特開2015-214770(P2015-214770A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧
特開2015-214770スチールコードおよびその製造方法並びにコンベヤベルト
<>
  • 特開2015214770-スチールコードおよびその製造方法並びにコンベヤベルト 図000004
  • 特開2015214770-スチールコードおよびその製造方法並びにコンベヤベルト 図000005
  • 特開2015214770-スチールコードおよびその製造方法並びにコンベヤベルト 図000006
  • 特開2015214770-スチールコードおよびその製造方法並びにコンベヤベルト 図000007
  • 特開2015214770-スチールコードおよびその製造方法並びにコンベヤベルト 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-214770(P2015-214770A)
(43)【公開日】2015年12月3日
(54)【発明の名称】スチールコードおよびその製造方法並びにコンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20151106BHJP
   B65G 15/34 20060101ALI20151106BHJP
   B65G 15/30 20060101ALN20151106BHJP
【FI】
   D07B1/06 Z
   B65G15/34
   B65G15/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-97996(P2014-97996)
(22)【出願日】2014年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】末藤 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】笹熊 英博
(72)【発明者】
【氏名】侯 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮島 純
【テーマコード(参考)】
3B153
3F024
【Fターム(参考)】
3B153AA14
3B153CC52
3B153EE01
3B153EE11
3B153FF12
3F024CA02
3F024CA04
3F024CB03
3F024CB10
3F024CB13
(57)【要約】
【課題】埋設されているスチールコードに起因するゴム製品の使用時に生じるヒステリシスロスを低減させることができるスチールコードおよびその製造方法並びにこのスチールコードが心体として埋設されたコンベヤベルトを提供する。
【解決手段】芯ストランド2の外周面に複数本の側ストランド3を撚り合わせる際に、芯ストランド2を構成する素線2aの撚り方向と、側ストランド3を構成する素線3aの撚り方向と、芯ストランド2の外周面に撚り合わせる複数本の側ストランド3の撚り方向とを同じ撚り方向に設定してストランド構造を形成した後、ゴム製品に埋設される前に、このスチールコード1に対して、スチールコード1の引張り切断荷重の10%以上70%以下のテンションを付与し、その後、このスチールコード1を多数本横並び状態で心体4としてコンベヤベルト7に埋設する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯ストランドの外周面に複数本の側ストランドを撚り合わせたストランド構造を有し、ゴム製品に埋設されて使用されるゴム補強用のスチールコードにおいて、
前記ストランド構造が形成された後、ゴム製品に埋設される前に、このスチールコードの引張り切断荷重の10%以上70%以下のテンションが付与されていることを特徴とするスチールコード。
【請求項2】
前記テンションの付与回数が、2回以上5回以下である請求項1に記載のスチールコード。
【請求項3】
前記テンションの大きさが、付与される順に大きくなっている請求項2に記載のスチールコード。
【請求項4】
前記テンションを付与する1回あたりの時間が、5分以上40分以下である請求項1〜3のいずれかに記載のスチールコード。
【請求項5】
芯ストランドの外周面に複数本の側ストランドを撚り合わせてストランド構造を形成して、ゴム製品に埋設されて使用されるゴム補強用のスチールコードを製造するスチールコードの製造方法において、
前記ストランド構造を形成した後、ゴム製品に埋設される前に、このスチールコードに対して、このスチールコードの引張り切断荷重の10%以上70%以下のテンションを付与することを特徴とするスチールコードの製造方法。
【請求項6】
前記テンションを、2回以上5回以下付与する請求項5に記載のスチールコードの製造方法。
