特表2015-516812(P2015-516812A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-516812(P2015-516812A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(54)【発明の名称】多能性細胞のデノボ生成
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/074 20100101AFI20150522BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20150522BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20150522BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20150522BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20150522BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20150522BHJP
【FI】
   C12N5/00 202D
   C12Q1/02ZNA
   A61K35/12
   A61P7/06
   A61P7/00
   A61P35/02
   A61P3/00
   A61P35/00
   A61P11/00
   A61P11/06
   A61P37/08
   A61P37/02
   A61P19/02
   A61P17/14
   A61P19/00
   A61P25/00
   A61P21/02
   A61P9/10 101
   A61P9/04
   A61P9/10
   A61P3/10
   A61P27/02
   G01N33/50 Z
   G01N33/15 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】96
(21)【出願番号】特願2015-509109(P2015-509109)
(86)(22)【出願日】2013年4月24日
(85)【翻訳文提出日】2014年12月24日
(86)【国際出願番号】US2013037996
(87)【国際公開番号】WO2013163296
(87)【国際公開日】20131031
(31)【優先権主張番号】61/637,631
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/779,533
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
【住所又は居所】アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 02115 ボストン フランシス ストリート 75
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
【住所又は居所】埼玉県和光市広沢2番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】バカンティ、チャールズ エー.
【住所又は居所】アメリカ合衆国、マサチューセッツ州 01569、アックスブリッジ、ポンド ストリート 355
(72)【発明者】
【氏名】バカンティ、マーチン ピー.
【住所又は居所】アメリカ合衆国、カンザス州 66502、マンハッタン、モンティチェロ ドライブ 1441 ナンバー2
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏司
【住所又は居所】アメリカ合衆国、マサチューセッツ州 02446、ブルックリン、ロングウッド アベニュー 50 ナンバー414
(72)【発明者】
【氏名】小保方 晴子
【住所又は居所】埼玉県和光市広沢2番1号 独立行政法人理化学研究所内
(72)【発明者】
【氏名】若山 照彦
【住所又は居所】埼玉県和光市広沢2番1号 独立行政法人理化学研究所内
(72)【発明者】
【氏名】笹井 芳樹
【住所又は居所】埼玉県和光市広沢2番1号 独立行政法人理化学研究所内
(72)【発明者】
【氏名】大和 雅之
【住所又は居所】東京都新宿区河田町8−1 学校法人東京女子医科大学内
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA40
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QR58
4B063QR66
4B063QS28
4B063QX02
4B065AA90X
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4B065BA30
4B065BB40
4B065BC50
4B065BD39
4B065BD50
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB33
4C087BB57
4C087BB58
4C087BB59
4C087DA31
4C087DA32
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA36
4C087ZA37
4C087ZA40
4C087ZA45
4C087ZA51
4C087ZA55
4C087ZA59
4C087ZA92
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB13
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC21
4C087ZC35
(57)【要約】
本明細書に記載の技術は、例えば、外来遺伝子材料を導入することなしに、より多能性の状態を細胞にとらせることに関する方法、アッセイ、および組成物に関する。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞をストレスに供する工程を含む、多能性細胞を生成する方法。
【請求項2】
多能性細胞が外来遺伝子、転写物、タンパク質、核成分もしくは細胞質の導入なしに、または細胞融合なしに生成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
多能性を示す細胞を選択する工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
細胞が組織の部分として存在しない、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
細胞が体細胞、幹細胞、前駆細胞または胚細胞である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
細胞が単離された細胞である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
細胞が細胞の不均一な集団中に存在する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
細胞が細胞の均一な集団中に存在する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
多能性を示す細胞を選択する工程が、幹細胞マーカーを発現する細胞を選択することを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
幹細胞マーカーが以下からなる群より選択される、請求項9記載の方法:
Oct4;Nanog;E−カドヘリン、およびSSEA4。
【請求項11】
多能性を示す細胞を選択する工程が、接着性でない細胞を選択することを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ストレスが組織または細胞培養物における非生理的ストレスを含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ストレスが以下から選択される少なくとも1つの環境刺激への細胞の曝露を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法:外傷、機械的刺激、化学的曝露、超音波刺激、酸素欠乏、照射、極度な温度への曝露、解離、トリチュレーション、物理的ストレス、高浸透圧、低浸透圧、膜損傷、毒素、極度のイオン濃度、活性酸素、UV曝露、強可視光、必須栄養の欠乏、または非生理的酸性環境。
【請求項14】
ストレスが約3.0〜約6.8のpHに細胞を曝露することを含む、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
ストレスが約4.5〜約6.0のpHに細胞を曝露することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ストレスが約5.4〜約5.8のpHに細胞を曝露することを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
細胞が2〜3日間曝露される、請求項12〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
細胞が1日間以下曝露される、請求項12〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
細胞が1時間以下曝露される、請求項12〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
細胞が約30分間曝露される、請求項12〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
極度な温度への曝露が、35℃未満または42℃超の温度に細胞を曝露することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項22】
極度な温度への曝露が、凍結以下の温度への細胞の曝露または少なくとも約85℃の温度への細胞の曝露を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
機械的刺激が、剪断ストレス または/および高圧に細胞を曝露することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項24】
機械的刺激が、細胞のサイズより小さな開口を有する少なくとも1つのデバイスを通して細胞を通過させることを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
機械的刺激が、漸進的により小さな開口を有するいくつかのデバイスを通して細胞を通過させることを含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
多能性細胞を培養して、多能性細胞を増殖させる工程をさらに含む、請求項1〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
多能性細胞が幹細胞マーカーを発現する、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
幹細胞マーカーが以下からなる群より選択される、請求項27記載の方法:
Oct4;Nanog;E−カドヘリン、およびSSEA4。
【請求項29】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項1〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
細胞がヒト細胞である、請求項1〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
細胞が成体細胞、新生児細胞、胎児細胞、羊水細胞、または臍帯血細胞である、請求項1〜30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
多能性細胞をインビトロで維持する工程をさらに含む、請求項1〜31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
細胞のエピジェネティック状態が胚性幹細胞のエピジェネティック状態により近く類似するように変化させられる、請求項1〜32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
エピジェネティック状態がメチル化パターンを含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
ストレスが、細胞質の少なくとも約40%を細胞から除去すること含む、請求項1〜34のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
細胞質の少なくとも約50%を細胞から除去する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
細胞質の少なくとも約60%を細胞から除去する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
細胞質の60〜80%を細胞から除去する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
細胞質の少なくとも約80%を細胞から除去する、請求項37記載の方法。
【請求項40】
細胞質の少なくとも約90%を細胞から除去する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
ストレスが、ミトコンドリアの少なくとも約40%を細胞から除去すること含む、請求項1〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
細胞質の一部の除去が、ミトコンドリアの少なくとも約50%を細胞質から除去する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
細胞質またはミトコンドリアの除去が、ミトコンドリアの約50%〜90%を細胞質から除去する、請求項42記載の方法。
【請求項44】
細胞質またはミトコンドリアの除去が、ミトコンドリアの90%超を細胞質から除去する、請求項42記載の方法。
【請求項45】
ストレスが、ストレスに曝露された細胞の少なくとも10%の細胞膜を破壊するために十分である、請求項1〜44のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれか1項記載の方法によって産生される多能性細胞を候補薬剤と接触させることを含む、アッセイ。
【請求項47】
多能性細胞の生存能、分化、増殖の1つ以上に影響を及ぼす薬剤を同定するための使用のための、請求項46記載のアッセイ。
【請求項48】
対象のための細胞治療の方法における請求項1〜45のいずれか1項記載の方法によって産生される多能性細胞の使用。
【請求項49】
対象に投与しようとする細胞治療と適合性である細胞または組織を調製する方法であって:
請求項1〜45のいずれか1項に従って細胞から多能性細胞を生成する工程を含み;
細胞が自己細胞またはHLA適合同種異系細胞である、方法。
【請求項50】
対象に細胞または組織を投与する前に、予め規定された細胞系列に沿って多能性細胞を分化させる工程をさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
多能性細胞を含む組成物であって、多能性細胞が請求項1〜45のいずれか1項記載の方法によって細胞から生成される、組成物。
【請求項52】
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、2iまたは3i培地の存在下で細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞を産生する方法。
【請求項53】
細胞が、ACTHを含むLIF培地中で培養される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
ACTHが約0.1μM〜約100μMの濃度で存在する、請求項52または53記載の方法。
【請求項55】
細胞が請求項1〜45のいずれか1項記載の方法によって生成される細胞である、請求項52〜54のいずれか1項記載の方法。
【請求項56】
細胞が全能性細胞である、請求項52〜55のいずれか1項記載の方法。
【請求項57】
細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも3日間培養される、請求項52〜56のいずれか1項記載の方法。
【請求項58】
細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも5日間培養される、請求項52〜57のいずれか1項記載の方法。
【請求項59】
細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも7日間培養される、請求項52〜58のいずれか1項記載の方法。
【請求項60】
培養する工程の後に、細胞が、検出可能なレベルの、以下からなる群より選択される幹細胞マーカーを発現する、請求項52〜59のいずれか1項記載の方法:
Oct3/4;Nanog;Rex1;Klf4;Sox2;Klf2;Esrr−β;Tbx3;およびKlf5。
【請求項61】
多能性細胞の自己再生能力を増加させる方法であって、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、2iまたは3i培地の存在下で細胞を培養する工程を含む、方法。
【請求項62】
細胞が、ACTHを含むLIF培地中で培養される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
ACTHが約0.1μM〜約100μMの濃度で存在する、請求項61または62記載の方法。
【請求項64】
細胞が請求項1〜45のいずれか1項記載の方法によって生成される細胞である、請求項61〜63のいずれか1項記載の方法。
【請求項65】
細胞が全能性細胞である、請求項61〜64のいずれか1項記載の方法。
【請求項66】
細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも3日間培養される、請求項61〜65のいずれか1項記載の方法。
【請求項67】
細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも5日間培養される、請求項61〜66のいずれか1項記載の方法。
【請求項68】
細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも7日間培養される、請求項61〜67のいずれか1項記載の方法。
【請求項69】
培養する工程の後に、細胞が、検出可能なレベルの、以下からなる群より選択される幹細胞マーカーを発現する、請求項61〜68のいずれか1項記載の方法:
Oct3/4;Nanog;Rex1;Klf4;Sox2;Klf2;Esrr−β; Tbx3;およびKlf5。
【請求項70】
細胞治療を必要とする対象における自己細胞治療の方法であって、
a.請求項1〜45のいずれか1項に従って細胞から多能性細胞を生成する工程であって、細胞が対象から得られる、工程、および
b.多能性細胞またはその分化した子孫を含む組成物を対象に投与する工程、
を含む、方法。
【請求項71】
対象に組成物を投与する前に、予め規定された細胞系列に沿って多能性細胞を分化させる工程をさらに含む、請求項70記載の方法。
【請求項72】
胎盤細胞に分化する能力を有する多能性細胞を産生する方法であって、請求項1〜45のいずれか1項記載の方法によって生成される多能性細胞をFGF4の存在下で培養する工程を含む、方法。
【請求項73】
FGF4の濃度が1nM〜1μMである、請求項72記載の方法。
【請求項74】
多能性細胞が胚性幹細胞に分化する能力を有する、請求項72または73記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第61/637,631号(2012年4月24日出願)および同第61/779,533号(2013年3月13日出願)(その内容の全体を参照により本明細書に組み入れる)の米国特許法第119条(e)の下の利益を請求する。
【0002】
技術分野
本明細書に記載する技術は多能性細胞の産生に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
現在の多能性細胞を取得する方法は、主に限定された入手可能性の組織(例えば、胚組織もしくは臍帯血)または外来核酸の導入を含むリプログラミング因子の添加に依存している(Hanna, J. et al. Cell 2008 133, 250-264;Hockemeyer, D. et al. Cell stem cell 2008 3, 346-353;Kim, D. et al. Cell stem cell 2009 4, 472-476;Kim, J. B. Nature 2009 461, 649-643; Okabe, M. et al. Blood 2009 114, 1764-1767)。外来リプログラミング因子の添加によってもたらされる面倒な事態なしに、幹細胞、特に、自己幹細胞を容易に産生する方法は、細胞分化の研究および幹細胞に基づく治療の開発を加速させる。熱傷、化学的損傷、外傷および照射のような刺激物への曝露の結果としての細胞への損傷が、正常体細胞をがん細胞になるように変化させ得ると仮定されているが、リプログラミング因子の特定の操作なしに健常成体体細胞が他の状態に転換され得ることの直接的な証拠は存在しない。
【0004】
以前に、研究者らは、成体組織において「成体幹細胞」を見出したことを報告した(Reynolds, B. A. & Weiss, S. Science 1992 255, 1707-1710;Megeney, L. A. et al. ,Genes & development 1996 10, 1173-1183;Caplan, A. I. Journal of orthopaedic research 1991 9, 641-650;Lavker, R. M. & Sun, T. T. The Journal of investigative dermatology 1983 81, 121s-127s)。そのような報告は議論の余地があるままである。例えば、幹細胞マーカーであるOct4を発現する細胞を求める研究者は、正常ホメオスタシスにある成体骨髄においてOct4発現細胞を見出すことができず(Lengner, C. J. et al. Cell Cycle 2008 7, 725-728;Berg, J. S. & Goodell, M. A. Cell stem cell 2007 1, 359-360)、他者は様々な成体組織からOct4発現細胞を単離できることを報告している(Jiang, Y. et al. Nature 2010 418, 41-49;D’Ippolito, G. et al. Journal of cell science 2004 117, 2971-2981;Johnson, J. et al. Cell 2005 122, 303-315;Kucia, M. et al. Leukemia 2006 20, 857-869;Kuroda, Y. et al. PNAS 2011 107, 8639-8643;Obokata, H. et al. Tissue engineering. 2011 Part A 17, 607-615;Rahnemai-Azar, A. et al. Cytotherapy 2011 13, 179-192;Huang, Y. et al. Transplantation 2010 89, 677-685;Zuba-Surma, E. K. et al. Journal of cellular and molecular medicine 2011 15, 1319-1328;Paczkowska, E. et al. Annals of transplantation 2011 16, 59-71)。これらの細胞が、成体幹細胞の集団を表すか、または、単に使用された技術のアーティファクトであるかのいずれかであると仮定されている。いずれの場合でも、それらは稀なままであり、そして研究および治療目的のための多能性細胞の適切な供給源の代表とはならない。
【発明の概要】
【0005】
要旨
例えば、分化したまたは成体の細胞から、デノボで多能性細胞を生成または産生する方法を本明細書に記載する。本明細書に記載の方法はさらに、例えば、複能性(multipotent)細胞を多能性(pluripotent)にして、細胞の多能性を増加させる(または、例えば、細胞の成熟度を減少させる)ことに関し得る。多能性細胞の産生に関する本明細書に記載の技術の局面は、環境ストレスが細胞をより多能性の表現型をとるように誘導し得るという本発明者らの認識に基づいている。
【0006】
1つの局面において、本明細書に、細胞をストレスに供する工程を含む、多能性細胞を生成する方法を記載する。いくつかの実施態様において、方法は、多能性を示す細胞を選択する工程をさらに含み得る。いくつかの実施態様において、細胞は組織の部分として存在しない。いくつかの実施態様において、ストレスは、細胞質の少なくとも約40%を細胞から除去すること含む。いくつかの実施態様において、ストレスは、ミトコンドリアの少なくとも約40%を細胞から除去すること含む。いくつかの実施態様において、ストレスは、ストレスに曝露された細胞の少なくとも10%の細胞膜を破壊するために十分である。いくつかの実施態様において、細胞は体細胞、幹細胞、前駆細胞または胚細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は単離された細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は細胞の不均一な集団中に存在する。いくつかの実施態様において、細胞は細胞の均一な集団中に存在する。いくつかの実施態様において、多能性を示す細胞を選択する工程は、Oct4もしくはNanog、またはOct4およびNanog発現を発現する細胞を選択することを含む。いくつかの実施態様において、多能性を示す細胞を選択する工程は、接着性でない細胞を選択することを含む。
【0007】
いくつかの実施態様において、細胞質の少なくとも約50%を細胞から除去する。いくつかの実施態様において、細胞質の少なくとも約60%を細胞から除去する。いくつかの実施態様において、細胞質の60〜80%を細胞から除去する。いくつかの実施態様において、細胞質の少なくとも約80%を細胞から除去する。いくつかの実施態様において、細胞質の少なくとも約90%を細胞から除去する。
【0008】
いくつかの実施態様において、ストレスは以下から選択される少なくとも1つの環境刺激への細胞の曝露を含む:外傷、機械的刺激、化学的曝露、超音波刺激、酸素欠乏、照射、および極度な温度への曝露。いくつかの実施態様において、ストレスは約4.5〜約6.0のpHに細胞を曝露することを含む。いくつかの実施態様において、ストレスは約5.4〜約5.8のpHに細胞を曝露することを含む。いくつかの実施態様において、細胞は1日間以下曝露される。いくつかの実施態様において、細胞は1時間以下曝露される。いくつかの実施態様において、細胞は約30分間曝露される
【0009】
いくつかの実施態様において、極度な温度への曝露は、35℃未満または42℃超の温度に細胞を曝露することを含む。いくつかの実施態様において、極度な温度への曝露は、凍結以下の温度への細胞の曝露または少なくとも約85℃の温度への細胞の曝露を含む。いくつかの実施態様において、機械的刺激は、細胞のサイズより小さな開口を有する少なくとも1つのデバイスを通して細胞を通過させることを含む。いくつかの実施態様において、機械的刺激は、漸進的により小さな開口を有するいくつかのデバイスを通して細胞を通過させることを含む。
【0010】
いくつかの実施態様において、細胞質の一部の除去は、ミトコンドリアの少なくとも約50%を細胞質から除去する。いくつかの実施態様において、細胞質またはミトコンドリアの除去は、ミトコンドリアの約50%〜90%を細胞質から除去する。いくつかの実施態様において、細胞質またはミトコンドリアの除去は、ミトコンドリアの90%超を細胞質から除去する。
【0011】
いくつかの実施態様において、方法は、多能性細胞を培養して、多能性細胞を増殖させる工程をさらに含み得る。いくつかの実施態様において、多能性細胞はOct4およびNanogからなる群より選択される1つ以上の多能性幹細胞マーカーを発現する。
【0012】
いくつかの実施態様において、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施態様において、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は成体細胞または新生児細胞である。いくつかの実施態様において、方法は、多能性細胞をインビトロで維持する工程をさらに含み得る。いくつかの実施態様において、細胞のエピジェネティック状態は胚性幹細胞のエピジェネティック状態により近く類似するように変化させられる。いくつかの実施態様において、エピジェネティック状態はメチル化パターンを含む。
【0013】
1つの局面において、本明細書に、本明細書に記載の方法によって産生される多能性細胞を候補薬剤と接触させることを含むアッセイを記載する。いくつかの実施態様において、アッセイを、多能性細胞の生存能、分化、増殖の1つ以上に影響を及ぼす薬剤を同定するために使用し得る。
【0014】
1つの局面において、本明細書に、対象のための細胞治療の方法における本明細書に記載の方法によって産生される多能性細胞の使用を記載する。
【0015】
1つの局面において、本明細書に、細胞治療を必要とする対象における自己細胞治療の方法であって、本明細書に記載の方法に従って細胞から多能性細胞を生成する工程(ここで、細胞は対象から得られる)、および多能性細胞またはその分化した子孫を含む組成物を対象に投与する工程を含む、方法を記載する。いくつかの実施態様において、方法は、対象に組成物を投与する前に、予め規定された細胞系列に沿って多能性細胞を分化させる工程をさらに含み得る。
【0016】
1つの局面において、本明細書に、多能性細胞を含む組成物であって、多能性細胞が本明細書に記載の方法によって細胞から生成される、組成物を記載する。
【0017】
