特開2015-182085(P2015-182085A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015182085-ダイカスト用金型 図000003
  • 特開2015182085-ダイカスト用金型 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-182085(P2015-182085A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】ダイカスト用金型
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20150925BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20150925BHJP
   C23C 4/10 20060101ALI20150925BHJP
   C23C 4/18 20060101ALI20150925BHJP
【FI】
   B22D17/22 Q
   B22D17/22 R
   B22C9/06 F
   B22C9/06 Q
   C23C4/10
   C23C4/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-58425(P2014-58425)
(22)【出願日】2014年3月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598171830
【氏名又は名称】エジソンハード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英人
【テーマコード(参考)】
4E093
4K031
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB08
4K031AA03
4K031AB02
4K031CB22
4K031CB42
4K031CB43
4K031CB45
4K031DA01
4K031DA04
4K031FA10
(57)【要約】
【課題】キャビティ内のヒートクラックの発生を抑え、長寿命化を図ったダイカスト用金型の提供を目的とする。
【解決手段】金型の少なくとも保護部位に炭化物系又は酸化物系の溶射材を用いて溶射皮膜を形成してあり、その後に窒化処理してあることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の少なくとも保護部位に炭化物系又は酸化物系の溶射材を用いて溶射皮膜を形成してあり、その後に窒化処理してあることを特徴とするダイカスト用金型。
【請求項2】
前記保護部位は金型キャビティのコーナー部位であることを特徴とする請求項1記載のダイカスト用金型。
【請求項3】
前記溶射材はタングステンカーバイド系の電極材であり、溶射皮膜は放電被覆膜であることを特徴とする請求項1又は2記載のダイカスト用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金又は亜鉛合金等の溶湯を金型内に高圧,高速にて射出成型するのに用いられるダイカスト用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金,亜鉛合金等の金属の溶湯を金型内に高圧,高速にて射出成型するダイカスト技術の分野にあっては、金型としてJIS−SKD61等の金型鋼が用いられる。
このようなダイカスト用金型にあっては、キャビティ内に高温の溶湯が射出された後に急速に冷却される工程を繰り返すため、キャビティ表面が溶湯金属に侵食されやすく、キャビティコーナー部にヒットクラックが発生しやすい技術課題があった。
そこで、従来からキャビティ表面を硬化させる目的で窒化処理が施されてきた。
窒化処理には、アンモニアの分解反応を利用したガス窒化法やCaNの熱分解を利用した低温窒化処理法が採用されている。
しかし、ダイカストのように加熱冷却が激しく負荷される金型においては、ショット数の増加に伴い、応力が集中しやすいキャビティコーナー部にヒートクラックが生じやすい問題があり、更なる高寿命化が期待されていた。
【0003】
特許文献1には、トランスファ成形により樹脂を封止するための半導体装置製造用金型において、樹脂との接触による表面摩耗を防止すべく、金型部品の表面にCaNの熱分解を利用した窒化処理,タングステンカーバイドの溶射処理,及びDLC膜処理の内、いずれか2種以上の処理を行う技術を開示する。
しかし、同技術はトランスファ用金型であり、樹脂接触による摩耗を抑えるのが目的である。
また、単に2種以上の処理を組み合せてもよいとの言及にとどまり、具体的にどのような組み合せ、どのような効果があるかについては何ら記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−58404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、キャビティ内のヒートクラックの発生を抑え、長寿命化を図ったダイカスト用金型の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るダイカスト用金型は、金型の少なくとも保護部位に炭化物系又は酸化物系の溶射材を用いて溶射皮膜を形成してあり、その後に窒化処理してあることを特徴とする。
ここで保護部位とは、ダイカストによる鋳造ショットの繰り返しにて応力が集中し、ヒートクラックが発生しやすい部位をいう。
本発明は、窒化処理による溶湯の侵食を防止するだけでなく、応力が集中しやすい部位に溶射皮膜を形成するのが目的であり、必ずしもキャビティ全面に溶射皮膜を形成する必要はない。
キャビティ内において熱サイクルによる応力が集中しやすい部位は、キャビティのコーナー部である。
【0007】
溶射材としては、アルミニウム合金の溶湯に耐え得るだけの耐熱性が要求され、セラミック系の溶射材が好ましい。
セラミック系の溶射材としては、酸化物系と炭化物系とが代表的である。
酸化物系には、アルミナ,チタニア,クロミア,イットリア,ジルコニア及びそれらの複合物が例として挙げられる。
炭化物系には、クロムカーバイド(Cr)とタングステンカーバイド(WC)があり、これらはNiCr,Co,CoCr等の金属粒子と複合化したサーメット材として使用されることも多い。
溶射方法としては、プラズマ溶射,フレーム溶射等工法に制限がない。
本発明ではキャビティのコーナー部に部分的に溶射皮膜を形成するのが好ましい。
そこでタングステンカーバイド系の材料を電極材に用いて、アーク放電による放電被覆膜を形成するのが好ましい。
【0008】
窒化処理としては、上述したようにガス窒化でもよく、CaNを主成分とする石灰窒素粉を利用した400〜500℃の低温窒化でもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るダイカスト用金型にあっては、応力集中部位に溶射皮膜を形成した後に窒化処理をしてあるので、応力集中部位のヒートクラック発生を抑えつつ、金属の溶湯による侵食を抑えたので、金型の寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】アルミダイカスト鋳造品のキャビティコーナー部の拡大写真を示す。(a)は金型製作時、(b)は窒化処理のみの金型を用いて1万回の鋳造を繰り返した後の鋳造品の表面写真及び断面輪郭図、(c)はタングステンカーバイド系の電極材を用いて放電被覆後に窒化処理した金型を用いて3万回の鋳造を繰り返した後の鋳造品の表面写真及び断面輪郭図を示す。
図2】金型の表面からの距離と断面硬度の関係をグラフに示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アルミダイカスト用金型を製作し、キャビティ表面を低温窒化処理のみにしたものと、タングステンカーバイドの皮膜をキャビティコーナー部に放電被覆した後に低温窒化処理したものを使用してアルミ鋳造品をショットし、比較調査したので、以下説明する。
金型としては、JIS−SKD61の改良鋼である大同特殊鋼製のDH31を用いた。
低温窒化処理は、エジソンハード株式会社のEHプロセスを用いた。
EHプロセスは、表面の化合物層が稀少で、いわゆるカモメマークが無い窒化処理である。
タングステンカーバイド皮膜は、キャビティのコーナー部のみ、タングステンカーバイトの電極材を用いて放電被覆した。
図1(a)は、金型製作時の鋳造品のキャビティコーナー部の拡大写真である。
この金型を用いて、JIS−ADC12アルミニウム合金を用いて繰り返し鋳造した。
窒化処理のみの金型での鋳造品は、鋳造ショット数1万回にて図1(b)に示すようにヒートクラックが発生した。
これに対して、タングステンカーバイドの放電被覆膜を形成し、その後に窒化処理した金型を用いて鋳造した鋳造品はショット数1万回ではヒートクラックが認められず、ショット数3万回にて図1(c)に示すようなヒートクラックが発生した。
このことから、ダイカスト用金型の長寿命化にタングステンカーバイド放電被覆と窒化処理とを組み合せるのが有効であることが明らかになった。
【0012】
図2に金型の表面からの深さ(距離)μmと、断面硬度の関係を調査した結果を示す。
このグラフから、タングステンカーバイド(WC)を被覆したものの方が金型に直接窒化処理したものより硬さが低いことが明らかになり、これによりキャビティコーナー部のヒートショックが和らげられ、長寿命化につながったと推定される。
図1
図2