特開2016-191415(P2016-191415A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-191415(P2016-191415A)
(43)【公開日】2016年11月10日
(54)【発明の名称】クランクシャフトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 3/08 20060101AFI20161014BHJP
   B21K 1/08 20060101ALI20161014BHJP
   B21J 9/02 20060101ALI20161014BHJP
   C21D 9/30 20060101ALI20161014BHJP
   C21D 1/10 20060101ALI20161014BHJP
【FI】
   F16C3/08
   B21K1/08
   B21J9/02 A
   C21D9/30 A
   C21D1/10 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-71249(P2015-71249)
(22)【出願日】2015年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 好正
(72)【発明者】
【氏名】上野 慎司
(72)【発明者】
【氏名】小槻 満男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一
【テーマコード(参考)】
3J033
4E087
4K042
【Fターム(参考)】
3J033AC01
3J033BA01
3J033BA15
3J033CA02
4E087AA01
4E087CA41
4E087DB17
4E087DB24
4E087HA32
4K042AA16
4K042BA10
4K042DA01
4K042DB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡単な手法で、加工性を損なうことなく、クランクジャーナル部、クランクピン部、フィレット部に高周波焼入れが施せるクランクシャフトの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、クランクジャーナル部3a〜3eの軸方向端およびクランプピン部5a〜5dの軸方向端のフィレット部7,9に所定にロール加工を施す工程と、ロール加工を終えてから、クランクジャーナル部3a〜3eの摺動面4、クランプピン部5a〜5dの摺動面6を、各軸方向端のフィレット部7,9を含み高周波焼入れする工程とを有するものとした。これにより、クランクシャフト1の高周波焼き入れは、フィレット部7,9におけるロール加工を終えてから、フィレット部7,9と共にクランクジャーナル部3a〜3eの摺動面4、クランプピン部5a〜5dの摺動面6に施すという簡単な手法ですむ。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクジャーナル部の軸方向端およびクランプピン部の軸方向端のフィレット部に所定にロール加工を施す工程と、
前記ロール加工を終えてから、前記クランクジャーナル部の摺動面、前記クランプピン部の摺動面を、前記クランクジャーナル部および前記クランプピン部の各軸方向端のフィレット部を含み高周波焼入れする工程と
を備えるクランクシャフトの製造方法。
【請求項2】
前記ロール加工は、前記フィレット部へフィレットロールを押し付けるフィレットロール加工であることを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項3】
前記フィレットロール加工は、予め前記高周波焼入れによる前記クランクシャフトの変形量を相殺するように変形を与えることを特徴とする請求項2に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項4】
前記クランクシャフトの変形量を相殺するフィレットロール加工は、少なくともクランクピン部のトップ側の半周部に加わるフィレット荷重を、前記変形量に基づきボトム側の半周部に加わるフィレット荷重よりも大きくすることを特徴とする請求項3に記載のクランクシャフトの製造方法。
【請求項5】