1つの局面において、本明細書に、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)または3i培地の存在下で細胞を培養する工程を含む、多能性細胞の自己再生能力を増加させる方法を記載する。いくつかの実施態様において、細胞は、ACTHを含むLIF培地中で培養される。いくつかの実施態様において、ACTHは約0.1μM〜約100μMの濃度で存在する。いくつかの実施態様において、細胞は本明細書に記載の方法によって生成される細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は全能性細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は、ACTHまたは3i培地の存在下で少なくとも3日間培養される。いくつかの実施態様において、細胞は、ACTHまたは3i培地の存在下で少なくとも5日間培養される。いくつかの実施態様において、細胞は、ACTHまたは3i培地の存在下で少なくとも7日間培養される。いくつかの実施態様において、培養する工程の後に、細胞は、検出可能なレベルの、以下からなる群より選択される幹細胞マーカーを発現する:Oct3/4;Nanog;Rex1;Klf4;Sox2;Klf2;Esrr−β;Tbx3;およびKlf5。
【0018】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法において使用される細胞はインビボである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法において使用される細胞はインビトロである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1A〜1Dは、CD45陽性体細胞からのOct4発現細胞の生成を示す。図1Aは、ストレス処理細胞のOct4−GFP発現を示す。ストレス処理細胞はOct4−GFPを発現し、一方、非処理コントロールはそうではなかった。Oct4発現コロニーの拡大図をストレス処理群中の右上に示す。スケールバーは100μmを示す。図1Bは、ストレス処理細胞および非ストレス処理コントロールの集団分析を示す。GFP発現細胞集団は5日目でストレス処理群においてのみ観察される。図1Cは、ストレス処理の前および後(7日目)のCD45陽性細胞の細胞サイズ分析を示す。図1Dは、ストレス処理後のCD45陽性細胞の経時変化を示す。
図2図2A〜2Bは、動物カルス細胞(ACC)の特徴付けを示す。図2Aは、多能性マーカー遺伝子の経時的遺伝子発現変化を示す。メッセンジャーRNAレベルをGAPDHに対して規準化した(n=3、平均+SD)。図2Bは、Oct4およびNanogプロモーター遺伝子のメチル化分析を示す。
図3図3A〜3Dは、ストレス処理後の細胞修飾を示す。図3Aは、ACC生成期の間のストレス防御遺伝子の相対的遺伝子発現を示す。サンプルを3日目および7日目に収集し、そしてCD45陽性細胞と比較した(n=3、平均+SD)。図3Bは、全細胞ATP測定を示す(n=3、平均+SD)。図3Cは、ROS測定を示す。エラーバーはSDを示す。図3Dは、mtDNA複製因子の相対的遺伝子発現を示す(n=3、平均+SD)。
図4図4A〜4Bは、ACCからのキメラマウス生成を示す。図4Aは、キメラマウス生成のスキームを示す。パネル(i)はACをトリプシンを用いて単一細胞に解離したことを示し、または、(パネルii)ACを小片に切断し、次いで胚盤胞中に注入した。図4Bは、キメラ寄与分析を示す。9匹の子からの組織をFACSによって分析した。
図5図5A〜5Cは、ACC生成条件を実験する。図5Aは、CD45陽性細胞を種々のストレスに曝露し、そしてOct4−GFP発現をFACSによって分析したことを示す。ストレス処理後の生存細胞におけるOct4−GFP発現細胞の百分率(n=3、平均+SD)。図5Bは、pH条件の決定を示す。CD45陽性細胞を様々なpH溶液に曝露した。ストレス処理の3日後に、Oct4−GFP発現をFACSによって分析した。図5Cは、培養条件の決定を示す。ストレス処理細胞を種々の培地中で培養した。GFP発現ACの数を14日目に計数した(n=3、平均+SD)。
図6図6A〜6Bは、ICRマウス由来のCD45陽性細胞からのACC生成を示す。図6Aは、ストレス処理後のCD45陽性細胞の経時変化を示す。E−カドヘリンおよびSSEA−1の発現をFACSによって分析した。図6Bは、E−カドヘリン/SSEA1二重陽性細胞のOct4遺伝子発現をRT−PCRによって確認したことを示す(n=3、平均+SD)。
図7図7A〜7Bは、GOFマウス由来の種々の組織からのACC生成を示す。図7Aは、ストレス処理後のOct4−GFP発現細胞の比率を示す。体細胞を種々の組織から単離し、そして種々のストレスに曝露した。Oct4−GFP発現をFACSによって分析した。図7Bは、種々の組織由来のACCの胚性遺伝子発現を示す。遺伝子発現をGAPDHによって規準化した(n=3、平均+SD)。
図8図8は、最初の7日間のストレス防御遺伝子の相対的遺伝子発現を示す。ストレス処理後、細胞を1、3および7日目に収集し、そして遺伝子発現を天然のCD45陽性細胞と比較した。青色グラフは、熱ショックタンパク質の遺伝子発現を示す。緑色グラフは、DNA修復遺伝子発現を示す。赤色グラフは、酸化還元遺伝子の遺伝子発現を示す。Y軸は発現の相対的倍数を示す。
図9図9は、ACCの分化を示す。グラフは、キメラ寄与分析を示す。種々の体細胞由来のACCを用いて生成したキメラ胎児をFACSによって分析した。グラフは、E13.5〜15.5の5匹のキメラ胎児の平均を示す。
図10図10は、ストレス処理が、間葉−上皮移行(Mesenchymal-Epithelial Transition)(MET)を介して体細胞へのリプログラミングを引き起こしたことを示す。MET関連遺伝子の発現を、天然細胞において、そしてストレス処理開始の3および7日後の細胞において示す。y軸は、その遺伝子についての発現レベルを有するサンプルにおけるレベルに対して規準化した、%発現を示す。
図11図11は、ストレスの前および後の細胞集団のFACS分析を示す。GFP発現は明らかであり、このことは、各々の試験した組織型由来のストレス後細胞集団における多能性細胞の生成を示す。
図12図12A〜12Eは、方向付けられた体細胞における低pH処理誘導運命転換を示す。図12Aは、実験プロトコルを模式的に示す。図12Bは、フローサイトメトリー分析を示す(上列:oct3/4::GFP/CD45;下列:非処理CD45細胞)。y軸は、Oct3/4:GFP細胞の数であり、そしてX軸は、CD45細胞の数である。両方の軸に、0、100、1000および10,000の主要な単位を示す。図12Cは、培養中の経時的な生存Oct3/4::GFPおよびoct3/4::GFP細胞のグラフを示す。図12Dは、Oct3/4::GFP細胞(左ピーク)およびCD45細胞(右ピーク)の細胞サイズのグラフを示す。図12Eは、ゲノムPCRによる単離されたoct3/4::GFP球状物におけるtcrβのゲノム再構成の分析の結果を示す。
図13図13A〜13Bは、低pH誘導Oct3/4細胞が多能性を有することを示す。図13Aは、CD45細胞と比較した、d7の低pH誘導oct3/4::GFP細胞におけるqPCRによる遺伝子発現分析のグラフを示す(このシリーズは、左から右に、oct3/4、nanog、sox2、ecat1、esg1、dax1およびklf4の発現を表す)。サンプルを3日目および7日目に収集し、そしてCD45陽性細胞と比較した(n=3、平均+SD)。図13Bは、oct3/4およびnanogプロモーター領域のバイサルファイトシーケンシングの結果を示す。CD45細胞は、さらなる培養有りまたは無しで、重度にメチル化されたパターンを両方のプロモーターで示した。
図14図14A〜14Bは、STAP細胞を他の組織供給源から得ることができることを示す。図14Aは、いくつかの組織についてのd7培養物のoct3/4::GFP細胞の産生の比率のグラフを示す(このシリーズは、左から右に、CD45細胞、骨髄、脳、肺、筋肉、脂肪、線維芽細胞、肝臓、および軟骨細胞を表す)。図14Bは、oct3/4::GFP細胞クラスターにおける遺伝子発現分析のグラフを示す(このシリーズは、左から右に、Oct3/4、Nanog、Sox2、Klf4およびRex1の発現を表す)。
図15図15A〜15Bは、多能性細胞としてのSTAP細胞の特徴付けを示す。図15Aは、STAP細胞におけるES細胞マーカーの遺伝子発現のグラフを示す(このシリーズは、左から右に、ES、EpiSC、STAPおよびCD45を表す)。図15Bは、STAP細胞におけるX染色体不活性化の%のグラフを示す。
図16図16Aは、種々のストレスに曝露したCD45陽性細胞におけるFACSによって分析したOct4−GFP発現のグラフを示す。ストレス処理後の生存細胞におけるOct4−GFP発現細胞の百分率(n=3、平均+SD)。図16Bは、pH条件の決定のグラフを示す。CD45陽性細胞を様々なpH溶液に曝露した。ストレス処理の3日後に、Oct4−GFP発現をFACSによって分析した(n=3、平均+SD)。図16Cは、培養条件の決定のグラフを示す。ストレス処理細胞を種々の培地中で培養した。GFP発現ストレス変化細胞塊の数を14日目に計数した(n=3、平均+SD)。
図17図17A〜17Bは、ICRマウス由来のCD45陽性細胞からのSAC生成を示す。図17Aは、ストレス処理後のCD45陽性細胞の経時変化を示す。E−カドヘリンおよびSSEA−1の発現をFACSによって分析した。図17Bは、RT−PCRによって確認した、E−カドヘリン/SSEA1二重陽性細胞のOct4遺伝子発現のグラフを示す(n=3、平均+SD)。
図18図18A〜18Bは、GOFマウス由来の種々の組織からのSAC生成を示す。図18Aは、ストレス処理後のOct4−GFP発現細胞の比率のグラフを示す。体細胞を種々の組織から単離し、そして種々のストレスに曝露した。Oct4−GFP発現をFACSによって分析した。このシリーズは、左から右に、BM、脳、肺、筋肉、脂肪、線維芽細胞および肝臓を表す。図18Bは、種々の組織由来のSACの胚性遺伝子発現のグラフを示す。遺伝子発現をGAPDHによって規準化した(n=3、平均+SD)。このシリーズは、左から右に、Oct4、Nanog、Sox2、Klf4およびEcat1を表す。
図19図19は、最初の7日間のストレス防御遺伝子の相対的遺伝子発現のグラフを示す。ストレス処理後、細胞を1、3および7日目に収集し、そして遺伝子発現を天然のCD45陽性細胞と比較した。Y軸は発現の相対的倍数を示す。
図20図20は、SAC、およびCD45細胞由来のSAC由来のキメラマウスの、TCRβ鎖再構成分析を示す。2Nキメラマウス#1、#2、#3、#5、#6、#7、#8および#9は再構成されたDNAを示した。
図21図21は、4Nキメラマウスの遺伝子型決定分析を示す。遺伝子決定を行って、129/Sv×B6GFP Fl由来のSACおよびICR由来の4N胚盤胞を用いて生成した4NキメラマウスがSAC(129/Sv×B6GFP)特異的遺伝子を示すことが判明した。
図22図22は、STAP細胞がインビボで胚および胎盤両方の組織に寄与することを示す。グラフは、注入した細胞が、胚部分のみに寄与する胎児、ならびに胎盤および卵黄嚢組織にも寄与する胎児の比率を示す。
図23図23A〜23Cは、FGF4処理がSTAP細胞においていくらかの栄養膜系列特性を誘導することを示す。図23Aは、STAP細胞からTS様(F4I)細胞を誘導するためのFGF4処理の模式図を示す。図23Bは、マーカー発現のqPCR分析のグラフを示す。図23Cは、FACS分析による胎盤寄与の定量のグラフを示す。F4I細胞とは異なり、ES細胞は検出可能なレベルで胎盤組織に寄与しなかった。
図24図24A〜24Dは、ES細胞様幹細胞をSTAP細胞から誘導できることを示す。図24Aは、STAP細胞由来の幹細胞株の誘導の模式図を示す。図24Bは、120日間にわたる維持培養におけるSTAP−S細胞の盛んな増殖を示すグラフを示す。同様の結果が16個の独立した株について得られた。対照的に、親STAP細胞は迅速に数が減少した。図24Cは、マーカー遺伝子発現のqPCR分析のグラフを示す。ESおよびSTAP−S細胞は、CD45細胞においては発現されていない多能性関連遺伝子を発現していた。図24Dは、バイサルファイトシーケンシングによるDNAメチル化研究の模式図を示す。
図25図25A〜25Bは、STAP幹細胞が、多能性であり、そして生殖細胞系列伝達および4倍体補完と適合性であることを示す。図25Aは、胚盤胞注入アッセイ(2N)におけるキメラマウス中の種々の組織へのSTAPS細胞の寄与のグラフを示す。図25Bは、胎盤組織への寄与のグラフを示す。親STAP細胞およびTS細胞とは異なり、STAPS細胞は胎盤寄与の能力をもはや保持していなかった。3つの独立した株を試験し、そして全てが胚部分への実質的な寄与を示した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本明細書に記載の技術の局面は、細胞からの多能性細胞の産生または生成に関する。本明細書に記載の技術の局面は、外来遺伝子、転写物、タンパク質、核成分もしくは細胞質を細胞に導入する必要なしに、または細胞融合の必要なしに、ストレスが細胞からの多能性幹細胞の産生を誘導できるという本発明者らの知見に基づく。いくつかの実施態様において、ストレスは、細胞における細胞質および/またはミトコンドリアの量の低下を誘導し;脱分化プロセスを惹起し、そして多能性細胞を生じる。いくつかの実施態様において、ストレスは、例えば、ストレスに曝露された細胞の少なくとも10%において、細胞膜の破壊を引き起こす。これらの多能性細胞は、3つの胚葉の各々に分化する能力(インビトロおよび/またはインビボ)、インビボでのテラトーマ様細胞塊の生成、および生存胚および/またはキメラマウスを生成する能力の1つ以上によって特徴付けられる。
【0021】
本明細書に、特定の環境ストレス(限定するものではないが、細胞における細胞質および/またはミトコンドリアの量を低下させるストレスを含む)での細胞の処理が、ミトコンドリア活性を低下させ、脱分化に関連するゲノムの領域を脱メチル化し、細胞に既知の脱分化経路のマーカーを提示させることができることを実証する実験を記載する。従って、いくつかの実施態様において、本明細書に、細胞から多能性細胞を生成する方法であって、細胞質および/またはミトコンドリアの少なくとも約40%を細胞から除去すること、および多能性または多能性マーカーを示す細胞を選択することを含み、ここで、細胞は組織中に存在しない、方法を提供する。細胞から多能性細胞を生成することができる他のストレス処理も本明細書に記載する。
【0022】
便宜のために、ここで、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において用いる特定の用語をここにまとめる。別段明言しないか、または文脈から暗黙でない限り、以下の用語および語句は以下に提供する意味を含む。別段明示的に明言しないか、または文脈から明白でない限り、以下の用語および語句は、それが関係する分野においてその用語または語句が獲得している意味を排除しない。定義は、特定の実施態様の記載の助けとなるように提供されており、そして請求される発明を限定することは意図しない。なぜなら、発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。別段定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0023】
本明細書において使用する用語「含む(comprising)」または「含む(comprises)」は、方法または組成物に必須である、組成物、方法、およびそのそれぞれの成分に関して使用され、必須であるかどうかにかかわらず、不特定の要素の包含の余地がある。
【0024】
本明細書において使用する用語「本質的にからなる」は、所定の実施態様のために必要とされる要素を指す。この用語は、実施態様の基本的なそして新規のまたは機能的な特徴に実質的に影響を及ぼさない要素の存在を許容する。
【0025】
用語「からなる」は、実施態様のその記載において記載されていないいかなる要素も除外する、本明細書に記載の組成物、方法、およびそのそれぞれの成分を指す。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別段指図しない限り、複数の言及を含む。従って、例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載の、そして/または本開示を読んだ際などに当業者に明白となる型の、1つ以上の方法および/または工程を含む。同様に、用語「または」は、文脈が明らかに別段示さない限り、「および」を含むことが意図される。本開示の実施または試験において本明細書に記載されるものと類似のまたは等価な方法および材料が使用され得るが、適切な方法および材料を以下に記載する。略語「e.g.」はラテン語「exempli gratia」に由来し、そして非限定的な例を示すために本明細書において使用される。従って、略語「e.g.」は、用語「例えば(for example)」と同義である。
【0027】
細胞生物学および分子生物学における一般的な用語の定義は、"The Merck Manual of Diagnosis and Therapy", 19th Edition, Merck Research Laboratories発行, 2006 (ISBN 0-911910-19-0); Robert S. Porter et al. (eds.)、およびThe Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd.発行, 1994 (ISBN 0-632-02182-9)中に見出され得る。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes X, Jones & Bartlett Publishing発行, 2009 (ISBN-10: 0763766321);Kendrew et al. (eds.)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.発行, 1995 (ISBN 1-56081-569-8)およびCurrent Protocols in Protein Sciences 2009, Wiley Intersciences, Coligan et al., eds.中にも見出され得る。
【0028】
別段明言しない限り、本発明は、例えば以下に記載されるような標準的な手順を使用して行われた:Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3 ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2001);Davis et al, Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (1995);Current Protocols in Cell Biology (CPCB) (Juan S. Bonifacino et. al. ed., John Wiley and Sons, Inc.)、およびCulture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique by R. Ian Freshney, Publisher: Wiley-Liss; 5th edition (2005), Animal Cell Culture Methods (Methods in Cell Biology, Vol. 57, Jennie P. Mather and David Barnes editors, Academic Press, 1st edition, 1998)(その全体を本明細書に参照により組み入れる)。
【0029】
用語「減少する」、「低下する」、「低下した」、および「低下」は全て、一般に、参照に対して相対的な統計学的に有意な量の減少を意味するために本明細書において使用される。しかし、疑義の回避のために、「低下する」、「低下」、または「減少する」は、典型的には、所定の処理の非存在と比較しての少なくとも10%の減少を意味し、そして例えば、所定の処理の非存在と比較しての所定の物体またはパラメーターの、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、例えば、完全な非存在までおよびそれを含む減少、または所定の処理の非存在と比較しての10〜99%の任意の減少を含み得る。
【0030】
用語「増加した」、「増加する」、または「増強する」は全て、一般に、統計学的に有意な量の増加を意味するために本明細書において使用され;いかなる疑義も回避するために、用語「増加した」、「増加する」、または「増強する」は、参照レベルと比較しての少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較しての、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または100%までおよびそれを含む増加、または10〜100%の任意の増加、あるいは参照レベルと比較しての少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍の増加、または2倍〜10倍の間もしくはより大きな任意の増加を意味する。
【0031】
疾患、障害または医学的状態に関して使用する場合、本明細書において使用する用語「処置する」、「処置(treatment)」、「処置(treating)」、または「寛解」は、状態のための治療的処置を指し、ここで、目的は、症状または状態の進行または重症度を逆転、緩和、寛解、阻害、減速または停止させることである。用語「処置(treating)」は、状態の少なくとも1つの有害作用または症状の低下または緩和を含む。処置は一般に、1つ以上の症状または臨床マーカーが低下した場合に「有効」である。あるいは、処置は、状態の進行が低下または停止した場合に「有効」である。すなわち、「処置」は、症状またはマーカーの改善だけでなく、処置の非存在下で予想される症状の進行または悪化の休止または少なくとも減速も含む。有益なまたは所望される臨床結果は、限定するものではないが、1つ以上の症状の緩和、欠陥の程度の縮小、安定化した(すなわち、悪化していない)健康状態、疾患進行の遅延または減速、および症状の寛解または軽減を含む。処置は、統計学的に死亡が予想される場合に生き延びる対象も含み得る。
【0032】
本明細書において使用する用語「投与」は、所望の部位における細胞の少なくとも部分的な局在化を生じる方法または経路による、本明細書に記載の方法に従って産生される多能性細胞および/または少なくとも部分的に分化したそのような多能性細胞の子孫の、対象中への配置を指す。本明細書に記載の方法に従って産生される多能性細胞および/または少なくとも部分的に分化したそのような多能性細胞の子孫を含む医薬組成物を、対象において有効な処置を生じる任意の適切な経路によって投与することができる。
【0033】
本明細書において使用する「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、霊長類、げっ歯類、家畜または猟獣のような脊椎動物である。霊長類は、例えば、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザルを含む。げっ歯類は、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターを含む。家畜および猟獣は、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、水牛、ネコ種(例えば、イエネコ)、イヌ種(例えば、イヌ、キツネ、オオカミ)、鳥類(例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ)、ならびに魚類(例えば、マス、ナマズおよびサケ)を含む。患者または対象は、上記、例えば上記の全て、の任意のサブセットを含む。特定の実施態様において、対象は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。
【0034】
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物を、所定の細胞または組織の欠損、機能不全および/または不全、あるいは幹細胞コンパートメントの欠損、機能不全または不全に関連する疾患の動物モデルを表す対象として有利に使用することができる。さらに、本明細書に記載の方法を、家畜および/またはペットを処置するために使用することができる。対象は雄性または雌性であり得る。対象は、細胞型、組織、または幹細胞コンパートメントの欠損、機能不全および/または不全、あるいはそのような状態に関連する1つ以上の疾患または状態に罹患しているかまたはそれを有していると以前に診断または同定され、任意に、しかしそのような状態のための処置を既に経る必要がなかったものであり得る。対象はまた、細胞型もしくは組織の、または幹細胞コンパートメントの欠損、機能不全および/または不全を含む状態に罹患していると診断または同定されたが、そのような状態のための1つ以上の処置を受けた結果として既知の危険因子における改善を示すものであり得る。あるいは、対象はまた、そのような状態を有するとして以前に診断されていないものであり得る。例えば、対象は、そのような状態のための1つ以上の危険因子を示すもの、またはそのような状態のための危険因子を示さない対象であり得る。
【0035】
細胞または細胞の集団に関して使用する場合、本明細書において使用する用語「選択」は、所望の特徴を有する1つ以上の細胞を選ぶ、分離する、隔離する、そして/または選択的に増殖させることを指す。本明細書において使用する用語「選択」は、所望の特徴を有しない細胞が、提供される条件において増殖できないことを必ずしも意味しない。
【0036】
本明細書において使用する「維持」は、細胞または細胞の集団の生存能の継続を指す。維持される集団は、いくつかの代謝活性細胞を有する。これらの細胞の数は少なくとも1日の期間にわたっておおよそ安定であり得るか、または増大し得る。
【0037】
本明細書において使用する「検出可能なレベル」は、物質または活性の量が参照レベル(例えば、ストレスに曝露されていない細胞における物質または活性のレベル)から区別されることを可能にする、サンプルにおける物質または活性のレベルを指す。いくつかの実施態様において、検出可能なレベルは、参照レベルよりも少なくとも10%大きな、例えば、10%大きな、20%大きな、50%大きな、100%大きな、200%大きな、または300%もしくはより大きなレベルであり得る。
【0038】
用語「統計学的に有意」または「有意」は、統計学的な有意性を指し、そして一般に参照の上または下の2標準偏差(2SD)の差を意味する(例えば、マーカー(例えば、幹細胞マーカーまたは分化マーカー)の濃度または存在量)。この用語は、差が存在することの統計学的な証拠を指す。これは、帰無仮説が実際に真である場合に帰無仮説を拒絶する決定をする確立として定義される。決定はしばしばp値を使用してなされる。
【0039】
具体例におけるかまたは別段示す場合以外、本明細書において使用する成分の量または反応条件を表す全ての数は、全ての場合に用語「約」によって修飾されるものと理解するべきである。百分率に関連して使用する場合、用語「約」は±1%を意味し得る。
【0040】
他の用語は、本明細書に記載の技術の種々の局面の記載内で本明細書において定義される。
【0041】
本明細書に記載の技術の局面は、細胞から多能性細胞を生成する方法、ならびにその多能性細胞の用途およびそれを使用する方法に関する。リプログラミング因子の発現を増加させること(例えば、1つ以上のリプログラミング因子(例えば、Oct4)をコードする核酸構築物を導入することによって)に依存する多能性細胞を生成する既存の方法(すなわち、誘導多能性幹細胞またはiPS細胞)とは対照的に、本明細書に記載の方法は、細胞をストレスに供するが、外来リプログラミング因子の導入を必要としない。
【0042】
いくつかの実施態様において、ストレスは、細胞の細胞質の体積および/または細胞のミトコンドリアの数を低下させる。細胞の細胞質の体積または細胞のミトコンドリアの数の低下は、ストレス応答を誘導し、その間に細胞は少なくとも多能性能力を獲得する。1つの局面において、本明細書に、細胞質の少なくとも約40%を細胞から除去し、そして多能性を示す細胞を選択することを含み、ここで、細胞は組織中に存在しない、多能性細胞を生成する方法を記載する。1つの局面において、本明細書に記載の発明は、ミトコンドリアの少なくとも約40%を細胞から除去し、そして多能性を示す細胞を選択することを含み、ここで、細胞は組織中に存在しない、多能性細胞を生成する方法に関する。
【0043】
本明細書に記載の方法、アッセイおよび組成物において使用する細胞は、任意の型の細胞(例えば、成体細胞、胚細胞、分化細胞、幹細胞、前駆細胞および/または体細胞)であり得る。細胞は上記の用語の組み合わせによって記載され得、例えば、細胞は胚性幹細胞または分化した体細胞であり得る。本明細書に記載の方法、アッセイおよび組成物において使用する細胞を、対象から得ることができる。いくつかの実施態様において、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施態様において、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は成体細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は新生児細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は胎児細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は羊水細胞である。いくつかの実施態様において、細胞は臍帯血細胞である。
【0044】
「成体」は、生後の任意の時点の動物対象由来のまたはその内部の組織および細胞を指す。「胚」は、誕生前の任意の時点の動物対象由来のまたはその内部の組織および細胞を指す。
【0045】
本明細書において使用する用語「体細胞」は、生殖細胞、着床前胚中に存在するかもしくはそれから得られる細胞、またはそのような細胞のインビトロでの増殖から生じる細胞以外の任意の細胞を指す。言い換えれば、体細胞は、生殖系列細胞とは異なり、生物の身体を形成する任意の細胞を指す。哺乳動物において、生殖系列細胞(「配偶子」としても知られる)は、精子および卵子であり、これらは受精の間に融合して、そこから哺乳動物胚全体が発生する接合子と称する細胞を産生する。哺乳動物体中の全ての他の細胞型(精子および卵子、それからそれらが作られる細胞(配偶子母細胞)ならびに未分化幹細胞は別として)は、体細胞である:内臓、皮膚、骨、血液および結合組織は全て体細胞から構成されている。いくつかの実施態様において、体細胞は「非胚性体細胞」であり、これによって、胚中に存在しないかまたはそれから得られず、そしてそのような細胞のインビトロでの増殖から生じない体細胞が意味される。いくつかの実施態様において、体細胞は「成体体細胞」であり、これによって、胚または胎児以外の生物中に存在するかまたはそれから得られ、あるいはそのような細胞のインビトロでの増殖から生じる細胞が意味される。成体および新生児または胚細胞は構造的差異(例えば、メチル化パターンのようなエピジェネティック構成によって区別され得ることに留意される。いくつかの実施態様において、体細胞は哺乳動物体細胞である。いくつかの実施態様において、体細胞はヒト体細胞である。いくつかの実施態様において、体細胞は成体体細胞である。いくつかの実施態様において、体細胞は新生児体細胞である。
