特表-15005443IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年1月15日
【発行日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】内服組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/202 20060101AFI20170210BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20170210BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20170210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170210BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170210BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20170210BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20170210BHJP
【FI】
   A61K31/202
   A61K31/12
   A61K31/047
   A61P43/00 121
   A61P25/28
   A61P43/00 111
   A61K9/48
   A61K47/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2015-526411(P2015-526411)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-144388(P2013-144388)
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
【住所又は居所】東京都墨田区本所1丁目3番7号
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】竹中 玄
【住所又は居所】東京都墨田区本所1丁目3番7号 ライオン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】石原 康晴
【住所又は居所】東京都墨田区本所1丁目3番7号 ライオン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】一柳 直希
【住所又は居所】東京都墨田区本所1丁目3番7号 ライオン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小圷 美聡
【住所又は居所】東京都墨田区本所1丁目3番7号 ライオン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】栗田 啓
【住所又は居所】東京都墨田区本所1丁目3番7号 ライオン株式会社内
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA56
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD46
4C076EE42H
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA05
4C206CA13
4C206CB12
4C206DA05
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZA02
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、脳機能改善機能等の種々の生理機能を発揮することのできる内服組成物を提供することを目的とする。すなわち本発明は、ドコサヘキサエン酸とカプサンチン、又はドコサヘキサエン酸とカプサンチンとルテインとゼアキサンチンを有効成分とする内服組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドコサヘキサエン酸とカプサンチン、又はドコサヘキサエン酸とカプサンチンとルテインとゼアキサンチンを含有する、内服組成物。
【請求項2】
脳機能改善組成物である、請求項1に記載の内服組成物。
【請求項3】
脳内アミロイドβ蓄積抑制組成物である、請求項1に記載の内服組成物。
【請求項4】
有効成分がドコサヘキサエン酸とカプサンチンとルテインとゼアキサンチンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の内服組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内服組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脳機能の低下に起因する症状として、アルツハイマー病等の認知症が挙げられる。アルツハイマー病患者は現在200万人程度であり、2045年には400万人まで増加すると言われている。高齢化社会に向かう日本においては、極めて大きな社会問題である。アルツハイマー病の治療薬はいくつかあるものの、根本的な治療法がないのが現状である。
