特開2015-233362(P2015-233362A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-233362(P2015-233362A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】回転電機のステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20151201BHJP
   H02K 3/28 20060101ALI20151201BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20151201BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   H02K3/04 Z
   H02K3/28 J
   H01F5/00 D
   H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-118653(P2014-118653)
(22)【出願日】2014年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127801
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 慎也
(72)【発明者】
【氏名】早川 真幸
(72)【発明者】
【氏名】壱岐 友貴
【テーマコード(参考)】
5E043
5H603
【Fターム(参考)】
5E043AB02
5E043BA03
5H603AA07
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB02
5H603BB07
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CB03
5H603CB22
5H603CC04
5H603CD01
5H603CD06
5H603CD12
5H603CD22
5H603CE01
5H603CE05
5H603EE11
(57)【要約】
【課題】スロットコイルにおける渦電流損を低減するとともに、コイル同士の接合強度を高めることが可能な回転電機のステータを提供する。
【解決手段】回転電機のステータ10は、互いに当接するスロットコイル25及び接続コイル40を結合することでコイル50が構成される。スロットコイル25の板表面には、スロット23の内部に位置する部分から、接続コイル40と接合される接合部に亘って溝部26d、27dが形成されている。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有するステータコアと、
前記ステータコアに取付けられるコイルと、を備えた回転電機のステータにおいて、
前記コイルは、前記スロットに挿入される複数のスロットコイルと、前記ステータコアの軸方向端面よりも軸方向外側において前記スロットコイル間を接続する複数の接続コイルと、を有し、前記スロットコイルと前記接続コイルとが接合部において接合されることによって構成され、
前記スロットコイル及び前記接続コイルは、平面状の板表面を有する板状導体によって形成されるとともに、前記スロットコイル及び前記接続コイルの前記板表面同士が前記接合部において接合されており、
前記スロットコイルの前記板表面には、前記スロットの内部から前記接合部に亘って溝部が形成されている、回転電機のステータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のステータであって、
前記スロットコイルの前記溝部は、軸方向に沿って形成されている、回転電機のステータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機のステータであって、
前記接続コイルの前記板表面には、前記接合部に他の溝部が形成されている、回転電機のステータ。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機のステータであって、
前記他の溝部は、軸方向に沿って形成されている、回転電機のステータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転電機のステータであって、
前記接合部において、前記スロットコイル及び前記接続コイルの前記板表面同士の内、前記溝部の形成されていない部分は面接触している、回転電機のステータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転電機のステータであって、
前記接合部は、集光されたレーザー光によってレーザー接合され、
前記溝部の深さは、レーザー集光径よりも小さい、回転電機のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車、ハイブリッド自動車等に搭載可能な回転電機のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ステータコアのティースに巻線を巻回してコイルを製作した回転電機のステータが知られている。ステータコアのティースに巻線を巻回することでコイルを製作する従来の回転電機では、巻線とステータコアとを別々に取り扱う必要があり、また、絶縁紙を挟みながら巻線を巻回するため、巻回処理が煩雑であり、且つ、絶縁紙が噛み込むことなどから、適切な絶縁性能を確保できなくなる虞があった。
【0003】
そこで、近年では、他の回転電機のステータとして、セグメントコイルを用いた回転電機が提案されている。例えば、特許文献1、2に記載の回転電機のステータでは、ステータコアのスロットに挿入されるスロットコイルの両端部に、同相のスロットコイル同士を接続する接続コイルをかしめにより接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5389109号公報
【特許文献2】特開2000−270506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かしめによりスロットコイルと接続コイルとを接合する場合には、多数のかしめ部における突起部及び孔部の位置精度を満たすことが困難であり、また接合強度も十分得られない、或いは接合強度にばらつきが生じてしまう虞があった。
【0006】
また、セグメントコイルを用いた回転電機のステータでは、スロット内におけるコイルの占積率を高めることにより、回転電機の高性能化を実現可能であるが、ロータ側からの漏れ磁束が生じるスロット内コイル部分において、漏れ磁束による過大な渦電流損が発生してしまう虞がある。つまり、図21に示すように、ステータのスロット内において、高占有率のスロットコイル100に漏れ磁束FLが作用すると、スロットコイル100の表面に広い範囲で渦電流ECが発生し、それに伴う過大な渦電流損によって回転電機の高性能化が阻害される虞があった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スロットコイルにおける渦電流損を低減するとともに、コイル同士の接合強度を高めることが可能な回転電機のステータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
複数のスロット(例えば、後述の実施形態のスロット23)を有するステータコア(例えば、後述の実施形態のステータコア21)と、
