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特許 令和7年(行ケ)第10081号
「二酸化炭素を電気化学還元する方法」
(知的財産高等裁判所 令和8年7月8日)

9月2日(水)配信

 

【事件概要】
 この事件は、拒絶査定不服審判の請求を不成立とした審決の取消しを求める事案である。
 知的財産高等裁判所は審決を取消した。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【主な争点】
 本件審判手続に、特許法159条2項、50条に違反する違法(手続違背)があるか否か。

 

【結論】
 本件拒絶査定…は、本件拒絶理由通知書に記載された理由、すなわち、炭酸ナトリウム溶液又はアルカノールアミン溶液が本願発明の「吸収剤」に相当するとの認定に基づき、本願を拒絶すべき旨の判断をした。
 本件審決は、「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」が本願補正発明及び本願発明の「吸収剤」に相当すると認定し、これに基づき本願を拒絶すべき旨の判断をした。
 本件拒絶査定と本件審決は、本願発明の「吸収剤」として異なる物質を認定したものであるところ、炭酸ナトリウム溶液又はアルカノールアミン溶液と「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」とは、引用文献1において全く異なるプロセス及び目的で使用されており、同一のプロセスにおいて用いられる代替品や同等物といった関係にあるものではない。そうすると、「ギ酸とギ酸ナトリウムを含む混合溶液」を吸収剤と認定して本願を拒絶することは原告に対する不意打ちとなるから、原告にその旨を通知して意見書の提出及び補正の機会を与えるのが相当であって、「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」(特許法159条2項)に該当するというべきである。そして、補正の機会を与えないという上記手続違背は、その性質上、本件審決の結論に影響を及ぼすものと解される。
 したがって、本件審判手続には、特許法159条2項、50条に違反する違法があり、この点は本件審決を取り消すべき事由に当たると認められる。

 

【コメント】
 被告(特許庁)は、「本件拒絶査定も本件審決も、引用文献1の実施例2に基づく同じ発明を引用発明として新規性が欠如すると判断したものである」旨を主張したが、裁判所は、「実施例は同じであっても、「吸収剤」に相当するものとして、炭酸ナトリウム溶液又はアルカノールアミン溶液であるとした発明と、「ギ酸及びギ酸ナトリウムを含む混合溶液」であるとした発明とでは発明の構成が異なるから、同じ発明を引用発明として判断したということはできない。」として被告の主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:弁理士法人創英 弁理士 吉住 和之)