特開2016-174912(P2016-174912A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社スリー・ディー・マトリックスの特許一覧
<>
  • 特開2016174912- 図000009
  • 特開2016174912- 図000010
  • 特開2016174912- 図000011
  • 特開2016174912- 図000012
  • 特開2016174912- 図000013
  • 特開2016174912- 図000014
  • 特開2016174912- 図000015
  • 特開2016174912- 図000016
  • 特開2016174912- 図000017
  • 特開2016174912- 図000018
  • 特開2016174912- 図000019
  • 特開2016174912- 図000020
  • 特開2016174912- 図000021
  • 特開2016174912- 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-174912(P2016-174912A)
(43)【公開日】2016年10月6日
(54)【発明の名称】組織閉塞剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/00 20060101AFI20160909BHJP
【FI】
   A61L31/00 TZNA
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-80975(P2016-80975)
(22)【出願日】2016年4月14日
(62)【分割の表示】特願2014-243658(P2014-243658)の分割
【原出願日】2009年10月6日
(31)【優先権主張番号】特願2008-259860(P2008-259860)
(32)【優先日】2008年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-316133(P2008-316133)
(32)【優先日】2008年12月11日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505043041
【氏名又は名称】株式会社スリー・ディー・マトリックス
【住所又は居所】東京都千代田区麹町三丁目2番4号
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】高村 健太郎
【住所又は居所】東京都千代田区麹町3−2−4 株式会社スリー・ディー・マトリックス内
(72)【発明者】
【氏名】五條 理志
【住所又は居所】埼玉県川越市脇田本町31−1
(72)【発明者】
【氏名】小林 智
【住所又は居所】東京都千代田区麹町3−2−4 株式会社スリー・ディー・マトリックス内
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC16
4C081BA11
4C081BA17
4C081CA241
4C081CE01
4C081CE02
4C081CE11
4C081DA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒトを含む大型哺乳動物に適用可能な生体吸収性のペプチド組織閉塞剤であって、ウイルスなどの感染性の懸念のない人工合成によるペプチド組織閉塞剤の提供。
【解決手段】ペプチドを含有する組織閉塞剤であって、該ペプチドが、親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸とが交互に結合し、アミノ酸残基8〜200を有する両親媒性のペプチドであり、生理的pHおよび/または陽イオンの存在下、水溶液中でβ構造を示す自己組織化ペプチドである組織閉塞剤。更にブドウ糖、白糖、乳糖、トレハロース、デキストラン、ヨウ素、塩化リゾチーム、ポピドンヨード、アニスアルコール、サリチル酸イソアミル、スルファジン銀、塩酸テトラサイクリン、安息香酸イソアミル等の低分子薬剤を含有することが好ましい、組織閉塞剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドを含有する組織閉塞剤であって、該ペプチドが、親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸とが交互に結合し、アミノ酸残基8〜200を有する両親媒性のペプチドであり、生理的pHおよび/または陽イオンの存在下、水溶液中でβ構造を示す自己組織化ペプチドである組織閉塞剤。
【請求項2】
前記ペプチドが、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸およびアラニンからなる配列、イソロイシン、グルタミン酸、イソロイシン、およびリジンからなる配列、または、リジン、ロイシン、アスパラギン酸の及びロイシンからなる配列の繰り返し配列を有する、請求項1記載の組織閉塞剤。
【請求項3】
前記ペプチドが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3記載のアミノ酸配列からなる、請求項1または2記載の組織閉塞剤。
【請求項4】
さらに、低分子薬剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組織閉塞剤。
【請求項5】
前記低分子薬剤が、ブドウ糖、白糖、精製白糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、デキストラン、ヨウ素、塩化リゾチーム、ジメチルイソプロピルアズレン、トレチノイントコフェリル、ポピドンヨード、アルプロスタジルアルファデクス、アニスアルコール、サリチル酸イソアミル、α,α−ジメチルフェニルエチルアルコール、バグダノール、ヘリオナール、スルファジン銀、ブクラデシンナトリウム、アルプロスタジルアルファデクス、硫酸ゲンタマイシン、塩酸テトラサイクリン、フシジン酸ナトリウム、ムピロシンカルシウム水和物および安息香酸イソアミルからなる群から選択される、請求項4記載の組織閉塞剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織閉塞剤を含む、抗凝固剤を添加されて凝固能力が低下した血液の出血の止血剤。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織閉塞剤を含む、実質臓器の出血創面の止血剤。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織閉塞剤を含む、動脈性出血および静脈性出血の止血剤。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織閉塞剤を含む、胆のうまたは胆管からの胆汁漏出の防止剤。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織閉塞剤を含む、肺からの出血または空気漏出の防止剤。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織閉塞剤を含む、内視鏡的粘膜切除術における切除部分を隆起させるための粘膜組織への注入剤。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織閉塞剤を含む、粘膜組織に液体を注入することによって隆起された粘膜組織部分を切除する方法における切除部分からの出血及び体液漏出の防止剤。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織閉塞剤を含む、内視鏡的粘膜切除術における切除部からの出血を止血する経カテーテル的に適用可能な止血剤。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織閉塞剤を含む、動静脈閉塞術における動静脈閉塞剤または静脈瘤硬化療法における静脈瘤硬化剤。