前記高周波焼入れは、前記クランクシャフトの変形量が所定の焼入れ深さ量のときにおいて最小となるよう焼入れエネルギーが制御されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のクランクシャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトは、疲労強度や耐摩耗性などの向上が求められるため、一般にはクランクジャーナル部の摺動面やクランクピン部の摺動面に高周波焼入れを施し、クランクジャーナル部およびクランクピン部の軸方向端に有するフィレット部に、ロール加工(フィレットロール加工)を施すことが行われている(各々独立)。
近時では、一層、クランクシャフトの強度や耐摩耗性などを向上させるため、クランクジャーナル部、クランクピン部、当該クランクジャーナル部およびクランクピン部の軸方向端のフィレット部に高周波焼入れを施し、各部の表面硬度を高めてから、各フィレット部に、ロール加工(フィレットロール加工)を施す手法が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−337345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のようなフィレット部に高周波焼入れを施す手法は、高周波焼入れを終えた後に、フィレット部のロール加工が余儀なくされるために、ロール加工を施すこと自体難しい。すなわち、フィレット部は、高周波焼入れにより表面の硬度が高くなるため、直接、焼入れ表面にロール加工を施すことが難しくなる。
そのため、フィレット部にロール加工を行う場合、例えば引用文献1の如くクランクシャフト全体の低温焼もどしを行うなど、ロール加工前に、ロール加工を行える状況する工程を設けることが求められ、クランクシャフトの製造を難しくしていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、簡単な手法で、加工性を損なうことなく、クランクジャーナル部、クランクピン部、フィレット部に高周波焼入れが施せるクランクシャフトの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、クランクジャーナル部の軸方向端およびクランプピン部の軸方向端のフィレット部に所定にロール加工を施す工程と、ロール加工を終えてから、クランクジャーナル部の摺動面、クランプピン部の摺動面を、クランクジャーナル部およびクランプピン部の各軸方向端のフィレット部を含み高周波焼入れする工程とを有するものとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クランクシャフトのクランクジャーナル部、クランプピン部、フィレット部における高周波焼入れは、高周波焼入れ工程の前段階で、フィレット部にロール加工を施す手法を用いたことにより、簡単な手法で、加工性を損なわずに、フィレット部を含むクランクジャーナル部およびクランクピン部の摺動面に高周波焼入れを施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のクランクシャフトの正面図。
図2】クランクシャフトのクランクジャーナル部のフィレット部にフィレットロール加工(ロール加工)を施すときを説明する正面図。
図3】同フィレットロール加工を施す加工装置の概略を示す側面図。
図4】同フィレットロール加工を施すときを説明する正面図。
図5】同フィレットロール加工を施す加工装置の概略を示す側面図。
図6】同クランクピン部のフィレットロール加工で行われる位相制御を説明する図。
図7】クランクシャフトに高周波焼入れを施したときを、位相制御する制御機器と共に示す正面図。
図8】同クランクシャフトの変形を説明する図。
