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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227713(P2015-227713A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/16 20060101AFI20151120BHJP
   F16H 61/682 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
   F16H61/16
   F16H61/682
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-114415(P2014-114415)
(22)【出願日】2014年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】中村 光宏
(72)【発明者】
【氏名】米山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】中村 明
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552MA13
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA19
3J552QC03
3J552SB12
3J552TB13
3J552VA32Z
3J552VA65Z
3J552VA74Z
3J552VA76W
(57)【要約】      (修正有)
【課題】制御装置による変速段の誤検知を好適に防止しクラッチの係合に関わらず変速機の現変速段ステータスを迅速かつ正確に検知することが出来る自動車の変速機を提供する。
【解決手段】メインシャフトの回転数Nmとカウンターシャフトの回転数Ncとの実変速比であるギヤレシオ演算Rgと、各変速段についての変速比変動許容領域を規定する変速比マップとから現シフト段を判定し、判定された現シフト段ステータスを決定する際、ギヤレシオ演算Rgが次段の変速比変動許容領域内に到達した時に遅延タイマーを始動させ、遅延タイマーが作動している間、現シフト段ステータスの決定を休止し、そして予め設定された遅延時間Tn*(n=1,2,・・・)が経過した後に現シフト段ステータスを決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力がクラッチを介して入力される入力軸と、
複数のギヤ列のうちの1つを選択する複数のシンクロからなるシンクロ群と、
選択された前記ギヤ列によって所望変速比に変速された前記駆動力をファイナルギヤに伝達する出力軸と、
第1回転数検出手段によって検出される前記入力軸の回転数と第2回転数検出手段によって検出される前記出力軸の回転数とに基づいて実変速比を算出する変速比演算手段と、
各変速段について変速比変動許容領域を規定する変速比マップと、
前記実変速比と前記変速比変動許容領域とに基づき現変速段を判定する変速段判定手段と、
変速段のニュートラル状態を検出するニュートラル状態検出手段とを備えた変速機において、
前記変速段判定手段は第1所定時間を計測するための第1タイマーを有し、前記変速比が前記現変速段の次段の上位または下位変速段に対応する変速比変動許容領域に到達した時に、前記第1タイマーを始動させると共に前記第1タイマーが作動している間前記現変速段の決定を休止することを特徴とする変速機。
【請求項2】
前記変速段判定手段は変速段のステータスを表示する変速段表示手段を備え、前記第1タイマーが作動している間前記変速段表示手段において現変速段を表示しないことを特徴とする請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記変速段判定手段は前記変速比が前記次段の変速比変動許容領域から離脱した時に、前記第1タイマーを停止し計測した時間をリセットすることを特徴とする請求項1又は2に記載の変速機。
【請求項4】
前記第1タイマーの作動時間は高速段側から低速段側に行くにつれて長くなるように予め設定されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の変速機。
【請求項5】
前記変速段判定手段は第2所定時間を計測するための第2タイマーを備え、前記ニュートラル状態検出手段によってニュートラル状態が検出された時あるいは前記変速比が現変速段に対応する変速比変動許容領域から離脱する時の何れか早い時に、前記第2タイマーを始動させると共に前記第2タイマーが作動している間前記変速段表示手段において、前記第2タイマーを始動させる直前の変速段を表示させることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の変速機。
【請求項6】
前記変速段判定手段は、前記第1タイマーを始動させる場合、前記第2タイマーの作動を停止させることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の変速機に関し、より詳細には制御装置による変速段の誤検知を好適に防止しクラッチの係合に関わらず変速機の現変速段ステータスを迅速かつ正確に検知することが出来る自動車の変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の手動変速機の変速段ステータスを迅速かつ正確に検知するための方法として、変速機のチェンジ機構に各変速段のステータスを検出する位置検出センサをそれぞれ設け、これら位置検出センサによって変速機の現変速段を直接検知する方法が知られている。この方法の場合、変速機の変速段を正確に検知することが出来るというメリットを有しているが、各変速段に対応した複数の位置検出センサが必要となるため、構造が複雑となり、生産コストが増大するというデメリットを有している。
