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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-228305(P2015-228305A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20060101AFI20151120BHJP
   H01M 8/00 20060101ALI20151120BHJP
   H01M 8/10 20060101ALN20151120BHJP
【FI】
   H01M8/04 X
   H01M8/04 Y
   H01M8/04 K
   H01M8/04 P
   H01M8/04 T
   H01M8/04 J
   H01M8/00 A
   H01M8/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-112984(P2014-112984)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】濱地 正和
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真也
(72)【発明者】
【氏名】谷本 智
(72)【発明者】
【氏名】樽家 憲司
(72)【発明者】
【氏名】吉村 祐哉
【テーマコード(参考)】
5H026
5H127
【Fターム(参考)】
5H026AA06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA39
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127BB39
5H127CC06
5H127DA02
5H127DA11
5H127DB47
5H127DB48
5H127DB63
5H127DB92
5H127DC44
5H127DC46
5H127DC68
5H127DC76
5H127DC96
(57)【要約】
【課題】低温起動時において燃料電池スタックの環境に合わせてフィードフォワード的に出力電流を制限する燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池スタックと、燃料電池の内部平均温度を取得する内部温度取得手段と、スタック内部のMEAの含水状態に相関のあるインピーダンス抵抗値を検出するインピーダンスセンサと、低温起動制御の実行が必要であると判断されている間は、スタックの出力電流を所定の制限電流値以下の範囲内で制限する電流制限器と、制限電流値を設定する制限電流値設定手段と、を備える。制限電流値設定手段は、内部平均温度に基づいて算出された第1制限値及びインピーダンス抵抗値に基づいて算出された第2制限値のうち小さい方を制限電流値として設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスが供給されると発電する燃料電池と、
前記燃料電池の内部温度を取得する内部温度取得手段と、
前記燃料電池の内部の膜の含水状態を取得する含水状態取得手段と、
前記燃料電池の起動時に低温起動制御の実行の要否を判断する低温起動判断手段と、
前記低温起動制御の実行が必要であると判断されている間は、前記燃料電池の出力電流を所定の制限電流値以下の範囲内で制限する電流制限手段と、
前記制限電流値を設定する制限電流値設定手段と、を備える燃料電池システムであって、
前記制限電流値設定手段は、前記内部温度に基づいて前記出力電流に対する第1制限値を算出する第1制限手段と前記含水状態に基づいて前記出力電流に対する第2制限値を算出する第2制限手段とを備え、前記第1及び第2制限値のうち小さい方を前記制限電流値として設定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池に対する停止指令が生じてから所定の条件が満たされるまで発電を継続する停止処理を実行する停止処理実行手段と、
前記燃料電池の発電停止時における前記内部温度及び季節又はこれらの何れかに関する情報に基づいて、前記停止処理の完了時における前記含水状態の目標含水状態を設定する目標含水状態設定手段と、を備え、
前記停止処理実行手段は、前記停止処理の完了時に前記目標含水状態が実現されるように発電を継続し、
前記制限電流値設定手段は、前記含水状態取得手段を用いることができない状態であるときは前記停止処理の完了時における前記含水状態と前記目標含水状態とを取得し、前記含水状態が前記目標含水状態より湿潤側である場合には前記第1制限値を前記制限電流値として設定し、前記含水状態が前記目標含水状態より乾燥側である場合には前記第1及び第2制限値より小さな所定の最小電流値を前記制限電流値として設定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制限電流値設定手段は、前記内部温度が所定の判定温度より低いときには前記第1及び第2制限値のうち小さい方を前記制限電流値として設定し、前記内部温度が前記判定温度以上であるときには前記第1及び第2制限値より大きな所定の最大電流値を前記制限電流値として設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池の内部を流路の一部に含んだ冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に設けられ当該循環路内で冷媒を循環させるポンプと、
前記ポンプを駆動するポンプ駆動手段と、
前記燃料電池の内部のうち最も温度が高い部分の温度である最高温度を取得する最高温度取得手段と、を備え、
