令和7(行ケ)10081審決取消請求事件
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| 裁判所 |
知的財産高等裁判所
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| 裁判年月日 |
令和8年7月8日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 対象物 |
二酸化炭素を電気化学還元する方法 |
| 法令 |
特許権
特許法159条2項5回 特許法29条1項3号2回 特許法17条の21回
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| キーワード |
審決23回 実施6回 新規性5回 拒絶査定不服審判2回 優先権2回 刊行物1回
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| 主文 |
1 特許庁が不服2024-2395号事件について
2 訴訟費用は被告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
本件は、後記本願の出願人である原告が、被告に対し、拒絶査定不服審判請
求を不成立とした審決の取消しを求める事案である。 |
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判決文
令和8年7月8日判決言渡
令和7年(行ケ)第10081号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年5月20日
判 決
5 当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
主 文
1 特許庁が不服2024-2395号事件について
令和7年3月28日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
10 事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は、後記本願の出願人である原告が、被告に対し、拒絶査定不服審判請
15 求を不成立とした審決の取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に顕
著な事実)
⑴ 原告は、発明の名称を「二酸化炭素を電気化学還元する方法」とする発明
について、平成31年3月4日、特許出願(特願2020-546445号。
20 優先権主張日:平成30年3月5日(以下「本願優先日」という。)、優先権
主張国・地域又は機関:欧州特許庁。以下「本願」という。)をした。
⑵ 原告は、上記出願に係る審査手続において、令和5年2月21日付けの拒
絶理由通知書(以下「本件拒絶理由通知書」という。甲4)を受領し、同年
7月31日に意見書(甲5)及び手続補正書(甲6。以下、この手続補正書
25 による補正を「本件審査時補正」という。)を提出したが、同年9月28日付
けで拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。甲7)を受けたため、令和6
年2月9日、拒絶査定不服審判を請求するとともに(甲8)、手続補正書(甲
9。以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)を提出した。
⑶ 特許庁は、上記審判請求を不服2024-2395号事件として審理し
(以下「本件審判手続」という。)、令和7年3月28日、
「本件審判の請求は、
5 成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同
年4月15日に原告に送達された(出訴期間90日附加)。
⑷ 原告は、令和7年8月13日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起
した。
2 特許請求の範囲及び明細書の記載
10 ⑴ 本件審査時補正後かつ本件補正前の本願の特許請求の範囲の請求項1の記
載は、以下のとおりである(以下、この発明を「本願発明」という。下線部
は本件審査時補正による補正箇所である。甲6)。
「電気化学セル中で、二酸化炭素を二酸化炭素還元生成物または生成物の混
合物へと電気化学還元し、その場で前記二酸化炭素還元生成物または生成物
15 の混合物を抽出する方法であって、
a)二酸化炭素が豊富な吸収剤を電気化学セルの陰極区画に導入すること
と、
b)前記電気化学セルの陽極と陰極の間に、前記陰極で前記二酸化炭素が
豊富な吸収剤中の二酸化炭素を還元して前記二酸化炭素還元生成物または生
20 成物の混合物にするのに十分な電位を印加することによって、二酸化炭素が
乏しい吸収剤を供給することと、
c)その場での抽出により前記二酸化炭素還元生成物または生成物の混合