ところで、チェンジ機構に位置検出センサを設ける代わりに、変速機の入力軸側と出力軸側に回転検出センサをそれぞれ設置し、各センサが出力する信号に基づいて現変速段を判定する変速指示装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
また、エンジンの回転数センサの出力信号から算出されるエンジン回転数と車速センサの出力信号から算出される車速との比に基づいて現ギヤ段の判定を行うギヤ位置判定装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−39111号公報
【特許文献2】特許第4404096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているギヤ位置判定装置では、変速段の判定は入出力軸に設けられた2つの回転検出センサによって行われるため電気信号系統のシステム構成が簡素化され変速機システム全体に係る生産コストの増大を抑えるというメリットがある。
しかし、シンクロ作動開始から完了直後に発生する駆動系の捩り振動やガタによって回転数が安定しない場合、こられの回転検出センサによって計測される入力軸および出力軸の各回転数に基づいて正確な変速比を算出することが出来ず、エンジンコントロール装置(ECU)等の制御装置が現変速段を誤検知する可能性があり、最悪の場合、変速段の点滅的表示を招く虞がある。また、例えば2速段から5速段への飛びシフト時において、中間変速段(この場合、3速段と4速段)に係る回転数を通過する瞬間に、同様に制御装置はその中間変速段を現変速段として誤検知する可能性がある。
また、上記特許文献2では、エンジン回転数と車速との比に加えて車速の車速変化勾配(微分)によって、変速機の現変速段を検知することとしている。
しかし、この方法では、例えばクラッチを切った直後においてエンジン回転数は一時的に変動するため、現変速段を正確に検知することが難しいという問題がある。更に車速変化勾配が閾値を超えない限り、シフト段の誤検知を防止することが出来ないという問題点も有している。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は、制御装置による変速段の誤検知を好適に防止しクラッチの係合に関わらず変速機の現変速段ステータスを迅速かつ正確に検知することが出来る自動車の変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明に係る変速機では、駆動源からの駆動力がクラッチを介して入力される入力軸と、複数のギヤ列のうちの1つを選択する複数のシンクロからなるシンクロ群と、選択された前記ギヤ列によって所望変速比に変速された前記駆動力をファイナルギヤに伝達する出力軸と、第1回転数検出手段によって検出される前記入力軸の回転数と第2回転数検出手段によって検出される前記出力軸の回転数とに基づいて実変速比を算出する変速比演算手段と、各変速段について変速比変動許容領域を規定する変速比マップと、前記実変速比と前記変速比変動許容領域とに基づき現変速段を判定する変速段判定手段と、変速段のニュートラル状態を検出するニュートラル状態検出手段とを備えた変速機において、
前記変速段判定手段は第1所定時間を計測するための第1タイマーを有し、前記変速比が前記現変速段の次段の上位または下位変速段に対応する変速比変動許容領域に到達した時に、前記第1タイマーを始動させると共に前記第1タイマーが作動している間前記現変速段の決定を休止することを特徴とする。
【0006】
上記構成では、実変速比と変速比マップに基づいて判定された現変速段(現在インギヤ中の変速段)を決定する際、現変速段の決定を休止する時間である第1タイマーを設けることにより、入出力軸の各回転数が乱れて安定しないシンクロ作動中やシンクロ作動完了直後における制御装置による現変速段の決定を休止するように構成されている。これにより、制御装置による変速段の誤検知が好適に防止され、その結果、入出力軸の各回転数が乱れて安定しない期間における現変速段の点滅的表示や通過のみの中間変速段の一時的表示が好適に抑制されるようになる。
【0007】
また、本発明に係る変速機は、変速段のステータスを表示する変速段表示手段を備え、該変速段表示手段は第1タイマーが作動している間現変速段を表示しないことを特徴とする。
【0008】
上記構成では、第1タイマーが作動している間、すなわち入出力軸の各回転数が乱れて安定しないシンクロ作動中やシンクロ作動完了直後において現変速段のステータス表示が禁止されるため、現変速段の点滅的表示や中間変速段の一時的表示によりドライバーに違和感を与えることがなくなる。
【0009】
また、本発明に係る変速機では、前記変速段判定手段は前記変速比が前記次段の変速比変動許容領域から離脱した時に、前記第1タイマーを停止し計測した時間をリセットすることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、駆動系の捩れ振動が大きく、入出力軸の各回転数が安定しない期間においても現変速段の点滅的表示を好適に禁止し、現変速段を正確に表示することが出来るようになる。
【0011】
また、本発明に係る変速機では、前記第1タイマーの作動時間は高速段側から低速段側に行くにつれて長くなるように予め設定されていることを特徴とする。
【0012】
低速段側では伝達トルク、ギヤの回転モーメントが高速段側に比べ大きいため、変速直後の低速段側の捩り振動やガタは高速段側に比べ大きく、その結果回転数が安定しない期間は低速段側が高速段側に比べ長くなる。
そこで、上記構成では、現変速段の決定を休止する時間である第1タイマーの作動時間を高速段側から低速段側に行くにつれて長くなるように設定し、入出力軸の各回転数が安定しない期間おける現変速段の点滅的表示や通過のみの中間変速段の一時的表示を好適に抑制することが出来るようになる。
【0013】
また、本発明に係る変速機では、前記変速段判定手段は第2所定時間を計測するための第2タイマーを備え、前記ニュートラル状態検出手段によってニュートラル状態が検出された時あるいは前記実変速比が現変速段に対応する変速比変動許容領域から離脱する時の何れか早い時に、前記第2タイマーを始動させると共に前記第2タイマーが作動している期間において、前記第2タイマーを始動させる直前の変速段を前記変速段表示手段に表示させることを特徴とする。
