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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-197370(P2015-197370A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
   G01N35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-75478(P2014-75478)
(22)【出願日】2014年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】垂水 信二
(72)【発明者】
【氏名】足立 作一郎
(72)【発明者】
【氏名】薮谷 千枝
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰久
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058AA10
2G058GA02
2G058GD01
2G058GD05
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、自動分析装置において、異常な反応過程曲線を正確に検出および分類することができる技術を提供することである。
【解決手段】自動分析装置は、サンプルと試薬を混合して反応させるための反応容器と、前記反応容器中の反応液に光を照射し、透過光量または散乱光量を測定する測定部と、前記測定部が測定した時系列の光量データを処理する制御部と、前記光量データの時系列変化を近似する近似関数を1以上記憶する記憶部と、前記制御部の処理結果を出力する出力部と、を備える。前記制御部は、前記記憶部が記憶している前記近似関数のいずれかを選択し、前記選択した近似関数を用いて前記光量データの時系列変化を表す近似曲線を算出し、前記光量データと前記近似曲線との乖離情報に基づく乖離特徴情報を算出し、前記乖離特徴情報を用いて、前記光量データに含まれる異常を検出および分類する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルと試薬を混合して反応させるための反応容器と、
前記反応容器中の反応液に光を照射し、透過光量または散乱光量を測定する測定部と、
前記測定部が測定した時系列の光量データを処理する制御部と、
前記光量データの時系列変化を近似する近似関数を1以上記憶する記憶部と、
前記制御部の処理結果を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、
前記記憶部が記憶している前記近似関数のいずれかを選択し、
前記選択した近似関数を用いて前記光量データの時系列変化を表す近似曲線を算出し、
前記光量データと前記近似曲線との乖離情報に基づく乖離特徴情報を算出し、
前記乖離特徴情報を用いて、前記光量データに含まれる異常を検出および分類し、
前記出力部は、
前記検出および分類した異常に関する情報を出力する、ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記光量データと前記近似曲線との間の誤差の時系列変化を表す時系列誤差データを算出し、
前記時系列誤差データを前記乖離特徴情報として用いて、前記異常を検出および分類することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記光量データまたは前記近似曲線から所定の指標を算出し、
前記時系列誤差データに基づき、前記光量データ内において異常が発生している異常発生範囲を算出し、
前記異常発生範囲内の前記時系列誤差データの特徴量を算出し、
前記特徴量および前記指標を用いて前記異常を分類することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記指標が、前記近似曲線から算出した暫定的な分析結果であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記光量データおよび前記近似曲線の少なくも一方から得た情報に基づいて、前記乖離特徴情報を正規化し、
前記正規化した乖離特徴情報を用いて、前記異常を検出および分類することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記光量データおよび前記近似曲線の少なくとも一方から得た時間に関する情報に基づいて、前記乖離特徴情報に含まれる時間に関する情報を正規化し、
前記光量データおよび前記近似曲線の少なくとも一方から得た光量に関する情報に基づいて、前記乖離特徴情報に含まれる光量に関する情報を正規化することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記光量データを所定の周期で取込み、
前記周期内の光量データと前記近似曲線との乖離情報に基づく乖離特徴情報を算出し、
前記乖離特徴情報を用いて、前記光量データに含まれる異常を検出および分類することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記分類した異常の種類に基づいて、前記測定部による測定を中止または継続するかを判定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記近似関数は、
時刻に対する光量の変化量が次第に大きくなる第1領域と、
前記第1領域よりも後の時刻において時刻に対する光量の変化量が前記第1領域よりも小さい第2領域と
を有する関数であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記出力部は、
(1)第1軸を時間、第2軸を光量値として出力した前記光量データ
(2)第1軸を時間、第2軸を光量値として出力した前記近似曲線
(3)前記乖離特徴情報
(4)分析の結果
(5)前記近似関数の式
(6)異常の検出の結果
(7)異常の分類の結果
(8)異常への対応処理の情報
の少なくとも1つを出力することを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項1に記載の自動分析装置において、
血液凝固反応を分析することを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記記憶部が記憶する決定木に基づき前記乖離特徴情報を分類することを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記記憶部は、
(1)前記異常の種類と対応付けられた少なくとも1つ以上の任意次元ベクトル、
(2)前記異常の種類と対応付けられた少なくとも1つ以上の任意次元空間内の識別境界、
(3)前記異常の種類と対応付けられた少なくとも1つ以上の任意次元空間内の部分空間、
(4)任意次元ベクトルを引数とし、前記異常の種類と対応付けられた値を出力値とする評価関数、
のいずれかを記憶しており、
前記制御部は、
前記乖離特徴情報を線形または非線形の写像により、任意次元のベクトル特徴情報に変換し、
前記任意次元ベクトル、前記識別境界、前記部分空間、または前記評価関数の出力値に基づいて異常の種類を分類することを特徴とする自動分析装置。
【請求項14】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記異常は、
(1)前記光量データにおける光量値の変化量が急に増加または減少する異常
(2)前記光量データにおける光量値の変化量が一度増加して減少した後、再び増加する異常
(3)前記光量データにおける光量値の変化量が、一定の値または所定の範囲内に留まる異常
の少なくとも1つを含むことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固検査は、凝固線溶系の病態把握、DIC(播種性血管内凝固症候群)の診断、血栓治療効果の確認、血友病の診断など、多岐に渡る目的で行われている。従来、血液凝固検査は、血液凝固反応の終点であるフィブリン析出を目視で捉えることで行われていたが、1960年代以降、検査スループット向上及び高精度化を目的に開発された血液凝固分析装置が日常検査に広く用いられている。
【0003】
血液凝固分析装置によるフィブリン析出の検出には主に、電気抵抗検出方式、光学的検出方式、力学的方式などの計測方式が用いられており、特に光学的検出方式は、凝固反応中にサンプルに異物が直接触れることのない非接触の計測方式であることもあって、広く利用されている。光学的検出方式には、反応容器内で凝集物が生成される際の透過光の変化を測定する透過光検出方式と、散乱光を検出する散乱光検出方式の2種類がある。いずれの方式も、時系列の光量変化に基づき、凝固反応の進行を反応曲線として検出し、高精度な分析を実現するものである。
【0004】
光学的検出方式は、上述の通り、非接触かつ高精度という特徴を有するものの、血液凝固反応においては、他の生化学反応と異なり、不安定な反応曲線が計測される場合がある。この要因には、凝固反応が複数の因子が影響し合う多段階かつ複雑な反応であることや、測定計測中の反応容器に攪拌時の気泡などの異物が混入してしまう場合があること、などが挙げられる。前者の要因による不安定な反応曲線としては、反応速度が一度減少した後、再び増加する二段階反応などがある。また、後者の計測異常による不安定な反応曲線としては、反応後半に速度が零にならないドリフト反応や、反応曲線の途中で光量が短時間で大幅に変化するジャンプ異常、一時的に光量が上下に変動するノイズなどがある。
