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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年1月28日
【発行日】2017年4月27日
(54)【発明の名称】高速応答・高感度乾湿応答センサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20170407BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20170407BHJP
【FI】
   G01N27/26 351J
   G01N27/30 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】特願2016-535935(P2016-535935)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年7月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-149505(P2014-149505)
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100190067
【弁理士】
【氏名又は名称】續 成朗
(72)【発明者】
【氏名】川喜多 仁
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(72)【発明者】
【氏名】篠原 正
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(72)【発明者】
【氏名】知京 豊裕
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(72)【発明者】
【氏名】生田目 俊秀
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(72)【発明者】
【氏名】大井 暁彦
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(72)【発明者】
【氏名】大木 知子
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(57)【要約】
ガルバニ電流を利用した乾湿応答センサーの感度および応答性を向上させ、またこれによって乾湿応答センサーを小型化する。従来のアノード電極とカソード電極を絶縁体を介して積層する構造ではなく、図示のように両電極を絶縁性基板上で例えば櫛型電極状に併走させる構造とした。半導体製造プロセスその他の微細加工技術を利用することにより、電極間距離を従来のセンサーに比較してきわめて短くして電極の単位敷設面積あたりの感度を向上できる。従って、乾湿応答センサーの小型化も容易に実現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属の細線と、
前記第1の金属とは異なる第2の金属の細線と
を絶縁性基板上に並置した、乾湿応答センサーであって、
前記第1の細線と前記第2の細線との間の間隔は5nm以上、20μm未満の範囲である、乾湿応答センサー。
【請求項2】
前記第1の金属の細線と前記第2の金属の細線の少なくとも一方は複数本設けられ、
前記第1の金属の細線と前記2の金属の細線とは互いに対向する方向から相手側に向かって伸びることにより、互いに平行に併走する、請求項1に記載の乾湿応答センサー。
【請求項3】
前記第1の金属の細線と前記第2の金属の細線とが二重渦巻き状に配置される、請求項1に記載の乾湿応答センサー。
【請求項4】
前記絶縁性基板は表面に酸化シリコン膜を有するシリコン基板である、請求項1から3の何れかに記載の乾湿応答センサー。
【請求項5】
前記第1の金属は金、白金、銀、チタン及びこれらの合金、並びに炭素からなる群から選択される、請求項1から4の何れかに記載の乾湿応答センサー。
【請求項6】
前記第2の金属は銀、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、コバルト、アルミニウム、スズ、クロム、モリブデン、マンガン、マグネシウム及びこれらの合金からなる群から選択される、請求項1から5の何れかに記載の乾湿応答センサー。
【請求項7】
第1の金属の細線及び前記第2の金属の細線が並置されている領域を覆う網の目状部材を設けた、請求項1から6の何れかに記載の乾湿応答センサー。
【請求項8】
第1の金属の細線及び前記第2の金属の細線が並置されている領域を覆う絶縁保護膜を設け、
前記絶縁保護膜は前記細線の少なくとも一部を露出する溝状開口を有する、請求項1から6の何れかに記載の乾湿応答センサー。
【請求項9】
更に第1の金属の細線と前記第2の金属の細線との間のギャップの少なくとも一部を露出する溝状開口を有する、請求項8に記載の乾湿応答センサー。
【請求項10】