【請求項7】
前記テンションの大きさを、付与する順に大きくする請求項6に記載のスチールコードの製造方法。
【請求項8】
前記テンションを、1回あたり5分以上40分以下で付与する請求項5〜7のいずれかに記載のスチールコードの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のスチールコードが、多数本横並び状態で心体として埋設されていることを特徴とするコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品に埋設されて使用されるスチールコードおよびその製造方法並びにコンベヤベルトに関し、さらに詳しくは、埋設されているスチールコードに起因するゴム製品の使用時に生じるヒステリシスロスを低減させることができるスチールコードおよびその製造方法並びにこのスチールコードが心体として埋設されたコンベヤベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、コンベヤベルト、ゴムホース等のゴム製品には、補強材としてスチールワイヤを撚り合わせたスチールコードが使用されている。例えば、芯ストランドの外周面に複数本の側ストランドを撚り合わせたストランド構造のスチールコードが使用されている(例えば、特許文献1参照)。ゴム製品を製造する際には、多数本のスチールコードが配列されて形成された補強層を未加硫ゴム部材に埋設して成形体を形成し、次いで、この成形体を加硫工程において所定温度で加熱しつつ所定圧力で加圧して未加硫ゴムを加硫する。これにより、スチールコード補強層が埋設されたゴム製品が完成する。
【0003】
ゴム製品の使用時には、埋設されたスチールコードには引張力や圧縮力が作用する。本願発明者らは、芯ストランドの外周面に複数本の側ストランドを撚り合わせたストランド構造のスチールコードの場合、スチールコードを構成する素線(スチールワイヤ)どうしの間で生じる滑りが、ゴム製品の使用時に生じるヒステリシスロスに影響することを見出した。
【0004】
例えば、ゴム製品がコンベヤベルトの場合、使用時のヒステリシスロスが大きいと稼働に要する電力が増大するという問題がある。そこで、本願発明者らは、上述の知見に基づいて種々の検討を行なうことにより、埋設されているスチールコードに起因するゴム製品の使用時に生じるヒステリシスロスを低減させることができる本発明を創作した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−36539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、埋設されているスチールコードに起因するゴム製品の使用時に生じるヒステリシスロスを低減させることができるスチールコードおよびその製造方法並びにこのスチールコードが心体として埋設されたコンベヤベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のスチールコードは、芯ストランドの外周面に複数本の側ストランドを撚り合わせたストランド構造を有し、ゴム製品に埋設されて使用されるゴム補強用のスチールコードにおいて、前記ストランド構造が形成された後、ゴム製品に埋設される前に、このスチールコードの引張り切断荷重の10%以上70%以下のテンションが付与されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のスチールコードの製造方法は、芯ストランドの外周面に複数本の側ストランドを撚り合わせてストランド構造を形成して、ゴム製品に埋設されて使用されるゴム補強用のスチールコードを製造するスチールコードの製造方法において、前記ストランド構造を形成した後、ゴム製品に埋設される前に、このスチールコードに対して、このスチールコードの引張り切断荷重の10%以上70%以下のテンションを付与することを特徴とする。
【0009】
本発明のコンベヤベルトは、上記のスチールコードが多数本横並び状態で心体として埋設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスチールコードおよびその製造方法によれば、ストランドを撚り合わせてストランド構造を形成した後、ゴム製品に埋設される前に、このスチールコードの引張り切断荷重の10%以上70%以下のテンションが付与されることで、スチールコードを構成する素線どうしのすき間が、テンションを付与する前よりも小さくなった状態でクセ付けされる。これにより、ゴム製品の使用時に、埋設されているスチールコードに起因するヒステリシスロスを低減させることができる。
【0011】