【0014】
上記構成では、シフト変速直前の変速段ステータスを表示し続ける上記第2タイマーを設けることにより、シフト変速初期における現変速段が確定しない不確定時間(空白時間)を短縮し、シフト変速初期における現変速段の点滅的表示や通過のみの中間変速段の一時的表示を好適に抑制することが出来る。
【0015】
更に、本発明に係る変速機では、前記変速段判定手段は前記第1タイマーを始動させる場合、前記第2タイマーの作動を停止させることを特徴とする。
【0016】
上記構成では、第2タイマーよりも第1タイマーの作動が優先されるため、入出力軸の各回転数が安定した後における現変速段を迅速に表示することが出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の変速機によれば、実変速比と変速比マップに基づいて判定された現変速段(現在インギヤ中の変速段)を決定する際、現変速段の決定を予め決められた時間休止する第1タイマー(遅延タイマー)が設けられ、入出力軸の各回転数が乱れて安定しないシンクロ作動中やシンクロ作動完了直後における制御装置による現変速段の決定を休止するように構成されている。これにより、制御装置による変速段の誤検知が好適に防止され、その結果、入出力軸の各回転数が乱れて安定しない期間における現変速段の点滅的表示や通過のみの中間変速段の一時的表示が好適に抑制されるようになる。
また、現変速段の判定は、第1及び第2回転数検出手段によって計測される入力軸の実回転数と出力軸の実回転数との実変速比ならびに各変速段の変速比変動許容領域を規定する変速比マップに基づいて行われるため、クラッチ係合に関わらず現変速段を迅速かつ正確に表示することが出来ると共に、現変速段の判定処理において中立位置以外の各変速段の位置検出センサが不要となるため生産コストの削減が期待される。
更に、シフト変速直前の現変速段を予め決められた時間表示し続ける第2タイマーを設けることにより、シフト変速初期における現変速段が確定しない不確定時間(空白時間)を短縮することが出来るため、上記第1タイマーと相俟って現変速段の点滅的表示や中間変速段の一時的表示を更に好適に抑制することが可能となり、これによりドライバーに違和感を与えることが好適になくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る変速機システムの構成を示す説明図である。
図2】本発明のシフト段誤検知防止処理(保持タイマー無し)の一例を示すフロー図である。
図3図2のシフト段誤検知防止処理(保持タイマー無し)に係るニュートラルセンサ信号、カウンターシャフト回転数とメインシャフト回転数とのギヤレシオ演算、並びにシフト段ステータス等の各タイムチャート(時系列データ)を示す説明図である。
図4】本発明のシフト段誤検知防止処理(保持タイマー有り)の一例を示すフロー図である。
図5図4のシフト段誤検知防止処理(保持タイマー有り)に係るニュートラルセンサ信号、カウンターシャフト回転数とメインシャフト回転数とのギヤレシオ演算、並びにシフト段ステータス等の各タイムチャート(時系列データ)を示す説明図である。
図6】本発明に係る変速比マップを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る変速機システム100の構成を示す説明図である。なお、説明の都合上、エンジンを含む駆動源1についても併せて図示されている。
この変速機システム100は、駆動力を発生する駆動源1とギヤ部3との連結を断続するクラッチ部2と、駆動源1から伝達される駆動力の回転数を所望の回転数へ変速するギヤ部3と、ドライバーがクラッチ部2を操作するためのクラッチ操作部4と、ドライバーがギヤ部3を操作するためのシフト段操作部5と、本発明のシフト段誤検知防止処理を実行する(実変速比演算手段および変速段判定手段としての)シフト段判定装置6と、確定(決定)された現シフト段のステータスを表示する(変速段表示手段としての)シフト段ステータス表示器7とを具備して構成されている。なお、本発明のシフト段誤検知防止処理については図2から図6を参照しながら後述する。以下、各構成について更に説明する。
【0021】
本発明が適用される駆動源1のエンジンとしては回転駆動力を出力するものであれば良くその回転駆動力を発生する機構は特に限定されず、例を挙げるとガソリンエンジン等の内燃機関の他、電動エンジン又はハイブリッドエンジン等である。
【0022】
クラッチ部2は油圧式クラッチであり、ドライバーがクラッチペダル4aを踏み込むことによってクラッチマスターシリンダ4bで油圧が発生し、その油圧が油圧配管部4cを伝わって、その油圧によってレリーズシリンダ4d及びレリーズフォーク4e等から成るクラッチディスク駆動機構を駆動し、その駆動力によってクラッチディスク2aに対するクラッチカバー2bによる押圧が解除されクラッチディスク2aがフライホイール1aから引き離されることになる。また、クラッチペダル4aの近傍にはクラッチペダルスイッチ4fが配置され、ドライバーがクラッチペダル4aを踏み込む度に信号を出力する。
【0023】
ギヤ部3は、メインシャフト3a、カウンターシャフト3b及びリバースアイドルシャフト3cを有する。メインシャフト3a上にはシフト段操作部5の1速位置D1から6速位置D6および後進位置Rに対応するギヤ群M1GからM6GとリバースドライブギヤRDrGがそれぞれ配設されている。なお、メイン1速ギヤM1G、メイン2速ギヤM2GおよびリバースドライブギヤRDrGはメインシャフト3a上に固定支持されメインシャフト3aと一体となって回転するのに対し、ギヤ群M3G、M4G、M5GおよびM6Gはメインシャフト3a上に回動自在に支持されている。他方、カウンターシャフト3b上にはメインシャフト3aの上記ギヤ群M1GからM6Gに常時噛み合うギヤ群C1GからC6G、並びに1−2速同期機構(図示せず)のスリーブ(図示せず)の外側に刻設されたリバースドリブンギヤRDnGがそれぞれ配設されている。なお、カウンター1速ギヤC1Gおよびカウンター2速ギヤC2Gはカウンターシャフト3b上に回動自在にそれぞれ支持されているのに対しギヤ群C3G、C4G、C5GおよびC6Gはカウンターシャフト3b上に固定支持されカウンターシャフト3bと一体となって回転する。また、リバースドライブギヤRDrGおよびリバースドリブンギヤRDnGの双方に噛み合うリバースアイドルギヤRIGが回動自在にリバースアイドルシャフト3c上に設けられている。
