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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-121540(P2015-121540A)
(43)【公開日】2015年7月2日
(54)【発明の名称】規制デバイス
(51)【国際特許分類】
   G04C 5/00 20060101AFI20150605BHJP
【FI】
   G04C5/00
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-258525(P2014-258525)
(22)【出願日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】13199425.3
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ジャック・ボルン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ・ディ ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ファーヴル
(72)【発明者】
【氏名】バティスト・イノウ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・レショー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ラゴー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】衝撃に対する被害を弱めるか又はなくすように意図された手段(連係逸脱を防ぐ手段)を有するような車と振動構造の相対的な角速度を規制する磁気的デバイスを提供する。
【解決手段】車22と、振動するデバイスと一体化された磁気双極子との相対的な角速度を規制する磁気的デバイスであって、車22又は磁気双極子は、駆動トルクによって駆動され、車22は、中心角に対応してジグザグ状に周方向に延在する周期的な極の強磁性進路ベースを有し、磁気双極子は、強磁性進路ベースとの磁気的連係と、及び車22と磁気双極子との相対的運動の時の振動素子の固有周波数における磁気双極子の振動とを可能とするように構成し、これによって、相対的な角速度を規制することができ、車22は、さらに、磁気双極子が強磁性進路ベースから離れると、少なくとも1つの磁気双極子の運動エネルギーを散逸させるエネルギー散逸手段を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車と、振動するデバイスと一体化された少なくとも1つの磁気双極子との相対的な角速度を規制する磁気的デバイスであって、
前記車又は磁気双極子は、駆動トルクによって駆動され、
前記車は、中心角に対応してジグザグ状に周方向に延在する周期的な極の強磁性進路ベースを有し、
前記磁気双極子は、前記強磁性進路ベースとの磁気的連係と、及び前記車と前記磁気双極子との相対的運動の時の前記振動素子の固有周波数における前記磁気双極子の振動とを可能とするように構成し、
これによって、前記相対的な角速度を規制することができ、
前記車は、さらに、前記磁気双極子が前記強磁性進路ベースから離れると、前記磁気双極子の運動エネルギーを散逸させるエネルギー散逸手段を有する
ことを特徴とする規制デバイス。
【請求項2】
前記エネルギー散逸手段は、強磁性進路ベースの側面の少なくとも1つに接するように前記強磁性進路ベースに隣接するように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の規制デバイス。
【請求項3】
前記エネルギー散逸手段は、非強磁性で導電性の扇形区画を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の規制デバイス。
【請求項4】
前記扇形区画は、実質的に前記強磁性進路ベースの平面において延在する
ことを特徴とする請求項3に記載の規制デバイス。
【請求項5】
前記強磁性進路ベースの両側面に、非強磁性で導電性の扇形区画が設けられている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の規制デバイス。
【請求項6】
前記非強磁性で導電性の扇形区画は、前記強磁性進路ベースから電気的に絶縁されている
ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項7】
前記電気的絶縁は、空気間隙又はガルヴァニック手段によって形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の規制デバイス。
【請求項8】
前記強磁性進路ベースは、前記強磁性進路ベースの平面に実質的に垂直に延在する貫通溝を有する
ことを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項9】
前記強磁性進路ベースは、強磁性体を同心に積層することによって形成されている
ことを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項10】
前記非強磁性で導電性の扇形区画は、金、銀、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、チタン及びニッケルからなる群から選ばれる材料で形成されている
ことを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項11】
前記強磁性進路ベースは、軟鉄、ミューメタル(Mu-metal)及びスーパーマロイからなる群から選ばれた材料で作られている
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの磁気双極子は、永久磁石である
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの磁気双極子の磁化方向は、前記強磁性進路ベースの平面に垂直である
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの磁気双極子は、開いた構造を有し、この開いた構造は、閉磁気回路を形成し、かつ前記磁気双極子によって生成される磁束の方向に垂直に前記車が動くことができる空気間隙を形成し、
前記開いた構造の自由端が、前記振動素子が設置されている時に前記強磁性進路ベースに実質的に対向するように延在する
ことを特徴とする請求項13に記載の規制デバイス。
【請求項15】
前記車は、前記駆動トルクによって回転駆動され、
前記振動素子は、固定されたフレームと一体化されている
ことを特徴とする請求項14に記載の規制デバイス。
【請求項16】
前記磁気双極子は、少なくとも1つのアームと一体化されており、
前記磁気双極子の極のうちの1つは、前記振動素子が設置されている時に前記強磁性進路ベースに実質的に対向するように延在している
ことを特徴とする請求項13に記載の規制デバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのアームは、前記駆動トルクによって駆動されるバランスのとれたローターと一体化されており、
前記車は、固定されたフレームと一体化されている
ことを特徴とする請求項16に記載の規制デバイス。
【請求項18】
前記強磁性進路ベースは、連続的である
ことを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項19】
前記強磁性進路ベースは、前記車の回転軸の垂直方向に延在する
ことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項20】
前記車は、絶縁基板を有し、その少なくとも1つの面において、前記強磁性進路ベース及び前記非強磁性で導電性の扇形区画が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の規制デバイス。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の規制デバイスを有する
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【請求項22】
請求項21に記載の計時器用ムーブメントを有する
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車の相対的な角速度と、振動素子と一体化された少なくとも1つの磁気双極子とを規制する磁気的デバイスの技術分野に関し、具体的には、腕時計産業において、特に、腕時計において使用されるこの種の規制デバイスに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このような規制デバイスを装備した計時器用ムーブメント及び計時器に関し、特に(これに限定されない)、この種の計時器用ムーブメントを備える腕時計に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の磁気的規制デバイスが従来技術において多数提案されている。米国特許US2762222は、このような規制デバイスを開示しており、これを例として引用する。