前記絶縁性基板の、前記第1の金属の細線と前記第2の金属の細線との間のギャップに対応する位置の少なくとも一部を除去することにより、前記絶縁性基板の表裏を貫通する開口部を設けた、請求項1から6の何れかに記載の乾湿応答センサー。
【請求項11】
一端に設置対象物体への取り付け部を有する取り付け部材に請求項1から10の何れかに記載の乾湿応答センサーが取り付けられ、前記設置対象物体から離間した位置に前記乾湿応答センサーを配置するようにした、離間位置接地用乾湿応答センサー組立体。
【請求項12】
請求項1から10の何れかに記載の乾湿応答センサーを複数設け、前記乾湿応答センサー中の短絡し、または出力電流を発生しない乾湿応答センサーを切り離す、乾湿応答センサーシステム。
【請求項13】
前記乾湿応答センサーの切り離しは、乾湿応答センサーを電気的に切り離すかまたは乾湿応答センサーの出力を使用しないことによる、請求項12に記載の乾湿応答センサーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速応答・高感度乾湿応答センサーに関し、より具体的には、小型化・高感度化に適する構造を有し、かつ高速応答を実現する乾湿応答センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾湿応答センサーとしては、センサー素子(乾湿応答部)の電気抵抗値(インピーダンス)または静電容量の変化に応じて湿度を検知する湿度センサーが知られている。電気抵抗式の湿度センサーは、一般に、センサー素子の乾湿応答材料として高分子やセラミックなどが用いられており、材料が安価であることや構造がシンプルであるため量産による低コスト化が可能である。しかしながら、水に濡れるとセンサー素子が壊れるため、結露が生じる条件下では使用することができない。そのため、測定湿度範囲は、10〜90%RHの範囲に留まっており、10%RH未満の低湿環境や90%RHを超える高湿環境では使用が困難である。また、電気抵抗式湿度センサーは、経時変化が非常に大きく、多くの場合、温度依存性も大きいため、温度補正が必要である。さらに、電気抵抗式湿度センサーは、精度のばらつきが大きく(±5〜15%RH程度)、応答時間が長い(30秒〜数分以上)という問題もある。
【0003】
静電容量式の湿度センサーは、一般に、センサー素子の乾湿応答材料として高分子膜が用いられており、電気抵抗式と比較して応答速度が速く(通常数秒〜10秒前後)、精度・再現性・信頼性に優れている。また、通常、0〜100%RHの測定湿度範囲を有するが、結露条件下ではセンサー素子が壊れる場合がある。また、静電容量式の湿度センサーは、電気抵抗式湿度センサーよりも生産コストが高いという問題もある。
【0004】
さらに、電気抵抗式および静電容量式のいずれの湿度センサーの場合でも、センサーを駆動するための外部駆動電源を必要とする。また、従来の湿度センサーにおいては、そのセンサー構造や検出原理に起因して、センサー素子表面に付着した水滴のサイズを検出することは不可能であった。
【0005】
ところで、近年、ガルバニ作用に基づく乾湿応答センサーの開発が行われており、主に建造物の腐食環境モニタリング用の腐食環境センサーとして使用されている。
【0006】
橋梁その他の各種の建造物では鋼材が外部に露出していることが多いため、その耐久性能には使用されている鋼材の腐食の程度が大きな影響を与える。鋼材の腐食の進行は、単に鋼材自体の性質だけではなく、大気や雨水中の腐食性物質や電解質の量、雨水の付着量や濡れている時間等の使用環境によって大きく変化する。従って、この種の建造物の余寿命を評価して適切に検査・補修等の保守を行うためには、個別の建造物毎に、また必要に応じて一つの建造物でも腐食の環境条件が異なると考えられる箇所毎に、腐食状況の評価を継続的に行うことが望ましい。
【0007】
しかしながら、構造物を構成する鋼材それ自体の腐食の程度そのものの検査を現場で行うことは困難であり、かつ費用が掛かるため、実際にはそれぞれの場所に腐食環境センサーを取り付け、そこでの腐食環境を評価し、その評価結果に基づいて鋼材の腐食の程度を推定・予測する手法が開発された。例えば、図1に示すように、橋梁等の鉄骨部材にこの種のセンサーを取り付け、その場所の腐食環境をモニタすることにより、この鉄骨の劣化を予測していた。
【0008】
腐食環境センサーとしては、代表的には異種金属同士が水を介して接触することでこれらの金属間に流れるガルバニ電流を検出するACM(Atmospheric Corrosion Monitoring)センサーが挙げられる。その構造や測定データの評価方法等については非特許文献1〜4を参照されたい。しかしながら、従来のガルバニ式センサーは感度が低いことを補うために大型化するため、取り扱いが不便であり、また高価格化するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ガルバニ電流の検出を動作原理とする乾湿応答センサーの感度および応答性を向上させ、またこれによって乾湿応答センサーを小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、第1の金属の細線と、前記第1の金属とは異なる第2の金属の細線とを絶縁性基板上に並置した、乾湿応答センサーであって、前記第1の細線と前記第2の細線との間の間隔は5nm以上、20μm未満の範囲である、乾湿応答センサーが与えられる。