【0024】
そして、カウンターシャフト3bのカウンター1速ギヤC1G及び2速ギヤC2Gとの間には、カウンター1速ギヤC1G又は2速ギヤC2Gを選択的にカウンターシャフト3bに一体化結合(同期)させる1−2速同期機構(図示せず)、並びにメインシャフト3aのメイン3速ギヤM3G及び4速ギヤM4Gとの間には、メイン3速ギヤM3G又は4速ギヤM4Gをメインシャフト3aに一体化結合させる3−4速同期機構(図示せず)、並びにメインシャフト3aのメイン5速ギヤM5G及びメイン6速ギヤM6Gとの間には、メイン5速ギヤM5G又は6速ギヤM6Gをメインシャフト3aに一体化結合させる5−6速同期機構(図示せず)がカウンターシャフト3b、メインシャフト3aにそれぞれ設けられている。
【0025】
従って、1−2速同期機構を介してカウンター1速ギヤC1G又はカウンター2速ギヤC2Gをカウンターシャフト3bに一体化結合させれば、1速ギヤ列または2速ギヤ列が確立される。また、3−4速同期機構を介してメイン3速ギヤM3G又はメイン4速ギヤM4Gをメインシャフト3aに一体化結合させれば、3速ギヤ列または4速ギヤ列が確立される。更に、5−6速同期機構を介してメイン5速ギヤM5G又はメイン6速ギヤM6Gをメインシャフト3aに一体化結合させれば、5速ギヤ列または6速ギヤ列が確立される。また、後進ギヤ列については、リバースアイドルギヤRIGをリバースドライブギヤRDrG及びリバースドリブンギヤRDnGの双方に噛み合う位置に移動させることにより後進ギヤ列を確立することが出来る。確立された各ギヤ列は、エンジンの駆動力をメインシャフト3aからカウンターシャフト3bへ所定の変速比で伝達し、カウンターシャフト3bに伝達された駆動力は、ファイナルドライブギア(図示せず)を介して差動装置(図示せず)へと伝達される。
【0026】
また、メインシャフト3a側には、メインシャフト3aの回転数を検知するメイン回転数検知センサ3dが設けられている。メインシャフト3aの回転数は、メインシャフト3aと一体となって(同期して)回転するギヤ、例えばメイン1速ギヤM1G、メイン2速ギヤM2GまたはリバースドライブギヤRDrGから取り出すことが可能である。同様に、カウンターシャフト3b側には、カウンターシャフト3bの回転数を検知するカウンター回転数検知センサ5eが設けられている。カウンターシャフト3bの回転数は、カウンターシャフト3bと一体となって(同期して)回転するギヤ、例えばカウンター3速ギヤC3Gから6速ギヤC6Gの何れか一つのギヤから取り出すことが可能である。これらの回転数検知センサ3d、3eから取り出された各信号は、後述する本発明のシフト段誤検知防止処理を実行する際に使用される。
【0027】
シフト段操作部5は、チェンジレバー5a、ゲート部5b、チェンジワイヤ5c、並びにギヤ部3の各同期機構を駆動するリンク機構5dから成る。なお、詳細については省略するが、リンク機構5dは、軸方向および軸回りに移動、回転可能なシフトアーム(図示せず)と、各同期機構の各スリーブ(図示せず)に係合する4個のシフトフォーク(図示せず)と、シフトアーム及びシフトフォークの双方に係合する4個のシフトピース(図示せず)とをそれぞれ有し、ドライバーによって操作されるチェンジレバー5aの動きに応じてシフトアームを軸方向に移動させ1つのシフトピースに係合させると共に、シフトアームを軸回りに回転させ、シフトピースをメインシャフト3a又はカウンターシャフト3bの軸方向に移動させ各同期機構を駆動するように構成されている。また、シフトアームの軸方向に直交する方向には、チェンジレバー5aの中立位置(ニュートラル位置)を直接検出するニュートラルセンサ5eが設けられている。
【0028】
シフト段判定装置6は、メイン回転数検知センサ3dおよびカウンター回転数検知センサ3eが出力する各信号Nm、Ncならびにニュートラルセンサ5eが出力する信号Pnを取り込んで後述する本発明のシフト段誤検知防止処理を実行し現シフト段を判定する。なお、シフト段判定装置6として専用のコントローラを設置しても良いが、本実施例ではシフト段判定装置6としてエンジンコントロールECUを使用している。
【0029】
シフト段ステータス表示器7はシフト段判定装置6の指令を受けLEDランプ等によって現シフト段を表示する。
【0030】
図2は、本発明のシフト段誤検知防止処理(保持タイマー無し)の一例を示すフロー図である。なお、ここではシフト段を1速段から2速段へシフトアップする例を示す。
【0031】
先ず、ステップS1では、現シフト段の実変速比を演算する。実変速比の演算はメイン回転数検知センサ3dから出力されるメインシャフト3aの回転数に係る信号Nmと、カウンター回転数検知センサ3eから出力されるカウンターシャフト3bの回転数に係る信号Ncとの比を算出することにより行われる。なお、その演算結果は、ギヤレシオ演算Rg(図3)としてシフト段判定装置6内に記憶される。
【0032】
次に、ステップS2では、ギヤレシオ演算Rgが1速段の変速比変動許容領域内か否かを判定する。本実施例で言う「変速比変動許容領域」とは、図6の変速比マップにおいて各変速段のギヤ比を挟む上下2つの点線によって囲まれた領域を言う。また、本実施例で言う「判定」とは、算出したギヤレシオ演算Rgが図6の変速比変動許容領域内にあるか或いはその領域から離脱状態にあるかを判定することを意味し、その判定結果は「シフト段演算」(図3又は図5)としてシフト段判定装置6内に記憶される。今の場合、ステップS1で算出したギヤレシオ演算Rgが1速段の変速比変動許容領域内(YES)にあればステップS3へ進み、一方、ギヤレシオ演算Rgが1速段の変速比変動許容領域から離脱状態(NO)にあればステップS6へ進む。
