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7月19日
6月11日(木)配信
前回は、高校「情報Ⅰ」向けの著作権アニメーション教材についてご紹介しました。今回は、同じく著作権をテーマにしたコンテンツですが、高校と大学が連携する「高大連携プロジェクト」として制作した啓発コンテンツのお話になります。
2025年度、私たち大分県立芸術文化短期大学野田研究室は、大分県立宇佐高等学校の生徒有志10名とともに、著作権啓発コンテンツの創作プロジェクトに取り組みました。大学生と高校生が3つの混成チームを組み、三者三様のコンテンツを企画し、最終的に3本のアニメーションを創作するというものです。このプロジェクトは一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)の共通目的基金の助成を受けて実施しました。
大学生と高校生が3つの混成チームを組み、3本のアニメーションを企画・創作した現代の若年層はデジタル時代のなかで日常的に著作物に触れ、SNSを中心に創作や発信を行っています。一方で、著作権への理解が十分でないまま、意図せずリスクにさらされてしまう場面も少なくありません。
高校「情報Ⅰ」でも著作権を扱いますが、概要を知るだけで終わってしまうと、行動変容に結びつきにくいです。そこで、当研究室で行ってきた「学んだことを、誰かに伝える」という経験を高校生にもぜひ経験してもらいたいと考えました。
学んだことを伝えるために企画し、創作し、社会に出すという一連の流れを、大学生がリードして高校生を巻き込むことはできないか、また、そうすることで面白い相乗効果が生まれるのではないかと期待しました。
大学生がリードし、高校生を巻き込む。相乗効果も期待された高校生に参加してもらった理由は、以下のように大きく4つあります。
若年層に向けて、若年層が作り、若年層に届けるという設計そのものが、啓発としての強みになるとも考えました。
参加したのは、野田研究室の学生8名と宇佐高校の生徒10名です。3つの混成チームを編成し、各チームが約5分のショートアニメを企画・制作し、YouTubeで公開する方針で進めました。
チームが行うのはプロの制作会社に委託して映像として完成させる手前のプリプロダクションです。企画、ターゲット設定、コンセプト、シナリオ、キャラクターデザイン、絵コンテ、ラフを仕上げていきます。アイデアだけではなく、制作会社に渡せる部分まで落とし込む必要があるので決して簡単ではありません。
ただ、毎度のことですが、作品を作るのではなく、作品が完成する工程を設計するということは、高校生にとっても大学生にとっても、授業では得がたい経験だと感じます。
第1回WSは本学(大分県立芸術文化短期大学)で実施しました。プロジェクトに関する導入講義の後、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の湯口太郎事業担当部長を講師にお迎えし、デジタルコンテンツ業界の現状や課題、著作権侵害の実態について、実務的視点で学びました。啓発コンテンツの質を上げるには、まずは学生や生徒自身がコンテンツビジネスの仕組みや現状について知らなければならないと考えたからです。実態を知った上で、初めて伝えるべき言葉が見えてきます。
学生・生徒たちにコンテンツビジネスの仕組みや現状について知ってもらうことから始めた第2回WSでは、宿題となっていたコンセプト案・シナリオ案を持ち寄り、各チームのターゲットとコンセプトを明確化しました。また、シナリオ制作では「どうすれば共感してもらえるか」「意識や行動を変えるにはどの表現が適切か」といった議論が行われ、キャラクターについても、ビジュアルだけでなく性格や背景を深掘りしていきました。
啓発コンテンツは教材とは違ってメッセージを届けることが重要ですので、創作の自由度も高く、最初から誰に何を伝えたいのかを言語化していく必要があります。
シナリオとキャラクターデザインをつくるため、「誰に何を伝えたいのか」を明確にしていった第3回WSは宇佐高校にお邪魔して実施しました。誰に何を伝えたいのか、メッセージが形になっているか、わかりやすいか、オリジナリティはどこにあるのか、教員の問いかけに応えながらブラッシュアップしていきました。シナリオのブラッシュアップに加え、キャラクターデザインのプレゼン資料を作成し、絵コンテやラフイラスト制作まで進めました。ここまで来るとコンテンツ制作は一気に現実感が出てきます。表現を確認しながら、最終的に制作会社にお渡しできる形に落とし込んでいきました。