前記ポンプ駆動手段は、前記低温起動制御の実行が必要と判断されている間において、前記最高温度が所定の循環開始温度を超えるまでは前記ポンプの駆動を停止し、前記最高温度が前記循環開始温度を超えてから前記ポンプの駆動を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池の内部の温度の平均である平均温度を取得する平均温度取得手段と、
前記ポンプ駆動手段によって前記ポンプの駆動が開始された後の所定の期間にわたる前記平均温度の低下幅を取得する平均温度低下幅取得手段と、をさらに備え、
前記制限電流値設定手段は、前記平均温度が所定の判定温度より高い場合において、前記平均温度の低下幅が所定の閾値以下であるときは前記第1及び第2制限値より大きな所定の最大電流値を前記制限電流値として設定し、前記平均温度の低下幅が前記閾値より大きいときは前記第1及び第2制限値のうち小さい方を前記制限電流値として設定することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池の内部の温度の平均である平均温度を取得する平均温度取得手段と、
前記燃料電池の出力電流を取得する出力電流取得手段と、
前記ポンプ駆動手段によって前記ポンプの駆動が開始された後の所定の期間にわたる前記出力電流の増加量を取得する電流増加量取得手段と、をさらに備え、
前記制限電流値設定手段は、前記平均温度が所定の判定温度より高い場合において、前記出力電流の増加量が所定の閾値より大きいときは前記第1及び第2制限値より大きな所定の最大電流値を前記制限電流値として設定し、前記出力電流の増加量が前記閾値以下であるときは前記第1及び第2制限値のうち小さい方を前記制限電流値として設定することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
蓄電装置と、前記停止処理において発電した電力を利用して前記蓄電装置を充電する停止時充電手段と、をさらに備え、
前記停止時充電手段は、前記停止処理の実行時における前記含水状態が乾燥側であるほど前記蓄電装置への充電量を多くすることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両は、その電源システムとして燃料電池システムを備える。燃料電池スタックは、複数の単セルが積層されたスタック構造である。各単セルは、膜電極構造体(MEA)をアノードセパレータ及びカソードセパレータで挟持して構成される。アノードセパレータには、反応ガスとしての水素が流れるアノード流路が形成されている。カソードセパレータには、酸化剤ガスとしての空気が流れるカソード流路が形成されている。燃料電池システムは、以上のような燃料電池スタックのアノード流路及びカソード流路に水素及び空気を供給することによって発電する。
【0003】
特許文献1には、このような燃料電池システムの氷点下起動時における出力制御に関する発明が開示されている。特許文献1の発明では、燃料電池の内部の残留水が凍結するような氷点下起動時には、各単セルの電圧を取得し、これら各セル電圧値の平均値や標準偏差などに基づいて燃料電池スタックの出力電流を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−100095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように特許文献1の発明は、セル電圧値に基づいて燃料電池スタックの出力電流を制限する技術である。しかしながら低温起動時において生じ得る不具合がセル電圧値の異常として反映されるまでには遅れがある。このため、特許文献1の発明のようにセル電圧値に基づいて出力電流を制限しても、これによって燃料電池スタックの発電状態が良好に転じない場合がある。このような場合、出力電流の制限後もセル電圧値が低下し続けてしまい、これを回復させるためのセル電圧回復処理が実行され、結果として起動にかかる時間が長くなる場合がある。
【0006】
本発明は、低温起動時において燃料電池スタックの環境に合わせてフィードフォワード的に出力電流を制限する燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)燃料電池システム(例えば、後述の燃料電池システム1)は、反応ガスが供給されると発電する燃料電池(例えば、後述の燃料電池スタック2)と、前記燃料電池の内部温度を取得する内部温度取得手段(例えば、後述のスタックエア温度センサ22及びECU6)と、前記燃料電池の内部の膜の含水状態を取得する含水状態取得手段(例えば、後述のインピーダンスセンサ24及びECU6)と、前記燃料電池の起動時に低温起動制御の実行の要否を判断する低温起動判断手段(例えば、後述のECU6、及び図2のS1の実行に係る手段)と、前記低温起動制御の実行が必要であると判断されている間は、前記燃料電池の出力電流を所定の制限電流値以下の範囲内で制限する電流制限手段(例えば、後述の電流制御器29及びECU6)と、前記制限電流値を設定する制限電流値設定手段(例えば、後述のECU6、及び図2,6,7に示す処理の実行に係る手段)と、を備える。前記制限電流値設定手段は、前記内部温度に基づいて前記出力電流に対する第1制限値を算出する第1制限手段と前記含水状態に基づいて前記出力電流に対する第2制限値を算出する第2制限手段とを備え、前記第1及び第2制限値のうち小さい方を前記制限電流値として設定する。
【0008】
