ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(ワ)3737 著作権侵害差止等請求事件
| 裁判所 | 一部認容 大阪地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和8年7月30日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告若林株式会社 被告コミヤマ合同会社 |
| 法令 |
著作権 |
| キーワード | 侵害37回 ライセンス10回 差止8回 損害賠償4回 許諾2回 商標権1回 |
| 主文 | 1 被告は、別紙被告商品目録記載の各商品を譲渡し、または輸入してはならな 2 被告は、ECモールであるAmazon内にて被告が出店するストア「コミ 3 被告は、別紙被告商品目録記載の各被告商品を廃棄せよ。 4 被告は、原告に対し、12万5050円及びこれに対する令和7年5月1日 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は、これを30分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負 7 この判決は、第1項、第2項及び第4項に限り、仮に執行することができる。 |
| 事件の概要 | 1 本判決で用いる呼称(略語) ・ 本件各著作物:別紙原告著作目録記載1ないし4のテキスタイルデザイン (目録記載の番号ごとに「本件著作物1」などという。 ) ・ A: ・ 本件被告サイト:ECモールであるAmazon内にて被告が出店するス トア「コミヤマスタイル」 ・ 被告商品:別紙被告商品目録記載(枝番を含む。 )の商品(目録の番号ご とに「被告商品1」などという。 ) ・ セット商品:本件被告サイトにおいて販売されている、足袋型ソックスが 3足セットとなった商品 ・ 法:著作権法 2 原告の請求 |
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令和8年7月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和7年(ワ)第3737号 著作権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和8年6月17日
判 決
原 告 若林株式会社
代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士 矢 倉 雄 太
同 西 川 侑之介
被 告 コミヤマ合同会社
代表者代表社員
訴訟代理人弁護士 川 崎 公 司
訴訟復代理人弁護士 山 谷 千 洋
同 吉 澤 裕
主 文
1 被告は、別紙被告商品目録記載の各商品を譲渡し、または輸入してはならな
い。
2 被告は、ECモールであるAmazon内にて被告が出店するストア「コミ
ヤマスタイル」(●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●)において、
別紙被告商品目録記載の各被告商品の画像を公衆送信してはならない。
3 被告は、別紙被告商品目録記載の各被告商品を廃棄せよ。
4 被告は、原告に対し、12万5050円及びこれに対する令和7年5月1日
から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、これを30分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負
担とする。
7 この判決は、第1項、第2項及び第4項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
5 第1 請求1 被告は、別紙被告商品目録記載の各商品を製造し、譲渡し、または輸入してはならない。2 主文第2項と同旨3 主文第3項と同旨4 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和7年5月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本判決で用いる呼称(略語)・ 本件各著作物:別紙原告著作目録記載1ないし4のテキスタイルデザイン(目録記載の番号ごとに「本件著作物1」などという。)・ A:・ 本件被告サイト:ECモールであるAmazon内にて被告が出店するストア「コミヤマスタイル」・ 被告商品:別紙被告商品目録記載(枝番を含む。)