図9】高周波焼入れを終えたときのクランクシャフト部、クランクピン部、フィレット部における焼入れ硬化層を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図1から図9に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1はクランクシャフト1の外観を示している。同クランクシャフト1は、例えばガソリン車用の4気筒エンジンのクランクシャフトである。このクランクシャフト1は、例えば左側から1番ジャーナル部3a(以下、単にジャーナル部3aという)、1番ピン部5a(以下、単にピン部5aという)、2番ジャーナル部3b(以下、単にジャーナル部3bという)、2番ピン部5b(以下、単にピン部5bという)、3番ジャーナル部3c(以下、単にジャーナル部3cという),3番ピン部5c(以下、単にピン部5cという)、4番ジャーナル部3d(以下、単にジャーナル部3dという)、4番ピン部5d(以下、単にピン部5dという)、5番ジャーナル部3e(以下、単にジャーナル部3eという)を備えている。そして、各ジャーナル部3a〜3e(本願のクランクジャーナル部に相当)、ピン部5a〜5d(本願のクランクピン部に相当)との間は、アーム部2によってそれぞれ接合され、各ジャーナル部3a〜3eを同一軸線上に連ね、各ジャーナル部3a〜3eの摺動面4を直線状に配置している。またジャーナル部3a〜3eの軸心から所定に離れた位置には、ピン部5b,5cが同一線上に連ねられている。さらにジャーナル軸心を挟んだピン部5b、5cとは反対側(180°)の位置にはピン部5a,5dが同一線上に連ねられ、ジャーナル軸心の周りの所定位置に、上記ピン部5b、5cおよびピン部5a,5dの摺動面6(外周面)を配置している。そして、アーム部2の側面とジャーナル部3a〜3eの軸方向端との間はフィレット部7となり、アーム部2の側面とピン部5a〜5dの軸方向端との間はフィレット部9となる。
【0010】
クランクシャフト1は、耐摩耗性や曲げ(ねじり)疲労強度などを向上させるために、ジャーナル部3a〜3eの摺動面4、ピン部5a〜5dの摺動面6、ジャーナル部3a〜3eのフィレット部7、ピン部5a〜5dのフィレット部9に高周波焼入れを施すが、始めに高周波焼入れを施すと、焼入れのもたらす表面硬化作用により、この時点で、フィレット部7,9におけるロール加工、すなわちフィレット部7,9をアール部形状(溝)にし、同フィレットアール形状部を冷間ロール加工するといったフィレットロール加工は行難くなる。
【0011】
そのため、本実施形態では、フィレットロール加工が容易に行えるよう、高周波焼入れを施す前の段階において、ロール加工であるジャーナル部3a〜3eおよびピン部5a〜5dのフィレット部7,9におけるフィレットロール加工を行い、その後に各フィレット部7,9を含み、ジャーナル部3a〜3eの摺動面4、ピン部5a〜5dの摺動面9に高周波焼入れを施すという手法が用いられる。
【0012】
この手法を説明すると、まず、図2図5に示されるようにクランクシャフト1のフィレット部7,9にフィレットロール加工(ロール加工)を施すことから始める。
すなわち、フィレットロール加工は、まず図2および図3に示されるように、例えばクランクシャフト1の両端部1a,1bを支持センタ具15で回転可能に支え、各ジャーナル部3a〜3eに専用のフィレットロール加工機17を組み付ける。フィレットロール加工機17は、例えば図3にも示されるようにジャーナル部3a〜3eを挟んだ片側を一対の支えロール19で支え、反対側に、フィレット部7へ向かって突き出るように傾斜したフィレットロール21を配置しておく。そして、図2,3中の矢印aの如く各フィレットロール21にフィレット荷重を加えて、フィレット部7に形成されている溝形のフィレットアール部にフィレットロール21の先端を押し付けつつ、矢印bの如くクランクシャフト1をジャーナル部3a〜3eの軸心を中心に回転させることで、各フィレット部7の全周の表面の面粗度を高める。
【0013】
続いて、ピン部5a〜5dのフィレット部9にフィレットロール加工を施す。この場合、図4および図5に示されるように例えばクランクシャフト1の両端部1a,1bを支持センタ具25で回転可能に支え、各ピン部5a〜5dにフィレットロール加工機27を組み付ける。フィレットロール加工機27は、例えば図5にも示されるようにピン部5a〜5dを挟んだ片側に一対の支えロール29を配置し、反対側に、フィレット部7へ向かって突き出るように傾斜したフィレットロール31を配置して、ピン部5a〜5dを挟み込む。そして、図4,5中の矢印cの如く各フィレットロール31にフィレット荷重を加えて、フィレット部9に形成されている溝形のフィレットアール部にフィレットロール31を押し付けつつ、矢印dの如くクランクシャフト1をジャーナル部3a〜3eの軸心を中心に回転させることで、各フィレット部9の表面の面粗度を高める。
