特開2016-188597(P2016-188597A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2016188597-エンジンの制御装置 図000003
  • 特開2016188597-エンジンの制御装置 図000004
  • 特開2016188597-エンジンの制御装置 図000005
  • 特開2016188597-エンジンの制御装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-188597(P2016-188597A)
(43)【公開日】2016年11月4日
(54)【発明の名称】エンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20161007BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20161007BHJP
   F02D 41/22 20060101ALI20161007BHJP
   F02M 63/00 20060101ALI20161007BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20161007BHJP
   F02M 61/14 20060101ALI20161007BHJP
   F02D 41/34 20060101ALN20161007BHJP
   F02D 41/02 20060101ALN20161007BHJP
【FI】
   F02D41/04 330L
   F02D45/00 310K
   F02D45/00 310Q
   F02D41/22 330A
   F02D41/04 330D
   F02D41/22 335A
   F02M63/00 P
   F02M51/00 A
   F02M61/14 310A
   F02M61/14 310D
   F02D41/34 C
   F02D41/02 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-68712(P2015-68712)
(22)【出願日】2015年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】中村 望
(72)【発明者】
【氏名】柳川 健介
(72)【発明者】
【氏名】平石 文昭
(72)【発明者】
【氏名】山下 正行
【テーマコード(参考)】
3G066
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G066AA01
3G066AD10
3G066AD12
3G066BA28
3G066CC35
3G066DA04
3G066DB06
3G066DB09
3G066DB12
3G066DC01
3G066DC09
3G066DC14
3G301HA01
3G301HA04
3G301HA06
3G301JA21
3G301JA37
3G301KA09
3G301KA24
3G301LB02
3G301LB04
3G301MA06
3G301MA19
3G301MA27
3G301ND02
3G301NE01
3G301NE06
3G301NE11
3G301NE12
3G301PE08Z
3G384AA01
3G384AA06
3G384AA07
3G384BA13
3G384BA18
3G384BA19
3G384CA07
3G384CA17
3G384DA56
3G384EA02
3G384EB01
3G384EB02
3G384EB03
3G384EB04
3G384FA26Z
3G384FA28Z
3G384FA56Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】顕著な出力低下を招くことなくプレイグニッションの発生をより効果的に抑制する。
【解決手段】相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が多くなる位置に設けられる筒内噴射弁11と、相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が少なくなる位置に設けられるポート噴射弁12と、エンジン1の冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段25と、冷却水温度検出手段25により検出された冷却水の温度に基づいて、筒内噴射弁11による燃料の噴射量とポート噴射弁12による燃料の噴射量との比率を決定する噴射比率決定手段21とを備え、噴射比率決定手段21は、冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、全ての燃料の噴射量に占めるポート噴射弁12による燃料の噴射量の比率を大きくする噴射量調整運転領域Rが設定されているエンジンの制御装置とした。噴射量調整運転領域Rは、エンジン1の低速高負荷域に設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が多くなる位置に設けられる第一の燃料噴射弁と、
相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が少なくなる位置に設けられる第二の燃料噴射弁と、
エンジンの冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水温度検出手段により検出された冷却水の温度に基づいて、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射量と前記第二の燃料噴射弁による燃料の噴射量との比率を決定する噴射比率決定手段と、
を備え、
前記噴射比率決定手段は、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、全ての燃料の噴射量に占める前記第二の燃料噴射弁による燃料の噴射量の比率を大きくする噴射量調整運転領域が設定されている
