特表-15156329IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2015-156329熱帯熱マラリア原虫感染症の検査及び診断薬、並びに検査及び診断キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年10月15日
【発行日】2017年4月13日
(54)【発明の名称】熱帯熱マラリア原虫感染症の検査及び診断薬、並びに検査及び診断キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/547 20060101AFI20170324BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20170324BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20170324BHJP
【FI】
   G01N33/547
   G01N33/531 A
   G01N33/531 Z
   G01N33/569 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】28
【出願番号】特願2016-512763(P2016-512763)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-80399(P2014-80399)
(32)【優先日】2014年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
【住所又は居所】群馬県前橋市荒牧町四丁目2番地
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(72)【発明者】
【氏名】奥 浩之
【住所又は居所】日本国群馬県前橋市荒牧町四丁目2番地 国立大学法人群馬大学内
(72)【発明者】
【氏名】狩野 繁之
【住所又は居所】日本国東京都新宿区戸山1−21−9 301
(72)【発明者】
【氏名】矢野 和彦
【住所又は居所】日本国東京都北区滝野川1−32−5 201
(57)【要約】
熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料、及びブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料、及び
ブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬。
【化1】
Xはハロゲンまたは-OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【請求項2】
前記ブロッキング剤は、スキムミルクである、請求項1に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬。
【請求項3】
熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料、及び
ブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査キット又は診断キット。
【化2】
Xはハロゲンまたは-OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【請求項4】
前記ブロッキング剤は、スキムミルクである、請求項3に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査キット又は診断キット。
【請求項5】
免疫測定用固相上での、免疫反応による、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法であって、
前記免疫測定用固相及び熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料を、反応溶液中0.1〜10重量%のブロッキング剤でブロッキングする工程、及び、
前記抗体検査材料を、熱帯熱マラリア原虫感染症の被験者の試料と反応させる工程を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【化3】
Xはハロゲンまたは-OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【請求項6】
前記ブロッキング剤は、スキムミルクである、請求項5に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【請求項7】
前記免疫測定用固相は、親水化処理された固相である、請求項5又は6に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【請求項8】
前記免疫測定用固相は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン又は環状ポリオレフィンを樹脂成分とする固相である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【請求項9】
前記免疫測定用固相は、U底マイクロタイタープレート又はV底マイクロタイタープレートである、請求項5〜8のいずれか一項に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査薬又は診断薬に関する。より詳しくは、ヒトおよび他の動物の血液試料中の熱帯熱マラリア原虫の抗体価を測定することができる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質を含む抗体検査材料、及びそれを用いた熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは地球上に於いて最も重大な原虫感染症の一つである。熱帯地域と亜熱帯地域の流行地域を中心に、毎年3億人の感染者と200万人以上の死亡者が報告されている。また近年は、地球規模での経済活動の拡大により人や物資の移動が盛んになってきている。これに伴い、日本人渡航者が流行地で感染する例や、流行地から日本への入国者が国内で発症する輸入マラリアの症例が、1980年代より急激に増えている。このためマラリア対策は、流行地のみならず日本に於いても緊急の課題となっている。