【0003】
アルツハイマー病の原因はいまだ解明されていないものの、その発症にはアミロイドβタンパク質が密接にかかわっており、根本的治療を目指し、アミロイドβ(Aβ)の生成、蓄積の抑制が必要であると考えられている。そのために、β、γセクレターゼの阻害剤やAβの中和抗体、またAβの分解酵素であるネプリライシンの活性化など様々な方法による治療薬の開発が進められているが、いまだ満足のいくものは得られていない。
【0004】
その理由として、アルツハイマー病と診断される頃には、脳内のAβの蓄積がすでに相当進行し脳神経の死滅が起こってしまっているため、治療が困難な状態になっていることが挙げられる。従って、神経細胞の消失前に予防的にAβを除去し、神経細胞死に対して予防的に機能する薬剤及び手法の開発、あるいは、例え死滅したとしても脳に存在する神経幹細胞を増殖、分化させた上で神経細胞数を維持、回復させる薬剤及び手法の開発が求められている。
【0005】
特許文献1には、カロテノイド、アスコルビン酸類及びトコフェロール類のいずれか2種以上を配合した抗酸化剤が試験管内で抗酸化能を発揮することが記載されている。神経細胞の障害に関しては、酸化ストレスが関わっていると考えられている。
【0006】
また、ドコサヘキサエン酸(DHA)の効果として、血中脂質低下、抗血栓作用などの他に脳機能低下の予防効果があるとの報告は多く、またDHAとルテインを組み合わせることによる脳機能の低下抑制効果がある(特許文献2)ことが報告されている。しかしながら、DHAの介入研究のメタ分析からはその有効性については立証されていない。
【0007】
非特許文献1には、DHAやアラキドン酸などに神経幹細胞の増殖効果があることが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Genes to Cells,Volume 16,Issue 7,pages 778−790,July 2011
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−179632号公報
【特許文献2】国際公開第2006/116755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の抗酸化能は試験管内での抗酸化能であるが、試験管内での抗酸化能と脳機能や脳内アミロイドβ蓄積との関連性は知られていない。このような理由から、特許文献1に記載の抗酸化剤が生体内で効果的な脳機能改善剤であるとは言いきれない。また非特許文献1では、生体の脳機能に対する作用は明らかにされていない。
【0011】
本発明は、脳機能改善機能及び/又は脳内アミロイドβ蓄積抑制機能を発揮することのできる内服剤又は内服組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の〔1〕〜〔6〕を提供する。
〔1〕ドコサヘキサエン酸、カプサンチン、カプソルビン、フコキサンチン及びフコキサンチノールからなる群より選ばれる1種以上を有効成分とする内服剤。
〔2〕有効成分がドコサヘキサエン酸とカプサンチンとを少なくとも含む、上記〔1〕に記載の内服剤。
〔3〕脳機能改善剤である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の内服剤。
〔4〕脳内アミロイドβ蓄積抑制剤である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の内服剤。
〔5〕神経幹細胞活性化剤である、上記〔1〕に記載の内服剤。
〔6〕RAGE遺伝子発現抑制剤である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の内服剤。
【0013】
具体的には、本発明は以下の〔7〕〜〔10〕を提供する。
〔7〕ドコサヘキサエン酸とカプサンチン、又はドコサヘキサエン酸とカプサンチンとルテインとゼアキサンチンを含有する、内服組成物。
〔8〕脳機能改善組成物である、〔7〕に記載の内服組成物。
〔9〕脳内アミロイドβ蓄積抑制組成物である、〔7〕に記載の内服組成物。
〔10〕有効成分がドコサヘキサエン酸とカプサンチンとルテインとゼアキサンチンである〔7〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の内服組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、脳機能改善機能及び脳内アミロイドβ蓄積抑制機能を発揮することができる内服組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の剤又は組成物は、ドコサヘキサエン酸(DHA)及び/又はカロテノイドを含んでいてもよい。カロテノイドとしては、カプサンチン、カプソルビン、フコキサンチン、フコキサンチノール、ゼアキサンチン、ルテインが例示され、これらのうち1種又は2種以上であってもよい。なお、本明細書において、単一成分のみを含む場合を剤、2種以上の成分の組み合わせを含む場合を組成物という。
【0016】
