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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-191344(P2016-191344A)
(43)【公開日】2016年11月10日
(54)【発明の名称】過給機付き内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/00 20060101AFI20161014BHJP
   F02B 39/16 20060101ALI20161014BHJP
【FI】
   F02D23/00 F
   F02B39/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-71246(P2015-71246)
(22)【出願日】2015年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】土谷 明大
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 充広
(72)【発明者】
【氏名】亀井 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】坂井 貴行
【テーマコード(参考)】
3G005
3G092
【Fターム(参考)】
3G005EA16
3G005FA04
3G005FA37
3G005JA23
3G005JA24
3G005JA39
3G005JB05
3G092AA01
3G092AA05
3G092AA18
3G092AB02
3G092DC01
3G092FA03
3G092FA24
3G092HA01Z
3G092HA05Z
3G092HA16Z
3G092HE01Z
3G092HG08Z
(57)【要約】
【課題】コンプレッサのサージングを抑制しつつ、トランスミッションの許容トルクや内燃機関のノッキング限界等のトランスミッションまたは内燃機関の要求を考慮して、燃費性能と加速性能を向上できる過給機付き内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】過給機7のコンプレッサ9と、コンプレッサ9の吸気通路下流側に設けられ内燃機関1へ供給される吸気量を調整するスロットルバルブ51と、コンプレッサ9のサージングラインを基に設定されたスロットルバルブ上流側の吸気圧力または吸気圧力比の上限値と、トランスミッションまたは内燃機関の要求を基に設定されたスロットルバルブ下流側の吸気圧力または吸気圧力比の上限値との両上限値を超えない範囲でコンプレッサ9の制御目標値を算出して、制御目標値に基づいてコンプレッサの回転数を制御する過給機制御手段65と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられたタービンによって回転されて吸気を圧縮する過給機のコンプレッサと、
該コンプレッサの吸気通路下流側に設けられ内燃機関へ供給される吸気量を調整するスロットルバルブと、
前記内燃機関の負荷と回転から目標とする前記スロットルバルブの下流側での第1の目標吸気圧力を算出する第1の目標吸気圧力算出手段と、
前記第1の目標吸気圧力に基づいて前記スロットルバルブの上流側の吸気圧力を算出する第2の目標吸気圧力算出手段と、
前記第2の目標吸気圧力または前記第2の目標吸気圧力と大気圧との比である圧力比に基づいて前記コンプレッサの制御目標値を算出する過給機制御手段と、
を備える過給機付き内燃機関の制御装置であって、
前記過給機制御手段は、
前記内燃機関の燃焼状態または前記内燃機関に接続される駆動装置の限界点に基づいて目標吸気圧力の上限値を算出する第1の上限値算出手段と、
前記コンプレッサのサージングラインを基に算出され、前記第2の目標吸気圧力または前記圧力比の上限値を算出する第2の上限値算出手段と、
前記第1及び第2の両方の上限値を超えない範囲で前記コンプレッサの制御目標値を算出し、前記コンプレッサの回転数を制御する圧力制御手段と、
を有することを特徴とする過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記過給機制御手段は、
前記第1の目標吸気圧力と前記第1の上限値を比較し小さい値を基に前記第2の吸気圧力目標値を算出し、
前記第2の上限値と前記第2の吸気圧力目標値または前記圧力比を比較して小さい値を前記コンプレッサの制御目標値として出力することを特徴とする請求項1に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関は、
前記内燃機関に吸入される吸入空気量を計測または推定する吸入空気量取得手段を備え、
前記過給機制御手段は、