【0004】
図1及び2は、典型的な従来技術による規制デバイスについての概略図を示す。これにおいて、概して「C」字状の磁極をもつ共振器1は、固定された永久磁石2を備えている。これによって、この「C」字形の2つの自由端が2つの磁極8及び10を形成し、これによって、空気間隙Eの限界を定めている。磁石2が弾性構造4を介して「C」字の基礎部に固定され、この弾性構造4は、ねじ6によってフレームBに固定されている。高い透磁率の材料で形成されるエスケープ車12は、その歯12aが空気間隙E内を通るように構成されている。車12の歯12aは、それぞれシヌソイド状の強磁性進路14を形成するようにへこめられている。車12は、駆動トルクによって回転駆動させられる。この駆動トルクは、矢印Cで示しており、バレル(図示せず)から得られる。エスケープ車12が回転すると、共振器1の磁極8及び10は、エスケープ車12によって定められるシヌソイド状の強磁性進路14を経る傾向がある。その際に、共振器1は、定常状態におけるその固有周波数に達するまで、エスケープ車12の半径方向Rで振動し始める。理想的な共振器では、この固有周波数は、駆動トルクに実質的に依存しない。共振器は、バレルによって駆動されるエスケープ車12からのエネルギーの伝達によって維持される。このようにして、エスケープ車12の速度は、発振器1の固有周波数と同期する。
【0005】
現在まで、この種の磁気エスケープは、それらの衝撃に対する被害の大きさのために、腕時計に装備されていない。実際に、衝撃を受けると、振動構造又は振動磁石は、強磁性進路から離れて、振動構造と進路の間の磁気的連係(カップリング)を壊してしまう。その場合に、エスケープ車は制御されていない形態で駆動トルクによって駆動させられる。衝撃の性質に依存して、2つの状況が発生しうる。すなわち、衝撃を受けると、エスケープ車が一又は複数のステップ飛んで、振動構造と再び同期して、これによって、状態が変わることになって、腕時計のクロノメーター性能を害することになるような状況か、又は衝撃の強度及び/又は持続時間が大きく、車と振動構造の間の磁気的連係が永久に失われ(この現象は、一般的に用語「連係逸脱(アンカップリング)」と呼ばれる)、その後、振動構造は振動を止めて、エスケープ車が制御されていない方法で回転駆動し、メインばねバレルが完全に下がってしまうような状況のいずれかである。
【0006】
この問題を克服するために、以下を伴う第1の手法が提案されている。すなわち、エスケープ車と振動構造の間の磁気的連係を強くすることである。これは、例えば、磁極と車の間の距離を最小にすることによって行う。しかし、この手法は、車の自己始動の可能性を制限したり、又はエスケープ車に付着する極によって引き起こされるロックの問題を発生させたりするので、完全に満足できるものではない。
【0007】
この問題を克服しようとする以下の第2の手法がある。すなわち、強磁性進路の両側に配置された複数の機械的な止めメンバーを設ける手法であって、止めメンバーが連係進路から離れるとすぐに振動磁石が強磁性進路に当接するものである。このデバイスによってエスケープ車の連係逸脱を防ぐことができるが、システムの大きさを増加させて、止めメンバーに対する衝撃ごとに振動構造において摂動を引き起こし、これによって、従来のスイス式レバーエスケープにおけるノッキング問題と同様にクロノメーター性能を悪化させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の主な目的は、衝撃に対する被害を弱めるか又はなくすように意図された手段(以下、「連係逸脱を防ぐ手段」と呼ぶ)を有するような、前記の種類の車と振動構造の相対的な角速度を規制する磁気的デバイスを提供することによって、従来技術の上記課題を克服することである。
【0009】
本発明は、連係逸脱を防ぐ手段が通常動作においてバレルから得たエネルギーを使用しないような、この種の規制デバイスを提供することも目的とする。
【0010】