ドコサヘキサエン酸(DHA、(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)−ドコサ−4,7,10,13,16,19−ヘキサエン酸)は、魚類などの動物、微生物(Schizochytrium属)等天然物由来でもよいし、人工的に製造したものでもよいし、遺伝子組み換えにより製造されたものでもよいし、市販品を用いてもよい。更に、様々な取得方法で得られる2種以上のDHAを組み合わせて用いてもよい。DHAは薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0017】
DHAは、遊離脂肪酸としてのDHAであってもよいし、その誘導体であってもよい。誘導体としては、トリグリセリド型DHA(TG−DHA)、リン脂質型DHAが例示される。トリグリセリド型DHAとは、トリグリセロールとDHAがエステル結合している化合物である。なおトリグリセリド型DHAにはトリグリセロール1分子あたり1分子以上の脂肪酸としてのDHAが結合することができる。トリグリセリド型DHAのうち、トリグリセロール1分子あたり2分子以上のDHAが結合しているトリグリセリド型DHAが望ましい。リン脂質型のDHAとは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン等のリン脂質にDHAが結合している化合物である。リン脂質型のDHAとしては、ホスファチジルコリン型DHA(PC−DHA)が好ましい。リン脂質型DHAのうち、リン脂質1分子あたり2分子以上のDHAが結合しているリン脂質型DHAが望ましい。リン脂質型DHAはトリグリセリド型DHAに比べ、生体吸収性、脳移行性及び酸化安定性が高いことが知られており、DHAのなかではリン脂質型DHAがより好ましい。
【0018】
カプサンチン(all−trans−カプサンチン、(3R,3'S,5'R)−3,3'−ジヒドロキシ−β,κ−カロテン−6'−オン、(3R,3'S)−3,3'−ジヒドロキシ−β,κ−カロテン−6'−オン)は、パプリカ、トウガラシなどの植物等天然物由来であってもよいし、人工的に製造されたものでもよいし、遺伝子組み換えにより製造されたものでもよいし、市販品を用いてもよい。カプサンチンは薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0019】
カプソルビン((2S,2’S,5R,5'R)−2,2'−ジヒドロキシ−κ,κ−カロテン−6,6’−ジオン、(3S,3'S,5R,5'R)−3,3’−ジヒドロキシ−κ,κ−カロテン−6,6’−ジオン)は、パプリカ、トウガラシなどの植物等天然物由来であってもよいし、人工的に製造されたものでもよいし、遺伝子組み換えにより製造されたものでもよいし、市販品を用いてもよい。カプソルビンは薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0020】
フコキサンチン(Acetic acid[(1S,3R)−3−hydroxy−4−[(3E,5E,7E,9E,11E,13E,15E)−18−[(1S,4S,6R)−4−hydroxy−2,2,6−trimethyl−7−oxabicyclo〔4.1.0〕heptane−1−yl]−3,7,12,16−tetramethyl−17−oxooctadeca−1,3,5,7,9,11,13,15−octaenylidene]−3,5,5−trimethylcyclohexyl]ester)は、昆布、ひじき、ワカメなどの褐藻類等天然物由来であってもよいし、人工的に製造されたものでもよいし、遺伝子組み換えにより得られるものであってもよいし、市販品を用いてもよい。フコキサンチンは薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0021】
フコキサンチノール((3S,3'S,5R,5'R,6S,6’S)−6’,7'−ジデヒドロ−5,6−エポキシ−5,5’,6,6’,7,8−ヘキサヒドロ−3,3’,5’−トリヒドロキシ−8−オキソ−β,β−カロテン)は、昆布、ひじき、ワカメなどの褐藻類等天然物由来であってもよいし、人工的に製造されたものでもよいし、遺伝子組み換えにより得られるものでもよいし、市販品を用いてもよい。フコキサンチノールは薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0022】
ゼアキサンチン(4−[18−(4−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル)−3,7,12,16−テトラメチル−オクタデカ−1,3,5,7,9,11,13,15,17−ノナエニル]−3,5,5−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−オール)は、下記式で表される。ゼアキサンチンは、植物(トウモロコシ等)、卵黄、動物性脂肪などの天然物由来であってもよいし、人工的に製造されたものでもよいし、遺伝子組み換えにより得られるものでもよいし、市販品を用いてもよい。ゼアキサンチンは薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0023】
ルテイン(β,ε−カロテン−3,3’−ジオール)は、高等植物(ホウレンソウ、ケール、コマツナなど)の葉緑体などの天然物由来であってもよいし、人工的に製造されたものでもよいし、遺伝子組み換えにより得られるものでもよいし、市販品を用いてもよい。ルテインは薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0024】