(2)この場合、前記燃料電池システムは、前記燃料電池に対する停止指令が生じてから所定の条件が満たされるまで発電を継続する停止処理を実行する停止処理実行手段(例えば、後述のECU6、及び図5の処理の実行に係る手段)と、前記燃料電池の発電停止時における前記内部温度及び季節又はこれらの何れかに関する情報に基づいて、前記停止処理の完了時における前記含水状態の目標含水状態を設定する目標含水状態設定手段(例えば、後述のECU6、及び図6のS22の処理の実行に係る手段)と、を備え、前記停止処理実行手段は、前記停止処理の完了時に前記目標含水状態が実現されるように発電を継続し、前記制限電流値設定手段は、前記含水状態取得手段を用いることができない状態であるとき(例えば、図6のS41の判断がNOの場合)は前記停止処理の完了時における前記含水状態と前記目標含水状態とを取得し、前記含水状態が前記目標含水状態より湿潤側である場合には前記第1制限値を前記制限電流値として設定し、前記含水状態が前記目標含水状態より乾燥側である場合には前記第1及び第2制限値より小さな所定の最小電流値を前記制限電流値として設定することが好ましい。
【0009】
(3)この場合、前記制限電流値設定手段は、前記内部温度が所定の判定温度(例えば、後述の図2の第1判定温度)より低いときには前記第1及び第2制限値のうち小さい方を前記制限電流値として設定し、前記内部温度が前記判定温度以上であるときには前記第1及び第2制限値より大きな所定の最大電流値(例えば、後述の図3の暖機時最大電流値)を前記制限電流値として設定することが好ましい。
【0010】
(4)この場合、前記燃料電池システムは、前記燃料電池の内部を流路の一部に含んだ冷媒循環路(例えば、後述の冷媒循環路51)と、前記冷媒循環路に設けられ当該循環路内で冷媒を循環させるポンプ(例えば、後述のウォータポンプ52)と、前記ポンプを駆動するポンプ駆動手段(例えば、後述のECU6)と、前記燃料電池の内部のうち最も温度が高い部分の温度である最高温度を取得する最高温度取得手段(例えば、後述のスタックエア温度センサ25及びECU6)と、を備え、前記ポンプ駆動手段は、前記低温起動制御の実行が必要と判断されている間において、前記最高温度が所定の循環開始温度を超えるまでは前記ポンプの駆動を停止し、前記最高温度が前記循環開始温度を超えてから前記ポンプの駆動を開始することが好ましい。
【0011】
(5)この場合、前記燃料電池システムは、前記燃料電池の内部の温度の平均である平均温度を取得する平均温度取得手段(例えば、後述のスタックエア温度センサ25及びECU6)と、前記ポンプ駆動手段によって前記ポンプの駆動が開始された後の所定の期間にわたる前記平均温度の低下幅を取得する平均温度低下幅取得手段(例えば、後述のECU6、及び図6のS47の実行に係る手段)と、をさらに備え、前記制限電流値設定手段は、前記平均温度が所定の判定温度より高い場合(例えば、後述の図6のS33の判断がYESの場合)において、前記平均温度の低下幅が所定の閾値以下であるときは前記第1及び第2制限値より大きな所定の最大電流値(例えば、後述の図3の暖機時最大電流値)を前記制限電流値として設定し、前記平均温度の低下幅が前記閾値より大きいときは前記第1及び第2制限値のうち小さい方を前記制限電流値として設定することが好ましい。
【0012】
(6)この場合、前記燃料電池システムは、前記燃料電池の内部の温度の平均である平均温度を取得する平均温度取得手段(例えば、後述のスタックエア温度センサ25及びECU6)と、前記燃料電池の出力電流を取得する出力電流取得手段(例えば、後述の電流センサ26及びECU6)と、前記ポンプ駆動手段によって前記ポンプの駆動が開始された後の所定の期間にわたる前記出力電流の増加量を取得する電流増加量取得手段(例えば、後述のECU6、及び図7のS67の実行に係る手段)と、をさらに備え、前記制限電流値設定手段は、前記平均温度が所定の判定温度より高い場合(例えば、後述の図7のS53の判断がYESの場合)において、前記出力電流の増加量が所定の閾値より大きいときは前記第1及び第2制限値より大きな所定の最大電流値(例えば、後述の図3の暖機時最大電流値)を前記制限電流値として設定し、前記出力電流の増加量が前記閾値以下であるときは前記第1及び第2制限値のうち小さい方を前記制限電流値として設定することが好ましい。
【0013】
(7)この場合、前記燃料電池システムは、蓄電装置(例えば、後述のバッテリB)と、前記停止処理において発電した電力を利用して前記蓄電装置を充電する停止時充電手段(例えば、後述のECU6、及び図5の停止時充電処理の実行に係る手段)と、をさらに備え、前記停止時充電手段は、前記停止処理の実行時における前記含水状態が乾燥側であるほど前記蓄電装置への充電量を多くすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
(1)本発明では、燃料電池の内部温度及び膜の含水状態を取得し、取得した内部温度から定められる第1制限値と含水状態から定められる第2制限値とのうち小さい方を制限電流値として設定し、燃料電池の出力電流をこの制限電流値以下の範囲内で制限する。ここで、制限電流値を定めるための入力として用いる燃料電池の内部温度及び燃料電池内部の膜の含水状態は、何れも低温起動時における燃料電池の発電安定性に影響を及ぼす環境情報である。本発明では、これら2つの環境情報を用いて定められた制限電流値を用いることにより、低温起動時において燃料電池に対し過大な負荷が要求された場合であっても、燃料電池の発電安定性が低下するのを未然に防止できるので、上述のようなセル電圧回復処理が必要以上に実行されることがない。このため、低温起動を速やかに完了できる。
【0015】
(2)本発明では、燃料電池の発電停止時における内部温度やその時の季節に関する情報を用いて目標含水状態を設定し、この目標含水状態が実現されるように停止処理を実行する。これにより、燃料電池の起動時における膜の含水状態を揃えることができるので、起動にかかる時間にばらつきが生じるのを防止できる。