【0003】
ヒトにマラリアを引き起こすPlasmodium属の寄生原虫は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、および一部のサルマラリア(Plasmodium knowlesiなど)の5種類である。原虫を媒介する蚊の刺咬により体内に入ったマラリア原虫は血中から速やかに肝細胞に侵入し(一次肝臓内ステージ)、肝細胞内で分裂・増殖してから血中に放出され、赤血球内に侵入して分裂増殖を繰り返し(赤血球内サイクル)、増殖した原虫は他の蚊によってさらに伝搬されてゆく。マラリアによる発熱の症状は赤血球内サイクルによって引き起こされる。特に熱帯熱マラリアは他の4種に比較して治療が遅れると重症化と死亡の危険をもたらす。
【0004】
またマラリアは健康問題のみならず、アフリカ諸国での経済活動の停滞と社会不安の一因ともなっている。流行地に於ける近年の感染者の増加は、熱帯雨林開発や温暖化との関連も指摘され、International Panel on Climate Change報告(1996 & 1998)によると地球温暖化の場合2℃の温度上昇で5000-8000万人の増加が予測されている。そのため、第二次大戦後にDDT散布と衛生対策によって根絶したはずの日本を含む温帯地域においても、マラリア再流行が懸念されている。
したがって、マラリア感染を検出したりマラリアワクチンの効果を確かめたりするための血清抗体価を簡便に測定できる試薬の開発が求められている。
【0005】
血液中の抗マラリア原虫抗体を検出する方法として、マラリア原虫破砕物を抗原として吸着させた微粒子を用いる方法がある。
従来のヒト血清中やヒト血漿中の抗体検出を行うための免疫検査には、病原微生物の破砕溶液(粗抗原)を感作した微粒子が用いられてきた。例えば検査用微粒子の作製には、Poplanichら(非特許文献1)の報告にあるようにsoap-free polymerizationによって作製されたpoly(styrene-co-acrylic acid)微粒子の疎水性表面に粗抗原をpHコントロールで物理吸着させる方法が多く用いられてきた。
そして、この方法を利用した抗体検出キットの市販例としては、栄研化学のトキソプラズマ感染検査キット(非特許文献2〜4)やPENTAX(HOYA社に合併後、製造中止)のデング熱感染検査キット(非特許文献5,6)が知られている。
【0006】
一般にマラリア患者血清/血漿中のマラリア原虫抗原への抗体価の検出はELISA法で測定されることが多い。しかしELISA法による市販検査キットもあるが非常に高価なため(米国DRG International社、1検体50ドル)、市販品が普及しているとは言い難い。従ってマラリア流行地の病院であっても、非流行地のトラベルクリニックであっても、精密な測定機器や試薬を必要とせずに、安価(1検体1ドル)で簡便に抗体価測定が可能な技術開発は広く望まれている。
【0007】
従来の免疫検査を指向して抗原を物理吸着させた微粒子の欠点は4つの点で問題があった。すなわち、擬陽性が起きやすいこと、微粒子と抗原の結合に物理吸着を用いているためpHの最適化を必要とすること、そのためpH変化や温度変化に弱く安定性が悪いこと、ソープフリー重合で作製したポリスチレンラテックスのため実際にはpoly(styrene-co-acrylic acid)と官能基が有りながら、不安定な物理吸着のみ用いて化学結合を行っていないこと、リン酸カルシウム微粒子の場合はリン酸カルシウムの溶解しにくいpHや溶液組成においてのみ抗原を物理吸着することが可能であること。特に熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を用いた場合では顕微鏡観察では比較的特異性が高いものの(非特許文献1)、目視観察と多検体処理を長所とするマイクロタイター法では擬陽性を示しやすいことが問題(群馬大名誉教授 佐藤久美子博士・鈴木守博士らが1990-2000年にかけて行った研究結果)であった。
【0008】
他方、物理吸着ではなく化学結合による、ペプチドや酵素の結合した微粒子の作製法が報告されている。一つはSafranjら(非特許文献7)の報告にあるように抗原モノマー(抗原ペプチドのN端をmethacryloyl化)と微粒子形成モノマー(例えばDiethylene Glycol Dimethacrylate, 新中村化学工業株式会社, 2G)を直接共重合する方法がある。
【0009】
従来の化学結合によってペプチドや酵素を結合させた微粒子は、抗原モノマーが重合反応時の溶媒(ethyl propionateやethyl acetateなど疎水性有機溶媒が最適)に溶解できない場合は均質な球状微粒子が得られない、実際の免疫反応も患者と正常血清の判別する凝集像が得られないという問題があった。すなわち抗原ペプチドに一般的な、水溶性の高い側鎖を有するアミノ酸残基が多く含まれるペプチド配列を用いて直接抗原微粒子を重合させるのは困難であった。
【0010】
これまでに、本発明者らは、活性エステル基を介して微粒子表面に熱帯熱マラリア原虫の酵素であり抗原である組み替えエノラーゼ(分子量47kD)を化学結合させた検査材料を作製した。次にウサギ抗エノラーゼ血清およびウサギプレ血清を実際に判別する凝集試験を行った。しかし何れも陽性と考えられる凝集像が得られなかった。
【0011】
