特開2015-189662(P2015-189662A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-189662(P2015-189662A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】水硬性成形体用補強繊維
(51)【国際特許分類】
   C04B 16/06 20060101AFI20151006BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20151006BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20151006BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20151006BHJP
   D06M 101/24 20060101ALN20151006BHJP
【FI】
   C04B16/06 C
   C04B28/02
   C04B16/06 B
   D06M13/224
   D06M15/53
   D06M101:24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-70887(P2014-70887)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】稲田 真也
【テーマコード(参考)】
4G112
4L033
【Fターム(参考)】
4G112LA13
4G112PA24
4L033AA05
4L033AB01
4L033AC15
4L033BA21
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】補強繊維の混練に伴う水と水硬性成分の混練物の流動性の低下を抑制可能な水硬性成形体用補強繊維を提供する。
【解決手段】平均繊維径20μm以上の繊維表面に、HLB14以上の界面活性剤が0.02〜3質量%の割合で付着する水硬性成形体用補強繊維。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径20μm以上の繊維表面に、HLB14以上の界面活性剤が0.02〜3質量%の割合で付着する水硬性成形体用補強繊維。
【請求項2】
前記水硬性成形体用補強繊維がポリビニルアルコール系繊維である請求項1に記載の水硬性成形体用補強繊維。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水硬性成形体用補強繊維を含む水硬性材料。
【請求項4】
請求項1または2に記載の水硬性成形体用補強繊維を含む水硬性成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタルやコンクリートなどの水硬性成形体を補強する繊維に関する。
【0002】
モルタルやコンクリートなどの水硬性成分を水と共に混練した直後の、所謂フレッシュ状態での流動性は、一般的に混練時に巻き込むエア量(エントラップドエア、エントレインドエア)が少なくなると、エアによるベアリング効果が低減するために、低下する。反対に、エア量が増えすぎると成形体が文字通り巣立つことになり、機械物性の低減に繋がる。そのため通常は、様々な添加剤(流動化剤、AE剤、AE減水剤等)を用いることで、一定のエア量になるようコントロールされる。
【0003】
一方、モルタルやコンクリートの機械的物性を改善するため、特に補強を目的として、各種短繊維を混合することも広く行われている。一般に、これら補強繊維を混合すると、フレッシュ状態の流動性は悪化する方向に繋がるため、繊維添加しないものに比べて水比を若干高くする、様々な添加剤で流動性低減を抑制する、などの対策が行われている。
【0004】
しかしながら補強繊維の種類や形状等によってエアの巻き込み性が異なることが多々あり、安定なフレッシュ状態を得るためには、煩雑な添加剤の調整が必要であった。特に、生コン工場で得られたフレッシュコンクリートに、後から繊維を混練するような場合は、繊維を添加する前に添加剤を追加する必要があるが、一旦製造されある程度時間が経過した生コンは添加剤の効果が発現しにくくなり、必然的に添加剤の使用量が多くなる傾向にあった。またそのため、セメントの硬化遅延が発生したり、費用も嵩むといった問題もあった。
【0005】
