【解決手段】被検知ガスと接触自在に設けられたガス感応部を備えたガス検知素子と、ガス検知素子に所定電圧を印加する電池11を収容する電源部10と、を筐体Yの内部に備え、筐体Yに装着可能であり、電源部10を封じる電源蓋部材12dを備えた電池式のガス警報器Xであって、電源蓋部材12dを筐体Yから離脱させたときに、筐体Yの内部に収容してある部品の少なくとも一部が変形する。
被検知ガスと接触自在に設けられたガス感応部を備えたガス検知素子と、ガス検知素子に所定電圧を印加する電池を収容する電源部と、を筐体の内部に備え、前記筐体に装着可能であり、当該電源部を封じる電源蓋部材を備えた電池式のガス警報器であって、
前記電源蓋部材を前記筐体から離脱させたときに、前記筐体の内部に収容してある部品の少なくとも一部が変形する電池式のガス警報器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のガス警報器において、破壊して取り外す筐体の一部は、別体で形成されている場合に比べて取り外し難かった。
【0005】
また、ガス警報器には、点検者の着衣等に装着した状態でガス検知を行えるものが知られていた。この場合、ガス警報器の筐体には、クリップやピン等の装着用部材が設けてあり、当該装着用部材によって前記着衣に装着し、携行可能となっていた。このような携行型のガス警報器は小型に形成されていることが多いため、その筐体内に装着してある電池を、筐体を破壊して筐体の一部を取り外す際には、このような小型のガス警報器では、取り外し作業は行いにくかった。
【0006】
さらに、仮に取り外した筐体の一部をシール等で元の筐体に固定することで、ガス警報器を再使用される虞があった。ガス検知素子の寿命および電池の寿命を考慮した場合、電池を交換する場合はガス検知素子も同時期に交換する、または新しい機器を使用する使用態様とするのがよい場合がある。この場合、仮に点検者が電池の交換のみを行って機器を継続して使用した場合、ガス検知素子がその寿命を超えて使用されてしまい、正常なガス検知が行えなくなる虞がある。そのため、仮に点検者が誤って電池のみを交換しようとした場合、この交換作業のどこかの段階でガス警報器の再使用ができないようにするのが望ましい。
【0007】
従って、本発明の目的は、電池を取り出し易く、かつ電池を取り出した後のガス警報器の再利用を確実に防止できる電池式のガス警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る電池式のガス警報器は、被検知ガスと接触自在に設けられたガス感応部を備えたガス検知素子と、ガス検知素子に所定電圧を印加する電池を収容する電源部と、を筐体の内部に備え、前記筐体に装着可能であり、当該電源部を封じる電源蓋部材を備えた電池式のガス警報器であって、その第一特徴構成は、前記電源蓋部材を前記筐体から離脱させたときに、前記筐体の内部に収容してある部品の少なくとも一部が変形する点にある。
【0009】
本構成によれば、電源蓋部材を筐体から離脱させた段階で、ガス警報器を意図的に破損させることができる。ここで「変形」とは、部品が組み込まれたときの態様とは異なり、直ぐに当該組み込まれたときの態様に戻せない状態となることをいう。このような部品の変形を意図的に発生させることで、ガス警報器を意図的に使用できなくすることができる。そのため、電源蓋部材を筐体から離脱させた段階で、ガス検知素子がその寿命を超えて使用されてしまうのを未然に防止することができる。
【0010】
電源蓋部材は筐体とは別体で構成してあるため、例えばガス警報器を破棄する際に筐体と電池等の電源部とを分別する際に、電源蓋部材を筐体から容易に離脱させることができる。
【0011】
従って、本発明の電池式のガス警報器であれば、電池を取り出し易く、かつ電池を取り出した後のガス警報器の再利用を確実に防止できる。
【0012】
本発明に係る電池式のガス警報器の第二特徴構成は、前記変形する部品を、前記電源部に収容した電池と接触する接続端子とした点にある。
【0013】
接続端子は、通常、コイル状の部材や薄い板状の金属片であるため、容易に変形できる部品である。そのため、本構成であれば、電源蓋部材を筐体から離脱させるときに容易に変形できる部材とすることができる。
【0014】
本発明に係る電池式のガス警報器の第三特徴構成は、前記変形を、前記接続端子であるコイルが伸びるものとした点にある。
【0015】