また、上述のように本発明では含水状態取得手段によって取得した含水状態を用いて第2制限値を算出する。しかしながら含水状態取得手段は、故障する場合や、起動直後であって含水状態を取得できないような場合もある。本発明では、このような場合には、前回の停止処理の実行における含水状態や目標含水状態を用いることにより、起動時における膜の含水状態を簡易的に判断する。より具体的には、前回の含水状態が目標含水状態より湿潤側である場合には、現在の膜の含水状態は概ね正常であると判断し、内部温度に基づいて算出した第1制限値を制限電流値として設定する。一方、前回の含水状態が目標含水状態範より乾燥側である場合には、現在の膜の含水状態は正常な状態よりも乾燥気味であると判断し、第1及び第2制限値よりも小さな所定の最小電流値を制限電流値として設定する。これにより、含水状態取得手段を用いることができない状態であっても、制限電流値が過剰に大きくなってしまい、結果として膜が過乾燥になるのを防止できる。
【0016】
(3)本発明では、燃料電池の内部温度が所定の判定温度を超えるまでは上述のように第1及び第2制限値のうち小さい方を制限電流値として設定し、内部温度が判定温度を超えた場合にはこれら第1及び第2制限値よりも大きな最大電流値を制限電流値として設定する。これにより、内部温度が判定温度を超えた後は、出力電流は最大電流値まで許容されるので、燃料電池の暖機を促進することができる。
【0017】
(4)本発明では、燃料電池内部の最高温度を取得し、この最高温度が循環開始温度を超えるまではポンプの駆動を停止し、最高温度が循環開始温度を超えてからポンプの駆動を開始する。これにより、燃料電池の温度がある程度上昇するまで、燃料電池に冷えた冷媒が流れないので、燃料電池の暖機を促進することができる。
【0018】
(5)冷媒の循環を開始すると、燃料電池に冷えた冷媒が流れることによって、燃料電池の温度が低下し、ひいては発電安定性も低下する場合がある。本発明では、ポンプの駆動が開始された後の所定の期間にわたる平均温度の低下幅が所定の閾値より大きいときには、第1及び第2制限値のうち小さい方を制限電流値として設定する。これにより、冷媒の循環が燃料電池の温度低下に大きな影響を及ぼすような場合には、その後燃料電池の発電安定性が大きく低下する前に燃料電池の出力電流が制限されるので、上述のようなセル電圧回復処理が実行されるのを防止できる。したがって、低温起動を速やかに完了できる。
【0019】
(6)上述のように冷媒の循環を開始すると、燃料電池の温度は低下する傾向がある。したがって、このような環境下において燃料電池の出力電流がさほど増加しなかった場合、発電による温度上昇の影響よりも冷媒の循環による温度低下の影響の方が大きく、結果として燃料電池の温度が低下し、ひいては発電安定性も低下するおそれがある。本発明では、ポンプの駆動が開始された後の所定の期間にわたる出力電流の増加量が所定の閾値以下であるときには、第1及び第2制限値のうち小さい方を制限電流値として設定する。これにより、燃料電池の発電安定性が大きく低下する前に燃料電池の出力電流が制限されるので、上述のようなセル電圧回復処理が実行されるのを防止でき、したがって、低温起動を速やかに完了できる。
【0020】
(7)上述のように低温起動時には、膜の含水状態に基づいて燃料電池の出力電流に対する制限電流値を決定する。これに対し本発明では、次回の低温起動時に燃料電池の出力電流が制限されることに備えて、停止処理の実行時における含水状態が乾燥側であるほど蓄電装置への充電量を多くする。これにより、低温起動時に燃料電池の出力電流が制限される場合であっても、その不足分を蓄電装置で賄うことができるので、利用者の要求に対し不足なく応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
図2】スタックの出力電流に対する制限電流値を設定する手順を示すフローチャートである。
図3】スタックの内部平均温度に基づいて第1制限値を算出するマップの一例である。
図4】インピーダンス抵抗値に基づいて第2制限値を算出するマップの一例である。
図5】システム停止処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係る燃料電池システムにおける制限電流値を設定する手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の第3実施形態に係る燃料電池システムにおける制限電流値を設定する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム1の構成を示す図である。
燃料電池システム1は、燃料電池スタック2と、燃料電池スタック2に反応ガスとしての水素を供給するアノード系3と、燃料電池スタック2に反応ガスとしての酸素を含んだエアを供給するカソード系4と、燃料電池スタック2を冷却する冷却装置5と、燃料電池スタック2で発電した電力を蓄えるバッテリBと、燃料電池スタック2及びバッテリBからの電力の供給によってタイヤ(図示せず)を駆動する走行モータMと、これらの電子制御ユニットであるECU6と、を備える。なお、この燃料電池システム1は、上記タイヤを駆動輪とした燃料電池車両(図示せず)に搭載される。
【0023】
燃料電池スタック(以下、単に「スタック」という)2は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。各燃料電池セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成される。膜電極構造体は、アノード電極(陰極)及びカソード電極(陽極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。通常、両電極は、固体高分子電解質膜に接して酸化・還元反応を行う触媒層と、この触媒層に接するガス拡散層とから形成される。このスタック2は、アノード電極側に形成されたアノード流路21に水素が供給され、カソード電極側に形成されたカソード流路22に酸素を含んだ空気が供給されると、これらの電気化学反応により発電する。
