部904に与える。具体的には例えば、振幅条件に合致する振幅の値であると、カラーフロー画像上には最大の流速値が現れるので、最大の流速値が画像上に現れることを判断の基準として振幅条件に合致した画像を抽出する。
【0082】
振幅条件合致画像抽出部904から出力される振幅条件合致画像データは、ずり弾性波波面画像構成部905に入力される。ずり弾性波波面画像構成部905は、振幅条件合致画像抽出部904が出力する振幅条件合致画像データから、ずり弾性波の波面を再生する。具体的には例えば、最大流速の半分の流速値を閾値として、流速値がこの閾値以上であれば1、これ以下であれば0とする処理を行うことで、ずり弾性波の波面を再生する。
ずり弾性波波面画像構成部905から出力されるずり弾性波波面画像データは、ずり弾性波波長推定部906に入力される。ずり弾性波波長推定部906は、ずり弾性波波面画像データから二次元相関を用いて、ずり弾性波波面画像データ内におけるずり弾性波の波長を推定する。
【0083】
ずり弾性波波長推定部906から出力されるずり弾性波波長データは、ずり弾性波速度推定部907に入力される。ずり弾性波速度推定部907は、ずり弾性波波長データからずり弾性波の伝搬速度を推定する。推定して得られたずり弾性波の伝搬速度データは、例えば地図の等高線状の線として描画する。
Bモード画像抽出部903から出力されるBモード画像データと、ずり弾性波波面画像構成部905から出力されるずり弾性波波面画像データと、ずり弾性波速度推定部907から出力されるずり弾性波の伝播速度データは、再生画像重ね合わせ部908に入力される。再生画像重ね合わせ部908は、Bモード画像データと、ずり弾性波波面画像データと、ずり弾性波の伝播速度データを重畳して、一体的な画像データとして再構成する。
こうして、再生画像重ね合わせ部908が出力する画像データは表示装置108に入力されて、ずり弾性波の縞模様を含むずり弾性波表示画像が、表示装置108に表示される。
【0084】
図10は、本実施形態の超音波映像システム101における、超音波診断装置104に表示されるずり弾性波検出画像と、表示装置108に表示されるずり弾性波表示画像の例を示す図である。図10に示す画像は、寒天に超音波を散乱させるグラファイト粉末を混ぜた生体擬似ファントムを作成して、これに超音波映像システム101にて測定を行った際の、ずり弾性波検出画像とずり弾性波表示画像である。生体擬似ファントムは、寒天の濃度を1.75%、1.5%、そして1%と異ならせたものを三つ作成した。
図10(a)は、寒天の濃度が1.75%の、ずり弾性波検出画像である。
図10(b)は、寒天の濃度が1.5%の、ずり弾性波検出画像である。
図10(c)は、寒天の濃度が1%の、ずり弾性波検出画像である。
図10(d)は、寒天の濃度が1.75%の、ずり弾性波表示画像である。
図10(e)は、寒天の濃度が1.5%の、ずり弾性波表示画像である。
図10(f)は、寒天の濃度が1%の、ずり弾性波表示画像である。
【0085】
図10(a)、(b)及び(c)を見ると、ずり弾性波検出画像は、ノイズ成分が多く含まれるものの、ずり弾性波によって特有の縞模様が画像に現れていることが判る。
寒天粉末の濃度が濃い、ということは、ファントムが硬くなることであり、ずり弾性波の伝搬速度が高くなる。すなわち、ずり弾性波の波長が長くなる。逆に、寒天粉末の濃度が薄い、ということは、ファントムが柔らかくなることであり、ずり弾性波の伝搬速度が低くなる。すなわち、ずり弾性波の波長が短くなることであり、図10の結果は、寒天の硬さの違いが、ずり弾性波の波長の違いとして区別できていることを示している。
【0086】
また、図10(d)、(e)及び(f)を見ると、ずり弾性波表示画像はずり弾性波検出画像と比べてノイズ成分が大幅に除去され、縞模様の間隔がより明確に判別し易くなっていることが判る。なお、縞模様の間隔を測定するには、白色(薄い色)の部分同士の間隔を測定することが望ましい。何故ならば、流速が0になる部分(黒色または濃い色)は雑音の影響を受け易いので、流速が最大を示す部分同士の測定の方が、誤差が少なくなることが期待できるからである。
【0087】
更に、図10は静止画像であるため判別できないが、実際には縞模様が画面上を移動する。この移動速度は式(1)に従うずり弾性波の周波数と、実際に加振器106から与えられるずり弾性波の周波数との周波数差および位相差によって変動する。この、縞模様の移動方向から、ずり弾性波の伝達方向が目視で判別できる。更に、縞模様の移動方向を画像解析することで、ずり弾性波の伝達方向をベクトルデータとして取得できる。この、ずり弾性波の伝達方向を示すベクトルデータを、例えば矢印マーク等のイラストにて表示装置108に表示することで、ずり弾性波の伝達方向を可視化できる。ずり弾性波の伝達方向を可視化できると、様々な体組織の異変を明瞭に推測できる。例えば、組織境界面は、ずり弾性波の屈折から明瞭に可視化できる。また、体組織が癒着している場合には、二つの癒着組織同士で同じ振動が伝わる。このため、屈折が起きにくく伝搬方向が変化しないなどの情報も得られる。更に、例えば子宮筋腫のような液状変性等の疾病の場合、ずり弾性波の伝搬方向が局所的にばらつくようになる。これにより、当該組織が液状変性であることが、ずり弾性波の伝搬方向から一目瞭然に見て取れる。
【0088】
以上説明した実施形態には、以下に記す応用例が可能である。
(1)本実施形態では、既存の超音波診断装置104をそのまま流用した超音波映像システム101を構築したが、超音波診断装置104にCFI画像処理装置107の演算機能を内包させてもよい。
【0089】
(2)上記の実施形態において、ずり弾性波表示画像の鮮明度を更に向上させる目的で、二種類以上の周波数のずり弾性波で測定対象を加振することができる。