【請求項15】
さらに、抗癌剤および/または造影剤を含む、請求項14に記載の動静脈閉塞術における動静脈閉塞剤または静脈瘤硬化療法における静脈瘤硬化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化ペプチドハイドロゲルを含有することを特徴とする組織閉塞剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の組織損傷による体液(血液、組織液など)漏出を防ぐ組織閉塞は、手術などの臨床上、重要な意味を持つ。損傷部からの体液漏出を効果的に抑えることは、患者の手術中の生命維持、術後の生活の質(QOL)の向上につながる。
【0003】
臨床において止血が重要視される理由として、以下が挙げられる。
1.失血は死亡の大きな要因の1つであり、失血要因には、重篤な外傷、動脈瘤、食道や胃における潰瘍、および食道静脈瘤の破裂などがある。特に、緊急に止血治療を受けることができない場合には、死亡の可能性が高くなる。
2.手術時における出血は、手術における大きな懸念の一つで、出血により、全身感染症や臓器の機能不全が生じる。また、出血は術野を妨げるだけでなく、出血した血液の除去は手術の遅延につながる。
3.出血は、最小侵襲手術(腹腔鏡下手術など)を行っている場合でも問題となり、出血を十分に抑制できない場合、切開手術に変更せざるをえない場合もある。
【0004】
既存の止血方法としては、以下が挙げられる。
1.出血部の血管に直に圧迫する方法(圧迫止血)。この止血法の欠点は、時間と手間がかかり圧力を維持しておく必要がある点、また患者に血腫ができる恐れがある点である。
2.その他の物理的手段による止血方法として、出血部近傍をクランプ、クリップする方法、出血部にプラグやスポンジのようなものを乗せる方法がある。これらの止血法の欠点は、多数の微小血管から出血している場合に扱いが困難である点である。
3.熱によって血液を凝固させ、出血している血管を焼灼する方法(電気メス)。この方法の欠点は、周囲組織を熱損傷させ患者への侵襲が大きい点、医療用器具が必要で専門性を要する点である(医療機関以外では使用できない)。
【0005】
既存の止血材としては、以下が挙げられる。
1.アルギン酸
2.ゼラチンスポンジ
3.コラーゲン線維
4.フィブリン糊。
上記のうちコラーゲン線維とフィブリン糊が効果的な止血材として、臨床でしばしば利用されているが、これらの欠点は、(1)ゼラチンとコラーゲン線維は動物性コラーゲン、フィブリン糊は血液製剤とウシ由来トロンビンを使用した動物由来製品であるため、感染症の危険性がある、(2)透明でないため術野の妨げとなる、点が挙げられる。
【0006】
手術において患者の血液凝固能を人為的に低下させた、ヘパリン血状態にすることがある。人工心肺を使用する手術においては、血液凝固を抑えるためにヘパリンを使用する。人工心肺装置は生体にとって異物であり、血液をそのまま人工心肺装置へ流すと、すぐに血液が凝固し回路が詰まってしまうため、体外循環を行う前にヘパリンを血液に投与する。
【0007】
コラーゲン線維、フィブリン糊は、生体の血液凝固系を利用して止血するため、ヘパリン血状態では、止血効果が低下する。止血効果が低下すると出血量が多くなるため輸血が必要になりやすく、また体外循環終了後の完全止血にも長時間を要する。したがって、ヘパリン血状態でも性能が低下しない血液凝固作用を利用しない止血材が求められている。
【0008】
血管縫合は心臓・血管系手術だけでなく、一般的な腹腔内手術時にも必要になることがある。術後、血管縫合部からわずかな血液漏出があるため、それを持続的に抑える止血材が求められている。
【0009】
胆汁婁・膵液婁は、胆道系手術、膵炎や膵臓手術などによって胆汁、膵液が漏れ出し、他の臓器に悪影響を及ぼす症状のことである。現在、胆汁や膵液の漏出を効果的に抑え、かつ臨床使用可能な物質は知られておらず、安全かつ効果的に胆汁婁・膵液婁を防ぐ方法が求められている。
【0010】
肺おいて、肺胞の嚢包が破れる自然気胸や、肋骨骨折やカテーテル穿刺等の外傷性気胸などにより、空気が漏出する病状が知られている。症状によっては自然治癒を待つしかなく、患部に上層するだけで肺組織と接着し、嚢包の穴を塞ぐことが可能な方法は、気胸を治療する手段として、簡便かつ安全性が高い方法の一つと考えらえる。
【0011】
内視鏡技術の発達により、病変部を内視鏡的に切除する技術が開発されてきている。特に食道、胃又は腸を含む消化管のポリープや早期がん(リンパ節転移がないと考えられている表層癌)等の病変部を内視鏡的に切除する手術法が確立されてきている。内視鏡的粘膜切除術では、一般的に病変部を含む粘膜下層に高張食塩水などを注入して病変部を隆起させ、切除部分を把持しながら電気メスなどにより病変部を含む組織の切除を行う。
当該手技において、病変部と固有筋層を引き離すために粘膜下層へ高張食塩水等の溶液を注入するが、食塩水等の粘性の低い溶液では病変部の隆起を手術中維持できないという問題点があり、患部の隆起を手術中維持可能な注入液が望まれている。
また病変部切除部からの出血をトロンビンなどの血管収縮剤をカテーテルを利用して投与することで出血を抑制する方法が用いられるが、完全に出血を止める効果的な処置法は確立されておらず、切除後の出血を速やかに止める方法も同時に求められている。
【0012】
カテーテル療法の発達により、腫瘍や筋腫等の血流支配をうける病変部へ流入する動脈を閉塞させることにより、腫瘍や筋腫等を死滅させる手術方法が確立されてきている。具体的には、肝臓脈閉塞術、子宮動脈閉塞術、脳動脈閉塞術等を挙げることができる。
当該手技において、動脈を閉塞させるために、異種動物から抽出されたコラーゲンやエチレンビニルアルコールなどの液体を注入するが、感染の危険性や生体毒性が懸念されている。そこで、感染の危険性がなく、かつ、生体毒性の低い注入液の開発が望まれている。
また、注入液は抗癌剤や造影剤の添加が可能であることも求められている。
【0013】
自己組織化ペプチドは、そのアミノ酸配列により、多数のペプチド分子が規則正しく並んだ自己会合体を形成する特性を有する。近年、その物理的、化学的、生物学的性質から、新規マテリアルとして注目を浴びている。
自己組織化ペプチドは、電荷を帯びた親水性アミノ酸と電気的に中性な疎水性アミノ酸が交互に並び、正電荷と負電荷が交互に分布する構造をもち、生理的なpHと塩濃度においてβ構造をとる。
【0014】
親水性アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸から選択される酸性アミノ酸、およびアルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチンから選択される塩基性アミノ酸を使用することができる。疎水性アミノ酸としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、グリシンを使用することができる。
【0015】
当該ペプチドの自己組織化は、以下の条件下で生じる。
(1)水溶液中でペプチド分子がβ構造を取ることで、電荷をもつ親水性アミノ酸と電気的に中性な疎水性アミノ酸がペプチド分子の2面に偏在する。
(2)β構造をとったとき、隣分子と相補的な電化分布になる。
(3)β構造をとったとき、隣分子と十分な疎水結合を形成する。
(4)1価の無機塩によりアミノ酸側鎖の電荷がスクリーニングされる。