の商品(目録の番号ごとに「被告商品1」などという。)・ セット商品:本件被告サイトにおいて販売されている、足袋型ソックスが3足セットとなった商品・ 法:著作権法2 原告の請求本件は、本件各著作物の著作権を譲り受けた原告が、被告において同著作物を使用した被告商品(足袋型ソックス)を製造又は輸入し、販売したことにより、本件各著作物にかかる著作権(翻案権、譲渡権、公衆送信権)が侵害されたとして、被告に対し、各被告商品の製造等の差止め・廃棄を求めるとともに、不法行為に基づき、損害賠償金330万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(令和7年5月1日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延
5 損害金の支払を求める事案である。3 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠(枝番を含む。以下同様。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1) 原告は、紳士服、婦人服、子供服及びインテリア用品の輸入及び販売、日用雑貨の輸入及び販売などを目的とする株式会社である(甲1)。被告は、服飾、小物、雑貨、その他各種商品の企画、製造、OEM、販売及び輸出入を目的とする合同会社である(甲2)。
(2) Aは、原告からの委託を受けて、本件各著作物を含むテキスタイルデザインを制作し、原告は、前記テキスタイルデザインを用いて、SOU・SOUとのブランド名にて、足袋や着衣などの衣料品を含めた各種商品の販売を行っていた。なお、原告は、テキスタイルデザインをウェブサイトやデザイン集の形で公開しており、本件各著作物は、いずれも、遅くとも令和2年10月31日までに原告のウェブサイト上で公開されていた(甲12ないし15)。
(3) 被告商品は、いずれも足袋型ソックスである。被告は、遅くとも令和6年2月26日頃までに、本件被告サイトにおいて、被告商品を出品し、販売した。本件被告サイトにおいて被告商品を紹介するページには、各被告商品の写真画像が掲載されていた。なお、本件被告サイトにおいては、足袋型ソックスが3足1セットで販売されており、セット商品「KS-0003」には、被告商品1、同2-1及び同2-2が、セット商品「KS-0004」には、被告商品3が、セット商品「KS-0005」には、被告商品4-1及び同4-2が、それぞれ1足ずつ含まれていた。(以上につき、甲9ないし11、争いなし。)
(4) 本件各著作物は、A制作に係る著作物として、Aがその著作権を有していたが、原告は、令和7年3月17日、Aから、本件各著作物に係る著作権の
5 譲渡を受け、かつ譲渡時点において発生していた本件各著作物に係る著作権の侵害に関する不法行為に基づく損害賠償請求権、不当利得返還請求権その他一切の債権の譲渡を受け、Aは、同日付で、同譲渡の事実を被告に通知した(甲6、7の1、2)。4 争点
(1)著作権侵害の成否等(争点1)
(2) 原告の損害の額(争点2)
第3 争点に対する当事者の主張
1 争点1(著作権侵害の成否等)について
【
(原告の主張)
】
(1) 被告が本件各著作物に基づいて被告商品を作成した行為は、本件各著作物
の翻案に該当し、本件被告サイトにおいて被告商品を販売した行為は、譲渡による公衆への提供に該当する。また、被告が被告商品の画像を本件被告サイトに掲載した行為は、公衆送信に該当する。
(2) 原告は、本件各著作物を含むテキスタイルデザインをウェブサイト上で公
開しているほか、デザイン集においても公開しており、被告において本件各著作物にアクセスすることが容易であった。被告が被告商品以外にも原告のテキスタイルデザインに酷似する商品を販売していることにも鑑みれば、被告商品が本件各著作物に依拠して作成されたことは明らかである。また、被告商品1が本件著作物1に、被告商品2-1及び同2-2は本件著作物2に、被告商品3は本件著作物3に、被告商品4-1及び同4-2は本件著作物4に、それぞれ類似する。
(3) よって、被告の行為は、本件各著作物にかかる著作権(翻案権、譲渡権、
公衆送信権)を侵害するものであり、これら侵害行為の差止めの必要性がある。仮に、被告が被告商品を輸入して販売したものであるとしても、被告商品
5 を輸入する行為は本件各著作物の著作権を侵害する行為とみなされる(法1
13条1項1号)。
