シリーズ「特許庁に突撃!」~特別編 「商標拳」はこうして生まれた 前編 ~

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最近……、活発ですよね?
 特許庁の広報活動・知財普及活動。
中の人に聞いてきました!

特別編 「商標拳」は、こうして生まれた
~ 前編 ~

特許庁 デザイン経営プロジェクト
「商標拳」チーム インタビュー

「商標拳~ビジネスを守る奥義~」動画の1シーン

「商標拳~ビジネスを守る奥義~」動画の1シーン

カンフーアクションとコミカルなストーリー展開が話題となった、特許庁のPR動画「商標拳」。商標制度の普及をめざしてつくられたこの動画は、ことし1月の公開から各メディアとSNS上を騒がせ、「商標権」のイメージを人々の間に浸透させることに成功しました。

公開から半年以上をへて、一連のコンテンツを作った担当者たちに当時の舞台裏について振り返ってもらい、あわせて、その成果と効果について話してもらいました。

※新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、インタビューはオンラインで行いました。

インタビュアー:知財ポータルサイト IP Force 成田浩司

“知財を知らないことのリスク”を伝える

成田本日のインタビューはオンラインでさせていただきます。みなさん、よろしくお願いします。

鹿戸さん藤村さん野口さん須崎さん石井さん佐々木さんよろしくお願いします。

成田早速ですが、「商標拳」をつくった狙いについて聞かせてください。

藤村さん「商標拳」は、製造業などと比べて知財への意識が高くない中小のサービス事業者に向けて、知財の重要性を知ってもらうために作った動画です。

 

届けたかったメッセージは2つで、「商標権はビジネスの基本ですよ」と「商標権を知らずにビジネスをすることは経営上の大きなリスクですよ」です。

成田確かに、技術開発をして特許などを出願することの多い製造業と比べると、サービス業の人たちにとってはそこまで知財は身近ではなさそうですよね。

藤村さん実際、サービス事業者にヒアリングをしてみると、やはり知財への意識は高くありません。知財をめぐってトラブルを抱えたことのある事業者は意識が高い傾向はあるのですが。

鹿戸さん私たちとしては、商標権も含めて知財の重要性についてまずは知ってほしい、その上で権利を取得するかしないかを決めてほしい、という考えを基本として持っています。何でも出願してほしいというわけではなく、知財の重要性と必要性を知った上で、出願するのかしないのかを判断してもらいたいのです。知らなかったがゆえに……、という事例も多いので。

藤村さんそうなんです。知財について知ってもらい、権利化の是非を判断した上で事業を行う、と。「そこがビジネスのスタート地点ですよ」ということを強く訴えたかったのです。

成田ずっと使ってきた店名を商標登録していなかったために後発の事業者に登録されて使えなくなった、などという話もよく聞きますよね。

藤村さん多いですね。特に審判事件をみていても、サービス事業者の場合は関係がこじれてしまうケースが少なくないなという実感があります。

そうなってしまう前に、やはりサービス事業者のみなさんには商標について知っておいてほしいのです。そのために「知らないリスク」をしっかり伝える必要があると考えました。

藤村浩二さん特許庁 商標審査官。「商標拳」プロジェクトの中心メンバーとしてチームをけん引。

藤村浩二さん=特許庁 商標審査官。「商標拳」プロジェクトの中心メンバーとしてチームをけん引。(写真提供:特許庁)

成田知財について知らないことで発生するリスクを伝えるためにつくった動画ということですね。

藤村さんそうです。ターゲットとした人たちの実際の声からも、そうしたニーズがあることがわかりました。中小のサービス事業者へのヒアリングを重ねてみると、知財の中でも商標は身近に感じられるとの声や、権利を取らない場合のリスクを指摘されると非常に響くものがあるといった声が多く聞かれたのです。

成田特許庁が注力する「デザイン経営プロジェクト」ではヒアリングが重視されているそうですが、やはりデザイン経営プロジェクトの一環でヒアリングを行ったのですか?

藤村さんはい。デザイン経営プロジェクトで私たちのチームは中小のサービス事業者のブランディングをテーマにしていました。そこで重ねたヒアリングによって把握した課題やニーズに対して、何を行ったら効果的なのかをゼロベースで考えていく中で、動画をつくろうという流れになりました。もっとも、動画をつくること自体が目的ではなくて、私たちのチームが考えたのは、ターゲット層の人たちに知財を「自分事化」してもらうための仕組みをいかにしてつくるか、ということでした。

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