【0046】
本明細書において使用する「分化細胞」は、その運命または機能において、その発生における以前の時点よりも専門化された細胞を指し、そして最終分化した細胞、および、最終分化はしていないがその発生における以前の時点よりも専門化された細胞の両方を含む。方向付けられていない細胞(例えば、幹細胞)から、特定の分化細胞型への、そして最終的に最終分化細胞への方向付けの程度が増加している細胞への細胞の発生は、進行性分化または進行性方向付けとして知られる。細胞個体発生の文脈において、形容詞「分化した」または「分化している」は相対的な用語である。「分化細胞」は、それが比較される細胞よりも発生経路をさらに下って進行した細胞である。従って、幹細胞は、系列制限された前駆細胞(例えば、中胚葉幹細胞)に分化することができ、それは今度は、経路をさらに下って他の型の前駆細胞(例えば、心筋細胞前駆体)に、次いで最終段階の分化細胞(これは、特定の組織型において特徴的な役割を担い、そしてさらに増殖する能力を保持していてもよくしていなくてもよい)に分化することができる。
【0047】
本明細書において使用する用語「幹細胞」は、発生能力に関する特定の暗示される意味(すなわち、全能性、多能性、複能性など)なしに、自己再生の性質を有し、そしてより分化した細胞型に自然に分化する発生能力を有する、未分化のまたは部分的に分化した状態にある細胞を指す。自己再生によって、幹細胞が、その発生能力を維持しながら、増殖しそしてより多くのそのような幹細胞を生じる能力を有することが意味される。従って、用語「幹細胞」は、特定の状況下で、より専門化したまたは分化した表現型に分化する発生能力を有し、そして特定の状況下で、実質的に分化することなしに増殖する能力を保持する、細胞の任意のサブセットを指す。用語「体性幹細胞」は、胎児、幼若および成体組織を含む、非胚性組織由来の任意の幹細胞を指すために本明細書において使用される。天然の体性幹細胞が、血液、骨髄、脳、嗅上皮、皮膚、膵臓、骨格筋および心筋を含む多種の成体組織から単離されている。例示的な天然の体性幹細胞は、限定するものではないが、間葉幹細胞および造血幹細胞を含む。いくつかの実施態様において、幹または前駆細胞は胚性幹細胞であり得る。本明細書において使用する「胚性幹細胞」は、受精後であるが妊娠の終了前に形成される組織(胚前組織(例えば、胚盤胞のような)、胚組織、または妊娠の間の任意の時点(典型的には、必ずしもそうではないが、妊娠の約10〜12週前)に取られた胎児組織を含む)由来の幹細胞を指す。最も頻繁には、胚性幹細胞は、初期胚または胚盤胞に由来する全能性細胞である。胚性幹細胞を、適切な組織(限定するものではないが、ヒト組織を含む)から直接、または樹立された胚細胞株から得ることができる。1つの実施態様において、胚性幹細胞は、Thomson et al.(米国特許第5,843,780号および同第6,200,806号;Science 282: 1145, 1998;Curr. Top. Dev. Biol. 38: 133 ff, 1998;Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:7844, 1995(これらの全体を参照により本明細書に組み入れる))によって記載されるように得られる。
【0048】
例示的な幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞、多能性幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、筋肉幹細胞、筋肉前駆幹細胞、内皮前駆細胞、骨髄幹細胞、軟骨形成幹細胞、リンパ幹細胞、間葉幹細胞、造血幹細胞、中枢神経系幹細胞、抹消神経系幹細胞など含む。幹細胞の記載(それを単離および培養するための方法を含む)は、とりわけ、Embryonic Stem Cells, Methods and Protocols, Turksen, ed., Humana Press, 2002;Weisman et al, Annu. Rev. Cell. Dev. Biol. 17:387 403;Pittinger et al, Science, 284: 143 47, 1999;Animal Cell Culture, Masters, ed., Oxford University Press, 2000;Jackson et al, PNAS 96(25): 14482 86, 1999;Zuk et al, Tissue Engineering, 7:211 228, 2001 ("Zuk et al.");Atala et al,特にChapters 33 41;および米国特許第5,559,022号, 同第5,672,346号および同第5,827,735号中に見出され得る。間質細胞の記載(それを単離するための方法を含む)は、とりわけ、Prockop, Science, 276:71 74, 1997;Theise et al, Hepatology, 31 :235 40, 2000;Current Protocols in Cell Biology, Bonifacino et al, eds., John Wiley & Sons, 2000(2002年3月までのアップデートを含む);および米国特許第4,963,489号中に見出され得る。
【0049】
本明細書において使用する「前駆細胞」は、未分化または部分的分化状態にあり、そして、発生能力に関する特定の暗示される意味(すなわち、全能性、多能性、複能性など)なしに、少なくとも1つのより分化した表現型に分化する発生能力を有し、そして自己再生の性質を有しない細胞を指す。従って、用語「前駆細胞」は、特定の状況下でより専門化または分化した表現型に分化する発生能力を有する細胞の任意のサブセットを指す。いくつかの実施態様において、幹または前駆細胞は、多能性幹細胞である。いくつかの実施態様において、幹または前駆細胞は、全能性幹細胞である。
【0050】
用語「全能性」は、身体中の任意の組織または細胞型を生じることができる幹細胞を指す。「多能性」幹細胞は、生殖系列細胞以外の身体中の任意の型の細胞を生じることができる。より少ないかまたは限定された数の異なる細胞型を生じることができる幹細胞を、一般に「複能性」と称する。従って、全能性細胞は、胎児発生に必要な組織の大部分(全部ではない)を生じることができる多能性細胞に分化する。多能性細胞は、特定の機能を有する細胞を生じるように方向付けられている複能性細胞へのさらなる分化を経る。例えば、複能性造血幹細胞は、血液中の赤血球、白血球および血小板を生じる。
【0051】
本明細書において使用する用語「多能性」は、3つ全ての胚葉(すなわち、内胚葉(例えば、腸組織)、中胚葉(例えば、血液、筋肉、および血管)、ならびに外胚葉(例えば、皮膚および神経))に特徴的な細胞型に様々な条件下で分化する能力を有する細胞を指す。多能性細胞は、例えば、ヌードマウステラトーマ形成アッセイを使用して、3つ全ての胚葉に分化するその能力によって主に特徴付けられる。多能性は、胚性幹(ES)細胞マーカーの発現によっても証明されるが、多能性のための好ましい試験は、3つの胚葉の各々の細胞に分化する能力の実証である。
【0052】
本明細書中の実施例に記載される「ACC」および「STAP」細胞は、多能性細胞の非限定的な例である。「STAP幹細胞」は、多能性幹細胞の非限定的な例である。多能性細胞なる用語および多能性幹細胞なる用語は本明細書において互換的に使用され得る。なぜなら、両方の細胞が本発明の目的のために適切に使用され得るからである。
【0053】
本明細書において使用する用語「多能性」または「多能性状態」は、3つ全ての胚葉:内胚葉(腸組織)、中胚葉(血液、筋肉、および血管を含む)、ならびに外胚葉(例えば、皮膚および神経))に分化する能力を有する細胞を指す。
【0054】
「複能性細胞」に関して使用される場合、用語「複能性」は、3つ全ての胚葉由来の細胞の全てではないがいくつかに分化することができる細胞を指す。従って、複能性細胞は、部分的に分化した細胞である。複能性細胞は、当該分野において周知であり、そして複能性細胞の非限定的な例は、例えば、造血幹細胞および神経幹細胞のような成体幹細胞を含み得る。複能性は、幹細胞が、他の系列の細胞ではなく、所定の系列における多くの型の細胞を形成し得ることを意味する。例えば、複能性血液幹細胞は、多くの異なる型の血液細胞(赤、白、血小板など)を形成することができるが、それは神経細胞を形成することができない。用語「複能性」は、全能性および多能性より低い程度の発生万能性を有する細胞を指す。
【0055】
用語「全能性」は、成体身体中の全ての細胞、および胎盤を含む胚体外組織を作る能力を示す分化の程度を有する細胞を指す。受精卵(接合子)は、初期分割細胞(割球)のように全能性である。
【0056】
本明細書に記載の方法において使用する細胞は、組織中に存在しない細胞であり得る。本明細書において使用する「組織」は、少なくとも1つの特定の機能の実行において結び付けられた、同様に専門化された細胞の組織化された生物材料(例えば、群、層、または凝集体)を指す。細胞が組織化された超構造から取り出されるか、またはそうでなければインビボで存在する組織化された超構造から分離されると、それはもはや組織中に存在しない。例えば、血液サンプルが2つ以上の非同一画分に分離されるか、または脾臓が刻まれそしてパスツールピペットを用いて機械的に解離されると、細胞はもはや組織中に存在しない。いくつかの実施態様において、組織中に存在しない細胞は、単離された細胞である。細胞に関して本明細書において使用する用語「単離」は、インビボでそれが通常結合している別の細胞群から機械的または物理的に分離されている細胞を指す。別の細胞群から1つ以上の細胞を単離するための方法は当該分野において周知である。例えば、Culture of Animal Cells: a manual of basic techniques (3rd edition), 1994, R. I. Freshney (ed.), Wiley-Liss, Inc.;Cells: a laboratory manual (vol. 1), 1998, D. L. Spector, R. D. Goldman, L. A. Leinwand (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press;Animal Cells: culture and media, 1994, D. C. Darling, S. J. Morgan, John Wiley and Sons, Ltd.を参照のこと。任意に、単離された細胞は、例えば他の細胞の存在下で、インビトロで培養されている。
【0057】
いくつかの実施態様において、細胞は、組織中には存在しないが、細胞の集団中に存在する。いくつかの実施態様において、細胞の集団は細胞の集団である。本明細書において使用する「細胞の集団」は、少なくとも2個の細胞、例えば、2個の細胞、3個の細胞、4個の細胞、10個の細胞、100個の細胞、1000個の細胞、10,000個の細胞、100,000細胞、または任意の間の数、またはより多くの細胞の群を指す。任意に、細胞の集団は、共通の起源を有する細胞であり得、例えば、それは同じ親細胞の子孫であり得るか、それはクローン性であり得るか、それは同じ組織から単離された細胞から単離されたかもしくはその子孫であり得るか、またはそれは同じ組織サンプルから単離された細胞から単離されたかもしくはその子孫であり得る。細胞の集団は、1つ以上の細胞型、例えば、1つの細胞型、2つの細胞型、3つの細胞型、4つの細胞型、またはより多くの細胞型を含み得る。細胞の集団は、不均一または均一であり得る。細胞の集団は、それが少なくとも90%の同じ細胞型を含む(例えば、集団中の細胞の90%、92%、95%、98%、99%、またはより多くが同じ細胞型のものである)場合、実質的に均一であり得る。細胞の集団は、集団中に存在する細胞の90%未満が同じ細胞型のものである場合、不均一であり得る。
【0058】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法は、非多能性細胞(例えば、分化細胞)に多能性表現型を取らせることに関し得る。いくつかの実施態様において、多能性細胞を生成することは、より多くの多能性表現型を有する細胞を生成すること、すなわち、より広い分化能力を有する表現型を細胞に取らせることを含み得る。非限定的な例として、極小胚様(VSEL)細胞は、多能性ではなく単能性であり得、そして/または特定の分化細胞型に分化するその能力において限定され得る(おそらく胚性幹細胞よりも分化細胞により近く類似したVSELのエピジェネティック状態に起因して)。本明細書に記載の方法に従って、単能性細胞および/または限定された分化能力を有する細胞に、より多能性の表現型を取らせることができる。より多能性の表現型は、より多数の分化細胞型(例えば、2つの単能性細胞の)に分化することができる表現型であり得、より多数のその系列の分化細胞型に分化することができるものはより多能性であり、そして/または多能性細胞は単能性細胞より多能性である。
【0059】
本明細書に記載の多能性細胞(またはより多能性の細胞)を生成する方法は、例えば、細胞質の一部を細胞から除去することおよび/またはミトコンドリアを細胞から除去することを含み得る。いくつかの実施態様において、細胞質またはミトコンドリアの一部の細胞からの除去は、細胞の部分的エピジェネティック制御を除去する。いくつかの実施態様において、細胞質の少なくとも約40%を除去し、例えば、細胞の細胞質の少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはより多くを除去する。いくつかの実施態様において、細胞の細胞質の60%〜80%を除去する。いくつかの実施態様において、ミトコンドリアの少なくとも約40%を除去し、例えば、細胞のミトコンドリアの少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはより多くを除去する。いくつかの実施態様において、細胞のミトコンドリアの50%〜90%を除去する。
【0060】
細胞をストレスに供しそして/または細胞質もしくはミトコンドリアの一部を細胞から除去する方法は、致死性の閾値より下で細胞の膜において細孔および/または破裂を引き起こす任意の環境刺激であり得る。ストレスは、組織または細胞培養物における非生理的ストレスを含み得る。適切な環境刺激の非限定的な例は、外傷、機械的刺激、化学的曝露、超音波刺激、酸素欠乏、栄養欠乏、照射、極度な温度への曝露、解離、トリチュレーション(trituration)、物理的ストレス、高浸透圧、低浸透圧、膜損傷、毒素、極度のイオン濃度、活性酸素、UV曝露、強可視光、必須栄養の欠乏、または非生理的酸性環境を含む。いくつかの実施態様において、1つの環境刺激が細胞に適用され得る。いくつかの実施態様において、複数の環境刺激が細胞に適用され得、例えば、2つの刺激、3つの刺激、4つの刺激、またはより多くの刺激が適用され得る。複数の環境刺激を同時にまたは別々に適用し得る。
【0061】
いくつかの実施態様において、ストレスは、ストレスに曝露された細胞の少なくとも10%において膜破壊を引き起こすストレスであり得る。本明細書において使用する「膜破壊」は、検出可能な量のオルガネラおよび/または細胞物質(限定するものではないが、ミトコンドリアおよびDNAを含む)を細胞外環境中に放出させるために十分な細孔または間隙が形成されるように膜を損傷、破裂または破壊することを指す。細胞物質(例えば、ミトコンドリア)の放出を検出する方法は、当該分野において公知であり、そして本明細書において他所に記載されている。放出された細胞物質は、遊離し、または被包され、または膜によって囲まれ得る。
【0062】
ストレスは、ストレスに曝露された細胞の少なくとも10%、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上において膜破壊を引き起こし得る。いくつかの実施態様において、ストレスに曝露された細胞は、本明細書に記載のようにより多能性にしようとする細胞と同じ型および特徴の細胞であり得、例えば、1つの型の細胞に適切なストレスは、別の型の細胞には適切でないかもしれない。
【0063】
細胞がストレスに曝露される時間の長さは、使用される刺激に依存して変動し得る。例えば、本明細書に記載の方法に従って細胞にストレスを与えるために低栄養条件を使用する場合、細胞を低栄養条件下で1週間以上、例えば、1週間、2週間、または3週間もしくはより長く培養し得る。いくつかの実施態様において、細胞を低栄養条件下で約3週間培養する。別の非限定的な例において、本明細書に記載の方法に従って低pHまたは低酸素条件に曝露する細胞を、数分間またよりは長く(例えば、数時間を含む)、例えば、少なくとも2分間、少なくとも5分間、少なくとも20分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間またはより長く曝露し得る。
【0064】
多能性細胞の生成を誘導する機械的刺激は、膜の完全性を機械的に破壊する、物質または表面の細胞膜との任意の形態の接触を含み得る。機械的刺激は、細胞を剪断ストレスおよび/または高圧に曝露することを含み得る。機械的刺激の例示的な形態はトリチュレーションである。トリチュレーションは、摩擦を介して粒子の表面を研磨および/または摩減するプロセスである。細胞のトリチュレーションのためのプロセスの非限定的な例は、デバイスを通して細胞を通過させることであり、ここで、デバイスは細胞のサイズより小さな開口を有する。例えば、真空圧および/または流体の流れによって、ピペットの内部空間の少なくとも一部が細胞の直径より小さな直径を有するピペットを通して、細胞を通過させることができる。いくつかの実施態様において、細胞のサイズより小さな開口を有する少なくとも1つのデバイスを通して細胞を通過させる。いくつかの実施態様において、漸進的により小さな開口を有するいくつかのデバイスを通して細胞を通過させる。いくつかの実施態様において、5分間以上、例えば、5分間、10分間、20分間、30分間、または60分間細胞をトリチュレーションすることができる。いくつかの実施態様において、50μmの内径を有するパスツールピペットを通して細胞を通過させることによって、細胞をトリチュレーションすることができる。いくつかの実施態様において、50μmの内径を有するパスツールピペットを通して20分間細胞を通過させることによって、細胞をトリチュレーションすることができる。
【0065】
多能性細胞を生成するように細胞を誘導するために必要なストレスを適用する他の方法は、例えば、特定の化学物質または物理化学的条件(例えば、高または低pH、浸透圧ショック、温度極度、酸素欠乏など)への曝露を含む。多能性細胞の生成を誘導するこの種類および他の処理を以下でさらに考察する。化学的曝露は、例えば、pH,浸透圧、および/または細胞膜の完全性を破壊または損傷する細孔形成化合物の任意の組み合わせを含み得る。非限定的な例として、細胞を、非生理的酸性環境もしくは低pH、ストレプトリシンO、または蒸留水(すなわち、浸透圧ショック)に曝露することができる。
【0066】
低pHは、6.8より低いpH、例えば、6.7、6.5、6.3、6.0、5.8、5.4、5.0、4.5、4.0またはより低いpHを含み得る。いくつかの実施態様において、低pHは約3.0〜約6.0である。いくつかの実施態様において、低pHは約4.5〜約6.0である。いくつかの実施態様において、低pHは5.4〜5.8である。いくつかの実施態様において、低pHは5.4〜5.6である。いくつかの実施態様において、低pHは約5.6である。いくつかの実施態様において、低pHは約5.7である。いくつかの実施態様において、低pHは約5.5である。いくつかの実施多様において、細胞は低pH条件に数日間まで、例えば、6日間以下、4日間以下、3日間以下、2日間以下、1日間以下、12時間以下、6時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、30分間以下、20分間以下、または10分間以下曝露され得る。いくつかの実施態様において、細胞はpH5.4〜5.6に3日間以下曝露され得る。いくつかの実施態様において、細胞は約5.6〜6.8のpHに3日間以下曝露され得る。いくつかの実施態様において、細胞は約5.6〜6.8のpHに1時間以下曝露され得る。いくつかの実施態様において、細胞は約5.6〜6.8のpHに約30分間曝露され得る。いくつかの実施態様において、細胞は約5.6〜6.8のpHに約20分間曝露され得る。いくつかの実施態様において、細胞は約5.6〜5.8のpHに3日間以下曝露され得る。いくつかの実施態様において、細胞は約5.6〜5.8のpHに1時間以下曝露され得る。いくつかの実施態様において、細胞は約5.6〜5.8のpHに約30分間曝露され得る。いくつかの実施態様において、細胞は約5.6〜5.8のpHに約20分間曝露され得る。
【0067】
いくつかの実施態様において、細胞をATPに曝露して、多能性細胞の生成を誘導することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約20μM〜約200mMの濃度のATPに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約200μM〜約20mMの濃度のATPに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約2.4mMの濃度のATPに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を、HBSS中で希釈したATPに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞をATPに1分間以上、例えば、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも5分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間、少なくとも1時間またはより長く曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞をATPに約5分間〜約30分間曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞をATPに約15分間曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約2.4mMのATPに約15分間曝露することができる。
【0068】
いくつかの実施態様において、細胞をCaClに曝露して、多能性細胞の生成を誘導することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約20μM〜約200mMの濃度のCaClに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約200μM〜約20mMの濃度のCaClに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約2mMの濃度のCaClに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を、HBSS中で希釈したCaClに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞をCaClに1日間以上、例えば、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間またはより長く曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞をCaClに約1週間〜3週間曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞をCaClに約2週間曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約2mMのCaClに約2週間曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約2mMのCaClに約1週間曝露することができる。
【0069】
細孔形成化合物の例は、ストレプトリシンO(SLO)、サポニン、ジギトニン、フィリピン、Ae I、イソギンチャクの細胞溶解素、アエロリシン、アマトキシン、アメーバポア、Entamoeba dispar由来のアメーバポアホモログ、ブレビニン−1E、ブレビニン−2E、バルバトリシン、Enterococcus faecalisの細胞溶解素、δヘモリシン、ジフテリア毒素、Vibrio choleraeのE1 Tor細胞溶解素、エクイナトキシン、Aeromonas hydrophilaのエンテロトキシン、エスクレンチン、グラニュリシン、Vibrio parahaemolyticusのヘモリシン、Streptococcus intermedinsのインターメディリシン、レンチウイルス溶解ペプチド、Actinobacillus actinomycetemcomitansのロイコトキシン、マガイニン、メリチン、膜結合リンホトキシン、Met−エンケファリン、ネオキオトルフィン、ネオキオトルフィンフラグメント1、ネオキオトルフィンフラグメント2、ネオキオトルフィンフラグメント3、ネオキオトルフィンフラグメント4、NKリシン、パラダキシン、Staphylococcus aureusのα細胞溶解素、 Clostridium septicumのα細胞溶解素、Bacillus thuringiensis毒素、コリシン、補体、デフェンシン、ヒストリシン、リステリオリシン、マガイニン、メリチン、ニューモリシン、酵母キラー毒素、バリノマイシン、ペダーセンのクラウンエーテル、パーフォリン、パーフリンゴリシンO、Clostridium perfringensのθ毒素、ファロリシン、ファロトキシン、および他の分子、例えばRegen et al. Biochem Biophys Res Common 1989 159:566-571(その全体を参照により本明細書に組み入れる)に記載されるものを含む。細孔形成化合物を精製または合成する方法は当業者に周知である。さらに、細孔形成化合物は市販されている(例えば、ストレプトリシンO(Cat No. S5265; Sigma-Aldrich; St. Louis, MO))。非限定的な例として、細胞をSLOに約5分間以上、例えば、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、またはより長く曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞をSLOに約30分間〜2時間曝露する。いくつかの実施態様において、細胞をSLOに約50分間曝露する。非限定的な例として、細胞を約10ng/mL〜1mg/mLの濃度のSLOに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約1μg/mL〜100μg/mLの濃度のSLOに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約10μg/mLのSLOに曝露することができる。いくつかの実施態様において、細胞を約10μg/mLのSLOに約50分間曝露することができる。
【0070】
多能性細胞の生成を誘導する酸素欠乏条件は、細胞を低下した酸素条件下で培養すること、例えば、細胞を10%以下の酸素中で培養することを含み得る。いくつかの実施態様において、細胞を5%以下の酸素下で培養する。低下した酸素条件下での培養の長さは、1時間以上、例えば、1時間、12時間、1日間、2日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間またはより長くであり得る。いくつかの実施態様において、細胞を低下した酸素条件下で1週間〜1ヶ月間培養することができる。いくつかの実施態様において、細胞を低下した酸素条件下で約3週間培養することができる。
【0071】
多能性細胞の生成を誘導する栄養欠乏条件は、細胞増殖に有益な任意の因子または栄養素の欠乏を含み得る。いくつかの実施態様において、栄養欠乏条件は、FBSまたは増殖因子のようなさらなる補充物なしに、基本培養培地、例えば、F12またはDMEM中で細胞を培養することを含む。栄養欠乏条件における培養の長さは、1時間以上、例えば、1時間、12時間、1日間、2日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間またはより長くであり得る。いくつかの実施態様において、細胞を栄養欠乏条件下で1週間〜1ヶ月間培養することができる。いくつかの実施態様において、細胞を栄養欠乏条件下で約2週間培養することができる。いくつかの実施態様において、細胞を栄養欠乏条件下で約3週間培養することができる。いくつかの実施態様において、栄養欠乏条件は、増殖因子なしの条件、または所定の細胞型のための1つ以上の増殖因子の標準的濃度の50%未満を用いる条件を含み得る。
【0072】
多能性細胞の生成を誘導する極度な温度への曝露は、低温または高温のいずれかへの曝露を含み得る。哺乳動物細胞について、極度な低温は、35℃より低い温度、例えば34℃、33℃、32℃、31℃またはより低い温度であり得る。いくつかの実施態様において、極度な低温は、凍結より低い温度であり得る。細胞の凍結は、氷結晶による膜穿孔を引き起こし得、そして細胞質を低下させるための道を提供する。哺乳動物細胞について、極度な高温は、42℃より高い温度、例えば43℃、44℃、45℃、46℃またはより高い温度であり得る。いくつかの実施態様において、極度な高温は、約85℃以上の温度であり得る。極度な温度下での培養の長さは、20分間以上、例えば、20分間、30分間、1時間、12時間、1日間、2日間、1週間、2週間、3週間、1カ月間、2カ月間またはより長くであり得る。明らかに、温度が高ければ高いほど、多能性細胞の生成を可能にするために一般に許容される曝露は短くなる。
【0073】
本明細書に記載の方法において使用することができるストレスのさらなる例は、限定するものではないが、超音波刺激および照射処理を含む。
【0074】
いくつかの実施態様において、ストレスに曝露した後、細胞を、本明細書において下記する方法に従った選択の前に培養することができる。細胞を、選択の前に少なくとも1時間培養することができ、例えば、ストレス性刺激を除去しそして細胞を、本明細書に記載のような選択の前に少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも7日間またはより長く培養する。非限定的な例として、細胞をSLOに約50分間曝露し、次いで選択の前にSLOを含まない培養培地中で約7日間培養することができる。いくつかの実施態様において、選択の前に細胞を培養するために使用する培養培地は、分化因子を含まないかまたは分化を促進しない。いくつかの実施態様において、培養培地は、幹細胞および/または多能性細胞の培養に適切なものである。そのような培地の例を本明細書において下記する。