エンジンの制御装置。
【請求項2】
前記噴射量調整運転領域は、前記エンジンの負荷が相対的に高くなるにつれ、全ての燃料の噴射量に占める前記第二の燃料噴射弁による燃料の噴射量の比率が大きく設定される
請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記噴射量調整運転領域は、前記エンジンの低回転高負荷域に設定される
請求項1又は2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記噴射量調整運転領域は、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、全ての燃料の噴射量に占める前記第二の燃料噴射弁による燃料の噴射量の比率を大きくする際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される
請求項3に記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記第一の燃料噴射弁は、燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁であり、
前記第二の燃料噴射弁は、燃焼室へ通じる吸気通路内に燃料を噴射するポート噴射弁である、
請求項1から4の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項6】
前記第一の燃料噴射弁は、燃焼室の内周壁又はシリンダヘッド側頂部の周縁部に設けられる側方筒内噴射弁であり、
前記第二の燃料噴射弁は、燃焼室のシリンダヘッド側頂部の中央部に設けられる直上筒内噴射弁である
請求項1から4の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項7】
前記各燃料噴射弁による燃料の噴射時期を決定する噴射時期決定手段を備え、
前記噴射時期決定手段は、吸気行程噴射の際に、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射時期を進角する噴射時期調整運転領域が設定されている
請求項1から6の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項8】
前記噴射時期調整運転領域は、前記エンジンの低回転高負荷域に設定され、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射時期を進角する際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される
請求項7に記載のエンジンの制御装置。
【請求項9】
前記各燃料噴射弁による燃料の噴射時期を決定する噴射時期決定手段を備え、
前記噴射時期決定手段は、圧縮行程噴射の際に、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射時期を遅角する噴射時期調整運転領域が設定されている
請求項1から8の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項10】
前記噴射時期調整運転領域は、前記エンジンの低回転高負荷域に設定され、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射時期を遅角する際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される
請求項9に記載のエンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレイグニッションの発生を抑制するエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気筒内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁と、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射弁とを備えたエンジンが知られている。
【0003】
この種のエンジンでは、ポート噴射弁のみによる燃料噴射、筒内噴射弁のみによる燃料噴射、あるいは、両方を用いた燃料噴射というように、運転状況に応じて、筒内噴射弁とポート噴射弁とを選択的に、又は、組み合わせて用いる制御装置及び制御方法を採用している。
【0004】
ところで、特に、筒内噴射弁を備えたエンジンでは、点火プラグ等の点火装置による燃料への点火よりも早く、気筒内で燃料が自然発火してしまうプレイグニッションと呼ばれる現象が生じることがある。プレイグニッションが発生すると、燃焼室内に急激な圧力上昇が生じ、その衝撃波がピストンやシリンダ内壁に衝突する。この衝突により、シリンダ内の温度はさらに上昇し、エンジンは所定の性能を発揮できなくなる場合もある。
【0005】
特に、近年の高圧縮比エンジンでは、従来よりも圧縮比が高く設定されるにつれて、また、過給器を搭載したエンジンでは過給圧が高く設定されるにつれて、低回転高負荷域で発生する低速プレイグニッションと呼ばれる現象が発生しやすくなり、その対策が課題となっている。
【0006】
プレイグニッションの発生原因の一つは、燃焼室内に堆積したデポジットやシリンダの内周壁から飛散する潤滑油の液滴が、燃焼室内の温度上昇とともに発火し、それがエンドガスを自着火させる火種になっているといわれている。
【0007】
プレイグニッションを防止する手法として、例えば、吸気温度を低下させる手法や、混合気中の酸素濃度を下げる手法が挙げられる。吸気温度を下げるためには、例えば、ウェイストゲートバルブ制御等により吸気の過給圧を低下させたり、可変バルブタイミング機構による吸気バルブの遅角制御により実圧縮比を下げる手法等がある。
【0008】
また、特許文献1、2に記載の技術では、高回転高負荷域におけるプレイグニッション発生後の回避対策として、空燃比のリッチ化や吸気弁の閉弁時期の遅角、一部の燃料の噴射時期の遅角等を段階的に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−226473号公報