ここで、前記第1の金属の細線と前記第2の金属の細線の少なくとも一方は複数本設けられ、前記第1の金属の細線と前記2の金属の細線とは互いに対向する方向から相手側に向かって伸びることにより、互いに平行に併走してよい。
また、前記第1の金属の細線と前記第2の金属の細線とが二重渦巻き状に配置されてよい。
また、前記絶縁性基板は表面に酸化シリコン膜を有するシリコン基板であってよい。
また、前記第1の金属は金、白金、銀、チタン及びこれらの合金、並びに炭素からなる群から選択されてよい。
また、前記第2の金属は銀、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、コバルト、アルミニウム、スズ、クロム、モリブデン、マンガン、マグネシウム及びこれらの合金からなる群から選択されてよい。
また、第1の金属の細線及び前記第2の金属の細線が並置されている領域を覆う網の目状部材を設けてよい。
また、第1の金属の細線及び前記第2の金属の細線が並置されている領域を覆う絶縁保護膜を設け、前記絶縁保護膜は前記細線の少なくとも一部を露出する溝状開口を有してよい。
また、更に第1の金属の細線と前記第2の金属の細線との間のギャップの少なくとも一部を露出する溝状開口部を有してよい。
また、前記絶縁性基板の、前記第1の金属の細線と前記第2の金属の細線との間のギャップに対応する位置の少なくとも一部を除去することにより、前記絶縁性基板の表裏を貫通する開口部を設けてよい。
本発明の他の側面によれば、一端に設置対象物体への取り付け部を有する取り付け部材に上記何れかの乾湿応答センサーが取り付けられ、前記設置対象物体から離間した位置に前記乾湿応答センサーを配置するようにした、離間位置接地用乾湿応答センサー組立体が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、複数の上記何れかの乾湿応答センサーを設け、前記乾湿応答センサー中の短絡し、または出力電流を発生しない乾湿応答センサーを切り離す、乾湿応答センサーシステムが与えられる。
ここで、前記乾湿応答センサーの切り離しは乾湿応答センサーを電気的に切り離すかまたは乾湿応答センサーの出力を使用しないことによってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単純な構造でセンサー駆動電力を必要としない高感度かつ高速応答性の乾湿応答センサーが提供されるため、乾湿応答センサーを小型化、低価格化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来の腐食環境センサーの使用例を示す写真。
図2】従来のガルバニ電流検出による腐食環境センサーの構造を示す図。図中の寸法の単位はmmである。
図3】ガルバニ電流検出を説明するための概念図。
図4】ガルバニ電流検出による腐食環境センサーの感度を向上させるための構造を説明するための概念図。
図5】従来のガルバニ電流検出による腐食環境センサーの電極間隔の下限を示すグラフ。
図6】本発明のガルバニ電流検出による乾湿応答センサーの電極配置構造の一例を示す図。
図7A】本発明の実施例の乾湿応答センサーの製造プロセスの前半を模式的に示す図。
図7B】本発明の実施例の乾湿応答センサーの製造プロセスの後半を模式的に示す図。
図8A】本発明の実施例の乾湿応答センサーのカソード電極及びアノード電極全体の写真。
図8B】本発明の実施例の乾湿応答センサーの主要部において電極間隔が10μm、1μm及び0.5μmの場合について示す写真。
図9A】本発明の乾湿応答センサー出力の時間変化を説明するための図。
図9B】電極間距離を10μm、1μm及び0.5μmとした本発明の実施例の乾湿応答センサーの出力例を示す図。
図10】電極間距離を10μm、1μm及び0.5μmとした本発明の実施例の乾湿応答センサーにおいて、最大電流値を記録した後の電流値の減衰曲線を示す図。
図11】電極間距離を1.0μmとした本発明の実施例の乾湿応答センサーを用いて、0%RH、38%RH及び100%RHの湿度条件で測定した出力電流の結果を示す図。