【0075】
いくつかの実施態様において、細胞中の細胞質の量を低下させる。細胞中の細胞質の低下を、細胞のサイズをモニターすることによって決定することができる。細胞サイズを決定する方法は、当業者に周知であり、そして非限定的な例として細胞蛍光測定分析を含む。簡潔には、単一細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、フィルターし、そして例えばFLOMAX(商標)ソフトウェアを使用してDAKO GALAXY(商標)(DAKO)アナライザー上で測定する。次いで、細胞蛍光測定分析を行って、細胞サイズを確立することができる。予め規定されたサイズのマイクロビーズを等張リン酸食塩水(pH7.2)中に再懸濁し、そして細胞蛍光測定分析を使用して球状物中に含まれる細胞のサイズを比較するための標準として使用する。細胞およびビーズの両方を同じ機器設定(細胞およびビーズのサイズを表す前方散乱、ならびに細胞の粒度を表す側方散乱)を使用して分析する。細胞サイズを、曲線上で、x軸上のビーズサイズおよびy軸上の前方散乱値を用いて算出することができる。
【0076】
いくつかの実施態様において、細胞中のミトコンドリアの量を低下させる。細胞中のミトコンドリアの数を決定する方法は、当業者に周知であり、そしてミトコンドリア特異的色素での染色および顕微鏡下で見たときの細胞当たりの可視ミトコンドリアの数の計数を含む。ミトコンドリア特異的色素は市販されている(例えば、MITOTRACKER(商標)(Cat No M7512 Invitrogen; Grand Island, NY))。いくつかの実施態様において、ミトコンドリアの数またはミトコンドリア特異的色素からのシグナルの強度は、本明細書において上記する方法を用いる処理の後に少なくとも40%減少し得る。いくつかの実施態様において、ミトコンドリアの数またはミトコンドリア特異的色素からのシグナルの強度が本明細書において上記する方法を用いる処理の後に少なくとも40%減少した細胞を選択する。
【0077】
ミトコンドリアおよび/または膜破壊の量を、細胞外環境における酸化還元活性を測定することによって検出することもできる。本明細書に記載のストレスによってミトコンドリアが細胞外環境中に放出されるにつれて、細胞外環境におけるROSのレベルは増加し得、そしてそれを所定のストレスの有効性を測定するために使用することができる。
【0078】
本明細書に記載の局面のいずれかのいくつかの実施態様において、LIF(白血病阻害因子)の存在下で細胞をストレスに供することができる。
【0079】
いくつかの局面において、細胞の細胞質および/またはミトコンドリアの一部を除去した後、方法は多能性を示す細胞を選択することをさらに含む。多能性細胞のマーカー、表現型、または機能を呈する細胞を選択することによって、多能性細胞を選択することができる。細胞の選択は、所望の特徴を呈する細胞を単離しそして増殖させること、または、所望の特徴を有する細胞が所望の特徴を有しない細胞より高い率で生存しそして/または増殖するような条件下で未知の特徴を有する細胞の集団を培養することを含み得る。多能性細胞のマーカーおよび特徴の非限定的な例を本明細書において下記する。いくつかの実施態様において、多能性についての細胞の選択は、少なくとも部分的に、Oct4を発現する細胞を選択することを含む。いくつかの実施態様において、多能性についての細胞の選択は、少なくとも部分的に、Nanogを発現する細胞を選択することを含む。いくつかの実施態様において、多能性についての細胞の選択は、少なくとも部分的に、Oct4、Nanog、E−カドヘリン、および/またはSSEAを発現する細胞を選択することを含む。いくつかの実施態様において、SSEA−1およびE−カドヘリンを発現する細胞をこれらのマーカーに特異的な抗体およびFACSを使用して選択することによって、多能性細胞を選択することができる。いくつかの実施態様において、細胞を、FACSまたは当該分野において公知のそして/または本明細書に記載の他の細胞選別デバイスを使用してサイズに基づいて選択することができる。細胞を、それが培養ディッシュに接着できないことによって選択することもできる。
【0080】
細胞を、ストレスに供した後に、より小さなサイズに基づいて選択することもできる。すなわち、多能性に進行する、ストレスを与えた細胞は、その非多能性体細胞前駆体より小さい。いくつかの実施態様において、8μm未満の直径を有する細胞、例えば、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、またはより小さな直径を有する細胞を選択する。細胞を、ストレス処理後に、短期間(例えば、数分間〜数日間)培養した後または休ませた後にサイズに基づいて選択することができる。いくつかの実施態様において、細胞を、ストレス処理の直後にサイズに基づいて選択することができる。当該分野において公知の任意の方法によって(例えば、フィルターの使用またはFACSによって)細胞をサイズに基づいて選択することができる。
【0081】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って生成される多能性細胞を、その多能性細胞の増殖(すなわち、幹細胞の増殖)を可能にするように培養することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って生成される多能性細胞を、インビトロで維持することができる。1つの局面において、本明細書に記載の技術は、多能性細胞および/または少なくとも部分的に分化したその子孫を含む組成物に関する。いくつかの実施態様において、多能性細胞および/または少なくとも部分的に分化したその子孫を、例えば細胞株として、インビトロで維持することができる。細胞株を、本明細書において下記するように、候補薬剤(例えば、所定の疾患のための治療薬剤および/または幹細胞を調節する薬剤)をスクリーニングおよび/または試験するために使用することができる。いくつかの実施態様において、多能細胞および/または少なくとも部分的に分化したその子孫は、疾患(例えば、天然の細胞もしくは組織型または天然の多能性および/または複能性細胞の不全に関連する疾患(本明細書において下記するような)、および/または遺伝的変異を有する細胞が関与する疾患(例えば、ガン))を有する対象から得られる細胞に由来し得る。本明細書に記載の組成物を、例えば、疾患モデル化、創薬、診断、および個別化医療において使用することができる。
【0082】
幹および/または多能性細胞の増殖および/または維持に適切な条件は、当該分野において公知である。幹細胞の増殖は、分化を実質的に誘導または許容することなしに細胞数を拡大することを可能にする。非限定的な例として、多能性細胞の増殖に適切な条件は、細胞を、1×10細胞/cmで、2%B27、20ng/mL塩基性線維芽細胞増殖因子、および10ng/mL上皮増殖因子を補充したF12/DMEM(1:1、v/v)中でプレーティングすることを含む。培養の持続のために約50%の培地を2〜3日毎に置換することができる。いくつかの実施態様において、幹および/または多能性細胞の増殖に適切な条件は、細胞を、B27−LIF(すなわち、Hitoshi, S. et al. Genes & development 2004 18, 1806-1811(その全体を参照により本明細書に組み入れる)に記載のLIF(1×10ユニット/mL、Chemicon; Cat No: ESG1107 EMD Millipore, Billerica, MA)およびB27サプリメント(Cat No: 0080085-SA; Invitrogen; Grand Island, NY))を含有する無血清培地)中で培養することを含む。本明細書に記載の細胞を培養するために適切な他の培地を、本明細書中の実施例において記載する(例えば、ES樹立培養培地、2i、3iおよびACTH、ES培養条件、ES−LIF、胚性神経幹細胞培養条件、およびEpiSC培養条件)。いくつかの実施態様において、多能性細胞の増殖または維持のための条件は、LIF(白血病阻害因子)の存在下での細胞の培養を含み得る。
【0083】
増殖の間、本明細書に記載の方法に従って生成される多能性細胞は、同じ多能性幹細胞マーカーを発現し続ける。多能性幹細胞マーカーの非限定的な例は、SSEA−1、SSEA−2、SSEA−3、SSEA−4(本明細書においてSSEAと総称する)、AP、E−カドヘリン抗原、Oct4、Nanog、Ecat1、Rex1、Zfp296、GDF3、Dppa3、Dppa4、Dppa5、Sox2、Esrrb、Dnmt3b、Dnmt3l、Utf1、Tel1、Bat1、Fgf4、Neo、Cripto、Cdx2、およびSlc2a3を含む。細胞が多能性幹細胞マーカーを発現しているかどうかを決定する方法は、当業者に周知であり、そして、例えば、RT−PCR、レポーター遺伝子構築物の使用(例えば、FACSまたは蛍光顕微鏡と結びつけた本明細書に記載のOct4−GFP構築物の発現)、および目的の細胞表面マーカーに特異的な抗体を使用するFACSまたは蛍光顕微鏡を含む。
【0084】
多能性細胞マーカーは、細胞と比較して伸長したテロメアも含む。テロメア長を、例えば、ゲノムDNAを単離し、gDNAを制限酵素(例えば、Hinf1およびRsa1)で消化し、そしてテロメア長アッセイ試薬を用いてテロメアを検出することによって決定することができる。そのような試薬は、当該分野において公知であり、そして市販されている(例えば、TELOTAGGG(商標)TELOMERE LENGTH ASSAY kit(Cat No. 12209136001 Roche; Indianapolis, IN)。
【0085】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って処理される細胞は、開示する方法に従って処理される前にそうであったよりも、胚性幹細胞のエピジェネティック状態に近く類似するように変化し得る。細胞のエピジェネティック状態は、ゲノムのヌクレオチド配列における変化とは異なる、ゲノムの化学的マーキングを指す。エピジェネティックマークは、DNAメチル化(インプリント)ならびにDNAに結合するタンパク質(例えば、ヒストン)のメチル化およびアセチル化を含み得る。用語「DNAメチル化」は、DNA中の特定の塩基へのメチル(CH)基の付加を指す。哺乳動物において、メチル化は、ほとんどもっぱらシトシンの5位で、これにグアニンが続く場合(CpG)に生じる。いくつかの実施態様において、エピジェネティック状態は、エピジェネティックメチル化パターン(例えば、DNAメチル化パターン)を含み得る。エピジェネティックマーキングの存在および位置を決定するためのアッセイは、当該分野において公知であり、そして例えば本明細書中の実施例2に記載するようなバイサルファイトシーケンシングを含み得る。簡潔には、DNAをCpGenome(商標)DNA Modification Kit(Chemicon, Temecula, CA)を用いて処理し、そして目的の領域(例えば、NanogおよびOct4遺伝子)を増幅し、そして配列決定する。
【0086】
本明細書に記載の技術のいくつかの局面は、本明細書に記載の方法によって産生される多能性幹細胞を使用するアッセイに関する。例えば、本明細書に記載の方法によって産生される多能性幹細胞を、多能性幹細胞の生存能、分化、または増殖を調節する薬剤をスクリーニングおよび/または同定するために使用することができる。そのようなアッセイは、本明細書に記載の方法に従って産生される多能性細胞を候補薬剤と接触させること、および候補薬剤と接触させた多能性細胞の生存能、分化および/または増殖が候補薬剤と接触させていない多能性細胞の生存能、分化および/または増殖から変動するかどうかを決定することを含み得る。いくつかの実施態様において、薬剤は、多能性幹細胞の生存能、分化および/または増殖を増加させ得る。いくつかの実施態様において、薬剤は、多能性幹細胞の生存能、分化および/または増殖を減少させ得る。いくつかの実施態様において、例えば、相乗的もしくは拮抗性の効果を決定するために、または候補薬剤をプール中でスクリーニングするために、多能性幹細胞を複数の候補薬剤と接触させることができる。
【0087】
候補薬剤は、生存している(すなわち、生きている)多能性細胞の数が、候補薬剤の存在下で、その非存在と比較して高いかまたは低い場合に、産生される多能性細胞の生存能を調節する薬剤として同定される。細胞の生存能を決定する方法は、当該分野において周知であり、そして、非限定的な例として、生細胞マーカーからのシグナルの強さ、または生細胞マーカーによって染色される細胞の数もしくは比率を検出することによって、少なくとも2つの時点で生存細胞の数を決定することを含む。生細胞マーカーは市販されている(例えば、PRESTO BLUE(商標)(Cat No A-13261; Life Technologies; Grand Island, NY))。候補薬剤は、多能性細胞の増殖速度が変化する、すなわち、所定の時間に産生される子孫細胞の数が候補薬剤の存在下でより高いかまたはより低い場合に、産生される多能性細胞の増殖を調節する薬剤として同定される。細胞の増殖速度を決定する方法は、当該分野において公知であり、そして、非限定的な例として、経時的に生細胞数の増加を決定することを含む。
【0088】
候補薬剤は、多能性細胞の分化の比率または特徴が候補薬剤の存在下でより高いかまたはより低い場合に、多能性細胞の分化を調節する薬剤として同定される。細胞の分化の比率または特徴を決定する方法は、当該分野において公知であり、そして、非限定的な例として、特定の系列のマーカーまたはた形態を検出すること、および候補薬剤と接触させた集団におけるそのようなマーカーまたは形態を有する細胞の細胞数または出現率を、候補薬剤と接触させていない集団と比較することを含む。種々の細胞運命系列および成熟細胞型のマーカーおよび形態的特長は当該分野において公知である。非限定的な例として、中胚葉細胞は、アクチン、ミオシン、およびデスミンの発現によって、多能性細胞と区別される。軟骨細胞を、サフラニン−Oおよび/またはFASTGREEN(商標)色素(Fisher; Pittsburg, PA; F99)での染色によって、その前駆細胞型と区別することができる。骨細胞を、アリザリンレッドS(Sigma; St. Louis, MO: Cat No A5533)での染色によって、その前駆細胞型と区別することができる。
【0089】
いくつかの実施態様において、候補薬剤は、腫瘍幹細胞の潜在的な阻害剤であり得、例えば、成熟腫瘍細胞から多能性細胞を作製するために、そして腫瘍細胞の創造および/または生存能を阻害する薬剤をスクリーニングするために、本明細書に記載の方法を使用することができる。本明細書に記載の方法を、成熟腫瘍細胞を死滅させるが、腫瘍幹細胞の発生および/または生存を促進しない薬剤をスクリーニングするために使用することもできる。
【0090】
いくつかの実施態様において、多能性細胞を、1つ以上の候補薬剤と接触させ、そして特定の細胞系列または成熟細胞型への分化を促進する条件下で培養する。分化に適切な条件は当該分野において公知である。非限定的な例として、中胚葉系列への分化に適切な条件は、20%ウシ胎仔血清(FCS)を補充したDMEMを含み、培地を3日毎に交換する。さらなる非限定的な例として、神経系列への分化に適切な条件は、2%B27、10%FCS、10ng/mL bFGF、および20ng/mL EGFを補充したF12/DMEM(1:1、v/v)中でオルニチンコートしたチャンバースライド上に細胞をプレーティングすることを含む。培地を3日毎に交換し得る。
【0091】
本明細書において使用する「候補薬剤」は、細胞、組織または対象に通常は存在しないかまたは投与されるレベルで存在しない任意の物体を指す。候補薬剤を、以下を含む群から選択することができる:化学物質;小有機または無機分子;核酸配列;核酸アナログ;タンパク質;ペプチド;アプタマー;ペプチド模倣物、ペプチド誘導体、ペプチドアナログ、抗体;細胞内抗体;生体高分子、生物材料(例えば、細菌、植物、真菌、または動物細胞もしくは組織)から作製される抽出物;天然のまたは合成の組成物またはその機能的フラグメント。いくつかの実施態様において、候補薬剤は、限定するものではないが、合成のおよび天然の非タンパク質性物体を含む任意の化学的物体または部分である。特定の実施態様において、候補薬剤は化学的部分を有する小分子である。例えば、化学的部分は、非置換または置換のアルキル、芳香族、または複素環部分(マクロライド、レプトマイシンおよび関連天然産物もしくはそのアナログを含む)を含む。候補薬剤は、所望の活性および/または性質を有することが知られ得るか、あるいは多様な化合物のライブラリーから選択され得る。
【0092】
候補薬物を、多能性細胞の生存能、増殖、および/または分化を調節するその能力についてスクリーニングすることができる。1つの実施態様において、候補薬剤を、上記および本明細書中の実施例に記載の生存能、分化、および/または増殖のためのアッセイを使用してスクリーニングする。
【0093】
一般に、化合物を、適切な期間に渡って、コントロールと比較して細胞機能、遺伝子発現またはタンパク質活性を調節することができる任意の濃度で試験することができる。いくつかの実施態様において、化合物を、約0.1nM〜約1000mMの範囲の濃度で試験する。1つの実施態様において、化合物を、約0.1μM〜約20μM、約0.1μM〜約10μM、または約0.1μM〜約5μMの範囲で試験する。
【0094】
実行される特定の実施態様に依存して、候補または試験薬剤を、溶液中で遊離で提供することができ、または担体、もしくは固体支持体、例えばビーズに結合させ得る。いくつかの適切な固体支持体を、試験薬剤の固定化のために用いることができる。適切な固体支持体の例は、アガロース、セルロース、デキストラン(例えば、Sephadex、Sepharoseとして市販されている)、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレン、ポリエチレングリコール(PEG)、濾紙、ニトロセルロース、イオン交換樹脂、プラスチックフィルム、ポリアミンメチルビニルエーテルマレイン酸コポリマー、ガラスビーズ、アミノ酸コポリマー、エチレン−マレイン酸コポリマー、ナイロン、シルクなどを含む。さらに、本明細書に記載の方法のために、試験薬剤を個別に、またはグループもしくはプール中でスクリーニングすることができる。グループスクリーニングは、有効な試験薬剤についてのヒット率が低いことが予想され、その結果、所定のグループについて1より多い陽性の結果が期待されない場合に特に有用である。
【0095】
小分子、重合体およびゲノムベースのライブラリーを開発するための方法は、例えば、Ding, et al. J Am. Chem. Soc. 124: 1594-1596 (2002)およびLynn, et al., J. Am. Chem. Soc. 123: 8155-8156 (2001)に記載されている。市販の化合物ライブラリーを、例えば、ArQule(Woburn, MA)、Invitrogen(Carlsbad, CA)、Ryan Scientific(Mt. Pleasant, SC)、およびEnzo Life Sciences(Farmingdale, NY)から得ることができる。これらのライブラリーを、多能性幹細胞の生存能、増殖、および/または分化を調節するメンバーの能力についてスクリーニングすることができる。候補薬剤は、天然のタンパク質またはそのフラグメントであり得る。そのような候補薬剤を、天然供給源、例えば、細胞または組織溶解物から得ることができる。ポリペプチド薬剤のライブラリーを、例えば、市販のまたはルーチンの方法を用いて生成されるcDNAライブラリーから調製することもできる。候補薬剤はまたペプチド(例えば、約5〜約30アミノ酸のペプチド、約5〜約20アミノ酸が好ましく、そして約7〜約15が特に好ましい)であり得る。ペプチドは、天然のタンパク質の消化物、ランダムペプチド、または「バイアス化」ランダムペプチドであり得る。いくつかの方法において、候補薬剤はポリペプチドまたはタンパク質である。ペプチドライブラリー、例えば、ペプチドもしくは他の化合物のコンビナトリアルライブラリーを、いかなる位置においても配列の優先または不変なしに完全にランダム化し得る。あるいは、ライブラリーをバイアス化し得る。すなわち、配列内のいくつかの位置を不変に保つか、または限られた数の可能性から選択する。例えば、いくつかの場合で、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基を、規定されたクラス内で(例えば、疎水性アミノ酸、親水性残基、空間的にバイアス化された(小さなもしくは大きな)残基の、システインの創造に向けた、架橋のための、SH−3ドメインのためのプロリン、リン酸化部位のためのセリン、スレオニン、チロシンもしくはヒスチジン、またはプリンへの)ランダム化する。
【0096】
候補薬剤はまた核酸であり得る。核酸候補薬剤は、天然核酸、ランダム核酸、または「バイアス化」ランダム核酸であり得る。例えば、原核生物または真核生物ゲノムの消化物をタンパク質について上記したのと同様に使用することができる。
【0097】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って多能性細胞の生存能、増殖、および/または分化を調節するとしてスクリーニングおよび同定される候補薬剤は、多能性細胞の生存能、増殖、および/または分化を、非処理コントロールと比較して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、1.1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍またはより多く増加させ得る。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って多能性細胞の生存能、増殖、および/または分化を調節するとしてスクリーニングおよび同定される候補薬剤は、多能性細胞の生存能、増殖、および/または分化を、非処理コントロールと比較して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、50%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%またはより多く、完全な低下(すなわち、0の生存能、成長、増殖、または分化)まで(それを含む)減少させ得る。
【0098】
いくつかの実施態様において、候補薬剤は、それが投与される形態で直接機能する。あるいは、候補薬剤は、細胞内で修飾または利用されて、所望の活性を調節する形態を生じ得る(例えば、細胞中への核酸配列の導入およびその転写、その結果としての細胞内での遺伝子発現またはタンパク質活性のインヒビターまたはアクチベーターの産生)。
【0099】
本明細書に記載の方法および組成物を、例えば、ガンワクチンの開発において使用できることが意図される。本明細書に記載のように得られる多能性腫瘍細胞の少なくとも部分的に分化した子孫の生成(例えば、本明細書に記載の方法に従って成熟腫瘍細胞を処理することによる)は、多様なそして変化する抗原プロフィールを提供し得、これはより強力なAPC(抗原提示細胞)ベースのガンワクチンの開発を可能にし得る。
【0100】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法は、細胞の形質転換効率の増加に関する。細胞にストレスを与えること、例えば、本明細書に記載のように多能性を誘導することは、細胞を、遺伝子改変の方法(限定するものではないが、トランスジーンの挿入、ウイルスベクター、および/またはジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを含む)に対してより受容性にし得る。本明細書に記載の方法が、細胞が遺伝子的に受容性の状態に改変されることを可能にし得、その結果、裸のDNAが、得られる多能性細胞を形質転換するために使用され得ることが意図される。
【0101】
本明細書に記載の技術のいくつかの局面は、本明細書に記載の方法によって産生される多能性細胞、またはそのような細胞の少なくとも部分的に分化した子孫を、細胞治療を必要とする対象に投与することを含む細胞治療の方法に関する。いくつかの実施態様において、多能性細胞または多能性細胞の少なくとも部分的に分化した子孫の治療有効量が提供される。いくつかの実施態様において、多能性細胞および/またはその子孫は自己である。いくつかの実施態様において、多能性細胞および/またはその子孫は同種異系である。いくつかの実施態様において、多能性細胞および/またはその子孫は自己である。いくつかの実施態様において、多能性細胞および/またはその子孫はHLA適合同種異系である。いくつかの実施態様において、多能性細胞および/またはその子孫は同系である。いくつかの実施態様において、多能性細胞および/またはその子孫は異種である。いくつかの実施態様において、細胞治療は、自己治療であり得、例えば、対象由来の細胞を本明細書に記載の方法に従って多能性細胞を生成するために使用し得、そして多能性細胞および/またはその多能性細胞の少なくとも部分的に分化した子孫を対象に投与し得る。本明細書において使用する「細胞治療を必要とする対象」は、天然の細胞または組織型あるいは天然の多能性および/または複能性細胞(例えば、幹細胞)の不全に関連する疾患を有するか、または疾患を有するかもしくは発達させる危険性があると診断される対象を指す。
【0102】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法を、遺伝障害(例えば、テイ・サックスまたは血友病)を、例えば、本明細書に記載のように得られる同種異系の多能性細胞および/またはその子孫を投与することによって、処置するために使用することができる。
【0103】
1つの局面において、本明細書に、本明細書に記載の方法に従って細胞から多能性細胞(またはより多能性の細胞)を生成することを含む、対象に投与しようとする細胞治療と適合性である細胞または組織を調製する方法であって、細胞は自己細胞またはHLA適合性同種異系細胞である、方法を記載する。いくつかの実施態様において、多能性細胞(またはより多能性の細胞)を、細胞または組織を対象に投与する前に、予め規定された細胞系列に沿って分化させ得る。
【0104】
本明細書に記載の方法に従って生成される多能性細胞(例えば、多能性幹細胞)をガン治療において使用することができる。例えば、高用量化学療法+骨髄造血系を再生するための造血幹細胞移植は、本明細書に記載のように生成される多能性細胞の使用から利益を得ることができる。
【0105】
天然の細胞または組織型あるいは天然の多能性および/または複能性細胞の不全に関連する疾患の非限定的な例は、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、および発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を含む。他は、例えば、以下を含む:急性白血病(急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性混合性白血病および急性未分化白血病を含む);慢性白血病(慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若年性慢性骨髄性白血病(JCML)および若年性骨髄単球性白血病(JMML)を含む);骨髄増殖性障害(急性骨髄線維症、血管新生骨髄化生(骨髄線維症)、真性多血症および本態性血小板血症を含む);リソソーム蓄積症(ムコ多糖症(MPS)、ハーラー症候群(MPS−IH)、シャイエ症候群(MPS−IS)、ハンター症候群(MPS−II)、サンフィリポ症候群(MPS−III)、モルキオ症候群(MPS−VII)、マロトー・ラミー症候群(MPS−VI)、スライ症候群、βグルクロニダーゼ欠損症(MPS−VII)、副腎白質ジストロフィー、ムコリピドーシスII(I−細胞病)、クラッベ病、ゴーシェ病、ニーマン・ピック病、ウォルマン病および異染性白質ジストロフィーを含む);組織球性障害(家族性赤血球貪食性リンパ組織血症、組織球症Xおよび血球貪食を含む);貪食細胞障害(チュディアック・東症候群、慢性肉芽腫性疾患、好中球アクチン欠損症および細網異形成症を含む);遺伝性血小板異常(巨核球増加(amegakaryocytosis)/先天性血小板減少症を含む);形質細胞障害(多発性骨髄腫、形質細胞白血病およびワルデンストレームマクログロブリン血症を含む)。幹細胞治療を用いて処置可能な他の悪性病変は、限定するものではないが、とりわけ、乳ガン、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫および腎細胞ガンを含む。以下も幹細胞治療を用いて治療可能である:肺障害(COPDおよび気管支喘息を含む);先天性免疫障害(血管拡張性運動失調症、コストマン症候群、白血球粘着不全症、ディジョージ症候群、裸リンパ球症候群、オーメン症候群、重症複合免疫不全症(SCID)、アデノシンデアミナーゼ欠損を伴うSCID、TおよびB細胞欠損SCID、T細胞欠損、正常B細胞SCID、分類不能型免疫不全症およびX連鎖リンパ増殖性疾患を含む);他の遺伝性障害(レッシュ・ナイハン症候群、軟骨毛髪形成不全症、グランツマン血小板無力症および大理石骨病を含む);神経学的状態(急性および慢性脳卒中、外傷性脳損傷、脳性麻痺、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症および癲癇を含む);心臓状態(アテローム性動脈硬化、うっ血性心不全および心筋梗塞を含む);代謝障害(糖尿病を含む);ならびに眼性障害(黄斑変性および視神経萎縮症を含む)。そのような疾患または障害を、所望の分化を促進するための薬剤の投与有りもしくは無しでの所望の細胞型へのインビボでの分化を可能にする、多能性細胞自体の投与によって、および/または、インビトロで所望の細胞型に分化したかもしくは少なくとも部分的にそれに向かって分化した多能性細胞を投与することによってのいずれかで処置することができる。そのような状態を診断する方法は医学実務の当業者に周知である。いくつかの実施態様において、対象は、細胞または幹細胞の集団を除去した放射線療法または他の治療を用いて処置されたものであり得、例えば、対象は、その骨髄が放射線療法によって除去されたガンを有する対象であり得る。
【0106】
いくつかの実施態様において、多能性細胞を対象に投与する。いくつかの実施態様において、少なくとも部分的に分化した細胞を対象に投与する。いくつかの実施態様において、細胞治療の方法は、多能性細胞を、細胞を投与する前に予め規定された細胞系列に沿って分化させることをさらにを含み得る。所望の細胞系列に沿って幹細胞を分化させる方法は当該分野において公知であり、そして例は本明細書に記載されている。