前記ステータコアに取付けられるコイル(例えば、後述の実施形態のコイル50)と、を備えた回転電機のステータ(例えば、後述の実施形態のステータ10)において、
前記コイルは、前記スロットに挿入される複数のスロットコイル(例えば、後述の実施形態のスロットコイル25)と、前記ステータコアの軸方向端面(例えば、後述の実施形態の端面21a、21b)よりも軸方向外側において前記スロットコイル間を接続する複数の接続コイル(例えば、後述の実施形態の接続コイル40)と、を有し、前記スロットコイルと前記接続コイルとが接合部(例えば、後述の実施形態の当接面P2、P3)において接合されることによって構成され、
前記スロットコイル及び前記接続コイルは、平面状の板表面を有する板状導体によって形成されるとともに、前記スロットコイル及び前記接続コイルの前記板表面同士が前記接合部において接合されており、
前記スロットコイルの前記板表面には、前記スロットの内部から前記接合部に亘って溝部(例えば、後述の実施形態の溝部26d、27d)が形成されている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記スロットコイルの前記溝部は、軸方向に沿って形成されている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記接続コイルの前記板表面には、前記接合部に他の溝部(例えば、後述の実施形態の溝部111c、122c)が形成されている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記他の溝部は、軸方向に沿って形成されている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、
前記接合部において、前記スロットコイル及び前記接続コイルの前記板表面同士の内、前記溝部の形成されていない部分は面接触している。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、
前記接合部は、集光されたレーザー光によってレーザー接合され、
前記溝部の深さ(例えば、後述の実施形態の深さX)は、レーザー集光径(例えば、後述の実施形態のレーザー集光径B)よりも小さい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、スロットコイルの板表面には、スロット内部に位置する部分に溝部が形成されているので、スロットコイルのスロット内部に位置する部分にロータ側からの漏れ磁束が作用したとしても、スロットコイルの板表面における渦電流の発生領域が溝部によって狭小化されることや、渦電流の経路が溝部によって複雑化されることにより渦電流の発生が抑制され、スロットコイルの渦電流損を低減することができる。
また、スロットコイルは、接合部の板表面にも溝部が形成されているので、例えばレーザー光でスロットコイルと接続コイルとを接合する場合に、スロットコイルの溝部がレーザー光の反射回数を増やすことによって接合部の溶融深さを深くでき、その結果、接合部の接合面積が大きくなりコイル同士の接合強度を高めることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、スロットコイルの溝部は、軸方向に沿って形成されているので、軸方向から照射されるレーザー光でスロットコイルと接続コイルとを接合する場合に、レーザー光を溝部に沿って深い位置まで導き、接合部の溶融深さをより深くすることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、接続コイルにおいても、接合部の板表面に他の溝部が形成されているので、レーザー光でスロットコイルと接続コイルとを接合する場合に、接続コイルの溝部によってレーザー光の反射回数をさらに増やし、接合部の溶融深さをより深くすることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、接続コイルの他の溝部は、軸方向に沿って形成されているので、軸方向から照射されるレーザー光でスロットコイルと接続コイルとを接合する場合に、レーザー光を溝部に沿って接合部の深い位置まで導き、接合部の溶融深さをより深くすることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、接合部において、スロットコイル及び接続コイルの板表面同士の内、溝部の形成されていない部分は面接触しているので、スロットコイル及び接続コイルを面接触状態で確実に位置決めしつつ接合することができる。
また、スロットコイル及び接続コイルの板表面同士の内、溝部の形成されていない部分が面接触している場合でも、レーザー光が溝部に沿って接合部の深い位置まで到達できるので、接合部における接合面積の低下も抑制することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、溝部の深さは、レーザー集光径よりも小さいので、レーザー光がコイルの板表面に接触せずに溝部内を通り抜けてしまうことを回避し、レーザー光の通り抜けによる接合不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る回転電機のステータの斜視図である。
図2図1に示すステータの分解斜視図である。
図3図2に示す一方のベースプレート組立体の分解斜視図である。
図4図2に示す他方のベースプレート組立体の分解斜視図である。
図5A】スロットコイルの斜視図である。
図5B】スロットコイルの分解斜視図である。
図6図1に示すステータの一部を示す縦断面図である。
図7】スロットコイルの板表面に形成された溝部の作用を説明するための斜視図である。
図8】スロットコイルの板表面に対する溝部の形成方法を説明するための斜視図である。
図9A図3及び図4に示すベースプレート組立体の一部を示す正面図である。
図9B図4に示すベースプレート組立体の一部を示す正面図である。
図10】複数相のコイルの斜視図である。
図11図10の正面図である。
図12図10に示す複数相のコイルから1相分のコイルを抜き出して示す斜視図である。
図13】U相のコイルの結線態様を示す展開図である。
図14】U相、V相、W相のコイルの結線態様を示す模式図である。
図15A】外側接続コイルの斜視図である。
図15B】内側接続コイルの斜視図である。
図16】外側接続コイル延出部と内側接続コイル延出部との接合を説明するための斜視図である。
図17】外側接続コイルの内径側端部と外径側スロットコイルの段差部との接合及び内側接続コイルの内径側端部と内径側スロットコイルの段差部との接合を説明するための斜視図である。
図18】溝部の深さとレーザー集光径との関係を説明するための接合部の部分拡大図である。
図19A】第1変形例のスロットコイルを示す斜視図である。
図19B】第2変形例のスロットコイルを示す斜視図である。
図19C】第3変形例のスロットコイルを示す斜視図である。
図19D】第4変形例のスロットコイルを示す斜視図である。
図19E】第5変形例のスロットコイルを示す斜視図である。
図19F】第6変形例のスロットコイルを示す斜視図である。
図20】スロットコイルの板表面に対する溝部の他の形成方法を説明するための斜視図である。
図21】従来例に係るスロットコイルの渦電流損を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の回転電機のステータの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0022】