前記圧力比に基づいて前記コンプレッサの制御目標値を制御し、
前記コンプレッサのサージラインは前記コンプレッサを通過する吸気量と圧力比によって定まり、
前記第2の上限値算出手段は前記吸入吸気量取得手段により計測される吸入空気量に基づいて前記コンプレッサを通過する吸気量を算出し、前記吸気量と前記コンプレッサのサージラインに基づいて前記第2の上限値を算出することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記第1の上限値は少なくとも前記内燃機関に接続され前記内燃機関の駆動力を伝達する駆動力伝達手段の許容トルクによって定められることを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記第2の上限値は、コンプレッサのサージラインに対して所定の余裕量を含んで設定された値であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機付き内燃機関の制御装置に関し、特に、過給機による過給圧力の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機付き内燃機関において、過給圧力の制御に関する技術として、特許文献1、特許文献2が知られている。かかる特許文献1には、大気圧変化に影響されることなく、常に排気ターボチャージャのコンプレッサによる圧力比(コンプレッサ上流側と下流側との圧力の比率)が、サージライン近傍に保持されてサージングを防止した上で十分なエンジントルクを得ることが開示されている。そのために、特許文献1では、サージ限界圧力比と運転位置での圧力比との差が予め設定された余裕量となるように過給機圧を制御することが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、目標充填率効率とエンジン回転速度とに基づいてスロットルバルブの上流側の圧力の目標値である目標スロットル上流圧力を算出し、目標吸入空気量と前記目標スロットル上流圧力を基に目標圧縮機駆動力を演算して、ウェイストゲートバルブを目標圧縮機駆動力になるように制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−342840号公報
【特許文献2】特開2013−224596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、前述のように、コンプレッサの圧力比をサージライン近傍に保持するためにサージラインから余裕量をもって過給圧を制御する技術であり、コンプレッサのサージング、即ち、低流領域で急激に効率低下を生じてターボチャージャとしての機能が得られず、ターボチャージャが破損するおそれを防止することを課題とている。このため、トランスミッションの許容トルクや内燃機関のノッキング限界等のトランスミッションや内燃機関の性能や強度的な問題までを考慮した過給圧制御とはなっていない。
【0006】
特に、過給機の下流側に吸気量を調整するスロットルバルブが設けられている場合には、スロットルバルブの開度制御に応じた吸気圧損失が発生するため、過給機の下流側圧力がスロットルバルブの下流側圧力、つまり吸気マニホールド圧力とは同等とはならず、特許文献1のように過給機の下流側圧力と上流側圧力の圧力比だけによってサージングを抑制する制御を行うと、トランスミッションの許容トルクや内燃機関のノッキング限界等を考慮すると、余裕がないにもかかわらず運転が行われてしまい、また、余裕があるにもかかわらず制限されてしまい、過渡時における加速性や燃費の悪化が生じる問題がある。
【0007】
一方、特許文献2には、目標とするスロットル下流圧力からスロットル上流圧を算出しと大気圧との比に基づいて、ウェイストゲートバルブの開度を調整する技術が示されているが、過給運転領域において、コンプレッサのサージによる破損が考慮されていない。さらに燃費性能の維持と加速性能を向上させることまでは開示されていない。
【0008】
そこで、前述の技術的課題に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態の目的は、コンプレッサのサージングを抑制しつつ、トランスミッションの許容トルクや内燃機関のノッキング限界等のトランスミッションまたは内燃機関の要求を考慮して、燃費性能と加速性能を向上できる過給機付き内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る過給機付き内燃機関の制御装置は、内燃機関の排気通路に設けられたタービンによって回転されて吸気を圧縮する過給機のコンプレッサと、該コンプレッサの吸気通路下流側に設けられ内燃機関へ供給される吸気量を調整するスロットルバルブと、前記内燃機関の負荷と回転から目標とする前記スロットルバルブの下流側での第1の目標吸気圧力を算出する第1の目標吸気圧力算出手段と、前記第1の目標吸気圧力に基づいて前記スロットルバルブの上流側の吸気圧力を算出する第2の目標吸気圧力算出手段と、前記第2の目標吸気圧力または前記第2の目標吸気圧力と大気圧との比である圧力比に基づいて前記コンプレッサの制御目標値を算出する過給機制御手段と、を備える内燃機関の制御装置であって、