【0107】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って得られる多能性細胞または多能性細胞の子孫である少なくとも部分的に分化した細胞を含む組成物を対象に投与する。
【0108】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って得られる多能性細胞または多能性細胞の子孫である少なくとも部分的に分化した細胞を含む組成物は、任意にG−CSF、GM−CSFおよび/またはM−CSFをさらに含み得、そして/あるいは、別の組成物中でG−CSF、GM−CSFおよび/またはM−CSFを投与したかまたは投与する対象に投与され得る。G−CSF、GM−CSFおよび/またはM−CSFの投与は、例えば、器官再生ならびに組織デブリ、老廃物および蓄積の除去に好ましい炎症の状態を誘導し得る。
【0109】
いくつかの実施態様において、多能性細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫の投与は、本明細書に記載の方法に従った培養物中の多能性細胞の産生後の比較的短期間内に行われ得る(例えば、産生後1、2、5、10、24または48時間)。いくつかの実施態様において、少なくとも部分的に分化した子孫の投与は、本明細書に記載の方法に従った培養物中の多能性細胞の分化後の比較的短期間内に行われ得る(例えば、産生後1、2、5、10、24または48時間)。いくつかの実施態様において、多能性細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫を、投与前に低温貯蔵し得る。
【0110】
いくつかの局面において、本明細書に記載の技術は、本明細書に記載の方法に従って生成される多能性細胞および/または多能性細胞の少なくとも部分的に分化した子孫を含む組成物に関する。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、本明細書に記載の方法に従って生成される多能性細胞および/または多能性細胞の少なくとも部分的に分化した子孫、および任意に医薬上許容される担体を含む。組成物は、少なくとも1つの医薬上許容される賦形剤をさらに含み得る。
【0111】
医薬組成物は、適切な賦形剤、または安定化剤を含み得、そして、例えば、溶液、懸濁液、ゲル、または乳濁液であり得る。典型的には、組成物は、約0.01〜99%、好ましくは約5〜95%の細胞を担体と一緒に含有する。細胞は、医薬上または生理学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤と組み合わされると、非経口で、皮下で、移植によってまたは注射によって投与され得る。大部分の治療目的のために、細胞は、液体形態で溶液または懸濁液として注射を介して投与され得る。用語「医薬上許容される担体」は、本明細書に記載の方法に従って生成される多能性細胞および/または多能性細胞の少なくとも部分的に分化した子孫の投与のための担体を指す。そのような担体は、限定するものではないが、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、およびその組み合わせを含む。各々の担体は、処方物の他の成分と適合性であるという意味で「許容」されなければならず、例えば、担体は対象に対する薬剤の効果を減少させない。換言すると、担体は医薬上不活性であり、そして生細胞と適合性である。
【0112】
適切な処方物は、水性および非水性の無菌注射溶液も含み、これは抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、殺菌性抗生物質、および、処方物を意図されるレシピエントの体液と等張にする溶質を含有し得る。水性および非水性の無菌懸濁液は、懸濁剤および増粘剤を含み得る。処方物は単位用量または多用量容器において提示され得る。
【0113】
非経口剤形の例は、限定するものではないが、注射用溶液、注射用懸濁液および乳濁液を含む。非経口剤形を、例えば、本明細書に記載の方法に従って生成される多能性細胞および/または多能性細胞の少なくとも部分的に分化した子孫を保持するための生体吸収性足場材料を使用して、調製することができる。
【0114】
用語「エピジェネティック修飾」は、ゲノムの化学的マーキングを指す。エピジェネティックマークは、DNAメチル化(インプリント)ならびにDNAに結合するタンパク質(例えば、ヒストン)のメチル化およびアセチル化を含み得る。片親起源特異的遺伝子発現(母性または父性いずれかの染色体からの)が哺乳動物においてしばしば観察され、そしてそれはエピジェネティック修飾に起因する。親の生殖系列において、エピジェネティック修飾は安定な遺伝子サイレンシングまたは活性化に導き得る。
【0115】
本明細書において使用する用語「投与」または「移植」は、所望の効果が生じるような所望の部位における細胞の少なくとも部分的な局在化を生じる方法または経路による対象中への細胞の配置を指す。
【0116】
本明細書に記載の多能性幹細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫を、臨床医によって適切であると見出される任意の方法で投与することができ、そして、例えば、細胞の懸濁液の注射による、または、例えば、移植可能な足場もしくは支持体の上もしくは中で沈着もしくは増殖した細胞の調製物の移植による、局所投与を含み得る。移植可能な足場は、いくつかの分解性または吸収性のポリマーのいずれか、または、例えば、とりわけシルク足場を含み得る。本明細書に記載の多能性幹細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫を含む医薬組成物の投与に適切な経路は、限定するものではないが、局所投与、例えば、腹腔内、非経口、体腔内または皮下投与を含む。本明細書において使用する語句「非経口投与」および「非経口で投与する」は、通常注射による、腸内および局所投与以外の投与の様式を指し、そして、限定するものではないが、腹腔内、皮内、皮下の注射および注入を含む。投与は、注射に適切な針、カテーテルおよびシリンジの使用、または外科的移植を含み得る。送達手段および送達部位の組み合わせの使用が、所望の臨床効果を達成するために意図される。
【0117】
用語「エピジェネティック修飾」は、ゲノムの化学的マーキングを指す。エピジェネティックマークは、DNAメチル化(インプリント)ならびにDNAに結合するタンパク質(例えば、ヒストン)のメチル化およびアセチル化を含み得る。片親起源特異的遺伝子発現(母性または父性いずれかの染色体からの)が哺乳動物においてしばしば観察され、そしてそれはエピジェネティック修飾に起因する。親の生殖系列において、エピジェネティック修飾は安定な遺伝子サイレンシングまたは活性化に導き得る。
【0118】
1つの実施態様において、本明細書に記載の多能性幹細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫の治療有効量を対象に投与する。「治療有効量」は、処置される状態の症状またはマーカーにおいて測定可能な改善を生じるために十分な、本明細書に記載の多能性幹細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫の量である。治療組成物中の細胞の実際の投与量レベルを、特定の対象について所望の治療応答を達成するために有効な細胞の量を投与するように、変動させ得る。選択される投与量レベルは、限定するものではないが、治療組成物の活性、処方、投与経路、他の薬物または処置との組み合わせ、処置される状態の重篤度、対象の身体的状態、処置される対象の以前の病歴、および治療を施す臨床医または医師の経験および判断を含む種々の因子に依存する。一般に、用量および投与スケジュールは、状態の進行の遅延および好ましくは阻害を生じ、そしてまた好ましくは状態の症状またはマーカーの1つ以上の減少を引き起こすために十分であるべきである。治療有効用量の決定および調整、ならびにそのような調整をする時期および方法の評価は、医学分野の当業者に公知である。
【0119】
本明細書に記載の方法に従って投与される、本明細書に記載の多能性幹細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫の投与量は、医師によって決定され得、そして必要に応じて処置の観察される効果に適するように調整され得る。処置の持続期間および頻度に関しては、熟練した臨床医が、いつ処置が治療の利益を提供しているかを決定し、そして、細胞の別の用量を投与するか、投与量を増加または減少させるか、処置を中止するか、処置を再開するか、または処置レジメンに他の変更をするかどうかを決定するために、対象をモニターするのが典型的である。投与される細胞が中期間から長期間生着しそして生存することが期待される場合、反復投薬が必要であり得る。しかし、投与は、必要に応じて、そして対象によって許容されるように、反復され得る。投与量は、実質的な有害な副作用を引き起こすほど多くすべきでない。投与量はまた、任意の合併症の場合に個々の医師によって調整され得る。しかし、典型的には、投与量は、成体ヒトのために、本明細書に記載の多能性幹細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫100〜1×10個、例えば100〜10,000細胞、1,000〜100,000細胞、10,000〜1,000,000細胞または1,000,000から1×10細胞の範囲であり得る。有効用量は、例えば、動物モデル試験バイオアッセイまたは系に由来する用量反応曲線から外挿され得る。
【0120】
本明細書に記載のように調製される、本明細書に記載の多能性幹細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫を含む治療組成物は、当該分野において周知の方法に従って、効力を確認するために、移植した細胞のインビボでの増殖を評価するために、そして投与量を見積もるために、1つ以上の適切なインビトロおよび/またはインビボの疾患の動物モデル(例えば、SCIDマウスモデル)において任意に試験される。特に、投与量を、最初に、関連するアッセイにおいて、処置対非処置の活性、安定性または他の適切な尺度(例えば、処置動物モデル対非処置動物モデルの比較)によって、決定することができる。本明細書に記載の多能性幹細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫の有効量の決定において、医師は、基準の中でとりわけ、移植した細胞の増殖および体積、ならびに処置される状態の進行を評価する。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路で変動し得る。
【0121】
本明細書に記載の治療方法に関して、本明細書に記載の多能性幹細胞および/またはその少なくとも部分的に分化した子孫の投与が、特定の投与様式、投与量、投薬の頻度に限定されることは意図されない。処置される状態を処置するために適切な用量を提供するために十分な、筋肉内、静脈内、腹腔内、小胞内、関節内、病巣内、皮下、または任意の他の経路を含む全ての投与様式が意図される。
【0122】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法は、多能性細胞をインビボで生成するために使用され得、例えば、対象中に存在する細胞を、多能性表現型を獲得するように本明細書に記載のようにストレスに供し得る。インビボで細胞に本明細書に記載のストレスを適用する方法は容易に明白であり、例えば、穏和な酸溶液を注射および/または直接適用を介して組織に導入し得、温度を周囲の組織を加熱もしくは冷却できるプローブによって、または非侵襲的な方法(例えば、集束ビーム照射)の使用を介して、変化させ得る。例えば、組織再生または創傷治癒を増加させるために、多能性のインビボでの調節を使用し得る。非限定的な例は、膝関節細胞(例えば、滑膜または軟骨細胞)が多能性表現型をとり、そして新たな組織を生成するように誘導するための、関節炎膝関節中への穏和な酸の注射を含み得る。さらなる非限定的な例は、脳卒中または中枢神経系損傷(例えば、脊髄損傷)を有する対象の処置を含み得る。炎症が消散した後に、損傷領域に近接する細胞を本明細書に記載のようにストレスを用いて処理し、損傷した組織を再配置し、そして/または損傷組織を再生もしくは修復できる多能性細胞を生成し得る。
【0123】
さらなる非限定的な例において、エピジェネティック状態の変化(例えば、デメチラーゼでの処理による)は、非インスリン分泌細胞(例えば、膵臓のαグルカゴン(glugagon)細胞)のインスリン分泌細胞(例えば、β細胞)への転換を引き起こし得る。従って、本明細書に記載の方法に従った非インスリン分泌細胞(例えば、膵臓のαグルカゴン細胞)の処理は、インスリン分泌細胞になる細胞(例えば、β様細胞)を、インビボまたはインビトロのいずれかで生じ得る。
【0124】
さらに、本明細書に記載の多能性細胞を他の細胞(すなわち、「レシピエント細胞」)(例えば、本明細書に記載の方法に従って処理されていない細胞、非多能性細胞、成熟細胞、悪性細胞、および/または損傷細胞)と融合させ得ることが意図される。細胞の融合は、融合前と比較して増加したレベルの細胞修復酵素発現および/または活性をレシピエント細胞において生じ得る。このことは、レシピエント細胞の健康および/または機能を、例えば、レシピエント細胞の細胞損傷、変異および/またはエピジェネティック状態の改変の修復を増加させることによって、増加させ得る。
【0125】
いくつかの実施態様において、インビボで細胞の多能性を増加させることによって、その細胞のエピジェネティックマーカー(例えば、DNAメチル化、脱メチル化および/またはヒドロキシメチル化状態)を調節することができる。エピジェネティックマーカーの調節は、例えば、悪性腫瘍、関節炎、自己免疫疾患、加齢などへの関与が示されており、そして本明細書に記載の方法に従ったそのようなエピジェネティック関連状態の処置が意図される。
【0126】
いくつかの実施態様において、複数の組織をインビボで同時に処置することができ、例えば、穏和に酸性の状態を複数の器官において、例えば、連続的にまたは同時に誘導して(例えば、脳、心臓、肝臓、肺および/または甲状腺)、広範な損傷または加齢を処置することができる。
【0127】
本明細書に記載の細胞のインビボでの処理が、本明細書に記載のように産生された多能性細胞および/または少なくとも部分的に分化したその子孫の投与と組み合わされ得ることがさらに意図される。
【0128】
本明細書に記載の方法が、例えば、胎児または胚を子宮内で処置するために使用され得ることが、本明細書において意図される。
【0129】
処置の効力を、例えば、本明細書に記載のように処置される状態のマーカー、指標、症状もしくは発生率、または任意の他の測定可能な適切なパラメーター(例えば、多能性細胞子孫の数)を測定することによって、評価することができる。そのようなパラメーターのいずれか、またはパラメーターの任意の組み合わせを測定することによって、処置または予防の効力をモニターすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0130】
処置される状態のマーカー、指標または症状の1つ以上において統計学的に有意な改善が存在する場合に、あるいは、症状の悪化または発達が、それがそうでなければ予期される場合に無いことによって、有効な処置は明白である。例として、状態の測定可能なパラメーターにおける少なくとも約10%、そして好ましくは少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%またはより多くの好ましい変化は、有効な処置を示し得る。本明細書に記載の方法に従って生成される多能性細胞および/または多能性細胞の少なくとも部分的に分化した子孫の効力はまた、本明細書に記載の状態について当該分野において公知の実験動物モデルを使用して判断され得る。実験動物モデルを使用する場合、処置の効力は、マーカー(例えば、骨髄アブレーションおよび本明細書に記載のような多能性細胞を用いる処置の後にマウス中に存在する造血細胞の数)における統計学的に有意な変化が観察される場合に、証明される。
【0131】
1つの局面において、本明細書に、本明細書に記載の方法に従って得られる多能性細胞をFGF4の存在下で培養する工程を含む、胎盤細胞に分化する能力を有する多能性細胞を産生する方法を記載する。いくつかの実施態様において、多能性細胞は胚性幹細胞に分化する能力を有する。いくつかの実施態様において、FGF4の濃度は約1nM〜約1μMである。いくつかの実施態様において、FGF4の濃度は1nM〜1μMである。いくつかの実施態様において、FGF4の濃度は約5nM〜約500nMである。いくつかの実施態様において、FGF4の濃度は約10nM〜約100nMである。
【0132】
いくつかの局面において、本明細書に記載の技術は、細胞質および/またはミトコンドリアの一部を細胞から除去することを含む、細胞から多能性細胞を生成するためのシステムに関する。
【0133】
本明細書に記載の方法に従って細胞から多能性細胞を生成するためのシステムは、その中で細胞がストレスに供される入れ物を含み得る。入れ物は、例えば、本明細書に記載の方法に従って細胞質および/またはミトコンドリアの量を低下させるために低酸素条件下で数日またはより長く細胞を培養する場合、体細胞および/または多能性細胞の培養に適切であり得る。あるいは、入れ物は、例えば、細胞を狭い開口を有するデバイス中で限定された期間(例えば、1時間未満)トリチュレーションする場合、細胞を培養するためではなく、細胞にストレスを与えるために適切であり得る。入れ物は、例えば、容器、チューブ、マイクロ流体デバイス、ピペット、バイオリアクターまたは細胞培養ディッシュであり得る。入れ物は、体細胞および/または多能性細胞の培養に適切な条件を提供する環境において(例えば、インキュベーター内に収容され)、または細胞に対して環境ストレスを引き起こす条件を提供する環境において(例えば、低酸素含量環境を提供するインキュベーター内に収容され)維持され得る。入れ物は、本明細書において上記する環境ストレスの1つ以上、例えば、1つのストレス、2つのストレス、3つのストレス、またはより多くを提供するように設計され得る。体細胞および/または多能性細胞を操作および/または培養するために適切な入れ物は、当業者に周知であり、そして市販されている(例えば、Cat No CLS430597 Sigma-Aldrich; St. Louis, MO)。いくつかの実施態様において、入れ物はマイクロ流体デバイスである。いくつかの実施態様において、入れ物は細胞培養ディッシュ、フラスコまたはプレートである。
【0134】
いくつかの実施態様において、システムは、多能性細胞を選択するための手段をさらに含み得、例えば、システムは、多能性マーカー(例えば、Oct4−GFP)を発現する細胞を選択し得るかまたは本明細書において上記するようにサイズによって選択し得るFACSシステムを含み得る。細胞の選択のための方法およびデバイスは、当業者に周知であり、そして市販されている(例えば、BD Biosciences; Franklin Lakes, NJによって生産されるBD LSRII(商標)およびBD FACSDIVA(商標)ソフトウェア(Cat No. 643629)と連結されるBD FACSARIA SORP(商標))。
【0135】
いくつかの実施態様において、組織中に存在しない細胞がシステムに提供される。いくつかの実施態様において、組織がシステムに提供され、そしてシステムは、1つ以上の型の細胞を単離する手段をさらに含む。非限定的な例として、システムは組織ホモジナイザーを含み得る。組織ホモジナイザーおよびそれを使用する方法は、当該分野において公知であり、そして市販されている(例えば、FASTH21(商標), Cat No. 21-82041 Omni International; Kennesaw, GA)。あるいは、システムは、血液または流体サンプルを処理するために遠心分離機を含み得る。
【0136】
いくつかの実施態様において、システムを自動化することができる。細胞単離、細胞培養および選択デバイスを自動化する方法は、当該分野において公知であり、そして市販されている。例えば、FASTH21(商標)Tissue Homogenizer(Cat No. 21-82041 Omni International; Kennesaw, GA)およびBD FACSARIA SORP(商標)。
【0137】
いくつかの実施態様において、システムは無菌であり得、例えば、それは無菌環境において操作され得るか、またはシステムは密閉された無菌のシステムとして操作され得る。
【0138】
1つの局面において、本明細書に、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、2iまたは3i培地の存在下で細胞を培養する工程を含む、多能性細胞の自己再生能力を増加させる方法を記載する。本明細書において使用する「自己再生能力」は、細胞がインビトロで培養および継代され得る時間の長さ、例えば、細胞およびその子孫が供されそして生存細胞を産生し続けることができる継代の数を指す。本明細書に記載の方法に従って増加した自己再生能力を有するようにされる細胞は、例えば、全能性細胞および/または本明細書において他所に記載するようにそれをストレスに曝露することによって生成される細胞であり得る。
【0139】
いくつかの実施態様において、ACTHの存在下での培養は、約0.1μM〜約1,000μM、例えば、約0.1μM〜約100μM、約0.1μM〜約10μM、または約10μMを含む細胞培地中で細胞を培養することを含み得る。いくつかの実施態様において、ACTHの存在下での細胞の培養は、ACTHを含むLIF培地中で細胞を培養することを含み得る。LIF、ACTH、2iおよび3iは、市販されており、そして当該分野において周知であり、例えば、ACTHをSigma-Aldrichから購入することができ(Cat No. A0673; St. Louis, MO)、そしてLIF培地をMilliporeから購入することができ(例えばCat Nos ESG1107; Billerica, MA)、そして3iをStem Cells Inc.から購入することができる(例えば、"iSTEM Stem Cell Culture Medium, Cat No. SCS-SF-ES-01; Newark, CAとして)。
【0140】
いくつかの実施態様において、培養工程は少なくとも3日間、例えば、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、またはより長く進行し得る。培養工程の後に、本明細書において他所に記載するように多能性細胞を維持するために適切な条件下で細胞を維持し得る。
【0141】
いくつかの実施態様において、培養工程の後に、細胞は検出可能なそして/または増加したレベルの幹細胞マーカーを発現し得る。幹細胞マーカーおよびそれを検出する方法は本明細書において他所に記載されている。いくつかの実施態様において、幹細胞マーカーは、以下からなる群より選択され得る:Oct3/4;Nanog;Rex1;Klf4;Sox2;Klf2;Esrr−β;Tbx3;およびKlf5。
【0142】
開示の実施態様の記載が包括的であるかまたは開示される厳密な形態に開示を限定することは意図されない。開示の特定の実施態様およびそのための例を説明目的のために本明細書に記載するが、関連分野の当業者に認識されるように、種々の等価な改変が開示の範囲内で可能である。例えば、方法工程または機能を所定の順序で示すが、代替の実施態様が異なる順序で機能を実行し得、または機能が実質的に同時に実行され得る。本明細書に提供する開示の教示を、適宜他の手順または方法に適用し得る。本明細書に記載の種々の実施態様を組み合わせて、さらなる実施態様を提供し得る。必要であれば、上記の参照および適用の構成、機能および概念を用いて、開示のなおいっそうのさらなる実施態様を提供するように、開示の局面を改変し得る。詳細な説明を考慮して、これらおよび他の変更を開示に対してなし得る。
【0143】
前述の実施態様のいずれかの特定の構成要素を、組み合わせるかまたは他の実施態様における構成要素に置き換えることができる。さらに、開示の特定の実施態様に結び付けられる利点をこれらの実施態様の文脈で記載するが、他の実施態様もそのような利点を示し得、そして必ずしも全ての実施態様が開示の範囲内に入るためにそのような利点を示す必要はない。
【0144】
同定される全ての特許および他の刊行物を、例えば、本発明と関連して使用され得るそのような刊行物中に記載される方法を記載および開示する目的のために、明白に参照により本明細書に組み入れる。これらの刊行物は、単に本願の出願日より前のそれらの開示のために提供される。この点について、何も、以前の発明のおかげで、またはいずかの他の理由のために、本発明者らがそのような開示に先行する資格がないことの承認として解釈されるべきでない。これらの書類の日付に関する陳述または内容に関する表示の全ては出願人らに入手可能な情報に基づいており、そしてこれらの書類の日付および内容の正しさに関するいかなる承認としても解釈されない。
【0145】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。実施例は限定として解釈されるべきでない。
【0146】
本明細書に記載の技術のいくつかの実施態様を以下の番号付けされた項のいずれかに従って規定することができる。
1.細胞をストレスに供する工程を含む、多能性細胞を生成する方法。
2.多能性細胞が外来遺伝子、転写物、タンパク質、核成分もしくは細胞質の導入なしに、または細胞融合なしに生成される、項1記載の方法。
3.多能性を示す細胞を選択する工程をさらに含む、項1または2記載の方法。
4.細胞が組織の部分として存在しない、項1〜3のいずれか1項記載の方法。
5.細胞が体細胞、幹細胞、前駆細胞または胚細胞である、項1〜4のいずれか1項記載の方法。
6.細胞が単離された細胞である、項1〜5のいずれか1項記載の方法。
7.細胞が細胞の不均一な集団中に存在する、項1〜6のいずれか1項記載の方法。
8.細胞が細胞の均一な集団中に存在する、項1〜7のいずれか1項記載の方法。
9.多能性を示す細胞を選択する工程が、幹細胞マーカーを発現する細胞を選択することを含む、項1〜8のいずれか1項記載の方法。
10.幹細胞マーカーが以下からなる群より選択される、項9記載の方法:
Oct4;Nanog;E−カドヘリン、およびSSEA4。
11.多能性を示す細胞を選択する工程が、接着性でない細胞を選択することを含む、項1〜10のいずれか1項記載の方法。
12.ストレスが組織または細胞培養物における非生理的ストレスを含む、項1〜11のいずれか1項記載の方法。
13.ストレスが以下から選択される少なくとも1つの環境刺激への細胞の曝露を含む、項1〜12のいずれか1項記載の方法:外傷、機械的刺激、化学的曝露、超音波刺激、酸素欠乏、照射、極度な温度への曝露、解離、トリチュレーション、物理的ストレス、高浸透圧、低浸透圧、膜損傷、毒素、極度のイオン濃度、活性酸素、UV曝露、強可視光、必須栄養の欠乏、または非生理的酸性環境。
14.ストレスが約3.0〜約6.8のpHに細胞を曝露することを含む、項1〜13のいずれか1項記載の方法。
15.ストレスが約4.5〜約6.0のpHに細胞を曝露することを含む、項1〜14のいずれか1項記載の方法。
16.ストレスが約5.4〜約5.8のpHに細胞を曝露することを含む、項15記載の方法。
17.細胞が2〜3日間曝露される、項12〜16のいずれか1項記載の方法。
18.細胞が1日間以下曝露される、項12〜17のいずれか1項記載の方法。
19.細胞が1時間以下曝露される、項12〜18のいずれか1項記載の方法。
20.細胞が約30分間曝露される、項12〜19のいずれか1項記載の方法。
21.極度な温度への曝露が、35℃未満または42℃超の温度に細胞を曝露することを含む、項13記載の方法。
22.極度な温度への曝露が、凍結以下の温度への細胞の曝露または少なくとも約85℃の温度への細胞の曝露を含む、項21記載の方法。
23.機械的刺激が、剪断ストレス または/および高圧に細胞を曝露することを含む、項13記載の方法。
24.機械的刺激が、細胞のサイズより小さな開口を有する少なくとも1つのデバイスを通して細胞を通過させることを含む、項23記載の方法。
25.機械的刺激が、漸進的により小さな開口を有するいくつかのデバイスを通して細胞を通過させることを含む、項23記載の方法。
26.多能性細胞を培養して、多能性細胞を増殖させる工程をさらに含む、項1〜25のいずれか1項記載の方法。
27.多能性細胞が幹細胞マーカーを発現する、項1〜26のいずれか1項記載の方法。
28.幹細胞マーカーが以下からなる群より選択される、項27記載の方法:
Oct4;Nanog;E−カドヘリン、およびSSEA4。
29.細胞が哺乳動物細胞である、項1〜28のいずれか1項記載の方法。
30.細胞がヒト細胞である、項1〜29のいずれか1項記載の方法。
31.細胞が成体細胞、新生児細胞、胎児細胞、羊水細胞、または臍帯血細胞である、項1〜30のいずれか1項記載の方法。
32.多能性細胞をインビトロで維持する工程をさらに含む、項1〜31のいずれか1項記載の方法。
33.細胞のエピジェネティック状態が胚性幹細胞のエピジェネティック状態により近く類似するように変化させられる、項1〜32のいずれか1項記載の方法。
34.エピジェネティック状態がメチル化パターンを含む、項33記載の方法。
35.ストレスが、細胞質の少なくとも約40%を細胞から除去すること含む、項1〜34のいずれか1項記載の方法。
36.細胞質の少なくとも約50%を細胞から除去する、項35記載の方法。
37.細胞質の少なくとも約60%を細胞から除去する、項36記載の方法。
38.細胞質の60〜80%を細胞から除去する、項37記載の方法。
39.細胞質の少なくとも約80%を細胞から除去する、項37記載の方法。
40.細胞質の少なくとも約90%を細胞から除去する、項39記載の方法。
41.ストレスが、ミトコンドリアの少なくとも約40%を細胞から除去すること含む、項1〜40のいずれか1項記載の方法。
42.細胞質の一部の除去が、ミトコンドリアの少なくとも約50%を細胞質から除去する、項41記載の方法。
43.細胞質またはミトコンドリアの除去が、ミトコンドリアの約50%〜90%を細胞質から除去する、項42記載の方法。
44.細胞質またはミトコンドリアの除去が、ミトコンドリアの90%超を細胞質から除去する、項42記載の方法。
45.ストレスが、ストレスに曝露された細胞の少なくとも10%の細胞膜を破壊するために十分である、項1〜44のいずれか1項記載の方法。
46.項1〜45のいずれか1項記載の方法によって産生される多能性細胞を候補薬剤と接触させることを含む、アッセイ。
47.多能性細胞の生存能、分化、増殖の1つ以上に影響を及ぼす薬剤を同定するための使用のための、項46記載のアッセイ。
48.対象のための細胞治療の方法における項1〜45のいずれか1項記載の方法によって産生される多能性細胞の使用。
49.対象に投与しようとする細胞治療と適合性である細胞または組織を調製する方法であって:
項1〜45のいずれか1項に従って細胞から多能性細胞を生成する工程を含み;
細胞が自己細胞またはHLA適合同種異系細胞である、方法。
50.対象に細胞または組織を投与する前に、予め規定された細胞系列に沿って多能性細胞を分化させる工程をさらに含む、項49記載の方法。
51.多能性細胞を含む組成物であって、多能性細胞が項1〜45のいずれか1項記載の方法によって細胞から生成される、組成物。
52.副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、2iまたは3i培地の存在下で細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞を産生する方法。
53.細胞が、ACTHを含むLIF培地中で培養される、項52記載の方法。
54.ACTHが約0.1μM〜約100μMの濃度で存在する、項52または53記載の方法。
55.細胞が項1〜45のいずれか1項記載の方法によって生成される細胞である、項52〜54のいずれか1項記載の方法。
56.細胞が全能性細胞である、項52〜55のいずれか1項記載の方法。
57.細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも3日間培養される、項52〜56のいずれか1項記載の方法。
58.細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも5日間培養される、項52〜57のいずれか1項記載の方法。
59.細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも7日間培養される、項52〜58のいずれか1項記載の方法。
60.培養する工程の後に、細胞が、検出可能なレベルの、以下からなる群より選択される幹細胞マーカーを発現する、項52〜59のいずれか1項記載の方法:
Oct3/4;Nanog;Rex1;Klf4;Sox2;Klf2;Esrr−β; Tbx3;およびKlf5。
61.多能性細胞の自己再生能力を増加させる方法であって、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、2iまたは3i培地の存在下で細胞を培養する工程を含む、方法。
62.細胞が、ACTHを含むLIF培地中で培養される、項61記載の方法。
63.ACTHが約0.1μM〜約100μMの濃度で存在する、項61または62記載の方法。
64.細胞が項1〜45のいずれか1項記載の方法によって生成される細胞である、項61〜63のいずれか1項記載の方法。
65.細胞が全能性細胞である、項61〜64のいずれか1項記載の方法。
66.細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも3日間培養される、項61〜65のいずれか1項記載の方法。
67.細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも5日間培養される、項61〜66のいずれか1項記載の方法。
68.細胞が、ACTH、2iまたは3i培地の存在下で少なくとも7日間培養される、項61〜67のいずれか1項記載の方法。
69.培養する工程の後に、細胞が、検出可能なレベルの、以下からなる群より選択される幹細胞マーカーを発現する、項61〜68のいずれか1項記載の方法:
Oct3/4;Nanog;Rex1;Klf4;Sox2;Klf2;Esrr−β; Tbx3;およびKlf5。
70.細胞治療を必要とする対象における自己細胞治療の方法であって、
a.項1〜45のいずれか1項に従って細胞から多能性細胞を生成する工程であって、細胞が対象から得られる、工程、および
b.多能性細胞またはその分化した子孫を含む組成物を対象に投与する工程、
を含む、方法。
71.対象に組成物を投与する前に、予め規定された細胞系列に沿って多能性細胞を分化させる工程をさらに含む、項70記載の方法。
72.胎盤細胞に分化する能力を有する多能性細胞を産生する方法であって、項1〜45のいずれか1項記載の方法によって生成される多能性細胞をFGF4の存在下で培養する工程を含む、方法。
73.FGF4の濃度が1nM〜1μMである、項72記載の方法。
74.多能性細胞が胚性幹細胞に分化する能力を有する、項72または73記載の方法。
【実施例】
【0147】
実施例1
全ての生物は原始的な生存本能を保有している。植物が重大な外的ストレスに供されると、それらは、細胞の脱分化を引き起こしそして損傷領域または生物全体の再生を可能にする、生存するための機構を活性化させる。そのような機構は下等生物が極度の環境変化を生き延びるために重要であるようであるが、それは哺乳動物においてはまだ立証されていない。
【0148】
本発明者らは、物理的ストレスが、成熟哺乳動物細胞を、植物および下等生物において見られるものに類似した、幹細胞状態に復帰させ得ると仮定した。この仮説を検討するために、7つの成体体細胞組織から入手した成熟細胞を研究した。まず、どの物理的ストレスが成熟細胞を変化させてより成熟でない状態に復帰させることに最も有効であり得るかに焦点を合わせるために、Oct4−GFPマウスから回収したCD45陽性リンパ球を研究した。このマウス由来の細胞は、幹細胞特異的Oct4プロモーターが活性化されると幹細胞表現型への復帰の読み出し情報(readout)を提供する。成熟し、完全に分化した細胞をいくつかの重大な外部刺激に曝露した。
【0149】
例えば、CD45陽性リンパ球を強い化学的ストレスを提供するために低pH溶液に曝露した。曝露の3日間以内に、GFP発現細胞が観察され、そして5日間以内に、GFP発現細胞から構成される球状コロニーが観察された。このようにして生成された細胞を本実施例においてストレス変化幹細胞(Stress Altered Stem Cell)(SASCまたはSAC)という。SACを若返り幹細胞(Rejuvenated Stem Cell)(RSC)または動物カルス細胞(animal callus cell)(ACC)ということもできる。SACは、胚性幹細胞に通常伴ういくつかのマーカーを発現した。SACはES細胞と等価な分化能力を示し、キメラマウスの生成に寄与し、そして4N胚盤胞中に注入したときに胎児全体を生成する能力を有した。このようにして生成された細胞は、最初に、細胞ベースの損傷防御機構の誘導に通常伴う低いミトコンドリア活性および他の状態を示した。それらは、次いで、Oct4およびNanog遺伝子プロモーターの脱メチル化を示した。ストレス変化細胞のリプログラミングは間葉−上皮移行を介して誘導されるようであった。この知見は、損傷(外部刺激)に応答しての、植物カルス中に含有される細胞の記述と一致している。植物カルスは、細胞の、クローン体(clonal body)を形成する能力を有する多能性植物幹細胞へのストレス誘導転換から形成される。重大な外部刺激に応答して、成熟し完全に分化した体細胞性哺乳動物細胞から生成される、そのような球状コロニーを、本明細書において動物カルスといい、そのようなコロニーまたはカルス中に含有されるストレス変化細胞を「動物カルス細胞」(ACC)またはSACという。
【0150】
このように、重大な物理的および化学的ストレスは正常成熟成体細胞を、胚発生する能力を有する多能性幹細胞へリプログラムさせた。理論に結び付けられることを望まないが、リプログラミングの機構は損傷に応答して通常見られる細胞生存および修復プロセスの誘導を含むようである。本明細書において、哺乳動物細胞が、重大なストレス性の外部刺激に応答してリプログラムされた状態に復帰するための、植物のものに非常に類似した生存機構を保有することが実証されている。
【0151】
報告されているところによれば、種々の型の細胞が、誘導または特異的遺伝子の強制発現を介して多能性幹細胞状態にリプログラムされている1−5。火傷、化学的損傷、外傷および照射のような刺激物への曝露の結果としての細胞への損傷が正常細胞を変化させてガン細胞になるようにし得るとも考えられている。
【0152】
諸言
全ての生物はそれ自体を環境に適応させそしてその身体を再生することによってストレス性刺激に関連する損傷を生き延びるための共通の本能を有しているようである。植物において、個体発生は、接合子だけでなく完全に分化した細胞および未成熟の花粉においても観察される。脊椎動物において、イモリはその肢を含むいくつかの解剖学的構造および器官を再生する能力を有する。植物およびイモリの両方によって示される驚くべき再生能力が外部刺激によって誘導され、これが以前には完全に分化していた体細胞の細胞性脱分化を引き起こすことに特に留意される。生命の最も初期の形態から何十億年も経過し、そして様々な生物が特有の方法で進化してきたが、この生存本能は現代の生物の共通の祖先から受け継がれているかもしれない。最終分化した哺乳動物細胞は分化プロセスを逆転する能力を有しないと通常考えられているが、哺乳動物は強烈な環境変化に応答して死を回避するための以前には認識されていなかったプログラムを保持しているかもしれない。
【0153】
創傷のような外部刺激に応答して形成される増殖細胞の塊である植物カルスは、植物ホルモンによって培養中に刺激され得る。カルスはカルス細胞と称するリプログラムされた体細胞を含有し、その各々は全身をクローン性に再生する能力を有する。カルス細胞は植物に本来備わっているものではなく、外部刺激に応答して体細胞から生成される。近年の研究によって哺乳動物体細胞が遺伝子誘導のような外因性プロセスによってリプログラムされ得ることが実証されたが3−7、植物に相応する方法での外的な物理的および/または化学的刺激に応答しての哺乳動物体細胞のリプログラミングは報告されていない。興味深いことに、火傷、化学的損傷、外傷および照射を含む刺激物への曝露のような極度の外部刺激が、正常体細胞を変化させてガン細胞になるようにし得ると考えられている。そのような経験は、外部刺激が哺乳動物の細胞変化をもたらすことを示すものと思われる。
【0154】
本研究において、植物と同様に、哺乳動物細胞が重大な外部刺激への曝露を生き延びるための機構を保持していると仮定した。本報告は、重大な物理的および化学的刺激の適用が、種々の組織から入手した、成熟し、完全に分化した哺乳動物体細胞のリプログラミングを引き起こすことができること、およびそのようなストレス変化細胞が、クローン体を再生できる「動物カルス細胞」を含有する動物カルスを形成させる能力を有することの証拠を提出する。
【0155】
結果
成熟体細胞に適用された重大な物理的および化学的刺激。胚性転写因子Oct4は細胞の多能性状態の調節に決定的であると考えられているので、最初のストラテジーは、どの外部刺激が最も効率的に成熟細胞を変化させて、Oct4を発現するようにリプログラムされるようにするかを同定することであった。未分化細胞の混入を回避するために、まず、CD45陽性造血系列細胞を研究した。Oct4−GFP(GOF)マウスから入手した脾臓から回収したCD45陽性細胞を、種々の重大な物理的および化学的刺激に曝露した。曝露は以下を含んだ:浸透圧処理、重大な機械的トリチュレーションでの処理、低pHへの曝露、ストレプトリシンO(SLO)を使用する細胞膜損傷の適用、低栄養への曝露、ならびに低酸素および高Ca2+濃度への曝露。次に、GFP発現細胞を、FACSを使用して同定し、分別し、そして回収した。Oct4の遺伝子発現をRT−PCRによって確認した。適用した刺激の各々への曝露によって、ある程度成熟細胞がGFPを発現するようにリプログラミングされた(図5A)。低pHの化学的ストレスおよび重大な機械的トリチュレーションの物理的ストレスへの成熟細胞の曝露が、成熟細胞をOct4を発現するように変化させることに最も有効な処理であるようであった。Oct4発現細胞への転換を誘導するための至適pHを決定するために、CD45陽性細胞を、変動する酸性(pH4.0〜pH6.8)の溶液に曝露した。酸性溶液への曝露の3日後に、細胞のGFP発現をFACSを使用して分析した。pH5.4〜5.6の酸溶液がGFPを発現するように最も効率的に細胞を変化させた(図5B)。その結果、残りの研究のために選択するストレス処理として低pHへの曝露に焦点を合わせた。
【0156】
次いで、ストレス変化Oct4発現細胞を維持するための至適培養条件を決定した。以下を含むいくつかの以前に記載された培養培地を研究した:ES樹立培養培地、3iおよびACTH10、ES培養条件、ES−LIF11、胚性神経幹細胞培養条件、B27−LIF12、およびEpiSC培養条件13。細胞を各々の培地中にプレーティングし、そしてGFP発現コロニーを計数した(図5C)。培地B27−LIFがGFP発現球状コロニーを生成させることに最も有効であるようであった。それゆえ、B27−LIF培地を、処理した細胞の培養のために利用した。
【0157】
ストレス処理CD45陽性細胞をB27−LIF培地中で培養し、そして5日以内に、GFP発現球状コロニーが観察されたが、非処理コントロールにおいてはGFP発現コロニーは観察されなかった(図1A)。球状コロニーは最初の7日間に亘って直径約70μmに成長し、そして球状コロニーをその培養条件でさらに7日間維持することができた。コロニーの外形は少しゆがんでおり(baroque)、球状物よりはむしろ植物学において見られるカルスに形状が類似しているようであった。それゆえ、ストレス処理によって生成された細胞コロニーを動物カルス(AC)といった。培養細胞を解離し、次いで集団分析をFACSを使用して行った。特定の重大な刺激の適用が、CD45陽性細胞集団中に以前には存在しなかったストレス変化細胞(今や動物カルス細胞(ACC)といわれる)の生成をもたらすことが分析によって判明した(図1B)。ストレス処理の結果としてのCD45陽性細胞の表現型変化を単一細胞レベルで観察した。CD45陽性細胞はGFPを発現しなかったが、ACCはGFPを発現し、これにCD45の発現の減少を伴った(データは示さず)。単一細胞の検討により、処理細胞の細胞サイズが非処理細胞より小さいようであることが判明した。それゆえ、ACC集団の細胞サイズをFACSによって分析した。ACCの細胞サイズは非常に小さく、細胞の80%は直径8μm未満であった(図1C)。
【0158】
CD45減少およびOct4発現に伴う経時的表現型変化を検討するために、ストレス処理CD45陽性細胞を1日目、3日目および7日目に分析した。1日目に、細胞の大部分はなおCD45を発現していたが、Oct4は発現しなかった。3日目に、マーカー発現はCD45陰性細胞またはCD45陰性/Oct4陽性(かすかな)細胞を示すように移行した。7日目に、CD45発現は消滅し、そしてOct4発現細胞が観察された(図1D)。注目すべきことに、培養の最初の7日の間に、PI陽性細胞(死細胞)の数が徐々に増加した(データは示さず)。このことは、ストレス処理および培養条件が、細胞の特徴を徐々に変化させ、そしてOct4を発現する首尾よく変化した細胞を選択したことを示唆する。
【0159】
ACCの特徴付け。極度の刺激への曝露の結果としての体細胞のリプグラミングを確認するために、ACCの初期胚発生マーカー遺伝子発現を調べた。初期胚発生のポジティブコントロールとして、ES細胞を以下の実験において利用した。マーカー発現およびDNAメチル化は以下のように特徴付けられた:7日目の免疫蛍光染色により、ACCを含有する球状コロニーは多能性細胞マーカーであるE−カドヘリン抗原、Nanog、SSEA−1、PCAM−1およびAPを一様に発現し、そしてOct4−GFP陽性であることが示された(データは示さず)。遺伝子発現分析により、ACCおよびES細胞は、匹敵するレベルのOct4、Nanog、Sox2、Ecat1、Esg1、Dax1、Fgf5、Klf4およびRex1遺伝子を発現したが、初代CD45陽性細胞はそうでないことが示された(図2A)。ACCにおけるES特異的遺伝子の遺伝子発現は7日目にピークに達した(図2A)。バイサルファイトシーケンシングを行って、ACCにおけるOct4およびNanog遺伝子プロモーターのメチル化状態を決定した。天然リンパ球および培養リンパ球コントロールサンプルは両方のプロモーターで大規模なメチル化を示し、一方、ACCは、ES細胞において見られるものと類似して、これらの領域の広範な脱メチル化を示した(図2B)。従って、哺乳動物体細胞が外部刺激によってリプログラムされたことが実証されている。
【0160】
Oct4遺伝子発現がGOFマウスだけでなく野生型マウスにおいても成熟細胞のストレス処理から生じるかどうかを確認するために、CD45陽性リンパ球をICRマウスから入手した脾臓から回収した。次いで、リンパ球をストレス処理に曝露し、そしてFACSを使用して経時的に7日目まで分析した。SSEA−1陽性/E−カドヘリン陽性細胞集団がストレス処理群において見られたが、SSEA−1/E−カドヘリン発現は非ストレス処理コントロール群において観察されなかった(図6A)。これらの二重陽性細胞はOct4遺伝子発現を発現し、これをRT−PCRによって確認した(図6B)。これらの結果は、ストレス処理の結果として、Oct4陽性および多能性マーカー発現細胞であるACCが、マウス系統にかかわらずCD45陽性細胞から生成されたことを実証した。
【0161】
これらの結果は、成熟し、完全に分化した成体体細胞がストレス処理の結果として「幹細胞性」に復帰したことをことを意味する。
【0162】
ACCの幹細胞性を評価するために、その自己再生能力およびその分化能力を検討した。その自己再生能力を研究するために、以前に成熟していたCD45陽性リンパ球由来のACCコロニーを単一細胞に解離し、そしてクローン性に誘導された集団を生成するために、1ウェル当たり1細胞で96ウェルプレート中にプレーティングした。プレーティングの10日後に、96ウェルのうち4個において球状コロニーが見られた。ACCの分裂時間はウェル毎に変動した。いくつかは12〜16時間で分裂し、そして他のものは30〜34時間で分裂した。ACCを少なくとも5回継代し、Oct4の継続した発現が観察された。その結果、ACCは自己再生の能力、およびインビトロで3つ全ての胚葉からの細胞に分化する能力を示した。
【0163】
成熟GOFリンパ球由来のACを、再度、単一細胞に解離し、GFPを発現する細胞の集団のみを含有するように分別し、次いで、分化培地中で培養した。プレーティングの14〜21日後に、細胞は、外胚葉マーカーであるβIII−チューブリンおよびGFAP、中胚葉マーカーであるα−平滑筋アクチン、ならびに内胚様マーカーであるα−フェトプロテインおよびサイトケラチン7を発現した(データは示さず)。従って、ACCはインビトロで3つの胚葉を代表する細胞に分化した。
【0164】
種々の成体組織から入手した成熟体細胞のストレス変化。ACCが成熟リンパ球だけでなく他の型の体細胞から生成され得るかどうかを検討するために、脳、皮膚、筋肉、脂肪、骨髄、肺および肝臓をOct4−GFP(GOF)マウスから回収した。細胞を組織サンプルから単離し、単一細胞に解離し、そして様々な物理的および/または化学的ストレス条件で処理した。細胞を変化させるプロセスの効率は、細胞の供給源および細胞を曝露したストレス条件の両方に応じて異なった(図7A)。成熟細胞をOct4を発現するように変化させるストレスの能力は、細胞の由来に依存して異なったが、ストレスは、細胞を変化させて、3つ全ての胚葉由来の成熟細胞においてある程度Oct4を発現させることができた(図7A)。任意の成熟組織由来のACCコロニーが、多能性マーカーであるE−カドヘリン、Nanog、PCAM−1およびAP(データは示さず)、ならびにES特異的マーカー遺伝子(図7B)を発現した。組織の供給源および胚葉の由来に関わらず、重大な物理的および化学的ストレスが成熟体細胞を幹細胞状態に復帰するように変化させた。
【0165】
ACC生成の初期における細胞修飾。これらの結果は、強い物理的および化学的刺激が体細胞のリプログラミングをもたらすことを実証する。ストレス処理リンパ球はACを5日以内に形成することが観察された。分子事象の強烈な変化がストレス曝露の結果として起こったと仮定された。それゆえ、刺激への曝露後の最初の7日間であるリプログラミングの初期に研究を集中させた。
【0166】
ACCは重大なストレス曝露後に生き延びたので、通常、細胞損傷を修復するためにオンにされる生存機構が、ACC生成の間に誘導されると推測された。まず、ストレスおよびDNA修復14に対する細胞応答に関与するいくつかの候補遺伝子の発現を、天然CD45陽性細胞およびストレス処理CD45陽性細胞において1日目、3日目および7日目に比較した。ACC生成細胞および他の細胞の混合物を分析すると、細胞応答遺伝子発現は1日目で既に観察され、そしてそれらの遺伝子は7日間にわたってアップレギュレートされた(図8)。細胞応答遺伝子のアップレギュレーションはACC生成と相関したので、3日目および7日目のACCを分別し、そして遺伝子発現を分析した。Hif3aを除いて、全ての候補遺伝子がACC生成の間に種々の程度にアップレギュレートされた(図3A)。4つの熱ショック遺伝子および1つのDNA修復遺伝子がACC生成の間にアップレギュレートされることが見出された。さらに、アップレギュレートされた遺伝子のうちの7つは細胞酸化還元状態の調節に直接関与することが知られている。これらの結果は、自己修復または自己防御の能力がACC生成の間に誘導されることを示唆した。
【0167】
ACCは細胞酸化還元関連遺伝子のアップレギュレーションを示したので、次にACCのミトコンドリア機能を検討した。ミトコンドリアは、真核生物細胞内で酸素を使用した酸化還元反応を介してATPの大多数の産生を担うオルガネラである。ACC球状コロニーのGFP発現は、コロニーを継代なしに培養した場合7日後に周辺に位置する細胞から徐々に減少した。10日目に含まれたACCは、GFPを発現する中央の細胞および非GFPの分化した周辺細胞を含有していた(データは示さず)。ミトコンドリアの形態を、ミトコンドリア特異的色素であるMitoTracker Redで染色することによって、ACCおよび分化細胞において評価した。ACCミトコンドリアはくぼみがありそして球状に見える核周囲クラスターとして観察され、一方、分化細胞は、線維状でありそして細胞質中に広く広がった多くのミトコンドリアを含有していた。ACCのATP産生は天然CD45陽性細胞におけるより少なかった(図3B)。また、ACCの活性酸素種(ROS)産生は天然CD45陽性細胞におけるより少なかった(図3C)。最後に、mtDNA複製に関与する鍵となる因子を評価した;これらは、ミトコンドリア転写因子A(Tfam)、ミトコンドリア特異的DNAポリメラーゼγ(Polg)およびそのアクセサリーユニット(Polg2)であった。ACCにおけるTfam、Polg、およびPolg2の遺伝子発現は分化細胞におけるものより低かった(図3D)。その結果、ACCは少数のミトコンドリアを含有しており、そしてACCのミトコンドリア活性は分化細胞より低かった。これらの結果は、ACCが、苛酷なストレス応答の後に生存するために、分化細胞とは異なる代謝系を獲得したことを意味した。
【0168】
ACCの発生能力:最後に、ACCが植物カルス細胞のものに類似する発生能力を保有するかどうかを評価した。発生能力のための最初の試験として、免疫不全(SCID)マウス中に皮下移植したACCを研究した。移植の6週間後に、ACCは3つ全ての胚葉を表す組織を生成した(データは示さず)。
【0169】
ACCはインビボおよびインビトロで3つ全ての胚葉を代表する細胞に分化した。それゆえ、ACCのキメラ寄与能力を評価した。キメラ生成研究における使用のためのACCを、F1 GFP(C57BL/6GFP×DBA/2もしくは129/SvGFP×C57BL/6GFP)またはGOF由来のCD45陽性細胞を使用して調製した。遺伝子発現分析により、7日目にACCが最高レベルの多能性マーカー遺伝子を発現することが判明したので、7日目のACCをキメラマウス生成研究のために利用した。最初に、キメラ生成のための従来の方法を利用した。ACをトリプシンでの処理を介して単一細胞に解離した。次いで、ACCを胚盤胞中に注入した(図4A)。このアプローチを使用すると、解離したACCのキメラ寄与は非常に低かった(表1)。それゆえ、事前のトリプシン処理(これはしばしば細胞損傷を引き起こす15)なしのACCを胚盤胞中に注入した。顕微鏡下でマイクロナイフを使用して、ACを小さなクラスターに切断した。次いで、ACの小さなクラスターを胚盤胞中に注入した(図4A)。このアプローチを使用して、ACCのキメラ寄与は劇的に増加した(データは示さず)。ACCを用いて生成したキメラマウスは健全に成長し(データは示さず)、そして生殖細胞系列伝達が観察された。各組織のキメラ寄与率をFACSによって分析した。結果は、リンパ球由来のACCが全ての組織に寄与したことを示した(図4B)。
【0170】
上記で実証されたように、ACCを3つ全ての胚葉由来の種々の細胞から生成することができる(図7A〜7B)。種々の組織由来のACCが異なる分化傾向を有するかどうかを検討するために、ACCをF1 GFPマウス由来の種々の組織から生成し、そしてICR胚盤胞中に注入した。次いで、FACSを使用して、生成したキメラマウスにおける各組織の寄与率を分析した。いずれの組織由来のACCもキメラマウス生成に寄与することが見出された(図9)。さらに、皮膚、脳、筋肉、脂肪、肝臓および肺への寄与率を、種々の組織由来のACCを使用して生成したキメラマウスにおいて分析した。いずれの組織由来のACCも3つ全ての胚葉を代表する組織を生成することに寄与し、そして分化傾向は観察されなかった(図9)。
【0171】
4N宿主胚盤胞における多能性細胞の注入を含む4倍体補完によるマウスの生成は、得られる胚が注入したドナー細胞のみに由来するので、発生能力のための最も厳密な試験を表す16。ACCを、DBA×B6GFP Flマウスまたは129/SvGFP×B6GFP Fl由来のリンパ球から生成した。ACCは4N胚盤胞中への注入の後に(中)後期原腸形成「全ACC胚」の生成をもたらした(データは示さず)。遺伝子型決定分析により、「全ACC胚」が、ACCを生成するために利用した系統の特異的遺伝子を有することが実証された。従って、ACCはまさに植物カルス細胞のようにクローン体を生成する能力を保有した。
【0172】
考察
哺乳動物体細胞は、植物と非常に類似した方法で、重大な外部刺激への曝露の結果として、動物カルス(AC)形成のための能力を示す。これらのカルス中に含有される細胞(動物カルス細胞、ACC)は、キメラマウスを生成しそして完全にACCから生成された細胞のみからなる新たな胚を生成する能力を有する。本明細書に記載の結果は、哺乳動物体細胞が外部刺激によって3つの胚葉のいずれにも分化する能力を取り戻すことを実証する。このことは、体細胞が以前に考えられていたより大きな柔軟性を有することを意味する。さらに、この研究は、遺伝子誘導または外来タンパク質の導入なしでの体細胞リプログラミングの可能性を実証し、そして成体幹細胞の可能性に新たな洞察を与え;幹細胞生物学の解明における重大なマイルストーンを表す。
【0173】
材料および方法
組織回収および細胞培養。成熟リンパ球単離のために、GOFマウスまたはICRマウス由来の脾臓をハサミで刻み、そしてパスツールピペットを用いて機械的に解離した。解離した脾臓をセルストレイナー(BD Biosciences, San Jose)を通して引いた。収集した細胞をDMEM培地中に再懸濁し、そして同容量のlympholyte(CEDARLANE(登録商標), Ontario, Canada)を添加し、次いで1000gで15分間遠心分離した。リンパ球層を取り出し、そしてCD45抗体(ab25603, abcam, Cambridge, MA)を用いて得た。CD45陽性細胞をFACS Aria(BD Biosciences)によって分別した。次いで、CD45陽性細胞をストレス処理(pH5.5溶液、15分間)で処理し、そして1000U LIF(Sigma)および10ng/ml FGF2(Sigma)を補充したB27培地中にプレーティングした。
【0174】
外部刺激への曝露−ストレス処理。成熟細胞に機械的ストレスを与えるために、パスツールピペットを加熱し、次いで伸ばして直径約50ミクロンの管腔を作製し、次いで切断した。次いで、成熟体細胞を20分間これらのピペットを通してトリチュレーションし、そして7日間培養した。成熟細胞に低酸素刺激を与えるために、細胞を5%酸素インキュベーター中で3週間培養した。細胞を基本培養培地中で3週間培養することによって、低栄養刺激を成熟細胞に与えた。成熟細胞を生理的ストレスに曝露するために、細胞を低pH(pH5.5)溶液で処理し、そして7日間培養した。また、細胞により重大な損傷を与えた。成熟細胞膜に細孔を作製するために、細胞をSLO(ストレプトリシンO)で処理した。
【0175】
SLO処理細胞を10μg/ml SLOを含有するHBSS中37℃で50分間インキュベートし、次いでSLOなしの培養培地中で7日間培養した。低栄養ストレスに曝露した細胞を、基本培地中で2〜3週間培養した。「ATP」ストレスに曝露した細胞を、2.4mM ATPを含有するHBSS中37℃で15分間インキュベートし、次いで培養培地中で7日間培養した。「Ca」ストレスに曝露した細胞を、2mM CaClを含有する培養培地中で2週間培養した。
【0176】
バイサルファイトシーケンス。GOFマウスから入手した細胞を単一細胞に解離した。GFP陽性細胞をFACS Ariaを使用することによって収集した。ゲノムDNAをACCから抽出し、そして調べた。DNAのバイサルファイト処理を、製造者の説明書に従ってCpGenome DNA Modification Kit(Chemicon, Temecula, CA, http://www.chemicon.com)を使用して行った。得られた修飾DNAを2つのフォワード(F)プライマーおよび1つのリバース(R)プライマーを使用するネステッドポリメラーゼ連鎖反応PCRによって増幅した:Oct4(F1、GTTGTTTTGTTTTGGTTTTGGATAT(配列番号1);F2、ATGGGTTGAAATATTGGGTTTATTTA(配列番号2);R、CCACCCTCTAACCTTAACCTCTAAC(配列番号3))およびNanog(F1、GAGGATGTTTTTTAAGTTTTTTTT(配列番号4);F2、AATGTTTATGGTGGATTTTGTAGGT(配列番号5);R、CCCACACTCATATCAATATAATAAC(配列番号6))。PCRをTaKaRa Ex Taq Hot Start Version(RR030A)を使用して行った。DNAシーケンシングをM13プライマーを使用し、GRAS(The Genome Resource and Analysis Unit)の助けを借りて行った。
【0177】
免疫組織化学。培養細胞を4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、そして1%BSA溶液(Life Technology, Tokyo, Japan)を用いたブロッキングの前に0.1%TritonX−100/PBSを用いて透過処理した。二次抗体はAlexa-488または-594に結合したヤギ抗マウスまたはウサギであった(Invitrogen)。細胞核をDAPI(Sigma)を用いて可視化した。スライドをSlowFade Gold antifade試薬(Invitrogen)を用いてマウントした。
