【実施例1】
【0026】
実施例1に係る車体構造10について説明する。
図1に示すように、車体構造10は、一例として、キャブオーバトラックVeに備えられ、トラックVeの車室12のうち前部および床部を構成する車体前部構造体である。
車体構造10は、
図2、
図3に示すように、左右のフロントピラー14間に設けられたダッシュボード15と、ダッシュボード15の下部15aに設けられた左右のフロントサイドフレーム16と、左右のフロントサイドフレーム16に架け渡されたフロアクロスメンバ17およびロアクロスメンバ18と、左右のフロントサイドフレーム16およびフロアクロスメンバ17を上方から覆うフロアパネル19とを含む。
左フロントサイドフレーム16および右フロントサイドフレーム16は左右対称の骨格材であり、以下、右フロントサイドフレーム16について説明して左フロントサイドフレーム16の説明を省略する。
【0027】
フロアパネル19は、左右のフロントサイドフレーム16、フロアクロスメンバ17およびロアクロスメンバ18を上方から覆った状態で、左右のフロントサイドフレーム16およびフロアクロスメンバ17の各上部に接合されている。
このフロアパネル19は、右フロントサイドフレーム16の上方に位置する右側部19aに前開口22および後開口23(
図5も参照)が形成されている。さらに、左フロントサイドフレーム16の上方に位置する左側部19bに前開口22および後開口23が形成されている。
【0028】
フロアクロスメンバ17は、右フロントサイドフレーム16の接合部41および左フロントサイドフレーム16の接合部41に架け渡されることによりフロアパネル19の下方に設けられている。
この状態において、フロアクロスメンバ17がフロアパネル19の下面に沿って車幅方向に向けて正面視略直線状に延出されている。
【0029】
ロアクロスメンバ18は、正面視略U字状に形成され、右フロントサイドフレーム16の接合部41および左フロントサイドフレーム16の接合部41に架け渡されることによりフロアパネル19の下方に間隔をおいて設けられている。
すなわち、ロアクロスメンバ18がフロアクロスメンバ17から下方に離れた状態に配置され、フロアクロスメンバ17と略平行に車幅方向に延出されている。
【0030】
図4に示すように、フロアクロスメンバ17の右端部17aおよびロアクロスメンバ18の右端部18aが右フロントサイドフレーム16の接合部41に接合されている。右フロントサイドフレーム16は、ダッシュボード15の下部15a(
図3参照)および右ホイールハウス21(
図3参照)に接合された状態で車両前後方向に延出されている。
【0031】
図5に示すように、右フロントサイドフレーム16は、車両前後方向に延びるフレーム本体31と、フレーム本体31に設けられた前フレーム上板32および後フレーム上板33と、前フレーム上板32および後フレーム上板33間の開口部28を上方から覆う補強部材34とを含む。
【0032】
図4、
図6に示すように、フレーム本体31は車両前後方向に延出されている。このフレーム本体31は、車幅方向外側(すなわち、車外13側)に臨むフレーム外壁36と、車幅方向内側(すなわち、車室12側)に臨むフレーム内壁37と、フレーム外壁36の下端36aおよびフレーム内壁37の下端37aを連結するフレーム底部38と、フレーム内壁37の上端37bから車幅方向内側に向けて略水平に折り曲げられた内フランジ39とを有する。
【0033】
フレーム内壁37、フレーム外壁36およびフレーム底部38でフレーム本体31が断面略U字状に形成され、フレーム本体31の上部31aが開口されている。このフレーム本体31は、フロアクロスメンバ17の右端部17aおよびロアクロスメンバ18の右端部18aが接合される接合部41を有する。
【0034】
図7に示すように、フレーム本体31のうち接合部41の車両前方側の部位(以下、前フレーム本体という)42で、且つ、前フレーム本体42の上部42aに前フレーム上板32が接合されている。よって、前フレーム本体42の上端が前フレーム上板32で塞がれ、前フレーム本体42および前フレーム上板32で閉断面が形成されている。
【0035】
また、フレーム本体31のうち接合部41の車両後方側の部位(以下、後フレーム本体という)43で、且つ、後フレーム本体43の上部43aに後フレーム上板33が接合されている。よって、後フレーム本体43の上端が後フレーム上板33で塞がれ、後フレーム本体43および後フレーム上板33で閉断面が形成されている(
