【解決手段】ポリカーボネート樹脂65〜100重量%およびスチレン系樹脂35重量%以下を含む樹脂成分100重量部に対し、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維5〜40重量部、エラストマー0.5〜10質量部、アンチモンおよびスズを含むレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤5〜10質量部、縮合リン酸エステル10〜30質量部およびポリテトラフルオロエチレン0.1〜1質量部を含む樹脂組成物。
ポリカーボネート樹脂65〜100重量%およびスチレン系樹脂35〜0重量%を含む樹脂成分100重量部に対し、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維5〜40重量部、エラストマー0.5〜10質量部、アンチモンおよびスズを含むレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤5〜10質量部、縮合リン酸エステル10〜30質量部およびポリテトラフルオロエチレン0.1〜1質量部を含むレーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物。
前記平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維の配合量が、前記樹脂成分100重量部に対し、5〜30重量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、酸化鉛0.01〜0.1重量%および/または酸化銅0.001〜0.01重量%含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
平均繊維長/平均繊維径が10を超えるガラス繊維を、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維の配合量の100重量%以下の割合で含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表す。
【0009】
本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂65〜100重量%およびスチレン系樹脂35〜0重量%を含む樹脂成分100重量部に対し、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維5〜40重量部、エラストマー0.5〜10質量部、アンチモンおよびスズを含むレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤5〜10質量部、縮合リン酸エステル10〜30質量部およびポリテトラフルオロエチレン0.1〜1質量部を含むことを特徴とする。このように、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維(以下、「短繊維」ということがある)を用いることにより、機械的強度およびメッキ性を維持しつつ、難燃性に優れた樹脂組成物を提供可能になる。ガラス繊維は機械的強度を向上させるために配合する成分として周知であるが、かかるガラス繊維、特に、短繊維を配合することによって、難燃性が向上するのは極めて驚くべきことである。
以下、本発明の樹脂組成物の詳細について説明する。
【0010】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂としては特に制限されず、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートのいずれも用いることができる。中でも芳香族ポリカーボネートが好ましく、さらに、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体がより好ましい。
【0011】
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。さらに、難燃性が高い組成物を調製する目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、またはシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーもしくはオリゴマー等を、使用することができる。
【0012】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の好ましい例には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体;が含まれる。
【0013】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、14,000〜30,000であるのが好ましく、15,000〜28,000であるのがより好ましく、16,000〜26,000であるのがさらに好ましい。粘度平均分子量が前記範囲であると、機械的強度がより良好となり、且つ成形性もより良好となるので好ましい。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の製造方法については、特に限定されるものではなく、本発明には、ホスゲン法(界面重合法)、および溶融法(エステル交換法)等の、いずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、本発明では、一般的な溶融法の製造工程を経た後に、末端基のOH基量を調整する工程を経て製造されたポリカーボネート樹脂を使用してもよい。
【0015】
さらに、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、バージン原料としてのポリカーボネート樹脂のみならず、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0016】
その他、本発明で用いるポリカーボネート樹脂については、例えば、特開2012−072338号公報の段落番号0018〜0066の記載を参酌でき、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
本発明の樹脂組成物において、全樹脂成分中、ポリカーボネート樹脂の割合が、65〜100重量%であり、65〜90重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましい。
【0018】
<スチレン系樹脂>
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリカーボネート樹脂の他にスチレン系樹脂を含んでいてもよい。
【0019】
スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体からなるスチレン系重合体、該スチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体との共重合体、ゴム質重合体の存在下で該スチレン系単量体又は該スチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体とを重合させた共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体を言う。これらの中でも、ゴム質重合体の存在下に該スチレン系単量体を又は該スチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いることが好ましい。
【0020】
スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等のスチレン誘導体が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。尚、これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0021】
上記のスチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、へキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、へキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、マレイミド、N,N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
【0022】
さらにスチレン系単量体と共重合可能なゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体及びブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンランダム共重合体及びブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルとブタジエンとの共重合体、ポリブタジエン−ポリイソプレンジエン系共重合体、エチレン−イソプレンランダム共重合体及びブロック共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体及びブロック共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等のエチレンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体等のエチレン−プロピレン−非共役ジエンターポリマー、アクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレート又はメタクリレートゴムとからなる複合ゴム等が挙げられる。
【0023】
この様なスチレン系樹脂は、例えば、スチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MS樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)が好ましく、より好ましくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)であり、特に好ましいのはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)である。
【0025】
上記のスチレン系樹脂は、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合あるいは塊状・懸濁重合等の方法により製造されるが、本発明においては、スチレン系重合体、又はスチレン系ランダム共重合体あるいはブロック共重合体の場合は、塊状重合、懸濁重合又は塊状・懸濁重合により製造されたものが好適であり、スチレン系グラフト共重合体の場合は塊状重合、塊状・懸濁重合あるいは乳化重合によって製造されたものが好適である。
【0026】
本発明において、特に好適に用いられるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)とは、ブタジエンゴム成分にアクリロニトリルとスチレンをグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とアクリロニトリルとスチレンの共重合体の混合物である。ブタジエンゴム成分は、ABS樹脂成分100重量%中、5〜40重量%であることが好ましく、中でも10〜35重量%、特に13〜25重量%であることが好ましい。またゴム粒子径は0.1〜5μmであることが好ましく、中でも0.2〜3μm、さらに0.3〜1.5μm、特に0.4〜0.9μmであることが好ましい。ゴム粒子径の分布は、単一分布でも二山以上の複数の分布を有するもののいずれであってもよい。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、スチレン系樹脂を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
本発明の樹脂組成物において、全樹脂成分中、スチレン系樹脂の割合は0〜35重量%である。スチレン系樹脂を含む場合、スチレン系樹脂の割合は、全樹脂成分中、35〜10重量%であることが好ましく、30〜10重量%であることがさらに好ましい。
また、シャルピー衝撃強度が求められる用途の場合、樹脂成分中の、スチレン系樹脂の配合量を10重量%未満とすることもできる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の樹脂成分を含んでいてもよい。しかしながら、他の樹脂は全樹脂成分の5重量%以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、組成物の合計の40重量%以上が樹脂成分であることが好ましく、50重量%以上が樹脂成分であることがより好ましく、60重量%以上が樹脂成分であることがさらに好ましい。
【0029】
<ガラス繊維(短繊維)>
本発明の樹脂組成物は、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維(短繊維)を含む。このような短繊維を用いることで、本発明の樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。さらに、異方性の改良や表面外観をより効果的に高めることも可能になる。短繊維のアスペクト比は、好ましくは8以下、より好ましくは7以下であり、また、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3以上である。アスペクト比が、10を超える場合は、ソリや異方性が大きくなるほか、成形品外観が悪化しやすい。