次に、本発明者らは、タンパク質ではなくペプチドを抗原として用いることで、ウサギ抗エノラーゼ血清およびウサギプレ血清を判別する凝集試験を行ったところ、抗血清とプレ血清を明瞭に区別する陽性凝集像と陰性凝集像を得ることに成功した。さらには患者と非患者の血清を区別することに成功し、特許出願を行った(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012-240940
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Anal. Chem. 2007, 79, 4690-4695
【非特許文献2】坪田宣之と小澤光 寄生虫学雑誌 1977, 26, 276-285
【非特許文献3】坪田宣之ら 寄生虫学雑誌 1977, 26, 286-290
【非特許文献4】小林昭夫ら 寄生虫学雑誌 1977, 26, 175-180
【非特許文献5】山本ら J. Clin. Virol. 2000, 19, 195-204
【非特許文献6】山本ら J. Virol. Methods 2002, 104, 195-201
【非特許文献7】Safranjら Radiat. Phys. Chem. 1995, Vol. 46, No. 2, pp. 203-206
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、さらに改良されたマラリア抗体価の測定技術が求められていた。
本発明は、より検出感度や特異性に優れた、熱帯熱マラリア原虫の検査薬又は診断薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる抗体検査材料、及びブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬を用いることにより、熱帯熱マラリア原虫の抗体価を効率よく測定することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下を提供する。
<1> 熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料、及び
ブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬。
【0017】
【化1】
【0018】
Xはハロゲンまたは-OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
<2> 前記ブロッキング剤は、スキムミルクである、<1>に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬。
【0019】
<3> 熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料、及び
ブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査キット又は診断キット。
【0020】
【化2】
【0021】
Xはハロゲンまたは-OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
<4> 前記ブロッキング剤は、スキムミルクである、<3>に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査キット又は診断キット。
【0022】
<5> 免疫測定用固相上での、免疫反応による、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法であって、
前記免疫測定用固相及び熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料を、反応溶液中0.1〜10重量%のブロッキング剤でブロッキングする工程、及び、
前記抗体検査材料を、熱帯熱マラリア原虫感染症の被験者の試料と反応させる工程を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【0023】
【化3】
【0024】
Xはハロゲンまたは-OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
<6> 前記ブロッキング剤は、スキムミルクである、<5>に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【0025】
<7> 前記免疫測定用固相は、親水化処理された固相である、<5>又は<6>に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
<8> 前記免疫測定用固相は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン又は環状ポリオレフィンを樹脂成分とする固相である、<5>〜<7>のいずれかに記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
<9> 前記免疫測定用固相は、U底マイクロタイタープレート又はV底マイクロタイタープレートである、<5>〜<8>のいずれかに記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬を用いることにより、熱帯熱マラリア原虫の抗体価を効率よく測定することができる。
本発明の検査薬又は診断薬は、検出感度・特異性に優れ、例えば、クリニックを訪れた発熱患者への感染の有無を確かめる迅速診断キットとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】熱帯熱マラリア原虫の組み換えエノラーゼを固定化した微粒子による、ウサギ抗エノラーゼ血清及びウサギプレ血清を測定した凝集試験の結果を示す図(写真)である。(A)はウサギ抗エノラーゼ血清の測定結果、(B)はウサギプレ血清の測定結果を示す。