(4) 被告において、例えば Google の画像検索を用いるなどして極めて容易に
本件各著作物にアクセスすることができたものであり(甲37)、本件著作権侵害行為につき、被告に、故意、少なくとも過失が認められることは明らかである。【
(被告の主張)
】
(1) 被告が被告商品を海外から輸入して販売したことがあることは認め、その
余は不知、否認ないし争う。被告商品が本件各著作物の著作権を侵害しているかについては、不知。
(2) 被告は、被告商品を中国企業から仕入れた上で、令和5年11月頃から、
本件被告サイトで被告商品を出品・販売したが、原告からの通知を受けて、令和6年3月8日以降、すべての商品の販売を中止し、同年4月頃、サンプル品として使用した分や既販売分を除いた在庫を中国企業に返品した。このとおり、被告は、現在被告商品を販売しておらず、既に返品済みのため保有していない。したがって、仮に過去に被告が本件各著作物の著作権を侵害していた可能性があるとしても、現在においては侵害及び侵害のおそれは存在せず、差止めの必要性はない。
(3) 被告は、被告商品の輸入、販売、インターネットへの掲載に当たり、それ
が本件各著作物の著作権を侵害しているとの事実を知って行ったわけではない。従って故意はない。また、被告商品が本件各著作物との一定程度の類似性を有するとしても、完全に一致しているわけではなく、また、被告の通常の注意義務をもって事前調査を行っても、靴下という日用雑貨品について、インターネットや店頭販売されているその余の商品のすべてを確認し、自らの商品の権利侵害性を判断することは不可能であるから、被告に過失があったともいえない。
5 2 争点2(原告の損害の額)について
【
(原告の主張)
】
(1) 法114条2項に基づく損害額
ア 被告商品の販売数量被告は、被告商品が含まれるセット商品について、少なくとも複数回にわたって仕入れと販売を繰り返していたものと考えられることから、各被告商品の仕入数量(セット数)は、乙4号証記載の仕入数量(各290個)を踏まえると、それぞれ870個(290セット×3)を下らない。同仕入数から返品数量を控除した数量が、被告商品の販売数量となる。被告から乙4号証のとおり開示された仕入数量は、乙5号証に記載の返品数量を下回っており、信用できない。また、被告は、被告商品の仕入れは乙6号証のインボイス記載の1回のみ行われたと主張するが、乙6号証は正式なインボイスとは考えられず、信用できない。被告は、乙7号証に基づいて販売数量を主張するが、csvファイルは編集可能であり、被告が誠実に売上げ資料を開示してきたとはいえないし、被告商品の販売期間も明らかではなく、乙7号証の記載内容にも不明な点があり、乙7号証によって販売数量を認定することはできない。イ 売上高被告商品は、本件被告サイトにおいて1100円(税込)として販売されており、同販売価格に前記アの販売数量を乗じた金額が、被告の売上高である。ウ 限界利益被告商品が含まれる各セット商品につき、被告からは控除すべき経費について何ら主張立証がされていないから、限界利益は売上高と同額である。被告主張の各経費に関する
(原告の主張)
は、以下のとおりである。
5 ① 仕入代金
被告は、乙6号証に基づき仕入代金を算出するが、乙6号証は発行日の記載すらなく、掲載商品も被告商品と異なるものであって、被告商品の仕入れ代金を裏付ける資料とはいえない。
② 輸入経費
乙11号証においては品物名が「SOCKS」と記載されているだけで、被告商品に関する輸入費用か否かも不明である。
③ 登録料等 170円
どのような登録料や広告であるかが全く明らかにされておらず、必要性も不明である。
④ クリックポスト代 185円(乙10)
被告が被告商品の販売の際にクリックポストを使用した事実について立証がない。
⑤ 諸経費 13円
諸経費(箱代等)に関する経費が、被告商品の販売に直接関連して追加的に必要になった経費であるとの立証はされていない。エ 損害額各セット商品のうち被告商品が占める割合を、前記限界利益額に乗じた金額が、法114条2項に基づく原告の損害額であるところ、その金額は、合計134万9700円を下らない。
(2) 法114条3項に基づく使用料相当額
ア 原告では、テキスタイルデザインなどのライセンス事業にあっては、当該テキスタイルデザインを用いたライセンシーの商品の売上高に応じたランニングロイヤリティ方式にて合意することが多く、ライセンスの対価を得ている。加えて、原告は、当該ライセンス事業における使用料につき、併せてミニマムロイヤリティを合意することとしており、その金額はライ