[ステータ]
図1及び図2に示すように、本実施形態の回転電機のステータ10は、ステータコア組立体20と、一対のベースプレート組立体30L、30Rと、を備え、ベースプレート組立体30L、30Rが、ステータコア組立体20の両側に配置されて組み付けられている。ステータコア組立体20とベースプレート組立体30L、30Rとの間には、例えば、シリコンシートなどの絶縁シート65が配置され、ステータコア組立体20とベースプレート組立体30L、30Rとを絶縁している。
【0023】
[1 ステータコア組立体]
ステータコア組立体20は、ステータコア21と、複数(図に示す実施形態では108個)のスロットコイル25と、を備える。
【0024】
[1−1 ステータコア]
ステータコア21は、例えば、プレス抜きされた複数枚の珪素鋼板が積層されて構成され、その径方向内側に、複数(図に示す実施形態では108個)のティース22と、隣接するティース22間に形成される複数(図に示す実施形態では108個)のスロット23とを備える。スロット23は、ステータコア21の軸方向に貫通して形成され、軸方向から見てステータコア21の径方向に長い略長円形状に形成され、開口部24がステータコア21の内周面に開口している。
【0025】
[1−2 スロットコイル]
各スロット23に挿入されるスロットコイル25は、図5A図5B及び図6も参照して、断面長方形状の板状導体である外径側スロットコイル26と内径側スロットコイル27とを有し、外径側スロットコイル26と内径側スロットコイル27の軸方向両端部を除く周囲が射出成形された樹脂などの断面長方形状の絶縁材28で被覆されて一体に形成されている。具体的に、外径側スロットコイル26は、ステータコア21の軸方向幅L1と後述する接続コイル40の4枚分の軸方向幅(4×L2)の和と略等しい長さ(L1+4×L2)に設定され、軸方向両端部がそれぞれ接続コイル40の2枚分の軸方向幅と略等しい長さ(2×L2)だけ絶縁材28から露出している。さらに、外径側スロットコイル26の軸方向一端部は、接続コイル40の1枚分の軸方向幅と等しい長さ(L2)分だけ周方向一方を向く面が段状に切り欠かれて板厚が薄くなることで段差部26aが形成され、外径側スロットコイル26の軸方向他端部は、接続コイル40の1枚分の軸方向幅と等しい長さ(L2)分だけ周方向他方を向く面が段状に切り欠かれて板厚が薄くなることで段差部26aが形成されている。
【0026】
内径側スロットコイル27は、ステータコア21の軸方向幅(L1)と後述する接続コイル40の2枚分の軸方向幅(2×L2)の和と略等しい長さ(L1+2×L2)に設定され、軸方向両端部がそれぞれ接続コイル40の1枚分の軸方向幅と略等しい長さ(L2)だけ絶縁材28から露出している。さらに、内径側スロットコイル27の軸方向一端部は、接続コイル40の1枚分の軸方向幅と等しい長さ(L2)分だけ周方向他方を向く面が段状に切り欠かれて板厚が薄くなることで段差部27aが形成され、内径側スロットコイル27の軸方向他端部は、接続コイル40の1枚分の軸方向幅と等しい長さ(L2)分だけ周方向一方を向く面が段状に切り欠かれて板厚が薄くなることで段差部27aが形成されている。
【0027】
言い換えると、スロットコイル25は、外径側スロットコイル26が接続コイル40の2枚分の軸方向幅と略等しい長さ(2×L2)分だけ軸方向両側にそれぞれ絶縁材28から露出するとともに、内径側スロットコイル27が接続コイル40の1枚分の軸方向幅と等しい長さ(L2)分だけ軸方向両側にそれぞれ絶縁材28から露出し、外径側スロットコイル26と内径側スロットコイル27の両先端部にはそれぞれ接続コイル40の1枚分の軸方向幅と等しい長さ(L2)分だけ段差部26a、27aが周方向で反対側を向くように形成されている。また、軸方向一端部と軸方向他端部では、外径側スロットコイル26の段差部26a同士と内径側スロットコイル27の段差部27a同士がそれぞれ周方向で反対側を向くように形成されている。
【0028】
外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27からなる複数(図に示す実施形態では108個)のスロットコイル25は、外径側スロットコイル26が径方向外側となり内径側スロットコイル27が径方向内側となるようにステータコア21の径方向に配置される。各スロットコイル25は、ステータコア21の複数のスロット23にそれぞれ挿入されてステータコア21の周方向に並べられ、ステータコア組立体20を構成する。
【0029】
外径側スロットコイル26は、接続コイル40の略2枚分の軸方向幅と略等しい長さ(2×L2)分だけ先端部がステータコア21の両方の端面21a、21bからそれぞれ突出するようにスロット23に挿入され、内径側スロットコイル27は、接続コイル40の略1枚分の軸方向幅と等しい長さ(L2)分だけ先端部がステータコア21の両方の端面21a、21bからそれぞれ突出するようにスロット23に挿入されている。
【0030】
また、外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27と、ステータコア21のスロット23と、の間には、両スロットコイル26、27を被覆する絶縁材28が介在してステータコア21との絶縁が確保されている。
【0031】
外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27を被覆する絶縁材28は、スロット23よりも僅かに大きくスロット23と略同一形状を有しており、圧入によってスロット23へ容易に固定できる。また、外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27は、従来の巻回された巻線からなるコイルと比較して太いので、スロット23への占積率が向上する効果も有する。
【0032】
また、図5A及び図5Bに示すように、外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27の板表面には、スロット23の内部に位置する部分から、スロット23から突出して接続コイル40との接合部(後述する当接面P2、P3)となる先端部に亘って溝部26d、27dが形成されている。溝部26d、27dは、外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27の板表面のうち、軸方向且つ径方向に延びて板厚方向に直交する2つの板表面、即ちロータ側からの漏れ磁束FLが作用し易く、且つ接続コイル40と面接触状態で接合される板表面に形成される。
【0033】
図7に示すように、本実施形態の溝部26d、27dは、軸方向に沿う軸方向溝26e、27eと、径方向に沿う径方向溝26f、27fとを含み、径方向に所定の間隔を介して並列状に形成された多数の軸方向溝26e、27eと、軸方向に所定の間隔を介して並列状に形成された多数の径方向溝26f、27fとによって格子状の溝パターンを構成している。図7において、軸方向溝26e、27e及び径方向溝26f、27fは、深さXの矩形溝であるが、V字状の溝形状としてもよく、円弧状の溝形状としてもよい。なお、図5A図5B図7図18図19A図19F以外の図面においては、溝部26d、27dの図示を省略する。
【0034】