【0178】
蛍光標示式細胞分取およびフローサイトメトリー。FACSの前に、細胞を標準的なプロトコルに従って調製し、そして氷上で0.1%BSA/PBS中に懸濁した。死細胞を排除するためにPI(BD Biosciences)を使用した。細胞をBD FACSAria SORP上で分別し、そしてBD FACSDiva Softwareを用いてBD LSRII上で分析した(BD Biosciences)。
【0179】
RNA調製およびRT−PCR分析。RNAをRNeasy Microキット(QIAGEN)を用いて単離した。逆転写をSupeSACript III First Strand Synthesisキット(Invitrogen)を用いて行った。SYBR Green Mix I(Roche Diagnostics)を増幅のために使用し、そしてサンプルをLightcycler-II Instrument(Roche Diagnostics)上で流した。
【0180】
動物研究。腫瘍原性研究のために、100ml PBS中に懸濁した細胞を同齢の免疫不全SCIDマウスの側腹部中に皮下注射した。6週間後にマウスを屠殺し、そして死体解剖した。
【0181】
ATPおよびROSアッセイ。細胞内ATPレベルを、供給者のプロトコルに従ってATP Bioluminescence Assay Kit HS II(Roche)によって測定した。発光強度をGelomax 96 Microplate Luminometer(Promega, Madison, WI)を使用することによって測定し、そして発光の読みを細胞計数によって規準化した。ROSレベルの測定のために、細胞を2μMジヒドロエチジウム(Molecular Probes)を含有する培地中37℃で暗所で15分間インキュベートした。次いで、細胞を、PBSで洗浄し、そして0.5%BSAを含有するPBS中に懸濁した。30000個の細胞の蛍光強度をBD Biosciences LSR II(BD Bioscience, Spark, MD)の助けを借りて記録した。
【0182】
キメラマウスの生成および分析。2倍体および4倍体キメラの作製。2倍体胚をICR雄と交配したICR系統雌から得、そして4倍体胚をBDF1雄と交配したBDF1系統雌から得た。4倍体胚を2細胞胚の電気融合によって作製した17。本研究において、トリプシン処理が低いキメリズムを引き起こしたので、ACC球状コロニーを、顕微鏡下でマイクロナイフを使用して小片に切断し、次いでACCの小さなクラスターを4.5日目の胚盤胞中に大きなピペットによって注入した。次の日に、キメラ胚盤胞を2.5日目の偽妊娠雌中に移した。
【0183】
参考文献
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【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
【表3】
【0187】
実施例2:体細胞の多能性への刺激惹起性運命転換
本明細書に、強い外部刺激が、核移植の使用または転写因子の導入なしに、哺乳動物体細胞を多能性細胞に十分にリプログラムする、核初期化のための現象である「刺激惹起性多能性獲得」(STAP)を記載する。LIFの存在下で、一過性の低pHストレスは、Oct3/4のような多能性細胞マーカーを発現し、そして三胚葉分化の能力を有する細胞へのCD45造血細胞の脱分化を引き起こす。このSTAP細胞において、ES細胞のように、oct3/4およびnanogプロモーター領域において実質的な脱メチル化が見られる。造血細胞由来STAP細胞はT細胞受容体における遺伝子再構成を保有しており、このことは、方向付けられた体細胞が系列転換によってSTAP細胞を生じることを示す。胚盤胞注入は、STAP細胞が、たとえ4倍体補完アッセイにおいても、効率的にキメラに寄与し、そして生殖細胞系列伝達を介して出生児に寄与することを示す。従って、運命決定のエピジェネティック状態を強い環境的なきっかけによって状況依存的に徹底的に初期化することができる。
【0188】
Waddington のエピジェネティックランドスケープのカナリゼーションレビュー(canalization review of Waddington's epigenetic landscape)において、体細胞の運命は、細胞分化が下方へ行くにつれて漸進的に決定される。分化した細胞状態の逆転は、核移植および多重転写因子導入のようなその核機能の人工的、物理的または遺伝的な操作を必要とすると一般的に考えられている。これらの直接的な核操作なしに、単に外部トリガーに応答して、体細胞が、その核プログラムの初期化を受けることができるかどうかは答えがないままである。そのような状況は植物において生じることが知られており;培養環境の強烈な変化が、成熟体細胞(例えば、解離したニンジン細胞)の運命を、そこから茎および根を含む植物構造全体がオーキシンの存在下で発生する未成熟芽体細胞に転換させることができる。動物体細胞が、少なくとも特別な条件下で出現する同様の能力を有し得るかどうかはチャレンジングな問題である。過去10年間に渡って、成体組織における多能性細胞(または密接に関連した細胞型)の存在が論議を呼ぶ問題であり、これについて相反する結論が種々のグループによって報告された。しかし、それらのいずれもが、そのような多能性細胞が、分化した体細胞から生じ得ることを実証していない。
【0189】
CD45(白血球共通抗原)陽性の造血細胞は、iPS細胞の誘導のようなリプログラミング研究のための出発細胞型としてしばしば使用される典型的な系列方向付けされた体細胞である。それらはリプログラムされない限りOct3/4のような多能性関連マーカーを発現しない。特に、脾臓組織由来のCD45細胞の大部分は非幹白血球集団(成熟中の細胞または前駆細胞)であると考えられており、そしてT細胞受容体β鎖(tcrβ)遺伝子のゲノム再構成を保有するリンパ球からのiPS細胞転換は、方向付けられた体細胞からのリプログラミングのための真実の証明とみなされている。それゆえ、本発明者らは、脾臓CD45細胞が、単純な化学的撹乱によって引き起こされるもののような外部環境の強烈な変化によって多能性を獲得するように転換され得るかどうかという問題に興味をそそられるようになった。
【0190】
結果
低pH処理は方向付けられた体細胞において運命転換を誘導した。oct3/4::gfp B6マウス15から入手した成体脾臓から回収したCD45細胞を、物理的および化学的なものを含む種々のタイプの強い一過性刺激に曝露し、そして数日間LIF含有B27培地を使用して浮遊培養した後に、oct3/4プロモーターの活性化について検討した。これらの種々の撹乱の中で、低pH撹乱に焦点を合わせた。以下で示すように、このタイプの撹乱がoct3/4誘導に最も有効であると判明した。
【0191】
刺激への曝露なしで、CD45で分別したいずれの細胞もが、分別した細胞の生存が許容されるLIF含有培地中の培養期間にかかわらず、oct3/4::GFPを発現しなかった。対照的に、脾臓CD45細胞の低pH媒体(pH4.5〜6.0;図12A)での30分間の処理により、7日目(d7)の培養物において実質的な数のoct3/4::GFP細胞の出現が引き起こされた(図12B;最も有効な範囲はpH5.4〜5.8であった;図16B)。これらの細胞は、継代なしに少なくともさらに7日間(合計14日間)oct3/4::GFPを発現し続けた。この非接着培養のd7に、低pH誘導oct3/4::GFP細胞は球状の(または少しゆがんだ)クラスターを形成し(データは示さず;数個から数ダースの細胞からなる)、これはもはやCD45を発現しなかった(図12C)。興味深いことに、低pH誘導oct3/4::GFP細胞の細胞サイズは非処理CD45細胞の細胞サイズより実質的に小さく(単一細胞におけるoct3/4::GFPおよびCD45の免疫染色を参照のこと;図12C);FACSにおける前方散乱分析により評価すると、前記の細胞の80%は直径8μm未満であり、一方、コントロールCD45細胞は8〜10μmの範囲であった(図12D(左のピークはOct3/4::GFP細胞を示し、そして右のピークはCD45細胞を示す))。これらの観察は、2つのマーカーの発現の違い以外のoct3/4::GFPおよびCD45集団間の劇的な変化を示唆する。
【0192】
経時分析(図12C)により、d1〜d3の間の細胞集団のダイナミックな変化が示された。d1の生存細胞(生存細胞数はd0集団の約85%に相当した)の大部分はなおCD45およびoct3/4::GFPであった。d2およびd3に、総生存細胞の実質的な集団(それぞれ21%および34%)が、oct3/4::GFPになり、そしてCD45についてはかすかであった(図12C;プレーティングした細胞の約50〜60%はその時までに失われた)。d7に、有意な数のoct3/4::GFP/CD45細胞(総生存細胞の54%)がoct3/4::GFP/CD45のものとは異なる集団を構成した(図12B、上;d7の総細胞数はd3のものと同様であった)。oct3/4::GFP/CD45集団の明白な生成は非処理CD45細胞の培養物において見られなかった(図12B、下)。従って、低pH処理群におけるoct3/4::GFP/CD45集団の数は十分に実質的であり、そしてd7の総生存細胞の約半分に相当した。事実、d2にoct3/4::GFPシグナルが初めて現れたときに、GFP細胞の数は最初にプレーティングしたCD45細胞の約8%に相当した。それゆえ、低pH処理後の最初の2日間に亘って、非常に少数の集団(例えば、混入しているCD45細胞)が迅速に増殖して、そのような実質的なoct3/4::GFP集団を形成したということはなさそうである。
【0193】
ライブイメージング分析において(データは示さず)、低pH処理CD45細胞は小さなクラスターを形成する傾向があり(非処理細胞はそうでない)、これは最初の数日間にわたって徐々にGFPシグナルをオンにした。次いで、これらの小さなoct3/4::GFPクラスターはd5までに頻繁に融合し、そしてより大きな球状物を形成した。このことは、クラスターが多クローン性であることを示す。興味深いことに、これらのGFPクラスターは(GFP細胞はそうではないが)、非常に可動性であり、そしてしばしば細胞突起を突出させていた(データは示さず)。
【0194】
系列方向付けられた脾臓CD45細胞(特に、T細胞集団)がoct3/4::GFP細胞に寄与しているかどうかを試験するために、単離したoct3/4::GFP球状物においてtcrβのゲノム再構成をゲノムPCRによって検討し、そして各々の球状物がtcrβ遺伝子再構成を有する細胞を含有することが見出された(データは示さず)。混入しているoct3/4::GFP/CD45細胞における再構成を検出する可能性を除外するために、d7にoct3/4::GFP/CD45細胞をFACSによって分別し、そしてtcrβ遺伝子再構成アッセイに供した。この場合も、tcrβ遺伝子再構成が明らかに観察された(図12E)。これらの知見は、脾臓細胞における方向付けられた体細胞集団(少なくともT細胞)が、その運命をCD45からoct3/4::GFPに転換することによって、oct3/4::GFP細胞に寄与したことを実証する。
【0195】
低pH誘導Oct3/4細胞は多能性を有する。次に、刺激誘導細胞におけるoct3/4::GFP発現が、これらの細胞の多能性状態を表すのか、または単に、多能性の獲得なしでの遺伝子発現パターン(この場合、oct3/4およびcd45)における特定の変化を表すのかどうかを検討した。免疫染色により、d7のoct3/4::GFP球状物が、Oct3/4、SSEA−1、Nanog、E−カドヘリンおよびAPのような多能性関連マーカーを発現することが示された(データは示さず)。qPCRによる遺伝子発現分析により、d7の低pH誘導oct3/4::GFP細胞が、CD45細胞とは異なり、ES細胞におけるものに匹敵するレベルの、oct3/4、nanog、sox2、ecatl、esgl、daxlおよびklf4遺伝子を発現することが示された(図13A(このシリーズは、左から右に、oct3/4、nanog、sox2、ecatl、esgl、daxlおよびklf4の発現を表す);これらのマーカーはd3に既に陽性であった)。このことは、低pH誘導oct3/4::GFP細胞が、CD45細胞においては発現されることのない多能性に特徴的な真実のマーカー遺伝子セットを発現することを示す。
【0196】
次に、遺伝子発現パターにおけるこの劇的な変化が、多能性関連遺伝子のエピジェネティック修飾における変化を伴うかどうかを試験した。この目的のために、バイサルファイトシーケンシングを行って、oct3/4およびnanogプロモーター領域のメチル化状態を検討した。CD45細胞は、さらなる培養有りまたは無しで、重度にメチル化されたパターンを両方のプロモーターで示した。対照的に、低pH誘導oct3/4::GFP細胞は、ES細胞のように、これらの領域において広範な脱メチル化を示した(図13B)。このことは、細胞が、これらの多能性のために重要な遺伝子におけるエピジェネティック状態の実質的なリプログラミングを経たことを実証する。
【0197】
次に、低pH誘導細胞が、多能性性質のための共通の基準である、三胚葉誘導体を生成する能力を有するかどうかを検討した。インビトロ分化アッセイ(データは示さず)およびテラトーマ形成試験(データは示さず)の両方により、これらの細胞が外胚葉(例えば、β−チューブリンIII+)、中胚葉(例えば、平滑筋アクチン)、および内胚葉(例えば、αフェトプロテイン)細胞を生じることができることが実証された。
【0198】
まとめると、これらの知見は、方向付けられた体細胞系列の分化状態が、外部から与えられる強い刺激によって多能性の細胞状態に転換され得ることを実証する。本明細書中以下で、低pHのような強い外部刺激による体細胞から多能性細胞への運命転換を「刺激惹起性多能性獲得(stimulus-triggered acquired pluripotency)」(STAP)といい、そして得られる細胞をSTAP細胞という。
【0199】
他の組織供給源由来のSTAP細胞。STAP細胞についての別の重要な問題は、低pH惹起性転換の現象がCD45白血球に限定されるかどうかということである。この問題に取り組むために、同様の転換実験を、oct3/4::gfpマウスの脳、皮膚、筋肉、脂肪、骨髄、肺および肝臓組織から回収した体細胞を用いて行った。
【0200】
組織サンプル由来の細胞を単一細胞に解離し、一過性の低pH曝露に供し、そしてLIF含有培地中で培養した。転換効力はそれらの起源の組織間で変動したが、oct3/4::GFP細胞がd7の培養物において再現性よく観察された(図14A(このシリーズは、左から右に、CD45細胞、骨髄、脳、肺、筋肉、脂肪、線維芽細胞、肝臓、および軟骨細胞を表す))。注目すべきことに、STAP細胞は、CD45細胞が稀である脂肪組織の間葉細胞から(データは示さず)、そして軟骨細胞の初代培養細胞からも、効率的に誘導された。このことは、非CD45細胞集団がSTAP細胞を生じる得ることを示す。これらのoct3/4::GFP細胞クラスターは、多能性関連マーカー(図14B(このシリーズは、左から右に、Oct3/4、Nanog、Sox2、Klf4およびRex1の発現を表す)および図18B、データは示さず)およびES細胞特異的マーカー遺伝子(図14Bおよび図18B)も発現した。
【0201】
多能性細胞としてのSTAP細胞の特徴。このように、STAP細胞は、ES細胞特異的遺伝子を発現し、そしてoct3/4およびnanog遺伝子において同様なメチル化パターンを示す。さらに、STAP細胞を、LIF含有培地のようなマウスES細胞のための培養培地中で樹立することができたが、マウスEpiSC培地中ではできなかった(データは示さず)。
【0202】
しかし、STAP細胞はマウスES細胞に対する実質的な類似性を示したが、いくつかの異なる特徴も見出された。例えば、STAP細胞は限られた自己再生能力を示した。マウスES細胞とは異なり(データは示さず)、STAP細胞球状物を96ウェルプレートの各ウェル中でのクローン培養のために酵素的に単一細胞に解離した場合、接着または非接着いずれの条件下でも、LIF含有培地(G−MEMベースまたはB27ベース)中でのさらなる10日間の培養の後にコロニー(APまたはoct3/4::GFP)は形成されなかった(データは示さず)。球状コロニー形成が稀に見られたが(典型的には、96ウェルのうち2〜4ウェルにおいて)、これらのコロニーは全てAPおよびoct3/4::GFPであった。STAP細胞球状物を部分的に解離し、そして高細胞密度条件下で培養した場合でさえ(データは示さず;おそらく自己再生をより支持する)、細胞数は2継代の後に低下し始め、そして5継代を超えてoct3/4::GFP細胞を維持することはできなかった。増殖および維持についてのこれらの特徴は、STAP細胞が、その特徴がマウスESおよびiPS細胞と部分的に異なる多能性細胞集団を表すことを示唆する。
【0203】
マウスEpiSCは別のカテゴリーの多能性幹細胞であり、これは分化ステージが少し進んでいると考えられている。STAP細胞はいくつかの面でEpiSC細胞と異なる挙動をするようであった。接着培養において、マウスES細胞のように、oct3/4::GFP細胞は、マウスEpiSCについて見られる単層の平らなコロニーとは異なり、重層することによって半球状コロニーを形成した。また、STAP細胞をEpiSC培地中で維持することはできず、このことは、STAP細胞がEpiSCと類似していないことを示唆する(データは示さず)。さらに、EpiSCの単一細胞継代を改善するROCK阻害剤での処理は(参考文献;Ohgushi)、解離したSTAP細胞からのコロニー形成を促進しなかった(データは示さず)。
【0204】
免疫染色により、STAP細胞は、EpiSCマーカーであるClaudin7およびZO−1陰性であり、そしてKlf2/4陽性であることが示された(データは示さず)。ES細胞、STAP細胞およびEpiSCの間のグループ分けはさほど単純でないかもしれない。なぜなら、ES細胞マーカーであるEsrrβの発現はSTAP細胞およびEpiSCの両方において低く、一方、elf5発現はSTAP細胞において特異的に低いからである(図15A(このシリーズは、左から右に、ES、EpiSC、STAPおよびCD45を表す))。全ゲノムトランスクリプトームのクラスター分析において、STAP細胞は、ES細胞に最も近く、そしてRNA発現における胚盤胞に対する実質的な類似性を有するが、親CD45細胞とは最も離れている(データは示さず)。STAP細胞におけるX染色体不活性化の状況は興味深かった;約40%の雌性STAP細胞(d7)が不活性化された染色体を示し、残り(約60%)においてX染色体不活性化がキャンセルされていた(図15B)。
【0205】
これらの知見は、STAP細胞の分化状態が、ES細胞に密接に関連するがそれとは異なる新たな準安定多能性状態を表し得る可能性を提起した。
【0206】
マウスにおけるキメラ形成および生殖細胞系列伝達。最後に、STAP細胞のキメラ形成能力を、胚盤胞注入アッセイによって評価した。ES細胞とは異なり、STAP細胞(B6バックグラウンド)を単一細胞に解離し、そしてICR胚盤胞中に注入すると、濃い外被色を有するキメラマウスは誕生しなかった(表4)。単一STAP細胞をインビトロで維持することはほとんどできないので、細胞解離がその能力をどうにかして変化させたと推論した。それゆえ、STAP細胞クラスターを顕微鏡下でマイクロナイフを使用して小片に手動で切断し、そしてひとまとめにして胚盤胞中に注入した(データは示さず)。この手技を用いて、キメラマウスが実質的な率で誕生し、そして全て正常に発達した(データは示さず)。次に、GFPを構成的に発現するマウス(DBA/2または129/Svと交雑したC57BL/6GFPのF1)のCD45細胞から生成された、注入したSTAP細胞の組織寄与を検討した。GFP発現細胞の高〜中程度の寄与が、STAP細胞クラスターを注入したキメラ胚において見られた(データは示さず)。
【0207】
各々の組織におけるGFP細胞の寄与率を、これらのキメラ胚において、FACSによって分析した。CD45細胞由来STAP細胞は、検討した全ての組織に寄与した(データは示さず)。さらに、STAP細胞由来の出生児はキメラマウスに誕生した(表5)。STAP細胞のこの能力は重要であり、そしてこの多能性細胞の真の性質を実証する。なぜなら、生殖細胞系列伝達は、多能性ならびに遺伝的およびエピジェネティックの正常性のための厳格な基準であるとみなされているからである22。次いで、細胞を4N胚盤胞中に注入することによって、4倍体(4N)補完アッセイを行った。これは、注入した細胞の発生能力のための最も厳密な試験であると考えられている。なぜなら、得られる胚はこれらのドナー細胞のみに由来するからである23(データは示さず)。4N胚盤胞中に注入したとき、CD45細胞由来STAP細胞(DBA×B6GFPまたは129/Sv×B6GFP F1マウス由来)は、E10.5に「全GFP胚」を生成した(データは示さず)。このことは、STAP細胞単独で胚構造全体を構築するために十分であることを実証する。
【0208】
合わせると、これらの知見は、STAP細胞が、胚環境の状況において全ての体細胞および生殖系列に分化する発生能力を有することを明示的に示す。
【0209】
考察
本明細書に記載のデータにより、体細胞が潜在的に保有する驚くほど柔軟な適応性が明らかとなった。多能性細胞への転換さえするこのダイナミックな適応性は、細胞が、その生存環境において通常は経験しない強い刺激に一過性に曝露されたときに出現する。
【0210】
CD45細胞からSTAP細胞への転換は、少なくとも、HDAC阻害剤(例えば、トリコスタチンA)または5−アザ−シチジンでの処理によって実質的に影響されなかった。
【0211】
本明細書において、低pH処理が、培養物中の細胞数を実質的に低下させたことが実証されている。しかし、事実、最初の24時間の間の生存細胞の減少は取るに足らないものであり、このことは、この処理が細胞の大多数に対して急性の致死的な影響を与えたことはなさそうであることを示唆する。そのかわりに、遅延した細胞減少がd2〜d5の間に徐々に起こった。これと一致して、ストレスに対する細胞応答およびDNA修復に関与するいくつかの遺伝子21が低pHを経験したoct3/4::GFP細胞においてd3に強く誘導されたが、同じ培地中で培養したコントロール細胞においては誘導されなかったことをデータは実証した。このことは、細胞が、生命を脅かすまたは亜致死的なストレスとして、刺激に応答したことを示唆する。興味深いことに、それらの遺伝子発現レベルはd7でなおより高くなった;それゆえ、細胞生存のためのストレス誘導遺伝子の役割(おそらく)だけでなく、リプログラミングプロセスにおけるそれらの可能な関与も研究することは将来的に興味深い。
【0212】
別の未解決の問題は、細胞リプログラミングが、低pH処理によって特異的に、または何らかの他のタイプの亜致死的ストレス(例えば、物理的損傷、原形質膜穿孔、浸透圧ショック、増殖因子欠乏、低酸素および高Ca2+培地曝露)によっても、開始され得るかどうかである。注目すべきことに、それらの少なくともいくつか(特に、厳しいトリチュレーションによる物理的損傷およびストレプトリシンOによる膜穿孔)はCD45細胞からのoct3/4::GFP細胞の生成を誘導した(図18A)。これらの知見は、これらの遠く関連する亜致死的ストレスの下流に横たわる特定の共通調節モジュールが、分化の固くロックされたエピジェネティック状態から体細胞を解放し、エピジェネティック調節における包括的な変化を導く鍵として作用する可能性を提起する。いくつかのoct3/4::GFP細胞がd2までに現れたことを考えると、そのようなリプログラミング機構は最初の2日以内に機能し始め得る。
【0213】
参考文献
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22 Surani, M. A. & Barton, S. C. Development of gynogenetic eggs in the mouse: implications for parthenogenetic embryos. Science 222, 1034-1036 (1983).
23 Nagy, A., Rossant, J., Nagy, R., Abramow-Newerly, W. & Roder, J. C. Derivation of completely cell culture-derived mice from early-passage embryonic stem cells. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 90, 8424-8428 (1993).
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【0214】
材料および方法
組織回収および細胞培養。成熟リンパ球を単離するために、1週齢GOFマウスまたはICRマウス由来の脾臓をハサミによって刻み、そしてパスツールピペットを用いて機械的に解離した。解離した脾臓をセルストレイナー(BD Biosciences, San Jose)を通して引いた。収集した細胞をDMEM培地中に再懸濁し、そして同容量のlympholyte(CEDARLANE(登録商標), Ontario, Canada)を添加し、次いで1000gで15分間遠心分離した。リンパ球層を取り出し、そしてCD45抗体(ab25603, abcam, Cambridge, MA)を用いて得た。CD45陽性細胞をFACS Aria(BD Biosciences)によって分別した。次いで、CD45陽性細胞をストレス処理(pH5.5溶液、15分間)で処理し、そして1000U LIF(Sigma)を補充したB27培地中にプレーティングした。
【0215】
外部刺激への曝露−ストレス処理。成熟細胞に機械的ストレスを与えるために、パスツールピペットを加熱し、次いで伸ばして、直径約50ミクロンの管腔を作製し、次いで切断した。次いで、成熟体細胞を20分間これらのピペットを通してトリチュレーションし、そして7日間培養した。成熟細胞に低酸素刺激を与えるために、細胞を5%酸素インキュベーター中で3週間培養した。細胞を基本培養培地中で3週間培養することによって、低栄養刺激を成熟細胞に与えた。2mM CaClを含有する培地中で細胞を7日間培養することによって、高Ca培養濃度を成熟細胞に与えた。成熟細胞を生理的ストレスに曝露するために、細胞を低pH(pH5.5)溶液で処理し、そして7日間培養した。また、より重大な損傷を細胞に与えた。成熟細胞膜に細孔を作製するために、細胞を230ng/mlのSLO(ストレプトリシンO)(S5265, Sigma)で2時間処理し、次いで7日間培養した。
【0216】
バイサルファイトシーケンス。GOFマウスから入手した細胞を単一細胞に解離した。GFP陽性細胞をFACS Aria(商標)を使用することによって収集した。ゲノムDNAをSACから抽出し、そして調べた。DNAのバイサルファイト処理を、製造者の説明書に従ってCpGenome(商標)DNA Modification Kit(Chemicon, Temecula, CA, http://www.chemicon.com)を使用して行った。
【0217】
得られた修飾DNAを、2つのフォワード(F)プライマーおよび1つのリバース(R)プライマーを使用するネステッドポリメラーゼ連鎖反応PCRによって増幅した:Oct4(F1、GTTGTTTTGTTTTGGTTTTGGATAT;F2、ATGGGTTGAAATATTGGGTTTATTTA;R、CCACCCTCTAACCTTAACCTCTAAC)およびNanog(F1、GAGGATGTTTTTTAAGTTTTTTTT;F2、AATGTTTATGGTGGATTTTGTAGGT;R、CCCACACTCATATCAATATAATAAC)。PCRをTaKaRa Ex Taq Hot Start Version(RR030A)を使用して行った。DNAシーケンシングをM13プライマーを使用し、GRAS(The Genome Resource and Analysis Unit)の助けを借りて行った。
【0218】
免疫組織化学。培養細胞を4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、そして1%BSA溶液(Life Technology, Tokyo, Japan)を用いたブロッキングの前に0.1%TritonX−100/PBSを用いて透過処理した。二次抗体はAlexa-488または-594に結合したヤギ抗マウスまたはウサギであった(Invitrogen)。細胞核をDAPI(Sigma)を用いて可視化した。スライドをSlowFade Gold antifade試薬(Invitrogen)を用いてマウントした。
【0219】
蛍光標示式細胞分取およびフローサイトメトリー。FACSの前に、細胞を標準的なプロトコルに従って調製し、そして氷上で0.1%BSA/PBS中に懸濁した。PI(商標)(BD Biosciences)を使用して、死細胞を排除した。ネガティブコントロールにおいて、一次抗体を同じアイソタイプのIgGネガティブコントロールに置き換えて、特異性を確実にした。細胞をBD FACSAria SORP(商標)上で分別し、そしてBD FACSDiva(商標)Softwareを用いてBD LSRII(商標)上で分析した(BD Biosciences)。
【0220】
RNA調製およびRT−PCR分析。RNAをRNeasy(商標)Microキット(QIAGEN)を用いて単離した。逆転写をSupeSACript III First Strand Synthesisキット(Invitrogen)を用いて行った。SYBR Green(商標)Mix I(Roche Diagnostics)を増幅のために使用し、そしてサンプルをLightcycler-II(商標)Instrument(Roche Diagnostics)上で流した。
【0221】
動物研究。腫瘍原性研究のために、100ml PBS中に懸濁した細胞を、同齢の免疫不全SCIDマウスの側腹部中に皮下注射した。6週間後にマウスを屠殺し、そして死体解剖した。
【0222】
ATPおよびROSアッセイ。細胞内ATPレベルを、供給者のプロトコルに従ってATP Bioluminescence Assay Kit HS II(商標)(Roche)によって測定した。発光強度をGelomax(商標)96 Microplate Luminometer(Promega, Madison, WI)を使用することによって測定し、そして発光の読みを細胞計数によって規準化した。ROSレベルの測定のために、細胞を2μMジヒドロエチジウム(Molecular Probes)を含有する培地中37℃で暗所で15分間インキュベートした。次いで、細胞を、PBSで洗浄し、そして0.5%BSAを含有するPBS中に懸濁した。30000個の細胞の蛍光強度をBD Biosciences LSR II(BD Bioscience, Spark, MD)の助けを借りて記録した。
【0223】
キメラマウスの生成および分析。