図12】電極間距離を1.0μmとし、電極のペア数を10、50及び200とした本発明の実施例の乾湿応答センサーの出力例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず、非特許文献3に示されている従来のガルバニ電流検出による腐食環境センサーの構造を、図面を参照して説明する。図2(a)は腐食環境センサーの平面図、同図(b)はそのA−A'断面図の中央部付近を拡大した図である。この腐食環境センサーは、例えば炭素鋼等の金属の基板上に絶縁性ペースト(例えばSiO、BN等)を塗布することで、基板上に絶縁性ペーストからなる絶縁膜を形成する。この絶縁膜の上に導電性ペーストを塗布することによって、例えば銀等の別の金属の膜を形成する。図2(a)においてすだれ状になっている領域(センサー領域)中の色が薄い縦縞部分は、銀等の金属の膜も絶縁性ペーストも形成されておらず、炭素鋼等の金属の基板が露出している部分である。図2(b)はこの部分の断面構造を示している。更に、銀等の金属の膜上のセンサー領域から外れた部分に銅箔を貼り付けて電極としている。炭素鋼等の金属からなる基板からも別の電極を引出す(図2(a)左上隅)。この腐食環境センサーの使用時には、両電極間に電流計を接続して、ガルバニ電流を測定する。
【0014】
この腐食環境センサーを戸外に設置すると、降雨による雨水等の水(以下、雨水で代表させる)が付着する。当然ながら雨水は純水ではなく、大気中を浮遊している塩類の微粒子や水に融解してイオンを生成するガス類(二酸化炭素、二酸化硫黄、窒素酸化物等)を溶かし込んでおり、また特に降雨の初期には腐食環境センサー表面に付着していた固形物を溶解するため、センサー領域に付着した雨水は異種金属(基板を構成する鉄及び絶縁膜上の銀)を接続する電解液となる。これにより、図2(b)に示すように、鉄−雨水−金からなる局所的な電池がセンサー領域中の銀の縦縞領域の周辺に沿って形成される。この局所的な電池を図3に概念的に示す。センサー領域にこのようにして電池が形成されるため、銅箔と基板間を接続すると雨水中の電解質の量等に応じたガルバニ電流が流れる。この電流をここに接続された電流計により測定する。このようにして測定されたガルバニ電流の大きさは、同じく雨水などによって同じ場所の鋼材表面に形成される局部電池による腐食と強い相間があることが知られているため、ガルバニ電流の測定により、腐食の進行の評価が可能となる。
【0015】
腐食環境センサーを小型化すれば、取り付け位置の自由度が大きくなり、また、取り付けても目立たなくなるため、この点でも取り付け位置の制約が少なくなる。また、小型化により一般にはコストが低くなるので、測定位置の多点化も容易となる。図2に示すようなガルバニ電流を利用する腐食環境センサーでは、原理的には図4に示すように、異種金属からなる2つの電極間の距離を短くすれば感度も向上する。しかしながら、図2に示す構造の腐食環境センサーでは電極間距離の短縮には制約があった。図5は非特許文献5から引用したものであり、この種の腐食環境センサーの電極間距離(d)とその時のガルバニ電流との関係を実測した結果をプロットしたグラフである。このグラフに示されるように、バラつきはあるものの、電極間距離dを短縮すればガルバニ電流が増大する、つまり、感度が向上する。しかし、電極間距離は高々20μm程度までしか短縮できていない。従って、ガルバニ電流を利用する腐食環境センサーの感度向上(より具体的にはセンサー領域の単位面積当たりの感度向上)は困難であった。
【0016】
このような制約が出てくる原因とその解決策について本願発明者が検討したところ、図2に構造を示した従来の腐食環境センサーでは、2つの電極(基板及び銀の膜)が絶縁性ペーストからなる絶縁層を介して上下に積層されている構造に問題があることを見出した。すなわち、通常の電子デバイスのような保護された環境で使用される素子とは異なり、直接的に外気、各種の気象条件、日光の照射、砂塵などの粒子の衝突、動植物による干渉等の、素子に損傷を与える畏れのある環境に相当長期間に渡って暴露されることが当然の前提である腐食環境センサーでは、センサー領域にある程度の損傷が生じても金属の基板とそれとは別の金属の膜とが直接接触してセンサーの機能が失われないようにするため、絶縁層を薄くして電極間距離を短縮するには限度がある。また、絶縁層は絶縁ペーストの塗布によって作製しているため、ある限度を超えて薄層化するとセンサーの作成過程での絶縁不良の発生が起こり、また製造当初は問題がなくとも上述のような厳しい環境下での経年変化により絶縁が破壊されることがある。更には、絶縁層と金属層からなる縦縞部分の縁は基板から垂直に立ちあがることが理想的であるが、現実には図2(b)に示すようにやや傾斜しがちになるので、この点でも電極間距離が大きくなってしまう。
【0017】
このため、本願発明者らは図2に示したような従来の電極の積層構造の代わりに、金属の電極とそれとは別の金属の電極とを横方向に近接させて絶縁性基板上に並置する構造を採用すれば、上述した問題が解消されるという着想を得た。この構造をより具体的に説明すれば、両電極の対向部分が局所的に生成される電池として主に機能する部分であるので、これらの電極の基板上の面積を大きくするよりは、両電極が近接して対向している部分の長さを長くする方が電池容量の増大、すなわち取り出すことができるガルバニ電流の増大に有効である。従って、これらの電極を細線化して長い距離に渡って互いにほぼ平行に配置するなどの構造とすることができる。このような細線同士を平行に配置することで、細線(電極)間の近接部分の長さ(以下、併走距離と称する)を増大させる構成としては、例えば、櫛形構造や、二重渦巻き構造を採用することができる。その他、一定の平面領域内で2つの電極の併走距離をできるだけ長くするための構造自体は半導体素子分野等で良く知られているので、そのような構造も必要に応じて採用してもよい。なお、本発明において、「電極を基板上に並置する」とは、基板上に置かれる複数の電極の相互の向きを特定するものではなく、電極を基板の同一平面上に離間させて配置することをいう。