図6も参照)。
【0036】
前フレーム上板32が接合部41の車両前方側に設けられ、後フレーム上板33が接合部41の車両後方側に設けられることにより、前フレーム上板32および後フレーム上板33が接合部41の車両前後方向に所定間隔L1をおいて配置されている。
右フロントサイドフレーム16は、前フレーム上板32の後端部32aおよび後フレーム上板33の前端部33a間に開口部28が平面視略矩形状に形成されている。この開口部28はフレーム本体31の接合部41の上部に開口されている。
【0037】
前フレーム上板32は、後端部32aに前取付穴45が形成され、前取付穴45と同軸上で後端部32aの裏面に設けられた前溶接ナット46を備えている。また、後フレーム上板33は、前端部33aに後取付穴48が形成され、後取付穴48と同軸上で前端部33aの裏面に設けられた後溶接ナット49を備えている。
【0038】
図8に示すように、前フレーム上板32がフロアパネル19の下面より高さ寸法H1だけ下方に配置されている。また、後フレーム上板33がフロアパネル19の下面より高さ寸法H2だけ下方に配置されている。
よって、前フレーム上板32に対して後フレーム上板33が高さ寸法H3だけ下方に配置されている。
【0039】
図7に戻って、フレーム本体31の接合部41(特に、フレーム内壁37を形成する部位41a)にフロアクロスメンバ17の右端部17aがスポット溶接で接合されている。ここで、接合部41の上部が開口部28で開口されている。よって、開口部28からフレーム本体31の内部51にスポット溶接用の電極を差し込み、フロアクロスメンバ17の右端部17aを接合部41にスポット溶接できる。
【0040】
また、フレーム本体31の接合部41(特に、フレーム底部38を形成する部位41b)にロアクロスメンバ18の右端部18aがスポット溶接で接合されている。この場合にも、開口部28からフレーム本体31の内部51にスポット溶接用の電極を差し込み、ロアクロスメンバ18の右端部18aを接合部41にスポット溶接できる。
【0041】
図5、
図9に示すように、前フレーム上板32および後フレーム上板33間の開口部28に補強部材34が配置されている。補強部材34は、開口部28を上方から覆う補強部本体53と、補強部本体53の前端部53aに設けられた前ステイ54と、補強部本体53の後端部53bに設けられた後ステイ55とを有する。
この補強部材34は、一例として、一枚の鋼板が折り曲げられることにより、補強部本体53、前ステイ54および後ステイ55が一体に曲げ形成されている。
【0042】
図10に示すように、補強部本体53は、平面視略矩形状の平板状に形成され、車幅方向外側の外側部を形成する外ビード部56と、車幅方向内側の内側部を形成する内ビード部57と、前端部53aに形成された前締結穴58と、後端部53bに形成された後締結穴59とを有する。
【0043】
外ビード部56は、前端部53aの外側部53cおよび後端部53bの外側部53dを連結するように車両前後方向に延出される補強用の部位である。外ビード部56は、剛性を高めるために、上方に突出するように断面略湾曲状に形成されている(
図6参照)。
また、内ビード部57は、前端部53aの内側部53eおよび後端部53bの内側部53fを連結するように車両前後方向に延出されている。内ビード部57は、剛性を高めるために、外ビード部56と同様に、上方に突出するように断面略湾曲状に形成されている(
図6参照)。
【0044】
このように、補強部本体53の外側部が外ビード部56で形成され、補強部本体53の内側部が内ビード部57で形成されることにより、補強部本体53が外ビード部56および内ビード部57で補強されている。
よって、補強部本体53(すなわち、補強部材34)の強度が外ビード部56および内ビード部57で高められている。
【0045】
図8に戻って、補強部本体53の前締結穴58および前フレーム上板32の前取付穴45に前ボルト61が差し込まれ、差し込まれた前ボルト61が前溶接ナット46にねじ結合されている。よって、補強部本体53の前端部53aが前フレーム上板32の後端部32aに前ボルト61で締結されている。