【0005】
従来、これらの異常が発生した場合には、現場の作業者は検体毎の反応曲線を目視で確認し、異常を判定および分類した後に、再検査、装置のチェックなど、その後の対応策を検討する必要があった。しかし、日常の検査業務の中で、計測された全ての反応曲線を目視で確認することは困難であり、特に、一度正常な検査値が測定されてしまったデータに対しては、異常を見落とした結果、正確性の低い検査を実施してしまう可能性があった。そこで、反応曲線に含まれる上記のような異常を自動的に検出し、作業者に通知する自動分析装置および処理方法がこれまでに提案されている。例えば、特許文献1では、特定の変化量・時間にチェック領域を設定し、光量・時間・反応速度に閾値を設けて異常を検出する血液凝固反応解析方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−169700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に示された方法では、検出した異常に関する情報を適切に分類することができなかった。また、光学的検出方式で取得される凝固反応過程曲線は、検体に含まれる物質の含有量により、反応の速度や反応前後の光量の変化に大きな違いが生じるため、凝固反応の進行の緩やかな反応曲線からは、異常を正確に検出できなかった。このように、従来開示されている技術では、検体毎に異なる曲線を描く特徴を有する血液凝固反応において取得されうる、異常な反応過程曲線を、正確に検出および分類することができなかった。
【0008】
本発明の目的は、サンプルに含まれる成分を分析する自動分析装置において、異常な反応過程曲線を正確に検出および分類することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為に、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例をあげるならば、サンプルと試薬を混合して反応させるための反応容器と、前記反応容器中の反応液に光を照射し、透過光量または散乱光量を測定する測定部と、前記測定部が測定した時系列の光量データを処理する制御部と、前記光量データの時系列変化を近似する近似関数を1以上記憶する記憶部と、前記制御部の処理結果を出力する出力部と、を備え、前記制御部は、前記記憶部が記憶している前記近似関数のいずれかを選択し、前記選択した近似関数を用いて前記光量データの時系列変化を表す近似曲線を算出し、前記光量データと前記近似曲線との乖離情報に基づく乖離特徴情報を算出し、前記乖離特徴情報を用いて、前記光量データに含まれる異常を検出および分類し、前記出力部は、前記検出および分類した異常に関する情報を出力する、自動分析装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サンプルに含まれる成分を分析する自動分析装置において、異常な反応過程曲線を正確に検出および分類することができる。
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施例に係る自動分析装置の構成図である。
図2】第1実施例における異常な光量データを検出および分類する処理フローを示す図である。
図3図2のステップS208における異常分類処理の処理フローを示す図である。
図4】第2実施例における異常な光量データを検出および分類する処理フローを示す図である。
図5】第3実施例における異常な光量データを検出および分類する処理フローを示す図である。
図6】ジャンプ異常を含む光量データに図2のステップS203の処理を適用した場合の図である。
図7図6に示した時系列光量データと近似曲線との間の誤差を、時系列光量データのデータ点毎に算出してプロットした図である。
図8】ドリフト異常を含む光量データに図2のステップS203の処理を適用した場合の図である。
図9図8に示した時系列光量データと近似曲線との間の誤差を、時系列光量データのデータ点毎に算出してプロットした図である。
図10】二段階反応異常を含む光量データに図2のステップS203の処理を適用した場合の図である。
図11図10に示した時系列光量データと近似曲線との間の誤差を、時系列光量データのデータ点毎に算出してプロットした図である。
図12】ノイズを含む異常を有する光量データにステップS203の処理を適用した場合の図である。
図13図12で示した時系列光量データと近似曲線との間の誤差を、時系列光量データのデータ点毎に算出してプロットした図である。
図14】操作用コンピュータの出力画面例を示す図である。
図15】2つの検体からそれぞれ取得した、ドリフト異常を有する時系列光量データに図2のステップS203およびステップS205の処理を適用した場合の図である。
図16図15に示した時系列光量データ1501と近似曲線1502との間の誤差、および時系列光量データ1503と近似曲線1504との間の誤差を、それぞれ時系列光量データ1501のデータ点毎、および時系列光量データ1503のデータ点毎に算出し、プロットした図である。
図17図16に示した時系列の誤差データ1601および1602に図4のステップS401を適用した場合の図である。
図18図17に示した時系列の誤差データ1701および1702に図4のステップS401を適用した場合の図である。
図19】ジャンプ異常を有する反応途中の時系列光量データにステップS203の処理を適用した場合の図である。
図20図19で示した時系列光量データと近似曲線との間の誤差を、時系列光量データのデータ点毎に算出してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0013】
[第1実施例]
図1は本発明を適用した自動分析装置の構成の概略を示す図である。当該自動分析装置は、血液由来のサンプルに含まれる成分を分析するものであり、特に血液凝固反応を分析するものである。なお、各部の機能は公知のものであるため、詳細な記述は省略する。
【0014】
本発明を適用した自動分析装置は、サンプル分注部101を用いて、左右に回転するサンプルディスク102に配置されたサンプル容器103内の試料を吸引し、反応容器104へ吐出するように構成されている。サンプル分注部101は、サンプル用シリンジポンプ105の動作に伴ってサンプルの吸引動作、及び吐出動作を実行する。試薬分注部106は、試薬用シリンジポンプ110の動作に伴って、試薬ディスク107に配置された試薬容器108内の試料を吸引し、反応容器104へ吐出するように構成されている。試薬分注部106の内部には、試薬昇温部109が内蔵されている。
【0015】
反応容器104は、反応容器ストック部111に格納されている。反応容器搬送部112は、反応容器104の搬送及び設置を行う。反応容器104は、反応容器ストック部111から反応容器搬送部112によって保持され、反応容器搬送部112は、回転移動して、保持した反応容器104を検出部113の反応容器設置部114へ設置する。反応容器設置部114には、反応容器104を載置できるように窪みが設けられており、この窪みに反応容器104を挿入することができる。ここで、反応容器設置部114は少なくとも一つ以上あり、本装置は少なくとも一つ以上の検出部113を備える。
【0016】
次に測定の流れを説明する。まず、各サンプルのために分析すべき分析項目は、キーボードなどの入力部120や、操作用コンピュータ118から入力される。検出部113の動作は、制御部121により制御される。サンプル分注部101により、サンプルディスク102に配置されたサンプル容器103内の試料が吸引され、検出部113内の反応容器設置部114へ載置された反応容器104へ分注される。次に試薬も同様に試薬分注部106により試薬ディスク107に配置された試薬容器108より吸引され、試薬昇温部109により適温へ昇温され、反応容器104へ分注される。この試薬吐出圧にて血液凝固反応が即時に開始される。
【0017】
光源115からの光を反応容器104へ照射し、反応容器104内の反応溶液で散乱された散乱光または透過された透過光をフォトダイオードなどの検出器116にて検出する。検出器116によって測定された測光信号は、A/D変換器122を経由し、インターフェイス123を介して制御部121に時系列光量データとして取り込まれる。制御部121では、時系列光量データから凝固時間が計算される。制御部121による出力結果は、インターフェイス123を介してプリンタ124によって印字出力するか、又は操作用コンピュータ118の画面に出力すると共に、RAMやハードディスクなどで実現される記憶部119に格納される。測光が終了した反応容器104は、反応容器搬送部112により保持され、反応容器廃棄部117へ廃棄される。
【0018】
以下、制御部121の処理を説明する。制御部121は、血液凝固反応における特有の異常を検出および分類する。以下では、まず初めに血液凝固反応で発生する異常な反応曲線について説明し、その後に処理手順を説明する。
【0019】
血液凝固検査として行われているPT、APTT、Fbgなどで発生する血液凝固反応は、複雑な反応系を経て凝集塊が生成される生物学的反応である。この凝集塊を光学的検出方式にて検査した場合、その反応曲線は一般に成長型の曲線となる。しかし、検査に使用する検体が異常性を有している場合や、計測中の反応容器に攪拌時の気泡などの異物が混入してしまった場合に、異なる形状の反応曲線が得られる可能性がある。例えば、検体によっては、光量の変化量が次第に大きくなったのち、小さくなり、その後、再び大きくなる二段階の反応曲線が得られる場合がある。また、混合液に気泡やその他関連する粒子がしばしば巻き込まれ、気泡および粒子が測定領域を通過し、光量が一時的に変化した結果、反応曲線の途中で光量が短時間で大幅に変化するジャンプ異常、一時的に光量が上下に変動するノイズなどが発生する場合がある。また、反応曲線の後半において、反応速度が零に収束せず、光量が変化し続けるドリフト異常が発生する場合がある。