【0018】
このように、本発明は、空気中に含まれる水蒸気が固体表面で結露する現象、または霧状の水滴が固体表面に吸着する現象により固体表面に存在する液滴を、異種材料からなる電極間でのガルバニ作用に基づく電流により検出することで、乾湿状態を高速かつ高感度で判別可能な乾湿応答センサーを実現するものである。
【0019】
本発明に係る乾湿応答センサーは、従来の乾湿応答材料への水分吸収過程を経て乾湿状態を計測する方式の湿度センサーと比較して、空気中からセンサー表面に付着する液滴を直接検出できるため、高速応答性を有している。
【0020】
また、本発明に係る乾湿応答センサーは、センサーの電極間距離と液滴サイズの間には依存性があることから、従来のセンサーとは本質的に全く異なる高感度を有している。この点については、以下で詳述する。
【0021】
ここで、絶縁性基板はその上に形成される上述の電池からのガルバニ電流の測定に障害とならない程度の絶縁性を有するものであり、かつ想定される使用環境下で必要とされる耐久性を有するものであれば、その材質等は問わない。例えば、後述する実施例で使用する酸化シリコンの皮膜を形成したシリコン基板の他にも、プラスチックやゴムその他の多様な絶縁材料を使用することができる。また、上述した従来技術のように、基板本体は金属等の導電体であってもその上に絶縁性の塗装や被覆等を形成することにより電極から見て絶縁性を有する形式の基板も本願では「絶縁性基板」の範疇に含むことに注意すべきである。
【0022】
このような構造を採用することにより、本発明に係る乾湿応答センサーでは、半導体製造プロセスの手法を利用すれば電極間距離を5nm程度まで縮小することができる。また、電極間距離の上限は特にないが、上述した従来技術の電極間距離よりも短い20μm未満としてもよい。これにより、従来の機械加工や印刷技術を用いて作製された電極間距離が20μm以上のセンサーでは検出が困難であった極小サイズの水滴や結露直前の状態の僅かな水分子の付着まで検出することが可能となる。従って、本発明に係る乾湿応答センサーでは、センサーの検出結果と実際の腐食の進行状況との相関性が向上する。なお、電極間距離は、乾湿応答センサーの用途、設置環境等に応じて、一定値であってもよく、複数の設定値を組み合わせてもよい。
【0023】
なお、電極間距離を短くしていくと、空中や雨水中などに存在する金属粉等の導電性の微粒子が電極間に付着して短絡を起こす可能性が高くなる。この問題に対しては以下のような対策を取ることで問題の発生を防止することができる。
(1)電極の前面に網の目状物を設けることで、微粒子が電極に到達しないようにする。
(2)シリコン酸化物等の絶縁保護膜を電極前面に設けるとともに、各電極の細線の少なくとも一部(更には必要に応じて細線間のギャップの少なくとも一部も)を露出する微細な開口をこの絶縁保護膜に開設する。このように構成すれば、絶縁保護膜の微細な開口部の入口付近に導電性微粒子が付着しても、電極の細線は絶縁保護膜の厚みだけ奥に位置するので、微粒子が細線に直接接触して短絡が起こるのを防止できる。
(3)乾湿応答センサー自体は本発明に係る通常の構造のものを使用するが、そのようなセンサーを複数個近接させて配置し、カソード電極とアノード電極との間の短絡が検出されたり、あるいは他のセンサーから出力電流が検出されている間も出力電流が全く検出されないセンサーを測定系から排除する(電気的に切り離す、電気的な接続はそのままとするが、出力電流の測定値を使用しない等)等の、センサーシステムとしての対応も可能である。
【0024】
本願のセンサーの他の変形例としては、例えば、上述のセンサー構造ではカソード電極とアノード電極との間のギャップには金属が被着されていない基板が存在するが、このようなギャップ部の基板をエッチングなどにより除去することにより、センサーに水が付着していない間はカソード電極とアノード電極との間を空気が流れるようにしてもよい。より具体的には、例えば、細線間のギャップに対応する位置の少なくとも一部を除去することにより、基板の表裏を貫通する開口部を設けることができる。このような構成とすることにより、空気中の水分やその他の成分のセンサーとしても使用することができるようになる。なお、ギャップ部の基板を完全に除去することで機械的強度が低下したり、あるいは使用環境下で外部から与えられる機械的振動に共振することで不都合が生じる恐れのある固有振動数を持つようになる場合には、一部のギャップ部分の基板を残すなどの対策を取ればよい。
【0025】