本発明は、連係逸脱を防ぐ手段がシステムの自己始動に悪影響を及ぼさないような、この種の規制デバイスを提供することも目的とする。
【0011】
本発明は、連係逸脱を防ぐ手段が摩擦を引き起こさず、よって、損耗、塵埃、ノイズを何ら発生しないような、この種の規制デバイスを提供することも目的とする。
【0012】
本発明は、連係逸脱を防ぐ手段が本規制デバイスの大きさを増加させないような、この種の規制デバイスを提供することも目的とする。
【0013】
本発明は、連係逸脱を防ぐ手段が、信頼性があり経済的で実装することが容易であるような、この種の規制デバイスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このために、本発明は、車と、振動するデバイスと一体化された少なくとも1つの磁気双極子との相対的な角速度を規制する磁気的デバイスであって、車又は磁気双極子は、モータートルクによって駆動され、車は、中心角に応じてジグザグ状に周方向に延在する周期的な極の強磁性進路ベースを有し、少なくとも1つの磁気双極子は、強磁性進路ベースとの磁気的連係と、及び車と磁気双極子との相対的運動の時の振動素子の固有周波数における磁気双極子の振動とを可能とするように構成し、これによって、相対的な角速度を規制することができ、車は、さらに、磁気双極子が強磁性進路ベースから離れると、少なくとも1つの磁気双極子の運動エネルギーを散逸させるエネルギー散逸手段を有するものに関する。
【0015】
このようにして、衝撃を受けた場合などの余分な運動エネルギーの獲得の結果として、磁気双極子が強磁性進路ベースから離れようとする瞬間において、本発明に係る散逸手段は、余分のエネルギーを直ちに散逸させ、強磁性進路ベースとの連係を行っていたレベルに振動磁気双極子の運動エネルギーを戻すようにされる。このことは、一方では、連係逸脱に起因するクロノメーター上の悪い影響を制限し、他方では、連係逸脱の後に、振動磁気双極子と車の間の連係を永久的に失うリスクをなくす。
【0016】
また、本発明の範囲内において、「磁気双極子」は、永久的に磁界を作るような任意の形態の任意の手段を意味する。すなわち、磁気双極子は、任意の種類の永久磁石又は電磁石によって形成することができる。
【0017】
好ましくは、運動エネルギー散逸手段は、強磁性進路ベースの側面の少なくとも1つの上に強磁性進路ベースに隣接して設けられる。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態によると、運動エネルギー散逸手段は、強磁性進路ベースの平面に実質的に延在し、かつ、強磁性進路ベースの両側面に接するように配置された非強磁性の導電性の扇形区画を有する。これらの扇形区画は、好ましくは、金、銀、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、チタン及びニッケルからなる群から選ばれた材料で作られる。
【0019】
衝撃を受けた後に、磁気双極子が強磁性進路ベースを離れると、磁気双極子によって「上を通られる」扇形区画において渦電流を発生させる非強磁性で導電性の扇形区画に対抗して運動しており、この扇形区画は、磁気双極子の運動と正反対に力を及ぼし、振動磁気双極子を強磁性進路ベースの方へ戻して強磁性進路ベースとの磁気的連係を再度確立しようとする。
【0020】
好ましくは、非強磁性で導電性の扇形区画は、典型的には空気間隙によって又はガルヴァニック絶縁の他の手段によって、強磁性進路ベースから電気的に絶縁される。
【0021】
このガルヴァニック絶縁によって、特に、磁気双極子が強磁性進路ベースの縁部に近くなる時に、通常動作において発生する望まない漂遊渦電流を減らし又は除去することが可能になる。
【0022】
好ましいことに、強磁性進路ベースは、強磁性進路ベースの平面に実質的に垂直に延在する貫通溝を有し、及び/又は強磁性進路ベースは、強磁性材の同心の積層によって形成される。
【0023】
これらの特性の結果、通常動作では現われる強磁性進路ベースにおけるいずれの望まない電磁誘導された漂遊渦誘導電流をも防がれ、減らされ、又は除去される。
【0024】
したがって、強磁性進路ベースの平面において実質的に延在し強磁性進路ベースの両側面に接するように構成した、非強磁性で導電性の扇形区画に現われる渦電流は、磁気双極子が強磁性進路ベースから離れているような振幅で振動する場合に、磁気双極子の運動エネルギーの散逸に寄与する所望の渦電流である。これに対して、強磁性進路ベースにおいて電磁誘導される渦電流はいずれも、除去したり少なくとも最小限に抑えることが望ましいような、望まない漂遊渦電流である。