前記過給機制御手段は、前記内燃機関の燃焼状態または前記内燃機関に接続される駆動装置の限界点に基づいて目標吸気圧力の上限値を算出する第1の上限値算出手段と、前記コンプレッサのサージングラインを基に算出され、前記第2の目標吸気圧力または前記圧力比の上限値を算出する第2の上限値算出手段と、前記第1及び第2の両方の上限値を超えない範囲で前記コンプレッサの制御目標値を算出し、前記コンプレッサの回転数を制御する圧力制御手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
前記(1)の構成によれば、制御目標値の吸気圧力または吸気圧力比を、コンプレッサのサージングラインに基づく上限値と、内燃機関の燃焼状態または内燃機関に接続される駆動装置の限界点に基づく上限値との両方の上限値を超えない範囲で内燃機関を運転できるため、コンプレッサのサージングを確実に抑制できる。さらに、コンプレッサの破損防止を図りつつエンジン性能を最大限発揮できる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、前記(1)の構成において、前記過給機制御手段は、前記第1の目標吸気圧力と前記第1の上限値を比較し小さい値を基に前記第2の吸気圧力目標値を算出し、前記第2の上限値と前記第2の吸気圧力目標値または前記圧力比を比較して小さい値を前記コンプレッサの制御目標値として出力することを特徴とする。
【0012】
前記(2)の構成によれば、スロットルバルブの下流側における第1の上限値との比較と、スロットルバルブの上流側における第2の上限値との比較との2つの上限値との比較によって、コンプレッサの制御目標値として出力するので、コンプレッサのサージングを確実に抑制できる。さらに、コンプレッサの破損防止を図りつつエンジン性能を最大限発揮できる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、前記(1)または(2)の構成において、前記内燃機関は、前記内燃機関に吸入される吸入空気量を計測または推定する吸入空気量取得手段を備え、前記過給機制御手段は、前記圧力比に基づいて前記コンプレッサの制御目標値を制御し、前記コンプレッサのサージラインは前記コンプレッサを通過する吸気量と圧力比によって定まり、前記第2の上限値算出手段は前記吸入吸気量取得手段により計測される吸入空気量に基づいて前記コンプレッサを通過する吸気量を算出し、前記吸気量と前記コンプレッサのサージラインに基づいて前記第2の上限値を算出することを特徴とする。
【0014】
前記(3)の構成によれば、第2の上限値はサージラインに基づいて算出され、そのコンプレッサのサージラインはコンプレッサを通過する吸気量と圧力比によって定まる。さらに、コンプレッサを通過する吸気量を計測または推定する吸入空気量取得手段を備える。
このため、例えば、バルブオーバラップが可変バルブタイミング機構の油圧不足により想定より少なく、内燃機関のシリンダ内に空気が入りにくく、目標圧力比よりも誤って増大してしまうケースがあっても、このような場合には吸入空気量はその分減少し、第2の上限値もそれに応じて減少した上限値となることから、コンプレッサの破損を確実に防止できる。
一方、第2の上限値を超えない範囲では、第1の上限値を用いてエンジン性能を最大限活用できる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、前記(1)〜(3)の構成において、前記第1の上限値は少なくとも前記内燃機関に接続され前記内燃機関の駆動力を伝達する駆動力伝達手段の許容トルクによって定められることを特徴とする。
【0016】
前記(4)の構成によれば、駆動力伝達手段の破損を防止できる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、前記(1)〜(4)の構成において、前記第2の上限値は、コンプレッサのサージラインに対して所定の余裕量を含んで設定された値であることを特徴とする。
【0018】