5 センシー商品の1SKU(分類した商品の最小単位。以下同様。)当たり
最低50万円以上である(甲22ないし34)。イ 原告とAとは、第三者へのライセンスに関しては、第三者との間の契約当事者や金銭のやりとりを、原告が、A自身が参画する「SOU・SOU」事業の一部として代行することとしていた。その上で、Aは、これまで、ミニマムロイヤリティを1SKUあたり50万円(税別)として設定して、
第三者に対しテキスタイルデザインをライセンスして、そのライセンス料
を得てきたのである。したがって、被告との間においても、本来Aは、上記スキームを通じて1SKUあたり50万円(税別)、具体的には少なくとも今回の訴訟で対象にしている被告商品との関係でいえば6SKUの合計300万円(税別)のライセンス料相当額を収受できたはずであった。ウ 被告は、合計6個の被告商品(6SKU)の販売等により原告の著作権を侵害しているのであり、原告の逸失利益は300万円を下らない。【
(被告の主張)
】損害額について、争う。
(1) 法114条2項に基づく損害額
ア 被告商品の販売数量被告が仕入れた商品の販売期間は、令和5年11月21日から令和6年3月8日までであり、その販売数量は81セット(3足1セットのため243足)である。被告が、Amazonからダウンロードした、被告が販売した全商品についての注文数等が記載されたcsvファイル(乙7)によれば、セット商品KS-0003の販売数量は13セット、KS-0004は6セット、KS-0005の販売数量は15セットである。よって、被告商品の販売数量は、合計75足である。被告は、令和5年10月16日にインボイスの発行を受け(乙6、1
5 4)、同月26日に輸入許可を受けるとともに(乙15)、輸入業者から
の請求書(乙11)の送付を受けた。仕入数量は乙4号証で示したとおりであり、その数量は、乙6号証のインボイスにより輸入した際の箱の表側に記載されていたものである。同数量と乙5号証における返品数量との間に不整合な部分があるとしても、被告にその理由は分からない。被告商品の仕入れは乙6号証の1回限り行われたものであり、複数回の仕入れはない。乙6号証は、被告商品以外の商品に関する仕入れを含むものであり、仕入単価を示す証拠であって、被告商品のみの仕入数量を乙6から認定することはできない。イ 売上高被告は1セット商品(3足)を909円で販売していたので、75足の販売金額は2万2725円である。なお、基本的な販売価格は1セット商品当たり909円であったが、プロモーション(販売促進)の際には売買価格が1セット1000円として設定された。購入者は、上乗せ分91円を余計に支出する一方、それ以上の金額のクーポン券を入手できる仕組みであり、上乗せ分はAmazonに入金するもので被告には入金されないことになっていた(乙9)。ウ 限界利益1セット商品当たりの控除すべき経費は、以下のとおりである。
① 仕入代金 322円
仕入代金は1足あたり0.71ドルであり(乙6)、1ドル151.35円として1セット商品(3足)当たり322円である。
② 輸入経費 172円
輸入代行関税、輸入代行消費税、輸入代行地方消費税等の総計は4
5 2万1588円であり(乙11)、これは1万3852足分であるか
ら(乙6)、1足当たり約30円、1セット商品当たり約90円である。返品の際も同額として180円となるが、他の仕入先からの500足分をおおよそで差し引くと、172円となる。
③ 登録料 170円
1か月当たりの登録料5390円(乙9)を月売上数32セットで割った額である168円を、170円として計上したものである。
④ クリックポスト代 185円(乙10)
商品発送のための費用であり、郵便料金として定まっている(乙10)。
⑤ 諸経費 13円
出荷に係る諸経費を、箱代4円、送り状紙代インク代4円、その他作業代5円の、合計13円として計算したものである。以上のとおり、1セット商品当たりの経費は862円であり、1セット当たりの利益は47円(=909円-862円)である。エ 小括よって、限界利益は、1175円(=47円(1セット商品(3足)当たりの利益)×75足÷3)に過ぎない。
(2) 法114条3項に基づく使用料相当額
ア 被告が被告商品を販売していた令和5年11月から令和6年3月頃は、本件各著作物に関する著作権者はAであり、原告は本件各著作物の著作権を有していなかった。そのため、本訴訟において算定されるべきは、令和7年3月17日以前において、Aが被告に対して請求できる金額と同額であることになる。原告と原告顧客との契約内容は、Aが被告に対して請求できる金額と直接の関係がなく、法114条3項の算定根拠とならない。イ Aが原告と締結し、原告から利用許諾の対価として受け取るべき金銭は、