【0033】
次に、ステップS3では、現シフト段が中立位置(ニュートラル位置)か否かを判定する。本実施例で言う「中立位置」とは、ドライブギヤのいずれも同期機構によって入力軸3aまたは出力軸3bに固定されない位置(インギヤされない位置)を言う。中立位置の検出は、ニュートラルセンサ5eから出力されるニュートラルセンサ信号Pnに基づいて判定される。従って、シフト段判定装置6がニュートラルセンサ信号Pnのオン信号を受信する場合は現シフト段がニュートラル位置(YES)と判定され、ステップS4へ進み再度現シフト段が中立位置か否かを判定する。他方、ニュートラルセンサ信号Pnのオン信号を受信しない場合は現シフト段が中立位置ではない(NO)と判定され、ステップS1へ戻り再度、現シフト段の実変速比であるギヤレシオ演算Rgを算出する。
【0034】
ステップS4では、ステップS3と同様に中立位置か否かを判定する。現シフト段がニュートラル位置(YES)と判定された場合は、現シフト段のステータスはニュートラル位置と確定(決定)され、ステップS12へ進み、シフト段ステータス表示器7において何も表示されない。なお、本実施例で言う「確定(決定)」とは、シフト段判定装置6等の制御装置が現シフト段を「シフト段ステータス」(データ)として認識することを言い、確定された「シフト段ステータス」は制御装置内に保存される。そして、ステップS4に戻り再度同じ処理を実施する。他方、現シフト段が中立位置ではない(NO)と判定された場合は、ステップS5へ進み、ステップS1と同様に現シフト段の実変速比(ギヤレシオ演算Rg)を算出する。
【0035】
ステップS6では、ギヤレシオ演算Rgが、次段である2速段の変速比変動許容領域内か否かを判定する。ステップS5で算出したギヤレシオ演算Rgが図6に示される2速段の変速比変動許容領域内(YES)にあればステップS7へ進み、遅延タイマーを始動させる。なお、遅延させる対象は現シフト段(現変速段)の決定である。また、全体を通じて「現シフト段(現変速段)」とは、算出したギヤレシオ演算Rgが図6に示される変速比変動許容領域内にあることによって判定されたシフト段(変速段)のことを意味する。
【0036】
ギヤレシオ演算Rgが2速段の変速比変動許容領域から離脱状態(NO)にあれば、現シフト段のステータスは”不確定”として確定(決定)されるため、ステップS13へ進み、シフト段ステータス表示器7において何も表示されない。そして、ステップS4に戻り再度同じ処理を実施する。
【0037】
ステップS8では、ステップS1及びS5と同様に現シフト段の実変速比であるギヤレシオ演算Rgを算出する。
【0038】
ステップS9では、ステップS6と同様にステップS8で算出したギヤレシオ演算Rgが2速段の変速比変動許容領域内か否かを判定する。ステップS8で算出したギヤレシオ演算Rgが2速段の変速比変動許容領域内(YES)にあれば、ステップS10へ進む。他方、ギヤレシオ演算Rgが2速段の変速比変動許容領域から離脱状態(NO)にあれば、現シフト段のステータスは確定しないため、ステップS14へ進み、ステップS14において遅延タイマーの作動は停止され遅延時間はゼロにリセットされる。その後再度ステップS4へ戻り、再度中立位置か否かを判定する。なお、ステップS4→ステップS5→ステップS6を経てステップS7において再度遅延タイマーを始動させる場合、遅延タイマーはゼロからスタートすることになる。
【0039】
ステップS10では、遅延時間(遅延タイマーがスタートした後の経過時間)が設定時間T2*を超えたか否かを判定する。遅延時間が設定時間T2*を超えている(YES)と判定された場合は、現シフト段のステータスが確定(決定)しステップS11へ進み、シフト段ステータス表示器7において2速段を意味する”2”と表示され、処理が終了する。他方、遅延時間が設定時間T2*を超えていない(NO)と判定された場合は、設定時間T2*が経過するまで、実変速比の算出処理(ステップS8)および現シフト段の判定処理(ステップS9)を繰り返し実施し、その後ステップS11へ進み、シフト段ステータス表示器7において2速段を意味する”2”と表示され、処理が終了する。
【0040】
なお、遅延タイマーの設定時間の長さについては変速後のシフト段毎に異なり、1速段の設定時間T1*が最大で、以後、2速段の設定時間T2*>3速段の設定時間T3*>4速段の設定時間T4*>5速段の設定時間T5*>6速段の設定時間T6*の順に大きくなる。これは、低速段の伝達トルク、ギヤの回転モーメントが高速段に比べ大きいためである。
【0041】
図3は、図2のシフト段誤検知防止処理(保持タイマー無し)に係るニュートラルセンサ信号Pn、カウンターシャフト回転数Ncとメインシャフト回転数Nmとのギヤレシオ演算Rg、並びにシフト段ステータス等の各タイムチャート(時系列データ)を示す説明図である。なお、参考としてシフト荷重Ls、クラッチストロークSc、シフトストロークSs及びエンジン回転数Neの各タイムチャートについても併記されている。また、図中の「シフト段演算」とは、ギヤレシオ演算Rgを図6に示す変速比マップ(各変速段の変速比変動許容領域)に基づいて離散化処理することにより得られた現シフト段ステータス(1速段、2速段、・・・)を示す指標である。
【0042】
時刻t1においてクラッチペダル4aが踏み込まれると図2の処理が開始し、シフト段判定装置6はカウンターシャフト回転数Ncとメインシャフト回転数Nmを取り込みながらギヤレシオ演算Rgおよびシフト段演算をそれぞれ実施する。これらの処理は図2のステップS1及びS2に対応している。
【0043】