【0025】
本発明の一実施形態によると、車は、絶縁基板を有し、その少なくとも1つの面において、強磁性進路ベース及び非強磁性で導電性の扇形区画が設けられる。
【0026】
本発明に係る磁気的規制デバイスの好ましい構成によると、磁気双極子は、磁化方向が強磁性進路ベースの平面に垂直な永久磁石である。磁気双極子は、開いた構造を有し、この開いた構造は、閉磁気回路を定め、かつ、磁気双極子によって生成される磁束の方向に垂直に車が動くことができる空気間隙を定め、開いた構造の自由端が、振動素子が設置されている時に強磁性進路ベースに実質的に対向するように延在し、車は、駆動トルクによって駆動し、振動素子は、固定されたフレームと一体化されている。
【0027】
添付した図面によって示した特定の実施形態(これに限定されない)についての以下の説明を読むことによって、本発明をさらに理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、従来技術によるクリフォード式エスケープ車の角速度を規制する磁気的デバイスの単純化された概略的な斜視図である。
図2図2は、図1の平面図である。
図3a図3aは、磁気双極子が強磁性進路ベースの片側のみに配置されているような振動磁気双極子の運動エネルギーを散逸させる手段を示す本発明に係る磁気的規制デバイスの第1の構成の概略断面図である。
図3b図3bは、磁気双極子がローター上に配置され磁気的進路ベースが固定されている図3aに示した磁気的規制デバイスの実施例の斜視図である。
図3c図3cは、磁気双極子がローター上に配置され磁気的進路ベースが固定されている図3aに示した磁気的規制デバイスの実施例の平面図である。
図4図4は、本発明に係る運動エネルギー散逸手段によって、磁気双極子が瞬間的に強磁性進路ベースを離れた際に磁気双極子に加えられた力を示す。
図5図5a−5fは、それぞれ従来技術の磁気的規制デバイス及び本発明による磁気的規制デバイスにおける、ローターの回転速度に対して及び振動磁気双極子において発生する振幅に対しての、駆動トルクの急な増加の影響の動的シミュレーションを時間の関数として示すグラフである。
図6図6は、本発明に係る規制デバイスに取り付けることができる運動エネルギー散逸手段に関連づけられた渦電流減少手段を有する強磁性進路ベースの2つの変形実施形態のうちの1つの部分的な平面図である。
図7a図7aは、図6と同様な部分的な平面図である。
図7b図7bは、図7aの線VI−VIに沿った断面図である。これは、具体的には、本発明に係る磁気的規制デバイスのエネルギー散逸手段と、強磁性進路ベースとの間のガルヴァニック的絶縁手段を示している。
図8図8は、本発明に係る磁気的規制デバイスの運動エネルギー散逸手段に関連づけられた強磁性進路ベースの一実施形態の断面図である。
図9a図9aは、本発明に係る磁気的規制デバイスの第2の構成の概略断面図であり、閉磁気回路において永久磁石が配置されており、振動磁気双極子が固定フレームに接続され、磁気的進路ベースがローターと一体化されている。
図9b図9bは、ローターの各面において強磁性進路ベースに対向するように配置された2つの永久磁石を有する図9aに示した構成の変形実施形態である。
図9c図9cは、図9a及び9bに示す磁気的規制デバイスの概略実施例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図3a〜3cを参照すると、本発明に係る磁気的規制デバイス20の第1の実施例が示されている。図3aは、図3b及び3cに示した実施例において実装された原理の単純化された概略断面図を示す。以下の説明では、同一の要素には同じ参照数字を用いている。
【0030】
デバイス20によって、車22及び磁気双極子の相対的な角速度を規制することが可能になる。この磁気双極子は、この例において永久磁石24によって形成されており、典型的には、ネオジム、鉄及びホウ素の合金で作られている。磁石24は、振動素子26と一体化されている。また、この振動素子26は、ローター28と一体化されている。このローター28は、軸28aを中心に回転し、かつ、所定のギア減速比で従来の時方輪列(ゴーイングトレイン)を介してバレル(図示せず)から得た駆動トルクによって駆動する。図3b及び3cには、この時方輪列のうち1つの車セット30のみを示している。この運動系の接続を介して、ローター28は、図において矢印Sで示した所定の回転方向に回転させる傾向がある永久トルクを受ける。車22は、フレーム32と一体化されている。フレーム32は、例えば、計時器用ムーブメントの主板である。ローター28は、車22と同軸に回転するようにフレーム32とブリッジ34の間の軸28aに取り付けられている(図3b及び3c)。ローター28は、振動素子26が車22の上で回転可能なように構成されている。この実施例において車22は固定されている。