また、これまで説明したセンサーは鉄骨等の構築物表面に直接設置することにより、構築物表面の腐食環境を評価する用途を想定したものであるが、表面の環境ではなく、自由空間の腐食環境を評価する用途も考えられる。そのような用途の場合でもセンサーを空間中に固定する必要がある。しかし、そのためにセンサーを何らかの大きな設置対象物体の表面に直接取り付けると、当該物体に付着した物質が雨等でセンサー上に流れ込んだり飛沫が飛び込むことがあり、あるいは自由空間の場合と気流が異なる等、測定値に当該物体の影響が出ることがある。そのような悪影響を排除するため、設置対象物体への設置位置から遠方にセンサーを浮かす構成を取るのが望ましい。具体的には、例えば、センサーを取り付ける板状、棒状等の取り付け器具の一端を設置対称物体に取り付けて設置し、取り付け部材上の設置対象物体から離間した位置に一つあるいは複数個のセンサーを取り付ければよい。
【0026】
また、本発明に係る乾湿応答センサーは、湿度センサーとして使用することができる。上述したように、本発明の乾湿応答センサーでは、従来のセンサーに比べて電極間距離を大幅に縮小することで小型化ができ、また、センサーを駆動するための外部電力が不要であるため、湿度センサーとしての測定精度が向上することに加えて、従来はセンサーが大型であったり、外部電力を確保できない等の理由から設置することが困難であった電子機器、物流システム、工業用プラント等においても所望の湿度条件管理を可能とすることが期待される。
【実施例】
【0027】
以下、2つの電極を櫛形に配置することによって、単純な構造でセンサー領域の単位面積当たりの感度を向上させた乾湿応答センサーの実施例を説明する。当然ながら、本発明はこのような特定の形式に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲により規定されるものであることに注意されたい。
【0028】
図6に、絶縁性の基板上に例えば鉄等の金属のアノード電極と銀などのそれとは別の金属のカソード電極とを櫛形に配置した、乾湿応答センサーの主要部の構造、すなわち電極配置構造の一例を示す。絶縁性の基板としては例えばシリコン酸化膜を有するシリコンウェハーを使用することができる。またカソード電極に使用可能な材料は例えば金、白金、銀、チタン及びこれらの合金、並びに炭素及びその同素体がある。アノード電極にはたとえば銀、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、コバルト、アルミニウム、スズ、クロム、モリブデン、マンガン、マグネシウム及びこれらの合金を使用することができる。ただし、アノード電極として銀及びその合金を用いる場合には、カソード電極は上記に示したカソード電極のうち、銀及びその合金以外を用いる方がよい。
【0029】
カソード電極及びアノード電極において、それぞれ乾湿応答センサーの外部への信号引出端子(図示せず)に近い側は1本にまとめられた集中部分となっているが(それぞれ図6の上下を横方向に走る太線として図示)、それぞれの末端部付近で複数本に分岐している。図6に示す実施例ではそれぞれ10本の分岐が設けられている。分岐したカソード電極とアノード電極とは互いに平行方向(より詳細には反平行方向。以下、単に平行方向と称する)に延び、その延長距離の大部分で互いに近接して平行方向に併走する。本実施例では、カソード電極とアノード電極の集中部分は1180μm離間して反平行方向に延び、分岐部はそれぞれ対向する集中部分へ向かって1090μm伸びる。分岐部の各細線はその根元部分の90μmを除いた1000μmに渡って相手側の延長部の細線と平行方向に並走する。この併走部分の両電極の間隔(カソード電極の分岐細線とアノード電極の分岐細線との離間距離)として、本実施例では0.5μm、1μm及び10μmの三通り作製した。本実施例ではそれぞれ10本のカソード電極の分岐細線とアノード電極の分岐細線とが1000μmに渡って併走している。分岐細線間の併走箇所(カソード電極、アノード電極の分岐細線間のギャップ)は19か所あるため、総併走距離は1000μm×19=19mmとなる。電極間距離を従来の実用上の限度である約20μmよりも大幅に短縮した構造を容易かつ安定的に作製できるため、本発明によれば小さなセンサー領域内で非常に狭い電極間距離かつ長距離の併走距離を実現でき、従ってセンサー領域の単位面積当たりの感度を大幅に向上させることができる。
【0030】
図7A及び図7Bに、図6に示した構造の乾湿応答センサーを作成するために行った、ステップ(a)〜ステップ(l)から構成されるプロセス例を示す。図7A及び図7Bはこのセンサーのうちのカソード電極とアノード電極の細線が併走している部分に対応している。シリコン酸化膜を表面に有するシリコンウェハーを準備し、レジストをその表面に塗布し(ステップ(a))、フォトリソグラフィーによりカソード電極が設けられる位置のレジストを除去した(ステップ(b))。次に全体にチタンを10nm蒸着することによって、レジストが除去された位置にカソード電極のための密着層を形成した(ステップ(c))。更に全体に金を150nm蒸着し(ステップ(d))、次にチタンを10nm蒸着する(ステップ(e))ことで、この位置に金からなるカソード電極の本体及びその上にチタンからなる安定化層を形成した。これでカソード電極の形成が完了したので、レジスト及びその上の余分な金属の層をリフトオフすることで、シリコン酸化物層の上にカソード電極だけを残した(ステップ(f))。次にカソード電極と同様な一連のステップ(ステップ(g)〜ステップ(l);ただしステップ(j)でアノード電極本体の金属として蒸着する層は150nmの厚さの銅)を実行することで、カソード電極に併走する位置にアノード電極を形成した。