図2】熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を固定化した微粒子による、熱帯熱マラリアの患者血清及び日本国内に住んでいるマラリア既往のない健康なボランティアの血清を測定した凝集試験の結果(スキムミルク0%)を示す図(写真)である。(A)は熱帯熱マラリアの患者血清の測定結果、(B)は健康なボランティアの血清の測定結果を示す。
図3】熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を固定化した微粒子による、熱帯熱マラリアの患者血清及び日本国内に住んでいるマラリア既往のない健康なボランティアの血清を測定した凝集試験の結果(スキムミルク0.05%)を示す図(写真)である。(A)は熱帯熱マラリアの患者血清の測定結果、(B)は健康なボランティアの血清の測定結果を示す。
図4】熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を固定化した微粒子による、熱帯熱マラリアの患者血清及び日本国内に住んでいるマラリア既往のない健康なボランティアの血清を測定した凝集試験の結果(スキムミルク0.25%)を示す図(写真)である。(A)は熱帯熱マラリアの患者血清の測定結果、(B)は健康なボランティアの血清の測定結果を示す。
図5】熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を固定化した微粒子を用いた、熱帯熱マラリアの患者血清及び日本国内に住んでいるマラリア既往のない健康なボランティアの血清の抗体価をプロットした散布図である。
図6】熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を固定化した微粒子を用いた凝集試験及び蛍光ELISA法による、熱帯熱マラリアの患者血清及び日本国内に住んでいるマラリア既往のない健康なボランティアの血清の抗体価をプロットした散布図である。
図7】熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を固定化した微粒子による、熱帯熱マラリアの患者血清及び日本国内に住んでいるマラリア既往のない健康なボランティアの血清を測定した凝集試験の結果(スキムミルク0.25%)について、吸光度測定を行った結果を示す図である。
図8】熱帯熱マラリアの患者血清(1:128希釈)と反応させた微粒子、健康なボランティアの血清(1:128希釈)と反応させた微粒子、及びPBS-tween20に懸濁した微粒子の微粒子表面をIFA法により検出した結果を示す図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【0029】
[1]熱帯熱マラリア原虫に対する抗体検査材料及び検査薬又は診断薬
本発明は、熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料、及び
ブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬に関する。
また、さらなる本発明は、熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料であって、ブロッキング剤によりブロッキングされた抗体検査材料に関する。
【0030】
【化4】
【0031】
Xはハロゲンまたは-OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【0032】
本発明者らは、前記の従来技術や本発明者らの先の発明の改良すべき点に対して解決方法をさらに考えた。すなわち、ペプチド抗原を担体として上記重合体に導入した抗原固定化微粒子は良い検査材料になったが、蛋白抗原(エノラーゼ)を上記重合体に導入した抗原固定化微粒子では目的とする結果が得られなかったため、改良を検討し、本発明を達成した。
【0033】
すなわち、本発明の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬は、微粒子に、活性エステル基とエチレングリコールユニットを有する親水性分子である上記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体から形成される微粒子を用いること;微粒子表面に固定化する抗原として、熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を利用すること;スキムミルク溶液等のブロッキング剤を用いることを特徴とするものである。
本発明で用いる抗体検査材料は、熱帯熱マラリア患者の血清抗体の測定において、検出感度及び特異性に優れる。したがって、熱帯熱マラリア感染を検査又は診断するための検査薬又は診断薬及び検査キット又は診断キットとして有用である。
【0034】
本発明の検査薬又は診断薬には、本発明で用いる抗体検査材料及びブロッキング剤以外に、バッファー(緩衝液)等、当業者に公知の検査薬又は診断薬に用いられている各要素によって構成することができる。
【0035】
本発明を適用できると考えられる製品として、以下のものを挙げることができる。
(1)マラリア疑いでクリニックを訪れた発熱患者への感染の有無を確かめる診断キット。
抗体検出検査IFA法の代替用。IFA法は手間がかかるため疫学調査以外にあまり使われなくなり、現在は抗原検出キットである金微粒子標識抗体とイムノクロマト法が多用されている。本発明を実用化すると、イムノクロマト法では得られない抗体価の情報から免疫状態や過去の感染履歴を診断することができる。
【0036】
(2)熱帯熱マラリアの感染履歴を検出する、診断キット。
例えば、流行地から帰国した際の健康診断、流行地住民へのマラリア対策。過去1年以内の感染の有無を診断する。