そのような問題を解決するために、例えば減水剤を含有する収束剤により収束された水硬性成型物補強用収束糸を用いることが提案されている(特許文献1)。特許文献1では、減水剤を含有する収束剤により繊維が収束されることで、フレッシュ状態の流動性を低減しない水硬性成型物補強用収束糸を開示しており、特に減水剤がAE減水剤ならば、減水効果とエア巻き込み効果により、効果的に流動性の向上ができるとされている。しかしながら、発明者らの検討では、流動性の向上は認められるも、その効果は非常に僅かなものであった。これは、減水剤が繊維から脱落しやすく、そのため繊維とセメントの界面にて減水剤の効能が十分に発揮されないためと思われる。繊維に付与した減水剤と同量をセメントスラリーに添加しても流動性は同等であったことからも、繊維とセメント界面では機能が発現していないものと思われる。
【0006】
一方、HLB(Hydrophile Lipophile Balance:界面活性剤の親水性を表すパラメータ)という概念を用い、セメントと、HLBが13以下の界面活性剤を付着した補強繊維等と、非水溶性ビニルモノマーとを含有するエマルジョンを調製する工程と、このエマルジョンを成形する工程と、得られた成形体を硬化および養生する工程とを含む、繊維補強無機質体の製造方法が提案されている(特許文献2)。これは、繊維に付与する界面活性剤の種類を限定することで、繊維の分散性やエマルジョンの安定性を向上させることによって、高強度で靭性にも優れた無機質体を得ることを目的とするものであったが、フレッシュ状態での取り扱い性(流動性)については改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−259289号公報
【特許文献2】特開平05−085796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたもので、補強繊維の混練に伴う水と水硬性成分の混練物(水硬性材料)の流動性の低下を抑制可能な水硬性成形体用補強繊維を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、親水性親油性バランス(Hydrophile Lipophile Balance:以下、HLBと称する場合がある)を特定の範囲に調整した界面活性剤を用いることによって水と水硬性成分の混練物(水硬性材料)の気泡を安定に制御できることを見出したが、その際、界面活性剤を添加する方法として、特定の範囲の繊維径を有する補強繊維の繊維表面に付着させることによって、水と水硬性成分の混練物(水硬性材料)のフレッシュ時の流動性を向上させることができ、その結果、嵩密度の小さい水硬性成形体を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、平均繊維径20μm以上の繊維表面に、HLB14以上の界面活性剤が0.02〜3質量%の割合で付着する水硬性成形体用補強繊維である。
【0011】
前記水硬性成形体用補強繊維はポリビニルアルコール系繊維であってもよい。
【0012】
本発明は、前記水硬性成形体用補強繊維を含む水硬性材料および水硬性成形体を包含する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、補強繊維の混練に伴う水と水硬性成分の混練物(水硬性材料)の流動性の低下を抑制可能な水硬性成形体用補強繊維、及び該繊維を含む水硬性材料ならびに水硬性成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水硬性成形体用補強繊維は、HLB14以上の界面活性剤が繊維表面に存在していることが重要である。繊維表面の界面活性剤のHLBが14未満では、水と水硬性成分の混練物(水硬性材料)のフレッシュ時の流動性に影響を与えると考えられる気泡が形成しにくくなるばかりでなく、気泡の安定性が低下し、その結果水と水硬性成分の混練物(水硬性材料)の流動性が低下する。繊維表面の界面活性剤のHLBは14.5以上であることがより好ましい。一方、上限については特に制限はないが、20以下の場合、気泡の安定性が非常に高く、好ましい。
【0015】
前記界面活性剤は、繊維に対して0.02〜3質量%の割合で存在していることが重要である。界面活性剤の量が0.02質量%未満では、補強繊維そのものの化学構造による水と水硬性成分の混練物(水硬性材料)に対する流動性低下への影響を制御することが難しくなり、3質量%を越えると、補強繊維のマトリクスとの接着性が阻害される可能性がある。界面活性剤の量は0.03〜2質量%であることがより好ましく、0.04〜1.5質量%であることが更に好ましく、0.05〜1質量%であることが特に好ましい。
【0016】