【特許文献2】特開2011−214447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の吸気温度を低下させる手法や、混合気中の酸素濃度を下げる手法によると、運転条件によっては顕著な出力低下を招く場合がある。
【0011】
また、特許文献1、2に記載の技術では、高回転高負荷域においてプレイグニッションが発生した後の回避対策が示されている。しかし、これは、プレイグニッションの発生を、その発生前に抑制するための対策ではない。また、特に、低回転高負荷域における、いわゆる低速プレイグニッションの抑制対策については、何ら開示されていない。
【0012】
そこで、この発明の課題は、顕著な出力低下を招くことなくプレイグニッションの発生をより効果的に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、この発明は、相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が多くなる位置に設けられる第一の燃料噴射弁と、相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が少なくなる位置に設けられる第二の燃料噴射弁と、エンジンの冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、前記冷却水温度検出手段により検出された冷却水の温度に基づいて、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射量と前記第二の燃料噴射弁による燃料の噴射量との比率を決定する噴射比率決定手段と、を備え、前記噴射比率決定手段は、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、全ての燃料の噴射量に占める前記第二の燃料噴射弁による燃料の噴射量の比率を大きくする噴射量調整運転領域が設定されているエンジンの制御装置を採用した。
【0014】
ここで、前記噴射量調整運転領域は、前記エンジンの負荷が相対的に高くなるにつれ、全ての燃料の噴射量に占める前記第二の燃料噴射弁による燃料の噴射量の比率が大きく設定される構成を採用することができる。
【0015】
前記噴射量調整運転領域は、前記エンジンの低回転高負荷域に設定される構成を採用することができる。
【0016】
また、前記噴射量調整運転領域は、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、全ての燃料の噴射量に占める前記第二の燃料噴射弁による燃料の噴射量の比率を大きくする際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される構成を採用することができる。
【0017】
また、前記第一の燃料噴射弁は、燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁であり、前記第二の燃料噴射弁は、燃焼室へ通じる吸気通路内に燃料を噴射するポート噴射弁である構成を採用することができる。
【0018】
あるいは、前記第一の燃料噴射弁は、燃焼室の内周壁又はシリンダヘッド側頂部の周縁部に設けられる側方筒内噴射弁であり、前記第二の燃料噴射弁は、燃焼室のシリンダヘッド側頂部の中央部に設けられる直上筒内噴射弁である構成を採用することができる。
【0019】
これらの各構成において、前記各燃料噴射弁による燃料の噴射時期を決定する噴射時期決定手段を備え、前記噴射時期決定手段は、吸気行程噴射の際に、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射時期を進角する噴射時期調整運転領域が設定されている構成を採用することができる。
【0020】
このとき、前記噴射時期調整運転領域は、前記エンジンの低回転高負荷域に設定され、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射時期を進角する際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される構成を採用することができる。
【0021】
あるいは、これらの各構成において、前記各燃料噴射弁による燃料の噴射時期を決定する噴射時期決定手段を備え、前記噴射時期決定手段は、圧縮行程噴射の際に、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射時期を遅角する噴射時期調整運転領域が設定されている構成を採用することができる。
【0022】
このとき、前記噴射時期調整運転領域は、前記エンジンの低回転高負荷域に設定され、前記冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、前記第一の燃料噴射弁による燃料の噴射時期を遅角する際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明は、相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が多い第一の燃料噴射弁と、燃料の付着が少ない第二の燃料噴射弁とを備え、冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、全ての燃料の噴射量に占める第二の燃料噴射弁による燃料の噴射量の比率を大きくする噴射量調整運転領域を設定したので、顕著な出力低下を招くことなくプレイグニッションの発生をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の一実施形態を示すエンジンの縦断面図である。
図2】(a)〜(f)は、この発明のエンジンの制御を示すグラフ図である。
図3】(a)〜(f)は、この発明のエンジンの制御を示すグラフ図である。