WHOによって標準化された抗体価測定法IFA法は熟練者による一日の操作と顕微鏡観察が必要なため実施機関が少ない。蛍光顕微鏡や蛍光標識抗体を用いるため、設備や試薬の維持も簡単ではない。また近年の蛍光顕微鏡の検出感度向上によって擬陽性が出やすい。そのため日本国内でもあまり使われなくなった。
【0037】
(3)輸血用血液によるマラリア二次感染の防止に用いる、診断キット。
日本では実施されないが、輸血用血液の検査にマラリア感染履歴を診断する抗体価測定が行われている。
【0038】
(4)マラリア診断が確定後、ベッドサイドにおいて投薬量を決めるための診断キット。
【0039】
(5)流行地の疫学調査用抗体価測定キット。
本発明は、多検体処理に優れている。また、陰性であることをはっきり診断できる点でも優れている。例えばマラリア対策の進んでいる流行地には患者数がとても少ない。フィリピンにおいても年間6000名の患者と大きく減少している。しかし根絶のためには多くの流行地住民から血清採取と測定を数十年の長期にわたって行う必要がある。ほとんどの検体が陰性であるため、数少ない陽性反応と簡単に区別できることが重要になっている。例えば、顕微鏡によるIFA法やギムザ染色したスライドグラス上の血液塗抹標本赤を観察する方法は、陽性の診断よりも陰性の診断に時間がかかってしまう大きな欠点がある。
【0040】
(粗抗原)
熱帯熱マラリア原虫の粗抗原は、公知の方法(例えば、『マラリア学ラボマニュアル』(田辺和裄・脇誠治・小島莊明・北潔 編、菜根出版 発行、東京2000年)を参照することができる)にしたがって調製することができる。
具体的には、例えば、ヒト赤血球を用いて培養、単離した熱帯熱マラリア原虫を氷冷下、界面活性剤によって破壊し、遠心後の上清を粗抗原タンパク質抽出液とすることができる。
担体に固定化されるタンパク質のサイズは、通常、10〜3000kD程度であり得る。
【0041】
(重合体)
熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を固定化する担体は、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体からなる微粒子である。
【0042】
【化5】
【0043】
Xはハロゲン(塩素、フッ素、臭素等)または-OYを示し、ここでYは、アルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲン(塩素、フッ素、臭素等)で置換されていてもよい。
【0044】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基及びsec−ブチル基などの基が挙げられ;前記芳香族基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基などの基が挙げられ;前記ピリジル基としては、例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基及び4−ピリジル基などの基が挙げられ;前記キノリル基としては、例えば、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基及び8−キノリル基などの基が挙げられ;前記ベンゾオキサゾール基としては、例えば、2−ベンゾオキサゾール基などが挙げられ;前記ベンゾチアゾール基としては、例えば、2−ベンゾチアゾール基などが挙げられ;前記ベンゾトリアゾール基としては、例えば、1−ベンゾトリアゾール基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基、3−ピリジル基、8−キノリル基、スクシンイミド基(OSu基)、2−ベンゾチアゾール基、及び1−ベンゾトリアゾール基(OBt基)が、活性エステルの活性がより高いという点で好ましい。
【0045】
重合方法は、通常のラジカル重合によって行うことができ、放射線(γ線)や重合開始剤を用いる方法が例示される。
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などを使用することができる。
重合体の反応収率は、通常90%以上でありうる。そのため、重合体における化合物(I)と化合物(II)との組成比は仕込み比によって決めることができる。本発明で用いる際の重量割合は、通常70:20〜99:1程度が好ましく、さらには80:20程度が好ましい。
【0046】
溶媒は、各化合物を溶解し、重合反応を進行させうる溶媒であればよいが、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸、プロピオン酸、アセトン、メチルエチルイソブチルケトン(MIBK)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、およびこれらの混合溶媒などが例示される。
【0047】
重合体が形成する微粒子の粒径は0.1〜10μmが好ましい。なお、化合物(I)、化合物(II)はそれぞれ複数種類重合に使用してもよい。
【0048】
微粒子表面への抗原の固定化は微粒子の活性エステル基の-OYと抗原のアミノ基の反応により行うことができる。抗原のアミノ基は末端のアミノ基でもよいし、側鎖のアミノ基でもよい。
微粒子への抗原の導入割合は好ましくは重量比として0.01〜2%である。
微粒子への抗原の固定化は、例えば、粗抗原溶液と微粒子を炭酸バッファー等のバッファー中で2〜40℃、8〜48時間反応することで行うことができる。
【0049】
[2]診断及び検査キット
本発明は、本発明で用いる抗体検査材料及びブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査キット又は診断キットに関する。
【0050】
(ブロッキング剤)