(5)ペプチドの等電点近くで、分子が静電的に中性になる。
【0016】
上述の条件が整ったとき、以下の機序で自己組織化が進むと考えられている。
(1)交互に分布するペプチド分子の正電荷と負電荷によって分子同士が引き合って近づく。
(2)隣分子の中性アミノ酸側鎖間で疎水結合が形成される。
(3)正負の電化分布により隣分子同士の相対的な配置が整えられ、分子間の会合力が強まる。
(4)分子の集合体が徐々に伸長し、ナノファイバーを形成する
【0017】
ナノファイバーは太さ10nm〜20nm程の極細繊維で、網目上に集合し、巨視的にはゲル状を呈することが報告されている。
【0018】
ゲルの網目構造は、ファイバーサイズおよびポアサイズなどが天然の細胞外マトリックス(ECM)と非常に似ており、細胞培養の足場としての利用が研究されている。
【0019】
このペプチドハイドロゲルは、生分解性であり、分解産物が組織に悪影響を与えず、生体吸収性が高いことから、細胞の生着や増殖に適している。
【0020】
自己組織化ペプチドは固相合成法による化学合成品であり動物由来の感染症などの心配がないため、近年狂牛病など、動物からのウイルスやそのほか未知の感染症への懸念が高まったことから、コラーゲンなどの代替品として、さらに注目されている。
【0021】
自己組織化ペプチドの止血への応用は特許文献1に示されているが、実施例に引用された論文の肝臓切開部における止血ビデオ映像では、切開部末端から持続的な血液漏出が認められ、報告されている完全止血ができていない。止血が不完全な理由は、自己組織化ペプチドゲルと組織の接着が不十分なためと推測される。したがって、自己組織化ペプチドの止血効果を臨床応用可能なレベルにまで引き出すためには、さらなる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第2006−116524号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、ヒトを含む大型哺乳動物において組織の損傷部を効果的に閉塞でき、かつウイルスなどの感染性の懸念がない自己組織化ペプチド組織閉塞剤とその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、細胞培養の足場として利用されている自己組織化ペプチドハイドロゲルを組織閉塞に適用することにより、既存組織閉塞剤と同等以上の組織閉塞効果を示すことを見出し、本発明を完成した。また、ペプチド水溶液を体液漏出部に単純に適応するだけでは十分な組織閉塞効果を得ることができないという課題があった。そこで、鋭意研究の結果、体液漏出部から余剰体液を除去することで、十分な組織閉塞効果と生体安全性を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0025】
すなわち、本発明は、ペプチドを含有する組織閉塞剤であって、該ペプチドが、親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸が交互に結合し、アミノ酸残基8〜200を有する両親媒性のペプチドであり、生理的pHおよび/または陽イオンの存在下、水溶液中でβ構造を示す自己組織化ペプチドである組織閉塞剤に関する。
【0026】
前記組織閉塞剤において、前記ペプチドが、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸およびアラニンからなる配列、イソロイシン、グルタミン酸、イソロイシン、およびリジンからなる配列、またはリジン、ロイシン、アスパラギン酸の及びロイシンからなる配列の繰り返し配列を有する自己組織化ペプチドであることが好ましく、配列番号1、配列番号2、または配列番号3記載のアミノ酸配列からなる自己組織化ペプチドであることがより好ましい。
【0027】
前記組織閉塞剤は、さらに、溶血、炎症、感染症を防ぐために低分子薬剤を含有することが好ましい。
【0028】
前記低分子薬剤は、好ましくは、ブドウ糖、白糖、精製白糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、デキストラン、ヨウ素、塩化リゾチーム、ジメチルイソプロピルアズレン、トレチノイントコフェリル、ポピドンヨード、アルプロスタジルアルファデクス、アニスアルコール、サリチル酸イソアミル、α,α−ジメチルフェニルエチルアルコール、バグダノール、ヘリオナール、スルファジン銀、ブクラデシンナトリウム、アルプロスタジルアルファデクス、硫酸ゲンタマイシン、塩酸テトラサイクリン、フシジン酸ナトリウム、ムピロシンカルシウム水和物および安息香酸イソアミルからなる群から選択される。
【0029】
本発明は、上記の組織閉塞剤を含む、抗凝固剤を添加されて凝固能力が低下した血液の出血の止血剤、実質臓器の出血創面の止血剤、動脈性出血および静脈性出血の止血剤、胆のうまたは胆管からの胆汁漏出の防止剤、肺からの出血または空気漏出の防止剤、内視鏡的粘膜切除術における経カテーテル的適用が可能な止血剤および切除部分を隆起させるための粘膜組織への注入剤、粘膜組織に液体を注入することによって隆起された粘膜組織部分を切除する方法における切除部分からの出血及び体液漏出の防止剤、または、動静脈閉塞術における動静脈閉塞剤または静脈瘤硬化療法における静脈瘤硬化剤にも関する。この動静脈閉塞剤または静脈瘤硬化剤には、抗癌剤および/または造影剤を添加することもできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の組織閉塞剤は、その主要成分である自己組織化ペプチドが閉塞剤としての役割以外にも、遊走細胞の足場になることができ、単に閉塞しただけよりも、術後により高い治癒効果をもたらすことができる。また、本発明の組織閉塞剤は、体液漏出部から余剰体液を除去した場合(たとえば出血を止めた状態で止血部に適用した場合)、組織との接着性が向上し、十分な組織閉塞効果と生体安全性を得ることができる。
【0031】
また、本発明の組織閉塞剤の主要成分である自己組織化ペプチドは、合成により製造することができるため、従来の生体由来材料と比べてウイルス等の感染の危険もないうえ、それ自身は生体吸収性であるため、炎症等を懸念する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】腹部大動脈注射針穿孔モデルにおける1%ペプチド水溶液と3%ペプチド水溶液の止血効果の比較。(a) 大動脈穿刺後の出血の確認、血管周囲に出血が認められる(矢印先端部;1%ペプチド水溶液処理群)、(b) ペプチド水溶液の塗布(1%ペプチド水溶液処理群)、(c)遮断解除後、再出血による血液により血管が確認しにくい(矢印先端部;1%ペプチド水溶液処理群)、(d) 大動脈穿刺後の出血の確認、血管周囲に出血が認められる(矢印先端部;3%ペプチド水溶液処理群)、(e) ペプチド水溶液の塗布(3%ペプチド水溶液処理群)、(f) 生理食塩水での洗浄後、写真中央部に完全止血された血管が確認できる(矢印先端部;3%ペプチド水溶液処理群)。
図2】肝臓部分切除モデルにおける1%ペプチド水溶液と3%ペプチド水溶液の止血効果の比較。(a) 肝臓切除後の出血の確認(1%ペプチド水溶液処理群)、(b) ペプチド水溶液の塗布(1%ペプチド水溶液処理群)、(c)生理食塩水での洗浄後、切断面から出血が認められない(矢印先端部;1%ペプチド水溶液処理群)、(d) 肝臓切除後の出血の確認(3%ペプチド水溶液処理群)、(e) ペプチド水溶液の塗布(3%ペプチド水溶液処理群)、(f) 生理食塩水での洗浄後切断面から出血が認められる(矢印先端部;3%ペプチド水溶液処理群)。