物を収集することと、
を含み、
25 前記陰極区画は、酸、塩基、またはそれらの塩の少なくとも一つが添加さ
れた流体陰極液を含み、
前記陽極は、複数のセパレータによって前記陰極から分離されている、
方法。」
⑵ 本件補正後の本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりで
ある(以下、この発明を「本願補正発明」という。下線部は本件補正による
5 補正箇所である。甲9)。
「電気化学セル中で、二酸化炭素を二酸化炭素還元生成物または生成物の混
合物へと電気化学還元し、その場で前記二酸化炭素還元生成物または生成物
の混合物を抽出する方法であって、
a)二酸化炭素を含むガス流を吸収剤と接触させることによって、前記二
10 酸化炭素を含むガス流から二酸化炭素を吸収して前記二酸化炭素が豊富な吸
収剤を形成することと、
b)前記二酸化炭素が豊富な吸収剤を電気化学セルの陰極区画に導入する
ことと、
c)前記電気化学セルの陽極と陰極の間に、前記陰極で前記二酸化炭素が
15 豊富な吸収剤中の二酸化炭素を還元して前記二酸化炭素還元生成物または生
成物の混合物にするのに十分な電位を印加することによって、二酸化炭素が
乏しい吸収剤を供給することと、
d)その場での抽出により前記二酸化炭素還元生成物または生成物の混合
物を収集することと、
20 を含み、
前記陰極区画は、酸、塩基、またはそれらの塩の少なくとも一つが添加さ
れた液体陰極液を含み、
前記陽極は、複数のセパレータによって前記陰極から分離されている、
方法。」
25 ⑶ 本願に係る明細書及び図面(以下「本願明細書等」という。)の記載は、本
願の国際出願翻訳文提出書(甲3)に添付された明細書及び図面の翻訳文に
記載のとおりである(以下、その段落番号等を【】で示す。)
3 本件審決の理由の要旨
⑴ 本願優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である中国特
許出願公開第102240497号明細書(甲1。以下「引用文献1」とい
5 う。)には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「排ガス1に含まれる二酸化炭素からギ酸を製造する方法であって、
a 発電所からの排ガス1を、吸収塔2において炭酸ナトリウム溶液からな
る吸収液と接触させ、排ガス1に含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ
るプロセス、
10 b 二酸化炭素を吸収した吸収液4を脱着装置5に入れ、脱着装置5におい
て熱脱着された二酸化炭素8を二酸化炭素貯蔵タンク9に貯蔵するプロ
セス、
c 二酸化炭素貯蔵タンク9から供給された二酸化炭素ガスを、ギ酸とギ酸
ナトリウムを含む混合溶液が入った気液混合器10に飽和するまで入れ、
15 気液混合液11とするプロセス、このとき気液混合器10内に導入される
二酸化炭素ガスの圧力は0.8MPaであり、
d 気液混合液11を、三室膜電解装置34の陰極室34aに入れ、陰極室
34aにおける電解によって生成されたギ酸イオンを、陰イオン交換膜3
5を通過して濃縮室(中間室)34bに入れるプロセス、
20 e 硫酸を含む陽極液31を、三室膜電解装置34の陽極室34cに入れ、
陽極液31中の水素イオンを、電解過程において陽イオン交換膜15を通
過して濃縮室(中間室)34bに入れ、上記dで生成されたギ酸イオンと
反応することによって、ギ酸が濃縮された液体37を生成するプロセス、
f 濃縮されたギ酸を含む濃縮室出口の液体37をギ酸貯蔵タンク23に入
25 れるとともに、陰極室出口の混合液36を気液分離器17に入れ、流出ガ
ス18と分離された流出液20を気液混合器10に入れるプロセス、
を含む方法。」
⑵ 引用発明は本願補正発明の特定事項の全てを備えており、本願補正発明は、
引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、
特許を受けることができない。そうすると、本願補正発明は、特許出願の際
5 独立して特許を受けることができるものであるとはいえないから、本件補正
は、特許法17条の2第6項、126条7項の規定に違反しており、却下す
べきものである。
そして、本願補正発明は本願発明の発明特定事項を全て含み、それを技術
的に限定したものであり、これが引用文献1に記載された発明であるから、
10 本願発明も同様の理由により引用文献1に記載された発明であり、特許法2
9条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
第3 原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(引用発明における吸収剤の認定の誤り)