このような溝部26d、27dによれば、外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27の渦電流損を低減することができる。即ち、図7に示すように、外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27において、スロット23の内部に位置する部分にロータ側からの漏れ磁束FLが作用した場合に、外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27の板表面における渦電流ECの発生領域が溝部26d、27dによって狭小化されるだけでなく、渦電流ECの経路が溝部26d、27dによって複雑化されるので、溝部26d、27dが形成されていない図21のものに比べ、渦電流ECの発生を抑制することができる。これにより、外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27の渦電流損が低減され、回転電機の高性能化が可能となる。
【0035】
溝部26d、27dは、任意の方法で外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27に形成することができる。例えば、図8に示すように、プレス面201aに溝部26d、27dに対応する溝パターンを備えた一対のプレス型材201を用い、両プレス型材201間で外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27をプレスすることにより、外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27の板表面に溝部26d、27dを転写することができる。このような溝部26d、27dの形成方法によれば、プレス型材201側に段差部を設けることにより、段差部26a、27aを有する板表面であっても、1工程で溝部26d、27dを形成することができる。
【0036】
[2 ベースプレート組立体]
ステータコア組立体20の両側にそれぞれ配置されるベースプレート組立体30L、30Rは、図3及び図4に示すように、ベースプレート31L、31Rと、複数の接続コイル40と、を備える。
【0037】
[2−1 ベースプレート]
ベースプレート31L、31Rは、絶縁性を有する樹脂(非磁性材)等によって成形され、ステータコア21と略等しい内外径を有する略円環状部材である。
【0038】
ベースプレート31Rの内径側には、図3に示すように、ステータコア21のスロット23に挿入された各スロットコイル25の外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27にそれぞれ対応して、複数(図に示す実施形態では108個)の外径側貫通孔32及び複数(図に示す実施形態では108個)の内径側貫通孔33が、それぞれ等間隔にベースプレート31Rを貫通して外側面35と内側面36とを連通するように形成されている。ステータコア組立体20にベースプレート組立体30Rを組み付けることで、ベースプレート31Rの外径側貫通孔32には、ステータコア21のスロット23に挿入されステータコア21の端面21a、21bから突出する外径側スロットコイル26の先端部が配置され、ベースプレート31Rの内径側貫通孔33には、ステータコア21のスロット23に挿入されステータコア21の端面21a、21bから突出する内径側スロットコイル27の先端部が配置される。なお、外径側貫通孔32に関しては、内側面36の開口部が外側面35の開口部よりも小さくなっており、外径側スロットコイル26の先端部が通る部分のみベースプレート31Rを貫通している。
【0039】
ベースプレート31Rの外径側には、さらに複数(図に示す実施形態では108個)の外周側孔34が等間隔にベースプレート31Rを貫通して外側面35と内側面36とを連通するように形成されている。ベースプレート31Rの外側面35及び内側面36には、図9Aに示すように、それぞれ外側面35及び内側面36に開口する断面略コの字型の複数(図に示す実施形態ではいずれも108個、108個)の外側面溝37及び内側面溝38が、インボリュート曲線に沿って円周方向に近接して形成されている。
【0040】
ベースプレート31Lも、基本的にはベースプレート31Rと同様の構造を有し、内径側には、ステータコア21のスロット23に挿入された各スロットコイル25の外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27にそれぞれ対応して、複数(図に示す実施形態では108個)の外径側貫通孔32及び複数(図に示す実施形態では108個)の内径側貫通孔33が、それぞれ等間隔にベースプレート31Lを貫通して外側面35と内側面36とを連通するように形成されている。
【0041】
一方で、ベースプレート31Lの外径側には、図中上方部分に径方向外側に扇状に延びる展開部31aが設けられており、展開部31a以外の部分では、複数の外周側孔34が等間隔にベースプレート31Lを貫通して外側面35と内側面36とを連通するように形成されている。展開部31aにおいては、他の外周側孔34より僅かに大きな開口面積を有する外周側孔34aが6つの外周側孔34を挟むようにU、V、W相の各相2つを一組として2組ずつ形成されるとともに、入力端子用切欠部34cが各相1つずつ等間隔に形成されている。入力端子用切欠部34cには入力端子部43が一体に形成された後述する3つの内側接続コイル42bの入力端子部43が配置される。
【0042】
ベースプレート31Lの展開部31aの内径側には、各相2つを一組として一組のバスバー用切欠部(不図示)が内周側に形成された外径側貫通孔32aが8つの外径側貫通孔32を挟んで形成され、さらに各相1つずつの中点バスバー用切欠部(不図示)が内周側に形成された内径側貫通孔33aが11個の内径側貫通孔33を挟んで形成されている。バスバー用切欠部には、同相のコイル同士を接続するバスバー61U、61V、61Wのバスバー接続部が配置され、中点バスバー用切欠部には、U、V、W相のコイル同士を接続する中点バスバー62の中点バスバー接続部が配置される。
【0043】
ベースプレート31L、31Rの外周側孔34、34aには、後述する外側接続コイル41の外径側端部112と内側接続コイル42の外径側端部123とが配置される。外径側貫通孔32、32a、内径側貫通孔33、33a及び外周側孔34、34aは、軸方向から見て矩形形状を呈し、これらの内部に配置されるコイル部材よりも大きな空間を有している。
【0044】
また、ベースプレート31Lの外側面35と内側面36にも、それぞれ外側面35及び内側面36に開口する断面略コの字型の複数(図に示す実施形態では外側面35に102個、内側面36に102個)の外側面溝37及び内側面溝38が、インボリュート曲線に沿って円周方向に近接して形成されている。ベースプレート31Lの展開部31aには、外側面35に他の外側面溝37よりも僅かに長く形成された外側面溝37aが各相4個ずつ合計で12個形成されるとともに、内側面36に他の内側面溝38よりも僅かに長く形成された内側面溝38aが各相5個ずつ合計で15個形成されている。外側面溝37、37aの数は、ベースプレート31Rに形成される外側面溝37よりも各相2本ずつ合わせて6本分少なくなるとともに、内側面溝38、38aの数は、ベースプレート31Rに形成される内側面溝38よりも各相1本ずつ合わせて3本分少なくなっており、代わりにバスバー61U、61V、61Wによって同相のコイル同士が接続されるとともに中点バスバー62によって異相のコイル同士が接続されるようになっている。これらベースプレート31L、31Rにおいては、図6に示すように、互いに隣接する各外側面溝37、37a間、及び各内側面溝38、38a間は、ベースプレート31Lから立設する壁31bによって隔離され、また、軸方向において対向する外側面溝37、37aと内側面溝38、38aとは隔壁31cによって隔離され、それぞれ電気的に絶縁される。