2倍体および4倍体キメラの作製。2倍体胚をICR雄と交配したICR系統雌から得、そして4倍体胚をBDF1雄と交配したBDF1系統雌から得た。4倍体胚を2細胞胚の電気融合によって作製した。本研究において、トリプシン処理が低いキメリズムを引き起こしたので、SAC球状コロニーを、顕微鏡下でマイクロナイフを使用して小片に切断し、次いでSACの小さなクラスターを4.5日目の胚盤胞中に大きなピペットによって注入した。次の日に、キメラ胚盤胞を2.5日目の偽妊娠雌中に移した。
【0224】
インビトロ分化アッセイ。
中胚葉系列分化アッセイ。ストレス変化細胞塊を7日目に収集し、そして単一細胞に解離し、次いでセルソーターによってOct4−GFP陽性細胞のみを収集した。収集した細胞を20%FCSを補充したDMEMに入れた。培地を3日毎に交換した。7〜14日後に、筋肉細胞を抗α平滑筋アクチン抗体(N1584, DAKO)で染色した。ネガティブコントロールにおいて、一次抗体を同じアイソタイプのIgGネガティブコントロールに置き換えて、特異性を確実にした。
【0225】
神経系列分化アッセイ。ストレス変化細胞塊を7日目に収集し、そして単一細胞に解離し、次いでセルソーターによってOct4−GFP陽性細胞のみを収集した。収集した細胞を、2%B27(Invitrogen)、10%FCS、10ng/ml bFGF(R&D Systems)および20ng/m EGF(R&D Systems)を補充したF12/DMEM(1:1、v/v)中、オルニチンコートしたチャンバースライド(Nalge Nunc International)上にプレーティングした。培地を3日毎に交換した。10〜14日後に、細胞を4%パラホルムアルデヒドを用いて30分間4℃で固定し、0,2%Triton X−100を含有するPBSで15分間室温で洗浄し、2%FCSを含有するPBSとともに20分間インキュベートして、非特異的反応をブロックし、そして抗βIIIチューブリン(Tubuin)マウスモノクローナル抗体(G7121, Promega)および抗GFAPマウスモノクローナル抗体(AB5804, CHEMICON)とともにインキュベートした。ネガティブコントロールにおいて、一次抗体を同じアイソタイプのIgGネガティブコントロールに置き換えて、特異性を確実にした。
【0226】
肝臓分化アッセイ。ストレス変化細胞塊を7日目に収集し、そして単一細胞に解離し、次いでセルソーターによってOct4−GFP陽性細胞のみを収集した。収集した細胞を、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma)を補充した500mL肝細胞基本培地(Lonza, Wuppertal, Germany)、0.5mLアスコルビン酸、10mL BSA−FAF(脂肪酸不含)、0.5mLヒドロコルチゾン、0.5mLトランスフェリン、0.5mL(インスリン)、0.5mL EGF、および0.5mLゲンタマイシン−アンホテリシン(GA-1000;全てLonzaから)から構成される肝細胞培養培地中、チャンバー2ウェルスライドグラス(Nalge Nunc International)上にプレーティングした。分化した細胞を以下の抗体を使用する免疫組織化学によって検出した:抗αフェトプロテインマウスモノクローナル抗体(MAB1368, R&D System)および抗サイトケラチン7マウスモノクローナル抗体(ab668, abcam)。ネガティブコントロールにおいて、一次抗体を同じアイソタイプのIgGネガティブコントロールに置き換えて、特異性を確実にした。
【0227】
インビボ分化アッセイ:ストレス変化細胞塊を7日目に収集し、そして単一細胞に解離し、次いでセルソーターによってOct4−GFP陽性細胞のみを収集した。収集した細胞を、10%FBSを含むDMEM50μl中に再懸濁した。この溶液を、直径200ミクロンのポリグリコール酸ファイバーの不織メッシュから構成される3×3×1mmのシート上に播種し、そして4週齢NOD/SCIDマウスの背側側腹部中に皮下移植した。4週間後に、移植片を回収し、そして免疫組織化学技術を使用して分析した。移植片を10%ホルムアミドを用いて固定し、パラフィン中に包埋し、そして4μm厚にルーチン的に加工した。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。内胚葉組織を内胚葉マーカーである抗αフェトプロテインマウスモノクローナル抗体(MAB1368, R&D System)を用いて同定した。外胚葉組織を抗βIIIチューブリンマウスモノクローナル抗体(G7121, Promega)を用いて同定した。中胚葉組織を抗α平滑筋アクチン抗体(N1584, DAKO)を用いて同定した。ネガティブコントロールにおいて、一次抗体を同じアイソタイプのIgGネガティブコントロールに置き換えて、特異性を確実にした。
【0228】
TCRβ鎖再構成分析。gDNAをSAC、および、CD45陽性細胞由来SACを用いて生成したキメラマウス由来の尾先端から抽出した。PCRを50ngのgDNAを用いて以下のプライマーを使用して行った。(5’-GCACCTGTGGGGAAGAAACT-3’および5’-TGAGAGCTGTCTCCTACTATCGATT-3’)。増幅したDNAを1.5%アガロースゲルを用いて電気泳動した。
【0229】
キメラマウスの遺伝子型決定。gDNAを4Nキメラマウス由来の尾先端から抽出した。遺伝子型決定を以下のプライマーを使用して行った。(GFP:F−AGAACTGGGACCACTCCAGTGおよびR−TTCACCCTCTCCACTGACAGATCT。IL−2:F−CTAGGCCACAGAATTGAAAGATCTおよびR−GTAGGTGGAAATTCTAGCATCATCC)。
【0230】
次いで、ストレス変化Oct4発現細胞を維持するための至適培養条件を決定した。以下を含むいくつかの以前に記載された培養培地を検討した:ES樹立培養培地、3i16およびACTH17、ES培養条件、ES−LIF18、Oct4発現原始神経幹細胞培養条件、B27−LIF19、ならびにEpiSC培養条件20。細胞を各々の培地中にプレーティングし、そしてGFP発現コロニーを計数した(Fig. S1C)。培地B27−LIFがGFP発現球状コロニーの生成において最も有効であるようであった。それゆえ、本発明者らは、処理細胞の培養のためにB27−LIF培地を利用した。
【0231】
種々の組織から入手した細胞から生成したSACが異なる分化傾向を有するかどうかを検討するために、SACを、F1 GFPマウス由来の種々の組織から生成し、次いでICR胚盤胞中に注入した。次いで、FACSを使用して、生成したキメラマウスにおける各々の組織の寄与率を分析した。いずれの組織由来のSACもキメラマウス生成に寄与することが見出された(データは示さず)。さらに、皮膚、脳、筋肉、脂肪、肝臓および肺への寄与率を、種々の組織由来のSACを使用して生成したキメラマウスにおいて分析した。いずれの組織由来のSACも、3つ全ての胚葉を代表する組織を生成するために寄与し、そして分化傾向は観察されなかった(データは示さず)。
【0232】
【表4】
【0233】
【表5】
【0234】
実施例3
理論に結び付けられることは望まないが、本明細書に記載の方法は、アポトーシスまたは、制御細胞死に関連するプロセスを活性化していることが考えられる。細胞に対する軽度の傷害は、修復遺伝子の活性化を誘導し得る。細胞に対する苛酷な傷害は以前に規定されていない生存機構を活性化し得る。細胞が本明細書に記載のストレスのような重大なストレスに曝露されるときに、細胞成分(例えば、ミトコンドリア、小胞、核、リボソーム、小胞体、エキソソーム、エンドソーム、細胞膜、ミトコンドリア、リソソーム、ATP、タンパク質、酵素、炭水化物、脂質など)が損傷細胞から「セリュー」("cellieu")中に放出されることが考えられる。本明細書に記載のデータは、この「セリュー」が細胞の生存を再構成および/または促進でき得ることを示す。さらに、理論に結び付けられることは望まないが、ミトコンドリア(および他のオルガネラ)が細胞の再構成を指示できることが考えられる。小さなサイズ、単純さ、細胞分化を指示する能力、および原核生物様の性質の故に、ミトコンドリアは、親細胞に致死的となるストレスを生き延び得る。ミトコンドリアは細胞から遊離して放出され、膜中に被包され、そして/または他の細胞成分に結合され得る。
【0235】
あるいは、理論に結び付けられることは望まないが、核は、インタクトなまま、細胞膜中に被包され得、細胞膜はいくつかのミトコンドリアを含み得る。非常に少しの細胞質および非常に少しのオルガネラ(これらは核のエピジェネティック制御を失っている)しか有しないこれらの損傷された細胞は、次いで、押し出されたオルガネラと相互作用し、そしておそらく融合し得る。これは、細胞に、増殖および複製に必要な細胞内成分を提供するが、細胞はエピジェネティック制御を失っており、それゆえ、より原始的な(例えば、より多能性の)状態が誘導される。
【0236】
実施例4:獲得された多能性を有するリプログラムされた細胞における胚性および胎盤性系列のための発生能力
一般に、出生後体細胞の運命は固定されており、そして、それらが核移植1、2または鍵となる転写因子を用いた遺伝子操作を経ない限り変化しない。本明細書において実証されるように、本発明者らは、刺激惹起性多能性獲得(STAP)と称する、亜致死的刺激による多能性細胞への体細胞リプログラミングの予想外の現象を見出した。リプログラムされたSTAP細胞がES細胞と異なる特有の分化能力を示すことの実証も本明細書に記載されている。胚盤胞注入アッセイにおいて見られるように、STAP細胞は胚性組織だけでなく胎盤系にも寄与することができる。胎盤寄与のためのその効力は、FGF4を用いる培養によってさらに強化された。逆に、ES細胞維持培地中でさらなる継代のために培養したときに、元来限定された自己再生能力を示すSTAP細胞は、ES細胞様であるが栄養膜様ではない特徴を示す、盛んに増殖する細胞株を生成する。これらの変化したSTAP細胞(STAP幹細胞)は4倍体補完アッセイにおいてマウスを生み出すが、もはや胎盤組織には寄与しない。従って、STAP細胞は、iPS細胞とは異なり、ES細胞のものとは異なる多能性の新規な準安定状態を表し得る。STAP幹細胞技術は、新世代再生医療のための多用途で強力なリソースを与え得る。
【0237】
本明細書に、細胞運命転換の興味深い現象を記載する:体細胞は、低pH曝露のような亜致死的刺激を経験した後に、多能性を回復する。脾臓CD45細胞(方向付けられたT細胞を含む)をpH5.7に30分間曝露し、その後LIFの存在下で培養したときに、生存細胞の実質的な部分は、多能性細胞マーカーであるOct3/4を2日目(d2)に発現し始める。d7までに、多能性細胞クラスターが、真実の多能性マーカープロフィールおよび三胚葉分化の能力(例えば、テラトーマ形成によって示される)を有して形成される。これらのSTAP細胞はまた効率的に、キメラマウスに寄与することができ、そして胚盤胞注入アッセイにおいて生殖細胞系列伝達を経ることができる。これらの特徴はES細胞のものに類似しているが、STAP細胞は、少なくともその限定された自己再生の能力(典型的には最大3〜5継代)およびその解離培養に対する脆弱性において、ES細胞と異なるようである
【0238】
本実施例において、本発明者らは、胚盤胞における、細胞の2つの主要なカテゴリーへのその分化能力に焦点を合わせて、STAP細胞の特有の性質をさらに研究した7〜9:胚盤胞注入アッセイ後の内部細胞塊型(またはES細胞様)細胞および栄養膜/胎盤系列細胞は予想外の知見を明らかにした。一般に、注入されたES細胞の子孫は、キメラの胚部分において見出され、胎盤部分においては稀である(データは示さず)。驚くべきことに、注入されたSTAP細胞は、胚だけでなく、胎盤および胚体外膜にも寄与した(図22)。この二重系列寄与は、キメラ胚のおおよそ60%において観察された。
【0239】
この知見により、STAP細胞の栄養膜分化能力の研究が促された。栄養膜細胞株(栄養膜幹細胞;TS細胞)8、9を、FGF4の存在下での胚盤胞の延長された接着培養において誘導できることが知られている。STAP細胞クラスターを同じ条件下で培養した場合(図23A;96ウェルプレート中1ウェル当たり1クラスター)、球状のSTAP細胞クラスターは徐々に消滅し、そしてSTAP細胞とは異なる平坦な外観を有する細胞が増殖し、そしてd7〜d10までにコロニーを形成した(データは示さず)。高レベルのoct3/4::GFP発現を有するSTAP細胞とは異なり、これらの平坦な細胞(プレートの底に接着している)はFGF4を用いる培養の7日目で中程度のGFPシグナルを示した(データは示さず)。免疫染色により、FGF4誘導(F4I)細胞が、中程度のレベルのoct3/4::GFPに加えて、栄養膜マーカーである10〜12インテグリンα7およびEomesoderminを強く発現することが示された(データは示さず)。Nanogの発現は検出可能であったが、非常に低かった(データは示さず)。これと一致して、qPCR分析により、F4I細胞は実質的なレベルの栄養膜系列マーカー遺伝子(例えば、cdx2)を発現するが、そのoct3/4およびnanogの発現は親STAP細胞において見られるものより低いことが示された(図23B)。3日毎にトリプシン消化を用いて継代することによって、これらのF4I細胞を効率的に拡大することができ、そしてそれらはFGF4の存在下で30継代より長い間安定なままであった(その非存在下では、増殖を停止した)。この樹立および拡大をMEF細胞の上およびゼラチンコートした底の上の両方で行うことができたが、MEFフィーダー上で培養したものは、より明らかな上皮性の外観を示す傾向にあった(データは示さず)。
【0240】
胚盤胞注入アッセイにおいて、F4I細胞の胎盤寄与が頻繁に観察された(50〜60%)(データは示さず)。キメラ胎盤において、F4I細胞は典型的には全胎盤細胞の約10%に寄与した(図23C、レーン1〜3;コントロールのES細胞は実質的な胎盤寄与を与えなかったことに留意のこと、レーン4〜6)。これらの知見は、少なくとも栄養膜マーカー発現および胎盤寄与を考慮すると、STAP細胞がFGF4処理を通してTS様細胞を生成する能力を有することを示唆する。このタイプのTS様細胞への誘導はES細胞では一般的でないので(遺伝子操作しない限り)11、そのような能力はES細胞とは異なるSTAP細胞の別の特徴を表し得る。
【0241】
他方、STAP細胞由来のF4I細胞は胚盤胞由来TS細胞とは異なる特徴も有し得る。まず、従来のTS細胞とは異なり13、F4I細胞は中程度のレベルのoct3/4を発現した(データは示さず)。さらに、寄与の程度は一般に低かったが(データは示さず)、TS細胞とは異なり、胚盤胞注入したF4I細胞は胚部分にも寄与した(キメラ胎盤を伴う全ての場合で)。
【0242】
まとめると、これらの観察は、STAP細胞集団が、胎盤分化のためのその能力に関してES細胞と質的に異なることを示す。
【0243】
これを考慮して、胚盤胞中に存在する別の細胞型である胚系列への分化を研究した。ES細胞とは異なり、STAP細胞は限定された自己再生能力を有しており、そしてSTAP細胞を単一細胞から拡大することはできない。STAP細胞を従来のLIF含有培地(STAP細胞樹立において使用するB27+LIF培地を含む)中で5継代より長く維持することはできなかった(クラスターの部分的解離培養を用いてさえも)。しかし、LIFを含むACTH含有培地15(本明細書中以下、ACTH培地)は、STAP細胞コロニーの増殖速度に対する相対的に良好な支持効果を有していた(データは示さず)。ACTH培地中MEFフィーダーまたはゼラチン上でこの培地中で培養した場合(図24A)、STAP細胞クラスターのいくらかの部分(典型的には、96ウェルプレートを使用した単一クラスター培養においてウェルの20〜50%に見出される)が増殖し続けた(データは示さず)。これらの増殖中のコロニーは、マウスES細胞のものに類似しており、そして高レベルのoct3/4::GFPを発現した。親STAP細胞とは異なり、これらの拡大されたコロニー中の細胞は、この培地中で7日間培養した後、解離に耐性になり、そしてこの細胞を単一細胞として継代することができた(データは示さず)。STAP細胞とは対照的に、これらの変化した細胞を、ES細胞のように、指数関数的に少なくとも培養120日間まで拡大することができた(図24B)。多色FISH分析16によって示されるように、この増強された拡大可能性は染色体異常を伴わなかった(データは示さず)。7日間の拡大の後、細胞は増殖し、そして試験したES細胞培地のいずれにおいても細胞を維持することができたが、この最初の7日間の拡大はACTH培地を用いて最も効率的に行われた(例えば、3i培地17中でコロニーはゆっくりとそしてより低い頻度で形成された;データは示さず)。
【0244】
本明細書中以下で、STAP細胞由来の増殖性細胞をSTAP幹細胞という。STAP細胞とは異なり、STAP幹細胞はFGF4を用いる培養においてTS様細胞を産生しなかった(データは示さず)。免疫染色を通して、雌性STAP細胞の実質的な部分において見出されたX染色体不活性化は18、STAP幹細胞においてもはや観察されないことが見出された(データは示さず)。STAP幹細胞はES細胞のための種々のRNA(図24C)およびタンパク質(データは示さず)マーカーを発現した。CD45からSTAP細胞への転換に際して脱メチル化されるようになるoct3/4およびnanog遺伝子座におけるDNAメチル化レベルは、低いままであった(図24D)。分化培養において19〜21、STAP幹細胞は外胚葉、中胚葉および内胚葉誘導体を生成した(データは示さず)。これらの知見は、STAP幹細胞がES細胞の特徴と区別不能な特徴を示すことを実証する。
【0245】
これと一致して、STAP幹細胞は、複数回の継代の後でさえ、テラトーマを形成することができ(データは示さず)、そして、胚盤胞注入によって、キメラマウスに効率的に寄与することができた(データは示さず)。4倍体補完アッセイにおいて、これらの細胞が成体に成長しそして出生児を生成しさえする能力を有するマウスを生むことができるという事実によって、その胚寄与におけるSTAP幹細胞の顕著な効力が明示的に実証された(データは示さず)。STAP幹細胞の8個の独立した株が再現性よくこの能力を示したことを考慮して(そのような完全な補完は一般的に使用されるES細胞株についてさえしばしば困難であることに留意のこと)、本発明者らは、成体体細胞を起源とするSTAP細胞が、この面で胚盤胞自体と同等の(または、ことによると胚盤胞より優れた)、多能性幹細胞株の誘導のための魅力的な供給源であり得ると推論する。
【0246】
重要なことに、STAPおよびF4I細胞とは異なり、STAP幹細胞は胎盤組織に寄与するその能力を失ったようであるが(データは示さず)、それらはキメラにおいて種々の組織を生じる(図25A〜25B)。それゆえ、STAP細胞とSTAP幹細胞との間の差異は、単に自己再生活性に限定されず、胎盤系列に分化する能力の喪失も含む。
【0247】
これらの知見は、STAP細胞の特有の多能性状態を示す。単一細胞からSTAP細胞をクローン化できないこと(上記)は、単一細胞レベルでの方向付け分析を妨げるが、STAP手順が、体細胞を、胚および胎盤両方の系列のための能力を有する多能性細胞集団に転換することができることは留意する価値がある。STAP細胞の分化状態の徹底的な理解は、将来の研究のために重要なトピックである。特に、桑実胚期の胚細胞に類似する、胎盤系列のためのその能力によって示唆されるように、STAP細胞がES細胞より未成熟な状態を表すかどうかを研究することは興味深い。近年の研究は、従来のES細胞培養物が、非常に初期の胚の特徴に類似した異なる特徴を有するOct3/4細胞の非常に少数の集団も含有することを報告している22。STAP細胞は二重能力能を可能にする類似の準安定状態を有し得るが、ES細胞とは異なり、これは細胞集団の大多数において見出される。
【0248】
本明細書において、STAP細胞がES様多能性幹細胞株への形質転換のための能力を有することが実証されている。STAP細胞(雌性マウス由来)がX染色体不活性化においていくらかモザイクであり;不活性化がSTAP細胞の約40%において消失するが、残りはそれを維持することは留意する価値がある。ES細胞においては、対照的に、両方のX染色体は再現性よく活性化される。興味深いことに、誘導後、STAP「幹」細胞は、ES細胞のように、X染色体不活性化を示さない。このことは、この意味でも、親STAP細胞におけるエピジェネティック制御がマウスES細胞のそれと類似するが同一ではないことを示唆する。
【0249】
本結果は、亜致死的刺激への曝露に際して、方向付けられた体細胞自体の運命をナイーブ細胞にリプログラムするそれらの予想外の「自発的転換能力」を実証する。これは、上記のものを含む多数の興味深くそして意味深い生物学的問題を提起する。その上で、この新たに見出されたSTAP現象は、幹細胞医学における方法論を改革することができる。種々の型の組織の生成が、遺伝子導入(これは癌性トランスフォーメーションの危険性を増加させ得る)なしに体細胞から誘導されるSTAP細胞またはSTAP幹細胞からの舵取りされた分化によって可能にされ得ることが考えられる。さらに、iPS細胞転換とは異なり、STAP転換は、有意に高い頻度で起こり、そして低pH曝露のような強い刺激によって惹起される特定の内在性プログラムによって進行する。STAP幹細胞は、ES細胞のように、容易に拡大可能でありそしてクローン化可能なので、それはSTAP細胞よりも、厳密な品質管理下での医学的に有用な組織の大規模生成のために適切である。本発明者らの予備的な研究において、本発明者らは、STAP幹細胞の、網膜前駆体23、皮質前駆体24および拍動心筋細胞25への効率的な分化の実証に成功している(データは示さず)。
【0250】
方法
細胞培養。STAP細胞を、低pH溶液への一過性曝露およびそれに続くB27+LIF培地中での培養によって、CD45細胞から生成した(Obokata et al, 2013;同時投稿)。F4I細胞株樹立のために、STAP細胞クラスターを96ウェルプレート中MEFフィーダー細胞上のFGF4含有TS培地に移した。細胞を、従来のトリプシン方法を使用して、d7〜d10の間に最初の継代に供した。STAP幹(STAPS)細胞株の樹立のために、STAP球状物をMEFフィーダーまたはゼラチンコートディッシュ上のACTH含有培地に移した。4〜7日後に、細胞を従来のトリプシン方法を使用して最初の継代に供し、そして懸濁した細胞を5%FCSおよび1%KSRを含有するES維持培地中にプレーティングした。
【0251】
キメラマウスの生成および分析。STAP幹細胞、F4I細胞およびES細胞の注入のために、従来の胚盤胞注入方法を使用した。トリプシン処理が低いキメリズムを引き起こしたので、STAP細胞注入のために、STAP細胞クラスターをひとまとめにして注入した。STAP球状コロニーを、顕微鏡下でマイクロナイフを使用して小片に切断し、次いでSTAPコロニーの小さなクラスターを大きなピペットによって4.5日目の胚盤胞中に注入した。次の日に、キメラ胚盤胞を2.5日目の偽妊娠雌中に移した。4倍体胚を2細胞胚の電気融合によって作製した。
【0252】
インビトロおよびインビボ分化アッセイ:1×10個のSTAPS細胞を4週齢のNOD/SCIDマウスの背側側腹部中に皮下注入することによって、テラトーマ形成を検討した。インビトロ神経分化をSDIAおよびSFEBq法によって誘導した24、26。インビトロ内中胚葉分化25を、STAPS細胞凝集体を増殖因子(アクチビン)または10%FCSとともに培養することによって誘導した。
【0253】
核型分析。サブコンフルエントのSTAPS細胞を、コルセミドによって中期に停止させ、そして多色FISH分析(M−FISH)に供した。マウス染色体特異的染色プローブを、7個の異なる蛍光色素を使用して組み合わせ標識し、そして以前に記載されるようにハイブリダイズさせた(Jentsch et al., 2003)。
【0254】
細胞培養。STAP細胞を、記載されるように、CD45細胞から生成し、続いてB27+LIF培地中で7日間培養した(Obokata et al, 2013;同時投稿)。F4I細胞株樹立のために、STAP細胞クラスターを96ウェルプレート中MEFフィーダー細胞上のFGF4含有TS培地に移した。細胞を従来のトリプシン方法を使用してd7〜d10の間に最初の継代に供した。その後の継代を3日毎に行った。
【0255】
STAP幹(STAPS)細胞株の樹立のために、STAP球状物をMEFフィーダー細胞上のACTH含有培地に移した。4〜7日後に、細胞を従来のトリプシン方法を使用して最初の継代に供し、そして懸濁した細胞を5%FCSおよび1%KSRを含有するES維持培地中にプレーティングした。その後の継代を2日毎に行った。
【0256】
キメラマウスの生成および分析。2倍体および4倍体キメラの作製のために、2倍体胚をICR雄と交配したICR系統雌から得、そして4倍体胚をBDF1雄と交配したBDF1系統雌から得た。4倍体胚を2細胞胚の電気融合によって作製した。STAP幹細胞、F4I細胞およびES細胞の注入のために、従来の胚盤胞注入方法を使用した。STAP幹細胞、F4I細胞およびES細胞の注入のために、従来の胚盤胞注入方法を使用した。トリプシン処理が低いキメリズムを引き起こしたので、STAP細胞注入のために、STAP細胞クラスターをひとまとめにして注入した。STAP球状コロニーを、顕微鏡下でマイクロナイフを使用して小片に切断し、次いでSTAPコロニーの小さなクラスターを大きなピペットによって4.5日目の胚盤胞中に注入した。次の日に、キメラ胚盤胞を2.5日目の偽妊娠雌中に移した。
【0257】
インビトロおよびインビボ分化アッセイ:1×10個のSTAP−S細胞を4週齢のNOD/SCIDマウスの背側側腹部中に皮下注入した。6週間後に、移植片を回収し、そして組織化学的に分析した。移植片を10%ホルムアミドを用いて固定し、パラフィン中に包埋し、そして4μm厚にルーチン的に加工した。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0258】
インビトロ神経分化をSDIAおよびSFEBq法によって誘導した。インビトロ内中胚葉分化を、STAPS細胞凝集体を増殖因子(アクチビン)または10%FCSとともに培養することによって誘導した。
【0259】
免疫染色。細胞を4%PFAを用いて15分間固定し、次いで、0.5%TritonX−100を用いた透過処理の後に、一次抗体とともにインキュベートした:抗H3K27me3(Millipore;1:300)、抗Oct3/4(Santa Cruz Biotechnology;1:300)、抗Nanog(eBioscience;1:300)、抗KLF2/4(R&D System;1:300)、および抗Esrrβ(R&D System;1:300)。一夜のインキュベーションの後、結合した抗体を、Alexa546に結合した二次抗体を用いて可視化した(Molecular Probes)。核をDAPI(Molecular Probes)を用いて染色した。
【0260】
RNA調製およびRT−PCR分析。RNAをRNeasy(商標)Mini kit(QIAGEN)を用いて単離した。逆転写をSupeSACript III First Strand Synthesis kit(Invitrogen)を用いて行った。Power SYBR(商標)Green Mix(Roche Diagnostics)をPCR増幅のために使用し、そしてサンプルをLightcycler-II(商標)Instrument(Roche Diagnostics)上で流した。
【0261】
核型分析。核型分析を多色FISH分析(M−FISH)によって行った。サブコンフルエントのSTAPS細胞を、5%CO中37℃で2.5時間、培養培地へのコルセミド(最終濃度0.270μg/ml)によって中期に停止させた。細胞をPBSで洗浄し、トリプシン/エチレンジアミン四酢酸(EDTA)で処理し、細胞培地中に再懸濁し、そして5分間1200rpmで遠心分離した。3mlのPBS中の細胞ペレットに、7mlの予め加温した低浸透圧0.0375M KCl溶液を添加した。細胞を20分間37℃でインキュベートした。細胞を5分間1200rpmで遠心分離し、そしてペレットを3〜5mlの0.0375M KCl溶液中に再懸濁した。穏やかにピペッティングすることによって、メタノール/酢酸(3:1;vol/vol)を用いて細胞を固定した。固定を4回行った後、細胞をガラススライド上に広げた。FISH手順のために、マウス染色体特異的染色プローブを7個の異なる蛍光色素を使用して組み合わせ標識し、そして以前に記載されるようにハイブリダイズさせた(Jentsch et al., 2003)。各々の細胞株について、9〜15個の中期スプレッドをSensys CCDカメラ(Photometrics, Tucson, AZ)を備えたLeica DM RXA RF8落射蛍光顕微鏡(Leica Mikrosysteme GmbH, Bensheim, Germany)を使用することによって取得した。カメラおよび顕微鏡をLeica Q-FISHソフトウェア(Leica Microsystems hanging solutions, Cambridge, United Kingdom)によって制御した。中期スプレッドをLeica MCKソフトウェアに基づいて処理し、そして多色カリオグラムとして提示した。
【0262】
バイサルファイトシーケンス。
ゲノムDNAをSTAPS細胞から抽出した。DNAのバイサルファイト処理を、製造者の説明書に従ってCpGenome DNA Modification Kit(Chemicon, Temecula, CA, http://www.chemicon.com)を使用して行った。
【0263】
得られた修飾DNAを2つのフォワード(F)プライマーおよび1つのリバース(R)プライマーを使用するネステッドポリメラーゼ連鎖反応PCRによって増幅した:oct3/4(Fl、GTTGTTTTGTTTTGGTTTTGGATAT(配列番号73);F2、ATGGGTTGAAATATTGGGTTTATTTA(配列番号:74);R、CCACCCTCTAACCTTAACCTCTAAC(配列番号75))、およびnanog(F1、GAGGATGTTTTTTAAGTTTTTTTT(配列番号:76);F2、AATGTTTATGGTGGATTTTGTAGGT(配列番号:77);R、CCCACACTCATATCAATATAATAAC(配列番号:78))。PCRをTaKaRa Ex Taq Hot Start Version(RR030A)を使用して行った。DNAシーケンシングをGenome Resource and Analysis Unit, RIKEN CDBでM13プライマーを使用して行った。
【0264】
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【0265】
【表6】
【0266】
【表7】
【0267】
【表8】
【0268】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【配列表】
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【国際調査報告】