前記界面活性剤としては、HLBが14以上であれば、特に限定されるものではく、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどを用いることができる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、などが挙げられ、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸デカグリセリルなどが挙げられ、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが挙げられ、また、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンラウリン酸グリセリルなどが挙げられるが、これらの中でも特にポリオキシエチレンセチルエーテルやポリオキシエチレンラウリルエーテルが、気泡の安定性の点で好ましい。
【0017】
前記界面活性剤は繊維の製造工程における工程助剤としての機能を併せて持っていてもよく、例えばカット性向上のための潤滑・平滑機能、繊維分散性向上のために分散機能などを同時に備えていてもよい。もちろん、そのような機能を満たす別の成分が本発明の水硬性成形体用補強繊維に同時に付与されていてもよい。
【0018】
本発明の水硬性成形体用補強繊維の平均繊維径は20μm以上であることが重要である。平均繊維径が20μm未満では、気泡形成および気泡を安定化させる界面活性剤の効果が十分発揮されない場合がある。水硬性成形体用補強繊維の平均繊維径は、23μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることが更に好ましい。平均繊維径が大きいほうが気泡の形成および気泡の安定性が向上する理由は明らかではないが、細い繊維は水と水硬性成分との混練時に流動性を大きく低下させるため、気泡を巻き込みにくく、かつ混練時に形成された気泡の安定性も阻害されるものと思われる。水硬性成形体用補強繊維の平均繊維径は補強効果等の点から1000μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましく、800μm以下であることが更に好ましい。
【0019】
本発明の水硬性成形体用補強繊維の種類は特に限定されず、ポリビニルアルコール(以下、PVAと称することがある)系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維(アラミド繊維を包含する)、アクリル系繊維、ポリベンゾオキサゾール系繊維、ポリエステル系繊維、レーヨン系繊維(ポリノジック繊維、溶剤紡糸セルロース繊維等)等の合成高分子繊維、また金属繊維やガラス繊維などを用いることができるが、PVA系繊維が特に好ましく使用される。その理由として、分子構造上、親水性に富み、繊維の水酸基とセメントのCaが結合するため、セメントと親和性が大きいので化学的接着力が極めて大きく、更にはPVA系繊維の周辺に水酸化カルシウムに富んだ構造が出来やすく、これが摩擦抵抗を大きくすることなどが挙げられる。
【0020】
前記PVA系繊維とは、ビニルアルコール系ポリマーを含む繊維であり、機械的性能、水硬性材料との接着性及び耐アルカリ性の点から、当該繊維中に該ビニルアルコール系ポリマーを30質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましい。
【0021】
前記ビニルアルコール系ポリマーの構成は特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲であれば他のユニットにより共重合されていたり、また変性されていてもよい。繊維の機械的性能、耐アルカリ性、耐熱水性等の点から、変性ユニットは30モル%以下、特に10モル%以下とするのが好ましい。
【0022】
前記ビニルアルコール系ポリマーの30℃の水溶液で粘度法により求めた平均重合度は繊維の機械的性能、耐アルカリ性、耐熱水性等の点から、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましい。またコスト等の点から10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、3000以下であることが更に好ましい。また耐熱性、耐久性、寸法安定性の観点から、前記ビニルアルコール系ポリマーの鹸化度は99モル%以上であることが好ましく、99.5モル%以上であることがより好ましく、99.8モル%以上であることが更に好ましい。
【0023】