本発明に使用される短繊維は、ガラス繊維ミルドファイバー(Milled Fiber)であることが好ましい。ミルドガラスファイバーは、ガラス単繊維(フィラメント)を数十本から数千本束ねたガラス繊維のストランドを、所定の長さに切断したガラス繊維チョップドストランドを、粉砕(Milled)したものである。この際のガラス繊維チョップドストランドは、後述するような収束剤により表面処理されたものが好ましい。
【0030】
また、本発明で用いる短繊維の平均繊維径は、1〜25μmであることが好ましく、より好ましくは5〜17μmである。平均繊維径を1μm以上とすることにより、成形加工性が向上する傾向にあり、平均繊維径を25μm以下とすると、外観がより良好になり、補強効果もより効果的となる。平均繊維長は、好ましくは1〜500μm、より好ましくは10〜300μm、更に好ましくは20〜200μmである。
【0031】
本発明で用いる短繊維の平均繊維径は、数平均繊維径をいい、また、平均繊維長とは、本発明のペレット中における数平均繊維長をいう。
【0032】
また、本発明で用いる短繊維として、円形断面形状のものおよび異形断面形状のもののいずれも好ましく、円形断面形状のものがより好ましい。円形断面形状のものを用いると、得られる成形品のウェルド強度をより向上させることができる。
【0033】
本発明で用いる短繊維としては、Aガラス、Cガラス、Eガラス等のガラス組成のものがあるが、中でもEガラス(無アルカリガラス)が、ポリカーボネート樹脂に悪影響を及ぼさないという点で好ましい。
【0034】
前記したミルドガラスファイバーを製造するためのガラス繊維チョップドストランドを表面処理する際の収束剤としては、特に制限はないが、例えばウレタン系、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系、スチレン系、オレフィン系等の収束剤が挙げられる。なかでも、ウレタン系、エポキシ系収束剤がより好ましく、エポキシ系収束剤がさらに好ましい。
なお収束剤の付着量は、ガラス繊維100重量%中、通常0.1〜3重量%であり、好ましくは0.2〜1重量%である。
【0035】
本発明の樹脂組成物における短繊維の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、5〜40重量部であり、10〜40重量部が好ましく、12〜40重量部がより好ましく、15〜40重量部がさらに好ましい。特に、短繊維の配合量を樹脂成分100重量部に対し、40重量部以下とすることにより、難燃性に加え、メッキ性もより向上する傾向にある。
本発明の樹脂組成物は、短繊維を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
本発明の樹脂組成物では、通常、樹脂成分とガラス繊維(短繊維)で、全成分の70重量%以上を占めることが好ましい。
【0036】
本発明では、短繊維以外の繊維を含んでいてもよい。短繊維以外のガラス繊維とは、平均繊維長/平均繊維径が10を超えるガラス繊維である。しかしながら、本発明では、平均繊維長/平均繊維径が10を超えるガラス繊維の含有量は、前記平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維の配合量の100重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。また、本発明では、平均繊維長/平均繊維径が10を超えるガラス繊維を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、例えば、積極的に配合されていないことをいう。従って、不純物まで排除するものではない。
【0037】
<エラストマー>
本発明の樹脂組成物は、エラストマーを含む。エラストマーを含有することで、樹脂組成物の耐衝撃性を改良することができる。本発明で用いるエラストマーとしては、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム共重合体(MB樹脂)、SBS、SEBSと呼ばれているスチレン−ブタジエン系トリブロック共重合体とその水添物、SPS、SEPSと呼ばれているスチレン−イソプレン系トリブロック共重合体とその水添物、TPOと呼ばれているオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系エラストマー、シロキサン系ゴム、アクリレート系ゴム、シロキサン共重合体エラストマー等が挙げられる。エラストマーとしては、特開2012−251061号公報の段落番号0075〜0088に記載のエラストマー、特開2012−177047号公報の段落番号0101〜0107に記載のエラストマー等を用いることができ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。本発明で特に好ましくは、MBS樹脂、MB樹脂またはシロキサン共重合エラストマーが用いられ、シロキサン共重合体エラストマーがより好ましい。
【0038】
(シロキサン共重合エラストマー)
本発明で用いるシロキサン共重合エラストマーとしては、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとを含むシリコーン−アクリル複合ゴムが好ましく、必要に応じて1種以上のビニル系化合物単量体から構成されるビニル系重合体をグラフトさせたグラフト共重合体であってもよい。
【0039】
その基本的な重合体構造としては、ガラス転移温度の低い架橋成分であるポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが相互に絡み合った構造から成る内核層と、1種以上のビニル系化合物単量体から構成されるビニル系重合体からなる外殻層とを有する多層構造重合体である。外殻層を構成するビニル系重合体は、樹脂組成物のマトリックス成分との接着性を改善する効果を有する。このようなグラフト共重合体は、例えば、特開2004−359889号公報に開示された方法で製造することができる。
【0040】
シリコーン−アクリル複合ゴムの製造に用いるポリオルガノシロキサンは、特に限定されないが、例えば、ジメチルシロキサン単位を構成単位として含有する重合体が好ましい。ポリオルガノシロキサンを構成するジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これらの中でも、粒子径分布の制御しやすさから、主成分がオクタメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0041】
ポリオルガノシロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有するシロキサンを構成成分として含有していてもよく、また、シロキサン系架橋剤によって架橋されていてもよい。また、ポリオルガノシロキサンの製造方法やグラフト共重合体の製造方法についても特に制限はない。これらは、特開2012−131934号公報段落[0055]〜[0080]の記載を参酌でき、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0042】