【0020】
これら全ての異常は、いずれも理想的な成長型の反応曲線から乖離した形状の反応曲線を有するという特徴を有する。そのため、この異常特性に基づき、本発明の制御部121では、時系列光量データから成長型の近似曲線を算出し、時系列光量データと近似曲線の乖離度を表す乖離特徴情報を算出し、この乖離特徴情報を用いて異常を検出および分類する。これにより、前述の異常を含む、凝固検査で発生することが広く知られる異常を、検出および分類することが可能になる。
【0021】
以下、制御部121における処理フローを、図2および図3を参照して説明する。図2は、制御部121における異常の検出および分類に関わる部分の処理ステップを示す図である。図3は、図2のS208で実施される処理のステップを示す図である。以下、図2の各ステップについて説明する。
【0022】
まずステップS201では、制御部121は、記憶部119にあらかじめ記憶されている、光量の時間変化を近似する複数の近似関数の中から、検査項目と試薬の組み合わせに対応した最適な近似関数を選択し取得する。例えば、検査項目と試薬の組み合わせとこれに対応する近似関数をあらかじめ定義しておき、制御部121は、その定義にしたがって最適な近似関数を自動的に選択してもよい。近似関数としては、例えば下記数1に示すロジスティック関数が考えられる。
【0023】
[数1]
y = ymax − yrange/(1+exp(α1(t−α2))
【0024】
数1の式において、tは時間を表し、yは光量値を表し、ymax、yrange、α1、α2はパラメータである。例えば、ymaxは、yの最大値であり、yrangeは、yの値の範囲(yの最大値(ymax)−yの最小値(ymin))である。
【0025】
ステップS202では、制御部121は、一定周期毎に検出器116で検出された光/電流変換データをA/D変換器122とインターフェイス123を経由して、時系列光量データとして取り込む。取り込んだ時系列光量データを監視し、凝固反応が終了したら、ステップS203に進む。凝固反応の終了判定は、一般に広く知られる方法を用いることができる。例えば、時系列光量データの測定時間に閾値を設定する手法や、最新の光量値や光量値の変化量に閾値を設定する手法などによって凝固反応が完了したことを判定することができる。
【0026】
ステップS203では、制御部121は、ステップS201において選択した近似関数によって表現される時間−光量値の近似曲線と、時系列光量データとの差がなるべく小さくなるように、近似関数中のパラメータの値を算出する。例えば、時系列光量データと、近似関数により算出される光量との間の2乗誤差がなるべく小さくなるように、近似関数中のパラメータの値を定める。パラメータ値を算出する手法としては、例えば最小2乗計算方法を最急降下法やニュートン法などと組み合わせて用いることができる。本ステップにより、光量データを最も良く近似する近似曲線が求められる。すなわち、記憶部119が格納している近似関数は、光量データを表す近似曲線を求めるための初期値としての機能を有する。
【0027】
ステップS204では、制御部121は、ステップS203で算出された近似曲線と、時系列光量データとの間の乖離特徴情報を算出する。ここで、乖離特徴情報とは、近似曲線が時系列光量データを近似する程度を表す情報のことであり、スカラー値、もしくはベクトル値として算出される情報である。乖離特徴情報には、例えば、時系列光量データと近似曲線との間の誤差を、時系列光量データ点毎に算出した時系列誤差データを用いることができる。誤差は絶対値ではなく、正負を持つ値として算出した値、例えば、時系列光量データの値から、近似曲線により算出される光量の値を減算して算出した値を用いることできる。以下の本実施例では、時系列光量データの値から近似曲線により算出される光量の値を減算して算出した時系列誤差データを乖離特徴情報として用いる場合を例に説明するが、算出する乖離特徴情報はこれに限定されない。
【0028】
ステップS205では、制御部121は、反応曲線から特徴量を算出する。ここでの反応曲線とは、ステップS202で取込んだ時系列光量データと、ステップS203で算出した近似曲線とを含む。特徴量として、例えば、近似曲線に基づき算出した暫定的な凝固時間を用いることができる。以下では、近似曲線に基づき算出した凝固時間を用いる例を説明するが、特徴量として、ステップS202で取込んだ時系列光量データ(すなわち、生の測定データ)から求めた凝固時間を用いてもよい。なお、凝固時間を算出する手法としては、広く知られている任意の方法を用いることができる。例えば、近似曲線の隣同士のデータ間差分を計算することによって微分データを算出し、その微分データのピーク位置を凝固時間として算出する方法などが考えられる。
【0029】
ステップS206では、制御部121は、ステップS204で算出した乖離特徴情報に基づき、時系列光量データに異常が含まれるか否かを判定する。判定方法の例としては、乖離特徴情報として算出された時系列誤差データに対して、誤差に関する閾値を設定し、閾値以上の誤差を有するデータ点数を算出し、算出したデータ点数と、異常データ点数に関する閾値とを比較して、異常を判定する方法を用いることができる。
【0030】
誤差に関する閾値は、事前に決定した値を用いてよい。また、誤差に関する閾値は、ステップS202で取り込んだ時系列光量データのデータ点数および光量値の範囲に基づいて決定してもよい。また、ステップS205で算出した近似曲線の特徴量に基づいて決定してもよい。また、誤差に関する閾値は、ステップS204で算出した乖離特徴情報に基づいて、例えば、時系列誤差データの部分集合のデータの分散や平均などの値に基づいて決定してもよい。
【0031】
異常データ点数に関する閾値は、事前に決定した値を用いてよい。また、異常データ点数に関する閾値は、ステップS202で取込んだ時系列光量データのデータ点数に基づいて決定してもよい。また、異常データ点数に関する閾値は、ステップS205で算出した近似曲線の特徴量に基づいて決定してもよい。また、ステップS204で算出した乖離特徴情報に基づいて算出してもよい。
【0032】
ステップS207では、制御部121は、ステップS206の異常判定の結果に基づき、その後の処理ステップを決定する。ステップS206で異常と判定されなかった場合、処理を終了する。異常と判定された場合、ステップS208に進む。
【0033】
ステップS208では、制御部121は、ステップS204で算出した乖離特徴情報に基づき、時系列光量データに含まれる異常の種類を分類し、分類した異常に該当する異常コードを記憶部119より読み出す。ここで異常コードとは、予め分類された異常の種類毎に割り当てられたキー情報である。記憶部119には、異常コードと、その異常コードに対応する異常に関する情報とが関連付けて格納されている。分類方法の例としては、記憶部119に予め記憶された決定木に基づき、ステップS204で算出した乖離特徴情報に対して判定処理を繰り返し適用し、時系列光量データに含まれる異常の種類を分類する。時系列誤差データに対する決定木を用いた異常分類処理の処理ステップの例は、図3を用いて後述する。
【0034】
ステップS209では、制御部121は、ステップS208で算出した異常コードをキーとして、記憶部119に記憶される異常に関する情報を読み出し、操作用コンピュータ118やプリンタ124に出力する。ここで、異常に関する情報とは、異常の名称、異常の種類、異常への対処方法(異常の種類に対応した対策)などを含む。したがって、再検査などの次の対応に迅速に移行でき、検査業務の効率化を実現できる。さらに、出力する情報には、サンプル番号や検査項目などの基本情報、ステップS202で取り込んだ時系列光量データに関する情報、ステップS203で算出した近似曲線に関する情報、ステップS204で算出した乖離特徴情報、ステップS205で算出した反応曲線の特徴量に関する情報、ステップS206で判定した異常が含まれるか否かに関する情報、などを含んでもよい。また、出力する情報は、記憶部119に保存してもよい。
【0035】
図14は、操作用コンピュータ118の出力画面の例である。図14の画面は、基本情報表示部1401と、グラフ表示部1402とを含む。基本情報表示部1401には、各サンプルの番号、検査項目、異常コードといった情報が表示される。グラフ表示部1402には、基本情報表示部1401において選択した行に対応する時系列光量データの反応曲線および近似曲線を示すグラフが表示される。図14の例では、基本情報表示部1401の検体番号「0003」の行が選択され、これに対応する時系列光量データの反応曲線および近似曲線を示すグラフと、異常の発生した範囲(異常発生範囲)とが、グラフ表示部1402に表示されている。
【0036】
次に、図3を用いてステップS208の異常分類処理の処理ステップの例を説明する。本異常分類処理は、ステップS204において、制御部121が時系列誤差データを乖離特徴情報として算出した場合に有効な処理の例として説明する。
【0037】
まず、ステップS301では、制御部121は、時系列誤差データに急な変化が存在するか否かを判定する。誤差の急な変化は、あるデータ点の誤差と、それ以降に取得されたデータ点の誤差との間の変化量に閾値を設定することで、検出することができる。閾値は予め設定されたものを用いることができる。このとき、変化量を算出するデータ点の正負が異なるか否かを判定基準に加えても良い。急な変化が存在すると判定された場合は、ステップS308に進む。判定されなかった場合はステップS302に進む。