図3】ペプチド水溶液によって止血した肝臓と対照群(生理食塩水)の肝臓の切断面の病理組織学的比較。(a) 血管内組織像(ペプチド水溶液処置群)、(b) 血管内組織像(生理食塩水処置群)、(c) 血管内組織像(ペプチド水溶液処置群)、(d) 血管内組織像(ペプチド水溶液処置群)、(e) 血管内組織像(ペプチド水溶液処置群)、(f) 血管内組織像(ペプチド水溶液処置群)。
図4】血液凝固能低下ウサギの腹部大動脈注射針穿孔モデルにおける3%ペプチド水溶液の止血効果。(a)大動脈穿刺前の様子、(b) 大動脈穿刺後、血管周囲に出血が認められる(矢印先端部)、(c) ペプチド水溶液の塗布、(d)遮断解除後、(b)のような出血が血管周囲に認められない(矢印先端部)。
図5】腹部大動脈注射針穿孔モデルにおける白糖含有3%ペプチド水溶液の止血効果。(a)大動脈穿刺前の様子、(b) 大動脈穿刺後、血管周囲に出血が認められる(矢印先端部)、(c) ペプチド水溶液の塗布、(d)遮断解除後、(b)のような出血が血管周囲に認められない(矢印先端部)。
図6】肺漏モデルにおける白糖含有3%ペプチド水溶液と生理食塩水の止血効果および肺漏閉塞効果の比較。(a) 肺の出血確認(矢印先端部;白糖含有3%ペプチド水溶液処理群)、(b) ペプチド水溶液の塗布(矢印先端部;白糖含有3%ペプチド水溶液処理群)、(c)エアリーク確認のため生理食塩水に損傷部を沈めたところ、空気漏出、出血のどちらも認められなかった(矢印先端部;白糖含有3%ペプチド水溶液処理群)、(d) 肺の出血の確認(矢印先端部;生理食塩水処理群)、(e) 生理食塩水の塗布(矢印先端部;生理食塩水処理群)、(f)エアリーク確認のため生理食塩水中に沈めたため出血が判然としないが、持続した出血が認められる(矢印先端部;生理食塩水処理群)。
図7】胆管壁穿孔モデルにおける3%ペプチド水溶液の胆管壁閉塞効果。(a)胆管穿刺前の様子、(b) 胆管穿刺後の胆汁漏出確認(矢印先端部)、(c) ペプチド水溶液の塗布(矢印先端部)、(d)生理食塩水での洗浄後、(b)のような胆管周囲への胆汁漏出が認められない(矢印先端部)。
図8】膀胱内腫瘍における3%ペプチド水溶液による粘膜隆起形成と止血効果。(a) ペプチド水溶液注入前、(b) ペプチド水溶液の注入後の患部の隆起確認、(c)電気メスによる腫瘍切除中、切除部に出血は認められない、(d)電気メスによる腫瘍切除後、切除部に出血は認められない。
図9】胃粘膜切開モデルにおける2%ペプチド水溶液の止血効果。(a)肝臓切開後の出血の確認(矢印先端部)、(b)2%ペプチド水溶液の塗布(矢印先端部)、(c)生理食塩水での洗浄後、切開部から出血が認められない(矢印先端部)。
図10】肝臓横切開モデルにおける1%ペプチド水溶液の止血効果。(a)肝臓切開後の出血の確認(矢印先端部)、(b)1%IEIK9ペプチド水溶液の塗布(矢印先端部)、(c)生理食塩水での洗浄後、切開部から出血が認められる(矢印先端部)、(d)肝臓切開後の出血の確認(矢印先端部)、(e)1%IEIK13ペプチド水溶液の塗布(矢印先端部)、(f)生理食塩水での洗浄後、切開部から出血が認められない(矢印先端部)、(g)肝臓切開後の出血の確認(矢印先端部)、(h)1%KLDペプチド水溶液の塗布(矢印先端部)、(i)生理食塩水での洗浄後、切開部から出血が認められない(矢印先端部)。
図11】胆汁による1.5%ペプチド水溶液の自己組織化の確認。(a)自己組織化前の1.5%PuraMatrixペプチド水溶液、(b)胆汁塗布後の1.5%PuraMatrixペプチド水溶液、(c)胆汁を除去し、自己組織化を確認、(d)物理的な衝撃を与えて自己組織化ゲルを破壊、(e)自己組織化前の1%IEIK9ペプチド水溶液、(f)胆汁塗布後の1%IEIK9ペプチド水溶液、(g)胆汁を除去後、ほとんど自己組織化を確認できず、(h)物理的な衝撃を与えて自己組織化ゲルを破壊、(i)自己組織化前の1%IEIK13ペプチド水溶液、(j)胆汁塗布後の1%IEIK13ペプチド水溶液、(k)胆汁を除去し、自己組織化を確認、(l)物理的な衝撃を与えて自己組織化ゲルを破壊、(m)自己組織化前の1%KLDペプチド水溶液、(n)胆汁塗布後の1%KLDペプチド水溶液、(o)胆汁を除去し、自己組織化を確認、(p)物理的な衝撃を与えて自己組織化ゲルを破壊。
図12】3%ペプチド水溶液による門脈塞栓効果の確認。(a)、(b)門脈の塞栓を確認(矢印先端部)。
図13】イオパミドール含有ペプチド水溶液の自己組織化の確認。(a) 自己組織化前のイオパミドール含有3%ペプチド水溶液、(b) 細胞培養用培地塗布後のイオパミドール含有3%ペプチド水溶液、(c) 細胞培養用培地を除去し、自己組織化を確認、(d) 自己組織化前のイオパミドール含有0.0468%ペプチド水溶液、(e) 細胞培養用培地塗布後のイオパミドール含有0.0468%ペプチド水溶液、(f) 細胞培養用培地を除去し、自己組織化を確認。
図14】イオパミドール含有3%ペプチド水溶液のカテーテル通過後の自己組織化の確認(矢印先端部)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の組織閉塞剤について詳細に説明する。
【0034】
本発明の組織閉塞剤は、親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸とが交互に結合し、アミノ酸残基8〜200を有する両親媒性のペプチドであり、生理的pHおよび/または陽イオンの存在下、水溶液中でβ構造を示す自己組織化ペプチドを主要成分とする。
本発明において、生理的pHは、pH6からpH8、好ましくは、pH6.5からpH7.5、さらに好ましくは、pH7.3からpH7.5である。また、本発明において陽イオンとは、たとえば、5mM〜5Mのナトリウムイオンまたはカリウムイオンである。
【0035】
本発明において用いられる自己組織化ペプチドは、たとえば、以下の4つの一般式で表すことができる。
((XY)l−(ZY)mn (I)
((YX)l−(YZ)mn (II)
((ZY)l−(XY)mn (III)
((YZ)l−(YX)mn (IV)
(式(I)〜(IV)中、Xは酸性アミノ酸、Yは疎水性アミノ酸、Zは塩基性アミノ酸を表し、l、mおよびnは共に整数(n×(l+m)<200)である。)
また、そのN末端はアセチル化されていてもよく、C末端はアミド化されていてもよい。
【0036】
ここで、親水性アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸から選択される酸性アミノ酸およびアルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチンから選択される塩基性アミノ酸を使用することができる。疎水性アミノ酸としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニンまたはグリシンを使用することができる。
【0037】
これらの自己組織化ペプチドの中でも、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸およびアラニン(RADA)の繰り返し配列を有する自己組織化ペプチドを好ましく使用することができ、そのようなペプチドの配列は、Ac−(RADA)p−CONH2(p=2〜50)で表される。またイソロイシン、グルタミン酸、イソロイシンおよびリジン(IEIK)の繰り返し配列を有する自己組織化ペプチドも好ましく使用することができ、そのようなペプチドの配列は、Ac−(IEIK)pI−CONH2(p=2〜50)で表される。さらにリジン、ロイシン、アスパラギン酸およびロイシン(KLDL)の繰り返し配列を有する自己組織化ペプチドも好ましく使用することができ、そのようなペプチドの配列は、Ac−(KLDL)p−CONH2(p=2〜50)で表される。これらの自己組織化ペプチドは8〜200のアミノ酸残基数で構成しうるが、なかでも8〜32残基の自己組織化ペプチドが好ましく、さらに残基数12〜16の自己組織化ペプチドがより好ましい。