ポリオルガノシロキサンの数平均粒子径は、10nm以上であることが好ましく、50nm〜5μmであることがより好ましく、100nm〜3μmであることがさらに好ましい。ポリオルガノシロキサンの数平均粒子径を10nm以上とすることにより、シリコーン−アクリル複合ゴム中のポリアルキル(メタ)アクリレート量が多くなりすぎず、耐衝撃性の低下を抑制することができる。
【0043】
シリコーン−アクリル複合ゴムの製造に用いるポリアルキル(メタ)アクリレートとは、アルキル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体である。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、及び、メチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上併用して用いることができる。
【0044】
また、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、多官能性単量体単位を構成成分として含有する共重合体であってもよい。多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上併用して用いることができる。
【0045】
多官能性単量体を使用する場合の含有量には特に制限はないが、ポリアルキル(メタ)アクリレート100重量%中の0.1〜2重量%であることが好ましく、0.3〜1重量%であることがより好ましい。多官能性単量体の含有量を0.1重量%以上とすることにより、複合ゴムのモルフォロジーの変化による衝撃強度の低下を抑制できる傾向にあり、また、多官能性単量体の含有量を2重量%以下とすることにより、衝撃強度がより向上する傾向にある。
【0046】
本発明おいて、シロキサン共重合エラストマーとしては、ポリオルガノシロキサン−ポリアルキル(メタ)アクリレート複合ゴムに、メタクリル酸アルキル重合体をグラフト重合させたグラフト重合体、ポリオルガノシロキサン−ポリアルキル(メタ)アクリレート複合ゴムに、アクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフト重合させたグラフト共重合体が好ましく、これらは、三菱レイヨン社から「メタブレンSシリーズ」として上市されており、例えば「S−2030」などを使用することが好ましい。
【0047】
エラストマーの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.5〜10重量部であり、1〜8重量部が好ましく、3〜7重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、エラストマーを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0048】
<レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(LDS添加剤)>
本発明で用いるLDS添加剤は、アンチモンおよびスズを含むことを特徴とする。好ましくは、LDS添加剤に配合される金属成分のうち最も配合量が多い成分がスズであり、次に配合量が多い成分がアンチモンである。さらに、鉛および/または銅を含むことが好ましい。鉛と銅は一方が含まれても良いし、両方が含まれていても良い。好ましい態様として、最も配合量が多い成分がスズであり、次に配合量が多い成分がアンチモンであり、その次に配合量が多い金属成分が鉛であり、鉛の次に配合量が多い金属成分が銅である態様が例示される。
本発明におけるLDS添加剤は、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)、S−3000F)100重量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を4重量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力10W、周波数80kHz、速度3m/sにて照射し、その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製M−Copper85のメッキ槽にて実施し、該レーザー照射面に金属を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品はLDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。
【0049】
本発明で用いるLDS添加剤に含まれる金属成分は、90重量%以上がスズであり、5重量%以上がアンチモンであり、微量成分として、鉛および/または銅を含むことが好ましく、90重量%以上がスズであり、5〜9重量%がアンチモンであり、0.01〜0.1重量%の範囲で鉛を含み、0.001〜0.01重量%の範囲で銅を含むことがより好ましい。
より具体的には、本発明で用いるLDS添加剤は、酸化スズ90重量%以上と、酸化アンチモン3〜8重量%を含むことが好ましく、また、酸化鉛0.01〜0.1重量%および/または酸化銅0.001〜0.01重量%含むことが好ましい。特に好ましい実施形態としては、酸化スズ90重量%以上と、酸化アンチモン3〜8重量%と、酸化鉛0.01〜0.1重量%と、酸化銅0.001〜0.01重量%含むLDS添加剤を用いる形態であり、よりさらに好ましい実施形態としては、酸化スズ93重量%以上と、酸化アンチモン4〜7重量%と、酸化鉛0.01〜0.05重量%と、酸化銅0.001〜0.006重量%含むLDS添加剤を用いる形態である。
【0050】
本発明で用いるLDS添加剤は、鉛および/または銅の他に、他の金属を微量含んでいてもよい。他の金属としては、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、クロム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。これら金属は酸化物として存在していてもよい。これら金属の含有量は、それぞれ、LDS添加剤に含まれる金属成分の、0.001重量%以下が好ましい。
【0051】
LDS添加剤の粒子径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性が良好になる傾向にある。
【0052】
本発明の樹脂組成物におけるLDS添加剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、5〜10重量部であり、5〜8重量部が好ましい。また、タルクを配合することにより、LDS添加剤の配合量を少なめ(例えば、樹脂成分100重量部に対し3〜7重量部)としても、十分なメッキ性を達成できる。
本発明の樹脂組成物は、LDS添加剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0053】
<タルク>