【0038】
ステップS302では、制御部121は、時系列誤差データを用いて、時系列光量データにおいて異常が発生した時系列上の範囲を算出する。この範囲を以後、異常発生範囲と呼ぶ。異常発生範囲は、時系列誤差データと同じ長さのベクトルであって、各データ点が異常であるか否かを1と0の2値で表現したベクトルで表現することができる。また、異常発生範囲は、異常と定められたデータ点の集合の開始位置と終了位置を定義することでも表現することができる。異常発生範囲の算出方法としては、例えば、時系列誤差データの各データ点の値と、予め設定した閾値を比較し、閾値以上の値を有するデータ点を異常なデータ点と定めた上で、範囲を算出する方法を用いることができる。
【0039】
ステップS303では、制御部121は、ステップS302で算出した異常発生範囲の時系列誤差データの形状に関する特徴量を算出する。以下、特徴量の例について説明する。以下の説明における異常発生範囲には、ステップS302で算出した異常発生範囲全てを用いてもよいし、異常発生範囲を、連続するデータ点を有する範囲に分割し、その一部を用いてもよい。さらに、異常発生範囲に含まれる誤差データの正負に基づき分割し、その一部を用いてもよい。
【0040】
特徴量の1つ目の例を挙げる。異常発生範囲に含まれるデータ点数を特徴量とする。
特徴量の2つ目の例を挙げる。異常発生範囲内の時系列誤差データの平均値、分散値、合計値、最大値、中央値、四分位値、開始位置の誤差値、終了位置の誤差値など、誤差から演算可能な値を特徴量とする。このとき、最大値、中央値、四分位値などを取る時間を特徴量としてもよい。さらに、これら複数の値を組み合わせて、四則演算により算出した値を特徴量としてもよい。
特徴量の3つ目の例を挙げる。異常発生範囲における誤差データに、記憶部119に記憶される近似関数を近似して得たパラメータおよび近似の度合いを表す指標を特徴量とする。近似関数としては、多項式や三角関数に基づく数式などを用いることができる。近似の度合いとしては、最小二乗誤差和や決定係数などを用いることができる。
特徴量の4つ目の例を挙げる。異常発生範囲を分割した各範囲において、上記に説明した特徴量をそれぞれ算出し、それら算出した特徴量を組み合わせて四則演算により算出した値を特徴量としてもよい。
【0041】
ステップS304では、制御部121は、ステップS302で算出した異常発生範囲が反応後半に多く存在するか否かを判定する。判定は、ステップS205で算出した近似曲線の特徴量を用いることで実施できる。例えば、ステップS205で算出した暫定的な凝固時間を基準として、その暫定的な凝固時間よりも後に異常発生範囲が多いかを判定してもよい。異常発生範囲は、暫定的な凝固時間よりも前の時間範囲および暫定的な凝固時間よりも後の時間範囲の両方に出現する場合があり得る。したがって、上記判定により、異常発生範囲が反応後半により多く存在するか否かを判定する。異常発生範囲が後半に多く存在する場合、ステップS307に進む。後半に多く存在しない場合、ステップS305に進む。
【0042】
なお、ステップS304の判定は、これに限定されない。例えば、異常発生範囲が反応の後半のみに存在するか否かを判定してもよい。異常発生範囲は、暫定的な凝固時間よりも前の時間範囲又は暫定的な凝固時間よりも後の時間範囲のいずれかのみに出現する場合もあり得る。この場合、ステップS205で算出した暫定的な凝固時間と、異常発生範囲の開始位置とを比較することで、異常発生範囲が反応の後半のみに存在するか否かを判定することができる。
【0043】
ステップS305では、制御部121は、ステップS302で算出した異常発生範囲が反応前半に多く存在するか否かを判定する。判定は、ステップS205で算出した近似曲線の特徴量を用いることで実施できる。例えば、ステップS205で算出した暫定的な凝固時間を基準として、その暫定的な凝固時間よりも前に異常発生範囲が多いかを判定してもよい。異常発生範囲は、暫定的な凝固時間よりも前の時間範囲および暫定的な凝固時間よりも後の時間範囲の両方に出現する場合があり得る。したがって、上記判定により、異常発生範囲が反応前半により多く存在するか否かを判定する。異常発生範囲が前半に多く存在する場合、ステップS306に進む。前半に多く存在しない場合、ステップS310に進む。
【0044】
なお、ステップS305の判定は、これに限定されない。例えば、異常発生範囲が反応の前半のみに存在するか否かを判定してもよい。異常発生範囲は、暫定的な凝固時間よりも前の時間範囲又は暫定的な凝固時間よりも後の時間範囲のいずれかのみに出現する場合もあり得る。この場合、ステップS205で算出した暫定的な凝固時間と、異常発生範囲の終了位置とを比較することで、異常発生範囲が反応の前半のみに存在するか否かを判定することができる。
【0045】
ステップS306では、制御部121は、ステップS303で算出した特徴量と予め定められた閾値を比較し、異常の種類が二段階反応異常であるかを判定する。特徴量が閾値以上である場合は、ステップS309に、特徴量が閾値以上でない場合は、ステップS310に進む。判定に使用する特徴量としては、例えば、異常発生範囲の誤差の合計値や、各異常発生範囲の誤差の合計値の異常発生範囲間での割合などを用いることができる。
【0046】
ステップS307では、制御部121は、ステップS303で算出した特徴量と予め定められた閾値を比較し、異常の種類がドリフト異常であるかを判定する。特徴量が閾値以上である場合は、ステップS311に、特徴量が閾値以上でない場合は、ステップS310に進む。判定に使用する特徴量としては、例えば、異常発生範囲に一次式を近似して得たパラメータを用いることができる。
【0047】
ステップS308では、制御部121は、ステップS206で検出した異常をジャンプ異常と分類し、ジャンプ異常に対応する異常コード、およびジャンプ異常に関する情報を記憶部119から読み出す。
【0048】
ステップS309では、制御部121は、ステップS206で検出した異常を二段階反応異常として分類し、二段階反応異常に対応する異常コード、および二段階反応異常に関する情報を記憶部119から読み出す。
【0049】
ステップS310では、制御部121は、ステップS206で検出した異常をその他の異常として分類し、その他の異常に対応する異常コード、およびその他の異常に関する情報を記憶部119から読み出す。このように、その他の異常の分類を設定しておくことにより、これまで認識されていなかった異常を把握することが可能となる。この時、さらに特徴量に対してS306およびS307と異なる閾値判定を実施し、その他の異常をさらに分類してもよい。その他の異常としては、例えば、ノイズを含む反応曲線が挙げられる。
【0050】
ステップS311では、制御部121は、ステップS206で検出した異常をドリフト異常として分類し、ドリフト異常に対応する異常コード、およびドリフト異常に関する情報を記憶部119から読み出す。
【0051】
以下、ジャンプ異常、ドリフト異常、二段階反応異常、ノイズ異常を分類する処理を、それぞれ図6図7図8図9図10図11図12図13を用いて説明する。
【0052】
まず、ステップS301でジャンプ異常を分類する処理について説明する。ステップS301の処理を説明するにあたり、本異常の分類時におけるステップS203の近似曲線算出処理と、ステップS204の乖離特徴情報算出処理をそれぞれ、図6図7を用いて説明する。
【0053】
図6は、ステップS203における近似曲線算出処理を、ジャンプ異常を含む時系列光量データに適用した際の処理イメージを示す図である。横軸601は、反応開始からの時間の経過を表し、縦軸602は、光量を表す。点曲線603は、ジャンプ異常を含む時系列光量データを模式的に表わしたデータ点を表す。実曲線604は、算出した近似曲線を表す。
【0054】
点曲線603は、反応中に時間に対して局所的に反応の変化量が変化するジャンプ異常(点線a―b部分)を含む。このような異常を有する時系列光量データに、近似曲線を近似すると、異常の発生した時間および前後の時間において、時系列光量データと近似曲線との乖離が大きくなる。本例では、ジャンプした箇所において、近似曲線と時系列光量データが交わる点が存在する(符合c)。
【0055】
図7は、ステップS203で算出した近似曲線と時系列光量データとの乖離特徴情報として、図6に示した時系列光量データ603と、近似曲線604との間の誤差をステップS204で算出し、プロットした図である。横軸601は、図6と同一の意味を表す。縦軸701は、図6の時系列光量データ603と近似曲線604の間の誤差を表す軸である。点曲線702は、時系列光量データ603と近似曲線604の間の誤差値をプロットしたものである。ここで、点曲線702上の符合a´、b´、c´はそれぞれ、図6の点曲線603上の符号a、b、cの位置のデータ点から算出した誤差値に対応する。
【0056】
図6の点曲線603と図7の点曲線702とを比較すると、点曲線603において異常が発生した領域である点線a−c−b部分が、点曲線702においては、点a´や点b´の箇所の誤差が大きくなった結果、点線a´−c´−b´部分の変化量が、それ以外の範囲と大きく異なる形で、具体的には、急激に値が増加する形で表わされていることが分かる。
【0057】
ステップS301では点曲線702で表わされる時系列の誤差値の変化量に閾値を設定することでジャンプ異常を検出する。点線a´−b´部分のように、他の部分と変化量が大きく変化する領域を抽出することで、ジャンプ異常を分類できる。