【0024】
発電中のスタック2から取り出される出力電流は、電流制御器29を介してバッテリBや負荷(走行モータM及びエアコンプレッサ41等)に入力される。ECU6は、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサからの出力信号に基づいて、スタック2の出力電流に対する要求値に相当する要求発電電流値を算出する(図示せず)。またECU6は、後に図2を参照して説明する手順に従ってスタック2の出力電流に対する上限値に相当する制限電流値を設定する。電流制御器29は、ECU6によって算出されたこれら要求発電電流値及び制限電流値を用いて発電中のスタック2の出力電流を制御する。
【0025】
バッテリBは、スタック2で発電した電力や、走行モータMによって回生制動力として回収した電気エネルギーを蓄える。また、例えば燃料電池システム1の起動時において、スタック2の出力電流が制限されているときや車両の高負荷運転時等には、バッテリBに蓄えられた電力はスタック2の出力を補うようにして負荷に供給される。
【0026】
アノード系3は、水素ガスを高圧で貯蔵する水素タンク31と、水素タンク31からスタック2のアノード流路21の導入部に至る水素供給管32と、アノード流路21の排出部からカソード系4に設けられた希釈器(図示せず)に至る水素排出管33と、水素排出管33から分岐し水素供給管32に至る水素還流管34と、を含んで構成される。水素を含んだガスの水素循環流路は、水素供給管32、アノード流路21、水素排出管33及び水素還流管34によって構成される。
【0027】
水素供給管32には、水素タンク31側からスタック2側へ向かって順に、遮断弁321と、遮断弁321を介して供給された新たな水素ガスをスタック2へ向けて噴射するインジェクタ322と、水素還流管34から還流されたガスをスタック2へ循環させるイジェクタ323と、が設けられている。遮断弁321は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。インジェクタ322からの水素ガスの噴射量は、ECU6によるPWM制御によって制御される。
【0028】
水素還流管34には、水素排出管33側から水素供給管32側へガスを圧送する水素循環ポンプ341が設けられている。水素排出管33には、スタック2側からカソード系4側へ向かって順に、アノード流路21からガスと共に排出された水を貯留するキャッチタンク331と、水素循環流路内のガスをカソード系4側へ排出するパージ弁332と、が設けられている。水素循環ポンプ341は、ECU6からの指令信号に応じて作動する。水素循環ポンプ341の回転数は、ECU6によって制御される。パージ弁332は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。
【0029】
またキャッチタンク331には、溜まった水を排出するためのドレイン管35が設けられている。このドレイン管35は、キャッチタンク331から水素排出管33のうちパージ弁332の下流側に至る。ドレイン管35にはドレイン弁351が設けられている。このドレイン弁351を開くと、キャッチタンク331内に溜まった水は、水素排出管33を介してカソード系4の図示しない希釈器へ排出される。ドレイン弁351は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。
【0030】
カソード系4は、エアコンプレッサ41と、エアコンプレッサ41からカソード流路22の導入部に至る空気供給管42と、カソード流路22の排出部から図示しない希釈器に至る空気排出管43と、空気排出管43から分岐し空気供給管42に至る空気還流管45と、空気排出管43と空気供給管42とを接続する加湿器46と、を含んで構成される。酸素を含んだガスの酸素循環流路は、空気供給管42、カソード流路22、空気排出管43及び空気還流管45によって構成される。
【0031】
エアコンプレッサ41は、空気供給管42を介してスタック2のカソード流路22に外気を供給する。エアコンプレッサ41は、ECU6からの指令信号に応じて作動する。エアコンプレッサ41の回転数は、ECU6によって制御される。
【0032】
加湿器46は、カソード流路22から排出されたガスに含まれる水を回収し、回収した水を用いてエアコンプレッサ41から供給される空気を加湿する。この加湿器46の機能により、発電中のスタック2のMEAは発電に適した程度に湿潤な状態に維持される。
【0033】
空気供給管42には、加湿器46をバイパスするバイパス管47が設けられている。このバイパス管47には、バイパス弁471が設けられている。バイパス弁471を開くと、エアコンプレッサ41から供給される空気の多くはバイパス管47を介して、すなわち加湿器46を迂回してスタック2に供給される。バイパス弁471は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。
【0034】
また、空気供給管42及び空気排出管43には、それぞれ入口封止弁421及び出口封止弁431が設けられている。これら封止弁421,431を閉じると、スタック2のカソード流路22の内部は、外気から遮断される。これら封止弁421,431は、ECU6からの指令信号に応じて開閉する電磁弁である。
【0035】