本発明のコンベヤベルトによれば、上記のスチールコードが多数本横並び状態で心体として埋設されているので、コンベヤベルト稼動時のヒステリシスロスが低減して、稼動に要する電力を抑制することができる。即ち、従来に比して少ない電力でコンベヤベルトを稼動させることができるので、消費エネルギーの削減に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のスチールコードを例示する横断面図である。
図2図1のスチールコードを例示する斜視図である。
図3】本発明のコンベヤベルトの横断面図である。
図4図3のコンベヤベルトの平面図である。
図5】スチールコードにテンションを付与する工程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のスチールコードおよびその製造方法並びにコンベヤベルトを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1に例示する本発明のスチールコード1は、ゴム製品に埋設されて使用されるゴム補強用のスチールコード1である。この実施形態では、スチールコード1は、芯ストランド2の外周面に複数本の側ストランド3を撚り合わせたストランド構造であり、いわゆる7×7構造である。このスチールコード1は、1本の芯ストランド2の外周に6本の側ストランド3が撚り合わされて形成されている。芯ストランド2は、中心の1本の素線2aのまわりに6本の素線2aを撚り合わせて形成されている。側ストランド3は、中心の1本の素線3aのまわりに6本の素線3aを撚り合わせて形成されている。素線2a、3aはスチールワイヤである。
【0015】
この実施形態では、芯ストランド2を構成する素線2aの撚り方向と、側ストランド3を構成する素線3aの撚り方向と、芯ストランド2の外周面に撚り合わせる側ストランド3の撚り方向とは同じ撚り方向になっている。それぞれの素線2a、3aの外径は0.2mm〜1.0mm程度である。
【0016】
本発明のスチールコード1は7×7構造に限らずストランド構造であればよい。その他に、7×19構造、19+7×7構造、7×W(19)構造等を採用することもできる。また、素線2aの撚り方向、素線3aの撚り方向および側ストランド3の撚り方向はすべて同じ方向に限らず、異なる方向にすることもでき、それぞれを任意の撚り方向に設定することができる。
【0017】
このスチールコード1は、ストランド構造が形成された後、後述するコンベヤベルト7等のゴム製品に埋設される前に、このスチールコード1の引張り切断荷重の10%以上70%以下のテンションTが付与されている。スチールコード1の引張り切断荷重は、実験や計算等に基づいて予め設定されている。
【0018】
図3図4に例示する本発明のコンベヤベルト7は、本発明のスチールコード1が、多数本横並び状態で心体4として埋設されている。多数本のスチールコード1は、コンベヤベルト7の長手方向に引き揃えられた状態で、上カバーゴム5と下カバーゴム6の間に埋設されている。即ち、上カバーゴム5と下カバーゴム6の間に、心体4となる多数本のスチールコード1がベルト幅方向に所定間隔で配置されて挟まれている。一般的には、スチールコード1を引き揃えて形成された心体4の層と、上カバーゴム5および下カバーゴム6との層間、心体4どうしの間には、接着用ゴムが介設される。
【0019】
本発明のスチールコード1を製造するには、芯ストランド2を中心にして、その外周面に6本の側ストランド3を撚り合わせてストランド構造を形成して、テンション付与前スチールコード1Aを製造する。このテンション付与前スチールコード1Aは、いわば、従来多用されているスチールコードである。
【0020】
テンション付与前スチールコード1Aは、例えば、図5に例示するような巻取りドラム8に巻き取っておく。次いで、テンション付与前スチールコード1Aを巻き取った巻取りドラム8を、回転支持台9に回転可能に設置する。この回転支持台9には巻取りドラム8の回転を止めるブレーキ装置10が備わっている。
【0021】
次いで、巻取りドラム8からテンション付与前スチールコード1Aを繰り出して、その先端部をテンショナ11に取り付ける。次いで、ブレーキ装置10を作動させて巻取りドラム8の回転を止めた状態にして、テンション付与前スチールコード1Aをテンショナ11によって引っ張る。これにより、テンション付与前スチールコード1Aに、このスチールコード1(1A)の引張り切断荷重の10%以上70%以下のテンションTを付与して本発明1のスチールコード1を製造する。テンション付与前スチールコード1Aと本発明のスチールコード1の引張り切断荷重は実質的に同じである。
【0022】