本発明において薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、又はパラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩等の有機塩基塩;アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸塩が挙げられる。
【0025】
上記成分のうち1種を有効成分として選択して、該有効成分を含む内服剤としてもよいし、2種以上の組み合わせを有効成分として選択して、該有効成分を含む内服組成物としてもよい。中でも、DHAとカプサンチン、又はDHAとカプサンチンとルテインとゼアキサンチンを含有する内服組成物は、脳機能改善機能、海馬へのアミロイドβ蓄積抑制機能を発揮することができるので、好ましい。
【0026】
上記成分のうち、DHA及びカプサンチンの組み合わせは、脳機能改善効果を発揮するので、脳機能改善組成物の有効成分として利用することができる。脳機能改善組成物の有効成分は、DHAとカプサンチン、又はDHAとルテインとゼアキサンチンとカプサンチンであることが好ましく、DHAとルテインとゼアキサンチンとカプサンチンとの組み合わせがより好ましい。これにより、顕著な脳機能改善効果を発揮することができる。
【0027】
脳機能は、認知機能と言い換えてもよい。脳機能は、通常、判断、計算、記憶、理解、学習、思考、言語などの脳内の情報処理によって実現する機能を包括した、脳の高次機能を表す。脳機能改善とは、上記の脳機能、すなわち認知機能が改善されることである。
【0028】
上記成分のうち、DHA及びカプサンチンは、脳内、中でも海馬でのアミロイドβの蓄積抑制効果を発揮することができるので、脳内アミロイドβ蓄積抑制剤の有効成分として利用することができる。脳内アミロイドβ蓄積抑制剤の有効成分は、DHAとカプサンチン、又はDHAとルテインとゼアキサンチンとカプサンチンであることが好ましく、DHAとルテインとゼアキサンチンとカプサンチンとの組み合わせであることがより好ましい。これにより顕著な脳内アミロイドβ蓄積抑制効果を発揮することができる。
【0029】
本発明の剤及び組成物の投与量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限は無く、また適応される被投与生体の年齢、状態などの種々の要因により適宜変えることができる。目的の効果を得るために好ましい投与量は、剤及び組成物の用途により適宜設定すればよい。
【0030】
DHAの1日当たり投与量は、50mg〜3000mgであることが好ましく、100mg〜2200mgであることが好ましい。カロテノイドの1日当たり投与量は、1日当たり0.5mg〜250mgであることが好ましく、1mg〜50mgであることがより好ましい。DHAの1日当たり投与量及びカロテノイドの1日当たり投与量が、それぞれ50mg〜3000mg及び0.5mg〜250mgであることが好ましく、100mg〜2200mg及び1mg〜50mgであることがより好ましい。DHAの含有量とカロテノイドの含有量(総量)の比率は100:1〜1:50であることが好ましく、50:1〜10:1であることがより好ましい。
【0031】
例えば、本発明の脳機能改善組成物がDHAとカプサンチン、又はDHAとカプサンチンとルテインとゼアキサンチンを有効成分とする場合、DHAの1日当たり投与量及びカロテノイドの1日当たり投与量がそれぞれ100mg〜1500mg及び1mg〜100mgであると、ヒトの認知症を予防できるので好ましく、それぞれ300mg〜1200mg及び1〜20mgであることがより好ましい。
【0032】
本発明の海馬へのアミロイドβ蓄積抑制剤がDHAを有効成分とする場合、DHAの1日当たり投与量は50mg〜3000mgであることが好ましく、100mg〜2200mgであることがより好ましい。本発明の海馬へのアミロイドβ蓄積抑制剤が1種又は2種以上のカロテノイドを有効成分とする場合、カロテノイドの1日当たり投与量はそれぞれ0.5mg〜250mgであることが好ましく、1mg〜50mgであることがより好ましい。本発明の海馬へのアミロイドβ蓄積抑制剤がDHAとカロテノイドの組み合わせを有効成分とする場合、DHAの含有量とカロテノイドの含有量(総量)の比率は、100:1〜1:50であることが好ましく、50:1〜10:1であることがより好ましい。
【0033】
DHAの含有量及び投与量は、DHAの脂肪酸組成比換算量として表してもよい。脂肪酸組成比換算量の定義は、実施例で説明するとおりである。
【0034】
本発明の組成物が2種以上のカロテノイドを含む場合、2種以上のカロテノイドの含有比率は特に限定されない。例えば、2種以上のカロテノイドがフコキサンチン、フコキサンチノール、カプソルビン及びカプサンチンの含有量の比率は、ある特定のカロテノイドを1としたときに他のカロテノイドは100倍の比率以内で組み合わせること(特定のカロテノイド:他のカロテノイドのそれぞれ=1:0を超えて100以下)が好ましく、ある特定のカロテノイドを意図したときに他のカロテノイドは10倍の比率以内で組み合わせること(特定のカロテノイド:他のカロテノイドのそれぞれ=1:0を超えて100以下)がより好ましい。