【0058】
次に、ステップS304およびステップS307でドリフト異常を分類する処理について説明する。ドリフト異常を分類する処理について説明するにあたり、本異常の分類時におけるステップS203の近似曲線算出処理と、ステップS204の乖離特徴情報算出処理をそれぞれ、図8図9を用いて説明する。
【0059】
図8は、ステップS203における近似曲線算出処理を、ドリフト異常を含む時系列光量データに適用した際の処理イメージを示す図である。加えて、図8には、ステップS205で近似曲線から算出した暫定的な凝固時間も示されている。横軸601と縦軸602は図6と同一の意味を表す。点曲線801は、ドリフト異常を含む時系列光量データを模式的に表わしたデータ点を表す。実曲線802は、算出した近似曲線を表す。破直線803は、近似曲線から算出された暫定的な凝固時間を表す。
【0060】
点曲線801は、凝固反応の後半に、反応速度が小さい値に収束せず、光量が変化しつづける、ドリフト異常を含む。このような異常を有する時系列光量データに、近似曲線を近似すると、ドリフトが発生している時間範囲において、時系列光量データと近似曲線との乖離が大きくなる。
【0061】
図9は、ステップS203で算出した近似曲線と時系列光量データとの乖離特徴情報として、図8に示した時系列光量データ801と、近似曲線802との間の誤差をステップS204で算出し、ステップS302の異常発生範囲算出処理を適用した結果をプロットした図である。加えて、図9には、ステップS205で近似曲線から算出した暫定的な凝固時間も示されている。横軸601は、図6と同一の意味を表す。縦軸701は、図7と同一の意味を表す。点曲線901は、図8の時系列光量データ801と近似曲線802の間の誤差値をプロットしたものである。破直線902および破直線903は、ステップS302において、異常発生範囲を算出するために設定した閾値である。点線d−eは、ステップS302で算出された異常発生範囲である。破直線803は、図8と同一の意味を示す。
【0062】
本例で示すようなドリフト異常においては、点線d−eで表される異常発生範囲と破直線803で表される暫定的な凝固時間を比較すると、異常発生範囲(d−e)が凝固時間803よりも後ろに存在することが分かる。よって、ステップS304により、異常発生範囲の位置を判定することで、異常が後半に多く発生すると判定することができる。
【0063】
さらに、ステップS307で、異常発生範囲における時系列誤差データの特徴量を判定することで、ドリフト異常と判定できる。例えば、点線d−eの傾きや、一次式を回帰したパラメータを特徴量として用いることで、ドリフト異常の度合いを定量化でき、ドリフト異常と判定できる。
【0064】
次に、ステップS305およびステップS306で二段階反応異常を分類する処理について説明する。二段階反応異常を分類する処理を説明するにあたり、本異常の分類時におけるステップS203の近似曲線算出処理と、ステップS204の乖離特徴情報算出処理をそれぞれ、図10図11を用いて説明する。
【0065】
図10は、ステップS203における近似曲線算出処理を、二段階反応異常を有する時系列光量データに適用した際の処理イメージを示す図である。加えて、図10には、ステップS205で近似曲線から算出した暫定的な凝固時間も示されている。横軸601と縦軸602は図6と同一の意味を表す。点曲線1001は、二段階反応異常を含む時系列光量データを模式的に表わしたデータ点を表す。実曲線1002は、算出した近似曲線を表す。破直線1003は近似曲線から算出された暫定的な凝固時間を表す。
【0066】
点曲線1001は、凝固反応の前半に、一度反応速度が小さくなり、その後再び大きくなる、二段階反応異常を含む。このような異常を有する時系列光量データに、近似曲線を近似すると、二段階反応異常が発生している時間範囲において、時系列光量データと近似曲線との乖離が大きくなる。
【0067】
図11は、ステップS203で算出した近似曲線と時系列光量データとの乖離特徴情報として、図10に示した時系列光量データ1001と、近似曲線1002との間の誤差をステップS204で算出し、ステップS302の異常発生範囲算出処理を適用した結果をプロットした図である。加えて、図11には、ステップS205で近似曲線から算出した暫定的な凝固時間も示されている。横軸601は、図6と同一の意味を表す。縦軸701は、図7と同一の意味を表す。点曲線1101は、時系列光量データ1001と近似曲線1002の間の誤差値をプロットしたものである。破直線1102および破直線1103は、ステップS302において、異常発生範囲を算出するために設定した閾値である。点線f−gおよび点線h−iは、ステップS302で算出された異常発生範囲である。破直線1003は図10と同一の意味を示す。
【0068】
本例で示すような二段階反応異常においては、点線f−gおよび点線h−iで表される異常発生範囲と破直線1003で表される暫定的な凝固時間を比較すると、異常発生範囲が凝固時間よりも前に存在することが分かる。よって、ステップS305により、異常発生範囲の位置を判定することで、異常が前半に多く発生すると判定することができる。
【0069】
さらに、ステップS306で、異常発生範囲における時系列誤差データの特徴量を判定することで、二段階反応異常と判定できる。例えば、点線f−gの傾きや、点線h−iの誤差の合計を特徴量として用いることで、二段階反応異常の度合いを定量化でき、二段階反応異常と判定できる。また、各異常発生範囲の誤差の合計値の異常発生範囲間での割合(比率)なども特徴量として算出してもよい。
【0070】
次に、ステップS310でその他の異常としてノイズ異常を分類する処理について説明する。ノイズ異常を分類する処理を説明するにあたり、本異常の分類時におけるステップS203の近似曲線算出処理と、ステップS204の乖離特徴情報算出処理をそれぞれ、図12図13を用いて説明する。
【0071】
図12は、ステップS203における近似曲線算出処理を、ノイズ異常を有する反応曲線に適用した際の処理イメージを示す図である。横軸601と縦軸602は図6と同一の意味を表す。点曲線1201はノイズ異常を含む時系列光量データを模式的に表わしたデータ点を表す。実曲線1202は、算出した近似曲線を表す。
【0072】
点曲線1201は、凝固反応の前半に、光量が上下するノイズ異常を含む。このような異常を有する時系列光量データに、近似曲線を近似すると、ノイズ異常が発生している時間範囲において、時系列光量データと近似曲線との乖離が大きくなる。
【0073】
図13は、ステップS203で算出した近似曲線と時系列光量データとの乖離特徴情報として、図12に示した時系列光量データ1201と、近似曲線1202との間の誤差をステップS204で算出し、ステップS302の異常発生範囲算出処理を適用した結果をプロットした図である。横軸601は、図6と同一の意味を表す。縦軸701は、図7と同一の意味を表す。点曲線1301は、時系列光量データ1201と近似曲線1202の間の誤差値をプロットしたものである。破直線1302および破直線1303は、ステップS302において、異常発生範囲を算出するために設定した閾値である。点線j−kは、ステップS302で算出された異常発生範囲である。
【0074】
本例で示すようなノイズ異常においては、点線j−kで表される異常発生範囲において、形状が鋭くなる傾向がある。そのため、形状を表す特徴量に着目することで、ノイズ異常だと判定することができる。例えば、異常発生範囲(点線j−kの時間軸上での長さ)と異常発生範囲の誤差最大値(図13の点線j−kの範囲でのピークの値)との比率などを用いて、判定することができる。図12及び図13の例では、時間軸上の短い範囲の中で誤差値が突出するようなノイズの例を示したが、ノイズ異常などのその他の異常はこれに限定されない。例えば、時間軸上でより長い範囲で異常発生範囲となるような異常、すなわち、長い時間にわたって近似曲線に対して大きな誤差を有するノイズなども対象としてもよい。
【0075】
以下、第1実施例の変形例について述べる。以上に述べた第1実施例では、制御部121で図2および図3に示す処理を行う例を示したが、装置の他の部分で処理を行うことも可能である。例えば、操作用コンピュータ118内においてソフトウェアとして図2および図3の処理を実行することも可能である。
【0076】
以上に述べた第1実施例では、近似関数、処理途中のデータ、および処理の結果を記憶部119に保存する例を示したが、装置の他の部分に保存することも可能である。例えば、操作用コンピュータ118内部の記憶部を使用することも可能である。
【0077】
以上に述べた第1実施例では、ステップS201において、近似関数として(数1)を用いる例について説明したが、本発明に用いることができる近似関数は(数1)に限定されず、成長曲線型の成長関数を広く用いることができる。ここで述べている成長関数とは、初期は時間に対する変化量が少なく、次第に変化量が大きくなり、後期は再び変化量が少なくなる形状を有することを特徴とする関数のことである。例えば、成長関数の一例は、時刻に対する測定値の変化量が次第に大きくなる第1領域と、前記第1領域よりも後の時刻において時刻に対する測定値の変化量が前記第1領域よりも小さい第2領域とを有する関数である。具体的な成長曲線型の関数の例として、ロジスティック関数、ゴンペルツ関数、ヒル関数などがある。また、前記成長関数の項の一部を累乗、もしくは前記成長関数に時間に関する非線形式を乗算、もしくは前記成長関数に時間に関する非線形式を加算、もしくは前記成長関数の入力値を事前に非線形式により非線形変換した関数などを用いてもよい。前記非線形式には、例えば、多項式などを用いることができる。