時刻t2においてニュートラルセンサ信号Pnがオン(ON)となると、シフト段ステータス(図1のシフト段ステータス表示器7)の表示は1速段を意味する”1”の表示からニュートラル位置を意味する空白表示に切り替わる。そして、時刻t2から時刻t4までの間シフト段ステータスはニュートラル位置を意味する空白表示を表示し続ける。他方、時刻t3から時刻t5におけるシフト段演算を見ると、1速段(1st)と判定している。つまり、時刻t3から時刻t5におけるシフト段ステータスの表示とシフト段演算の表示が互いに異なっている。これは、ニュートラル位置の表示に関してシフト段ステータスの表示はニュートラルセンサ信号Pnを基に決められるのに対し、シフト段演算の表示はメインシャフト回転数Nmとカウンターシャフト回転数Ncとの実変速比であるギヤレシオ演算Rgを基に決められるからである。メインシャフト3a及びカウンターシャフト3bの各回転数Nm、Ncの各タイムチャートを見ると明らかな通り、シフト開始直後において駆動系の捩り振動やガタによってメインシャフト3a及びカウンターシャフト3bの各回転数Nm、Ncは安定しない。従って、本発明のシフト段誤検知防止処理では、ニュートラル位置の判定に関してギヤレシオ演算Rgよりもニュートラルセンサ5eの信号を優先してニュートラル位置を判定するため、ニュートラル位置を正確に判定することが出来ると共に、シフト段ステータスにおいてニュートラル位置を正確に表示することが出来る。なお、このニュートラル位置の判定は図2におけるステップS3→ステップS4→ステップS12→ステップS4→・・・の処理に対応している。
【0044】
また、時刻t4においてニュートラルセンサ信号Pnがオフ(OFF)となり、時刻t4以後シフト段判定装置6はギヤレシオ演算Rg(シフト段演算)を基に現シフト段のステータスを判定する。特に時刻t4からt5において、シフト段演算は1速段のままであるから、シフト段判定装置6は(現シフト段は)未だ次段(今の場合2速段)に到達していないと判定し現シフト段は不確定であると決定してシフト段ステータスにおいて何も表示しない。なお、この不確定の判定・決定処理は図2におけるステップS5→ステップS6→ステップS13→・・・の処理に対応している。
【0045】
そして、時刻t5においてギヤレシオ演算Rgが1速段の変速比変動許容領域(図6において点線と点線によって囲まれた領域)から離脱するため、時刻t5以後
も同様にシフト段判定装置6は(現シフト段は)未だ2速段に到達していないと判定し現シフト段は不確定であると決定してシフト段ステータスにおいて何も表示しない。この不確定の判定・決定処理も図2のステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS13→・・・の処理に対応している。
【0046】
そして、時刻t6においてギヤレシオ演算Rgが次段領域である2速段の変速比変動許容領域内に到達すると、シフト段判定装置6は遅延タイマーを始動させ、遅延時間の計測を開始する。しかし、時刻t7においてシフト段演算が次段領域である2速段の変速比変動許容領域から離脱するため、時刻t7において遅延タイマーが停止され遅延時間がリセットされる。従って、時刻t6から時刻t7の間、シフト段判定装置6は現シフト段は未だ2速段に達していないと判定し現シフト段は不確定であると決定してシフト段ステータスにおいて何も表示しない。このように、ギヤレシオ演算Rgが次段の変速比変動許容領域に到達し遅延タイマーが始動する場合であっても、ギヤレシオ演算Rgがその変速比変動許容領域から離脱する場合は遅延タイマーの作動が停止され遅延時間がリセットされる。なお、この不確定の判定・決定処理は図2のステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS14→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS13・・・の処理に対応している。
【0047】
そして、時刻t8においてシフト段演算が再び2速段の変速比変動許容領域内に到達すると、シフト段判定装置6は遅延タイマーを再び始動させ、遅延時間の計測を開始する。遅延タイマーは所定の間T2*だけ、すなわち、時刻t8から時刻t9(=t8+T2*)までの間作動する。遅延タイマーが作動している間、シフト段判定装置6は現シフト段が対応する変速比変動許容領域内であるか否かを判定しながらシフト段ステータスの決定を休止しシフト段ステータスにおいて何も表示しない。この不確定の判定・決定処理は図2のステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS8→・・・の処理に対応している。
【0048】
そして、時刻t9において遅延タイマーの作動が終了すると、シフト段判定装置6はシフト段演算の結果を参照しながら現シフト段のステータスを確定(決定)し、シフト段ステータスにおいて2速段を意味する”2”と表示する。
【0049】
以上の通り、本発明のシフト段誤検知防止処理では、ギヤレシオ演算Rgと変速比マップに基づいて判定された現シフト変速段(現在インギヤ中のシフト段)を決定する際、現シフト段ステータスの決定を予め決められた時間休止する遅延タイマーが設けられ、メインシャフト3a及びカウンターシャフト3bの各回転数Nm、Ncが乱れて安定しないシンクロ作動中やシンクロ作動完了直後における現シフト段ステータスのシフト段判定装置6による決定を休止するように構成されている。これにより、シフト段判定装置6によるシフト段の誤検知が好適に防止され、その結果、メインシャフト3a及びカウンターシャフト3bの各回転数が乱れて安定しない期間における現シフト段の点滅的表示や通過のみの中間変速段の一時的表示が好適に抑制されるようになる。
また、現シフト段を判定する際に使用される実変速比の演算(ギヤレシオ演算Rg)はメインシャフト3a及びカウンターシャフト3bの各回転数Nm、Ncを基に算出されるため、クラッチの係合に関わらず現シフト段を正確に判定することが出来る。更に、現シフト段を判定する際に必要となるセンサはメインシャフト回転数検知センサ3d、カウンターシャフト回転数検知センサ3e及びニュートラルセンサ5eだけで済むことになるため、生産コストを好適に削減することが出来る。
【0050】
なお、以降では、上記遅延タイマーに加えて、所定の間だけシフト変速直前のシフト段ステータスを表示する保持タイマーを使用したシフト段誤検知防止処理の例を示す。
【0051】
図4は、本発明のシフト段誤検知防止処理(保持タイマー有り)の一例を示すフロー図である。なお、ここではシフト段を3速段から1速段へ飛びシフトダウンする例を示す。