本発明の樹脂組成物はタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、レーザーを照射した部分のメッキ性能が向上する傾向にある。
また、本発明で用いるタルクは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される化合物の少なくとも1種で表面処理されたタルクであることも好ましい。この場合、シロキサン化合物の付着量は、タルクの0.1〜5重量%であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物がタルクを含む場合、タルクの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、2〜10重量部がより好ましい。タルクが表面処理されている場合、表面処理された合計量が、上記範囲であることが好ましい。
【0054】
<縮合リン酸エステル>
本発明の樹脂組成物は、縮合リン酸エステルを含む。縮合リン酸エステルを配合させることで、難燃性を向上させることができる。
縮合リン酸エステルとしては、下記の一般式(1)で表されるものであるのが好ましい。
【0055】
一般式(1)
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して水素原子または有機基を表す。ただし、R
1、R
2、R
3およびR
4が全て水素原子の場合を除く。Xは2価の有機基を表し、pは0または1であり、qは1以上の整数、rは0または1以上の整数を表す。)
【0056】
上記の一般式(1)において、有機基とは、例えば、置換基を有する、または有しないアルキル基、シクロアルキル基、アリール基が挙げられ、該置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール基等が挙げられる。またこれらの置換基を組み合わせた基、あるいはこれらの置換基を酸素原子、イオウ原子、窒素原子などにより結合して組み合わせた基などでもよい。また2価の有機基とは、上記の有機基から炭素原子1個を除いてできる2価以上の基をいう。例えば、アルキレン基、フェニレン基、置換フェニレン基、ビスフェノール類から誘導されるような多核フェニレン基などが挙げられる。
【0057】
上記の一般式(1)で示される縮合リン酸エステルの具体例としては、例えば、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリクレジルフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、ジイソプロピルフェニルフォスフェート、トリス(クロルエチル)フォスフェート、トリス(ジクロルプロピル)フォスフェート、トリス(クロルプロピル)フォスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロルフォスフェート、ビス(クロルプロピル)モノオクチルフォスフェート、ビスフェノールAテトラフェニルフォスフェート、ビスフェノールAテトラクレジルジフォスフェート、ビスフェノールAテトラキシリルジフォスフェート、ヒドロキノンテトラフェニルジフォスフェート、ヒドロキノンテトラクレジルフォスフェート、ヒドロキノンテトラキシリルジフォスフェート等の種々のものが例示される。
また、市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、大八化学工業(株)より「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、「PX−200」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))、旭電化工業(株)より「アデカスタブFP−700」(2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン・トリクロロホスフィンオキシド重縮合物(重合度1〜3)のフェノール縮合物)といった商品名で販売されており、容易に入手可能である。
【0058】
縮合リン酸エステルの配合量は、樹脂成分100質量部に対し、10〜30質量部であり、15〜30質量部が好ましく、20〜29質量部が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、縮合リン酸エステル化合物を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0059】
<ポリテトラフルオロエチレン>
本発明の樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する。ポリテトラフルオロエチレンとしては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)6−Jや、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンF201L、FA500B、FA500Cが挙げられる。また、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液として、ダイキン化学工業(株)製のフルオンD−1や、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するポリテトラフルオロエチレン化合物が挙げられる。いずれのタイプも本発明の樹脂組成物に用いることができる。
【0060】
ポリテトラフルオロエチレンを含有した樹脂組成物を射出成形した成形品の外観をより向上させるためには、有機系重合体で被覆された特定の被覆ポリテトラフルオロエチレン(以下、被覆ポリテトラフルオロエチレンと略記することがある)を使用することができる。特定の被覆ポリテトラフルオロエチレンとは、被覆ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%の範囲内となるものであり、中でも、43〜80重量%、更には45〜70重量%、特には47〜60重量%となるものが好ましい。特定の被覆ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三菱レイヨン社製のメタブレンA−3800、A−3700、KA−5503や、PIC社製のPoly TS AD001等が使用できる。
【0061】
ポリテトラフルオロエチレンの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.1〜1重量部であり、0.2〜0.9重量部がより好ましく、0.3〜0.8重量部が特に好ましい。なお、被覆ポリテトラフルオロエチレンの場合、添加量はポリテトラフルオロエチレン純分の量に相当する。ポリテトラフルオロエチレンの配合量が0.1重量部未満の場合には、難燃効果としては不十分であり、一方、1重量部を超えると成形品外観の低下が起こる場合がある。
