ホーム > 特別企画 シリーズ「特許庁に突撃!!」 > 「知財普及の取り組み」について、聞いてみた(前編)
特許庁の最近の取り組みについてインタビューする「特許庁に突撃!」シリーズ。第3回目は、知財普及と知財活用支援の取り組みについて聞いてきました。
国内企業の大多数を占める中小企業に寄り添い、その本音とニーズを引き出して支援にあたる、「普及支援課」のみなさんの活動を取り上げます。
インタビュアー:知財ポータルサイト IP Force 成田浩司
成田今日は、中小企業向けに知財を普及させる活動をしている普及支援課の4名、赤穂さん、高田さん、鈴木さん、溝口さんにインタビューさせていただきます。よろしくお願いします。
赤穂州一郎さん高田万柚香さん鈴木貴久さん溝口努さんよろしくお願いします。
成田まずはじめに、知財普及支援の取り組みの概要について、聞かせてください。
赤穂さんはい。日本各地の中小企業には、ニッチではあってもしっかりとした技術を持った企業が多く、研究開発にも取り組んでいたりして知財を活用できる可能性がたくさんあるのですが、なかなか知財にリソースを割けないというのが実情です。そこで、地方の行政機関と連携しながら、こうした技術のある中小企業に知財を活用して利益をもたらす仕組みを作り、支援していくのが私たちの仕事です。
インタビューに協力してくれた総務部 普及支援課 企画調査官の赤穂州一郎さん
成田知財にリソースを割けない中小企業を支援することが主な仕事ということですが、具体的にどのような体制で支援に取り組んでいるのでしょうか。
赤穂さん普及支援課は、中小企業支援に関する部署と、特許公報などに関する部署に、大きく分かれております。そして、中小企業支援に関する部署には、支援企画班、地域調整班、産業財産権専門官という3つのセクションがあり、中小企業の知財活動を支援しています。これら3つのセクションを統括するのが、私の仕事になります。
成田なるほど。それでは、簡単に3つのセクションそれぞれの取り組みについて教えてください。
赤穂さんまず、支援企画班は各セクション全体にかかわる企画をするのですが、重要なものとして補助金に関する業務があります。中小企業が海外進出しようとする際の知財活動には、国内での知財活動よりも多額のお金がかかります。知財をめぐるそうした活動の金銭的な問題をどのようにケアしていくのか。それについて考えるのが支援企画班の主な仕事です。このほか、後ほど触れますが、福島のプロジェクトも支援企画班による取り組みです。
次に、地域調整班ですが、地域・地方での知財普及の仕組みづくりをしたり、知財の周知・普及のための取り組みを行っています。主なものとしては、各地で「巡回特許庁」といったイベントを開催して、知財に関する普及啓発を行ったり、各地方の経済産業局(経産局)にある知的財産室(知財室)と連携して知財普及のための様々な仕掛けをつくったり、そのための各関係機関との調整などを図ったりしています。
産業財産権専門官は、実際に個別の企業にアクセスして知財の困り事をヒアリングし、それに対して「こんなことができますよ」と提案したり、個別の企業や機関向けにセミナーを実施したりします。セミナーは、47都道府県のどこへでも出張していって行います。初心者向けから実務者向けまで各段階に応じた説明会を行うなど、知財普及のための特許庁の営業マン、と言えます。
成田それらの3セクション体制になったのはいつ頃からですか。
赤穂さん普及支援課ができたのが2007年なので、その時からこの体制と聞いています。もっとさかのぼれば、同課ができる以前からこうした業務を総務課の中で担当していた班はあったのですが、2007年にそれらが普及支援課として今の体制になったようです。
成田まずは、具体的な支援策として、支援企画班が行っている施策について教えてください。補助金に関する業務などを担当しているということですが。
高田さんはい。主に外国出願支援をはじめ、中小企業の海外展開を支援する施策などを手がけています。
成田外国出願の支援については、10年以上前から実施されていたように記憶しています。
高田さんはい、外国出願補助金自体は以前よりありましたが、2014年度から、各地域における実施機関としての都道府県中小企業支援センターなどに加え、全国における実施機関として日本貿易振興機構(ジェトロ)に補助事業者として加わっていただいたことにより、全国での支援が可能となりました。最近は、そうした実施機関から要望を伺いながら改善していく形で展開しています。
成田外国出願補助金の支援額はどれくらいなのでしょう。
高田さん一企業あたりの支援上限額が300万円で、一案件あたりでは、特許が150万円、実用新案、意匠、商標がそれぞれ60万円です。このほか、冒認出願の対策を目的とした商標出願(冒認対策商標)が30万円です。全国の中小企業の皆さんに、権利種別に応じてご利用いただいています。
鈴木さん実際に補助金をご活用いただいた企業に、ヒアリングに伺うこともあります。
高田さんそうなんです。毎年10社程度、補助金をご活用いただいた企業に対し、知財戦略や知財に関する取り組み、補助金を使ってどんな効果があったかといった話を伺っています。他の企業に参考にしていただけるよう、それらの内容を元に事例集などを作成しています。
成田補助金による支援件数は年間でどれくらいあるのでしょう。
高田さん最近は、全国で800件以上支援しています。今年度はこれから集計するのですが、支援件数は増え続けています。
成田やはり、支援対象は特許が多いのでしょうか。
高田さん最近は商標もかなり増えています。増えている理由ですが、日本のブランドは海外でも通用するものが多く、冒認商標などのように第三者から悪意で商標をとられてしまう事例があるため、企業の間で意識が高まっているからだと考えています。