【0052】
先ず、ステップS1では、現シフト段の実変速比を演算する。実変速比の演算はメイン回転数検知センサ3dから出力されるメインシャフト3aの回転数に係る信号Nmと、カウンター回転数検知センサ3eから出力されるカウンターシャフト3bの回転数に係る信号Ncとの比を算出することにより行われる。なお、その演算結果は、ギヤレシオ演算Rg(図5)としてシフト段判定装置6内に記憶される。
【0053】
次に、ステップS2では、ギヤレシオ演算Rgが3速段の変速比変動許容領域内か否かを判定する。ステップS1で算出したギヤレシオ演算Rgが3速段の変速比変動許容領域内(YES)にあればステップS3へ進む。他方、ギヤレシオ演算Rgが3速段の変速比変動許容領域から離脱状態(NO)にあれば、ステップS4へ進み保持タイマーを始動させる。
【0054】
次に、ステップS3では、現シフト段が中立(ニュートラル位置)か否かを判定する。シフト段判定装置6がニュートラルセンサ信号Pnのオン信号を受信する場合は現シフト段がニュートラル位置(YES)と判定され、ステップS4へ進み保持タイマーを始動させる。他方、シフト段判定装置6がニュートラルセンサ信号Pnのオン信号を受信しない場合は現シフト段がニュートラル位置ではない(NO)と判定され、ステップS1へ戻り再度、現シフト段の実変速比であるギヤレシオ演算Rgを算出する。
【0055】
このように、ギヤレシオ演算Rgが現シフト段の変速比変動許容領域から離脱した時、あるいはニュートラルセンサ信号Pnのオン信号を受信した時の何れか早い時に、シフト段判定装置6は保持タイマーを始動させる。
【0056】
ステップS4では、保持タイマーを始動させる(保持時間の計測を開始する。)。保持タイマーが作動している間、シフト段判定装置6は保持タイマーが始動する直前のシフト段ステータスを表示する。なお、保持タイマーが始動する直前のシフト段を表示する代わりに、何も表示しないとすることも可能である。
【0057】
ステップS5では、ステップS1と同様に現シフト段の実変速比であるギヤレシオ演算Rgを算出する。
【0058】
ステップS6では、ギヤレシオ演算Rgが次段である2速段の変速比変動許容領域内か否かを判定する。ステップS2と同様にギヤレシオ演算Rgが図6に示される2速段の変速比変動許容領域内(YES)にあればステップS11へ進み遅延タイマーを始動させる。他方、ギヤレシオ演算Rgが図6に示される2速段の変速比変動許容領域から離脱状態(NO)にあればステップS7へ進む。このように、保持タイマーが作動している間であっても、シフト段判定装置6が遅延タイマーの開始信号(ギヤレシオ演算Rgが次段の変速比変動許容領域内に到達したという信号)を受信した時は、保持タイマーを停止し遅延タイマーを始動する。つまり、本発明のシフト段誤検知防止処理では遅延タイマーの処理が保持タイマーの処理よりも優先されることになる。
【0059】
ステップS7では、保持時間(保持タイマーを始動した後の経過時間)が設定時間Tkを超えたか否かを判定する。保持時間が設定時間Tkを超えている(YES)と判定された場合は、ステップS8へ進む。他方、保持時間が設定時間Tkを超えていない(NO)と判定された場合は、ステップS5へ戻り、現シフト段の実変速比であるギヤレシオ演算Rgを算出する。
【0060】
ステップS8では、ステップS3と同様にニュートラル位置か否かを判定する。現シフト段がニュートラル位置(YES)と判定された場合は、現シフト段のステータスはニュートラル位置と確定(決定)され、ステップS16へ進み、シフト段ステータス表示器7において何も表示されない。そして、ステップS8に戻り再度同じ処理を実施する。他方、現シフト段がニュートラル位置ではない(NO)と判定された場合は、ステップS9へ進み、ステップS1及びS5と同様に現シフト段の実変速比であるギヤレシオ演算Rgを算出する。
【0061】
ステップS10では、ギヤレシオ演算Rgが、次段である1速段の変速比変動許容領域内か否かを判定する。ステップS9で算出したギヤレシオ演算Rgが1速段の変速比変動許容領域内(YES)にあればステップS11へ進み、遅延タイマーを始動させる。他方、ギヤレシオ演算Rgが1速段の変速比変動許容領域から離脱状態(NO)にあれば、シフト段判定装置6は未だ(現シフト段は)1速段に達していないと判定し現シフト段のステータスは不確定として確定(決定)して、ステップS17へ進み、シフト段ステータス表示器7において何も表示しない。そして、ステップS8に戻り再度同じ処理を実施する。
【0062】
ステップS12では、ステップS1、S5及びS9と同様に現シフト段の実変速比であるギヤレシオ演算Rgを算出する。
【0063】
ステップS13では、ステップS10と同様にギヤレシオRgが1速段の変速比変動許容領域内か否かを判定する。ステップS12で算出したギヤレシオ演算Rgが図6に示される1速段の変速比変動許容領域内(YES)にあれば、ステップS14へ進む。他方、ギヤレシオ演算Rgが図6に示される1速段の変速比変動許容領域から離脱状態(NO)にあれば、現シフト段のステータスは確定しないため、ステップS18へ進み、ステップS18において遅延タイマーの作動は停止され遅延時間はゼロにリセットされる。その後再度ステップS8へ戻り、再度ニュートラル位置か否かを判定する。なお、ステップS8→ステップS9→ステップS10を経てステップS10において再度遅延タイマーを始動させる場合は、遅延タイマーはゼロからスタートすることになる。
【0064】
ステップS14では、遅延時間(遅延タイマーがスタートした後の経過時間)が設定時間T1*を超えたか否かを判定する。遅延時間が設定時間T1*を超えている(YES)と判定された場合は、シフト段判定装置6は現シフト段が1速段に到達したと判定しステップS15へ進み、現シフト段のステータスが確定(決定)され、シフト段ステータス表示器7において1速段を意味する”1”と表示され、処理が終了する。遅延時間が設定時間T1*を超えていない(NO)と判定された場合は、設定時間T1*が経過するまで、実変速比の算出処理(ステップS12)および現シフト段の判定処理(ステップS13)を繰り返し実施し、その後ステップS15へ進み、現シフト段のステータスが確定(決定)されシフト段ステータス表示器7において1速段を意味する”1”と表示され、処理が終了する。