図4】この発明の他の実施形態を示すエンジンの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、この発明のエンジンの一つの気筒を示す縦断面図である。
【0026】
この実施形態のエンジンは自動車用の4サイクルガソリンエンジンである。図1に示すように、エンジン1のシリンダ内にはピストン2が収容されている。シリンダの内周壁、及び、シリンダヘッド側頂部、ピストン2の上面等により燃焼室3が形成されている。
【0027】
エンジン1は、ピストン2を収容した各シリンダの燃焼室3内に吸気を送り込む吸気通路4、燃焼室3から引き出された排気通路5等を備えている。また、シリンダヘッド側からシリンダの軸線に沿って下向きに、点火手段15として点火プラグが備えられている。
【0028】
これらの図面では、この発明に直接関係する部材、手段を中心に示し、他の部材等については図示省略している。また、図面では、一つのシリンダのみを示しているが、エンジン1は単気筒であってもよいし、複数のシリンダを備えた多気筒であってもよい。
【0029】
吸気通路4の燃焼室3への開口部である吸気弁孔8は、吸気バルブ6によって開閉される。また、排気通路5の燃焼室3への開口部である排気弁孔9は、排気バルブ7によって開閉される。これらの吸気バルブ6及び排気バルブ7は、シリンダヘッド側に設けたカムシャフトにバルブリフタを介して接続されているので、カムシャフトの回転によって、所定のタイミングで吸気弁孔8、排気弁孔9を開閉する。
【0030】
吸気バルブ6や排気バルブ7の数は、エンジン1の用途や仕様に応じて適宜決定され、一つの気筒に吸気バルブ6と排気バルブ7を2つずつ備えられる構成や、あるいは、一つずつ備える構成等、種々の構成としてよい。
【0031】
これらの吸気バルブ6や排気バルブ7、点火手段15、その他エンジンの動作に必要な機器は、それぞれケーブルを通じて、電子制御ユニット(Electronic Control Unit)20に備えられた制御手段によって制御される。
【0032】
エンジン1内は、複数の燃料噴射装置が備えられている。燃料噴射装置は、相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が多くなる位置に設けられる第一の燃料噴射弁Aと、相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が少なくなる位置に設けられる第二の燃料噴射弁Bとからなる。
【0033】
図1の実施形態では、第一の燃料噴射弁Aは、燃焼室3内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁11であり、第二の燃料噴射弁Bは、燃焼室3へ通じる吸気通路4内に燃料を噴射するポート噴射弁12である。
【0034】
第一の燃料噴射弁Aと第二の燃料噴射弁Bへの燃料の送り込みは、燃料タンクに設けられたポンプを用いて行われ、筒内噴射弁11とされる第一の燃料噴射弁Aへは、より燃料噴射圧が高い高圧ポンプが用いられている。各燃料噴射弁からの燃料の噴射は、それぞれが備える電磁弁が開閉することにより、燃料の噴射、噴射の停止が切り替えられ、噴射量の増減、噴射時期の調整が行われる。
【0035】
また、エンジン1を冷却する冷却水経路には、その冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段25が設けられている。冷却水温度検出手段25は、ラジエターや冷却水配管の一部に設けられる。冷却水温度検出手段25によって検出された水温の情報は、電子制御ユニット20が取得することができる。
【0036】
また、電子制御ユニット20は、図1に示すように、第一の燃料噴射弁Aと第二の燃料噴射弁Bとの燃料の噴射比率を決定する噴射比率決定手段21、第一の燃料噴射弁Aと第二の燃料噴射弁Bのそれぞれの燃料の噴射時期を決定する噴射時期決定手段22、一つの気筒に対する1サイクル当たりの燃料の総噴射量を決定する総噴射量決定手段23、エンジン1やそのエンジン1を搭載した車両の運転状況を判断する運転状況判別手段24等を備える。
【0037】
運転状況判別手段24は、エンジン1の冷却水の温度の情報や、エンジン1の回転数、エンジン1の負荷の情報等を取得し、その情報をエンジン1の制御に活用している。運転状況判別手段24は、クランク角センサ等からの情報に基づいて、エンジン1の回転数の情報を取得する。また、アクセルペダルに連動するスロットルバルブの開度や、燃料噴射量、エンジンの回転数、車速等の情報に基づいて、エンジン1への負荷の情報を取得する。
【0038】
噴射比率決定手段21は、冷却水温度検出手段25により検出された冷却水の温度に基づいて、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射量と、第二の燃料噴射弁Bによる燃料の噴射量との比率を決定する。
【0039】
また、噴射比率決定手段21による制御には、冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、全ての燃料の噴射量に占める第二の燃料噴射弁Bによる燃料の噴射量の比率を大きくする噴射量調整運転領域Rが設定されている。この実施形態では、噴射量調整運転領域Rは、低速プレイグニッション防止の観点からエンジンの低回転高負荷域(以下、「低速高負荷域」と記載)に設定されているが、その領域をどこに設定するかは、エンジン1の用途や仕様に応じて適宜決定される。
【0040】
噴射時期決定手段22は、運転状況判別手段24によって得られた運転状況に基づいて、全ての燃料噴射弁、すなわち、第一の燃料噴射弁Aと第二の燃料噴射弁Bのそれぞれによる燃料の噴射時期を決定する。
【0041】
総噴射量決定手段23は、運転状況判別手段24によって得られた運転状況に基づいて、全ての燃料噴射弁、すなわち、第一の燃料噴射弁Aと第二の燃料噴射弁Bとによって、一つの気筒に対して1サイクル当たりに必要となる燃料の総噴射量を決定する。
【0042】
