ホーム > IP Business Journal > データとAIを活用した意思決定プロセスの構築
米国特許の出願現場では今、権利化のプロセスにデータを活用する方法が“ニューノーマル(新状態)”になりつつあるといいます。“不合理”な審査官が担当になった場合に備えて出願企業がとるべき戦略とは何か、知財業務を最適化するうえで必要なアプローチとはどのようなものか――。
米国弁理士であり、「PatentAdvisor」の開発者でもあるクリストファー・L・ホルト氏と、弁理士・エスキューブ代表の田中康子氏による対談インタビューをお送りします。
提供:LexisNexis
ホルトさん私はいくつもの日米のお客様を訪問したことがありますが、分かったのは日米間には知財業務にも文化的な違いがあることです。米国の企業や代理人は審査官に対して時に非常に積極的に主張しますが、日本企業や代理人は、直接USPTO(米国特許商標庁)の審査官と対面しないこともあってか、当然の要求すら躊躇することが多いように感じます。
田中さん日本人の国民性も影響していると思いますが、日本企業の出願担当者は、現地代理人と、もっとコミュニケーションすべきだと感じています。日本企業がレクシスネクシスの「PatentAdvisor」※ を利用してデータ分析を行えば、米国代理人や審査官ともっと対話できるようになると思いますか?
ホルトさんもちろんそう思います。たとえば、あなたが審査官に対して拒絶応答をしている際に、その審査官がどの出願人に対しても不合理なタイプであると判明したとします。このタイプの審査官に対して出願人はもっとデータを活用して特許を許可するよう主張してもよいのです。
田中さんデータの活用という点では無料の審査官分析サービスがありますが、PatentAdvisorとの違いは何ですか?
ホルトさんUSPTOはすべての審査履歴を記録してウェブサイトで公開していますが、実は定期的に更新されていません。そのデータが時には数年も古いこともあります。無料の審査官分析サービスは、その公開データをもとに統計処理を行った結果を提供しています。これに対して、PatentAdvisorは、第一のポイントとして、多くの資金、時間とリソースを投資して最新のデータを入手しています。最も重要なのは、もしあなたが、ある審査官の情報を知りたいときに、2年も前の古い情報では困るということです。
第二のポイントとして、審査官の名前のデータはラフだということです。一例として、ある審査官が結婚して名字が変わったとします。正確な分析結果を得るためには、結婚前と後との名前を同一人物として マージする必要があります。当然ながら、これは容易なことではありませんが、データをクリーンな状態にするため、PatentAdvisorはAIのテクノロジーを使って同一人物を特定してデータのマージを行っています。一方、無料サービスはUSPTOのデータをもとにした統計処理による定型的な分析結果を提供する範囲に留まっていますし、更新頻度も不定期です。無料サービスのデータは確かに興味深いですが、上記のような理由から、出願人のミスリードが大いに心配されます。
田中さん無料サービスは単なる統計データで何の知見も得られないのですね。正しい判断を下すのにデータが最新であることは重要な要素ですし、両者には信用面で大きな違いがあることがよく分かりました。
ところで、ユーザーはPatentAdvisorを使って、自分の案件を担当する審査官の名前を検索した後、次は何をすればよいのですか。
※レクシスネクシスIPの特許分析ソフトウェア。USPTO全体の事情や背景に基づいたデータを活用し、特許審査の結果を改善することなどを目指したソリューション