【0078】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS202において、取り込んだ時系列光量データをそのまま使用する例を説明したが、取り込んだ時系列光量データの光量値にあらかじめ平滑化フィルタを適用し、平滑化後の時系列光量データを用いてもよい。平滑化フィルタとしては、移動平均フィルタ、中央値フィルタなど、公知の平滑化手法を広く適用することができる。
【0079】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS203において、近似曲線と時系列光量データとの差がなるべく小さくなるように、近似関数中のパラメータの値を算出する例について説明したが、パラメータの値の算出方法はこれに限定されず、近似曲線と時系列光量データとの差以外の指標を小さく、もしくは大きく、あるいはある特定の値に近づくように、近似関数中のパラメータの値を算出することができる。例えば、時系列光量データの一部のデータだけを選択し、それらのデータと近似曲線との差がなるべく小さくなるようにパラメータの値を算出してもよい。また、時系列光量データのデータ点毎に異なる重みを定義し、各データ点と近似曲線との差にそれぞれ重みを掛け合わせた指標がなるべく小さくなるようにパラメータの値を算出してもよい。また、各パラメータの目標値との乖離状態を指標として用いてもよい。
【0080】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS204において、乖離特徴情報として、時系列光量データと近似曲線との間の時系列の誤差データ(時系列誤差データ)を算出する例を説明したが、これ以外の情報を用いてもよい。例えば、誤差の絶対値の時系列データを用いてもよいし、誤差の和を用いてもよい。また近似の度合いを表す決定係数を用いてもよい。またこれら指標を複数組み合わせたベクトルでもよい。
【0081】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS205において、近似曲線に基づき算出した暫定的な凝固時間を特徴量として扱う例を説明したが、これ以外の特徴量を用いてもよい。例えば、取得した近似曲線に該当する近似関数中のパラメータや、近似曲線に基づき算出した反応終了時間などを用いてもよい。また、生のデータである時系列光量データから、最大値、データ長、凝固時間、あるいは反応終了時間などを計算して用いてもよい。
【0082】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS206において、閾値以上の誤差を有するデータ点数を算出し、算出したデータ点数と、異常データ点数に関する閾値とを比較して、異常を判定する例を説明したが、異常判定方法はこれに限定されない。例えば、誤差の絶対値に閾値を設定して閾値判定してもよいし、誤差の正負の値それぞれに異なる閾値を設定して閾値判定してもよい。これにより、例えば、近似曲線の上部に存在するデータ点のみに基づき、異常を判定する、といった変形例も実現されうる。また、時系列光量データと近似曲線との二乗誤差和や決定係数などの値に閾値を設けて判定してもよい。
【0083】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS208おいて、図3に示される決定木を用いて異常の分類を実施したが、異常の分類に用いる決定木は図3で示したものに限定されない。例えば、各異常の分類を独立で評価する決定木を複数用いて分類を実施してもよいし、異なる決定木を用いて分類を実施してもよい。
【0084】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS208において、記憶部119に予め記憶された決定木に基づき、ステップS204で算出した乖離特徴情報に対して判定処理を繰り返し適用し、時系列光量データに含まれる異常の種類を分類する例を説明したが、異常の分類方法はこの方法に限定されない。例えば、記憶部119は、任意の次元数の空間定義、および各異常コードに対応付けられた任意数のベクトルを記憶しており、制御部121は、ステップS204で算出した乖離特徴情報を線形写像もしくは非線形写像により上記の空間に写像した後、既存の分類手法により異常コードを決定してもよい。分類手法としては、例えば再近傍探索法、k近傍法、サポートベクトル分類器、などの公知の手法を用いることができる。また例えば、記憶部119は、乖離特徴情報、もしくは乖離特徴情報を線形写像もしくは非線形写像により変換した任意次元のベクトルを引数にとり、各異常コードに対応する値を返す評価用関数を記憶しており、制御部121は、ステップS204で算出した乖離特徴情報、または乖離特徴情報を線形写像もしくは非線形写像したベクトルを、評価用関数を用いて分類してもよい。評価用関数としては、ニューラルネットワークなど公知の手法を用いることができる。
【0085】
すなわち、分類処理の変形例として、記憶部119が、(1)異常の種類と対応付けられた少なくとも1つ以上の任意次元ベクトル、(2)異常の種類と対応付けられた少なくとも1つ以上の任意次元空間内の識別境界、(3)異常の種類と対応付けられた少なくとも1つ以上の任意次元空間内の部分空間、(4)任意次元ベクトルを引数とし、異常の種類と対応付けられた値を出力値とする評価関数、のいずれかを記憶し、制御部121は、乖離特徴情報を線形または非線形の写像により、任意次元のベクトル特徴情報に変換し、前記任意次元ベクトル、前記識別境界、前記部分空間、または前記評価関数の出力値に基づいて異常の種類を分類してもよい。このように決定木以外の手法により、測定値のデータの特徴量を任意の異常パターンに当てはめて、異常の分類を行うことが可能となる。
【0086】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS302において、時系列誤差データの各データ点の値と、予め設定した閾値を比較し、閾値以上の値を有するデータ点を異常なデータ点と定めた上で、異常発生範囲を算出する例を説明したが、異常発生範囲の算出方法はこれに限定されない。例えば、誤差の絶対値に閾値を設定して閾値判定したデータ点を異常なデータ点と定めて異常発生範囲を算出してもよいし、誤差の正負の値それぞれに異なる閾値を設定して閾値判定したデータ点を異常なデータ点と定めて異常発生範囲を算出してもよい。
【0087】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS303において、異常発生範囲の時系列誤差データの形状に関する特徴量を算出する例を説明したが、この特徴量は、時系列誤差データ全体を用いて、算出してもよい。
【0088】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS206で異常を判定し、ステップS208で異常を分類する処理を実施する例を説明したが、これらの処理を同一のステップでまとめて実施してもよい。例えば、記憶部119は、正常反応に対応するコードを予め記憶しておき、制御部121は、ステップS206およびステップS207を何の処理も実施せずに通過し、ステップS208において、異常分類を実施する際に異常の判定も同時に実施し、異常の発生していない検体に関しては、正常反応に対応するコードを読み出してもよい。
【0089】
以上に述べた第1実施例では、制御部121は、ステップS208において、分類した異常の種類に基づき、記憶部119に記憶された異常コードを読み出して、ステップS209においてその内容を出力する例を説明したが、これに限定されまい。上記以外の情報をステップS208で算出してもよく、さらにステップS209でその情報を出力してもよい。例えば、ステップS208において、異常分類の確実性を表す指標を合わせて算出し、ステップS209において出力してもよい。異常分類の確実性を表す指標は、例えば、特徴量と閾値の値との間の関係性に基づき算出することができる。特徴量の値が、閾値を大きく超える場合は、異常分類の確実性を高いと判断し、閾値付近の場合は、異常分類の確実が低いと判断することができる。これらの指標は確実性が高い/低いといった定性的な情報として算出および出力してもよいし、閾値を超える量に基づき、定量的な値、例えば確実性を表す百分率の値などを算出および出力してもよい。
【0090】
以上に述べた第1実施例では、ステップS209において、時系列光量データの凝固反応曲線と近似曲線と異常の発生した範囲を、出力画面上の同じ図に出力したが、これらは別々の図に出力してもよい。また、異常発生範囲を、見分けがつくように、例えば色を変更したり、データ点の形状を変えて出力してもよい。また、出力内容も図14の例に限定されない。操作用コンピュータ118やプリンタ124などの出力部は、(1)第1軸を時間、第2軸を光量値として出力した時系列光量データ、(2)第1軸を時間、第2軸を光量値として出力した近似曲線、(3)乖離特徴情報、(4)分析の結果(例えば、血液凝固時間など)、(5)近似関数の式、(6)異常の検出の結果(異常が検出されたか否かの情報)、(7)異常の分類の結果(異常コードなどの情報)、(8)異常への対応処理の情報(各異常に対する対処方法の情報)の少なくとも1つを出力してもよい。
【0091】
以上に述べた第1実施例では、二段階反応、ドリフト反応、ジャンプ反応、ノイズなどの異常について説明したが、この異常に限定されない。検出および分類される異常は、例えば、(1)時系列のデータにおける測定値(例えば、光量値)の変化量が急に増加または減少する異常、(2)時系列のデータにおける測定値の変化量が一度増加して減少した後、再び増加する異常、(3)時系列のデータにおける測定値の変化量が、一定の値または所定の範囲内に留まる異常(すなわち、測定値が収束しない異常など)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0092】