【0031】
図示した例において、ローター28は、「S」字状を呈している。その一端28bに振動素子26を搭載し、その他端28cに適切な寸法構成のプレートの形態である釣り合い重り34を搭載している。振動素子26は、2つの対向する剛性ポスト26a、26b及び2つの可撓性ポスト26c、26d(図3aにおいては、コイルばねによって模式的に示している)を有するフレームの形態を採っている。振動素子26は、その剛性ポスト26bによってローター28に固定され、永久磁石24が反対側の剛性ポスト26aに固定されている。可撓性ポスト26c及び26dの弾性のために、剛性ポスト26aと一体化された磁石24は、フレーム26a、26b、26c及び26dで形成される平面においてD方向に振動することができる。なお、前記フレームを形成する各ポストは、フレーム26の平面外のいずれの弾性変形をも防ぐような寸法を有し、このフレーム26は、車22の平面と平行な平面において振動する構造で形成されている。
【0032】
車22は、軸28a(図3c)を中心軸とする中心角に対応してジグザグ状に周方向に延在する周期的な極の強磁性進路ベース36を有する。磁石24は、一方では、強磁性進路ベース36との磁気的連係を可能とするように、そして他方では、ローター28の回転時の振動素子26の固有周波数におけるフレーム26の平面における磁石24の振動を可能とするような寸法をもって構成されている。
【0033】
強磁性進路ベース36の形は、磁石24の軌道38を維持するように決められる。この軌道38は、フレーム32の固定された基準内において閉じている実質的にシヌソイド状の形状を有する。この例において、磁石24は、車22に含まれる強磁性進路ベース36の側のみに配置されている。図3aにおいて特に示してあるように、磁石24は、強磁性進路ベース36の平面に垂直な磁化方向を有する。このようにして、磁石24は、「開いた」磁気回路において構成する。これは、磁力線24aが磁石24の外の空気の層を通り抜け、よってガイドされていないように磁石24の外で閉じているようにという意味においてである。
【0034】
強磁性進路ベース36は、軟鉄、ミューメタル(Mu-metal)又はニッケル(75%)、鉄(20%)及びモリブデン(5%)を含むスーパーマロイ(Supermalloy)からなる群から選ばれる材料で典型的には作られる。強磁性進路ベース36は、典型的に、これらの材料のうちの1つで作られたプレートを切断して作られる。これによって、それぞれが台形状の歯を形成する内側鋸歯状部36a及び外側鋸歯状部36bを有するリングが形成されている。
【0035】
磁気的規制デバイス20は、さらに、振動磁石24の運動エネルギーを散逸させる運動エネルギー散逸手段40を有する。これは、強磁性進路ベース36の両側に強磁性進路ベース36に隣接して配置され、強磁性進路ベース36の平面、すなわち、強磁性進路ベース36を形成するリング36の平面と実質的に同じ平面を有する。
【0036】
図示した例において、運動エネルギー散逸手段40は、非強磁性で導電性の扇形区画を有する。この扇形区画は、典型的には、強磁性進路ベース36を形成するリングのそれぞれ内側と外側で交互に配置された2つのリング40a及び40bの形態で形成されている。これらの扇形区画40は、典型的には、金、銀、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、チタン又はニッケルからなる群から選ばれる材料を切断してプレート状に形成されている。
【0037】
これらの非強磁性で導電性の扇形区画40は、空気間隙又はガルヴァニック手段42(図3a)によって強磁性進路ベース36から電気的に絶縁されている。絶縁手段42は、強磁性進路ベース36の横方向の壁36a 36bの両方の面に設けられる。絶縁手段42が単なる空気で満たされた空間ではない場合には、典型的には、ポリマー樹脂又は絶縁ワニスが設けられる。
【0038】