前記(5)の構成によれば、第2の上限値が、コンプレッサのサージラインに対して所定の余裕量を含んで設定されるので、サージングを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、コンプレッサのサージングを抑制しつつ、トランスミッションの許容トルクや内燃機関のノッキング限界等のトランスミッションまたは内燃機関の要求を考慮して、燃費性能と加速性能を向上できる過給機付き内燃機関の制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る過給機付き内燃機関の制御装置の全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態におけるECU(電子制御コントロールユニット)の構成ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態における制御目標値算出のフロー図である。
図4】本発明の一実施形態におけるECU(電子制御コントロールユニット)の構成ブロック図である。
図5】本発明の一実施形態における制御目標値算出のフロー図である。
図6】制御マップの具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0022】
図1には、本発明の一実施形態に係る過給機付き内燃機関の制御装置の全体構成図を示す。図1に示すように、内燃機関(エンジン)1の吸気通路3には、上流側よりエアクリーナ5、その下流側に排気過給機7のコンプレッサ9、その下流側にインタークーラ11が設けられ、さらにその下流側には吸気マニホールド13に形成されたサージタンク15、吸気ポート17内に燃料を噴射する吸気ポートインジェクタ19が設けられている。
そして、エアクリーナ5を介して導入された吸入空気は、吸気通路3を通り、コンプレッサ9に導入されて圧縮された後、インタークーラ11で冷却され、その後、サージタンク15に導入されて吸気圧力の均一化がなされ、その後各気筒へ供給され吸気ポートインジェクタ19から燃料が吸気ポート17内に噴射されて混合気としてエンジン1の燃焼室21内に導入される。
【0023】
また、エンジン1には、シリンダヘッド23及びシリンダブロック25が備えられ、シリンダブロック25には、シリンダの内部にピストン29が往復移動自在に収容され、ピストン29とシリンダとシリンダヘッド23とで燃焼室21が形成されている。
また、シリンダヘッド23には、吸気ポート17が形成され、吸気ポート17には吸気弁31が設けられ、吸気弁31によって燃焼室21と吸気ポート17とが連通及び遮断されるようになっている。
【0024】
一方、シリンダヘッド23には、排気ポート33が形成され、排気ポート33には排気マニホールドを介して排気通路35が接続されている。また、排気ポート33には排気弁36が設けられ、排気弁36によって燃焼室21と排気ポート33とが連通及び遮断されるようになっている。吸気弁31、排気弁36は、可変タイミング機構が設けられている。
また、排気通路35には、コンプレッサ9と同軸上に結合された排気過給機7のタービン37が設けられている。タービン37の下流側には排気浄化用の触媒39が設けられている。
【0025】
また、タービン37を迂回するようにバイパス通路41が形成され、バイパス通路41と排気通路35との接合部にはバイパス通路41への排ガスの導入量を調整するウェイストゲートバルブ43が設けられている。ウェイストゲートバルブ43の開度調整はウェイストゲートバルブアクチュエータ45によって作動されるようになっている。
また、シリンダヘッド23には、気筒毎に点火プラグ47が取り付けられ、点火プラグ47には高電圧を出力する点火コイルが接続されている。
【0026】
また、吸気通路3には、エアクリーナ5とコンプレッサ9との間にはエアフローメータ49が設置され、排気過給機7に流入する吸気流量を検出するようになっている。インタークーラ11とサージタンク15との間の吸気通路3には、燃焼室21内への吸気量を調整するスロットルバルブ51が設けられ、このスロットルバルブ51の上流側の吸気圧力を検出する上流側圧力センサ53が設けられ、サージタンク15内にはスロットルバルブの下流側の吸気圧力を検出する下流側圧力センサ55が設けられている。
【0027】
ECU(電子制御ユニット)57は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えている。ECU57によりエンジン1の総合的な制御が行われる。
ECU57の入力側には、前述したエアフローメータ49、上流側圧力センサ53、下流側圧力センサ55の各種センサ、さらに、エンジン負荷センサ(燃料噴射量センサ)59、エンジン回転センサ(クランク角センサ)61、大気圧センサ63等の各種センサ類からの検出情報が入力される。
【0028】
ECU57の出力側は、前述した吸気ポートインジェクタ19、点火プラグ47等の各種出力デバイスに接続されている。各種出力デバイスは、センサ類からの検出情報に基づいてECU57で演算された燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期等がそれぞれ出力される。