以上に述べたように、本発明の第1実施例では、時系列光量データの近似曲線を算出し、時系列光量データと近似曲線との乖離特徴情報を算出し、乖離特徴情報を分析することにより、血液凝固反応に特有な二段階反応、ドリフト反応、ジャンプ反応、ノイズなどの異常を検出および分類でき、異常に関する情報の提示が可能になる。
【0093】
[第2実施例]
本発明の第2実施例では、異常を分類する手法について、第1実施例とは異なる動作例を説明する。自動分析装置の構成は第1実施例と同様であるため、以下では制御部121の動作に関する差異点を中心に説明する。
【0094】
本実施例2において、制御部121は、検体毎に取得した時系列光量データまたは時系列光量データの近似曲線から取得した情報を用いて、乖離特徴情報を正規化する。一般に、凝固検査において取得される反応曲線は、その検体に含まれる対象物質の濃度に応じて、反応速度や光量の変化量が異なる特徴を有する。本実施例では、時系列光量データと近似曲線から取得した乖離特徴情報を正規化することで、それら反応曲線形状の違いを有する検体が混在した場合においても、異常を正確に分類可能な自動分析装置を提供する。
【0095】
図4は、第2実施例において制御部121が異常の検出および分類を実施する処理フローを示す図である。図4に示す処理フローにおいて、第1実施例の図2で説明したものと同じステップについては、同じステップ番号を付した。すなわち、ステップS201からステップS205までの処理、ステップS206からステップS209までの処理は、図2と同一であるので、説明を省略する。第2実施例においては、ステップS205とステップS206との間にステップS401が導入される。制御部121は、ステップS401において、ステップS204で算出した乖離特徴情報を正規化する。正規化は、ステップS205で算出した反応曲線特徴量を用いて実施する。
【0096】
以下、正規化方法の例を説明する。正規化方法の1つ目の例は、時間情報を有する乖離特徴情報に対する時間軸方向の正規化である。時間情報を有する乖離特徴情報としては、例えば、時系列光量データと近似曲線との間の誤差を、時系列光量データ点毎に算出した時系列誤差データがある。この場合の時間情報は、時系列誤差データに含まれる各データ点が有するデータの計測時間である。正規化方法としては、例えば、ステップS205で近似曲線から算出した暫定的な凝固時間を用いて、乖離特徴情報が有する時間情報を除算し、時間情報を、暫定的な凝固時間に対する割合となるように変換する方法がある。
【0097】
正規化方法の2つ目の例は、光量情報を有する乖離特徴情報に対する光量軸方向の正規化である。光量情報を有する乖離特徴情報としては、例えば、時系列光量データと近似曲線との間の誤差を、時系列光量データ点毎に算出した時系列誤差データがある。この場合の光量情報は、時系列誤差データに含まれる各データ点が有する誤差値である。正規化方法としては、例えば、ステップS205で近似曲線から算出した光量最大値を用いて、乖離特徴情報が有する光量情報を除算し、光量情報を、光量最大値に対する割合となるように変換する方法がある。
【0098】
以下、図15図16図17図18を用いて、第2実施例における乖離特徴情報の正規化の例と効果について説明する。本説明では、乖離特徴情報として、ステップS204で時系列誤差データを算出し、ステップS205で、反応曲線特徴量として、近似曲線から暫定的な凝固時間と、反応終了時の光量値を算出し、ステップS401で、時間軸方向の正規化と光量軸方向の正規化を連続して実施する例を説明する。
【0099】
まず、図15図16を用いて、反応曲線形状が検体毎に異なるときに、乖離特徴情報がその影響を受ける場合があることを示す。図15は、異なる2つの検体から、それぞれステップS202で取得した時系列光量データおよびステップS203で取得した近似曲線を同時に示したイメージ図である。いずれの時系列光量データも、反応後半に反応速度が零にならないドリフト異常を有している。横軸601と縦軸602は図6と同一の意味を表す。点曲線1501は、1つ目の検体から取得したドリフト異常を含む時系列光量データを模式的に表したデータ点を表す。実曲線1502は、点曲線1501で表した時系列光量データから算出した近似曲線を表す。点曲線1503は、2つ目の検体から取得したドリフト異常を含む時系列光量データを模式的に表わしたデータ点を表す。実曲線1504は、点曲線1503で表わした時系列光量データから算出した近似曲線を表す。
【0100】
図16は、ステップS203で算出した近似曲線と時系列光量データとの乖離特徴情報として、図15に示した時系列光量データ1501と、近似曲線1502との間の時系列誤差データをステップS206で算出した結果と、時系列光量データ1503と、近似曲線1504との間の時系列誤差データをステップS206で算出した結果とを同時に示したイメージ図である。横軸601は、図6と同一の意味を表す。縦軸701は、図7と同一の意味を表す。点曲線1601は、時系列光量データ1501と近似曲線1502の間の誤差値をプロットしたものである。点曲線1602は、時系列光量データ1503と近似曲線1504の間の誤差値をプロットしたものである。
【0101】
図15および図16より、時系列光量データ1501と時系列光量データ1503はいずれも同様のドリフト異常を有するものの、それらから算出した乖離特徴情報1601と1602は、時間軸方向および光量軸方向のスケールが異なるため、異なる形状を有していることが分かる。
【0102】
次に、図17図18を用いて、正規化を適用した場合について説明する。図17は、図16に示した時系列誤差データに、時間軸方向の正規化を実施した結果を示すイメージ図である。ここでは、それぞれの検体で算出した暫定的な凝固時間を用いて、正規化を実施した例を示す。具体的には、時系列誤差データの各データ点の取得時間を、暫定的な凝固時間で除算することで、暫定的な凝固時間に対する割合として表現した例を示す。点曲線1701は、点曲線1601で表わされた時系列誤差データを、破直線1505で表わされた暫定的な凝固時間を用いて正規化した時系列誤差データである。
【0103】
点曲線1702は、点曲線1602で表わされた時系列誤差データを、破直線1506で表わされた暫定的な凝固時間を用いて正規化した時系列誤差データである。横軸1703は、反応開始からの時間の経過を、各検体の暫定的な凝固時間との割合として表す軸である。破直線1704は、近似曲線1502および近似曲線1504から算出された暫定的な凝固時間を正規化処理した後の線を示す。縦軸701は、図7と同一の意味を表す。
【0104】
図18は、図17に示した、時間軸方向の正規化を実施した時系列誤差データに、さらに光量軸方向の正規化を実施した結果を示すイメージ図である。ここでは、それぞれの検体から算出した反応終了時の光量値を用いて、正規化を実施した例を示す。具体的には、時系列誤差データの各データ点の誤差値を、反応終了時の光量値で除算することで、反応終了時の光量値に対する割合として表現した例を示す。点曲線1801は、点曲線1701で表わされた時系列誤差データを、近似曲線1502から算出した反応終了時の光量値を用いて正規化した時系列誤差データである。点曲線1802は、点曲線1702で表わされた時系列誤差データを、近似曲線1504から算出した反応終了時の光量値を用いて正規化した時系列誤差データである。縦軸1803は、時系列光量データと近似曲線との間の誤差を、反応終了時の光量値との割合として表す軸である。横軸1703および破直線1704は、図17と同一の意味を示す。
【0105】
図18に示すように、正規化を実施することにより、点曲線1801および点曲線1802は、時間軸方向および光量軸方向のスケールの差が緩和された結果、類似した形状として取得されていることが分かる。正規化を実施することにより、ステップS206の乖離特徴情報に基づく異常判定およびステップS208の乖離特徴情報に基づく異常分類において、扱う特徴量や閾値などを、異なる濃度帯の検体を対象とする場合においても、統一的な枠組みで扱うことができ、異常検出および異常分類を正確に実施することができる。
【0106】
以下、第2実施例の変形例について述べる。以上に述べた第2実施例では、ステップS401において、近似曲線から算出した暫定的な凝固時間を用いて、時間軸方向の正規化を実施する例を説明したが、正規化に用いる値はこれに限定されない。例えば、近似曲線から算出した反応終了時間やパラメータなど、近似曲線から算出可能な特徴量を広く用いることができる。また、時系列光量データから算出した凝固時間、反応終了時間など、時系列光量データから算出可能な特徴量を広く用いることもできる。
【0107】
以上に述べた第2実施例では、ステップS401において、近似曲線から算出した反応終了時の光量値を用いて、光量軸方向の正規化を実施する例を説明したが、正規化に用いる値はこれに限定されない。例えば、近似曲線から算出したパラメータなど、近似曲線から算出可能な特徴量を広く用いることができる。また、時系列光量データから算出した光量の最大値や平均値や中央値など、時系列光量データから算出可能な特徴量を広く用いることもできる。
【0108】
以上に述べた第2実施例では、ステップS401において、正規化を、ある特定の値に対する割合を算出することで実施する例を説明したが、正規化の方法はこれに限定されない。例えば、ある特定の値を底にした対数変換など、任意の線形変換あるいは非線形変換を用いることができる。