【0045】
また、ベースプレート31L、31Rは、内径側貫通孔33が形成される最内径部39が、接続コイル40の1枚分の軸方向幅と等しい長さ(L2)に設定されており、外径側貫通孔32及び外周側孔34が形成される最内径部39以外の領域が、接続コイル40の2枚分の軸方向幅(2×L2)と隔壁31cの厚さ(L3)との合計に略等しい軸方向幅(2×L2+L3)に設定されている。
【0046】
ベースプレート組立体30L、30Rでは、図9Aに示すように、ベースプレート31L、31Rの各外側面溝37は、正面視において、外周側孔34と、この外周側孔34から反時計方向に所定の角度離間した外径側貫通孔32とを接続するように、インボリュート曲線に沿って湾曲して形成されている。但し、図9Bに示すように、ベースプレート31Lの複数の外側面溝37の内、展開部31aに向かって延びる12個の外側面溝37aは、外周側孔34aと、この外周側孔34aから反時計方向に前記所定の角度を僅かに超えて離間した外径側貫通孔32とを接続するようにインボリュート曲線に沿って湾曲して形成されている。なお、図9A及び図9Bでは、外側面溝37及び内側面溝38に後述する外側接続コイル41及び内側接続コイル42を収容した状態を示している。
【0047】
また、ベースプレート31L、31Rの各内側面溝38は、正面視において、外周側孔34と、この外周側孔34から反時計方向に(図9A側から見て時計方向に)所定の角度離間した内径側貫通孔33とを、外径側貫通孔32を避けて屈曲しながら接続するように形成されている。但し、図9Bに示すように、ベースプレート31Lの複数の内側面溝38の内、ベースプレート31Lの展開部31aに向かって延びる12個の内側面溝38aは、外周側孔34aと、この外周側孔34aから反時計方向に前記所定の角度を僅かに超えて離間した内径側貫通孔33とを接続するようにインボリュート曲線に沿って湾曲して形成されている。15個の内側面溝38aのうち残り3個の内側面溝38aは、入力端子用切欠部34cと連通する。
【0048】
即ち、図9A及び図9Bに示すように、外径側貫通孔32と内径側貫通孔33とは、外側面溝37及び内側面溝38が共通に連続する外周側孔34、又は外側面溝37a及び内側面溝38aが共通に連続する外周側孔34aを介して接続されている。
【0049】
[2−2 接続コイル]
接続コイル40は、銅などの導電材料によって板状に形成されており、外側面溝37、37aにそれぞれ挿入される外側接続コイル41(41a、41b)と、内側面溝38にそれぞれ挿入される内側接続コイル42(42a、42b)とに分けることができる。なお、ここで言う外側接続コイル41とは、ステータコア組立体20とベースプレート組立体30L、30Rとが組み付けられたとき、ステータ10の軸方向外側となる接続コイル40のことであり、内側接続コイル42とは、ステータ10の軸方向内側となる接続コイル40のことである。
【0050】
外側接続コイル41aは、図15Aに示すように、一様厚を有する断面長方形状の板状導体であって、外側面溝37と同一形状のインボリュート曲線に沿って形成された外側接続コイル本体110から内径側端部111が径方向に屈曲するとともに、外径側端部112も外側接続コイル本体110から径方向に屈曲している。外側接続コイル41aの外径側端部112には軸方向内側に延出するように外側接続コイル延出部113が形成されている。外側接続コイル本体110及び内径側端部111の軸方向幅(L2)は、外側面溝37の溝深さと等しくなっており、外側接続コイル延出部113の軸方向幅(L4)は、外側面溝37と内側面溝38との各溝深さと隔壁31cの厚さ(L3)との合計に等しい軸方向幅(2×L2+L3)に設定されている。また、12個の外側接続コイル41bは、外側接続コイル本体110が外側面溝37aと同一形状に湾曲して形成されている以外、外側接続コイル41aと同様の構成を有している。
【0051】
内側接続コイル42aは、図15Bに示すように、一様厚を有する断面長方形状の板状導体であって、内側面溝38と同一形状のインボリュート曲線に沿って形成された内側接続コイル本体120から外径側貫通孔32を迂回するように形成された迂回部121を経由して内径側端部122が径方向に屈曲するとともに、外径側端部123も内側接続コイル本体120から径方向に屈曲している。内側接続コイル42aの外径側端部123には、軸方向外側に延出するように内側接続コイル延出部124が形成されている。内側接続コイル本体120及び内径側端部122の軸方向幅(L2)は、内側面溝38の溝深さと等しくなっており、内側接続コイル延出部124の軸方向幅(L4)は、外側面溝37と内側面溝38との各溝深さと隔壁31cの厚さとの合計に等しい軸方向幅(2×L2+L3)に設定されている。また、内側面溝38aに挿入される15個の内側接続コイル42bは、内側接続コイル本体120が内側面溝38aと同一形状に湾曲して形成されている以外、基本的に内側接続コイル42aと同様の構成を有しているが、15個の内側接続コイル42bのうち、入力端子用切欠部34cに対応する位置に配置される3個の内側接続コイル42bには、外部機器などに接続するための入力端子部43が入力端子用切欠部34cに嵌るように外径側端部123に一体に形成されている。
【0052】
外側接続コイル41及び内側接続コイル42は同一の板厚を有し、この外側接続コイル41及び内側接続コイル42の板厚は、同じく同一の板厚を有する外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27と同じ板厚に設定されている。この外側接続コイル41及び内側接続コイル42の板厚は、外側接続コイル41及び内側接続コイル42(外側接続コイル本体110及び内側接続コイル本体120)の軸方向幅(L2)より小さくなっている。なお、上記した「接続コイル40のx(x=1、2、4)枚分の軸方向幅」は、外側接続コイル本体110及び内側接続コイル本体120の軸方向幅を意味している。また、「略等しい」とは、隔壁31c分の誤差を含む表現である。絶縁シート65の厚さについては考慮しないものとした。
【0053】
外側接続コイル41、内側接続コイル42、及びスロットコイル25は、所定の板厚を有する金属板(例えば銅板)からプレス打抜等の加工を行うことにより、所望の軸方向幅及び所望の平面形状に形成することができる。さらに、外側接続コイル41については、打抜かれた板状導体を曲げ成形することにより、外側面溝37、37aと同一形状のインボリュート曲線に沿って形成された外側接続コイル本体110と、外側接続コイル本体110から屈曲するように接続された内径側端部111、外径側端部112とを形成することができる。同様に、内側接続コイル42についても、打抜かれた板状導体を曲げ成形することにより、内側面溝38、38aと同一形状のインボリュート曲線に沿って形成された内側接続コイル本体120と、内側接続コイル本体120から屈曲するように接続された内径側端部122、外径側端部123とを形成することができる。
【0054】