【0035】
但し、上記の投与量はほんの一例にすぎず、製剤化技術により、生体吸収性、生物学的利用率を高めた製剤の場合については、より低濃度で効果を及ぼすことから、さらに低い濃度での適用が可能である。
【0036】
本発明の組成物は、上記の成分を有効成分としていればよく、上記以外の成分と、薬理学的に許容される基剤をさらに有していてもよい。薬理学的に許容される基剤の一例としては、主に貯蔵及び流通における安定性を確保する成分(例えば保存安定剤など)が挙げられる。その他、目的の最終製品(例えば、飲食品、医薬品、医薬部外品など)を構成する諸成分から選ばれる1又は2種類以上の成分(好ましくは1〜3種類程度、より好ましくは1種類程度)を含有していてもよい。
【0037】
本発明の剤又は組成物は、そのままの形態で、最終製品として用いることもできる。また、飲食品用の添加剤、医薬用の添加剤、医薬部外品用の添加剤として用いることができる。これにより、飲食品、医薬品、医薬部外品に、各種効果を付与することができる。
【0038】
薬理学的に許容される基剤は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されない。例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、発色剤、矯味剤、着香剤、酸化防止剤、防腐剤、呈味剤、酸味剤、甘味剤、強化剤、ビタミン剤、膨張剤、増粘剤、界面活性剤などの中から、製剤に必要な諸特性(例えば、製剤安定性)を損なわないものであって、最終製品(例えば、医薬品、医薬部外品、飲食品)の剤形に応じたものを1種又は2種以上選択することができる。また、薬理学的に許容される基剤は、一酸化窒素産生抑制効果を有する他の成分であってもよい。
【0039】
本発明の剤又は組成物が薬理学的に許容される基材を含む場合、有効成分(2種以上の成分の組み合わせである場合には、合計量)の配合量は、有効量であれば特に限定されないが、通常は0.01〜80質量%の範囲である。
【0040】
本発明の剤又は組成物の投与形態は通常は口腔内投与、舌下投与などの経口投与である。
【0041】
本発明の剤又は組成物の剤形は、飲食品、医薬品及び医薬部外品のいずれとするかによって適宜決定することができ、特に限定されない。経口投与される際の剤形の例としては、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、錠剤、カプセル状(カプセル剤)、粉末状(顆粒状(顆粒剤)、細粒(散剤))、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、固形状(固形製剤)、半液体状、クリーム状、ペースト状が挙げられる。
【0042】
本発明の脳機能改善組成物(脳機能低下抑制組成物、記憶学習改善組成物)である場合の摂取対象者は、認知症等の認知症患者であってもよいが、認知症と診断されている必要はない。認知症に罹患する可能性がある対象者、認知症に罹患したくないと考えている対象者又は認知症に罹患してほしくないと第三者が考えている対象者であってもよい。また、軽度認知機能障害の患者であってもよいが、軽度認知機能障害と診断されている必要はなく、軽度認知機能障害に罹患する可能性がある対象者、軽度認知機能障害に罹患したくないと考えている対象者又は軽度認知機能障害に罹患してほしくないと第三者が考えている対象者であってもよい。対象者としては例えば、脳機能(例えば、記憶力、日常生活能力)が低下したと感じている対象者、親族にアルツハイマー病患者又は軽度認知機能障害患者がいる対象者、高齢者、記憶学習能力を改善したいと考えている対象者などが挙げられる。特段の不安などがない対象者であっても、認知症予防、軽度認知機能障害予防、脳機能低下の予防、脳機能の改善などを目的として日常的に摂取することができる。
【0043】
認知症とは、ICD−10(国際疾患分類10版)、DSM−IV(アメリカ精神医学会精神医学診断統計便覧第4版)で定義されている通りである。すなわち、正常に達した知的機能が後天的な器質性障害によって持続的に低下し、日常生活及び/又は社会生活に支障をきたすようになった状態であって、それが意識障害の無いときに見られることを意味する。通常、認知症の判断基準は以下の(1)〜(6)の症状が見られることである(認知症テキストブック/日本認知症学会編 中外医学社刊):
(1)認知症の中核は記憶障害を始めとした知的機能の障害であり、さらに失語、失行、失認及び実行機能障害などの複数の知的機能の障害がみられる;
(2)これらの知的障害は後天的な障害のため、一旦発達した知能が低下した状態がみられる;
(3)脳の器質性変化があり、脳の物質的な異常を基盤とした状態である;
(4)障害がある期間持続していることが必要である。ICD−10では「少なくとも6ヶ月以上」持続するとしている;
(5)知的障害の結果、社会生活や日常正確活動に支障をきたした状態である;
(6)急性又は一時的なものではなく、意識障害が無いときにも上記の状態が見られる。
【0044】
軽度認知機能障害(MCI)とは認知症の前駆状態であり、正常の生理的な老化過程で予想されるよりも認知機能が低下している状態である。
【0045】