また、補強部本体53の後締結穴59および後フレーム上板33の後取付穴48に後ボルト62が差し込まれ、差し込まれた後ボルト62が後溶接ナット49にねじ結合されている。よって、補強部本体53の後端部53bが後フレーム上板33の前端部33aに後ボルト62で締結されている。
これにより、前フレーム上板32および後フレーム上板33間の開口部28を上方から覆うように、前後のフレーム上板32,33に補強部本体53が取り付けられている。
【0046】
図6に示すように、開口部28を補強部本体53で上方から覆うことにより、フレーム本体31の接合部41および補強部本体53で閉断面に形成されている。また、
図8に示すように、前フレーム本体42および前フレーム上板32で閉断面が形成され、後フレーム本体43および後フレーム上板33で閉断面が形成されている。よって、右フロントサイドフレーム16が車両前後方向の全域において閉断面に形成されている。
さらに、
図10に示すように、補強部本体53の強度が外ビード部56および内ビード部57で高められている。これにより、強度の高い補強部本体53(すなわち、補強部材34)で右フロントサイドフレーム16の剛性・強度が高められている。
【0047】
図8、
図9に示すように、補強部本体53の前端部53aのうち、前縁53gの車幅方向中央に前ステイ54が設けられている。前ステイ54は、前縁53gの車幅方向中央から上方(すなわち、フロアパネル19)に向けて前傾斜部65が車両前方側に傾斜状に延在され、前傾斜部65の先端から前接合片66が車両前方に向けて張り出されている。
前接合片66がフロアパネル19の下面に下方からスポット溶接で固定されている。
【0048】
また、補強部本体53の後端部53bのうち、後縁53hの車幅方向中央に後ステイ55が設けられている。後ステイ55は、後縁53hの車幅方向中央から上方(すなわち、フロアパネル19)に向けて後傾斜部68が車両後方側に傾斜状に延在され、後傾斜部68の先端から後接合片69が車両後方に向けて張り出されている。
後接合片69がフロアパネル19の下面に下方からスポット溶接で固定されている。
【0049】
図7に戻って、前接合片66および後接合片69がフロアパネル19の下面に固定されることにより、フロアパネル19の下面に補強部材34が下方から取り付けられている。この状態において、フロアパネル19が右フロントサイドフレーム16およびフロアクロスメンバ17の上部に接合される(
図8も参照)。
【0050】
図8に示すように、前ステイ54の前傾斜部65が上下方向に高さ寸法H1だけ延出されている。また、後ステイ55の後傾斜部68が上下方向に高さ寸法H2だけ延出されている。
よって、フロアパネル19が右フロントサイドフレーム16およびフロアクロスメンバ17の上部に接合されることにより、補強部材34(具体的には、補強部本体53)の前端部53aが前フレーム上板32の後端部32aに載置され、後端部53bが後フレーム上板33の前端部33aに載置される。
【0051】
このように、前ステイ54が上下方向に高さ寸法H1だけ延出されることにより、ある程度の変形が可能に形成されている。また、後ステイ55が上下方向に高さ寸法H2だけ延出されることにより、ある程度の変形が可能に形成されている。
よって、前ステイ54および後ステイ55を変形させることにより補強部本体53の位置を微調整できる。これにより、補強部本体53の前締結穴58を前フレーム上板32の前取付穴45に位置決めでき、補強部本体53の後締結穴59を後フレーム上板33の後取付穴48に位置決めできる。
【0052】
補強部本体53の前締結穴58の上方で、且つ、前締結穴58に対して同軸上にフロアパネル19の前開口22が開口されている。また、補強部本体53の後締結穴59の上方で、且つ、後締結穴59に対して同軸上にフロアパネル19の後開口23が開口されている。
よって、補強部本体53の前端部53aが前フレーム上板32の後端部32aに前ボルト61で締結された状態において、前開口22が平面視において前ボルトに61重なるように形成されている。同様に、補強部本体53の後端部53bが後フレーム上板33の前端部33aに後ボルト62で締結された状態において、後開口23が平面視において後ボルト62に重なるように形成されている。
【0053】
前開口22および後開口23は前後のボルト61,62の頭部61a,62aより大きく開口されている。よって、フロアパネル19の上方から前開口22を経て前ボルト61の頭部61aに工具を差し込み、差し込んだ工具で前ボルト61を締め付けることができる。