外側接続コイル41a、41bは、ベースプレート31L、31Rの外側面溝37、37aに挿入される。外側接続コイル41の内径側端部111は外径側貫通孔32に配置され、図17に示すように、ステータコア組立体20とベースプレート組立体30L、30Rとの組み付けの際に同じくステータコア21のスロット23に挿入されて外径側貫通孔32に配置される外径側スロットコイル26の段差部26aと当接する。外側接続コイル41a、41bにおいて、外径側スロットコイル26の段差部26aと当接する側面111aには、溝部111cが形成されている。溝部111cは、外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27の板表面に形成される溝部26d、27dと同様に形成することができる。例えば、本実施形態の溝部111cは、軸方向に沿う多数の軸方向溝要素と、径方向に沿う多数の径方向溝要素との組み合わせにより、格子状の溝パターンを構成している。なお、図15A及び図15B以外の図面においては、溝部111cの図示を省略する。
【0055】
内側接続コイル42a、42bは、ベースプレート31L、31Rの内側面溝38、38aに挿入される。内側接続コイル42a、42bの内径側端部122は内径側貫通孔33に配置され、図17に示すように、ステータコア組立体20とベースプレート組立体30L、30Rとの組み付けの際に同じくステータコア21のスロット23に挿入されて内径側貫通孔33に配置される内径側スロットコイル27の段差部27aと当接する。内側接続コイル42a、42bにおいて、内径側スロットコイル27の段差部27aと当接する側面122aには、溝部122cが形成されている。溝部122cは、外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27の板表面に形成される溝部26d、27dと同様に形成することができる。例えば、本実施形態の溝部122cは、軸方向に沿う多数の軸方向溝要素と、径方向に沿う多数の径方向溝要素との組み合わせにより、格子状の溝パターンを構成している。なお、図15A及び図15B以外の図面においては、溝部122cの図示を省略する。
【0056】
外側接続コイル41a、41bの外径側端部112と内側接続コイル42a、42bの外径側端部123とは、図16に示すように、いずれも外周側孔34に配置され、外側接続コイル延出部113の周方向一方を向く側面113aと内側接続コイル延出部124の周方向他方を向く側面124aとが径方向及び軸方向全面に亘って当接する。互いに当接する側面113a、124aには、溝部113b、124bが形成されている。溝部113b、124bは、外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27の板表面に形成される溝部26d、27dと同様に形成することができる。例えば、本実施形態の溝部113b、124bは、軸方向に沿う多数の軸方向溝要素と、径方向に沿う多数の径方向溝要素との組み合わせにより、格子状の溝パターンを構成している。なお、図15A及び図15B以外の図面においては、溝部113b、124bの図示を省略する。
【0057】
[3 接合]
互いに当接する、外側接続コイル41の内径側端部111と外径側スロットコイル26の段差部26a、内側接続コイル42の内径側端部122と内径側スロットコイル27の段差部27a、及び、外側接続コイル41の外側接続コイル延出部113と内側接続コイル42の内側接続コイル延出部124は、いずれも板厚方向に対して交差する平面状の板表面同士が溶接により、好ましくはレーザー溶接により接合される。以下の説明ではレーザー溶接により接合する場合を例に説明する。
【0058】
図16に示すように、外側接続コイル延出部113と内側接続コイル延出部124とは、いずれも板厚方向に対して交差し軸方向に沿う平面状の板表面である、外側接続コイル延出部113の周方向一方を向く側面113aと内側接続コイル延出部124の周方向他方を向く側面124aとを対向させて当接させることで互いの板表面が径方向及び軸方向全面に亘って面接触する。両方の側面113a、124aを面接触させた状態で、外周側孔34の軸方向外側から径方向に延びる当接面P1に沿って、軸方向から照射されるレーザー光によってレーザー溶接することで当接面P1において接合される。
【0059】
これにより、同じ外周側孔34に位置する外側接続コイル41の外径側端部112と内側接続コイル42の外径側端部123とが電気的に接続され、ベースプレート組立体30L、30Rが構成される。なお、図16においては、ベースプレート31L、31Rを省略している。図17についても同様である。
【0060】
図17に示すように、ステータコア組立体20とベースプレート組立体30L、30Rとの組み付けにおいては、絶縁シート65を介在させて互いの周方向の相対位置をあわせて軸方向に組み付けることで、外側接続コイル41の内径側端部111と外径側スロットコイル26の段差部26aとが当接し、内側接続コイル42の内径側端部122と内径側スロットコイル27の段差部27aとが当接することで、両者が位置決めされる。
【0061】
外径側スロットコイル26の段差部26aと当接する外側接続コイル41の内径側端部111は、平面状の板表面である周方向他方を向く側面111aが段差部26aの側面26b全面に亘って当接するとともに、底面111bが段差部26aの底面26c全面に亘って当接する。板厚方向に対して交差し軸方向に沿う平面状の両側面111a、26bを面接触させた状態で、外径側貫通孔32の軸方向外側から径方向に延びる当接面P2に沿って、軸方向から照射されるレーザー光によってレーザー溶接することで当接面P2において接合される。接合に際し段差部26aの底面26cは、レーザー光の抜け止めとしても機能する。
【0062】
内径側スロットコイル27の段差部27aと当接する内側接続コイル42の内径側端部122は、平面状の板表面である周方向一方を向く側面122aが段差部27aの側面27b全面に亘って当接するとともに、底面122bが段差部27aの底面27c全面に亘って当接する。板厚方向に対して交差し軸方向に沿う平面状の両側面122a、27bを面接触させた状態で、内径側貫通孔33の軸方向外側から径方向に延びる当接面P3に沿って、軸方向から照射されるレーザー光によってレーザー溶接することで当接面P3において接合される。接合に際し段差部27aの底面27cは、レーザー光の抜け止めとしても機能する。
【0063】
ここで、当接面P1〜P3におけるレーザー溶接について詳細に説明すると、図18に示すように、接合される一方の側面113a、111a、122aには、溝部113b、111c、122cが形成されており、他方の側面124a、26b、27bには、溝部124b、26d、27dが形成されており、これら溝部113b、111c、122c、124b、26d、27dが形成されていない平坦な部分同士が面接触することによって互いに位置決めされる。この状態で当接面P1〜P3に沿って軸方向からレーザー光を照射すると、対向する溝部間、即ち、溝部113b、124b間、溝部111c,26d間、及び溝部122c,27d間でレーザー光が反射し、接合部の溶融深さが深くなる。その結果、接合部の接合面積が大きくなり、コイル同士の接合強度を高めることが可能になる。特に、本実施形態の溝部113b、111c、122c、124b、26d、27dは、軸方向に沿う軸方向溝要素又は軸方向溝26e、27eを含むので、軸方向から照射されるレーザー光でコイル同士を接合する場合に、レーザー光を溝部113b、111c、122c、124b、26d、27dに沿って接合部の深い位置まで導き、接合部の溶融深さをより深くすることができる。
【0064】