本発明のスチールコード1は、ストランド構造を形成した後、ゴム製品に埋設される前に、スチールコード1の引張り切断荷重の10%以上70%以下のテンションTが付与されることで、素線2a、3aどうしのすき間が、テンションTを付与する前よりも小さくなった状態でクセ付けされる。ここで、素線2a、3aどうしのすき間とは、素線2aと素線2a、素線3aと素線3a、素線2aと素線3aの3種類のすき間を意味する。これにより、ゴム製品の使用時に埋設されているスチールコード1に引張力が作用しても、素線2a、3bどうしの間の滑りが小さくなり、その結果として、スチールコード1に起因するヒステリシスロスを低減させることができる。
【0023】
付与するテンションTがスチールコード1の引張り切断荷重の10%未満であると、素線2a、3aどうしのすき間がほとんど小さくならないので、ヒステリシスロス低減効果が小さい。一方、付与するテンションTがスチールコード1の引張り切断荷重の70%超であると、スチールコード1のコード強力や切断伸びを低下させることがあるので好ましくない。
【0024】
本発明のコンベヤベルト7がプーリ間に張設されて稼動する際には、心体4には引張力と圧縮力が繰り返し作用する。このコンベヤベルト7では、心体4を構成する素線2a、3aどうしのすき間が小さくなっていて、コンベヤベルト7の稼動時には素線2a、3aどうしの間の滑りが生じ難くなっている。そのため、コンベヤベルト7の稼動時の心体4に起因するヒステリシスロスが低減する。
【0025】
このコンベヤベルト7によれば、ヒステリシスロスが低減するので稼動に要する電力が抑制され、従来に比して少ない電力でコンベヤベルト7を稼動させることができる。それ故、消費エネルギーの削減に大きく寄与することになる。
【0026】
テンション付与前スチールコード1Aには、テンションTを1回付与するだけでなく、複数回付与することもできる。素線2a、3aどうしのすき間を安定して小さくするには、テンションTを2回以上付与することが好ましい。また、生産効率を考慮すると、テンションTの付与回数は5回以下にすることが好ましい。
【0027】
テンションTを複数回付与する場合は、毎回同じ大きさのテンションTを付与することも、毎回異なる大きさのテンションTを付与することもできる。付与する順にテンションTを大きくして徐々に強いクセ付けをすると、スチールコード1に対する負担を軽減することができる。
【0028】
テンションTは1回あたり、例えば5分以上40分以下、さらに好ましくは10分以上30分以下で付与する。テンションTの付与時間が5分未満であると、すき間を安定して小さくすることが難しい。一方、テンションTの付与時間が40分超であると生産効率が低下する。
【0029】
本発明のスチールコード1が埋設されるゴム製品としては、コンベヤベルト7に限らず、タイヤ、ゴムホース、マリンホース、防舷材など、スチールコード1が補強材として埋設される種々のゴム製品を例示できる。
【実施例】
【0030】
7×7構造のスチールコード(コード径4.4mm)について、ストランド構造を形成した後、ゴム製品の埋設する前に、表1に示すように、テンションTの付与の有無、付与するテンションTの大きさのみを変化させた6種類のサンプル(従来例、実施例1〜4、比較例1)を製造し、それぞれのサンプルのコード強力、切断伸びを測定した。テンションTはインターバルを設けて2回付与し、それぞれ30分間付与した。表1のテンションTの大きさとは、そのスチールコードの引張り切断荷重に対する付与したテンションTの大きさの割合である。また、それぞれのサンプルを多数本横並び状態で埋設したコンベヤベルトサンプルを製造して、所定の曲げ試験を行った際のヒステリシスロスを測定した。これら測定結果を表1に示す。尚、表1には、ストランドを構成する素線の撚り方向と、側ストランドを構成する素線の撚り方向と、芯ストランドの外周面に撚り合わせる側ストランドの撚り方向とを同じ撚り方向にした仕様のスチールコードの測定結果を示しているが、これらの撚り方向を任意に異ならせた種々の仕様についても実質的に同様の測定結果であった。
【0031】
[コード強力] [切断伸び]
それぞれのサンプルをJIS G3510:1992に準拠して切断するまで長手方向に引張り、切断時における荷重をコード強力、切断時における伸びを切断伸びとした。
【0032】
[ヒステリシスロス]
従来例のヒステリシスロスを基準の100として指数評価した。数値が小さい程、ヒステリシスロスが小さいことを示している。
【0033】
【表1】
【0034】
表1の結果から、コード強力および切断伸びは、実施例1〜4は従来例と同等であり、比較例は劣っていることが分かる。ヒステリシスロスは、実施例1〜4は従来例に対して低減していることが分かる。
【符号の説明】
【0035】
1 スチールコード
1A テンション付与前スチールコード
2 芯ストランド
2a 素線
3 側ストランド
3a 素線
4 心体
5 上カバーゴム
6 下カバーゴム
7 コンベヤベルト(ゴム製品)
8 巻取りドラム
9 回転支持台
10 ブレーキ装置
11 テンショナ
図1
図2
図3
図4
図5