【0038】
本発明における自己組織化ペプチドの好ましい具体例としては、(Ac−(RADA)4−CONH2)配列(配列番号:1)を有するペプチドRAD16−I、(Ac−(IEIK)I−CONH2)配列(配列番号:2)を有するペプチドIEIK13、(Ac−(KLDL)−CONH2)配列(配列番号:3)を有するペプチドKLDが挙げられ、RAD16−Iは、PuraMatrix(登録商標)としてその1%水溶液が、株式会社スリー・ディー・マトリックスから製品化されている。PuraMatrix(登録商標)には、1%の(Ac−(RADA)4−CONH2)配列(配列番号:1)を有するペプチドの他、水素イオン、塩化物イオンが含まれる。
【0039】
PuraMatrix(登録商標)、IEIK13およびKLDは、アミノ酸12〜16残基で長さが約5nmのオリゴペプチドであって、その溶液は酸性pHであると液状を示すが、中性pHに変化させることでペプチドの自己組織化が生じ、直径10nmほどのナノファイバーを形成し、結果としてペプチド溶液はゲル化する。
【0040】
PuraMatrix(登録商標)は親水性アミノ酸としてプラス電荷を帯びたアルギニンとマイナス電荷を帯びたアスパラギン酸、疎水性アミノ酸としてアラニンの残基が交互に繰り返すアミノ酸配列を有する両親媒性ペプチドであり、IEIK13は親水性アミノ酸としてプラス電荷を帯びたリジンとマイナス電荷を帯びたグルタミン酸、疎水性アミノ酸としてイソロイシン残基が交互に繰り返すアミノ酸配列を有する両親媒性ペプチドであり、そしてKLDは親水性アミノ酸としてプラス電荷を帯びたリジンとマイナス電荷を帯びたアスパラギン酸、疎水性アミノ酸としてロイシンの残基が交互に繰り返すアミノ酸配列を有する両親媒性ペプチドであり、ペプチドの自己組織化はペプチドを構成するアミノ酸によるペプチド分子間の水素結合と疎水結合に起因する。
【0041】
本発明に用いる自己組織化ペプチドにおいて、平均してナノファイバーは直径10〜20nm、ポアサイズは5〜200nmである。この数値範囲は天然の細胞外マトリックスであるコラーゲンとほぼ同じ大きさである。
【0042】
本発明に用いる自己組織化ペプチドの自己組織化条件には、生理的条件のpHおよび塩濃度があげられる。特に1価のアルカリ金属イオンの存在が重要である。つまり、生体内に多量に存在するナトリウムイオンおよびカリウムイオンがゲル化の促進に寄与する。一度ゲル化すると通常のタンパク質の変性条件、例えば高温、酸、アルカリ、タンパク質分解酵素、尿素、グアニジン塩酸塩等の変性剤を用いても、ゲルは分解しない。
【0043】
PuraMatrix(登録商標)等のこれら自己組織化ペプチドは明らかな生理活性モチーフを持たないペプチド配列であるので、本来の細胞機能が損なわれる心配がない。生理活性モチーフは、転写など多くの細胞内現象の制御に関与しており、生理活性モチーフが存在すると、そのモチーフを認識する酵素により細胞質内や細胞表面の蛋白質はリン酸化される。ペプチド組織閉塞剤に生理活性モチーフが存在すると、各種機能蛋白質の転写活性が活性化もしくは抑制化される可能性がある。生理活性モチーフを持たないPuraMatrix(登録商標)等の自己組織化ペプチドではこうした心配がない。
【0044】
本発明に用いる自己組織化ペプチドは化学合成により製造されることから、動物由来細胞外マトリックスに起因する未知成分を含まない。この性質はBSEを始めとする感染の恐れがなく、医療用としても高い安全性を有することを示す。
【0045】
天然アミノ酸からなる自己組織化ペプチドは生体適合性および生体内分解性も良好なことから、例えばマウスの心筋にPuraMatrix(登録商標)を注入すると、注入したPuraMatrix(登録商標)に細胞が浸潤し、正常組織が形成されることが報告されている。分解時間は注入場所等の条件によって異なるが、注入後およそ2〜8週間でファイバーが分解され、排出される。
【0046】
本発明の組織閉塞剤には、さらに低分子薬剤を混合させることができる。そのような低分子薬剤としては、特に限定されるものではないが、ブドウ糖、白糖、精製白糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、デキストラン、ヨウ素、塩化リゾチーム、ジメチルイソプロピルアズレン、トレチノイントコフェリル、ポピドンヨード、アルプロスタジルアルファデクス、アニスアルコール、サリチル酸イソアミル、α,α−ジメチルフェニルエチルアルコール、バグダノール、ヘリオナール、スルファジン銀、ブクラデシンナトリウム、アルプロスタジルアルファデクス、硫酸ゲンタマイシン、塩酸テトラサイクリン、フシジン酸ナトリウム、ムピロシンカルシウム水和物および安息香酸イソアミルが挙げられる。
【0047】
本発明の組織閉塞剤は、糖を添加することによって組織閉塞効果を低下させずに溶液の浸透圧を低張から等張に改善可能で、より生体安全性を高めることができる。
【0048】
本発明の組織閉塞剤の形態としては、粉末、溶液、ゲルなどがあげられる。自己組織化ペプチドは、溶液のpHと塩濃度の変化によりゲル化するため、適用時に生体と接触させることによりゲル化する液剤として流通させることができる。
【0049】
臨床使用における態様としては、自己組織化ペプチドなどの成分を含む薬液がシリンダー付きのシリンジやピペットに前もって充填されている(プレフィルドシリンジ形態など)、もしくはシリンジやピペットチップの開口部から成分を補給する手段(吸引具やバルブ)によってシリンジやピペットチップに薬液を供給し、放出部から患部へ適用する方法がある。シリンジ、ピペットは2つ以上から構成される場合もある。
【0050】
成分は、ステントやカテーテルなど器具のコーティングとして用いることで、体液漏出を抑えることができる。
【0051】
また、この分野で通常用いられるガーゼ、包帯などの支持体や裏打ちの上に成分を固定することも可能である。また成分をスポンジに染み込ませて使用することもできる。
【0052】
その他、成分の粉末もしくは溶液を充填した噴霧式スプレーを作製することができる。このようなスプレーは、患部に噴霧すると、生体との接触によりpHと塩濃度が上昇し、ゲル化するため、ゲルの状態で取り扱うよりも様々な部位や状態に適用することができる。
【0053】
以下、実施例によって、本発明の組織閉塞剤をさらに詳細に説明するが、本発明はその趣旨と適用範囲に逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0054】
ウサギ腹部大動脈・門脈本幹注射針穿孔モデルにおける1%ペプチド水溶液と3%ペプチド水溶液の止血効果
血流遮断下でウサギ腹部大動脈、門脈本幹の注射針穿孔モデルを作製し、1%ペプチド水溶液と3%ペプチド水溶液の止血効果の評価を行った。
【0055】
<材料>
・ペプチド水溶液
1.1%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製;濃度:重量/体積)
2.3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製;濃度:重量/体積)
・動物
日本白色種ウサギ(3.0−4.0kg、ジャパンホワイト、コンベンショナル、株式会社フナバシファーム社より購入)。室温25℃、湿度65%、照明時間12時間(7:00−19:00)で制御された飼育室内で飼育用ペレット(JA東日くみあい飼料株式会社)を給餌し、給水ボトルの自由摂水にて飼育した。絶食は試験当日の朝のみとし、給水は自由とした。