また、各種センサ類からの検出情報に基づき適正な目標空燃比が設定され、実際の空燃比が目標空燃比となるように、適正量の燃料が適正タイミングで吸気ポートインジェクタ19から噴射され、また、スロットルバルブ51によって燃焼室21内に導入される空気量が調整され、点火プラグ47によって適正タイミングで火花点火されるようになっている。
さらに、ウェイストゲートバルブアクチュエータ45へ制御信号を出力することで、ウェイストゲートバルブ43の開度が調整されて、排気過給機7によって圧縮圧力が制御されるようになっている。
【0029】
また、ECU57には、エンジン1の負荷と回転から目標とするスロットルバルブ51の下流側吸気圧力(第1の目標吸気圧力)を算出する目標Pb変換部(第1の目標吸気圧力算出手段)71と、目標Pb変換部71の出力に基づいてスロットルバルブ51の上流側吸気圧力(第2の目標吸気圧)を算出する換算部82(第2の目標吸気圧力算出手段)と、上流側吸気圧力または上流側吸気圧力と大気圧との比である圧力比に基づいてコンプレッサ9の制御目標値を算出する過給機制御手段65とが備えられている。
【0030】
次に、この目標Pb変換部71、換算部82、過給機制御手段65について図2を参照して説明する。
なお、符号Pbはスロットルバルブ51の下流側の下流側吸気圧力を示し、サージタンク(インテークマニホールド=インマニ)15内のインマニ圧に相当する。また、符号P1は大気圧力を示し、符号P2はスロットルバルブ51の上流側の上流側吸気圧力を示す。
【0031】
目標Pb変換部71は、目標EC(目標空気充填効率を示し、エンジン負荷及び回転数に基づいて目標値として予めマップ等に設定されている)から下流側吸気圧力Pbへの変換を行う。この変換の際に、エンジン回転数に応じた体積効率補正係数が考慮されて変換される。
【0032】
換算部82は、目標P2換算量設定部73と加算器80と除算器84によって構成され、スロットルバルブ51の下流側の吸気圧力Pbを、スロットルバルブ51の上流側の上流側吸気圧力P2に換算して、さらに大気圧との圧力比を算出する。
この目標P2換算量設定部73では、図6(B)、(C)に示すように、エンジン回転数と目標ECに基づいて換算量が設定された目標P2換算量設定マップ74を用いて換算量が算出される。
最小値選択器78の出力の目標Pb値に、加算器80で目標P2換算量設定部73からの目標P2換算量を加算することで、目標Pb値から目標P2値に変換する、さらに、大気圧で除算して、目標圧力比として算出する。
【0033】
過給機制御手段65は、下流側上限値算出手段である目標Pb上限値設定部(第1の上限値算出手段)69と、上流側上限値算出手段である目標圧力比上限値設定部(第2の上限値算出手段)75と、下流側上限値及び上流側上限値の両方の上限値を超えない範囲で(第1及び第2の両方の上限値を超えない範囲で)コンプレッサ9の制御目標値を算出する比較部(圧力制御手段)90とを備えている。
【0034】
目標Pb上限値設定部69では、図6(A)に示すような目標Pb上限値設定マップ77を用いて目標Pb上限値が算出される。目標Pb上限値がエンジン回転数を基に設定されており、エンジン回転数を基に算出される。
【0035】
目標圧力比上限値設定部75では、図6(D)に示すように、圧力比(コンプレッサ9の上流側と下流側の圧力比)の上限値と吸入空気の体積流量との関係が設定された圧力比上限値マップ76を用いて目標圧力比上限値が算出される。圧力比上限値マップ76の上限値ラインM1は、コンプレッサ9のサージラインM2に対して所定の余裕量(例えば体積流量で略10%)を含めて設定される。このように、サージングを確実に防止できるように上限値が設定される。
なお、エアフローメータ49で検出される吸入空気量が体積流量でなく、質量流量の場合には、空気密度で除算して体積流量に換算されるようになっている。
また、吸入空気量については、吸入負圧等を基に算出して取得してもよい。
【0036】
また、目標圧力比上限値設定部75は、前述したように目標上限圧力比がコンプレッサ9のサージラインM2に基づいて算出され、そのコンプレッサ9のサージラインM2はコンプレッサ9を通過する吸気量と圧力比によって定まる。さらに、コンプレッサを通過する吸気量は、エアフローメータ49で検出されている。
このため、例えば、バルブオーバラップが可変バルブタイミング機構の油圧不足により想定より少なく、エンジン1のシリンダ内に空気が入りにくく、目標圧力比よりも誤って増大してしまうケースがあっても、このような場合には吸入空気量はその分減少し、目標上限圧力比もそれに応じて減少した上限値となることから、コンプレッサ9の破損を確実に防止できる。
【0037】