このような態様でコイルが変形することにより、伸びたコイルを元の状態に戻し難いため、容易に不可逆的な変形とすることができる。よって、電池式のガス警報器の再利用をより確実に防止できる。
【0016】
本発明に係る電池式のガス警報器の第四特徴構成は、前記変形を、前記接続端子であるコイルが、当該コイルを配設してある回路基板より離脱するものとした点にある。
【0017】
これにより、一旦離脱したコイルは、通常、回路基板に即座に接続し難いため、容易に不可逆的な破壊を行うことができる。よって、電池式のガス警報器の再利用をより確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜5に示したように、本発明の電池式のガス警報器Xには、被検知ガスと接触自在に設けられたガス感応部を備えたガス検知素子1と、ガス検知素子1から出力を得る出力検出部2と、出力検出部2で得られた値に基づき被検知ガスの濃度レベルを判別する判別部3と、ガス検知対象となる被検査部から被検知ガスを採取するガス採取部4とを備える。また、ガス警報器Xは、ガス検知素子1に所定電圧を印加する電池11を収容する電源部10を備えている。この電源部10によって、被検知ガスと接触したガス検知素子1に所定電圧を印加したとき、ガス検知素子1から出力を得ることができる。
【0020】
上述したガス検知素子1、出力検出部2、判別部3および電源部10は、ガス警報器Xの筐体Yに収容される。本実施形態のガス警報器Xは、点検者の着衣等に装着した状態でガス検知を行える携行型ガス警報器の態様であり、当該筐体Yは、表側筐体Y1および裏側筐体Y2を一体化して構成される場合について説明するが、この態様に限定されるものではない。
【0021】
表側筐体Y1は、ガス警報器Xを点検者の着衣等に装着した状態で正面となる側の筐体であり、裏側筐体Y2は、当該着衣等に装着した状態で点検者の側となる筐体である。
【0022】
当該裏側筐体Y2には、筐体Yの内部に収容してある部品として、ガス検知素子1、出力検出部2、判別部3、スイッチ5、ガス警報器Xの動作を制御する制御部6、警報を発する報知部7、回路基板8等の電子部品を収容し、さらに電源部10を配設してある。裏側筐体Y2の点検者側の表面には、点検者の着衣等に装着する装着用部材30が設けてある。当該装着用部材30は、着衣等に装着するクリップやピン等の態様や、点検者の手首等に装着するバンド等の態様とすることができるが、他物に装着できる態様であればこれらに限定されるものではない。
【0023】
表側筐体Y1には、ガス採取部4に対応する位置にガス導入口21、スイッチ5に対応する位置にスイッチ孔22がそれぞれ形成してあり、さらに報知部7に対応する筐体の正面の位置に、報知部7からの警報音を放つ正面放音孔23が形成してある。正面放音孔23は、音響用空間を有する音響室9を介して報知部7に通じている(
図6)。また、報知部7は、ガス検知素子1からの信号を受けて警報を発するものであればどのような態様であってもよく、例えば圧電スピーカなどを使用することができる。本実施形態では、報知部7からの警報を放つ放音孔として、正面放音孔23の他に、筐体Yの上方に設けた上面放音孔26(後述)を設けてある。放音孔については、正面放音孔23および上面放音孔26の何れか一方が設けられるようにしてもよい。
【0024】
表側筐体Y1の表面には封止部材40を貼り付けてある。当該封止部材40には、ガス導入口21、スイッチ孔22、凹部24(後述)に対応する開口部40a,40b,40cがそれぞれ形成してある。
【0025】
(正面放音孔)
正面放音孔23の周縁には凹部24を設け、当該凹部24の中に、正面放音孔23を形成する放音壁部23aと接続しない複数のリブ25を設けてある。リブは、凹部24の前面は開口部40cによって開口し、正面放音孔23の前面は開口しない封止部材40を支持する。
【0026】
本実施形態では、凹部24は正面放音孔23を囲むように環状の凹部として形成してあるが、このような態様に限定されるものではなく、正面放音孔23の周縁の少なくとも一部の領域に凹部24を形成してあればよい。また、本実施形態におけるリブ25は四つ設けてあるが、リブ25の数は特に限定されない。
【0027】
また、本実施形態における開口部40cは四つ設けてある。正面放音孔23を形成する放音壁部23aは封止部材40と接しないように構成してある。そのため、報知部7からの警報音を開口部40cから放つことができる。さらに、開口部40cは正面放音孔23の前面は開口しないため、当該開口部40cから正面放音孔23に直接水が浸入するのを防止できる。