【0031】
このようにして作製した乾湿応答センサーの電極部全体を図8Aに示す。図8Aを横長の向きに置いて見たとき、左上隅及び右下隅付近には、カソード電極及びアノード電極へのリード線を接続する電極パッド(信号引出端子)が周囲よりもやや淡色の正方形領域として見えている。各電極パッドから水平に走る線(周囲よりもやや淡色の部分)が図6の上端及び下端付近を水平に走る集中部分である。図8Aの中央を上下に走る黒色の線状部分は図6の中央付近を上下に走るカソード電極、アノード電極の分岐部分である。図8Aのこの分岐部分の中央付近を拡大した写真を図8Bに示す。既に説明した通り、電極間距離が10μm、1μm及び0.5μmの三種類の乾湿応答センサーを作成したので、図8Bにもこれら三種類の分岐部分の拡大写真を示す。乾湿応答センサーの基本的な性能を評価するため、これら三種類のセンサーは何れもカソード電極及びアノード電極の分岐部の細線をそれぞれ10本設けている。実際の乾湿応答センサーを構成する場合には、使用できるセンサー本体部領域の面積を有効利用するため、この本体領域の全体あるいはほぼ全体を分岐部の細線が覆うようにするため、電極間距離を狭くするほど細線の本数も増加する。従って、電極間距離を狭くすれば、電極間距離を狭くしたことによる単位併走距離当たりの感度増大の効果と単位面積当たりの併走距離の増大の効果の両方により、このセンサーの感度が急激に高くなることに注意されたい。
【0032】
このようにして作製した乾湿応答センサーに水を滴下することで流れる電流の変化を測定することによって、本発明の乾湿応答センサーの感度を実測した。電極間距離が10μm、1μm及び0.5μmの乾湿応答センサーについての実測データを図9Bに示す。
【0033】
測定に当たっては、純水1μLを乾湿応答センサーの図6に示す集中部分、つまり櫛形電極部分に滴下し、乾燥してしばらく後までの電流の時間経過を測定した。図9Aに示す乾湿応答センサー出力の時間変化を説明するためのグラフからわかるように、滴下直後の水膜が厚いときには金属(ここではアノード電極の成分である銅)の溶解量は水の量に依存するので、水の量が多いほど腐食速度は大きく、センサー出力は大きい。時間が経つほど水膜が薄くまた狭くなるので腐食速度が小さくなり、センサー出力も減少する。乾燥直前になると水膜が非常に薄くなるため、酸素が金電極表面に到達し易くなり、逆に腐食速度が増大する。乾燥すると、電極間を結ぶように残存する水分の減少に伴い、電極間の抵抗が大きくなるため電流が減少する。
【0034】
液滴をセンサーに滴下した後から乾燥直前までこのように推移する電流の平均値を取ると、電極間距離が10μm幅では約400pA、1μmと0.5μm幅では約800pAとなり、1μmまでは幅を小さくしたことによる出力値の向上が確認できた。なお、本実施例では電極の金属材料として金及び銅を使用したが、当然ながら、センサー出力(電流)は電極の金属材料の組合せに依存する。例えばAg/FeとAu/Agとでは、Ag/Feの組み合わせの方が同じ面積当たりの腐食速度が大きいため、得られる電流値が大きくなる。その代わり、Au/Agの方が電極の消耗が少ないため長寿命になる。
【0035】
先に説明したように、図6に示す実施例においてはカソード電極、アノード電極の本数をそれぞれ10本としているが、ある長さ(範囲)の間に電極をできるだけ敷設することを考えると、電極の敷設密度は以下のように見積もることができる。電極自体の幅が1μmであり電極のペア数をnとすると、電極間距離10μmでは、敷設幅は2n+10×(2n−1)=22n−10μmと計算される。同様に、電極間距離1μm及び0.5umでは、敷設幅はそれぞれ4n−1μm及び3n−0.5μmとなる。従って、同じ敷設幅におけるペア数の比は、電極間距離10μmを基準にすると、1μmに対して(22n−10)/(4n−1)=(22−10/n)/(4−1/n)となり、nが十分に大きいと(例えば100以上)、nを分母とする分数はゼロとみなせるので、22/4=5.5となる。また、0.5μmではこの比の値は同様な計算により22/3=7となる。実施例で得られた電流の平均値の関係を考慮すると、同じ敷設幅で、電極間距離10μmが1μmになると11倍、0.5μmになると14倍の出力になると言うことができる。現状の計測系においても、S/N比は1:100程度以上取れているため、上の実施例で試作したセンサーでも、増幅やノイズフィルタリングなしでセンシングできていると言える。電極自体の幅を狭く(細く)すれば同じ敷設幅におけるペア数は増えるので、出力はより向上する。
【0036】