燃料噴射に関する通常の制御は、電子制御ユニット20が備える制御手段によって、運転状況に応じて行われる。また、エンジン1にプレイグニッションが生じる可能性がある運転状況の場合には、噴射比率決定手段21や噴射時期決定手段22等による燃料噴射量の比率や噴射時期を調整する制御が行われる。
【0043】
以下、その制御について、図2及び図3に基づいて説明する。
【0044】
図2に示す制御は、冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、第一の燃料噴射弁Aと第二の燃料噴射弁Bの両方による燃料の総噴射量に占める第二の燃料噴射弁B(ポート噴射弁12)による燃料の噴射量の比率を大きくする噴射量調整運転領域Rが設定されている。ここでは、噴射量調整運転領域Rは、エンジン1に低速プレイグニッションが生じる可能性がある低速高負荷域に設定されている。具体的には予め決められた所定の低速領域において、エンジン1の負荷がグラフ中のaの値を超えた場合に相当する。
【0045】
第二の燃料噴射弁Bは、第一の燃料噴射弁Aよりも相対的に気筒の内周壁への燃料の付着が少なくなる位置に設けられるので、特に、プレイグニッションが生じる可能性がある運転状況では、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を増やして、気筒の内周壁への燃料の付着を低減する。これにより、プレイグニッションの発生を回避する。
【0046】
このとき、冷却水の水温が低いほどプレイグニッションの発生の危惧が高まるので、噴射量調整運転領域Rでは、冷却水の温度が相対的に低くなるにつれて、段階的に第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を増やしていく。ここでは、第二の燃料噴射弁Bはポート噴射弁12であるので、冷却水の温度が相対的に低くなるにつれて、ポート噴射比率が上昇するように設定される。
【0047】
図2(a)の制御の例では、エンジン1の負荷がグラフ中のaの値を超えた場合であっても、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における噴射比率pを維持し、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を高めた噴射比率qに移行する。また、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率をさらに高めた噴射比率rに移行し、70℃を下回って60℃以上の水温であれば、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率が最も高い噴射比率sに移行する。なお、水温が60℃を下回った場合には、直前の噴射比率sを維持する設定してもよいし、別途のさらに高い噴射比率を設定してもよい(以下の各例で同じ)。
【0048】
図2(b)の制御の例では、エンジン1の負荷の値に関わらず、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における噴射比率pを維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度に応じて、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を高めた噴射比率sに移行する。その移行の時期は、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷が比較的高いcの値の位置に設定され、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷がcの値よりもやや低いbの値に設定され、70℃を下回った水温であれば、エンジン1の負荷が最も低いaの値に設定される。すなわち、水温が低いほど、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を上げる際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される。
【0049】
このため、負荷がa以下であれば、噴射比率は水温に関わらず初期値の噴射比率pに、負荷がaを超えてb以下であれば、噴射比率は水温70℃を下回った場合のみ、より高い比率sに上げられる。負荷がbを超えてc以下であれば、噴射比率は水温80℃を下回った場合のみより高い噴射比率sに設定され、負荷がcを超えた場合は、噴射比率は水温90℃を下回った場合のみより高い噴射比率sに設定される。
【0050】
また、図2(c)の制御の例では、エンジン1の負荷の値に関わらず、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における噴射比率pを維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度に応じて、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を高めた燃料噴射比率q、r、sに移行する。その移行の時期は、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷が比較的高いcの値の位置に設定され、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷がcの値よりもやや低いbの値に設定され、70℃を下回った水温であれば、エンジン1の負荷が最も低いaの値に設定される。すなわち、水温が低いほど、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を上げる際の負荷の値が小さく設定される。また、設定される噴射比率は、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、初期値の噴射比率pよりもやや高い噴射比率qに設定され、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、さらに高い噴射比率rに設定され、70℃を下回った水温であれば、最も高い噴射比率sに設定される。