冷却装置5は、スタック2の内部を流路の一部として含む冷媒循環路51と、冷媒循環路51に設けられこの循環路51内で冷媒を循環させるウォータポンプ52と、冷媒循環路51の一部となるラジエタ53と、を備える。ウォータポンプ52は、ECU6からの指令信号に応じて作動する。ウォータポンプ52の回転数は、ECU6によって制御される。
【0036】
冷却装置5は、ウォータポンプ52によって冷媒を循環しスタック2と冷媒との熱交換を促進するとともに、ラジエタ53によって冷媒を冷却することにより、スタック2を保護するために定められた上限温度を上回らないようにする。
【0037】
ECU6には、バッテリ電圧センサ23、インピーダンスセンサ24、スタックエア温度センサ25、電流センサ26等の燃料電池システム1の状態を把握するための複数のセンサが接続されている。
【0038】
バッテリ電圧センサ23は、バッテリBの電圧を検出し、検出値に略比例した信号をECU6に送信する。ECU6は、バッテリ電圧センサ23の検出値を用いることによって、バッテリBのSOC[%]を取得することができる。ここで、バッテリBのSOCとは、バッテリの定格容量を1として現在の残量[kW]を百分率で表したものである。
【0039】
インピーダンスセンサ24は、スタック2のインピーダンス抵抗値を検出し、検出値に略比例した信号をECU6に送信する。スタック2のインピーダンス抵抗値は、スタック2の内部のMEAの含水状態と相関関係がある。より具体的には、MEAの含水量が減少するほどインピーダンス抵抗値は増加する傾向がある。ECU6は、インピーダンスセンサ24によって検出されたインピーダンス抵抗値を用いることによって、間接的にMEAの含水状態を取得することができる。
【0040】
電流センサ26は、スタック2の出力電流を検出し、検出値に略比例した信号をECU6に送信する。スタックエア温度センサ25は、カソード流路22から排出されるガスの温度を検出し、検出値に略比例した信号をECU6に送信する。ECU6は、スタックエア温度センサ25の検出値を用いることによって、スタック2の内部温度の平均値(内部平均温度)やスタック2の内部のうち最も高温の部分の温度(内部最高温度)等を取得することができる。
【0041】
図示しない車両の運転席には、燃料電池システム1を起動したり停止したりするために運転者が操作可能なイグニッションスイッチIGが設けられている。イグニッションスイッチIGは、運転者によってオフからオンにされると、燃料電池システム1の起動指令信号をECU6に出力する。ECU6は、この起動指令信号を受信したことを契機として、システム起動処理(図示せず)や制限電流値を設定する処理(後述の図2参照)等を開始する。イグニッションスイッチIGは、運転者によってオンからオフにされると燃料電池システム1の停止指令信号をECU6に出力する。ECU6は、この停止指令信号を受信したことを契機として、システム停止処理(後述の図5参照)を開始する。
【0042】
図2は、スタックの出力電流に対する制限電流値を設定する手順を示すフローチャートである。この処理は、イグニッションスイッチからの起動指令信号を受信したことを契機として、ECUによって繰り返し実行される。上述のように、スタックの出力電流は、この処理で設定された制限電流値以下の範囲内で電流制御器によって制限される。
【0043】
S1では、ECUは、低温起動制御要求フラグが1であるか否かを判別する。この低温起動制御要求フラグは、システム起動処理において低温起動制御の実行が要求された状態であることを明示するフラグである。この低温起動制御フラグは、燃料電池システムの起動開始時には1にセットされ、その後スタックの暖機が完了したと判断できる所定の終了条件が満たされたことに応じて0にリセットされる。
【0044】
S1の判定がNOの場合、すなわち低温起動制御の完了後である場合には、S2に移る。S2では、ECUは、所定の入力に基づいて定めた暖機完了後通常制限値を制限電流値として設定し、この処理を終了する。
【0045】
S1の判定がYESの場合、すなわち低温起動制御の実行中である場合には、S3に移る。S3では、ECUは、スタックの内部平均温度を取得し、この内部平均温度が所定の第1判定温度以上であるか否かを判定する。スタックの内部平均温度は、ソーク時間及びスタックエア温度センサ22の検出値を用いることによって算出される。
【0046】
S3の判定がNOの場合、S4に移る。S4では、ECUは、スタックの内部平均温度に基づいて、例えば図3に示すようなマップを検索することによって、制限電流値の暫定値に相当する第1制限値を算出する。図3は、内部平均温度に基づいて第1制限値を算出するためのマップの一例である。図3の例によれば、第1制限値は、内部平均温度が高くなるほど大きな値に設定される。また図3の例では、第1制限値は、内部平均温度が第1判定温度であるときに最大となる。以下では、この第1制限値の最大値を暖機時最大電流値という。
【0047】
S5では、ECUは、インピーダンス抵抗値を取得し、このインピーダンス抵抗値に基づいて、例えば図4に示すようなマップを検索することによって、制限電流値の暫定値に相当する第2制限値を算出する。図4は、スタック内部の含水状態を間接的に示すインピーダンス抵抗値に基づいて第2制限値を算出するためのマップの一例である。図4の例によれば、第2制限値は、インピーダンス抵抗値が小さくなるほど(含水状態が湿潤になるほど)大きな値に設定される。なお、図4において破線で示すように、暖機時最大電流値は、第2制限値の最大値よりも小さくなっている。また以下では、第2制限値の取り得る値のうち最も小さな値を暖機時最小電流値という。図3に示すように、この暖機時最小電流値は、第1制限値の最小値よりも小さくなっている。
【0048】