本件審決は、引用発明の「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」は、本
15 願補正発明の「吸収剤」に相当すると認定した。
しかし、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」は、本願補正発明が属する
技術分野において、二酸化炭素の吸収剤としては扱われていない。引用文献1
においても、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」は、二酸化炭素ガスを「飽
和するまで入れ」ると記載されているのみであり、二酸化炭素を「吸収」する
20 とは記載されていない。そして、引用文献1では、Na₂CO₃等を用いて排ガ
スから二酸化炭素を「吸収」すると記載されており(引用文献1の段落[00
19])、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」に「飽和するまで入り」
((同
段落[0037])とは明確に区別して記載されている。
また、二酸化炭素の回収について記載された文献(甲12、13)において
25 も、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」は二酸化炭素の吸収剤として記載
されていない。
このように、本件審決は、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」は二酸化
炭素の吸収剤として扱われないにもかかわらず、これを「吸収剤」に相当する
と誤って認定したものである。
2 取消事由2(手続違背)
5 ⑴ 本件拒絶理由通知書(甲4)は、引用文献1には「吸収剤といえる炭酸ナ
トリウム溶液に二酸化炭素を吸収させ、二酸化炭素吸収後の富化液体を膜電
気分解ユニットのカソード領域に導入し、二酸化炭素を還元してギ酸を生成
すること、膜電気分解ユニットが、カチオン交換膜及びアニオン交換膜によ
り、カソード領域、アノード領域及び中間室に分離される」、「吸収剤として
10 アルカノールアミン溶液を用いてよい」と記載されていると認定し、この認
定が撤回されることなく本件拒絶査定がされた。
引用文献1において、上記の炭酸ナトリウム溶液及びアルカノールアミ
ン溶液は、ギ酸及びギ酸ナトリウムを含む陰極液とは別の溶液であり、別の
用途で使用されているものである。そして、本件拒絶理由通知書には、ギ酸
15 若しくはギ酸及びギ酸ナトリウムを含む陰極液に二酸化炭素が吸収されると
いう事項は記載されていない。
他方、本件審決は、引用発明の「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」
は本願発明の「吸収剤」に相当すると認定しているところ、これは、
「査定の
理由と異なる拒絶の理由」
(特許法159条2項)に該当するにもかかわらず、
20 本件審判手続においては、新たな拒絶理由の通知がされないまま本件審決に
至った。
そうすると、原告には、本件審判手続において、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを
含む混合溶液」が本願発明の「吸収剤」に相当するとの認定に基づく拒絶理
由に対して意見書及び補正書を提出する機会が与えられなかったのであるか
25 ら、本件審決には、特許法159条2項、50条の規定に違反する違法があ
る。
⑵ 被告は、本件拒絶査定も本件審決も、引用文献1の実施例2に基づく同じ
発明を引用発明として新規性が欠如すると判断したものであると主張する。
しかし、実施例は同じであっても、
「吸収剤」に相当するものとして、炭酸
ナトリウム溶液又はアルカノールアミン溶液であるとした発明と、「ギ酸及
5 びギ酸ナトリウムを含む陰極液」であるとした発明とでは発明の構成が異な
るから、実質的に、
「査定の理由と異なる拒絶の理由」に当たるというべきで
ある。
第4 被告の反論
1 取消事由1(引用発明における吸収剤の認定の誤り)について
10 本願補正発明の特許請求の範囲及び本願明細書等の記載によると、「吸収剤」
とは、二酸化炭素を含むガス流と接触せしめられて二酸化炭素が豊富となり、
電位の印加により二酸化炭素が乏しくなるものであると理解でき、これは、化
学溶媒、化学溶媒の混合物、物理溶媒、物理溶媒の混合物、又は化学溶媒と物
理溶媒の混合物を含んでもよく、二酸化炭素を化学的に選択吸収するものや、
15 加圧により物理的に吸収するものに限られず、物理溶媒を使用し1bar(大
気圧)で混合する場合のように、混合することにより、化学反応や加圧を伴う
ことなく、二酸化炭素を捕捉するという機能を有するものをも含むといえる
(【0082】~【0084】、【0087】~【0089】、【0107】)。
引用発明の「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」は、二酸化炭素ガスと