【0051】
このため、負荷がa以下であれば、噴射比率は水温に関わらず初期値の噴射比率pに、負荷がaを超えてb以下であれば、噴射比率は水温70℃を下回った場合のみ、より高い比率sに上げられる。負荷がbを超えてc以下であれば、噴射比率は、水温70℃を下回っていれば噴射比率sに、水温80℃を下回って70℃以上の場合には噴射比率rに設定される。負荷がcを超えた場合は、噴射比率は、水温70℃を下回っていれば噴射比率sに、水温80℃を下回って70℃以上の場合には噴射比率rに、水温90℃を下回って80℃以上の場合には噴射比率qに設定される。
【0052】
図2(d)の制御の例では、エンジン1の負荷がグラフ中のaの値を超えた場合であっても、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における初期値の噴射比率pを維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度及び負荷の値に応じて、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を高めた噴射比率に移行する。その噴射比率は、負荷が高いほど徐々に高められ、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、負荷の上限値では初期値の噴射比率pよりもやや高い噴射比率qを上限に設定される。また、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、さらに高い噴射比率rが上限に設定され、70℃を下回った水温であれば、最も高い噴射比率sが上限に設定される。噴射量調整運転領域Rにおける噴射比率と負荷との関係は、グラフのように負荷を横軸、噴射比率を縦軸とした場合に、一次関数からなる直線としてもよいが、これを二次関数等の曲線としてもよい(図2(d)〜(f)の各例で同じ)。
【0053】
図2(e)の制御の例では、エンジン1の負荷の値に関わらず、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における初期値の噴射比率pを維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度に応じて、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を高めた噴射比率に移行する。その移行の時期は、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷が比較的高いcの値の位置に設定され、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷がcの値よりもやや低いbの値に設定され、70℃を下回った水温であれば、エンジン1の負荷が最も低いaの値に設定される。すなわち、水温が低いほど、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を上げる際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される。また、この例では、負荷の上限値での噴射比率は、水温に関わらず比率sに設定される。
【0054】
このため、負荷がa以下であれば、噴射比率は水温に関わらず初期値の噴射比率pに、負荷がaを超えてb以下であれば、噴射比率は水温70℃を下回った場合のみ、より高い噴射比率に上げられる。負荷がbを超えてc以下であれば、噴射比率は水温80℃を下回った場合のみより高い噴射比率に設定され、負荷がcを超えた場合は、噴射比率は水温90℃を下回った場合のみより高い噴射比率に設定される。
【0055】
図2(f)の制御の例では、エンジン1の負荷の値に関わらず、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における初期値の噴射比率pを維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度に応じて、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を高めた噴射比率に移行する。その移行の時期は、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷が比較的高いcの値の位置に設定され、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷がcの値よりもやや低いbの値に設定され、70℃を下回った水温であれば、エンジン1の負荷が最も低いaの値に設定される。すなわち、水温が低いほど、第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を上げる際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される。
【0056】
また、その噴射比率は、負荷が高いほど徐々に高められ、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、負荷の上限値では初期値の噴射比率pよりもやや高い噴射比率qを上限に設定される。また、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、さらに高い噴射比率rが上限に設定され、70℃を下回った水温であれば、最も高い噴射比率sが上限に設定される。
【0057】
なお、上記の実施形態では、燃焼の噴射装置として、シリンダ1の燃焼室3内に直接燃料を噴射するように、燃焼室3の内周壁又はシリンダヘッド側頂部の周縁部に設けられる筒内噴射弁(側方筒内噴射弁)11を第一の燃料噴射弁Aとし、吸気通路4内に燃料を噴射するポート噴射弁12を第二の燃料噴射弁Bとしたが、これを、例えば、図4に示すように、側方筒内噴射弁11を第一の燃料噴射弁Aとし、燃焼室3のシリンダヘッド側頂部の中央部に下向き、すなわち、ピストンヘッド側へ向けて配置される直上筒内噴射弁13を第二の燃料噴射弁Bとしてもよい。なお、図4では、点火手段15の図示を省略している。