本発明の検査キット又は診断キットは、スキムミルク溶液等のブロッキング剤を用いることを特徴とするものである。
本発明の検査キット又は診断キットにおいて使用するブロッキング剤には、BSA(ウシ血清アルブミン)、ゼラチン、スキムミルク、血清(ウシ胎児血清、ウマ血清等)、PVP(Polyvinyl Pyrolidone)の少なくとも1種が含まれる。中でも、スキムミルクが好ましい。これらを、界面活性剤(Tween 20など、非イオン界面活性剤が好ましい)と組み合わせて使用することができる。組み合わせる界面活性剤は、ブロッキング反応時の反応溶液中において、0.05〜0.3重量%の範囲内にあることが望ましい。中でも、スキムミルクと非イオン界面活性剤の組み合わせが好ましい。
スキムミルクの場合、ブロッキング剤は、ブロッキング反応時の反応溶液中において、全体で0.1〜10重量%の範囲内にあることが望ましい。好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.25〜2重量%、さらに好ましくは1〜2重量%の範囲内である。0.1重量%を下回ると、凝集像が明確にならない傾向がある。10重量%を上回ると、観察される抗体価が低下する傾向にある。
スキムミルク以外の場合の好ましい濃度は、以下のように例示される。
BSA(牛血清アルブミン)
0.3〜3%溶液として使用。
ゼラチン
2%溶液として使用。
血清(ウシ胎仔血清、ウマ血清)
10%溶液として使用。
ブロッキング剤を2種以上混合し、混合ブロッキング剤として用いることもできる。混合ブロッキング剤は、以下のように例示される。
スキムミルク+BSA
フィッシュゼラチン+スキムミルク
PVP(Polyvinyl Pyrolidone)+BSA
これらは何れも、界面活性剤を組み合わせて使用することができる。例えば、0.05〜0.3%濃度Tween 20を5%スキムミルクと組合せて使用できる。
【0051】
ブロッキングは、例えば、抗体検査材料にブロッキング剤を添加し、2〜40℃、1〜24時間反応することにより、行うことができる。また、ブロッキングを免疫測定用固相上で行うことにより、免疫測定用固相及び抗体検査材料を、同時にブロッキングすることができ、好ましい。
【0052】
本発明の検査キット又は診断キットには、本発明で用いる抗体検査材料及びブロッキング剤以外に、バッファー(緩衝液)等、当業者に公知の検査キット又は診断キットに用いられている各要素によって構成することができる。
【0053】
[3]診断及び検査方法
本発明で用いる抗体検査材料により、試料中の熱帯熱マラリア原虫に対する抗体を検出することができる。
すなわち、本発明の検査方法又は診断方法は、免疫測定用固相上での、免疫反応による、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法であって、
前記免疫測定用固相及び本発明で用いる抗体検査材料を、反応溶液中0.1〜10重量%のブロッキング剤でブロッキングする工程、及び、
抗体検査材料を、熱帯熱マラリア原虫感染症の被験者の試料と反応させる工程を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法に関する。
また、さらなる本発明は、免疫反応による、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法であって、
本発明で用いる抗体検査材料を、反応溶液中0.1〜10重量%のブロッキング剤でブロッキングする工程、及び、
抗体検査材料を、熱帯熱マラリア原虫感染症の被験者の試料と反応させる工程を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法に関する。
【0054】
本発明で用いる抗体検査材料により、例えば、被験者の血液試料中のマラリア原虫由来タンパク質に対する抗体を検出でき、マラリアの診断・感染履歴の調査やワクチン投与後の抗体価維持の確認を検査する材料として利用することができる。
試料は、被験者の血液、血清、血漿等を使用することができる。
免疫測定反応は、例えば、本発明で用いる抗体検査材料と熱帯熱マラリア原虫感染症の被験者の試料とを混合し、15〜40℃、4〜24時間反応することにより、行うことができる。
免疫測定用固相の形状は、実施すべき免疫検定の種類に応じて、シャーレ、マイクロタイタープレート、キュベット、フィルム、ビーズ、多孔性フィルター、細径チューブ、棒、針等であり得る。マイクロタイタープレートとしては、U底マイクロタイタープレート又はV底マイクロタイタープレートを好ましく例示することができる。
本発明で用いる抗体検査材料を使用する場合、固相がプラズマ処理、化学処理等により親水化処理されていることが、安定な陽性の凝集像が得られるため好ましい。
また、材質としては、通常免疫検定に用いられる材料による固相、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン又は環状ポリオレフィン等を樹脂成分とする固相を用いることができる。中でも、ポリスチレン製の固相を用いると、安定な陽性の凝集像が得られ、好感度で高い特異性が得られるため好ましい。
【0055】
検出方法は結合反応を検出する方法である限り特に制限されないが、ELISA法、凝集反応によるアッセイ、蛍光検出法、発光検出法、可視紫外吸光検出法、電気化学的検出法などが挙げられる。この中では、本発明の抗原を固定化した高分子微粒子を用いた凝集反応によるアッセイが好ましい。
抗原が抗体と反応することにより微粒子が凝集し、目視により抗体の検出が可能である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
はじめに熱帯熱マラリア原虫の粗抗原をジエチレングリコールジメタクリレートポリマー微粒子へ化学修飾した微粒子を作製した。
<粗抗原の調製>