本発明の樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレンを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0062】
<酸化チタン>
本発明の樹脂組成物は、酸化チタンを含むことが好ましい。
酸化チタンとしては、一般に市販されているもののなかで白色度と隠蔽性の点で、酸化チタンを80重量%以上含有するものを用いるのが好ましい。本発明で使用する酸化チタンとしては、例えば、一酸化チタン(TiO)、三酸化ニチタン(Ti
2O
3)、二酸化チタン(TiO
2)などが挙げられ、これらのいずれを使用してもよいが、二酸化チタンが好ましい。また、酸化チタンとしては、ルチル型の結晶構造を有するものが好ましく使用される。
本発明の樹脂組成物が酸化チタンを含む場合、酸化チタンの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.5〜5重量部含有することが好ましく、1.0〜4重量部含有することがより好ましい。本発明の樹脂組成物は、酸化チタンを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0063】
<有機リン系安定剤>
本発明の樹脂組成物は、有機リン系安定剤を含むことが好ましい。有機リン系安定剤を配合することで、LDS添加剤によるポリカーボネート樹脂を分解しにくくし、本発明の効果がより効果的に発揮される。有機リン系安定剤としては、特開2009−35691号公報の段落番号0073〜0095の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。より好ましい有機リン系安定剤としては、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0064】
一般式(3)
O=P(OH)
m(OR)
3-m・・・(3)
(一般式(3)中、Rはアルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。mは0〜2の整数である。)
Rは炭素数1〜30のアルキル基または、炭素数6〜30のアリール基であることが好ましく、炭素数2〜25のアルキル基、フェニル基、ノニルフェニル基、ステアリルフェニル基、2,4−ジtert−ブチルフェニル基、2,4−ジtert−ブチルメチルフェニル基、トリル基がより好ましい。
【0065】
中でも、下記一般式(3’)で表されるリン酸エステルが好ましい。
【0066】
O=P(OH)
m'(OR’)
3-m'・・・(3’)
一般式(3’)中、R’は炭素数2〜25のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。m’は1または2である。ここで、アルキル基としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などが挙げられ、テトラデシル基、ヘキサデシル基およびオクタデシル基が好ましく、オクタデシル基が特に好ましい。
【0067】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスフォナイト、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0068】
亜リン酸エステルとしては、下記一般式(4)で表される化合物も好ましい。
一般式(4)
【化2】
(一般式(4)中、R'は、アルキル基またはアリール基であり、各々同一でも異なっていてもよい。)
R'は炭素数1〜25のアルキル基または、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。R’がアルキル基である場合、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。R’がアリール基である場合、炭素数6〜30のアリール基が好ましい。
【0069】
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフエニルホスファイト、モノオクチルジフエニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
【0070】
本発明の樹脂組成物がリン系安定剤を含む場合、該リン系安定剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量が好ましく、0.05〜1重量部がより好ましく、0.08〜0.5重量部がさらに好ましい。0.01重量部以上とすることで、LDS添加剤によるポリカーボネート樹脂の分解をより効果的に抑制させることができ、5重量部以下とすることで、ガラス繊維とポリカーボネートとの密着強度を上げ、強度をより向上させることができる。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0072】
本発明では、特に、有機リン系安定剤として、モノステアリルアシッドホスフェートおよび/またはジステアリルアシッドホスフェートを、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜1重量部配合することが好ましく、0.05〜0.5重量部含むことがより好ましい。0.01重量部以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂の分解を顕著に抑制でき、1重量部以下とすることにより、ガラス繊維との密着性を向上させ、機械的強度を顕著に向上させることができる。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0074】
本発明では、特に、有機リン系安定剤として、モノステアリルアシッドホスフェートおよび/またはジステアリルアシッドホスフェートを、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部配合することが好ましく、0.1〜0.5重量部含むことがより好ましい。0.01重量部以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂の分解を顕著に抑制でき、0.5重量部以下とすることにより、ガラス繊維との密着性を向上させ、機械的強度を顕著に向上させることができる。
【0075】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、より具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、および3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