【0014】
フィレットロール加工の際、単純にフィレット荷重を加えるのでは、迅速にクランクシャフト1の製造ができない。
そのため、フィレットロール加工にも工夫が施されている。同工夫は、このフィレットロール加工を用いて、高周波焼入れを施したときに生ずるクランクシャフト1の変形量に備えるものである。具体的にはフィレットロール加工によって、焼入れ変形を相殺するような変形を与えようとするものである。
【0015】
この点を説明すると、クランクシャフト1の高周波焼入れ装置41は、例えば図7に示されるように例えばクランクシャフト1の両端部1a,1bを支持センタ具35で回転可能に支え、各ジャーナル部3a〜3e、各ピン部5a〜5dの外周面上に、それぞれ高周波コイル39を配置しておき、各高周波コイル39に高周波を印加しながら、矢印e如くクランクシャフト1をジャーナル部3a〜3eの軸心を中心に回転させて、ジャーナル部3a〜3eの摺動面4、ピン部5a〜5dの摺動面6、ジャーナル部3a〜3eのフィレット部7のフィレットアール部,ピン部5a〜5dのフィレット部9のフィレットアール部の表面を加熱して、各部位の表面部に硬化層を形成する。このとき、クランクシャフト1は熱により変形する。多くはピン部5a〜5dに接合されるアーム部2の厚み寸法が、トップ側とボトム側とで極端に異なる傾向が有るため、ピン部5a〜5d周辺において変形が生じやすい。多くは、ピン部5a〜5dの両側のアーム部2が両側へ拡がり、図7および図8中の矢印gのようにピン部5a〜5dのボトム側が外側へ変形する。特に焼入れ時のピン部5a〜5dのボトム部分の変形は、クランクシャフト1の曲がりに直結する。しかし、曲がらない程度のコイル出力とすると、焼入れ深さが不足することがある。
【0016】
そのため、高周波焼入れ装置41は、例えば図7に示されるように高周波コイル39への投入エネルギーを制御する制御部43やアーム部2の曲げ量を検知する曲げ量検知センサ45を用いて、クランクシャフト1の変形量が、所定の焼入れ深さで最小となるよう焼入エネルギーを制御する位相制御式が用いられ、クランクシャフト1の変形量をできるだけ抑えるものとしている。
【0017】
こうしたクランクシャフト1に高周波焼入れをしたときのアーム部2における変形量(クランクシャフト1の焼入れ変形量)のデータを予め取得しておき、このアーム部2の変形量データから、高周波焼入れ変形を相殺する変形力を生起させる相殺データを得、同相殺データにより、高周波焼入れ前に行われるフィレットロール加工のとき、予め高周波焼入れ変形量を相殺する変形力をアーム部2に与える。
【0018】
すなわちフィレットロール加工機17,27は、ジャーナル部3a〜3eの外周部位、ピン部5a〜5dの外周部位に加わるフィレット荷重を可変可能とした位相制御式が用いられている。したがって、上記フィレットロール加工は、上記高周波焼入れ変形量を相殺させる相殺データに基づき、各フィレットロール21,31の押し付け力(フィレット荷重)を制御する。
【0019】
具体的には、焼入れ変形の多くは、上述したようにピン部5a〜5d周辺で生じるので、少なくともピン部5a〜5dのフィレット部9に加わるフィレット荷重を制御する。特にピン5a〜5dにおける焼入れ変形は、上述のようにアーム部2は、特定の方向に変形をきたす傾向があるので、フィレットロール加工では、図4中の矢印fのように上述した変形(矢印g)とは逆向き方向の変形をアーム部2に与える。つまり、ピン部5a〜5dのボトム側が内側へ変位する変形を与える。そのため、フィレットロール加工では、ピン部5a〜5dのトップ側に高荷重を加え、ピン部5a〜5dのボトム側に低荷重を加えて、図6のようにピン部5a〜5dのトップ側を外側に変形させ、ピン部5a〜5dのボトム側を内側に変形させる。
【0020】