図4は、衝撃を受けた後などに磁石24が瞬間的に強磁性進路ベース36を離れて非強磁性で導電性の扇形区画40a又は40bの上にある時における磁石24に加えられる力を示している。磁石24は、磁石24によって「上を通られる」扇形区画40bに現われる磁石24の運動方向Sとは反対方向の渦電流に起因する力FFを受ける。この力FFは、可撓性ポスト26c、26dの復帰力FRと組み合わさって、合力FF+FRによって磁気的進路ベース36に向かって磁石24を戻そうとする。同時に、磁石24が扇形区画40a又は40bの上を通過するごとに、磁石24が軌道38を離れることをもたらした余分な量の運動エネルギーが、渦電流が発生した「上を通られる」扇形区画のジュール効果によって散逸される。
【0039】
図5a−5c及び5d−5fはそれぞれ、従来技術の磁気的規制デバイス(強磁性進路ベースから離れる際に磁石の運動エネルギーを散逸させる手段のないもの)及び本発明による磁気的規制デバイスにおけるローター(曲線Cv1及びCv2)の回転速度に対して及び発生する振動磁気双極子(曲線Ca1及びCa2)の振動の振幅に対しての、駆動トルク(曲線Cm1及びCm2)の急な増加の影響の動的シミュレーションを時間の関数として示すグラフである。
【0040】
図5a及び5dに示した2つの曲線Cm1、Cm2は、ローター28における初期駆動トルクが同じで、その後に、同じように増加する駆動トルクを示している。この増加の持続時間は、発生する現象の動きを示すために5秒である。
【0041】
図5b及び5eには、2つの同一の初期のふるまい、すなわち、1毎秒3ラジアンの安定した回転速度が示されており、その後で、磁石24が強磁性進路ベース36から離れた際に磁石24の運動エネルギーを散逸させるための手段30をデバイス20が装備しているか(曲線Cv2)、装備していないか(曲線Cv1)に対応して、異なるふるまいが続いている。実際に、散逸手段がない場合(曲線Cv1)、一方で、ローター28の回転速度は、本発明に係る散逸手段がある場合(Cv2:毎秒30ラジアン)と比べてはるかに大きな速度(毎秒100ラジアン)で急に増加し、そして他方では、モータートルクが初期値に戻った後に、従来技術のデバイスでは、ローターの回転速度が、初期の回転速度よりも高い異なる値(毎秒10ラジアン)で安定し、本発明のデバイスがある場合では、ローターの回転速度が、初期の回転速度(Cv2:毎秒3ラジアン)に戻り安定する。
【0042】
最後に、図5cの曲線Ca1において、本発明の手段なしでは、振動素子の振動の振幅が、駆動トルクが増加した時からゼロ振幅に向かって減少している。これは、振動素子が永久に連係逸脱されることを示している。対照的に、図5fの曲線Ca2においては、本発明の手段がある場合には、トルクが増加した時に、振幅がゼロに向かって減少し(余分のエネルギーがジュール効果によって散逸されるため)、そしてトルクの上昇の終わりにおいて、振幅が初期レベルに戻っている。このことは、振動素子が磁気的進路に再び連係することを示している。
【0043】
図6は、本発明に係る磁気的規制デバイス20に取り付けることができる強磁性進路ベース36の第1の変形実施形態の部分的な平面図を示す。この変形実施形態によると、強磁性進路ベース36は、望まない漂遊渦電流を減らす手段を有する。この渦電流を減らす手段は、強磁性進路ベース36に沿って規則的に分布する複数の溝50の形態で作られる。溝50は、強磁性進路ベース36の全厚みを通り抜けて、好ましくは、強磁性進路ベース36の平面と実質的に垂直に延在する。図示した例においては、便宜上の理由で、溝50の長手方向の構成が実質的に半径方向に延在している。しかし、もちろん、溝50の長手方向の構成は、規制デバイスの通常動作、すなわち、磁石24が磁気的進路ベース36に向かうように振動しており、磁気的進路ベース36を追うような動作において強磁性進路ベース36における電磁誘導で発生した漂遊渦電流を減らすことができることを前提に、別の方向を向いていてもよい。なお、好ましいことに、強磁性進路ベース36が前記のようにプレートから切断されたリングで形成される場合に、溝50は、典型的には、適切な形のスタンピングツールによってリングの内側及び外側の形状の切断と同時に切断することができる。
【0044】