【0058】
すなわち、この図4では、第一の燃料噴射弁Aは、燃焼室3の内周壁又はシリンダヘッド側頂部の周縁部に設けられる側方筒内噴射弁11であり、第二の燃料噴射弁Bは、燃焼室3のシリンダヘッド側頂部の中央部に設けられる直上筒内噴射弁13である。
【0059】
このように、第二の燃料噴射弁Bは直上筒状噴射弁13であるので、図2の制御では、冷却水の温度が相対的に低くなるにつれて、全体の燃料噴射量に占める直上筒状噴射弁13による燃料噴射の比率、すなわち、中央噴射比率が上昇するように設定される。前述の図2の各例における燃料噴射の制御については、ポート噴射弁12を直上筒状噴射弁13に置き換え、グラフの縦軸に示すポート噴射比率を中央噴射比率に置き換えることで、繰り返しの説明を省略する。
【0060】
噴射量調整運転領域Rでは、冷却水の温度が、予め設定された10℃毎の領域を基準として、その領域が相対的に低くなるにつれて、段階的に第二の燃料噴射弁Bによる燃料噴射の比率を増やしていくようにしたが、この温度の領域は、10℃毎の設定に限定されず、例えば、5℃毎、あるいは、4℃毎の設定とするなど自由な幅に設定できる。また、この領域を設定せず、冷却水の温度に応じて無段階で噴射比率を増減するようにしてもよい。
【0061】
つぎに、図3に示す制御は、上記図2の制御に加えて行う第二の燃料噴射弁B(ポート噴射弁12又は直上筒状噴射弁13)による燃料噴射時期の制御である。
【0062】
図3に示す制御では、噴射時期決定手段22は、ピストン2の一サイクル中における吸気行程において燃料噴射を行う際に、すなわち、吸気行程噴射の際に、冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を進角する噴射時期調整運転領域Tが設定されている。吸気行程では、燃料噴射時期を早めるほど、気筒の内周壁の多くがピストン2で隠れた状態になるので、このように、噴射時期の進角により内周壁への燃料の付着を抑制し、プレイグニッションを回避できる。図3(a)〜(c)にその制御を示す。
【0063】
また、噴射時期決定手段22は、ピストンの一サイクル中における圧縮行程において燃料噴射を行う際に、すなわち、圧縮行程噴射の際に、冷却水の温度が相対的に低くなるにつれ、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を遅角する噴射時期調整運転領域Tが設定されている。圧縮行程では、燃料噴射時期を遅らせるほど、気筒の内周壁の多くがピストン2で隠れた状態になるので、このように、噴射時期の遅角により内周壁への燃料の付着を抑制し、プレイグニッションを回避できる。図3(d)〜(f)にその制御を示す。
【0064】
図3(a)の制御の例では、吸気行程噴射において、エンジン1の負荷がグラフ中のaの値を超えた場合であっても、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における初期値の噴射時期tを維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度及び負荷の値に応じて、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を進角させた状態に移行する。その噴射時期は、負荷が高くなるほど徐々に進角され、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、負荷の上限値では初期値の噴射時期tよりもやや進角した噴射時期uを上限に設定される。また、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、さらに進角した噴射時期vが上限に設定され、70℃を下回った水温であれば、最も進角した噴射時期wが上限に設定される。噴射時期調整運転領域Tにおける噴射時期と負荷との関係は、グラフのように負荷を横軸、噴射時期(進角側が上)を縦軸とした場合に、一次関数からなる直線としてもよいが、これを二次関数等の曲線としてもよい(図3(b)〜(f)の各例で同じ)。
【0065】
図3(b)の制御の例では、吸気行程噴射において、エンジン1の負荷の値に関わらず、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における初期値の噴射時期tを維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度に応じて、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を進角させた状態に移行する。その移行の時期は、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷が比較的高いcの値の位置に設定され、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷がcの値よりもやや低いbの値に設定され、70℃を下回った水温であれば、エンジン1の負荷が最も低いaの値に設定される。すなわち、水温が低いほど、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を進角させる際の負荷の下限値が小さく設定される。また、この例では、負荷の上限値での噴射時期は、水温に関わらず噴射時期wに設定される。
【0066】