本発明の水硬性成形体用補強繊維は2種類以上のポリマーから構成された複合繊維であってもよく、複合繊維の形状としては、海島型、芯鞘型、サイドバイサイド型等であってもよい。
【0024】
本発明の水硬性成形体用補強繊維のアスペクト比は、50〜1000であることが好ましい。アスペクト比が50以上であることで、効率的に補強効果を発揮することができ、1000以下であれば、繊維の絡まりを低く抑えることができる。水硬性成形体用補強繊維のアスペクト比は、60〜750であることがより好ましく、70〜500であることが更に好ましい。
【0025】
本発明の水硬性成形体用補強繊維の引張強度は8cN/dtex以上であることが好ましく、9cN/dtex以上であることがより好ましく、10cN/dtex以上であることが更に好ましく、11cN/dtex以上であることが特に好ましい。
【0026】
次に本発明の水硬性成形体用補強繊維の製造方法について説明するが、本発明の繊維の製造は、一般的な溶融紡糸、溶液紡糸、乾式紡糸など、いずれも制限されることなく製造することができる。
【0027】
界面活性剤の繊維への付与についても、特に付与方法に制限はなく、ローラータッチ方式やスプレー方式、烏口方式など、何れも好適に用いることができる。また、付与するタイミングも特に制限はなく、繊維化直後、延伸前、延伸後等、何れも付与することが可能である。
【0028】
本発明の水硬性成形体用補強繊維を含む水硬性材料のエア量は、3〜6vol%であることが好ましい。3vol%以上であることで、水硬性材料としての取り扱い性が良好となり、6vol%以下であると、硬化後の水硬性成形体の強度が維持される。水硬性材料のエア量は3.2〜5.8vol%であることがより好ましく、3.5〜5.5vol%であることが更に好ましい。
水硬性材料のエア量は、後述する方法で測定することができる。
【0029】
本発明の水硬性成形体用補強繊維を含む水硬性材料のモルタルフローは、130〜300mmであることが水硬性材料としての取り扱い性の点で好ましい。水硬性材料のモルタルフローは135〜290mmであることがより好ましく、140〜280mmであることが更に好ましい。
水硬性材料のモルタルフローは、後述する方法で測定することができる。
【0030】
本発明の水硬性成形体用補強繊維を含むモルタル、コンクリ−トに用いる混練機は特別なものは必要なく、一般的に使用されている可傾式ミキサ−、トラックミキサ−、2軸式ミキサ−、オムニミキサ−、パンミキサ−等で混練が可能である。また、モルタル、コンクリ−トの用途も特に限定されるものではなく、一般の土木建築の用途に使用できる。例えば、NATM工法、のり面吹付、海岸護岸、建築物の基礎、2次製品(コンクリ−ト、モルタルのブロック、床パネル、壁パネル、間仕切り等)などあらゆる用途を挙げることができる。2次製品成型物の製造は、振動成型、遠心力成型等の成型法により容易に行うことができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定
されるものではない。
なお、本発明において、界面活性剤付着量、エア量、モルタルフロー、曲げ強度及び嵩密度は以下の方法により測定、評価されたものを意味する。
【0032】
[界面活性剤付着量(質量%)]
JIS L−1015 8.22 溶剤抽出分に準拠して実施した。
【0033】
[エア量 vol%]
JIS A−1128に準拠して行った。
【0034】
[モルタルフロー mm]
JIS R−5201に準拠して実施した。
【0035】
[曲げ強度(曲げ指数)]
JIS A−1106に準拠して行った。ミキサーで混練されたモルタルを、断面が40mm×40mmで長さが160mmの角柱形状の型枠に流し込んだ後、20℃の室内で24時間養生し、脱型したものを20℃の水中で1ヶ月養生して強度試験に供した。曲げ強度試験は島津製作所製オートグラフを用いて行った。尚、本特許においては、実施例1の曲げ強度(N/mm)を100とした相対比較にて把握した。
【0036】
〔嵩密度 g/cm
曲げ強度用に作成した、断面が40mm×40mmで長さが160mmの角柱形状の試験片の重量を測定し、以下式により算出した。
嵩密度(g/cm)=試験片重量(g)÷試験片体積(4cm×4cm×16cm)
【0037】
[実施例1]
ポリマー重合度1750、ケン化度99.9モル%のPVAを用い、PVA濃度が21質量%となるようにDMSOに溶解し紡糸原液とし、メタノールとDMSOの混合溶媒を固化浴に用いて湿式紡糸にて紡糸した。さらにメタノールでDMSOを抽出しながら、湿延伸、乾燥後、乾熱延伸(延伸温度230℃、総延伸倍率15倍)を実施した。延伸したPVA繊維に対して、HLB=14.9の界面活性剤液(組成:ソルビタンステアレート(EO20モル付加))をローラータッチにより表面に付着させた後、乾燥させることで、PVA繊維に対して界面活性剤を付着させた。その後切断して、繊維径26μm、アスペクト比230のPVA繊維を得た。