20 混合され、二酸化炭素をそれ以上受け入れることのできなくなる限界の状態に
達するまで、二酸化炭素が入れられるものであるから、混合することにより、
化学反応や加圧を伴うことなく、二酸化炭素を捕捉するという機能を有するも
のであり、これは本願補正発明の「吸収剤」にほかならない。
したがって、本件審決が、引用発明の「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶
25 液」を本願補正発明の「吸収剤」に相当すると認定したことに誤りはない。
2 取消事由2(手続違背)について
⑴ 本件拒絶査定の理由は、引用文献1の実施例2に基づいて認定された発明
を引用発明として新規性が欠如するとしたものである。そして、本件審決は、
引用文献1の実施例2に基づいて認定された引用発明に基づいて、本願補正
発明及び本願発明の新規性を否定したものであり、本件拒絶査定の理由とは
5 異ならない。したがって、本件は、
「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見し
た場合」には当たらず、本件審判手続において手続違背はない。
⑵ 原告は、本件拒絶査定は吸収剤を「炭酸ナトリウム溶液」、「アルカノール
アミン溶液」とする引用発明に基づくものであったのに対し、本件審決は吸
収剤を「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」とする引用発明に基づくも
10 のであり、「査定の理由と異なる拒絶の理由」に該当するのにもかかわらず、
審判手続において、意見書及び補正書を提出する機会を与えられなかったと
主張する。
しかし、本件拒絶理由通知書に「吸収剤といえる炭酸ナトリウム溶液」、
「吸
収剤としてアルカノールアミン溶液を用いてよい」と記載されているからと
15 いって、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」が本願発明の「吸収剤」に
相当するものではないことまでも認定したものではない。
そして、本件拒絶理由通知書の記載及びそれによる引用文献1の摘示箇所
を見れば、引用文献1に記載された「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」
が本願発明の「吸収剤」に相当し得ると理解できたはずであるから、吸収剤
20 を「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」とする引用発明に基づく拒絶理
由に対して意見書及び補正書を提出する機会を与えられなかったということ
はできない。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由2(手続違背)について
25 事案に鑑み、取消事由2(手続違背)について判断する。
⑴ 認定事実
後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 引用文献1(甲1)には、二酸化炭素を炭酸ナトリウム溶液又はアルカ
ノールアミン溶液からなる吸収液に吸収させるプロセス(引用発明中のa
のプロセス)と、二酸化炭素ガスを「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶
5 液」に飽和するまで入れるプロセス(同cのプロセス)とが記載されてい
る。そして、引用発明においては、プロセスaで吸収された二酸化炭素は
プロセスbで熱脱着され、この二酸化炭素ガスがプロセスcで気液混合液
とされ、これがプロセスdで陰極室に入れられるとされている。したがっ
て、炭酸ナトリウム溶液又はアルカノールアミン溶液と「ギ酸とギ酸ナト
10 リウムを含む混合溶液」とは、全く異なるプロセス及び目的で使用されて
おり、同一のプロセスにおいて用いられる代替品や同等物といった関係に
あるものではない。
イ 本件拒絶理由通知書(甲4)には、引用文献1には「吸収剤といえる炭
酸ナトリウム溶液に二酸化炭素を吸収させ」、「吸収剤としてアルカノール
15 アミン溶液を用いてよい」と記載されている。本件拒絶査定(甲7)は、
本件拒絶理由通知書に記載された理由、すなわち、炭酸ナトリウム溶液又
はアルカノールアミン溶液が本願発明の「吸収剤」に相当するとの認定に
基づき、本願を拒絶すべき旨の判断をした。
ウ 原告は、本件拒絶査定を不服として審判を請求するとともに、吸収剤が
20 本件拒絶理由通知書に記載された炭酸ナトリウム溶液等であることを前
提とする新規性欠如の拒絶理由を解消するため、本件補正をした(甲9)。
エ 本件審決は、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」が本願補正発明及
び本願発明の「吸収剤」に相当すると認定し、これに基づき本願を拒絶す
べき旨の判断をした。