【0109】
以上に述べた第2実施例では、ステップS401において、時間軸方向および光量軸方向の正規化を行う例を説明したが、正規化の対象はこれらに限定されない。例えば、乖離特徴情報として二乗誤差に基づく情報を算出していた場合、反応曲線の特徴量として、時系列光量データと近似曲線とから二乗誤差に関する特徴量を算出し、これを用いて正規化することができる。
【0110】
以上のように、第2実施例に係る自動分析装置は、検体毎に取得した時系列光量データまたは時系列光量データの近似曲線から取得した情報を用いて、乖離特徴情報を正規化することで、検体毎の反応曲線形状の違いを有する検体が混在した場合においても、異常を正確に分類することができる。
【0111】
[第3実施例]
本発明の第3実施例では、異常を分類する手法について、第1実施例及び第2実施例とは異なる動作例を説明する。自動分析装置の構成は第1実施例、第2実施例と同様であるため、以下では制御部121の動作に関する差異点を中心に説明する。
【0112】
第3実施例において、制御部121は、凝固反応が終了したかを判定する反応終了判定処理と異常判定および異常分類処理を繰り返し実施する。従来、反応に異常が起きたか否かの判定は、作業者が測定終了後に実施する必要があった。しかし、作業者が計測中に異常の発生の検知および異常の種類の把握ができれば、再検査などの次の対応に迅速に移行でき、検査業務の効率化を実現できる。そこで、第3実施例では、反応終了判定と、異常の判定および分類を繰り返し実施することにより、計測中に反応の異常を検知し、さらに異常の種類を分類し、作業者に提示する。これにより、作業者は、計測中の反応からも異常の発生および種類を把握することができる。
【0113】
図5は、第3実施例において制御部121が異常の検出および分類を実施する処理フローを示す図である。図5に示す処理フローにおいて、第1実施例の図2で説明したもの、および第2実施例の図4で説明したものと同じステップについては、同じステップ番号を付した。すなわち、ステップS201の処理、ステップS203からステップS208までの処理は、図2と同一であるので、説明を省略する。ステップS401の処理は、図4と同一であるので、説明を省略する。
【0114】
本実施例においては、ステップS201とステップS203の間に、ステップS202に代わって、ステップS501が導入されている。また、ステップS207から分岐した後に、ステップS502とステップS503が導入されている。さらに、ステップS209の代りに、ステップS504とステップS505が導入されている。
【0115】
まず、ステップS501では、制御部121は、一定周期毎に検出器116で検出された光/電流変換データを、A/D変換器122とインターフェイス123を経由して、時系列光量データとして取り込む。所定のデータ数を取り込んだら、ステップS203に進む。なお、ステップS501は、後述するステップS503の判定結果に応じては、2回以上実施される場合がある。その際、所定のデータ数を取り込んだか否かの判定は、ステップS501を開始してから新たに取り込んだデータ点数を用いて実施してもよいし、処理を開始してから、これまでにステップS501で取り込んだデータ点の合計数を用いて実施してもよい。
【0116】
ステップS502では、ステップS501で取り込んだ時系列光量データ、及びステップS205で算出した反応曲線特徴量を用いて、凝固反応の終了を判定し、ステップS503に進む。凝固反応の終了判定は、一般に広く知られる方法を用いることができる。例えば、時系列光量データの測定時間に閾値を設定する、最新の光量値の変化量に閾値を設定する、近似曲線のパラメータに閾値を設定する、などの手法によって凝固反応が完了したことを判定することができる。
【0117】
ステップS503では、ステップS502の判定結果が、凝固反応の終了を示すものであった場合は、処理を終了する。そうでない場合は、ステップS501に進む。
【0118】
ステップS504では、ステップS208で算出した異常コードをキーとして、記憶部119に記憶される異常に関する情報を読み出し、操作用コンピュータ118やプリンタ124に出力する。出力する情報は第1実施例で説明したものを用いることができる。出力結果は、検査作業中の作業者に通知するため、例えば、警告音や画面に異常を知らせる警告画面などで出力してもよい。
【0119】
ステップS505では、ステップS208で分類された異常の種類に応じて、計測を終了すべきか判定し、終了しない場合は、反応終了判定ステップS502に進む。例えば、記憶部119には、異常コードと、計測を終了すべきかを示す情報(フラグなど)とが対応づけて格納されており、制御部121は、この情報に基づいて、計測を終了すべきかを判定してもよい。なお、ステップS504において、ユーザに異常を通知した際に、ユーザ側に計測を終了するか、あるいは継続するかを選択させるようにしてもよい。
【0120】
以下、図19および図20を用いて、第3実施例における異常の検出および分類の効果について説明する。本説明では、乖離特徴情報として、ステップS204で時系列誤差データを算出する例を説明する。
【0121】
図19は、ステップS203における近似曲線処理を、時系列光量データ取込みステップS501で取り込んだ時系列光量データに対して適用した際の処理イメージを示す図である。加えて、図19には、ステップS205で近似曲線から算出した暫定的な凝固時間も示されている。ここで、時系列光量データには、光量が急に変化するジャンプ異常(点線l―m部分)が発生している。横軸601と縦軸602は図6と同一の意味を表す。点曲線1901はジャンプ異常を含む時系列光量データを模式的に表わしたデータ点を表す。実曲線1902は、算出した近似曲線を表す。破直線1903は、ステップS205において算出した暫定的な凝固時間を表す。
【0122】
図20は、ステップS203で算出した近似曲線と時系列光量データとの乖離特徴情報として、図19に示した時系列光量データ1901と近似曲線1902との間の誤差をステップS204で算出し、プロットした図である。横軸601は図6と同一の意味を表す。縦軸701は図7と同一の意味を表す。破直線1903は図19と同一の意味を表す。
【0123】
時系列光量データ1901はまだ反応が継続しているデータ点までしか取り込めておらず、凝固反応は終了していないが、点曲線2001の乖離特徴情報には、異常(点線l´―m´部分)が大きな変化量を有する領域として表わされていることが分かる。このように、時系列光量データと近似曲線との乖離特徴情報を用いることで、反応途中のデータからでも、ステップS206における異常判定およびステップS208における異常分類を行うことができる。
【0124】
さらに、凝固時間などの情報は、近似曲線や反応途中の時系列光量データからでも取得可能であるため、ステップS401の正規化処理を反応途中の曲線に対しても同様に適用でき、濃度帯の異なる検体由来の反応曲線に関しても、正確な分類を実施することが可能となる。
【0125】
以下、第3の実施例の変形例について述べる。以上に述べた第3実施例では、ステップS401において、正規化を実施する例を説明したが、正規化処理は必ずしも必要でなく、実施しなくてもよい。
【0126】
以上に述べた第3実施例では、ステップS504において、ステップS208で算出した異常コードをキーとして、記憶部119に記憶される異常に関する情報を読み出し、出力する例を説明したが、これ以外の情報を出力しても良い。例えば、ステップS208において算出した異常分類の確実性を表す指標を、各異常判定および異常分類処理実施後に出力してもよい。これにより、異常発生が確定する前に、異常発生の兆候を作業者に提示することが可能となる。
【0127】
以上のように、第3実施例に係る自動分析装置は、計測中に、反応終了判定と、異常の判定および分類を繰り返し実施することにより、計測中に反応の異常を検知し、さらに異常の種類を分類し、作業者に提示することができる。
【0128】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることもできる。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
【0129】
上記で説明した制御部121の機能、処理手段などは、それらの一部あるいは全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の制御部121の機能、処理手段などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVDなどの記憶媒体に置くことができる。
【0130】
また、図面における制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0131】
101 サンプル分注部
102 サンプルディスク
103 サンプル容器
104 反応容器
105 サンプル用シリンジポンプ
106 試薬分注部
107 試薬ディスク
108 試薬容器
109 試薬昇温部
110 試薬用シリンジポンプ
111 反応容器ストック部
112 反応容器搬送部
113 検出部
114 反応容器設置部
115 光源
116 検出器
117 反応容器廃棄部
118 操作用コンピュータ
119 記憶部
120 入力部
121 制御部
122 A/D変換器
123 インターフェイス
124 プリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20