【0028】
複数のリブ25は、正面放音孔23を中心とした放射状に配設するのがよい。
【0029】
また、表側筐体Y1の裏面には、正面放音孔23から筐体Yの内部へ水が浸入するのを防止する防水シート41を設けてある。仮に正面放音孔23から水が浸入したとしても、当該防水シート41によって報知部7が水に晒されるのを未然に防止し、それ以上筐体Yの内部に水が浸入するのを防止することができる。
【0030】
電源部10には、乾電池・充電池等の電池11を装着する電池収納構造12が形成してある。電池収納構造12は、電池11を収容する電池収納空間12aに電池11を保持する保持部12bが形成してあり、電池11と接触する接続端子12c、および、電源部10を封じる電源蓋部材12dが備えてある。当該電源蓋部材12dは、筐体Yとは別体であり、裏側筐体Y2に装着可能に構成してある。
【0031】
電池11として、乾電池はアルカリ乾電池など、充電池はNi−Cd充電池など、何れも公知の電池を使用できる。そして、両電池11ともに公知の単一・単二・単三・単四型などの形状の電池が使用できる。尚、充電池は、例えば複数の単四型充電池を使用する態様に替えて、例えば単一の上面視矩形状の所謂パック型充電池を使用してもよい。
【0032】
また、電源として長寿命のバックアップ用電池と通常使用する主電源用電池とを設け、通常主電源用電池から電力を供給すると共に主電源用電池から供給される電力の電圧が一定以下になったときバックアップ用電池から電力を供給するように切り換えるように構成できる。本実施形態では、主電源用電池(電池11)として上述したアルカリ乾電池のような乾電池を用い、バックアップ用電池としてリチウム電池13を用いる場合について説明する。
【0033】
(電源蓋部材)
電源蓋部材12dは、筐体Y(裏側筐体Y2)から離脱させたときに、筐体Yの内部に収容してある部品の少なくとも一部が変形するように構成してある。当該部品は、筐体Yの内部の部品であれば何れの部品でもよく、特に限定されるものではない。
【0034】
電源蓋部材12dを筐体Yから離脱させる動作は、通常、電池11を交換する際に行う。携行型のガス警報器Xは、ガス検知素子1の寿命および電池11の寿命を考慮して、電池11を交換する場合はガス検知素子1も同時期に交換する使用態様とする場合がある。この場合、仮に点検者が電池11の交換のみを行って機器を継続して使用した場合、ガス検知素子1がその寿命を超えて使用されてしまい、正常なガス検知が行えなくなる虞がある。このような事態を避けるため、例えば携行型のガス警報器Xをメーカーが回収して、メーカー側でガス検知素子1および電池11を同時に交換するのがよい。しかし、仮に点検者が誤って電池11のみを交換しようとした場合、この交換作業のどこかの段階でガス警報器Xの再使用ができないようにすれば、ガス検知素子1がその寿命を超えて使用されてしまうのを未然に防止することができる。そのため、本発明では、電源蓋部材12dを筐体Yから離脱させたときに、筐体Yの内部に収容してある部品の少なくとも一部が変形するように構成してある。
【0035】
これにより、電源蓋部材12dを筐体Yから離脱させた段階で、ガス警報器Xを意図的に破損(例えば一時的に再使用できなくなる程度の破損)させることができる。
【0036】
ここで本明細書における「変形」とは、部品が組み込まれたときの態様とは異なり、直ぐに当該組み込まれたときの態様に戻せない状態となることをいう。具体的に「変形」は、部品の形状が不可逆的に変化、あるいは、部品が複数の断片に分離して破壊された状態となることをいうが、これらに限定されるものではない。
【0037】
このような部品の変形を意図的に発生させることで、ガス警報器Xを意図的に使用できなくすることができる。そのため、電源蓋部材12dを筐体Yから離脱させた段階で、ガス検知素子1がその寿命を超えて使用されてしまうのを未然に防止することができる。
【0038】
電源蓋部材12dは筐体Yとは別体で構成してあるため、例えばガス警報器Xを破棄する際に筐体Yと電池11とを分別する際に、電源蓋部材12dを筐体Yから容易に離脱させることができる。
【0039】
従って、本発明のガス警報器Xであれば、電池を取り出し易く、かつ電池を取り出した後のガス警報器Xの再利用を確実に防止できる。