具体的には、ジャーナル部3a〜3eのフィレットロール加工においては、例えば面粗度を高めるフィレット荷重(例えば5kgN)だけで、フィレット部7の全周にフィレットロール21を押し付ける。ジャーナル部3a〜3eのフィレットロール加工においては、例えば図6に示されるようにピン部5a〜5dのボトム側の半周部B(目安として150度程度)には、面粗度を高めるだけのフィレット荷重β(例えば5kgN;低荷重)を加え、ピン部5a〜5dのトップ側の半周部A(目安として180度程度)には、相殺データ(変形量)に基づき上記フィレット荷重よりも大きくしたフィレット荷重α(例えば10kgN;高荷重)を加えるようにする。つまり、ピン部5a〜5dでは、トップ側の半周部Aに加わるフィレット荷重αを、ボトム側の半周部Bに加わるフィレット荷重βよりも大きくする。フィレット部7の半周部Aに加わるフィレット荷重αが増すと、図6(a)に示されるようにピン部5a〜5dのボトム側が内側へ向かうよう変形する。このときのアーム部2の変形量は、予め高周波焼入れで生じる変形を相殺する変形量である。
【0021】
クランクシャフト1は、このようにしてフィレット部7.9におけるフィレットロール加工を終えてから(ロール加工の工程)、上述した高周波焼入れ装置41で、ジャーナル部3a〜3eの摺動面4、ピン部5a〜5dの摺動面6が、ジャーナル部3a〜3eのフィレット部7およびピン部5a〜5dのフィレット部9を含み高周波焼入れされる(高周波焼入れ工程)。すると、ピン部5a〜5dの両側のアーム部2は、フィレットロール加工による変形は解消され、変形の相殺により、変形のない、すなわち変形を抑えたクランクシャフト1が得られる。
【0022】
以上のように、高周波焼入れ後にロール加工する工程とは異なり、先にロール加工を行い、その後に高周波焼入れするという簡単な手法で、加工性を損なわずに、フィレット部7,9を含むジャーナル部3a〜3eおよびピン部5a〜5dの摺動面4,6に高周波焼入れが施せる。つまり,容易にクランクシャフト1に高周波焼入れを施すことができ、迅速にクランクシャフト1の製造が行える。
【0023】
特に、高周波焼入れは、フィレットロール加工で加工されたフィレット部7,9を含みジャーナル部3a〜3eおよびピン部5a〜5dの摺動面4,6に施すので、図9の符号γで示される焼入れ硬化層ように、容易にフィレット部7,9までも所定の焼入れ深さで焼入れを施すことができる。このため、フィレット部7,9は、高周波焼入れによる表面硬化作用とフィレットロール加工による面粗度向上作用との相乗効果により、一層、強度や耐摩耗性や耐疲労強度などの向上を図ることができる。
【0024】
そのうえ、位相制御を用いたフィレットロール加工にて、予め高周波焼入れがもたらすクランクシャフト1(アーム部2)の変形量を相殺する変形を与えることより、高周波焼入れ工程を終えた時点では、クランクシャフト1の変形は相殺、つまりクランクシャフト1の変形はなくなるので、高精度のクランクシャフト1を速やかに得ることができる。特に焼入れ変形が誘起されやすいピン部5a〜5dに対しては有効である。
【0025】
しかも、フィレットロール加工は、少なくともピン部5a〜5dのトップ側の半周部Aに加わるフィレット荷重αを、焼入れ変形量に基づきボトム側の半周部Bに加わるフィレット荷重βよりも大きくしたので、容易に当該変形量を相殺する変形を与えることができる。もちろん、クランクシャフト1によっては、ジャーナル部3a〜3eに加わるフィレット荷重も、ピン部5a〜5dと同様に変化させるようにしても構わない。
【0026】
またフィレットロール加工だけでなく、高周波焼入れにも位相制御を用いて、所定焼入れ深さを確保しつつクランクシャフト1の変形量が最小となるよう焼入れエネルギーを制御したことにより、クランクシャフト1の変形量を相殺する変形量が最小限に抑えられるから、クランクシャフト1が製造されるまでの時間の短縮化を図ることができる。
なお、上述した一実施形態における各構成および組合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であることはいうまでもない。また本発明は、一実施形態によって限定されることはなく、「特許請求の範囲」によってのみ限定されることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0027】
1 クランクシャフト
3a〜3e ジャーナル部(クランクジャーナル部)
4 ジャーナル部の摺動面
5a〜5d ピン部(クランクピン部)
6 ピン部の摺動面
7,9 フィレット部
A ピン部のトップ側の半周部
B ピン部のボトム側の半周部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9