なお、溝部113b、111c、122c、124b、26d、27dの深さXは、図18の符号Bで示すレーザー溶接におけるレーザー集光径よりも小さくすることが好ましく、本実施形態のように溝部同士が対向する場合には、両溝部の合計深さ2Xが、図18の符号Bで示すレーザー溶接におけるレーザー集光径よりも小さくすることがさらに好ましい。その理由は、レーザー集光径が仮に図18の符号Aのように溝部113b、111c、122c、124b、26d、27dの深さXよりも小さいと、レーザー光がコイル板表面に接触せずに溝部113b、111c、122c、124b、26d、27d内を通り抜けてしまうためである。このようにレーザー集光径を考慮して溝深さを設定することで、レーザー光の通り抜けによる接合不良を防止できる。
【0065】
同様に、バスバー用切欠部が形成された外径側貫通孔32aに配置された外径側スロットコイル26の段差部26aとバスバー用切欠部に配置されるバスバー61U、61V、61Wのバスバー接続部とをレーザー溶接し、中点バスバー用切欠部が形成された内径側貫通孔33aに配置された内径側スロットコイル27の段差部27aと中点バスバー62の中点バスバー接続部とをレーザー溶接することでバスバー61U、61V、61W及び中点バスバー62が外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27にそれぞれ接合される。バスバー61U、61V、61Wのバスバー接続部及び中点バスバー62の中点バスバー接続部にも、溝部を形成してもよい。
【0066】
外径側貫通孔32、32a、内径側貫通孔33、33a及び外周側孔34は、軸方向から見て矩形形状を呈し、これらの内部に配置されるコイル部材よりも大きな空間を有しているので、即ち、レーザー光の照射部分とベースプレート31L、31R間には隙間が設けられているので、レーザー光によるベースプレート31L、31Rの損傷を防止できる。
【0067】
このように接合することで、ステータコア21のスロット23に挿入された外径側スロットコイル26と内径側スロットコイル27とが、外側接続コイル41及び内側接続コイル42を介して電気的に接続された状態でステータコア組立体20にベースプレート組立体30L、30Rが組み付けられる。外側接続コイル41及び内側接続コイル42は、同相(例えば、U相)のスロットコイル25同士を接続してコイル50の渡り部を構成する。
【0068】
従って、例えば図12に示すように、同一のスロット23に配置された外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27に関して、外径側スロットコイル26の一端側(図中手前側)で接続された外側接続コイル41は、径方向外側、且つ、時計回りに延びて同相の内側接続コイル42に接続され、外径側スロットコイル26の他端側(図中奥側)で接続された外側接続コイル41は、径方向外側、且つ、反時計回りに延びて同相の内側接続コイル42に接続される。また、内径側スロットコイル27の一端側(図中手前側)で接続された内側接続コイル42は、径方向外側、且つ、反時計回りに延びて同相の外側接続コイル41に接続され、内径側スロットコイル27の他端側(図中奥側)で接続された内側接続コイル42は、径方向外側、且つ、時計回りに延びて同相の外側接続コイル41に接続される。
【0069】
このようにステータ10は、ステータコア組立体20の両側に一対のベースプレート組立体30L、30Rを組みつけることで構成され、これによりセグメント化されたコイル50が、同一構造を有する各相6つのコイルループ(U相コイル50U、V相コイル50V、及びW相コイル50W)を形成する。この各相6つのコイルループ(U相コイル50U、V相コイル50V、及びW相コイル50W)は、2つのコイルループを1組として3組のU相コイル50U、3組のV相コイル50V、及び3組のW相コイル50Wが、反時計方向にこの順で波巻きされる(図13参照)。図10は、理解を容易にするためステータ10からセグメント化された複数相(UVW相)のコイルを抜き出して示す複数相のコイルの斜視図、図11は、図10の正面図、図12は、更に一相分(例えば、U相)のコイルを抜き出して示す斜視図、図13は、U相のコイルの結線態様を示す展開図、図14は、U相、V相、W相のコイルの結線態様を示す模式図である。
【0070】
U相コイルを例に各相の結線態様について図13を参照しながらより詳細に説明すると、U相コイルを構成する6つのコイルループは、3つのコイルループ(Uループ)が連続して時計方向に波巻きされるとともに3つのコイルループ(ループ)が連続して反時計方向に波巻きされ、Uループとループが直列にバスバー61Uで結線されている。1つのスロット23内に配置される、絶縁材28で被覆された外径側スロットコイル26と内径側スロットコイル27とは、Uループを構成するコイルとループを構成するコイルとからなっており、電流の流れ方向が同一方向となっている。
【0071】
例えば、1つのUループに着目すると、図13に示すように、U相のスロット23に配置された外径側スロットコイル26の軸方向一端(図の右手側)から、外側接続コイル41、内側接続コイル42の順に接続されて、次のU相のスロット23における、内径側スロットコイル27に接続される。その後、内径側スロットコイル27の軸方向他端(図の左手側)から、内側接続コイル42、外側接続コイル41の順に接続されて、さらに次のU相のスロット23における、外径側スロットコイル26に接続される。以降、この接続構成を繰り返してUループが形成されている。
【0072】
同様に、他の2相、即ち、V相コイル(W相コイル)を構成する6つのコイルループも、反対方向に波巻きされた3つのVループ(Wループ)と3つのループ(ループ)が直列にバスバー61U(バスバー61W)で結線され、1つのスロット23内に配置される外径側スロットコイル26と内径側スロットコイル27とはVループ(Wループ)を構成するコイルとループ(ループ)を構成するコイルとからなっており、電流の流れ方向が同一方向となっている。これらU相コイル50U、V相コイル50V、及びW相コイル50Wは、図14に示すように、中点バスバー62でスター結線されている。
【0073】
ステータ10では、外側接続コイル41と内側接続コイル42とが、ステータコア21を軸方向に投影した領域内に配置されると共に、軸方向に異なる位置に配置される。また、ステータ10の軸方向外側に配置される複数の外側接続コイル41a、41bの外側面は、ベースプレート31L、31Rの端面と面一となっている。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の回転電機のステータ10によれば、スロットコイル25の板表面には、スロット内部に位置する部分に溝部26d、27dが形成されているので、スロットコイル25のスロット内部に位置する部分にロータ側からの漏れ磁束FLが作用したとしても、スロットコイル25の板表面における渦電流ECの発生領域が溝部26d、27dによって狭小化されることや、渦電流ECの経路が溝部26d、27dによって複雑化されることにより渦電流ECの発生が抑制され、スロットコイル25の渦電流損を低減することができる。
【0075】
また、スロットコイル25は、接合部の板表面にも溝部26d、27dが形成されているので、例えばレーザー光でスロットコイル25と接続コイル40とを接合する場合に、スロットコイル25の溝部26d、27dがレーザー光の反射回数を増やすことによって接合部の溶融深さを深くでき、その結果、接合部の接合面積が大きくなりコイル同士の接合強度を高めることができる。