本発明の脳内アミロイドβ蓄積抑制組成物は、脳内でのアミロイドβによる種々の神経細胞の障害を防ぐことにより、アルツハイマー病の発症を未然に防ぐことができる。アミロイドβは健常者でも常に生成しているが、健常者ではアミロイドβが蓄積しないようにネプリライシンなどの分解酵素などにより常にクリアランスされている。アルツハイマー病では、その生成/分解のバランスが崩れ、蓄積することが発端と考えられているが、本発明の脳内アミロイドβ蓄積抑制組成物は蓄積を抑制することができるため、アルツハイマー病の発症を抑えることができる。また、アルツハイマー病の特徴として、脳機能評価において機能低下が確認される前段階(すなわちアルツハイマー病と診断されない認知機能的には正常状態)より、脳内にはアミロイドβは蓄積していることから、アルツハイマー病と診断されない、MCI、preclinical stage(前臨床段階)のアルツハイマー病、健常範囲内における脳機能の低下を予防することができる。したがって、本発明の脳内アミロイドβ蓄積抑制組成物は、上述のアルツハイマー病、又はその前段階であるMCI、preclincal stageのアルツハイマー病、そして全くの健常者に対して、脳機能の低下を予防するための飲食品もしくは医薬品として利用できる。脳内アミロイドβ蓄積抑制剤の摂取対象者は特に限定されないが、例えば、アルツハイマー病をはじめとする種々の認知症、また軽度認知障害、また健常でありつつも日ごろ物忘れを感じている対象者、さらには集中力が続かないなどの不調を感じている対象者に適している。また、特段の問題のない対象者であっても、アルツハイマー病の予防を目的として日常的に摂取することができる。また、アミロイドβの蓄積は、加齢黄斑変性のような網膜への蓄積による眼疾患や緑内障、血管壁への蓄積による血管障害などの種々の加齢性疾患に関与しており、それらの予防のためにも摂取することができる。
【0046】
本発明の剤又は組成物の投与時期は特に限定されない。
【0047】
本発明の剤又は組成物は、また、健康食品、機能性食品、栄養補助食品(サプリメント)、特定保健用食品、医療用食品、病者用食品、乳児用食品、介護用食品、高齢者用食品等として利用することもできる。
【実施例】
【0048】
実施例1〜2及び比較例1〜3
〔3か月給餌後の受動回避試験(1)〕
6週齢のSAMP8(日本エスエルシー)に、表1に示す試料をCE−2粉末餌(日本エスエルシー)に混合し、与えた。各試料に用いた成分は、以下の通りであった:
TG−DHA:DDオイルDHA−46;日本水産株式会社。(本品のDHAは主にトリグリセリド型のDHAとして含有される。原料中に含まれる脂肪酸をすべて遊離脂肪酸としたうえで、全脂肪酸に対する該当する脂肪酸の組成比を、該当する脂肪酸の「脂肪酸組成比」と定義する。本品の場合、DHAの脂肪酸組成比は46%であった。)
カプサンチン:パプリカ由来カプサンチン20%組成物:カトラ社
ルテイン+ゼアキサンチン:マリーゴールド由来ルテイン/ゼアキサンチン混合物:10%:10%混合物:カトラ社
【0049】
ドコサヘキサエン酸の配合量は、1333mg/kg/day(脂肪酸組成比換算量で617mg/kg/day)であった。ドコサヘキサエン酸以外の成分の配合量は、各々100mg/kg/day(含有カロテノイド量では、20mg/kg/day)であった。水は自由に摂取できるようにした。餌は3日に一度交換し、3ヶ月間与え続けた。その後ステップスルー型の受動回避試験を行った。本試験は、暗所を好むマウスの習性を利用した記憶学習能の試験方法のひとつである。明室から暗室に移動してきた際に電気刺激により記憶づけをおこない、24時間後に「暗室が危険であることをどの程度覚えているか」を明室滞在時間の長さで評価する方法である。すなわち、明室滞在時間の長さが、記憶学習能の高さを表している。解析はソフトウェアShutAvoid(PanLab社)を用いた。初日の予備学習は暗室に入るまでの時間(latency)を最大2分に設定し、1分間の明室馴化後に遮蔽扉を開け、暗室移動後に扉を閉めて0.4mAの電気刺激を2秒間与えた。電気刺激後は速やかにマウスをホームケージへ戻した。2日目の本試験はlatencyを最大5分に設定し、明室に留まる時間を測定した。2日目に5分間明室に留まり続けた個体のlatencyは5分として計算した。
【0050】
ある脂肪酸の脂肪酸組成比換算量とは、原料中の脂肪酸含量に、該当する脂肪酸の脂肪酸組成比を乗じて算出された値である。
【0051】
2日目の明室滞在時間を群ごとに平均し、コントロール群(無摂取群)を1.0として比率を算出した。群ごとの個体数は、コントロール群(比較例1)は28匹、TG−DHA群(比較例2)は23匹、TG−DHA+カプサンチン群(実施例1)は7匹、カプサンチン群(比較例3)は8匹、TG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチン+カプサンチン群(実施例2)は8匹とした。比較例1〜3及び実施例1〜2の各結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から明らかなとおり、実施例1及び2のサンプルは、比較例1〜3のサンプルと比較して、高い受動回避効果を有していた。中でも、TG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチン+カプサンチンの組み合わせ(実施例2)には、コントロール比で1.4倍の受動回避効果が見られることが明らかとなった。また、TG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチンの組み合わせ(実施例2)の受動回避効果は、コントロール比で1.1であった。この結果は、本発明の内服組成物が脳機能改善効果を有していることを示している。