5 甲21号証の4条に定めがあるが、ミニマムロイヤリティあるいはミニマ
ムギャランティを受けることとはされていない。仮に甲21の4条1項を今回の事例にあてはめれば、販売された被告商品の仕入額である2万5510円(1足当たり0.71ドル×3足(1セット)×81セット(販売されたセット数)=172.53ドル、これを令和6年3月8日(被告商品が最後に販売された日)の中間レートである1ドル=147.86円で計算すると2万5510円)の5%である1275円が、Aが受けるべきであった利用許諾料と考えるべきである。原告は、Aが1SKUあたり50万円のミニマムロイヤリティのライセンス料を得てきたと主張するが、これを立証する証拠はない。
第4 当裁判所の判断
1 認定事実前記前提事実に加え、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
(1) 被告は、令和5年10月頃、被告商品を含む衣料品等を、中国の企業が運営するECサイトにおいて購入し、同月下旬頃に日本国内に輸入し、同年11月頃から、本件被告サイトにおいて、出品・販売した(乙6、11、14、15、弁論の全趣旨)。令和6年2月26日の時点において、被告は、本件被告サイトにおいて、被告商品を含むセット商品を、1セット当たり1100円(税込)で販売していた(甲9ないし11)。
(2) 原告は、令和6年3月5日付けで、被告に対し、被告による被告商品を含む衣料品等の販売が原告に対する不正競争行為や商標権侵害行為に該当する旨の警告書を送付した(乙2)。これを受けて、被告は、同月8日以降、被告商品を含む衣料品等の販売を
5 中止し(乙3)、同年4月頃、在庫商品を中国の企業に返品した(乙5)。
2 争点1(著作権侵害の成否等)について(1) 本件各著作物と各被告商品を対比すると、本件各著作物がテキスタイルデザインである一方で被告商品は足袋型ソックスである点も含め、具体的な表現方法に差異はあるものの、被告商品1は本件著作物1と、被告商品2-1及び同2-2は本件著作物2と、被告商品3は本件著作物3と、被告商品4-1及び同4-2は本件著作物4と、それぞれ表現の本質的な特徴において一致していると認めることができる。被告商品は、前記認定事実(1)のとおり、いずれも令和5年10月頃に中国企業のECサイトで販売されていたものであるところ、本件各著作物が遅くとも令和2年の時点で原告のウェブサイト上で公開されていたことに照らせば(前提事実(2))、被告商品が、いずれも本件各著作物に依拠して企画・製造されたものであると認めることができる。よって、被告商品は、輸入の時において国内で作成したとしたならば、本件各著作物の翻案権の侵害となるべき行為によって作成された物であり、被告が被告商品を輸入した行為は、その翻案権を侵害する行為とみなされる(法113条1項1号、27条)。また、本件被告サイトにおいて被告商品を販売した行為は、翻案物の譲渡による公衆への提供として本件各著作物の譲渡権を侵害する行為であり、被告商品の写真画像を本件被告サイトに掲載した行為は、本件各著作物の公衆送信権を侵害する行為に該当する。よって、被告の上記各行為は、本件各著作物に係る著作権を侵害するものである。(2) このように被告が、被告商品の輸入、譲渡及び公衆送信の各行為によって本件各著作物の著作権を侵害したものである以上、それら行為の差止めの必要性が認められるのであって、被告がそれら行為を既に中止しているということをもって、差止めの必要性が否定されるものではない。
5 他方、被告が、本件各商品を製造することで、本件各著作物の著作権(翻案権)を侵害したと認めるに足りる証拠はなく、そのような行為をするおそれがあるともいえないのであるから、原告の請求のうち製造の差止めを求める部分については理由がない。
(3) また、被告は、被告商品の輸入、販売、本件被告サイトへの掲載行為が本件各著作物の著作権を侵害することについて、被告に故意や過失はない旨主張する。この点、被告は、上記のとおり、自ら侵害物品を製造したわけではなく、故意に著作権侵害行為に及んだことを認めるに足りる証拠がないことは確かである。しかしながら、一般に、衣料品等を輸入して販売することを業として行う者は、輸入する商品が他者の著作権を侵害するか否かについて注意を払うべきであるところ、本件では、インターネットの画像検索を行えば、被告商品と表現としての本質的な特徴が一致する本件各著作物が存在することを確認することもできた(甲37)のであるから、上記著作権侵害について、被告の過失は否定できないというべきである。よって、被告の上記主張は採用できず、被告は、原告に対し、著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