本発明の樹脂組成物が酸化防止剤を含む場合、該酸化防止剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であることが好ましく、0.05〜3重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は酸化防止剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0076】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、および数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。中でも、脂肪族カルボン酸、および脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく用いられる。
【0077】
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0078】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0079】
本発明の樹脂組成物が離型剤を含む場合、該離型剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であることが好ましく、0.05〜3重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は離型剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0080】
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、リン系安定剤以外の安定剤、紫外線吸収剤、無機フィラー、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
これらの成分については、特開2007−314766号公報、特開2008−127485号公報および特開2009−51989号公報、特開2012−72338号公報等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
【0082】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
【0083】
樹脂成形品の製造方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
【0084】
次に、本発明の樹脂組成物を成形した樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を
図1に従って説明する。
図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。
図1では、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。また、樹脂成形品は、最終製品に限らず、各種部品も含む趣旨である。本発明における樹脂成形品としては、携帯電子機器部品が好ましい。携帯電子機器部品は、高い耐衝撃特性と剛性、優れた耐熱性を併せ持つうえ、異方性が小さく、反りが小さいという特徴を有し、電子手帳、携帯用コンピューター等のPDA、ポケットベル、携帯電話、PHSなどの内部構造物および筐体として極めて有効であり、特に樹脂成形品がリブを除く平均肉厚が1.2mm以下(下限値は特に定めるものではないが、例えば、0.4mm以上)である平板形状の携帯電子機器用部品に適しており、中でも筐体として特に適している。
また、平均肉厚が1.6mmにおける樹脂成形品のUL−94試験の評価がV−0であることが求められる用途に適している。
【0085】
再び
図1に戻り、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YAGレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm〜1200nmである。特に好ましくは800〜1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。この活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているものが好ましく、銅がより好ましい。
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ層5が形成される。
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回路間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。メッキは、形成した回路の腐食や劣化を抑えるために、例えば無電解メッキを実施した後にニッケル、金で更に保護することも出来る。また、同様に無電解メッキ後に電解メッキを用い、必要な膜厚を短時間で形成することも出来る。
【0086】
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、例えば、コネクタ、スイッチ、リレー、導電回路等の電子部品、ランプリフレクタ等の反射板、ギヤ、カム等のような摺動部品、エアインテークマニホールドなどの自動車部品、流し台などの水回り部品、種々の装飾部品、あるいは、フィルム、シート、繊維などの種々の用途に用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、成形方法にもよるが、白色度が高く、反射率に優れた成形品を与える。本発明の樹脂組成物から得られる成形品の白色度(ハンター式)は、通常92以上、好ましくは94以上である。また、本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、耐熱性に優れるとともに、実際の使用環境下での光安定性に優れている。従って、本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、光を反射する機能を有する部品、特に、LED機器部品、好ましくは、LEDの反射板や導電回路として働く。メッキ層は、1層のみであってもよいし、多層構造であってもよい。
【0087】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0089】
<樹脂成分>
S−3000FN:三菱エンジニアリングプラスチックス製、ポリカーボネート(PC)樹脂
AT−08:日本エイアンドエル製、ABS樹脂
【0090】
<エラストマー>
S−2030:三菱レイヨン製、Si系エラストマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/ジメチルシロキサン共重合物
【0091】
<LDS添加剤>
CP5C:Keeling&Walker社製、アンチモンドープ酸化スズ(酸化スズ95重量%、酸化アンチモン5重量%、酸化鉛0.02重量%、酸化銅0.004重量%からなる)
【0092】
<酸化防止剤>
Irg1076:BASF社製、Irganox1076
【0093】
<リン系安定剤>