【0054】
実施例3〜5及び比較例4〜6
〔6か月給餌後の受動回避試験〕
表2に示す試料を用いたこと、給餌期間を6か月としたこと以外は、3か月給餌後の受動回避試験(1)と同様に行った。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2から明らかなとおり、TG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチンの組み合わせ(実施例4)及びTG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチン+カプサンチンの組み合わせ(実施例5)には、受動回避効果が見られ、中でも後者の組み合わせの効果は顕著であった。これらの結果は、本発明の内服組成物が脳機能改善効果を有すること、中でも有効成分がTG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチン+カプサンチンの組み合わせ(実施例5)である場合には長期間投与することでより顕著な脳機能改善効果を得ることができることを示している。
【0057】
〔脳内アミロイドβの蓄積抑制能の測定〕
前項の比較例4及び実施例5で使用した各マウスのうちの一部の海馬を摘出し、アミロイドβタンパク質量の定量を行った。摘出した脳に70%のギ酸を加え、ホモジナイズを行った。その後、超遠心(100,000G×20min)し、上清を分取した。そのうち、一部はHuman/Rat β Amyloid 42 ELISA kit(和光純薬)のプロトコールに従い、アミロイドβの定量を行った。ELISAの結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
表3に示す結果より、TG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチン+カプサンチン群(実施例5)では、アミロイドβ蓄積抑制効果が増強され、明らかなアミロイドβ42の低下が認められた。また、TG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチンの組み合わせ(実施例4)を投与した群では1.59±0.23pg/mg海馬重量であった。表1〜3の結果を考慮すると、実施例1〜4の試料も実施例4及び5の試料と同様にアミロイドβ42の低下を促すものと推測される。
【0060】
上清の残りにつきウェスタンブロット法を行い、分子量パターンから重合度について測定した。その結果、TG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチン+カプサンチン群を供与したサンプル(実施例5)では、アミロイドβの高重合度画分が低下していることが明らかとなった。この結果からは、TG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチン+カプサンチンの投与により、脳内に蓄積するアミロイドβ量が低下すると共に、重合化したアミロイドβが少なくなったと考えられた。アミロイドβは数分子以上の重合化により強い神経毒性を発揮することが知られていることから、TG−DHA+ルテイン+ゼアキサンチン+カプサンチンは、経口摂取により、脳内の神経細胞の障害に対して、予防的に保護する作用があると考えられた。この結果は、本発明の内服組成物が海馬へのアミロイドβ蓄積を抑制することができることを示している。
【0061】
実施例6〜7及び比較例7〜9
〔3か月給餌後の受動回避試験(2)〕
7週齢のオスのSAMP8マウス(日本エスエルシー)を用いたこと、表4に示す試料を用いたこと、個体数を各実施例につき10〜12としたこと、実施例6及び比較例9で用いたDHAはホスファチジルコリン型DHA(PC−DHA:DHA含有量18.0%以上、リン脂質含有量25.0%以上:サンオメガ(登録商標)PC−DHA、日油株式会社)であったこと以外は、3か月給餌後の受動回避試験(1)と同様に行った。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4から明らかなとおり、実施例6及び7では、比較例7〜9と比較して顕著な受動回避効果があった。PC−DHAの吸収性及び脳への移行性が高いことは知られているが、これらの結果は、本発明の内服組成物が、DHAとしてリン脂質型のDHA、トリグリセリド型のDHAのいずれを用いても、顕著な脳機能改善効果を得ることができることを示している。しかもPC−DHAの場合、より低濃度のDHAにおいても同等の有効性を示すことが明らかとなった。
【0064】
〔処方例〕
下記表5に示す成分を中鎖脂肪酸トリグリセリドに懸濁し、常法によりゼラチンを用いてソフトカプセルを作製した。
【0065】
【表5】
【0066】
なお、表5中の各成分の量は、脂肪酸組成比換算量、もしくはカロテノイド含有量として表記している。
【国際調査報告】