【0056】
<方法>
・ウサギは、セクラタール2%注射液(100mL中にキシラジンとして2.0g含有、バイエル社製)を皮下内投与後(3mg/kg)、ケタミン(1mL中にケタミンとして50mg含有、富士ケミカル工業株式会社製)を静脈内投与(10mg/kg)することで麻酔した。
・ウサギは正中切開により開腹した。腹部大動脈、門脈本幹を約10cm露出し、各血管を周囲組織より剥離し、腹部大動脈は23G注射針(テルモ社製)にて血管穿刺を行い、門脈本幹は26G注射針(テルモ社製)にて血管穿刺を行った。
・出血確認後、末梢側と中枢側を血管遮断鉗子により血流遮断し、出血した血液を生理食塩水、ガーゼによって除去した後、直ちにペプチド水溶液にて処置をした。
・処置後1〜2分後に血流を再開し、穿刺部からの出血の有無を肉眼的に確認した。
【0057】
<結果>
図1において、本実施例の血管からの出血に対するペプチド水溶液の止血効果の例を示す。表1に示したように、腹部大動脈穿孔モデルでは3%ペプチド水溶液で2例中2例の完全止血が認められた。しかし、1%ペプチド水溶液では2例中ともに血流遮断解除後に噴出性の出血が認められ、止血されなかった。また、門脈本幹穿孔モデルでも同様に3%ペプチド水溶液では2例中2例で完全止血効果が認められたが、1%ペプチド水溶液では持続的な静脈性出血が認められた。
【0058】
【表1】
【実施例2】
【0059】
ウサギ肝臓切除モデルにおける1%ペプチド水溶液と3%ペプチド水溶液の止血効果
ウサギ肝臓部分切除出血モデルを作製し、1%ペプチド水溶液と3%ペプチド水溶液の止血効果を評価した。
【0060】
<材料>
・ペプチド水溶液
1.1%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
2.3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
【0061】
・動物
日本白色種ウサギ(3.0−4.0kg、ジャパンホワイト、コンベンショナル、株式会社フナバシファーム社より購入)。室温25℃、湿度65%、照明時間12時間(7:00−19:00)で制御された飼育室内で飼育用ペレット(JA東日くみあい飼料株式会社)を給餌し、給水ボトルの自由摂水にて飼育した。絶食は試験当日の朝のみとし、給水は自由とした。
【0062】
<方法>
・ウサギは、セクラタール2%注射液(100mL中にキシラジンとして2.0g含有、バイエル社製)を皮下内投与後(3mg/kg)、ケタミン(1mL中にケタミンとして50mg含有、富士ケミカル工業株式会社製)を静脈内投与(10mg/kg)することで麻酔した。
・ウサギは正中切開で開腹し、肝臓左葉又は右葉を剪刃にて鋭的に辺縁より横:約5cm×縦:約3cmの大きさで切除し、肝切離面を作成した。
・切離面からの噴出性出血を確認後、動脈、門脈、静脈を含む肝実質の用手的な圧迫止血により、血流を直ちに遮断し、出血した血液を生理食塩水、ガーゼによって除去した後、作製した肝切離面をペプチド水溶液にて処置した。
・処置後1〜2分後に血流を再開し、生理食塩水にてゲル化したペプチド水溶液を除去し、肝切離面からの出血の有無を肉眼的に確認した。
・止血効果を見た肝切離面を20%ホルマリンにて固定し、HE染色による病理組織学的評価を行った。
【0063】
<結果>
図2において、本実施例の肝切離面からの出血に対するペプチド水溶液の止血効果の例を示す。表2に示したように、1%ペプチド水溶液では2例中2例で完全止血効果が認められたが、3%ペプチド水溶液では4例中1例で完全止血効果が認められただけであった。また病理組織切片観察において、ゲル化したペプチド水溶液が肝切離面組織に密着したことによる血管浅部内の血管閉塞が確認された(図3)。
【0064】
【表2】
【実施例3】
【0065】
血液凝固能低下ウサギ腹部大動脈注射針穿孔モデルにおけるペプチド水溶液の止血効果
抗凝固剤(ヘパリン)を投与したウサギにおいて、ペプチド水溶液の止血効果を腹部大動脈注射針穿刺モデルにより評価した。
【0066】
<材料>
・ペプチド水溶液
3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
・動物
日本白色種ウサギ(3.0−4.0kg、ジャパンホワイト、コンベンショナル、株式会社フナバシファーム社より購入)。室温25℃、湿度65%、照明時間12時間(7:00−19:00)で制御された飼育室内で飼育用ペレット(JA東日くみあい飼料株式会社)を給餌し、給水ボトルの自由摂水にて飼育した。絶食は試験当日の朝のみとし、給水は自由とした。
【0067】
<方法>
・ウサギは、セクラタール2%注射液(100mL中にキシラジンとして2.0g含有、バイエル社製)を皮下内投与後(3mg/kg)、ケタミン(1mL中にケタミンとして50mg含有、富士ケミカル工業株式会社製)を静脈内投与(10mg/kg)することで麻酔した。
・ヘパリン(ノボ・ヘパリン注、持田製薬5千単位)1,000単位を下大静脈より投与し、血液凝固能を人為的に低下させた。
・ウサギは正中切開により開腹した。腹部大動脈を約10cm露出し、血管を周囲組織より剥離し、26G、25G、23G注射針(テルモ社製)にて血管穿刺を行った。
・出血確認後、末梢側と中枢側を血管遮断鉗子により血流遮断し、出血した血液を生理食塩水、ガーゼによって除去した後、直ちにペプチド水溶液にて処置した。
・処置後1〜2分後に血流を再開し、出血の有無を肉眼的に確認した。
【0068】
<結果>
図4において、本実施例の血液凝固能が低下したウサギにおける腹部大動脈からの出血に対するペプチド水溶液の止血効果の例を示す。表3から明らかなとおり、26G、25G、23Gの注射針穿孔モデルにおいて3%ペプチド水溶液で完全止血が認められた。
【0069】
【表3】
【実施例4】
【0070】
ウサギ腹部大動脈・門脈本幹注射針穿孔モデルにおける糖含有ペプチド水溶液の止血効果
糖含有ペプチド水溶液の止血効果を、腹部大動脈、門脈本幹の注射針穿孔モデルにより評価した。
【0071】
<材料>
・ペプチド水溶液
1.白糖含有ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製、濃度2%および3%;白糖:和光純薬社製、濃度10%)
2.グルコース含有2%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製;グルコース:和光純薬社製、濃度5%)
3.トレハロース含有2%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製;トレハロース:和光純薬社製、濃度5%)
4.3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
5.2%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
・動物
日本白色種ウサギ(3.0−4.0kg、ジャパンホワイト、コンベンショナル、株式会社フナバシファーム社より購入)。室温25℃、湿度65%、照明時間12時間(7:00−19:00)で制御された飼育室内で飼育用ペレット(JA東日くみあい飼料株式会社)を給餌し、給水ボトルの自由摂水にて飼育した。絶食は試験当日の朝のみとし、給水は自由とした。
【0072】
<方法>
・ウサギは、セクラタール2%注射液(100mL中にキシラジンとして2.0g含有、バイエル社製)を皮下内投与後(3mg/kg)、ケタミン(1mL中にケタミンとして50mg含有、富士ケミカル工業株式会社製)を静脈内投与(10mg/kg)することで麻酔した。