S6では、ECUは、第1制限値は第2制限値より小さいか否かを判定する。S6の判定がYESである場合には、ECUは、小さい方である第1制限値を制限電流値として設定し(S7)、この処理を終了する。またS6の判定がNOである場合には、ECUは、小さい方である第2制限値を制限電流値として設定し(S8)、この処理を終了する。すなわち、ECUは、それぞれ異なる入力に基づいて算出した第1及び第2制限値のうち小さい方を制限電流値として設定する。ここで、S6の判定がNOになる場合、すなわち第1制限値よりも第2制限値の方が小さくなる場合とは、何等かの事情によりスタックの内部が乾燥している場合といえる。
【0049】
また、S3の判定がYESの場合、すなわちスタックの内部平均温度が第1判定温度を超えた場合には、S9に移る。S9では、ECUは、上述の第1及び第2制限値よりも大きな暖機時最大電流値を制限電流値として設定し、この処理を終了する。
【0050】
図5は、システム停止処理の具体的な手順を示すフローチャートである。この処理は、イグニッションスイッチからの停止指令信号を受信したことを契機として、ECUによって実行される。スタックの発電は、停止指令信号を受信したことに応じて直ちに停止されることはなく、以下で説明する停止時充電処理及び乾燥発電処理が完了するまで継続される。
【0051】
S21では、ECUは、所定時間にわたって停止時充電処理を実行し、S22に移る。この停止時充電処理は、次回のシステム起動処理の実行やソーク期間中に実行される掃気処理(図示せず)の実行に備えて、スタックによる発電を利用してバッテリのSOCを所定の必要充電量まで充電する処理である。ここで、図4を参照して説明したように、次回の起動時ではスタックが乾燥するほど制限電流値は小さな値に設定される。したがって必要充電量は、次回の起動ではスタックの出力電流が制限されることを見越して、停止時充電処理の実行時におけるインピーダンス抵抗値が大きいほど(含水状態が乾燥側であるほど)、多くすることが好ましい。
【0052】
S22では、ECUは、所定時間にわたって乾燥発電処理を実行し、S23に移る。この乾燥発電処理は、スタック内部の乾燥が促進されるような態様での発電(以下、「乾燥発電」という)を所定時間にわたって行うことにより、これまでの発電によってスタックの内部に溜まった余分な水分をシステム外に排出する処理である。
【0053】
この乾燥発電は、以下の(a)スタック昇温、(b)アノード流路の水分排出、(c)カソード流路の水分排出、及び(d)供給エアの湿度低減等の方法を組み合わせて構成される。
【0054】
(a)第1に、スタックの温度を上昇させると、スタック内部の水分の気化が促進されるので、スタック内部の乾燥が促進される。ここで、スタックの温度を上昇させる手段としては、具体的には、ウォータポンプを間欠駆動することが挙げられる。すなわち、ウォータポンプのオン時間を短くし代わりにオフ時間を長くすると、スタックの温度が上昇する。
【0055】
(b)第2に、スタックのアノード流路の水分を排出すると、スタック内部の乾燥が促進される。ここで、アノード流路の水分を排出する手段としては、具体的には、パージ弁の開弁頻度を高くすること、水素ポンプの回転数を上昇させること、インジェクタからの水素噴射量を増加させること等が挙げられる。
【0056】
(c)第3に、カソード流路の水分を排出すると、スタック内部の乾燥が促進される。ここで、カソード流路の水分を排出する手段としては、具体的には、背圧弁の開度を小さくしながらエアコンプレッサの回転数を上昇させることが挙げられる。
【0057】
(d)第4に、スタックに供給される空気の湿度を低減すると、スタック内部の乾燥が促進される。ここで、スタックに供給される空気の湿度を低減する手段としては、具体的には、加湿器バイパス弁の開弁頻度を高くし、スタックに供給される空気のうち加湿器をバイパスして供給される空気の量の割合を増加させることが挙げられる。
【0058】
S22では、ECUは、乾燥発電処理の実行時における燃料電池の内部平均温度及び季節又はこれらの何れかに関する情報に基づいて、乾燥発電処理の完了時におけるインピーダンス抵抗値の目標値を設定する。そして、このインピーダンス抵抗値に対する目標値が実現されるように、上述の(a)〜(d)の方法を組み合わせて構成した乾燥発電を所定時間にわたり実行する。
【0059】
S23では、入口封止弁及び出口封止弁を閉じ、この処理を終了する。これにより、スタックによる発電が停止したソーク期間中に、外気がスタックのカソード流路に流入するのを防止できる。
【0060】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお以下では、上記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。第2実施形態は、制限電流値を設定する具体的な手順が第1実施形態と異なる。
【0061】
図6は、スタックの出力電流に対する制限電流値を設定する手順を示すフローチャートである。図6におけるS31〜S39の処理の内容は、それぞれ図2におけるS1〜S9の処理と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0062】
S33における判定がNOである場合、すなわち内部平均温度が第1判定温度に満たない場合、S41に移る。S41では、ECUは、スタックの含水状態を正確に把握できる状態であるか否かを判別する。ここで、スタックの含水状態を正確に把握できない状態とは、例えば、インピーダンスセンサが故障しており正確なインピーダンス抵抗値を取得できない状態や、何等かの理由によってインピーダンス抵抗値とスタックの含水状態とを正しく関連付けられない状態等を含む。S41の判定がYESである場合には、S34に移る。そして、図2を参照して説明したように、第1及び第2制限値のうち小さい方を制限電流値として設定する。