【0065】
図5は、図4のシフト段誤検知防止処理(保持タイマー有り)に係るニュートラルセンサ信号Pn、カウンターシャフト回転数Ncとメインシャフト回転数Nmとのギヤレシオ演算Rg、並びにシフト段ステータス等の各タイムチャート(時系列データ)を示す説明図である。なお、参考としてシフト荷重Ls、クラッチストロークSc、シフトストロークSs及びエンジン回転数Neの各タイムチャートについても併記されている。また、図中の「シフト段演算」とは、ギヤレシオ演算Rgを図6に示す変速比マップ(各変速段の変速比変動許容領域)に基づいて離散化処理することにより得られた現シフト段ステータス(1速段、2速段、・・・)を示す指標である。
【0066】
時刻t1においてクラッチペダル4aが踏み込まれると図4の処理が開始し、シフト段判定装置6はカウンターシャフト回転数Ncとメインシャフト回転数Nmを取り込みながらギヤレシオ演算Rgおよびシフト段演算をそれぞれ実施する。これらの処理は例えば図4のステップS1及びS2に対応している。
【0067】
時刻t2においてニュートラルセンサ信号Pnがオン(ON)となると、保持タイマーが始動する。保持タイマーが作動している期間シフト段判定装置6はシフト段ステータス表示器7において、ニュートラルセンサ信号Pnのオン信号を受信する直前のシフト段ステータスを表示する。今の場合、直前のシフト段ステータスは3速段であるから、シフト段ステータス表示器7において3速段を意味する”3”と表示される。ここで注意しなければならないのは、時刻t4においてギヤレシオ演算Rgが次段である2速段の変速比変動許容領域内に到達するため、シフト段判定装置6は保持タイマーを停止させると共に遅延タイマーを始動させる。これらの処理は図4のステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS11に対応している。
【0068】
しかし、時刻t5において実変速比(ギヤレシオRg)が2速段の変速比変動許容領域を離脱しシフト段判定装置6は時刻t5に遅延タイマーを停止させると共に遅延時間をゼロにリセットする。結果的に、遅延タイマーは予め設定された時間T2*の途中で終了することになる。。それ以後時刻t6までギヤレシオ演算Rgは次段である1速段の変速比変動許容領域内に到達していないため、シフト段判定装置6はシフト段ステータスを確定することが出来ず、シフト段ステータス表示器7において2速段を意味する”2”が表示されずに何も表示されない。つまり、3速段から1速段へのシフト変速において、単に通過するだけの中間変速段である2速段がシフト段ステータスとしてシフト段判定装置6によって誤検知されることはない。なお、これらの処理は図4のステップS12→ステップS13→ステップS18に対応している。
【0069】
時刻t6において実変速比(ギヤレシオRg)が1速段の変速比変動許容領域内に到達すると、シフト段判定装置6は遅延タイマーを始動させ、遅延時間の計測を開始する。遅延タイマーは所定の間T1*だけ、すなわち、時刻t6から時刻t7(=t6+T1*)までの間作動する。遅延タイマーが作動している間、シフト段判定装置6は現シフト段が対応する変速比変動許容領域内であるか否かを判定しながらシフト段ステータスの決定を休止しシフト段ステータスにおいて何も表示しない。そのため、シフト段演算を見ると、時刻t6から時刻t7までの間、シフト段演算は1速段(1st)と判定しているのに対し、シフト段ステータスにおいては不確定として現シフト段は確定(決定)していない。これらの処理は図4のステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS13→・・・の処理に対応している。
【0070】
時刻t7において遅延タイマーの作動が終了すると、シフト段判定装置6はシフト段演算の結果を参照しながら現シフト段のステータスを確定(決定)し、シフト段ステータスにおいて1速段を意味する”1”と表示する。
【0071】
以上の通り、本発明のシフト段誤検知防止処理では、ギヤレシオ演算Rgと変速比マップに基づいて判定された現シフト変速段(現在インギヤ中のシフト段)を決定する際、現シフト段ステータスの決定を予め決められた時間休止する遅延タイマーが設けられ、メインシャフト3a及びカウンターシャフト3bの各回転数Nm、Ncが乱れて安定しないシンクロ作動中やシンクロ作動完了直後における現シフト段ステータスのシフト段判定装置6による決定を休止するように構成されている。これにより、シフト段判定装置6によるシフト段の誤検知が好適に防止され、その結果、メインシャフト3a及びカウンターシャフト3bの各回転数が乱れて安定しない期間における現シフト段の点滅的表示や通過のみの中間変速段の一時的表示が好適に抑制されるようになる。
また、現シフト段を判定する際に使用される実変速比の演算(ギヤレシオ演算Rg)はメインシャフト3a及びカウンターシャフト3bの各回転数Nm、Ncを基に算出されるため、クラッチの係合に関わらず現シフト段を正確に判定することが出来る。更に、現シフト段を判定する際に必要となるセンサはメインシャフト回転数検知センサ3d、カウンターシャフト回転数検知センサ3e及びニュートラルセンサ5eだけで済むことになるため、生産コストを好適に削減することが出来る。
また、シフト変速直前のシフト段ステータスを表示する保持タイマーを設けることにより、シフト段ステータスにおいて空白表示が短縮されるため、現シフト段の点滅的表示や中間シフト段の一時的表示を更に好適に抑制することが可能となり、これによりドライバーに違和感を与えることが好適になくなる。
【符号の説明】
【0072】
1 駆動源
2 クラッチ部
3 ギヤ部
4 クラッチ操作部
5 シフト段操作部
6 シフト段判定装置
7 シフト段ステータス表示器
100 変速機システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6