粗抗原の調製法は標準的な方法によって行った。具体的には、『マラリア学ラボマニュアル』(田辺和裄・脇誠治・小島莊明・北潔 編、菜根出版 発行、東京2000年)の41-59ページおよび124ページの記載を参考にして行った。すなわちヒト赤血球を用いて培養、単離したPlasmodium falciparum原虫を氷冷下、界面活性剤によって原虫を破壊した。遠心後の上清を粗抗原抽出液とした(ブラッドフォード法によって測定されたタンパク質濃度1.9mg/mL)。
【0058】
抗原を固定化する重合体の調製は、特開2012−240940に記載の方法に基づいて行った。具体的には、以下のように調製した。
<ポリマーの重合>
下記化合物(i)(市販品、中村化学製)0.4gと化合物(ii)(メタクリル酸クロリドとHOSu(N-ヒドロキシスクシンイミド)の反応生成物を使用)を0.1gを溶媒プロピオン酸エチル10mL中、室温25℃で3時間γ線照射下(30kGy)で反応させ、重合反応を行った。
【0059】
【化6】
【0060】
<粗抗原固定化微粒子の調製>
粗抗原溶液(タンパク質量0.4mg)と微粒子80mgをpH8.6炭酸バッファー8.0mL中で24℃12時間反応した。
すなわち、微粒子(粒径1000nm)表面の活性エステル基とタンパク質のアミノ基が反応することでアミド基を生成、タンパクを微粒子表面に固定する(製造例1)。
【0061】
<抗原タンパク質固定化微粒子の調製>
組み換えエノラーゼを用いた以外は上記と同様にして、活性エステル基を介して100mgの微粒子表面に熱帯熱マラリア原虫の酵素であり抗原である組み替えエノラーゼ(大腸菌で作製、単離精製のために6-HisタグをN端に結合している)0.6mg(Hisタグのため天然型より少し大きな分子量、約50kD付近に観察される)を化学結合させた検査材料を作製した(製造例2)。
【0062】
<比較例1>
(凝集試験)
上記製造例2の検査用微粒子を用いた抗体価検査には96穴U字型マイクロプレートを使用した。ウサギ抗エノラーゼ血清およびウサギプレ血清を判別する凝集試験を行った。各ウェルに2倍希釈系列(1/16-1/2048)で血清をPBS-tween20で希釈し、血清25μLに抗原固定化微粒子0.1 mg/mL, 25μLを滴下した。12時間後に反応像を観察、凝集反応のみられる最大の希釈倍率をもって抗体価とした。
しかし何れも陽性と考えられる凝集像が得られなかった(図1;(A)はウサギ抗エノラーゼ血清、(B)はウサギプレ血清の結果を示す)。
【0063】
<比較例2>
(凝集試験)
上記製造例1の検査用微粒子を用いた抗体価検査には96穴U字型マイクロプレートを使用した。各ウェルに2倍希釈系列(1/32-1/65536)で血清をPBS-tween20で希釈し、血清50μLに抗原固定化微粒子0.1 mg/mL, 50μLを滴下した。4〜6時間後に反応像を観察、凝集反応のみられる最大の希釈倍率をもって抗体価とした。
検査用の血清には、1985年に群馬大学医学部の鈴木守教授らの疫学調査によって採取されたブラジル流行地における熱帯熱マラリアの患者血清、および日本国内に住んでいるマラリア既往のない健康なボランティアの血清各10検体を用いた。
反応の結果、すべての検体で陽性または擬陽性の凝集像を示すことがわかった(図2;(A)が熱帯熱マラリアの患者血清、(B)が健康なボランティアの血清の結果である)。
【0064】
<比較例3及び実施例1〜5>
(凝集試験)
次に、免疫反応においては、用いる容器や材料にブロッキング剤による表面処理が行われていることに着目した。ウェルに血清を加えた後、0.05%濃度となるようにスキムミルクを添加し、25℃で12時間反応した。それ以外は、上記比較例2と同様に試験した。しかし今度は抗体価を読み取るのが難しい凝集像を示した(図3:(A)が熱帯熱マラリアの患者血清、(B)が健康なボランティアの血清の結果である)(比較例3)。
【0065】
少しずつスキムミルク濃度を上げていった結果、0.25%スキムミルク濃度においてマラリア患者と日本人ボランティアについて全く異なる凝集像をしめすことがわかった(図4:(A)が熱帯熱マラリアの患者血清、(B)が健康なボランティアの血清の結果である)(実施例1)。抗体価としてプロットするとマラリア患者と日本人ボランティアを非常にはっきり区別できることを明らかにした(図5)(実施例2)。
【0066】
また、スキムミルク濃度を上げすぎると、観察される抗体価が少しずつ低下することがわかった。さらに、マイクロタイター法に用いる96穴マイクロプレートの材質を塩化ビニルのプレートを用いると低めの抗体価を示すことがわかった。また親水化処理(プラズマ処理、化学処理)をしていないプレートを用いると、陽性の凝集像が崩れやすいこと(目視では陰性のように見える)がわかった。すなわち、96穴マイクロプレートは親水化処理したポリスチレンプレートが最も安定な陽性凝集像、すなわち高感度で高い特異性を示した。
【0067】
この検出方法を従来法の一つであり最も高感度な蛍光ELISA法と比較した。
ELISA法は標準的な方法によって行った。具体的には、『マラリア学ラボマニュアル』(田辺和裄・脇誠治・小島莊明・北潔 編、菜根出版 発行、東京2000年)の124-126ページの記載を参考にして行った。ただしHRP標識抗ヒトIgGの代わりにalkaline phosphatase標識抗ヒトIgGを、酵素基質にABTSの代わりに4-methyl umbelliferyl-phosphateを、蛍光測定用プレートリーダーにDYNATECH LABORATORIES製のMicro FLUOR Readerを用いた。
プロット作成においては、ELISAデータのうち、1:256希釈時に測定された蛍光強度値をプロットした。その結果、すべての検体において直線的で良好な相関を示すことがわかった(図6;●が熱帯熱マラリアの患者血清、○が健康なボランティアの血清の結果である)(実施例3)。