同様に、フロアパネル19の上方から後開口23を経て後ボルト62の頭部62aに工具を差し込み、差し込んだ工具で後ボルト62を締め付けることができる。
すなわち、前開口22および後開口23は、前後のボルト61,62の締結を可能にする取付用の開口である。
【0054】
前ボルト61を締め付けることにより、前ボルト61で補強部本体53の前端部53aが前フレーム上板32の後端部32aに締結される。さらに、後ボルト62を締め付けることにより、後ボルト62で補強部本体53の後端部53bが後フレーム上板33の前端部33aに締結される。これにより、補強部本体53で開口部28が覆われる。
【0055】
ここで、前ステイ54および後ステイ55を変形させることにより、補強部本体53の前締結穴58が前フレーム上板32の前取付穴45に位置決めされ、補強部本体53の後締結穴59が後フレーム上板33の後取付穴48に位置決めされている。
これにより、補強部材34を前フレーム上板32および後フレーム上板33に正確に(精度よく)組み付けることができる。
【0056】
ところで、補強部材34は補強部本体53の前端部53aに前締結穴58が形成され、補強部本体53の後端部53bに後締結穴59が形成されている。よって、前締結穴58および後締結穴59を前取付穴45および後取付穴48に精度よく位置決めするためには補強部材34を車両前後方向に移動することが考えられる。
【0057】
そこで、前端部53aの前縁53gから前ステイ54を延ばし、後端部53bの後縁53hから後ステイ55を延ばした。すなわち、前ステイ54および後ステイ55が車体前後方向に変形可能に延出されている。よって、前ステイ54および後ステイ55を車両前後方向に好適に変形させることが可能となる。
【0058】
これにより、補強部材34を車両前後方向に移動させて(微調整して)、前締結穴58を前フレーム上板32の前取付穴45に位置決めし、後締結穴59を後フレーム上板33の後取付穴48に好適に位置決めできる。したがって、補強部材34を前フレーム上板32および後フレーム上板33に一層正確に(精度よく)組み付けることができる。
【0059】
補強部材34が前フレーム上板32および後フレーム上板33に組み付けられることにより、補強部材34で開口部28が覆われる。これにより、車両前方や車両後方から右フロントサイドフレーム16に入力した衝撃荷重を補強部材34で好適に伝達でき、右フロントサイドフレーム16の剛性・強度が確保される。
加えて、右フロントサイドフレーム16の剛性・強度を確保することにより運転性の向上に寄与できる。
【0060】
さらに、補強部材34をフロアパネル19に下方から固定し、フロアパネル19に前開口22および後開口23を形成する構成とした。これにより、車室12内への影響を抑えることができ、車室12内に備える部材のレイアウトを考慮する必要がない。
【0061】
つぎに、本発明に係る補強部材34を右フロントサイドフレーム16に組み付ける例を
図11〜
図13に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、接合部41の上部が開口部28で開口されている。開口部28からフレーム本体31の内部51にスポット溶接用の電極を差し込み、フロアクロスメンバ17の右端部17aを接合部41にスポット溶接する。
また、開口部28からフレーム本体31の内部51にスポット溶接用の電極を差し込み、ロアクロスメンバ18の右端部18aを接合部41にスポット溶接する。
【0062】
図11(b)に示すように、補強部本体53の前ステイ54(具体的には、前接合片66)をフロアパネル19の下面に下方からスポット溶接で矢印Aの如く固定する。同様に、補強部本体53の後ステイ55(具体的には、後接合片69)をフロアパネル19の下面に下方からスポット溶接で矢印Bの如く固定する。
これにより、フロアパネル19の下面に補強部材34が下方から取り付けられる。
【0063】
図12(a)に示すように、補強部材34の前締結穴58がフロアパネル19の前開口22に対して同軸上に配置され、補強部材34の後締結穴59がフロアパネル19の後開口23に対して同軸上に配置される。
この状態において、フロアパネル19を右フロントサイドフレーム16の上部やフロアクロスメンバ17の上部に上方から矢印Cの如く接合する。
【0064】