【0063】
S41の判定がNOである場合、S42に移る。上述のように第2制限値は、インピーダンス抵抗値に基づいて算出するため、S41の判定がNOである場合には第2制限値を正確に算出することができない。そこでECUは、S42では、前回に実行されたシステム停止処理の乾燥発電処理の完了時(図5のS22の完了時)におけるインピーダンス抵抗値と、この乾燥発電処理において設定されたインピーダンス抵抗値に対する目標値とを取得し、これらに基づいて簡易的に現在のスタックの含水状態を判断する。より具体的には、ECUは、前回の乾燥発電処理の完了時におけるインピーダンス抵抗値が、その目標値より大きいか否かを判定する。
【0064】
S42の判定がYESである場合、S43に移る。この場合、現在のスタックの内部は目標値に対応した状態よりも乾燥した状態である可能性が高いので、できるだけスタック内部の過乾燥を防止すべく、ECUは、暖機時最小電流値(図4参照)を制限電流値として設定し、この処理を終了する。
【0065】
S42の判定がNOである場合、S45に移る。この場合、現在のスタックの内部が過乾燥である可能性は低いので、ECUは、図3に示すマップを用いて内部平均温度に基づいて第1制限値を算出し(S45)、この第1制限値を制限電流値として設定し(S37)、この処理を終了する。
【0066】
S33における判定がYESである場合、すなわち内部平均温度が第1判定温度を超えている場合には、S46に移る。S46では、ECUは、ウォータポンプ制限フラグが1であるか否かを判定する。このウォータポンプ制限フラグは、システム起動処理においてウォータポンプの駆動が停止された状態、すなわち冷媒の循環が停止した状態であることを示すフラグである。冷媒を循環させると、スタックの内部に冷えた冷媒が流れるため、スタックの内部温度は低下する傾向がある。とりわけ、低温起動時はその傾向が大きい。図6に示す処理と並行して実行されるシステム起動処理(図示せず)では、起動直後はウォータポンプの駆動を停止し、スタックの内部最高温度が所定の循環開始温度を超えてからウォータポンプの駆動を開始する。
【0067】
S46の判定がYESである場合、すなわちまだ冷媒の循環が停止された状態である場合には、ECUは、暖機時最大電流値を制限電流値として設定し、この処理を終了する(S39)。
【0068】
S46の判定がNOである場合、すなわち冷媒の循環が既に開始している状態である場合には、S47に移る。S47では、ECUは、ウォータポンプの駆動が開始されてから現在までのスタックの内部平均温度の低下幅(ウォータポンプの駆動開始時の内部平均温度−現在の内部平均温度)を算出する。S48では、ECUは、算出した内部平均温度の低下幅が所定の閾値より大きいか否かを判定する。
【0069】
S48の判定がNOである場合、すなわち冷媒の循環を開始してもさほど温度低下が認められない場合には、ECUは、暖機時最大電流値を制限電流値として設定し(S39)、この処理を終了する。また、S48の判定がYESである場合、すなわち冷媒の循環を開始したことによってスタックの内部平均温度が大きく低下した場合には、S41に移る。S41以降では、上述のように第1及び第2制限値のうち小さい方が制限電流値として設定される。従って、冷媒の循環がスタックの温度低下に大きく影響を及ぼすような場合には、S39の場合よりも厳しい制限がスタックの出力電流に対して課される。
【0070】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお以下では、上記第2実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。第3実施形態は、制限電流値を設定する具体的な手順が第2実施形態と異なる。
【0071】
図7は、スタックの出力電流に対する制限電流値を設定する手順を示すフローチャートである。図7におけるS51〜S59及びS61〜S65の処理の内容は、それぞれ図6におけるS31〜S39及びS41〜S46の処理と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0072】
S66の判定がNOである場合、すなわち冷媒の循環が既に開始している状態である場合には、S67に移る。S67では、ECUは、ウォータポンプの駆動が開始されてから現在までのスタックの出力電流の増加量(現在の出力電流値−ウォータポンプの駆動開始時の出力電流値)を算出する。S68では、ECUは、算出した電流増加量が所定の閾値より大きいか否かを判定する。
【0073】
S68の判定がYESである場合、すなわち冷媒の循環を開始してから出力電流が増加した場合には、ECUは、暖機時最大電流値を制限電流値として設定し(S59)、この処理を終了する。また、S68の判定がNOである場合、すなわち冷媒の循環を開始してから出力電流がさほど増加しなかった場合には、S61に移る。S61以降では、上述のように第1及び第2制限値のうち小さい方が制限電流値として設定される。従って、冷媒の循環を開始してからさほど出力電流が増加しなかった場合には、発電に伴うスタックの温度上昇効果は小さいと判断され、S59の場合よりも厳しい制限がスタックの出力電流に対して課される。
【符号の説明】
【0074】
1…燃料電池システム
2…燃料電池スタック
22…スタックエア温度センサ(内部温度取得手段)
6…ECU(内部温度取得手段、含水状態取得手段、低温起動判断手段、電流制限手段、制限電流値設定手段)
24…インピーダンスセンサ(含水状態取得手段)
29…電流制御器(電流制限手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7