【0068】
凝集像を定量化するために、見かけの吸光度(655nm)をマイクロプレートリーダーによって測定した(図7;各サンプルにおいて、左から希釈率(1/32-1/65536)が低いものの数値を示す。)(実施例4)。その結果、陽性像においては655nmの赤色光の透過度が大きく(見かけの吸光度が低く)なるとわかった。
さらに本発明により得られる陽性凝集像が、血清中の特異抗体によることを確認するために、微粒子表面をIFA法によって測定した。熱帯熱マラリアの患者血清(1:128希釈)と反応した微粒子、健康なボランティアの血清(1:128希釈)と反応した微粒子、及びPBS-tween20に懸濁した微粒子を試料として用いた。二次抗体はFITCラベルanti-human IgG(1:200希釈)を用いた(図8)(実施例5)。その結果、患者血清と微粒子の反応においてのみ、微粒子表面上にヒトIgG抗体(熱帯熱マラリア原虫への特異抗体)を検出した。患者ではないボランティア血清や血清希釈液(PBS-tween20)のみを反応させた場合は、微粒子表面上にヒトIgG抗体を検出しなかった。
【0069】
本発明で作製した微粒子は、イムノクロマト法による迅速診断キットへ応用出来ることも優れた点である。すなわち、多孔質フィルターペーパーに滴下吸着する(埋め込む)ことで、Dip-stickタイプの簡易検査キットを作成できる。Dip-Stickは精密な抗体価測定に不適であるが、短時間(〜10分)で検出可能な点が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬は、医療、診断、研究などの分野で有用である。より具体的には、これまでに市販例の無かった熱帯熱マラリア感染の感染や既往歴の診断に適した微粒子検査材料及び熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬を提供することができる。
図5
図6
図1
図2
図3
図4
図7
図8

【手続補正書】
【提出日】2016年1月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料、及び
ブロッキング反応時の反応溶液中において、0.25〜10重量%で使用される、スキムミルクを含むブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬。
【化1】
Xはハロゲンまたは−OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【請求項2】
前記ブロッキング剤は、スキムミルクからなる、請求項1に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査薬又は診断薬。
【請求項3】
熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料、及び
ブロッキング反応時の反応溶液中において、0.25〜10重量%で使用される、スキムミルクを含むブロッキング剤を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査キット又は診断キット。
【化2】
Xはハロゲンまたは−OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【請求項4】
前記ブロッキング剤は、スキムミルクからなる、請求項3に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査キット又は診断キット。
【請求項5】
免疫測定用固相上での、免疫反応による、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法であって、
前記免疫測定用固相及び熱帯熱マラリア原虫の粗抗原と、下記化合物(I)と化合物(II)の重合反応により得られる重合体とを反応させて得られる、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原タンパク質が該重合体に固定化されている抗体検査材料を、反応溶液中0.25〜10重量%のスキムミルクを含むブロッキング剤でブロッキングする工程、及び、
前記抗体検査材料を、熱帯熱マラリア原虫感染症の被験者の試料と反応させる工程を含む、熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【化3】
Xはハロゲンまたは−OYを示し、ここでYはアルキル基、芳香族基、ピリジル基、キノリル基、スクシンイミド基、マレイミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、又はベンゾトリアゾール基を示し、これらの基における水素原子は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【請求項6】
前記ブロッキング剤は、スキムミルクからなる、請求項5に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【請求項7】
前記免疫測定用固相は、親水化処理された固相である、請求項5又は6に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【請求項8】
前記免疫測定用固相は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン又は環状ポリオレフィンを樹脂成分とする固相である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【請求項9】
前記免疫測定用固相は、U底マイクロタイタープレート又はV底マイクロタイタープレートである、請求項5〜8のいずれか一項に記載の熱帯熱マラリア原虫感染症の検査方法又は診断方法。
【国際調査報告】