3 争点2(原告の損害の額)について(1) 法114条2項に基づく算定ア 被告が本件被告サイトにおいて被告商品を販売していたことからすれば、被告が受けた利益の額は、本件被告サイトにおける被告商品の販売数量に、1被告商品当たりの利益額(販売価格から変動費を控除した限界利益の額)を乗じて算出するのが相当である。イ 被告商品の販売数量前記認定事実(1)のとおり、被告は令和5年10月頃に被告商品を含む衣料品等を輸入し(以下「本件輸入」という。)、同年11月頃から本件
5 被告サイトにおいて出品販売したと認められる。なお、原告は、インボイス(乙14)における目的港の記載(「TOKYO」)と輸入許可通知書(乙15)における船卸港の記載(「OSAKA」)の不整合等を指摘するが、被告の提出する輸入にかかる各証拠(乙6、11、14、15)は、当事者、品名や数量、貨物個数、貨物重量、輸入にかかる時系列の点で概ね整合しており、インボイス発行から輸入許可通知書の発行までの間に何らかの事情により荷卸しの港が変更になることもあり得ることからすれば、前記各証拠はいずれも同一の輸入に関するものであって、これらにより本件輸入の事実を認めることができる。そして、本件における各証拠を精査しても、被告が本件輸入より前に被告商品を輸入したり、前記出品販売より前に被告商品を販売したりしたことをうかがわせる事実は見当たらない。そこで、本件輸入にかかる被告商品の、令和5年11月頃から令和6年3月8日の販売中止までの間の本件被告サイトにおける販売数量を、更に検討する。この点につき、前述の本件輸入にかかる各証拠には、被告商品を含めた具体的な商品ごとの仕入数量は記載されておらず、また、被告が在庫商品を中国の企業に返品した際のインボイスとして提出する乙5号証における返品数量(セット商品KS-0004につき924足、同KS-0005につき904足)は、乙4号証に記載された被告の認識する仕入数量(セット商品KS-0004、同KS-0005につき、それぞれ870足)を上回っており、その不整合について被告から十分な説明もされていないことからすれば、これらの証拠から、被告商品の仕入数量と返品数量や、その差である販売数量を直ちに認定することは困難である。また、被告は、令和5年11月21日から令和6年3月8日までの本件被告サイトにおける被告商品の販売数量は合計75足であるとし、これ
5 を裏付ける証拠として、Amazonからダウンロードしたとするcsvファイル(乙7)を提出するが、同証拠を見ても、いつからいつまでの期間の売上げを示す資料なのかや、「ASIN」なる文字列で特定されている各商品と被告商品との関連性も明らかではなく、これらの点が十分に説明されているともいい難いのであって、同証拠から直ちに被告商品の販売数量を認定することも困難である。そうすると、本件においては、関係各証拠や弁論の全趣旨から認められる事情を踏まえて被告商品の販売数量を認定するほかないが、被告商品の販売期間が4か月程度と比較的短く、その間の被告のAmazonにおける売上高が合計38万6654円にとどまっていること(乙12)からすれば、被告商品の販売数量は、乙7号証から読み取れる75足と認められるわけではないにせよ、この数量を大幅に上回っていたとは考え難く、その他、前掲の各証拠の内容を含めた本件に顕れた事情や当事者間の衡平を考慮すると、本件輸入にかかる被告商品の令和5年11月頃から令和6年3月8日の販売中止までの間の本件被告サイトにおける販売数量を、150足と認めるのが相当である。ウ 販売価格前記認定事実(1)のとおり、被告は、本件被告サイトにおいて、被告商品を1セット(3足)当たり1100円(税込)で販売していたと認められる。この点につき、被告は通常時は1セット商品を909円(税込で1000円)で販売しており、プロモーションの際にのみ1セット商品を1000円で販売していた旨主張するが、関係証拠を精査しても被告の主張が十分に裏付けられているとはいい難く、前記認定を左右するものではない。エ 経費(変動費)1セット商品当たりの販売価格から控除すべき経費につき、関係各証拠