図12(b)に示すように、補強部材34(具体的には、補強部本体53)の前端部53aが前フレーム上板32の後端部32aに上方から載置される。また、補強部本体53の後端部53bが後フレーム上板33の前端部33aに上方から載置される。
さらに、補強部本体53の前締結穴58が前フレーム上板32の前取付穴45に対して同軸上に配置される。また、補強部本体53の後締結穴59が後フレーム上板33の後取付穴48に対して同軸上に配置される。
【0065】
この状態において、フロアパネル19の前開口22および補強部材34の前締結穴58に前ボルト61を矢印Dの如く差し込み、差し込んだ前ボルト61を前溶接ナット46(
図12(b)参照)にねじ結合する。
さらに、フロアパネル19の後開口23および補強部材34の後締結穴59に後ボルト62を矢印Eの如く差し込み、差し込んだ後ボルト62を後溶接ナット49(
図12(b)参照)にねじ結合する。
【0066】
図13に示すように、補強部本体53の前端部53aが前フレーム上板32の後端部32aに前ボルト61で締結される。また、補強部本体53の後端部53bが後フレーム上板33の前端部33aに後ボルト62で締結される。
よって、前フレーム上板32および後フレーム上板33間の開口部28を上方から覆うように、前フレーム上板32および後フレーム上板33に補強部本体53が組み付けられる。
【0067】
これにより、右フロントサイドフレーム16の開口部28を利用して、右フロントサイドフレーム16の接合部41にフロアクロスメンバ17やロアクロスメンバ18を取り付けることができる。
さらに、接合部41にフロアクロスメンバ17やロアクロスメンバ18を取り付けた後工程において、前フレーム上板32および後フレーム上板33に補強部材34を組み付けることにより、補強部材34で開口部28を覆うことができる。
補強部材34で開口部28を覆うことにより、右フロントサイドフレーム16の強度・剛性を確保できる。
【0068】
ついで、本発明に係る右フロントサイドフレーム16の前端部16aに入力した衝撃荷重F1を車両後方に好適に伝達する例を
図14に基づいて説明する。
図14(a)に示すように、キャブオーバトラックVeの前右部に対向車がオフセット衝突することにより、右フロントサイドフレーム16の前端部16aに衝撃荷重F1が入力する。右フロントサイドフレーム16の前端部16aに入力した衝撃荷重F1が右フロントサイドフレーム16を経て車両後方に伝達される。
【0069】
図14(b)に示すように、右フロントサイドフレーム16に伝達された衝撃荷重F1の一部が前フレーム上板32を経て補強部材34に衝撃荷重F2として伝達される。補強部材34に伝達された衝撃荷重F2が補強部材34を経て車体後方の後フレーム上板33に伝達される。
さらに、右フロントサイドフレーム16に伝達された荷重がフレーム本体31を経て車両後方に荷重F3として伝達される。
【0070】
これにより、右フロントサイドフレーム16の前端部16aに入力した衝撃荷重F1を右フロントサイドフレーム16で車両後方に好適に伝達することができる。さらに、車両前方からの衝撃荷重F1が右フロントサイドフレーム16に入力された場合に、衝撃荷重F1により右フロントサイドフレーム16が開口部28から変形することを抑制できる。このように、車両前方からの衝撃荷重F1を車両後方に好適に伝達し、かつ、衝撃荷重F1で右フロントサイドフレーム16が開口部28から変形することを抑制することにより、右フロントサイドフレーム16の剛性・強度を確保できる。
加えて、右フロントサイドフレーム16の剛性・強度を確保することにより、車体構造10の剛性・強度をより好適に確保することが可能になり、キャブオーバトラックVe(
図14(a)参照)の運転性の向上に寄与できる。
【実施例2】
【0071】
実施例2に係る補強部材80について説明する。
なお、実施例2の補強部材80において実施例1の補強部材34と同じ部位については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図15に示すように、補強部材80は、補強部本体53の後端部53bに後ステイ55の後傾斜部68とともにボルト受部82が形成されたもので、その他の構成は実施例1の補強部材34と同様である。
【0072】