その後、100L容量のパンミキサーを用いて、普通ポルトランドセメント、海砂、砕砂を表1に示す質量割合で配合し、10秒間ドライブレンドした後、水および減水剤(花王「マイティ21LV」)を添加し、60秒間混練してセメント系スラリーを調製した。その後、先に得たPVA繊維を所定の重量比で投入して60秒間混練し、繊維混合セメント系スラリーを調製した。結果を表2に示す。目標エア量4.5%と全く同じエア量が得られ、かつフローも高く施工しやすいものであった。またこのスラリーを型枠に流し込んで養生硬化させた試験体の曲げ強度結果も表2に示した。
【0038】
[実施例2]
付与した界面活性剤成分をHLB=21(組成:PEGエステル)とする以外は実施例1と同様にして試験をおこなった。結果を表2に示す。目標エア量4.5%に近いエア量が得られ、かつフローも高く施工しやすいものであった。曲げ強度は実施例1と比較して98%とほぼ同等の強度であった。
【0039】
[実施例3]
ポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」)を溶融紡糸装置の押出機に投入して溶融混練し、紡糸口金から吐出して800m/分の速度で未延伸糸を製造した。その後、同未延伸糸を温度128℃の熱風炉に導入して4.6倍延伸した。延伸したポリプロピレン繊維に対して、実施例1と同様に界面活性剤を付着させた。その後切断して、繊維径17μm、アスペクト比290のポリプロピレン繊維を得た。以降、実施例1と同様にして試験を行った。結果を表2に示した。目標エア量4.5%に近いエア量が得られ、かつフローも高く施工しやすいものであった。曲げ強度は実施例1と比較して75%程度であったが、これはポリプロピレン繊維がPVA繊維に比べてセメントとの接着が低いことに起因していると考えられた。
【0040】
[比較例1]
付与した界面活性剤成分をHLB=6.7(組成:ソルビタンモノパルミテート)とする以外は実施例1と同様にして試験をおこなった。結果を表2に示す。エア量は目標4.5%に比べて低く、かつフローも低く施工しにくいものであった。
【0041】
[比較例2]
付与した界面活性剤の量を4%/繊維とする以外は実施例1と同様にして試験をおこなった。結果を表2に示す。目標エア量4.5%に近いエア量が得られ、かつフローも高く施工しやすいものであったが、曲げ強度は実施例1と比較して72%程度であった。これは界面活性剤を付与しすぎたためPVAとセメントとの接着が阻害されたためであると考えられた。
【0042】
[比較例3]
PVA繊維として、繊維径12μm、アスペクト比500のPVA繊維を製造する以外は、実施例1と同様にして試験をおこなった。結果を表2に示す。エア量は目標4.5%に比べて低く、かつフローも低く施工しにくいものであった。これは、混練時に流動性が大きく低下されたため、気泡を巻き込みにくく、かつ混練時に形成された気泡の安定性も阻害されたものと考えられた。
【0043】
[比較例4]
繊維製造時に界面活性剤を付与するのではなく、繊維付与分に相当する量の界面活性剤を、セメント混練時に直接添加する以外は実施例1と同様にして試験をおこなった。結果を表2に示す。エア量は目標4.5%に比べて低く、かつフローも低く施工しにくいものであった。これより、所望の性能を満たすには、界面活性剤を繊維自身へ予め付与しておかなければならないことが確認できた。
【0044】
[比較例5]
付与した界面活性剤の量を0.01%/繊維とする以外は実施例3と同様にして試験をおこなった。結果を表2に示す。エア量は目標4.5%に比べて低く、かつフローも低く施工しにくいものであった。これは、ポリプロピレンは疎水性であるため、表面の界面活性剤が少なすぎるとエアの形成が阻害されたためと思われる。また、曲げ強度は実施例1と比較して76%程度であったが、これもポリプロピレン繊維がPVA繊維に比べてセメントとの接着が低いことに起因していると考えられた。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の水硬性成形材料用補強繊維を配合したセメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性成形体材料の用途は特に限定されるものではなく、各種建設資材、土木資材として利用することができる。