25 本件審判手続において、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」が本願
発明の「吸収剤」に相当するとの認定に基づき本願を拒絶するとの判断を
することについて、原告に対し、特許法159条2項、50条に基づき、
拒絶理由を通知し、意見書を提出する機会は与えられなかった。
⑵ 判断
ア 上記⑴で認定したとおり、本件拒絶査定と本件審決は、本願発明の「吸
5 収剤」として異なる物質を認定したものであるところ、炭酸ナトリウム溶
液又はアルカノールアミン溶液と「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」
とは、引用文献1において全く異なるプロセス及び目的で使用されており、
同一のプロセスにおいて用いられる代替品や同等物といった関係にある
ものではない。そうすると、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」を吸
10 収剤と認定して本願を拒絶することは原告に対する不意打ちとなるから、
原告にその旨を通知して意見書の提出及び補正の機会を与えるのが相当
であって、「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」(特許法15
9条2項)に該当するというべきである。そして、補正の機会を与えない
という上記手続違背は、その性質上、本件審決の結論に影響を及ぼすもの
15 と解される。
したがって、本件審判手続には、特許法159条2項、50条に違反す
る違法があり、この点は本件審決を取り消すべき事由に当たると認められ
る。
イ これに対し、被告は、①本件拒絶査定も本件審決も、引用文献1の実施
20 例2に基づく同じ発明を引用発明として新規性が欠如すると判断したも
のである、②本件拒絶理由通知書の記載及びそれによる引用文献1の摘示
箇所を見れば、引用文献1に記載された「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混
合溶液」が本願発明の「吸収剤」に相当し得ると理解できたはずであると
主張する。
25 しかし、上記①について、実施例は同じであっても、
「吸収剤」に相当す
るものとして、炭酸ナトリウム溶液又はアルカノールアミン溶液であると
した発明と、
「ギ酸及びギ酸ナトリウムを含む混合溶液」であるとした発明
とでは発明の構成が異なるから、同じ発明を引用発明として判断したとい
うことはできない。
また、上記②について、本件拒絶理由通知書の記載からすれば、原告と
5 しては、炭酸ナトリウム溶液又はアルカノールアミン溶液が本願発明の
「吸収剤」に相当すると認定したものと理解するのが自然である。そして、
二酸化炭素の回収について記載された文献(甲12、13)において、
「ギ
酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」は二酸化炭素の吸収剤として記載さ
れておらず、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」が二酸化炭素の吸収
10 剤として一般的であるとの技術常識を認めるに足りる証拠も見当たらな
いことからすると、本件拒絶理由通知書に明示されていない「ギ酸とギ酸
ナトリウムを含む混合溶液」が本願発明の「吸収剤」に相当すると認定さ
れることを予期し得なかったとしても無理はない。そうすると、本件拒絶
理由通知書の記載から、
「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」が本願発
15 明の「吸収剤」に相当し得ると理解できたはずであるということはできな
い。
2 結論
以上のとおりであるから、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求は
理由があるから、本件審決を取り消すこととして、主文のとおり判決する。
20 知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
25 長 谷 川 浩 二
裁判官
5 伊 藤 清 隆
裁判官
10 諸 岡 慎 介
当 事 者 目 録
原 告 ネーデルランセ オルハニサチエ フ
5 ォール トゥーヘパスト-ナツールウ
ェーテンシャッペルック オンデルズ
ク テーエヌオー
同訴訟代理人弁理士 木 村 満
10 堀 部 峰 雄
佐 藤 浩 義
山 中 生 太
末 次 渉
中 澤 泰 宏
15 中 村 成 美
中 嶋 幸 江
長 野 正
庄 野 寿 晃
大 石 治 仁
20 橋 本 幸 治
被 告 特 許 庁 長 官
同 指 定 代 理 人 富 永 泰 規
粟 野 正 明
25 海 老 原 え い 子
北 村 英 隆
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