図7a、7bはそれぞれ、本発明に係る磁気的規制デバイス20に取り付けられることができる強磁性進路ベース36の第2の変形実施形態の部分的な平面図及び断面図である。この変形実施形態において、強磁性進路ベース36は、互いに絶縁された強磁性材の複数の層で形成された積層されたリングの形態で作られる。この複数の層は、強磁性進路ベース36の平面に垂直な幾何学的な軸A(図7b)を中心に同心となるように延在する。各層52bの間に配置される電気的絶縁体52aによって、ある層から別の層への電流の流れを制限することができ、これによって、望まない渦電流による損失を減らすことができる。
【0045】
図示しない更なる別の変形実施形態によると、磁気的進路ベース36は、図7a及び7bを参照して記載した種類の積層されたリングの形態で作られ、図6を参照して記載したように、溝をさらに設けることができる。
【0046】
一実施形態によれば、例えば、図6及び7a、7bに示すように、強磁性進路ベース36を車22と一体であるように作ることができる。しかし、もちろん、強磁性進路ベース36は、例として図8に示すように、車22に添うようにすることもできる。この後者の場合には、車22は、プラスチックなどで作られた絶縁基板54を有し、その1つの面には、強磁性進路ベース36と、非強磁性の電気的に絶縁体である内側扇形区画40a及び外側扇形区画40bとが設けられている。同心の凹部54b、54c及び54dは、半径方向において互い離れて適切な形状を有しており、これらは、好ましくは、絶縁体基板54の表面54aに設けられている。これによって、適切な手法で、非強磁性で導電性の内側扇形区画40a、強磁性進路ベース36、及び非強磁性で導電性の外側扇形区画40bを受けて位置合わせする。要素40a、40b及び36は、接着結合、ねじ込み又は他の適切な手段によって、凹部54b、54c及び54d内に保持されている。環状の凹部54b、54c、54dの間の半径方向の距離は、空気間隙で形成している。これによって、好ましいことに、磁気的進路ベース36と、非強磁性で導電性の内側扇形区画40a及び外側扇形区画40bとの間でガルヴァニック絶縁を可能にする。
【0047】
図示しない一変形実施形態によると、基板54の両方の表面上において、強磁性進路ベース36と、非強磁性で導電性の内側扇形区画40a及び外側扇形区画40bとを設けて、これらの要素どうしが対応するように構成することができる。このような場合、振動する永久磁石24が、強磁性進路ベースのそれぞれと連係する。
【0048】
図9aは、本発明に係る磁気的規制デバイス20の第2の構成を示す。これにおいて、永久磁石24が、矢印Dによって模式的に示した方向に振動し、この永久磁石24は、導電性フレーム56で形成される磁気回路に配置され、この導電性フレーム56は、例えば、軟鉄で作られており、「C」字の形状を呈する。この導電性フレーム56に沿って磁石24が一体化されている。この構成において、振動磁石24は、戻し手段MRを介して固定フレーム58に接続されている。また、磁気的進路ベース36は、従来の時方輪列(図示せず)を介してバレルからもたらされるモータートルクCによって回転駆動されるローター60と一体化されている。ローター60は、前記各図を参照して説明した車22と同一の構造を有する。車22は、「C」字の2つの枝部の自由端によって限界が定められる空気間隙E内を動く。車60が支える強磁性進路ベース36は、磁石24によって発生する磁束の方向と垂直に延在する。フレーム56の自由端56a、56bは、振動磁石24が設置されている時に強磁性進路ベース36に実質的に対向するように構成する。このようにして、振動磁石24の磁気的連係が改善されるように、磁力線Lcは、磁気的進路ベース36の上にフレームの内部でガイドされ、磁気的進路ベース36を通り抜けて閉じられる。
【0049】
図9bは、図9aに示した構成の変形実施形態である。これにおいて、導電性フレーム56は、ローター22の各側の強磁性進路ベース36に対向するように配置される2つの永久磁石24a、24bを有する。
【0050】
図9cは、図9a及び9bに示した磁気的規制デバイスの実施例の斜視図を示す。
【0051】
最後に、本発明に係る規制デバイスは、計時器用ムーブメント内において、バランスばね及びエスケープで形成される従来の共振器の代わりに、適応作業なしで容易に装備されることができる。
【符号の説明】
【0052】
20 デバイス
22 車
24 永久磁石
26 振動素子
26a、26b 剛性ポスト
26c、26d 可撓性ポスト
28 ローター
28a 軸
30 車セット
32 フレーム
36 強磁性進路ベース
38 軌道
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図9c