図3(c)の制御の例では、吸気行程噴射において、エンジン1の負荷の値に関わらず、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における初期値の噴射時期tを維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度に応じて、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を進角させた状態に移行する。その移行の時期は、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷が比較的高いcの値の位置に設定され、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷がcの値よりもやや低いbの値に設定され、70℃を下回った水温であれば、エンジン1の負荷が最も低いaの値に設定される。
【0067】
また、その噴射時期は、負荷が高いほど徐々にその進角度合いが高められ、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、負荷の上限値では初期値の噴射時期tよりもやや早い噴射時期uを上限に設定される。また、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、さらに早い噴射時期vが上限に設定され、70℃を下回った水温であれば、最も早い噴射時期wが上限に設定される。
【0068】
つぎに、図3(d)の制御の例では、圧縮行程噴射において、エンジン1の負荷がグラフ中のaの値を超えた場合であっても、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における初期値の噴射時期t’を維持し、90℃を下回った水温であれば、その負荷の値に応じて、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を遅角させた状態に移行する。その噴射時期は、負荷が高くなるほど徐々に遅角され、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、負荷の上限値では初期値の噴射時期t’よりもやや遅角した噴射時期u’を上限に設定される。また、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、さらに遅角した噴射時期v’が上限に設定され、70℃を下回った水温であれば、最も遅角した噴射時期w’が上限に設定される。
【0069】
図3(e)の制御の例では、圧縮行程噴射において、エンジン1の負荷の値に関わらず、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における初期値の噴射時期t’を維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度に応じて、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を遅角させた状態に移行する。その移行の時期は、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷が比較的高いcの値の位置に設定され、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷がcの値よりもやや低いbの値に設定され、70℃を下回った水温であれば、エンジン1の負荷が最も低いaの値に設定される。すなわち、水温が低いほど、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を遅角させる際の閾値となる負荷の値が、徐々に小さく設定される。また、この例では、負荷の上限値での噴射時期は、水温に関わらず噴射時期w’に設定される。
【0070】
図3(f)の制御の例では、圧縮行程噴射において、エンジン1の負荷の値に関わらず、水温が90℃以上であれば、通常の運転状況における初期値の噴射時期t’を維持し、90℃を下回った水温であれば、その温度に応じて、第一の燃料噴射弁Aによる燃料の噴射時期を遅角させた状態に移行する。その移行の時期は、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷が比較的高いcの値の位置に設定され、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、エンジン1の負荷がcの値よりもやや低いbの値に設定され、70℃を下回った水温であれば、エンジン1の負荷が最も低いaの値に設定される。
【0071】
また、その噴射時期は、負荷が高いほど徐々に遅角度合いが高められ、90℃を下回って80℃以上の水温であれば、負荷の上限値では初期値の噴射時期t’よりもやや遅い噴射時期u’を上限に設定される。また、80℃を下回って70℃以上の水温であれば、さらに遅い噴射時期v’が上限に設定され、70℃を下回った水温であれば、最も遅い噴射時期w’が上限に設定される。
【0072】
噴射時期調整運転領域Tでは、冷却水の温度が、予め設定された10℃毎の領域を基準とし、その領域が相対的に低くなるにつれて、段階的に第一の燃料噴射弁Aによる燃料噴射の時期を遅角又は進角させるようにしたが、この温度の領域は、10℃毎の設定に限定されず、例えば、5℃毎、あるいは、4℃毎の設定とするなど自由な幅に設定できる。また、この領域を設けずに、冷却水の温度に応じて無段階で噴射時期を遅角又は進角するようにしてもよい。
【0073】
これらの実施形態では、自動車用の4サイクルガソリンエンジンを例に、この発明の構成を説明したが、プレイグニッションを生じさせる可能性のある他の形式のエンジンにおいても、この発明を適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 シリンダ
2 ピストン
3 燃焼室
4 吸気通路
5 排気通路
6 吸気バルブ
7 排気バルブ
8 吸気弁孔
9 排気弁孔
10 過給機
11 筒内噴射弁(側方筒内噴射弁)
12 ポート噴射弁
13 筒内噴射弁(直上筒内噴射弁)
15 点火手段
20 電子制御ユニット(Electronic Control Unit)
21 噴射比率決定手段
22 噴射時期決定手段
23 総噴射量決定手段
24 運転状況判別手段
25 冷却水温度検出手段
A 第一の燃料噴射弁
B 第二の燃料噴射弁
図1
図2
図3
図4