5 によれば、仕入代金が約322円(乙6)、輸入経費が約90円(乙6、11)、発送費用(クリックポスト代)が185円(乙10)であることが認められ、これらの費目を経費として控除するのが相当である。その他被告が控除すべき経費として主張する各費目は、いずれも変動費に当たらないか、支出を裏付ける十分な証拠が見当たらないことから、被告の主張を採用することはできない。以上によれば、控除すべき経費は、1セット商品当たり合計597円と認めることができる。オ 小括以上によれば、1被告商品当たりの利益額は、1セット商品当たりの販売価格1100円から経費597円を控除した503円を1セット商品当たりの商品数(3足)で除した、167円(小数点以下四捨五入)であり、これに販売数量150足を乗じた2万5050円が被告の得た利益の額と算定でき、同金額が原告の受けた損害の額と推定される。(2) 法114条3項に基づく算定原告は、テキスタイル事業においては、ミニマムロイヤリティのライセンス料を合意することとしており、その金額は1SKU当たり50万円以上であるから、被告商品の6商品で合計300万円のライセンス料を受けることができたはずであり、これが法114条3項の定める使用料相当額である旨主張する。しかしながら、著作物等の使用料として、いわゆるイニシャルやミニマムロイヤリティといった名目で、一定の固定額ないし最低額が約定されることは、一般的に想定されるものであるが、それは、比較的まとまった期間や商品数量の契約関係を前提に、そのコストに見合った売上げないし利益が得られるとの想定のもとで約されるものと解されるところ、本件のように、比較的短期間の数量的にも限定的な侵害行為における損害額の算定で、これを基
5 礎とすることは、その実態に沿った算定方法とはいえない(このことは、上記(1)で算定したような、被告商品の販売によって被告が得た利益の額と対比することで、より明瞭といえる。)。このような考察に加え、法114条3項にいう著作権の行使につき受けるべき金銭の性質や同項の損害算定上の位置づけ、同条2項にいう侵害者が侵害行為により受けた利益の額との関係などを踏まえて検討すると、本件において、法114条3項に基づいて算定される相当額は、前記(1)で検討した被告の受けた利益の額を上回るものとは認められない。(3) 弁護士費用前述のとおり認められる損害の額に加え、前記認定事実(2)のとおり、原告の当時の代理人弁護士が令和6年3月に被告に対して被告商品を含む衣料品等の販売が原告の知的財産権を侵害する旨の警告書を送付しており、このことが、被告による侵害行為の早期中止につながり、結果として著作権侵害による損害が比較的少額にとどまったことに寄与したといえること、他方で、当事者間の事前交渉や本件訴訟の経過、特に、被告が、上記警告を受けて直ちに被告商品の扱いを中止するとともに、被告商品の利益額ではなく、売上額相当の解決金による和解も申し出ていたもので(乙5)、本訴訟においても、同様の姿勢を示し、早期紛争解決の観点からこれを上回る解決金の支払に応じるともしていたこと(第4回弁論準備手続期日において、双方当事者対席の場で聴取し、期日調書に記載した内容)、その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、本件と相当因果関係のある弁護士費用の額は、10万円と認めるのが相当である。
(4) 小括以上によれば、原告の損害額は、合計12万5050円である。
第5 結論
以上によれば、原告の請求は、被告商品の譲渡等の差止め、被告商品の廃棄
5 並びに損害賠償として12万5050円及び遅延損害金を求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する(なお、主文第3項については、仮執行宣言は相当でないから、これを付さないこととする。)。大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官
松 川 充 康
裁判官
小 野 健
裁判官
横 井 真 由 美
別紙
原告著作目録
1.本件著作物1「鹿」 2.本件著作物2「ねこ」3.本件著作物3「菊日和」 4.本件著作物4「根菜」
別紙
被告商品目録⑴ 被告商品1(甲9)5 ⑵ 被告商品2-1(甲9) ⑶ 被告商品2-2(甲9)⑷ 被告商品3(甲10)⑸ 被告商品4-1(甲11) ⑹ 被告商品4-2(甲11)
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