AX−71:ADEKA社製、モノ−およびジ−ステアリルアシッドホスフェートのほぼ等モル 混合物
【0094】
<離型剤>
VPG861:コグニスオレオケミカルズジャパン社製、ペンタエリスリトールテトラステアレート
【0095】
<ポリテトラフルオロエチレン>
6−J:三井デュポンフロロケミカル社製、フィブリル形成能を有するフルオロポリマー
【0096】
<酸化チタン>
CP−K:レジノカラー工業製、酸化チタン
【0097】
<縮合リン酸エステル>
PX−200:大八化学工業社製、レゾルシノールビス−2,6−キシレニルホスフェート
【0098】
<ガラス繊維>
T−187:日本電気硝子社製、平均繊維長/平均繊維径が10を超えるガラス繊維、平均繊維長3mm、平均繊維径13μm、円形断面を有するガラス繊維(扁平率1)
MF−SR:旭ファイバーグラス製、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維(短繊維)、平均繊維長50μm、平均繊維径10μm、円形断面を有するガラス繊維(扁平率1)
【0099】
<コンパウンド(実施例2〜5、比較例1〜4)>
後述する表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0100】
<コンパウンド(実施例1)>
後述する表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度300℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0101】
<難燃性(UL94V)>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所製のJ50−EP型射出成形機を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ1.6mmのUL試験用試験片を成形した。
【0102】
各樹脂組成物の難燃性の評価は、上述の方法で得られたUL試験用試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表に示す基準を満たすことが必要となる。
【0103】
【表1】
【0104】
ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(not rated)と評価した。
【0105】
<曲げ弾性率および曲げ強度>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、4mm厚さのISO引張り試験片を成形した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ弾性率(単位:MPa)および曲げ強度(単位:MPa)を測定した。
【0106】
<シャルピー衝撃強度>
上記で得られたISO引張り試験片(4mm厚)を用い、ISO179に準拠し、23℃の条件で、ノッチ有シャルピー衝撃強度を測定した。
【0107】
<荷重たわみ温度(DTUL)>
上記で得られたISO引張り試験片(4mm厚)を用い、ISO75−1及びISO75−2に準拠して荷重1.80MPaの条件で荷重たわみ温度を測定した。
【0108】
<メッキ性>
上述の製造方法で得られた実施例2〜5、比較例1〜4のペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、3mm厚さのプレートを成形した。
上述の製造方法で得られた実施例1のペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、3mm厚さのプレートを成形した。
上記で得られた3mm厚のプレートに1064nmのYAGレーザーを用い、出力2.6〜13Wの範囲のいずれか、速度1〜2m/sのいずれか、周波数10〜50μsの範囲のいずれかの条件から組み合わされた各種条件でレーザー照射により印字し、続いて、試験片を硫酸にて脱脂後、キザイ社製THPアルカリアクチ及びTHPアルカリアクセで処理後、キザイ社製SELカッパ―にてメッキ処理を行った。メッキ処理後の試験片を目視にて判定し、下記5段階に分類した。
5:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が75〜100%
4:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が50〜74%
3:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が30〜49%
2:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が10〜29%
1:各種レーザー条件中、明瞭にメッキが載った条件が10%に満たない
【0109】
結果を下記表に示す。
【表2】
【0110】
上記表から明らかなとおり、本発明の組成物を用いた場合は、メッキ性を維持しつつ、曲げ弾性率、曲げ強度、シャルピー衝撃強さや荷重たわみ温度などの各種機械的特性および難燃性に優れた試験片が得られた。これに対し、スチレン樹脂の配合量が多くなると、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維の配合量を多くしても難燃性が劣っていた(比較例1)。また、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維の配合量が本発明の範囲外の場合も(比較例2〜4)、難燃性が劣っていた。
ポリカーボネート樹脂65〜100重量%およびスチレン系樹脂35〜0重量%を含む樹脂成分100重量部に対し、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維5〜40重量部、エラストマー0.5〜10質量部、アンチモンおよびスズを含むレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤5〜10質量部、縮合リン酸エステル10〜30質量部およびポリテトラフルオロエチレン0.1〜1質量部を含むレーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物。
前記平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維の配合量が、前記樹脂成分100重量部に対し、5〜30重量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、酸化鉛0.01〜0.1重量%および/または酸化銅0.001〜0.01重量%含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
平均繊維長/平均繊維径が10を超えるガラス繊維を、平均繊維長/平均繊維径が10以下であるガラス繊維の配合量の100重量%以下の割合で含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。