ボルト受部82は、後端部53bの後縁53hから後傾斜部68の両側に沿って上方に立ち上げられている。後傾斜部68の両側にボルト受部82が形成されることにより、ボルト受部82および後傾斜部68は、後端部53b側の壁面が平面視略凹形になるように湾曲状に形成されている。
よって、後端部53bに落下した後ボルト(
図16参照)をボルト受部82および後傾斜部68で受けることができる。
【0073】
ここで、
図8に示すように、前フレーム上板32に対して後フレーム上板33が高さ寸法H3だけ下方に配置されている。さらに、前フレーム上板32の後端部32aに補強部本体53の前端部53a(
図15参照)が締結され、後フレーム上板33の前端部33aに補強部本体53の後端部53b(
図15参照)が締結される。
【0074】
よって、
図16に示すように、補強部本体53の後端部53bが前端部53aに比べてフロアパネル19から下方に離れて配されている。このため、フロアパネル19の後開口23から補強部本体53(具体的には、後端部53b)の後締結穴59に後ボルト62を差し込む際に、後ボルト62が後端部53bに落下することが考えられる。
【0075】
そこで、補強部材80の後端部53bにボルト受部82を形成した。ボルト受部82を後傾斜部68の両側に沿って上方に向けて立ち上げるようにした。よって、補強部本体53の後端部53b側に落下した後ボルト62をボルト受部82および後傾斜部68で受けて、後端部53bに後ボルト62を止めておくことができる。
これにより、後端部53bに止められた後ボルト62をフロアパネル19の後開口23から取り出すことができ、後ボルト62の締付作業(すなわち、補強部材80の締結作業)を効率よくおこなうことができる。
【0076】
なお、本発明に係る車体構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1および前記実施例2では、車体構造10を、一例として、トラックVeに適用した例について説明したが、これに限らないで、車体構造10を乗用車などの他の車両に適用することも可能である。
【0077】
また、前記実施例1および前記実施例2では、車体構造10を車体前部構造体とした例について説明したが、これに限らないで、車体構造10を車体後部構造体などの他の構造体に適用することも可能である。
【0078】
さらに、前記実施例1および前記実施例2では、右フロントサイドフレーム16の前端部16aに入力した衝撃荷重F1を車両後方に伝達させる例について説明したが、これに限らないで、右フロントサイドフレーム16の後端部に入力した衝撃荷重を車両前方に伝達させることも可能である。
【0079】
また、前記実施例1および前記実施例2では、フレームを左右のフロントサイドフレーム16に適用する例について説明したが、これに限らないで、フレームを左右のリヤサイドフレームなどの他の骨格部材に適用することも可能である。
【0080】
さらに、前記実施例1および前記実施例2では、前フレーム上板32に対して後フレーム上板33を高さ寸法H3だけ下方に配置した例について説明したが、これに限らないで、後フレーム上板33に対して前フレーム上板32を下方に配置することも可能である。
また、前フレーム上板32および後フレーム上板33を同じ高さ位置に配置することも可能である。
【0081】
さらに、前記実施例2では、後フレーム上板33を前フレーム上板32より下方に配置して補強部材80(補強部本体53)の後端部53bにボルト受部82を形成した例について説明したが、これに限らないで、前フレーム上板32を後フレーム上板33より下方に配置して補強部材80(補強部本体53)の前端部53aにボルト受部を形成することも可能である。
さらに、補強部材80(補強部本体53)の前端部 および後端部53bの両端部53a,53bにボルト受部を其々形成することも可能である。
【0082】
また、前記実施例2では、ボルト受部82の後端部53b側の壁面を平面視略凹形の湾曲状に形成した例について説明したが、これに限らないで、ボルト受部を平面視平坦状に形成することも可能である。
【0083】
さらに、前記実施例1および前記実施例2で示した車体構造、左右のフロントサイドフレーム、フロアクロスメンバ、ロアクロスメンバ、フロアパネル、前後の開口、開口部、フレーム本体、前後のフレーム上板、補強部材、接合部、補強部本体、前後のステイ、内外のビード部およびボルト受部などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。