図10は、図9Bに関連して、電極間距離を10μm、1μm及び0.5μmとした本実施例の乾湿応答センサーにおいて、最大電流値を記録した後の電流値の減衰曲線である。図10からわかるように、電極間距離が狭いほど、バックグラウンド電流(10−11A)に到達するまでの時間が長い。このことは、電極間距離を狭くするほど、電極間に残存する液滴のサイズがより小さくなるまで電流を計測できることを示唆している。すなわち、本発明の乾湿応答センサーでは、電極間に残存する液滴のサイズを判別可能であることが示唆された。
【0037】
図11は、電極間距離を1.0μmとした本実施例の乾湿応答センサーを用いて、0%RH、38%RH及び100%RHの湿度条件で測定した出力電流の結果である。図11からわかるように、本発明の乾湿応答センサーは、0〜100%RHの湿度範囲において、高精度な検出が可能である。なお、各々の湿度条件は、以下のようにして設定した。
0%RH:ドライヤにてセンサー表面を乾燥させた状態
38%RH:測定環境の湿度を市販の湿度計にて計測した値
100%RH:センサー表面に息を吹きかけ、センサー表面全体が曇った状態
【0038】
次に、上述した方法と同様の作製方法によって、電極間距離を1.0μmとし、電極のペア数nを10、50及び200とした3種類の乾湿応答センサーを作製し、各センサーの感度を実測した。結果を図12に示す。
【0039】
測定に当たっては、センサー表面に息を吹きかけ(これにより、電流値が上昇する)、電流値がバックグラウンドに戻った後、再び息を吹きかける動作を繰り返し行った。図12からわかるように、電極のペア数nを10から50、200に増やすことによって、センサー出力がそれぞれ20倍、50倍に増加した。このように、本発明の乾湿応答センサーでは、電極間距離に加えて、敷設条件等に応じて電極の組数を調整することにより、センサー出力を向上させることができる。
【0040】
なお、乾湿応答センサーにおいて繰り返しガルバニ電流が流れるとアノード電極の金属がイオン化することでアノード電極が次第に消耗する。また、多湿かつ塩害の大きな環境で長期間使用することを想定した場合、特に敷設密度を高くするために電極を細くした乾湿応答センサーでは、このアノード電極の消耗によって電極間距離が次第に大きくなったり、電極の細線が切れてしまう可能性がある。電極の敷設密度を維持したままでこの問題に対処するには、例えばアノード電極を厚くしたり、あるいはアノード電極の幅を広くし、その代わりにカソード電極の幅を狭くする等すればよい。また、電極間距離を非常に短くした場合には、アノード電極の消耗による電極間距離のわずかな増大が測定結果に与える影響が大きくなる。このような影響が問題になる場合には、例えば、アノード電極の金属の消耗が原理的にはガルバニ電流の時間積分に比例することを利用して測定結果に対して補償演算を行うという測定系全体としての対策も可能である。
【0041】
また、本実施例では、電極間距離を一定とした例を示したが、所望の用途等に応じて、電極間距離が異なるセンサーモジュールを複数組み合わせたセンサーシステムとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明によれば感度を低下させることなく従来に比較して大幅に小型化された乾湿応答センサーが提供されるので、多様な場所に、また目立たずに設置することができるようになり、腐食環境に暴露される鉄骨などの構造物の腐食・劣化の評価や予測の精度の向上への貢献が期待される。また、本発明の乾湿応答センサーは、腐食環境モニタリングのみならず、工業製品や食料品等の製造・生育から物流に至るまでの乾湿モニタリング・トラッキング、屋内の浴室や洗濯機等のカビ発生状況予測等、様々な湿度計測への適用が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0043】
【非特許文献1】F. Mansfeld at al., Corrosion Science, Vol. 16, pp. 111` to 122 (1976).
【非特許文献2】Peter Norberg, Service Life Prediction Methodology and Metrologies, ACS Symposium Series 805, Jonathan W Martin and David R. Bauer, Eds., American Chemical Society, 2002, pp23-36.
【非特許文献3】T. Shinohara et al., Journal of Metals, Materials and Minerals, Vol.20 No.2 pp.23-27, 2010
【非特許文献4】篠原正、他、材料と環境第54巻第8号(2005)375〜382ページ
【非特許文献5】Engajiet al, Toyota Tech. rep., 40(1987) p.57.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
【国際調査報告】