シナリオをブラッシュアップし、絵コンテを制作。制作会社に引き渡せる形に落とし込んでいった第4回はオンラインで実施しました。各チームがCODAの湯口部長にプレゼンを行い、講評をいただいた上で、動画制作会社にもプレゼンを実施し、キャラクターデザインとシナリオを正式にお渡ししました。制作会社へのバトンタッチは、この手のプロジェクトの中で特に印象的な場面です。高校生と大学生が作ったプリプロダクションが、専門家の視点で磨かれ、学生たちの自由な発想を、社会に届く形へ変換するポイントになります。また、制作したシナリオについては並行して複数の専門家への監修依頼も行いました。
チーム「KRAG」のプレゼン資料の一部その後は動画制作会社とのやり取りを各チームで進めました。全員が集まるワークショップではないので目立たない工程ですが、途中成果物の確認と修正依頼もかなり大変です。
例えば、絵コンテ、音声サンプル、ラフイラスト、イラスト、Vコンテ、清書イラスト、初稿……と、何度も確認し、その都度修正依頼を行い、11月末頃にやっと完成しました。
完成した動画は以下の3本です。
チーム「宇佐ぴょん's」/『ちょさく犬と学ぼう!ネットにひそむ"ワナ"』
チーム「KRAG」/『青春の改悛者(スイングマン)』
チーム「警部補2年目」/『やめて守ろう、創作の世界』
どのコンテンツもこれまでのプロジェクトには無かった高大連携ならではの視点によってユニークな啓発動画となりました。まさに混成チームにした狙いが形になったのではないかと感じています。
さらに、12月14日のイベント「ポップカルチャー×情報教育2025」では、宇佐高校との高大連携の成果として3作品を上映し、参加した高校生が自分たちの言葉で感想などを述べました。当日1000人以上が来場した中で、作品が実際に人に届く経験まで繋げられたことは、大きな意味があったと思います。
12月14日のイベント「ポップカルチャー×情報教育2025」で3作品を上映。プロジェクトに携わった高校生も登壇した高校生も短大生も非常に多忙なため、なかなか予定を合わせることができず、ワークショップの回数も限定的だったことが今後の課題だと感じています。
しかし、初めての試みでしたが、高大が連携して業界の現状を学び、チームでプリプロダクションを行い、制作工程を経て、デジタルコンテンツを公開し、イベントで上映することができました。この一連の流れを実装できたこと自体が、今回の最大の成果だと感じています。成果物のユニークな3作品をぜひご覧いただければと思います。
■筆者プロフィール
著者:野田 佳邦
大分県立芸術文化短期大学 情報コミュニケーション学科 准教授
知的財産支援室 次長/情報メディア教育センター 次長
一般社団法人知財教育デザイン協議会 代表理事
弁理士(特定侵害訴訟代理業務付記)/ビジネス著作権検定上級
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大分県生まれ。大阪大学大学院情報科学研究科修士課程修了(修士(情報科学))。その後、特許庁でIT分野の特許審査業務などの知財行政に従事。在職中、弁理士試験やビジネス著作権検定上級に合格するとともに、経営学修士課程を修了(修士(経営学))。故郷である大分県に貢献したいという強い思いがあり、2015年より大分県立芸術文化短期大学に着任。大分県知財戦略推進会議副議長、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)「10代のデジタルエチケット」教育コンテンツ検討委員、一般財団法人工業所有権協力センター(IPCC)特許検索競技大会実行委員、大分市DX推進アドバイザー、公益財団法⼈ハイパーネットワーク社会研究所共同研究員などを務める。近年は、学生参加型のアニメ教材制作プロジェクトなど、ポップカルチャーやデジタルコンテンツを取り入れた教育活動を展開している。
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