【0040】
変形する部品は、例えば電源部10に収容した電池と接触する接続端子12cとすることができる。
【0041】
この場合、例えば電源蓋部材12dと接続端子12cとを接続部材12eによって接続させておき、電源蓋部材12dを筐体Yから離脱させるときに接続端子12cを変形させるとよい(
図7)。
【0042】
接続端子12cは、通常、コイル状の部材や薄い板状の金属片であるため、容易に変形できる部品である。そのため、本構成であれば、電源蓋部材12dを筐体Yから離脱させるときに容易に変形できる部材とすることができる。
【0043】
また、前記変形は、接続端子12cであるコイルが伸びるものとすることができる。
【0044】
このような態様でコイルが変形することにより、伸びたコイルを元の状態に戻し難いため、容易に不可逆的な変形とすることができる。このようなコイルの変形が発生すれば、電池11を通常に装着したり、電源蓋部材12dを閉めるのが困難となる。よって、ガス警報器Xの再利用をより確実に防止できる。
【0045】
また、前記変形は、接続端子12cであるコイルが、当該コイルを配設してある回路基板8より離脱するものとすることができる。
【0046】
これにより、一旦離脱したコイルは、通常、回路基板8に即座に接続し難いため、容易に不可逆的な破壊を行うことができる。よって、ガス警報器Xの再利用をより確実に防止できる。
【0047】
(制御部)
制御部6は、ガス警報器Xの動作を制御する。本実施形態では、所定時間ごとに電源部10の電圧を検知する点検モードを行う際に、電源部10における電池11入れ替え時の電圧と、点検時の電圧との差異が所定値以上となった場合に、通常の被検知ガスを検知する動作を行う監視モードに移行しないように制御する場合について説明する。
【0048】
点検モードは、ガス警報器Xが正常に使用できるか否かを判定するモードであり、所定時間ごと或いは所望のタイミングにおいて、電源部10の電圧を検知して電源部10(電池11)の寿命をチェックしている。このとき、電源部10における電池11入れ替え時の電圧と、点検時の電圧との差異を算出することにより、電源部10の寿命を判断している。監視モードは、通常のガス検知を行うモードである。
電源部10の寿命の判断については、上記態様の他に、前回計測した電圧と今回計測した電圧との差異が所定値以上ある場合に監視モードへ移行しないように制御してもよい。この場合、電池11装着直後に1度目の点検が行われることが好ましい。
【0049】
監視モードに移行しないように制御するため、具体的には、制御部6は前記差異を検出したときに、低電圧中の誤動作を防ぐためのリセットICによって各部品(ガス検知素子1、出力検出部2、判別部3等)の動作を停止させればよい。
【0050】
制御部6は、所定のイベント発生時にタイマカウンタを計測するように構成してある。タイマカウンタはカウンタ回路等によって行うことができる。
【0051】
所定のイベントとは、例えば電池11を装着したときや、リセットボタンを押したとき等とすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
制御部6は、タイマカウンタが所定値となった場合に、監視モードに移行しないように制御する。
【0053】
(上面放音孔)
上述したように、筐体Yの上方に設けた上面放音孔26は、報知部と音響用空間を有する音響室9を介して接続して警報音を放つように構成してある。当該上面放音孔26は、前記筐体Yの背面Bに対して所定の角度で形成してある(
図6)。本実施形態では、上面放音孔26は裏側筐体Y2に形成した場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0054】
本態様では、上面放音孔26は、裏側筐体Y2において、点検者の着衣に装着した装着姿勢のときに上面となる側面Yaに設ける(
図8)。筐体Yの背面Bは、点検者の側となる面である。上面放音孔26は背面Bと所定の角度となるように形成するためには、例えば上面放音孔26が向く方向と、背面Bの延長面が鋭角(α)で交わるように構成するとよい。この角度αは、上面放音孔26が点検者に向かって開口する角度(鋭角となる範囲内)であれば適宜設定することができる。
【0055】
上面放音孔26の角度は調節可能に構成することが可能である。このとき、角度調節は、角度調節ヒンジ等の角度調節機構によって行うことができる。