超音波診断装置104により、ずり弾性波の波面の再生では、周波数条件に合致する周波数が、振幅条件を満足する時に、ずり弾性波の位相0°と180°付近で特徴ある流速値が推定されることをずり弾性波の波面再生に使っている。
つまり、変位振幅が超音波パルスに対して図4のようなデータ列になるときに、ずり弾性波の波面が再現できることになる。
図4に示す超音波パルスごとの変位振幅のパターンは、ずり弾性波の周波数が単一の場合でなく、周波数条件に合う複数のずり弾性波を同時に励起し、その合算としての振動振幅が図4の条件を満たす場合でも実現できる。
1つの周波数でのずり弾性波の励振では、流速が最大値を取るには、以下の式(29)
【0090】
【数23】
【0091】
の条件が必要であったが、複数のずり弾性波を同時に励起する場合には、超音波パルス送波時点での「振幅和」が上記条件を満たせばよいことになる。
このことを使うと、例えば、周波数条件の式(19)(式(1)と等しい)に対して、m=0の周波数で振動振幅ξ0,0、m=1の周波数で振動振幅ξ0,1として、二つの周波数の変位振幅の初期位相を最大振幅時の変位振幅が同相で重なるように選ぶと、流速最大になる振幅条件は、以下の式(30)のように書き直すことができる。
【0092】
【数24】
【0093】
このような複数の周波数を同時に使う利点を以下に示す。
<1>ずり弾性波の周波数が高いほど、より高い空間分解能を持つ画像が得られるが、ずり弾性波の周波数を高めると、ずり弾性波の減衰が大きくなり、このため大きな振動振幅が得にくく、推定流速が最大になる振幅条件を満たすことが困難になる。しかし、減衰の小さな低い周波数(振動振幅:ξ0,0)と映像化のための高い周波数(振動振幅:ξ0,1)を同時に励起すると、振幅条件が式(30)のように緩和されるので、高い周波数を持つずり弾性波に必要な振動振幅は、ξ0,0だけ小さなものでよいことになる。
<2>このように複数の周波数を持つずり弾性波を、位相を合わせて同時に励起することは、振動振幅に予めバイアスをかけることに相当しているので、振動振幅の小さな高い周波数を持つずり弾性波の波面であっても、複数の周波数を同時に励振する本方法を用いることで感度よく再生することができる。
【0094】
(3)本実施形態では、測定対象を加振器106にて加振させたが、ずり弾性波を生じさせる手段は加振器106に限られない。超音波プローブ103を加振器106と一体化させることもできる。
また、既存の超音波プローブ103に含まれている複数の超音波トランスデューサ202のうちの一つから、音響放射圧法を用いた強力な超音波を発生させることで、空間分割にて、超音波プローブ103単体でずり弾性波を発生させることができる。
更に、超音波プローブ103を、音響放射圧法を用いた強力な超音波を発生させる時間と、画像再生用の超音波パルスを発生させる時間とで交互に切り替えることで、時分割にて、超音波プローブ103単体でずり弾性波を発生させることができる。
すなわち、ずり弾性波を生じさせる手段の上位概念として、ずり弾性波発生部と総称できる。
【0095】
本実施形態では、超音波映像システム101を開示した。
硬さを測定したい対象物に対し、既存の超音波診断装置104を用いてカラーフロー画像を得る。その際、加振器106で、超音波パルスのバースト周波数に対しn/4(nは1以上の奇数)倍の周波数の微小な振動を対象物に与えて、ずり弾性波を生じさせる。すると、超音波診断装置104の表示部109には、ずり弾性波によって対象物の硬さに応じた縞模様がずり弾性波検出画像として現れる。更に、このずり弾性波検出画像データに所定の演算処理を施すことで、ノイズを減じたずり弾性波表示画像を得ることができる。
このように本実施形態によれば、比較的簡単な装置の追加で、容易に測定対象の硬さを測定することができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、更にはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行するためのソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の揮発性あるいは不揮発性のストレージ、または、ICカード、光ディスク等の記録媒体に保持することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0097】
101…超音波映像システム、102…被験者、103…超音波プローブ、104…超音波診断装置、105…弾性波駆動回路、106…加振器、107…CFI画像処理装置、108…表示装置、109…表示部、201…発振器、202…超音波トランスデューサ、203…分周器、204…第一マルチプレクサ、205…第二マルチプレクサ、206…第一乗算器、207…第二乗算器、208…同期発振器、209…第一A/D変換器、210…90°移相器、211…第二A/D変換器、212…演算処理部、301…第一サンプルバッファ、302…第二サンプルバッファ、303…Bモード画像処理部、304…映像処理部、305…ノイズ除去演算処理部、306…流速データ演算部、801…CPU、802…ROM、803…RAM、804…不揮発性ストレージ、805…操作部、806…USBインターフェース、807…バス、901…生体組織、902…流速画像抽出部、903…Bモード画像抽出部、904…振幅条件合致画像抽出部、905…ずり弾性波波面画像構成部、906…ずり弾性波波長推定部、907…ずり弾性波速度推定部、908…再生画像重ね合わせ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】