【0076】
また、スロットコイル25の溝部26d、27dは、軸方向に沿って形成される軸方向溝26e、27eを含むので、軸方向から照射されるレーザー光でスロットコイル25と接続コイル40とを接合する場合に、レーザー光を溝部26d、27dに沿って当接面P2、P3の深い位置まで導き、接合部の溶融深さをより深くすることができる。
【0077】
また、接続コイル40においても、接合部の板表面に溝部111c、122cが形成されているので、レーザー光でスロットコイル25と接続コイル40とを接合する場合に、接続コイル40の溝部111c、122cによってレーザー光の反射回数をさらに増やし、接合部の溶融深さをより深くすることができる。
【0078】
また、接続コイル40の溝部111c、122cは、軸方向に沿って形成される軸方向溝要素を含むので、軸方向から照射されるレーザー光でスロットコイル25と接続コイル40とを接合する場合に、レーザー光を溝部111c、122cに沿って当接面P2、P3の深い位置まで導き、接合部の溶融深さをより深くすることができる。
【0079】
また、接合部において、スロットコイル25及び接続コイル40の板表面同士の内、溝部26d、27d、111c、122cの形成されていない部分は面接触しているので、スロットコイル25及び接続コイル40を面接触状態で確実に位置決めしつつ接合することができる。また、スロットコイル25及び接続コイル40の板表面同士の内、溝部26d、27d、111c、122cの形成されていない部分が面接触している場合でも、レーザー光が溝部26d、27d、111c、122cに沿って当接面P2、P3の深い位置まで到達できるので、接合部における接合面積の低下も抑制することができる。
【0080】
また、溝部26d、27d、111c、122cの深さXは、レーザー集光径Bよりも小さいので、レーザー光がコイル板表面に接触せずに溝部26d、27d、111c、122c内を通り抜けてしまうことを回避し、レーザー光の通り抜けによる接合不良を防止できる。
【0081】
なお、上記実施形態では、スロットコイル25を構成する外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27として、段差部26a、27aが形成された長方形断面を有するものを用いたが、段差部26a、27aは必ずしも形成されている必要はなく、また、断面形状は長方形状に限らず、円形状、正方形上、多角形状等、適宜選択することができる。例えば、図19Aに示すように、スロットコイル25を構成する外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27として、段差部が形成されていない正方形断面を有するものを用いてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27の板表面に、軸方向溝26eと径方向溝26fとを組み合わせた格子状の溝部26d、27dを形成しているが、図19Bに示すにように、軸方向溝26eのみを備えた溝部26d、27dや、図19Cに示すにように、径方向溝26fのみを備えた溝部26d、27dであってもよい。また、図19Dに示すように、傾斜した傾斜溝26g、27gを格子状に組み合わせた溝部26d、27dとしてもよい。つまり、溝部26d、27dを構成する溝の方向は任意に設定することができる。ただし、レーザー溶接でコイル同士を接続する場合は、溝部26d、27dの溝方向をレーザー照射方向に沿わせることが好ましい。
【0083】
また、上記実施形態では、外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27の板表面のうち、軸方向に沿い、且つ径方向に沿う2つの板表面に溝部26d、27dを形成しているが、図19E図19Fに示すように、両端面を除く全周面に溝部26d、27dを形成してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、スロットコイル25を構成する外径側スロットコイル26及び内径側スロットコイル27に溝部26d、27dを形成するにあたり、プレス面201aに溝部26d、27dに対応する溝パターンを備えた一対のプレス型材201を用い、両プレス型材201間で外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27をプレスすることにより、外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27の板表面に溝部26d、27dを転写しているが、プレス以外の方法を用いて溝部26d、27dを形成してもよい。例えば、図20に示すように、上下一対の送りローラ202で外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27を送りつつ、左右一対の切削ローラ203で外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27の側面に溝部26d、27dを形成する。この場合、外径側スロットコイル26や内径側スロットコイル27の側面には、切削ローラ203の周面に設けられる切削歯203aの形状に応じた溝パターンが形成される。さらに、上下一対の送りローラ202とは別に、上下一対の切削ローラ203を設けることで、図19E図19Fに示したように、一度の送り作業で全周面に溝部26d、27dを形成できる。
【0085】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上記実施形態では、円周方向に隣接する3つのスロット毎に同相のコイルが配置されるトリプルスロットタイプのステータを例示したが、これに限らず、円周方向の1つのスロット毎に各相のコイルが配置されるシングルスロットタイプ、円周方向に隣接する2つのスロット毎に同相のコイルが配置されるダブルスロットタイプのステータを用いてもよい。
また、コイルの結線については、上記実施形態に限らず、任意の仕様を選択でき、直列結線及び並列結線も適宜選択できる。
また、上記実施形態では、直線状のスロットコイル25を用い、スロット毎にそれぞれ独立したスロットコイル25を挿入しているが、2つのスロットに跨って挿入されるU字形のスロットコイルにおいても本発明の適用は可能である。
また、上記実施形態では、スロットコイル25や接続コイル40の被膜を考慮していないが、比較的薄い被膜を有するスロットコイル25や接続コイル40であれば、プレスによる溝パターンの転写によって被膜を破ることなく溝部26d、27d、111c、113b、122c、124bを形成できる。
また、比較的厚い被膜が要求されるスロットコイル25や接続コイル40の場合は、任意の方法で導体に溝部26d、27d、111c、113b、122c、124bを形成した後、被膜処理を行えばよい。
また、必ずしも接続コイル40に、溝部111c、113b、122c、124bを形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 ステータ
21 ステータコア
21a、21b 端面(軸方向端面)
23 スロット
25 スロットコイル
26d 溝部
27d 溝部
40 接続コイル
50 コイル
111c 溝部(他の溝部)
122c 溝部(他の溝部)
P2、P3 当接面(接合部)
X 溝部の深さ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図20
図21