目標Pb上限値設定部69から出力される目標Pb上限値と、目標Pb変換部71から出力される目標Pb値とを最小値選択器78に入力して、小さい方の値を採用して目標Pb値として出力する。
この目標Pb上限値設定部69と、目標Pb変換部71と、最小値選択器78とによって、スロットルバルブ51の下流側での第1の目標吸気圧力すなわち、目標Pb値が算出され、その後は、前述したように、目標P2換算量設定部73と加算器80と除算器84によって構成される換算部82によって、スロットルバルブ51の下流側の目標Pb値を、スロットルバルブ51の上流側の目標P2値に換算され、さらに目標圧力比(P2/P1)が算出される。
【0038】
換算部82の出力の目標P2値は、除算器84によって大気圧P1で除算されて目標圧力比(P2/P1)として算出され、最大値選択器86に入力されて圧力比が「1」の場合と比較して、1より大きい方の値が採用されて、上流側目標値を算出する。そして、上流側目標値は最小値選択器88に入力される。
【0039】
一方、最小値選択器88には、目標圧力比上限値設定部75から出力される目標圧力比上限値が上流側上限値として入力される。そして、上流側目標値と上流側上限値の小さい方の値が採用されて、制御目標値として目標圧力比(P2/P1)が出力される。
この最小値選択器88は、上流側目標値である目標圧力比と、上流側上限値である目標圧力比上限値とを比較して、小さい方の値を採用して制御目標値を出力するようになっている。
換算部82で、スロットルバルブ51の上流側の上流側吸気圧力P2に換算して目標圧力比を算出して、比較部90で上限値と比較するため、大小比較の条件がスロットルバルブ51の上流側と同一となるため比較しやすく、比較精度が向上する。
【0040】
また、最小値選択器78と最小値選択器88とによって、下流側上限値及び上流側上限値の両方の上限値を超えない範囲でコンプレッサ9の制御目標値を算出する圧力制御手段である比較部90を構成している。
【0041】
次に、図3を参照して、図2に示す制御目標値算出の手順を図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS1で、目標Pbの算出を、目標Pb変換部71によって算出する。次にステップS2で、ステップS1で算出した目標Pbが、目標Pb上限値設定部69で設定された上限値を超えているか否かを判定する。超えている場合には目標Pbを上限値に若しくはそれ以下に任意の値に制限してステップS4に進み、超えていない場合にはステップS1で算出したPbのままステップS4に進み、ステップS4で目標P2を算出する。
このP2の算出は、目標Pbに目標P2換算量設定部73で設定された換算量を加算して圧力変換する。そして、次のステップS5で、目標圧力比(P2/P1)を算出する。目標圧力比(P2/P1)の算出は、ステップS4で算出した目標P2に対して大気圧の情報を大気圧センサ63から入手して除算することで算出する。
【0042】
次にステップS6では、ステップS5で算出した圧力比はコンプレッサ9のサージラインから設定した上限値をこえていないかを判定する。超えていない場合には、ステップS8に進み、ステップS5で算出した目標圧力比を制御目標値として決定する。
ステップS6で超えているし判定した場合には、ステップS7で目標圧力比をコンプレッサのサージラインから設定した上限値に、若しくはそれ以下の任意の値に制限する。そして、ステップS8に進んで、その制限した上限値若しくは制限値を制御目標値として決定する。
【0043】
制御目標値が決定されると、ウェイストゲートバルブ制御部100では、この制御目標値である圧力比(P2/P1)に、運転状態におけるP2/P1値を、つまり、スロットルバルブ51の下流側の吸気圧力を検出する下流側圧力センサ55によるP2検出値と、スロットルバルブ51の上流側の吸気圧力を検出する上流側圧力センサ53によるP1検出値とによるP2/P1の算出値を、制御目標値の圧力比になるように、ウェイストゲートバルブ43の開度をフィードバック制御する。
【0044】
以上の実施形態によると、制御目標値の圧力比(P2/P1)を、コンプレッサ9のサージングラインに基づく上限値と、トランスミッションまたは内燃機関の要素として、トランスミッションの許容トルク若しくは内燃機関のノッキング限界等の要求条件、さらには、排ガス性能や動力伝達系におけるドライブシャフト、差動機構等の強度限界等の要求条件に基づく上限値との両方の上限値を超えない範囲で算出するので、コンプレッサ9のサージングを抑制しつつ、トランスミッションの許容トルクや内燃機関のノッキング限界等を考慮した運転がなされるので、燃費性能と加速性能を向上できる。
【0045】