・ウサギは正中切開により開腹した。腹部大動脈、門脈本幹を約10cm露出し、各血管を周囲組織より剥離し、腹部大動脈は26G、25G、23G注射針(テルモ社製)にて血管穿刺を行い、門脈本幹は26G注射針(テルモ社製)にて血管穿刺を行った。
・出血確認後、末梢側と中枢側を血管遮断鉗子により血流遮断し、出血した血液を生理食塩水、ガーゼによって除去した後、直ちにペプチド水溶液にて処置をした。
・処置後1〜2分後に血流を再開し、出血の有無を肉眼的に確認した。
【0073】
<結果>
図5において、本実施例における糖含有ペプチド水溶液の止血効果の例を示す。表4に示したように、腹部大動脈23G、25G、26G注射針穿孔モデルにおいて、3%ペプチド水溶液と白糖含有3%ペプチド水溶液の止血効果は同等であった。
【0074】
表5に示したように、門脈本幹26G注射針穿孔モデルにおいて、2%ペプチド水溶液、白糖含有2%ペプチド水溶液、グルコース含有2%ペプチド水溶液、トレハロース含有2%ペプチド水溶液の止血効果は同等であった。
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【実施例5】
【0077】
ウサギ肺漏モデルにおける白糖含有ペプチド水溶液の肺漏閉鎖効果
ウサギ肺漏モデルを作製し、白糖含有3%ペプチド水溶液と生理食塩水の肺漏閉鎖効果を比較した。
【0078】
<材料>
・ペプチド水溶液
1.白糖含有3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製;白糖:和光純薬社製、濃度10%)
2.生理食塩水(株式会社大塚製薬工場製)
・動物
日本白色種ウサギ(3.0−4.0kg、ジャパンホワイト、コンベンショナル、株式会社フナバシファーム社より購入)。室温25℃、湿度65%、照明時間12時間(7:00−19:00)で制御された飼育室内で飼育用ペレット(JA東日くみあい飼料株式会社)を給餌し、給水ボトルの自由摂水にて飼育した。絶食は試験当日の朝のみとし、給水は自由とした。
【0079】
<方法>
・ウサギは、セクラタール2%注射液(100mL中にキシラジンとして2.0g含有、バイエル社製)を皮下内投与後(3mg/kg)、ケタミン(1mL中にケタミンとして50mg含有、富士ケミカル工業株式会社製)を静脈内投与(10mg/kg)することで麻酔した。
・ウサギは人工呼吸器による呼吸補助下において開胸した。肺を露出し、肺を摂子にて鈍的に傷つけ、出血を伴う肺漏を作成した。
・出血した血液を生理食塩水、ガーゼによって除去した後、出血面を白糖含有3%ペプチド水溶液、生理食塩水にて処置した。
・処置後、約30秒後、肺漏からの出血およびエアリークの有無を生理食塩水内で肉眼的に確認した。
【0080】
<結果>
図6により、本実施例における白糖含有ペプチド水溶液による肺漏閉鎖効果を示す。表6に示したように、白糖含有3%ペプチド水溶液では完全止血と肺漏閉鎖が確認されたが、生理食塩水では持続的な肺漏からの出血とエアリークが認められた。
【0081】
【表6】
【実施例6】
【0082】
ウサギ胆管注射針穿孔モデルにおけるペプチド水溶液の胆管壁閉塞効果
ウサギ注射針胆管穿孔モデルを作製し、ペプチド水溶液の胆管壁閉塞効果を評価した。
【0083】
<材料>
・ペプチド水溶液
3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
・動物
日本白色種ウサギ(3.0−4.0kg、ジャパンホワイト、コンベンショナル、株式会社フナバシファーム社より購入)。室温25℃、湿度65%、照明時間12時間(7:00−19:00)で制御された飼育室内で飼育用ペレット(JA東日くみあい飼料株式会社)を給餌し、給水ボトルの自由摂水にて飼育した。絶食は試験当日の朝のみとし、給水は自由とした。
【0084】
<方法>
・ウサギは、セクラタール2%注射液(100mL中にキシラジンとして2.0g含有、バイエル社製)を皮下内投与後(3mg/kg)、ケタミン(1mL中にケタミンとして50mg含有、富士ケミカル工業株式会社製)を静脈内投与(10mg/kg)することで麻酔した。
・ウサギは正中切開により開腹した。胆管を約10cm露出し、周囲組織より剥離した後、26G注射針にて胆管穿刺を行った。
・胆汁を流出させ、胆汁流出が止まらないことを確認後、血管遮断鉗子にて胆汁流を遮断した。
・漏出した胆汁を生理食塩水、ガーゼによって除去した後、3%ペプチド水溶液で処置した。
・処置後2分後に胆汁流遮断を解除し、穿孔部位からの胆汁流出の有無を肉眼的に確認した。
【0085】
<結果>
図7において、本実施例におけるペプチド水溶液による胆管壁閉塞効果を示す。表7に示したように、3%ペプチド水溶液で完全に胆管壁閉塞効果が認められた。
【0086】
【表7】
【実施例7】
【0087】
イヌ膀胱内腫瘍摘出術におけるペプチド水溶液による切除部の隆起維持効果及び止血効果
イヌ膀胱内腫瘍摘出術においてペプチド水溶液を膀胱粘膜下に注入し、ペプチド水溶液による切除部の隆起維持効果および止血効果の評価を行った。
【0088】
<材料>
・ペプチド水溶液
3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
・動物
イヌ(オス)
【0089】
<方法>
全身麻酔管理下において、イヌ膀胱内腫瘍摘出術を以下の手順で実施した。
・電気メス(エルベ社製)による下腹部切開後、電気メスを用いて膀胱を切開し膀胱内の腫瘍を露出させた(膀胱粘膜から隆起する基部直径が0.5cm程度の有茎性腫瘍)。
・3%ペプチド水溶液を0.5mLずつ4回にわけて腫瘍基部周囲の粘膜下に注入し、粘膜上の腫瘍が隆起することを確認した。
・腫瘍を隆起させた後、電気メスにて腫瘍を切除した。
・ペプチド水溶液注入から腫瘍切除完了までの時間は約2分であった。
【0090】
<結果>
図8に示したように、ペプチド水溶液の膀胱粘膜下注入により腫瘍を隆起させ、切除中も隆起状態を維持可能であった。また、腫瘍切除中および切除後に出血は認められなかった。
【実施例8】
【0091】
ウサギ胃粘膜切開モデルにおける2%ペプチド水溶液の止血効果
ウサギ胃粘膜切開出血モデルを作製し、2%ペプチド水溶液の止血効果を評価した。
【0092】
<材料>
・ペプチド水溶液
1.2%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
【0093】
・動物
日本白色種ウサギ(3.0−4.0kg、ジャパンホワイト、コンベンショナル、株式会社フナバシファーム社より購入)。室温25℃、湿度65%、照明時間12時間(7:00−19:00)で制御された飼育室内で飼育用ペレット(JA東日くみあい飼料株式会社)を給餌し、給水ボトルの自由摂水にて飼育した。絶食は試験当日の朝のみとし、給水は自由とした。
【0094】
<方法>
・ウサギは、セクラタール2%注射液(100mL中にキシラジンとして2.0g含有、バイエル社製)を皮下内投与後(3mg/kg)、ケタミン(1mL中にケタミンとして50mg含有、富士ケミカル工業株式会社製)を静脈内投与(10mg/kg)することで麻酔した。
・ウサギは正中切開で開腹し、胃を切開した後、胃粘膜を露出し剪刃にて鋭的に約1cm切開し出血創を作成した。
・切開創からの滲出性の出血を確認後、可能な限り血液をガーゼにて除去した後、作製した胃粘膜切開創をペプチド水溶液にて処置した。
・処置後1分後に生理食塩水にてゲル化したペプチド水溶液を除去し、胃粘膜切開創からの出血の有無を肉眼的に確認した。
【0095】
<結果>
図9において、本実施例の胃粘膜切開創からの出血に対するペプチド水溶液の止血効果の例を示す。ペプチド水溶液塗布後に出血は確認されなかった。
【実施例9】
【0096】
ウサギ肝臓横切開モデルにおける1%ペプチド水溶液の止血効果
ウサギ肝臓横切開出血モデルを作製し、1%ペプチド水溶液の止血効果を評価した。