すなわち、コンプレッサ9のサージングを抑制するサージラインだけによる制御目標値の制御を行うと、トランスミッションの許容トルクやエンジンのノッキング限界等を考慮すると余裕がないにもかかわらず運転がされる場合や、また、余裕があるにもかかわらず制限されてしまう場合があり、過渡時における加速性や燃費の悪化が生じやすくなる問題や、さらにミッションやエンジンにおける強度的な問題が生じるおそれがある。しかし、本実施形態によれば、このような問題が解消することができる。
【0046】
次に図4、5を参照して、他の一実施形態を説明する。
図4は、図2に対応するECU57の構成ブロック図を示し、図5は、図3に対応する目標圧力設定の制御フロー図である。
図4、5に示す実施形態は、図2、3に対して、制御目標値が圧力比ではなく、スロットルバルブ51の上流側の上流側吸気圧力P2であり、該制御目標値を算出し、ウェイストゲートバルブ制御部100によってウェイストゲートバルブ43の開度を制御する。
【0047】
過給機制御手段101は、図2の過給機制御手段65の構成と同様に、目標Pb上限値設定部69と、目標圧力比上限値設定部75と、下流側上限値及び上流側上限値の両方の上限値を超えない範囲でコンプレッサ9の制御目標値を算出する比較部90とを備えている。
これらについての説明は同一符号を付して省略する。
相違する点は、図2の過給機制御手段65の構成においては、圧力比であるため、大気圧(P1)で除算して比率を算出していたが、本実施形態では、除算器84を備えない。
【0048】
また、過給機制御手段65では、目標圧力比上限値設定部75を備えて目標圧力比上限値を設定していたが、本実施形態では、目標圧力上限値設定部102を備えて目標圧力(P2)の上限値を設定している。この設定に際して、過給機制御手段65の目標圧力比上限値設定部75の圧力比上限値マップ76によってコンプレッサ9のサージングラインを基に設定される目標圧力比上限値から大気圧を基に(大気圧を乗算して)上限圧力を算出することで設定する。
【0049】
また、制御フローについては図5に示すように、図3の制御フローに対して、ステップS5の目標圧力比(P2/P1)の算出が無いだけであり、他のフローは同様であるため、同一のステップ番号を付して説明は省略する。
【0050】
以上の本実施形態によれば、前述の図2、3の実施形態同様に、制御目標値の上流側吸気圧力(P2)を、コンプレッサ9のサージングラインに基づく上限値と、トランスミッションまたは内燃機関の要求として、トランスミッションの許容トルク若しくは内燃機関のノッキング限界等の要求条件に基づく上限値との両方の上限値を超えない範囲で算出するので、コンプレッサ9のサージングを抑制しつつ、トランスミッションの許容トルクや内燃機関のノッキング限界等を考慮した運転がなされるので、燃費性能と加速性能を向上できる。
【0051】
また、本実施形態では、制御目標値として圧力比(P2/P1)ではなく、上流側吸気圧力(P2)を直接目標値として制御するため、制御が簡素化されことで、ウェイストゲートバルブ43の作動応答性を向上できる。
なお、本実施例ではガソリンエンジンで説明したが、例えばディーゼルエンジンであっても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の一実施形態によれば、制御目標値の上流側吸気圧力(P2)または吸気圧力比(P2/P1)を、コンプレッサ9のサージングラインに基づく上限値と、トランスミッションまたは内燃機関の要求に基づく上限値との両方の上限値を超えない範囲で算出するので、コンプレッサのサージングを抑制しつつ、トランスミッションまたは内燃機関の要求、例えばトランスミッションの許容トルクや内燃機関のノッキング限界等を考慮した運転がなされるので、燃費性能と加速性能を向上できる。このため、排気過給機付き内燃機関の過給圧制御への適用に有効である。
【符号の説明】
【0053】
1 内燃機関(エンジン)
3 吸気通路
7 排気過給機
9 コンプレッサ
11 インタークーラ
15 サージタンク
35 排気通路
37 タービン
41 バイパス通路
43 ウェイストゲートバルブ
49 エアフローメータ
51 スロットルバルブ
53 上流側圧力センサ
55 下流側圧力センサ
57 ECU(電子制御ユニット)
61 エンジン回転センサ
63 大気圧センサ
65、101 過給機制御手段
69 目標Pb上限値設定部(第1の上限値算出手段)
71 目標Pb変換部(第1の目標吸気圧算出手段)
73 目標P2換算量設定部
75 目標圧力比上限値設定部(第2の上限値算出手段)
78、88 最小値選択器
82 換算部(第2の目標吸気圧算出手段)
90 比較部(圧力制御手段)
100 ウェイストゲートバルブ制御部
102 目標圧力上限値設定部
M1 上限値ライン
M2 サージライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6