【0097】
<材料>
・ペプチド水溶液
1.1%ペプチド水溶液(ペプチド配列:IEIK9(配列番号4)、CPC Scientific, Inc社製)
2.1%ペプチド水溶液(ペプチド配列:IEIK13、CPC Scientific, Inc社製)
3.1%ペプチド水溶液(ペプチド配列:KLD、CPC Scientific, Inc社製)
【0098】
・動物
日本白色種ウサギ(3.0−4.0kg、ジャパンホワイト、コンベンショナル、株式会社フナバシファーム社より購入)。室温25℃、湿度65%、照明時間12時間(7:00−19:00)で制御された飼育室内で飼育用ペレット(JA東日くみあい飼料株式会社)を給餌し、給水ボトルの自由摂水にて飼育した。絶食は試験当日の朝のみとし、給水は自由とした。
【0099】
<方法>
・ウサギは、セクラタール2%注射液(100mL中にキシラジンとして2.0g含有、バイエル社製)を皮下内投与後(3mg/kg)、ケタミン(1mL中にケタミンとして50mg含有、富士ケミカル工業株式会社製)を静脈内投与(10mg/kg)することで麻酔した。
・ウサギは正中切開で開腹し、肝臓左葉を剪刃にて鋭的に約1cm横切開し、出血創を作成した。
・切開創からの滲出性の出血を確認後、可能な限り血液をガーゼにて除去した後、作製した肝切開創をペプチド水溶液にて処置した。
・処置後1分後に生理食塩水にてゲル化したペプチド水溶液を除去し、肝切開創からの出血の有無を肉眼的に確認した。
【0100】
<結果>
図10において、本実施例の肝切開創からの出血に対するペプチド水溶液の止血効果の例を示す。IEIK9ペプチド水溶液を出血創面に上層したところ全くゲル化せず止血効果が認められなかったが、IEIK13ペプチド水溶液とKLDペプチド水溶液は塗布後ゲル化し、出血は確認されなかった。
【実施例10】
【0101】
ウサギ胆汁によるペプチド水溶液の自己組織化の確認
ウサギ胆汁によるペプチド水溶液の自己組織化を各種ペプチド水溶液で評価した。
【0102】
<材料>
・ペプチド水溶液
1.1.5%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
2.1%ペプチド水溶液(ペプチド配列:IEIK9, CPC Scientific, Inc社製)
3.1%ペプチド水溶液(ペプチド配列:IEIK13, CPC Scientific, Inc社製)
4.1%ペプチド水溶液(ペプチド配列:KLD, CPC Scientific, Inc社製)
【0103】
・動物
日本白色種ウサギ(3.0−4.0kg、ジャパンホワイト、コンベンショナル、株式会社フナバシファーム社より購入)。室温25℃、湿度65%、照明時間12時間(7:00−19:00)で制御された飼育室内で飼育用ペレット(JA東日くみあい飼料株式会社)を給餌し、給水ボトルの自由摂水にて飼育した。絶食は試験当日の朝のみとし、給水は自由とした。
【0104】
<方法>
・ウサギは、セクラタール2%注射液(100mL中にキシラジンとして2.0g含有、バイエル社製)を皮下内投与後(3mg/kg)、ケタミン(1mL中にケタミンとして50mg含有、富士ケミカル工業株式会社製)を静脈内投与(10mg/kg)することで麻酔した。
・ウサギは正中切開で開腹し、23G注射針(テルモ社製)により胆嚢より胆汁を採取した。
・自己組織化前の各ペプチド水溶液の液滴を作成し(直径約5−8mm程度)、そのペプチド水溶液を覆うように静かに採取した胆汁を上から流しかけた。
・約30秒後に胆汁を除去し、自己組織化を確認した後、23G注射針により物理的に自己組織化ゲルを破砕した。
【0105】
<結果>
図11において、本実施例の各ペプチド水溶液の胆汁による自己組織化の例を示す。IEIK9を除くすべてのペプチド水溶液において胆汁による自己組織化が確認された。
【実施例11】
【0106】
ラット門脈塞栓術における3%ペプチド水溶液の血管塞栓効果の確認
ラット門脈より3%ペプチド水溶液を注入し、血管塞栓効果を評価した。
【0107】
<材料>
・3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
【0108】
・動物
SDラット(250g、雄、日本エスエルシー株式会社より購入)を温度・湿度:22±3℃、50±20%、換気回数:10〜15回/時間、照明時間:人工照明 12時間(8:00〜20:00)で制御された飼育室内で飼育し、固型飼料、CRF−1(オリエンタル酵母工業式会社)を金属製給餌器を用いて自由に摂取させ、水道水を自動給水装置を用いて自由に摂取させた。
【0109】
<方法>
・ラットはジエチルエーテル(キシダ化学 株式会社製)にて吸入麻酔した。
・ラットは正中切開で開腹し、門脈を露出した。
・門脈本幹より26G注射針(テルモ社製)にてペプチド水溶液を4mL注入し、直ちに穿刺部位からの出血をペプチド水溶液にて止血した。
・注入後、5分後に肝臓を摘出し、直ちに10%ホルマリン(和光純薬工業株式会社製)にて固定した。
・組織は1週間固定した後、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色をした。
【0110】
<結果>
図12に示したように、ペプチド水溶液による門脈塞栓が確認された。
【実施例12】
【0111】
イオパミドールを溶解したペプチド水溶液の自己組織化の確認
イオパミドールを溶解したペプチド水溶液の自己組織化能を評価した。
<材料>
【0112】
・ペプチド水溶液
3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
・細胞培養用培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium, GIBCO社製)
・イオパミドール(和光純薬工業株式会社製)
【0113】
<方法>
・3%ペプチド水溶液1mlに対してイオパミドール306.2mgを溶解した。
・イオパミドール含有3%ペプチド水溶液をMilliQ水で希釈し、0.0468%ペプチド水溶液を作成した。3%イオパミドール含有ペプチド水溶液及び0.0468%イオパミドール含有ペプチド水溶液100μlに300μlの細胞培養用培地を50μlずつ6回に分け、3%イオパミドール含有ペプチド水溶液及び0.0468%イオパミドール含有ペプチド水溶液のまわりに添えるようにして触れさせた。培地添加後15分したら、周囲の培地を取り除き、ゲル化を目視で確認した。
【0114】
<結果>
図13に示したように、イオパミドール含有ペプチド水溶液の自己組織化が確認された。
【実施例13】
【0115】
イオパミドール含有3%ペプチド水溶液のマイクロカテーテル通過後の自己組織化の確認
イオパミドールを溶解した3%ペプチド水溶液の自己組織化能を評価した。
<材料>
【0116】
・ペプチド水溶液
3%ペプチド水溶液(ペプチド配列:Ac-(RADA)4-NH2、CPC Scientific, Inc社製)
・細胞培養用培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium, GIBCO社製)
・イオパミドール(和光純薬工業株式会社製)
・マイクロカテーテル(2.4Fr,150/20, Boston Scientific社製)
【0117】
<方法>
・3%ペプチド水溶液1mlに対してイオパミドール306.2mgを溶解した。
・イオパミドール含有3%ペプチド水溶液を経マイクロカテーテル的に細胞培養用培地中に吐出した。
【0118】
<結果>
図14に示したように、イオパミドール含有3%ペプチド水溶液の自己組織化が確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]